JP2004131410A - α−ヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法 - Google Patents

α−ヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法 Download PDF

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Yutaka Yoshida
吉田 裕
Satoshi Nakagawa
中川 聡
Hideyuki Baba
馬場 英幸
Kohei Umehara
梅原 康平
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Abstract

【課題】酸化的エステル化反応において、α−ヒドロキシカルボン酸エステルによる副反応を抑制ないしは防止し、α−ヒドロキシカルボン酸エステルを効率的に得る方法を提供する。
【解決手段】酸素の存在下において、(i)1,2−ジオールどうし又は(ii)1,2−ジオール及びアルコールを反応させることによりα−ヒドロキシカルボン酸エステルを製造する方法であって、上記反応により得られた反応生成物を蒸留する工程を有し、蒸留前の反応生成物及び/又は蒸留系内のpHを5〜9の範囲内に調整することを特徴とするα−ヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法に係る。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、α−ヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
グリコール酸エステル等のα−ヒドロキシカルボン酸エステルは、ポリグリコール酸等の各種の合成樹脂の原料(重合用モノマー)として利用され、また洗浄剤、エッチング剤等としても工業的に有用な化合物である。
【0003】
グリコール酸エステル等のα−ヒドロキシカルボン酸エステルは、ヘテロポリ酸の存在下にホルムアルデヒドと一酸化炭素からポリグリコリドを合成して加アルコール分解する方法(例えば、特許文献1参照)、ホルムアルデヒドと一酸化炭素からグリコール酸を合成し、引き続きアルコールによりエステル化を行う方法(例えば、特許文献2参照)、触媒の存在下にグリオキサールとアルコールの酸化的エステル化を行う方法(例えば、特許文献3参照)、シュウ酸ジエステルを水素化する方法(例えば、特許文献4参照)等が、製造方法として知られている。
【0004】
これらの製法に対し、本願出願人は酸化的エステル化反応による方法(例えば、未公開特許文献1参照)を開発した。この方法は、酸素の存在下において、1,2−ジオールとアルコールとを反応させることによりα−ヒドロキシカルボン酸エステルを製造する方法である。この製造方法によれば、より効率的にα−ヒドロキシカルボン酸エステル等を製造することが可能となる。
【0005】
ところが、α−ヒドロキシカルボン酸エステルは熱に対して弱く、比較的容易に反応を起こす。このため、蒸留中にα−ヒドロキシカルボン酸エステルが加熱されることによって、副反応(例えば、オリゴマー化、加水分解、エステル交換反応等)を起こすおそれがある。
【0006】
副反応によって、α−ヒドロキシカルボン酸エステルが減少するという問題が生じるほか、特に次のような問題も起こる。例えばエチレングリコールとアルコールからグリコール酸エステルを合成する場合、反応生成物中に水が存在するため、グリコール酸エステルあるいは副生成物であるギ酸エステルやシュウ酸エステルの一部が加水分解してグリコール酸、ギ酸、シュウ酸等のカルボン酸が生成する。これらは酸触媒として作用するため、前記のような副反応を促進する結果を招く。
【0007】
【特許文献1】
特開平6−228045号(特許請求の範囲)
【0008】
【特許文献2】
大韓民国公告特許第9511114号
【0009】
【特許文献3】
特開平8−104665号(特許請求の範囲)
【0010】
【特許文献4】
特開平6−135895号(特許請求の範囲)
【0011】
【未公開特許文献1】
特願2002−204748(特許請求の範囲)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
かかる見地より、α−ヒドロキシカルボン酸エステルによる副反応を抑制ないしは防止することができれば、上記の酸化的エステル化反応においてより効率的にα−ヒドロキシカルボン酸エステルを製造することが可能となる。
【0013】
