JP2004130985A - 自動車ルーフ取り付け構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ルーフパネル1 をアルミニウム合金パネルとするとともに、ルーフパネル1 側とサイドメンバアウタパネル6 側とに各々張り出したフランジ25、26を一体に設けたアルミニウム合金製中空形材からルーフサイドレール20を構成する一方、サイドメンバアウタパネル6 を鋼板パネルとし、前記ルーフパネル1 の側縁部1aと前記中空形材のルーフパネル側フランジ25とを水密に接合し、更に、前記サイドメンバアウタパネルの上端部6aと前記中空形材の辺部23とを接合するとともに、前記サイドメンバアウタパネル下端部6bと前記中空形材のサイドメンバアウタパネル側フランジ26とを接合したことである。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム合金を用いた自動車ルーフ取り付け構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
周知の通り、現状の自動車のルーフ (屋根) の多くは、鋼製パネルからなっている。しかし、近年、排気ガス等による地球環境問題に対して、自動車などの輸送機の車体の軽量化による燃費の向上が追求されている。このため、特に、自動車の車体に対し、従来から使用されている鋼板パネルに代わって、より軽量なアルミニウム合金製パネル乃至パネルの取り付け構造が提案乃至適用されつつある(例えば、特許文献1参照) 。ルーフパネルにアルミニウム合金パネルを適用した場合、太陽放射による侵入熱量の遮熱性を高めることができるなどの利点もある(例えば、特許文献2参照) 。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−132855号公報 (第1 頁)
【特許文献2】
特開2002ー234460号公報 (第1 頁)
【0004】
また、このルーフパネルとは別に、ルーフパネルの側縁部と接合される、車体の両側にて前後方向に延在するルーフサイドレールに、アルミニウム合金の押出中空形材を適用して軽量化するとともに、この中空形材に中リブ (内側壁部) を設けた断面日型形状として、衝撃吸収性を持たせることも提案されている(例えば、特許文献3参照) 。
【0005】
【特許文献3】
特開平7−132855号公報 (第1 頁、図1)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、自動車のルーフパネルに対してアルミニウム合金パネルを適用する場合、ルーフに要求される張り剛性の確保などの他に、特に、熱ひずみ対策が必要である。
【0007】
アルミニウム合金は鋼に比して線膨張係数が2 倍ある、このため、特に、面積が比較的大きく、3.0mm 以下に薄肉化されたアルミニウム合金製のルーフパネルでは、ルーフパネルが高温に晒された際に、アルミニウム合金パネルの膨張変形が、特に大きくなる可能性がある。例えば、自動車車体組み立て後の車体のED塗装では、180 ℃×20分などの塗装焼き付け加熱処理が行なわれるが、このような、比較的低温の加熱によっても、アルミニウム合金製ルーフパネルの膨張変形が大きくなり、熱ひずみが生じる。
【0008】
そして、このアルミニウム合金製ルーフパネルの熱ひずみが生じた場合、特に、車体前後方向に延在するルーフパネルの側縁部 (フランジ部) の固定部分に面ひずみが生じる。後述する通り、ルーフパネルの中央部や車体前後方向では、車体構造材と比較的柔軟に接合されているために、上記ルーフパネルの車体幅方向に在る側縁部のような面ひずみの問題は生じにくい。これに対し、上記ルーフパネルの側縁部では、後述する通り、比較的剛に接合されているために、このような熱膨張変形による面ひずみが生じやすい。
【0009】