従って、本発明の主な目的は、酸化的エステル化反応において、α−ヒドロキシカルボン酸エステルによる副反応を抑制ないしは防止し、α−ヒドロキシカルボン酸エステルを効率的に得る方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、従来技術の現状に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の方式による精製方法を導入することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、下記のα−ヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法に係るものである。
【0016】
1. 酸素の存在下において、(i)1,2−ジオールどうし又は(ii)1,2−ジオール及びアルコールを反応させることによりα−ヒドロキシカルボン酸エステルを製造する方法であって、上記反応により得られた反応生成物を蒸留する工程を有し、蒸留前の反応生成物及び/又は蒸留系内のpHを5〜9の範囲内に調整することを特徴とするα−ヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。(第1発明)
2. 酸素の存在下において、(i)1,2−ジオールどうし又は(ii)1,2−ジオール及びアルコールを反応させることによりα−ヒドロキシカルボン酸エステルを製造する方法であって、上記反応により得られた反応生成物を蒸留する工程を有し、蒸留前の反応生成物及び/又は蒸留系内に塩基性化合物を添加することを特徴とするα−ヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。(第2発明)
3. 酸素の存在下において、(i)1,2−ジオールどうし又は(ii)1,2−ジオール及びアルコールを反応させることによりα−ヒドロキシカルボン酸エステルを製造する方法であって、上記反応により得られた反応生成物を蒸留する工程を有し、蒸留前の反応生成物及び/又は蒸留系内に塩基性化合物を添加することにより当該反応生成物及び/又は蒸留系内のpHを5〜9に調整することを特徴とするα−ヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。(第3発明)
4.上記反応を、1)Auからなる微粒子及び/又は2)周期表第4から第6周期の2B族、3B族、4B族、5B族、6B族及び第4周期8族の少なくとも1種の第二元素とAuとからなる微粒子が担体上に担持されている触媒の存在下で行う前記項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【0017】
【発明の実施の形態】
(1)α−ヒドロキシカルボン酸エステルの製造
第1発明〜第3発明は、蒸留工程以外の工程はいずれも共通しているので、特にことわりのない限りそれらをまとめて説明する。
【0018】
▲1▼ 出発原料
1,2−ジオールは、1位と2位に水酸基を有する限り特に限定されず、例えば、3価以上の多価アルコールであっても良い。上記1,2−ジオールの具体例として、例えば、エチレングリコール、1,2−プロプレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオール等の炭素数2〜10程度の脂肪族1,2−ジオール;グリセリン、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール等の1位と2位に水酸基を有する炭素数3〜10程度の脂肪族多価アルコール等のほか、これら1,2−ジオールの誘導体等が挙げられる。1,2−ジオールの誘導体としては、例えば3−クロロ−1,2−プロパンジオール等のハロゲンを含有する炭素数2〜10程度の脂肪族1,2−ジオール;2−フェニル−1,2−エタンジオール等の芳香環を有する炭素数2〜10程度の脂肪族1,2−ジオール等が挙げられる。1,2−ジオールとしては、エチレングリコール等の炭素数2〜6程度の脂肪族ジオールを好適に使用できる。これら1,2−ジオールは、1種又は2種以上で用いることができる。
【0019】
アルコールは、1,2−ジオール以外のアルコールであれば良く、分子内に水酸基を有していればその種類は特に限定されるものではなく、1価アルコールであっても良く、2価以上の多価アルコールであっても良い。アルコールの具体例としては、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、1−ヘキサノール、1−オクタノール等の炭素数1〜10程度の脂肪族アルコール;1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール等の炭素数2〜10程度の脂肪族多価アルコール;アリルアルコール、メタリルアルコール等の炭素数3〜10程度の脂肪族不飽和アルコール;ベンジルアルコール等の芳香環を有するアルコール等が挙げられる。これらの中でも、1級アルコールが好ましく、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール等の炭素数1〜4の脂肪族1級アルコールを好適に使用でき、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール等の1価アルコールが特に好ましい。アルコールは、1種又は2種以上で用いることができる。
【0020】
▲2▼ 出発原料の使用割合
本発明の製造方法では、目的とするα−ヒドロキシカルボン酸エステルの種類等に応じて、上記1,2−ジオール及びアルコールの種類を適宜選択すれば良い。例えばグリコール酸エステルを合成する場合は、1,2−ジオールとしてエチレングリコール、アルコールとしてメタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール等の1級アルコールを用いれば良い。あるいは、1,2−ジオールだけを用い、かつ、その1,2−ジオールとしてエチレングリコールだけを用いた場合には、グリコール酸2−ヒドロキシエチルエステルを製造することができる。
【0021】
1,2−ジオールとアルコールを原料とする場合は、反応割合は特に限定されないが、1,2−ジオールに対するアルコールのモル比は通常1:2〜50程度であり、1:3〜20程度がより好ましい。上記範囲内とすることにより、より効率的にα−ヒドロキシカルボン酸エステルを合成することが可能になる。
【0022】
▲3▼ 触媒
本発明は、(i)1,2−ジオールどうし又は(ii)1,2−ジオールとアルコールとの反応を酸素の存在下に行うことを必須とするが、この反応は触媒の存在下で行っても良い。
【0023】
(a)触媒活性成分
触媒の種類は、特に限定されるものではないが、活性成分である金属が担体に担持された触媒、即ち担持型金属触媒を用いるのが好ましい。
【0024】
活性成分である金属は、特に制限されないが、好ましくは貴金属であり、例えば、金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、白金等を例示することができ。これらの中でも、金、パラジウム、ルテニウム等がより好ましく、特に金が好ましい。
【0025】
触媒は、上記の貴金属を必須成分として含み、更に、貴金属以外にも、第4周期から第6周期の2B族、3B族、4B族、5B族及び6B族並びに第4周期の8族からなる群から選択される少なくとも1種の元素(以下、これらの元素を「第二元素」ということがある。)を含む触媒が挙げられる。第二元素の具体例として、例えばZn, Cd, Hg等の2B族;Ga, In, Tl等の3B族;Ge, Sn, Pb等の4B族;As, Sb, Bi等の5B族;Se, Te, Po等の6B族;Fe, Co, Ni等の8族等を例示することができる。
【0026】
触媒を用いる場合には、例えばAuからなる微粒子及び/又は周期表第4から第6周期の2B族、3B族、4B族、5B族、6B族及び第4周期8族の少なくとも1種の第二元素とAuとからなる微粒子が担体上に担持されている触媒を好適に用いることができる。
【0027】
活性成分である金属は、上記貴金属を単独で含んでいても良く、2種以上を含んでいても良い。2種以上の貴金属を含む場合には、本発明の効果が得られる限り、一部又は全部が合金、金属間化合物等を形成していても良い。
【0028】
また、活性成分である金属が、貴金属と第二元素とを含む場合には、本発明の効果が得られる限り、一部又は全部が合金、金属間化合物等を形成していても良い。貴金属及び第二元素は、通常微粒子として担体に担持されている。本発明において用いる触媒は、本発明の効果を妨げない範囲内で貴金属及び第二元素以外の他の元素又は不純物が含まれていても良い。
【0029】
活性成分である金属微粒子の粒子径は、所定の触媒活性が得られる限り限定的ではないが、平均粒子径は、通常10nm以下程度、好ましくは6nm以下程度、より好ましくは5nm以下程度、特に好ましくは1〜5nm程度である。この範囲内に設定すれば、より確実に優れた触媒活性を得ることができる。平均粒子径の下限値は特に制限されないが、物理的安定性の見地より約1nm程度とすれば良い。
【0030】
なお、本発明における金属粒子の平均粒子径は、担体上の金属粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)による観察により任意に選んだ120個のうち、(1)大きい順に上から10個及び(2)小さい順に下から10個の合計20個を除いた100個の粒子径の算術平均値を示す。また、金属粒子の粒子径分布の極大値は、1〜6nm程度、特に1〜5nm程度の範囲にあることが好ましい。粒子径の分布は狭い方が好ましく、上記120個の粒子径の標準偏差(Standard Deviation)が2以下程度、特に1.5以下程度であることが好ましい。
【0031】