上記ルーフパネルの側縁部に、このような面ひずみが生じた場合、ルーフパネル側縁部と、車体の両側にて前後方向に延在するルーフサイドレールやサイドメンバアウタパネルとの取り付け部に、口開き部分が生じるなどの変形が起こってしまう。自動車車体組み立て後に、このような変形が生じた場合、変形が著しい場合には、自動車乃至車体自体が商品価値を失うこととなりかねない。
【0010】
したがって、本発明の目的は、アルミニウム合金製ルーフパネルの熱ひずみが生じた場合でも、ルーフパネル側縁部と、ルーフサイドレールやサイドメンバアウタパネルとの取り付け部に変形が生じない自動車ルーフ取り付け構造を提供しようとするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、本発明自動車ルーフ取り付け構造の要旨は、車体前後方向に延在するルーフパネルを、車体の両側にて前後方向に延在するルーフサイドレールと、サイドメンバアウタパネルとに取り付ける構造において、ルーフパネルをアルミニウム合金パネルとするとともに、ルーフパネル側とサイドメンバアウタパネル側とに各々張り出したフランジを一体に設けたアルミニウム合金製中空形材からルーフサイドレールを構成する一方、サイドメンバアウタパネルを鋼板パネルとし、前記ルーフパネルの側縁部と前記中空形材のルーフパネル側フランジとを水密に接合し、更に、前記サイドメンバアウタパネルの上端部と前記中空形材の辺部とを接合するとともに、前記サイドメンバアウタパネル下端部と前記中空形材のサイドメンバアウタパネル側フランジとを接合することで、前記ルーフパネルとサイドメンバアウタパネルとを、前記ルーフサイドレールを介して、一体に接合したことである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明自動車ルーフ取り付け構造の実施態様説明の先立ち、以下に、前提となる、自動車アルミニウム合金製ルーフパネル構造の実施態様について具体的に説明する。
【0013】
図3 は自動車車体における代表的なルーフパネル1 の構造を示し、図3(a)はルーフパネル全体の斜視図、図3(b)は(a) のR a 方向の断面図、図3(c)は(a) のR b 方向の断面図である。図3(a)、(b) において、1aはルーフパネル1 の両側 (車体幅方向側) に在る側縁部 (フランジ部) である。ルーフパネル1 は、通常、ルーフパネル中央部の車体左右方向の曲率 R aと車体前後方向の曲率R b を有するよう、図3(b)や図3(c)に示した略箱型で一定の曲率を持った形状に設計される。そして、図3(a)に示すように、ルーフパネルリインフォースメント2a、2b、2cなどのルーフ補強材を介し、また、ウインドシールドヘッダパネル3 やバックウインドウフレームアッパ4 などの付属フレームやパネルが設けられた上で、車体側に取り付けられる。なお、本発明で言うルーフパネル中央部とは、ルーフパネル平面における中心点のことであり、図3 において矢印で示している R aとR b との矢印交差部である。
【0014】
図4 の自動車車体5 の斜視図、図5 、6 、7 の断面図を用いて、従来のルーフパネル1(図1)の自動車車体側への取り付け構造を説明する。図4 におけるルーフパネル1 の両側面G−G 部やH−H 部 (側縁部、フランジ部) は、図5 に断面図で示すように、鋼製のサイドメンバアウタパネル6 や鋼製のサイドメンバインナパネル7 を介して、鋼製のルーフサイドレール8 と、図の点線で囲んだ部分10でボルトやリベットなどの機械的接合あるいは溶接接合 (スポット溶接等) されている。
【0015】
図4 におけるルーフパネル1 の車体前後側のK−K 部は、一例として、図6 に断面図で示すように、ウインドシールドヘッダパネル3 と、図の点線で囲んだ部分10で機械的接合乃至溶接接合、あるいは図の点線で囲んだ部分11で、熱ひずみを抑制するために、熱硬化型樹脂ではなく、熱発泡型樹脂やマスチック接着剤からなる比較剪断強度の低い接着剤で接合されている。また、ルーフパネル1 の中央部は、一例として、図7 に断面図で示すように、鋼製のルーフパネルリインフォースメント2 と図の点線で囲んだ部分11で、熱ひずみを抑制するために、熱硬化型樹脂ではなく、熱発泡型樹脂やマスチック接着剤からなる比較剪断強度の低い接着剤で接合されている。