触媒における金属活性成分の担持量は、担体の種類等に応じて適宜決定すれば良いが、通常は担体100質量部に対して0.01〜20質量部程度、特に0.1〜10質量部程度とすることが好ましい。
【0032】
(b)担体
担体としては、従来から触媒担体として用いられているものを使用することができ、特に限定されない。例えば、市販品を使用することができる。また、公知の製法によって得られるものも使用できる。例えば、金属酸化物(シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、マグネシア等)、複合金属酸化物(シリカ・アルミナ、チタニア・シリカ、シリカ・マグネシア等)、ゼオライト(ZSM−5等)、メソポーラスシリケート(MCM−41等)等の無機酸化物;天然鉱物(粘土、珪藻土、軽石等);炭素材料(活性炭、黒鉛等)の各種担体を挙げることができ、これらの中では無機酸化物が好ましい。
【0033】
本発明では、無機酸化物担体は多孔質であることが好ましく、特にその比表面積(BET法)が50m/g以上程度のものが好ましく、100m/g以上程度であることがより好ましく、100〜800m/g程度のものが特に好ましい。担体の形状・大きさは限定的でなく、最終製品の用途等に応じて適宜決定すれば良い。
【0034】
(c) 触媒の製造方法
触媒の製造方法は、上記のような担持体が得られる限りその制限はない。例えば、所望の金属及びその化合物の少なくとも1種を含む担体を熱処理することによって得ることができる。金属の化合物は、水酸化物、塩化物、カルボン酸塩、硝酸塩、アルコキサイド、アセチルアセトナート塩等のいずれであっても良い。
【0035】
具体的には、例えば、金微粒子を担持する場合は、金微粒子を担体上に固定化できる方法であれば特に限定されない。担持方法自体は、例えば共沈法、析出沈殿法、含浸法、気相蒸着法等の公知の方法を利用できるが、共沈法、析出沈殿法等を好適に使用でき、特に析出沈殿法が好ましい。析出沈殿法により第一工程で用いることができる触媒を製造する場合、例えば、金を含む水溶性化合物の水溶液と無機酸化物担体とを混合した後、回収された固形分を焼成することによって触媒を得ることができる。
【0036】
また、担体に2種以上の金属を担持させる場合、担持させる順序も限定的でなく、いずれが先であっても良いし、また同時であっても良い。すなわち、(A)貴金属を担体に担持した後、第二元素を担持する方法、(B)第二元素を担体に担持した後、貴金属を担持する方法、(C)貴金属と第二元素とを同時に担体に担持する方法のいずれであっても良い。
【0037】
▲4▼ 反応条件
本発明では、1,2−ジオールとアルコールとの反応を、酸素の存在下に、必要に応じて担持型金属触媒を用いて行い、α−ヒドロキシカルボン酸エステルを得る。
【0038】
上記反応は、液相反応、気相反応等のいずれであっても良い。酸素としては、分子状酸素を用いるのが好ましい。酸素(酸素ガス)は、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、二酸化炭素ガス等の不活性ガスで希釈されていても良い。また、空気等の酸素含有ガスを用いることもできる。酸素含有ガスの反応系への供給方法は特に限定されず、公知の方法を採用できる。特に、液中へのバブリング等を好適に用いることができる。
【0039】
上記反応の形態としては、連続式、回分式、半回分式等のいずれであっても良く、特に限定されるものではない。触媒は、反応形態として回分式を採用する場合には、反応装置に原料とともに一括して仕込めば良い。また、反応形態として連続式を採用する場合には、反応装置に予め上記触媒を充填しておくか、あるいは反応装置に原料とともに触媒を連続的に仕込めば良い。触媒は、固定床、流動床、懸濁床等のいずれの形態であっても良い。
【0040】
第一工程の反応において触媒を用いる場合の使用量は、原料である1,2−ジオール又はアルコールの種類、触媒の種類、反応条件等に応じて適宜決定すれば良いが、通常、1,2−ジオール1モルに対して1〜100g程度、好ましくは2〜60g程度である。
【0041】
反応時間は特に限定されるものではなく、設定した条件により異なるが、通常は反応時間又は滞留時間(反応器内滞留液量/液供給量)として0.5〜20時間程度、好ましくは1〜10時間程度とすれば良い。
【0042】
反応温度、反応圧力等の諸条件は、原料である1,2−ジオール又はアルコールの種類、触媒の種類等に応じて適宜決定すれば良い。反応温度は、通常0〜200℃程度、好ましくは50〜180℃程度とすれば良い。この範囲内の温度に設定することにより、いっそう効率的に反応を進行させることができる。反応圧力は、減圧、常圧又は加圧のいずれであっても良いが、通常は0.05〜10MPa(ゲージ圧)程度、特に0.1〜5MPa程度の範囲内が好適である。また、反応系のpHは、副生成物抑制等の見地よりpH2〜9程度とすることが望ましい。pH調節のために、例えばアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物(カルボン酸塩)を反応系への添加剤として使用することもできる。
【0043】
上記反応は、溶媒の存在下で実施することができる。溶媒を用いることにより、目的とするα−ヒドロキシカルボン酸エステルを効率良く製造できる場合がある。使用できる溶媒としては、原料である1,2−ジオール又はアルコールを溶解することができ、反応条件下で自ら反応しにくいものであればその種類は特に限定されるものではなく、原料アルコールの種類、反応条件等に応じて適宜選択すれば良い。例えば、水のほか、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、二塩化エチレン等のハロゲン含有化合物等を挙げることができる。溶媒の使用量は、溶媒の種類、アルコールの種類、触媒の種類等に応じて適宜設定すれば良い。
(2)蒸留工程
上記の反応後は、必要に応じて反応系から触媒を分離した後、生成したカルボン酸エステルを公知の分離精製手段等を用いて回収すれば良い。触媒を用いた場合の分離方法は、公知の方法に従えば良い。例えば、反応系が触媒(固形分)と反応生成物(液状成分)からなる場合は、ろ過、遠心分離等の公知の固液分離方法を用いて触媒と反応生成物を分離することができる。
【0044】
蒸留の方法としては、公知の蒸留(精留)の操作条件等を適宜採用することができる。
【0045】
蒸留装置としては、基本的には公知の蒸留塔(精留塔)を使用して蒸留を好適に行うことができる。具体的には、多段式蒸留塔等のような回分式(バッチ式)蒸留装置又は連続式蒸留装置が好適である。多段式蒸留塔である場合における蒸留塔の段数は、特に限定されるものではないが、塔頂(最上段)と塔底(最下段)とを除いた段数が3段以上であることが好ましい。このような蒸留塔としては、例えばラシヒリング、ポールリング、インタロックスサドル、ディクソンパッキング、マクマホンパッキング、スルーザーパッキング等の充填物が充填された充填塔;泡鐘トレイ、シーブトレイ、バルブトレイ等のトレイ(棚段)を使用した棚段塔等、一般に用いられている蒸留塔が好適である。また、棚段と充填物層とを併せ持つ複合式の蒸留塔も採用することができる。なお、上記の段数とは、棚段塔においては棚段の数を示し、充填塔においては理論段数を示す。
【0046】
蒸留塔の構成としては特に制限されず、リボイラ、コンデンサ等を備えた一般的な構成を採用できる。蒸留塔の本数は限定的でなく、1本又は2本以上の蒸留塔が使用できる。
【0047】
蒸留塔における操作圧力は、混合物の組成、加熱源・冷却源の温度等によって適宜決定されるものであり、特に制限されるものではないが、副反応の抑制という観点から減圧下で行うことが好ましい。また、蒸留塔の塔頂における還流比は限定的ではないが、好ましくは0.1〜50、より好ましくは0.3〜30とすれば良い。その他の操作条件は、公知の蒸留条件に従えば良い。
【0048】
蒸留中に起こる副反応は、α−ヒドロキシカルボン酸エステルの加水分解、複数のα−ヒドロキシカルボン酸エステル分子からの脱アルコールによるオリゴマー化、α−ヒドロキシカルボン酸エステルと他のアルコール(例えば、1,2−ジオール)とのエステル交換反応等が挙げられる。これらは、いずれも酸によって触媒される反応であるため、カルボン酸が共存するとこれらの副反応が促進される。これらの副反応を以下に示す▲1▼〜▲3▼のいずれかの方法を採用することによって抑制することができる。
【0049】
▲1▼ 第1発明
第1発明では、蒸留前の反応生成物のpH(25℃におけるpHをいう。)及び/又は蒸留系内のpH(蒸留中のpHをいう。)を5〜9(好ましくは6〜8)の範囲内に調整する。pHの調整は、公知のpHの調整方法を採用することができる。例えば、塩基性化合物又はその溶液を添加することによってpH調整を行うことができる。塩基性化合物としては、後記▲2▼で挙げた化合物が使用できる。
【0050】
上記の蒸留系内のpHは、蒸留塔を使用する場合は蒸留塔内にpHモニターを設置し、それによってモニターしながらpHを制御することができる。また、蒸留塔内に組成分布が生じる場合があるが、このような場合は塔底液のpHを上記範囲内に制御することが望ましい。
【0051】
▲2▼ 第2発明
第2発明では、蒸留前の反応生成物及び/又は蒸留系内に塩基性化合物を添加する。塩基性化合物としては、例えばアルカリ金属(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム等)等の水酸化物、炭酸塩又は重炭酸塩;メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン等の第一アミン類;ジメチルアミン、ジエチルアミン等の第二アミン類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン等の第三アミン類のほか、アンモニア等が挙げられる。これらは1種又は2種以上で使用することができる。この中でも、1)アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩及びは重炭酸塩ならびに2)アルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩及び重炭酸塩の中から選ばれた少なくとも1種が好ましい。
【0052】
これらは、反応生成物に応じ、適宜設定された濃度を有する溶液の形態で使用することも可能である。塩基性化合物の添加量は特に限定されず、反応生成物中のカルボン酸を低減ないしは除去できる添加量となるように適宜設定することができる。
【0053】
塩基性化合物(例えば、アルカリ土類金属の水酸化物や炭酸塩)を添加した場合、生成したカルボン酸塩が析出することがある。このため、蒸留前の反応生成物に塩基性化合物を添加する場合は、蒸留する前にろ過するによって析出物を除去しても良い。また、蒸留系内で析出物が生じた場合は、ストレーナー等を設ければ良い。この場合、例えば蒸留塔の塔底とリボイラのラインにストレーナーを設けることができる。
【0054】
▲3▼ 第3発明
第3発明では、蒸留前の反応生成物及び/又は蒸留系内に塩基性化合物を添加することにより当該反応生成物及び/又は蒸留系内のpHを5〜9(好ましくは6〜8)に調整する。第2発明では塩基性化合物の添加量の限定がないのに対し、第3発明では反応生成物及び/又は蒸留系内のpHを5〜9に調整するために塩基性化合物を添加するものである。pHの調整法、塩基性化合物の使用等は、第1発明又は第2発明と同様にすれば良い。
【0055】
また、これら本発明の蒸留は、下記の方法(a)〜(c)の少なくとも1種を適宜組み合わせて実施することもできる。これらの方法を適用することによって、グリコール酸エステルの副反応等をより効果的に抑制することができる。
【0056】
(a)蒸留に際し、α−ヒドロキシカルボン酸エステルを含む留分をサイドカット方式により回収する方法が適用できる。サイドカット方式自体は、公知の方法に従って実施することができる。
【0057】
(b)蒸留に際して、混合物(混合液)を薄膜状にして加熱面と接触させることにより、混合物の加熱を行う方法が適用できる。かかる加熱は、公知の液膜式蒸発缶等を用いて実施することができる。
【0058】
(c)蒸留系内にアルコールを供給しながら蒸留を行う方法を適用できる。この場合、上記アルコールが、当該グリコール酸エステルのエステル基−C(=O)OR(但し、Rは炭化水素基)に対応するアルコールR−OHであることが望ましい。例えば、グリコール酸エステルとしてグリコール酸メチルを用いる場合、上記アルコールとしてメタノールを供給することが好ましい。
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、所定のpH調整及び/又は塩基性化合物の添加を蒸留前の反応生成物及び/又は蒸留系内に対して行うので、副反応生成物として存在し得るカルボン酸の中和を行うことができる。これらのカルボン酸はα−ヒドロキシカルボン酸エステルの副反応の酸触媒として作用するものであり、その中和によってカルボン酸を除去又は低減できる。その結果、α−ヒドロキシカルボン酸エステルの副反応を抑制ないしは防止でき、効率的なα−ヒドロキシカルボン酸エステルの製造・回収が可能となる。
【0060】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴を一層明確にする。但し、本発明の範囲は、実施例の範囲に限定されるものではない。なお、実施例における物性の測定等は、次のような方法で実施した。
(1)金属微粒子の担持量
蛍光X線分析により測定した。
(2)金属微粒子の平均粒子径
透過型電子顕微鏡(TEM)(装置名「HF−2000」日立製作所、加速電圧200kV)で粒子径を観察し、付属のX線分析装置により粒子の成分分析を行った。
(3)反応生成物の定量
ガスクロマトグラフィー及び/又は液体クロマトグラフィーにより、反応液中の反応生成物の成分を定量分析した。
【0061】
参考例1
Au/TiO−SiO触媒を用い、酸化的エステル反応を行った。
(1)触媒の調製
共沈法により調製されたTiO−SiO(モル比TiO:SiO=5:95、焼成温度600℃、粒度50〜250メッシュ)を担体として用いた。
【0062】
濃度20mmol/Lのテトラクロロ金酸水溶液40Lを65〜70℃の範囲で0.5N水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH7に調節した。この水溶液に上記TiO−SiO担体1kgを攪拌下に投入し、温度65〜70℃に保ちながら1時間攪拌を続けた。その後、静置して上澄液を除去し、残った金固定化物にイオン交換水20Lを加えて室温で5分間攪拌した後、上澄液を除去するという洗浄工程を3回繰り返した。ろ過により得られた金固定化物を110℃で8時間乾燥し、さらに空気中400℃で3時間焼成することにより、TiO−SiO担体上に金が担持された触媒(Au/TiO−SiO)を得た。
【0063】
この触媒における金の担持量は、担体に対して5.4質量%であった。また、この触媒に担持された金微粒子の粒子径を観察したところ、ほとんど全て6nm以下の粒径で高分散しており、2〜3nm付近に極大を持つ狭い粒子径分布を示し、平均粒子径は6nm以下であった。
(2)酸化的エステル反応
前記(1)で得られたAu/TiO−SiO触媒を用い、酸化的エステル反応によりグリコール酸メチルの合成を行った。
【0064】
回転式攪拌機及びコンデンサを備えた100Lのオートクレーブに、エチレングリコール9.6kg、メタノール50.0kg及び上記触媒4.3kgを仕込み、窒素で系内を0.7MPaまで加圧した。その後、系内の温度を120℃に昇温し、圧力が1MPaになるように調整した。圧力を1MPaに保ったまま、空気を2.5Nm/hrの流量で液中に吹き込み、120℃で8時間反応を行った。
【0065】
反応終了後、反応液を冷却し、反応液を取り出した。反応液中の触媒をろ過した後、反応液の内容物の分析をガスクロマトグラフィー及び液クロマトグラフィーで行った。反応液には、グリコール酸メチル7.5kg、エチレングリコール3.5kg、メタノール43.2kg、水4.9kg及びグリコール酸0.7kg含まれていた。エチレングリコールの転化率は63モル%、エチレングリコール基準のグリコール酸メチルの収率は53.8モル%であった。
【0066】
実施例1
参考例1で得られた反応液の蒸留を行った。
【0067】
上記反応液3.5kgをビーカーにとり、反応液のpHを測定すると3.2であった。次いで、反応液を撹拌しながら、水酸化ナトリウム3質量%含むメタノール溶液を滴下し、pH7.0に調整した。使用した上記メタノール溶液は700gであった。
【0068】
次に、20段のガラス製オルダーショウ式蒸留塔を備えた容量5Lのフラスコに上記液を仕込み、バッチ蒸留を行った。塔頂圧力13.3kPa、還流比1でメタノール及び水を留出させた。塔頂温度は、蒸留開始時25℃、蒸留終了時53℃、塔底温度は最終的に117℃まで上昇した。
【0069】
10段のガラス製オルダーショウ式蒸留塔を備えた容量2Lのフラスコに上記液を仕込み、バッチ蒸留を行った。塔頂圧力2.7kPa、還流比1でグリコール酸メチルを留出させた。塔頂温度は45℃であった。留出した留分は727gであった。組成は、グリコール酸メチル99.0質量%、メタノール1.0質量%であった。
【0070】
比較例1
実施例1のpH調整は行わず、pH3.2の反応液をそのまま蒸留した。蒸留条件は、実施例1と同様にした。グリコール酸メチルを留出させている途中で塔底液の粘度が上昇し、安定に蒸留できなくなったため、蒸留を中断した。留出した留分は489gであった。組成は、グリコール酸メチル99.0質量%、メタノール7.5質量%、水2.5質量%であった。

Claims (3)

  1. 酸素の存在下において、(i)1,2−ジオールどうし又は(ii)1,2−ジオール及びアルコールを反応させることによりα−ヒドロキシカルボン酸エステルを製造する方法であって、上記反応により得られた反応生成物を蒸留する工程を有し、蒸留前の反応生成物及び/又は蒸留系内のpHを5〜9の範囲内に調整することを特徴とするα−ヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。
  2. 酸素の存在下において、(i)1,2−ジオールどうし又は(ii)1,2−ジオール及びアルコールを反応させることによりα−ヒドロキシカルボン酸エステルを製造する方法であって、上記反応により得られた反応生成物を蒸留する工程を有し、蒸留前の反応生成物及び/又は蒸留系内に塩基性化合物を添加することを特徴とするα−ヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。
  3. 酸素の存在下において、(i)1,2−ジオールどうし又は(ii)1,2−ジオール及びアルコールを反応させることによりα−ヒドロキシカルボン酸エステルを製造する方法であって、上記反応により得られた反応生成物を蒸留する工程を有し、蒸留前の反応生成物及び/又は蒸留系内に塩基性化合物を添加することにより当該反応生成物及び/又は蒸留系内のpHを5〜9に調整することを特徴とするα−ヒドロキシカルボン酸エステルの製造方法。
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