【0016】
この内、ルーフパネル1 の側縁部の取り付け構造である、図5(a)のより詳細な構造を図8 に断面図で示す。図8 において、ルーフパネル1 のフランジ部 (側縁部)1a は、異材接合による電食を防止するために、熱硬化製樹脂などの中間樹脂層13を介して、鋼製のサイドメンバアウタ6 や鋼製のルーフサイドレール8 と、セルフピアシングリベットや通常のリベット12などによって、一体に接合されている。このルーフパネル1 の取付部には、更に、水密シール用のシーラー(シール用樹脂材)14や、外装部材15が設置される。
【0017】
ただ、これら、図5(a)や図8 に示したようなルーフパネル1 の両側縁部 (両フランジ部) の取り付け構造では、アルミニウム合金製のルーフパネルと、鋼製のサイドメンバアウタ6 や鋼製のルーフサイドレール8 とでは、前記した線膨張係数が違う。これによって、車体が加熱された際に、ルーフパネルと、サイドメンバアウタ6 や鋼製のルーフサイドレール8 とでは、膨張量が異なって、アルミニウム合金ルーフパネル側に大きなひずみが生じる。このため、車体前後方向に延在するルーフパネルの側縁部 (フランジ部)1a の固定部分に生じる面ひずみ量も大きくなって、ルーフパネル側縁部1aと、車体の両側にて前後方向に延在するルーフサイドレールやサイドメンバアウタパネルとの取り付け部に、口開き部分が生じるなどの変形が起こってしまう。
【0018】
これに対し、以下に、図1(a)、(b) を用いて、本発明自動車ルーフ取り付け構造の実施態様を説明する。この図1 は、図4 の自動車車体5 の斜視図における、ルーフパネル1 の両側面G−G 部やH−H 部の断面図に相当する。本発明では、図1(a)、(b) に車体幅 (横) 方向での断面図で各々示す通り、車体前後方向に延在するルーフパネル1 をアルミニウム合金パネルとするとともに、車体の両側にて前後方向に延在するルーフサイドレール20もアルミニウム合金製略矩形中空形材として、このアルミニウム合金同士のルーフパネル1 とルーフサイドレール20とを直接乃至水密シール用の樹脂層13を介して接合するようにする。
【0019】
このように、ルーフパネル1 とルーフサイドレール20とをアルミニウム合金同士として、互いに接合することで、互いの線膨張率を同じとする。これによって、鋼材との線膨張率の違いによって、座屈強度が低いアルミニウム合金ルーフパネル側に大きなひずみが生じるのを抑制して、前記ルーフパネル側縁部1aの取り付け部に、口開き部分が生じるなどの変形が起こるのを防止する。
【0020】
なお、サイドメンバアウタパネル6 は、剛性や耐デント性が必要であるため、アルミニウム合金製とする必要はなく、鋼板パネル製とする。サイドメンバアウタパネル6 を鋼板パネル製とすることで車体の外形状デザインが容易となる。例えば、前記特許文献3 のように、サイドメンバアウタパネル6 をやめて、車体上側部をアルミニウム合金押出中空形材製ルーフサイドレールのみとした場合、アルミニウム合金中空形材の曲げ加工可能な曲げ半径には限界があるため、車体前後方向の車体形状の曲率を大きくできず、車体の外形状デザインが限られてしまう。
【0021】
これに対し、本発明のように、ルーフサイドレール20のみをアルミニウム合金製中空形材とした場合、図2 に、図1(a)、(b) の車体前後方向での断面図で示すように、車体の外形状デザインを決める鋼製サイドメンバアウタパネル6 の曲げ半径R1を大きくする一方、逆に鋼製サイドメンバアウタパネル6 の空間内に収容されるルーフサイドレール20の方の曲げ半径R2を、曲げ加工可能に小さくすることができる。したがって、車体の外形状デザインが限られることがない。
【0022】
一方、ルーフサイドレール20を構成するアルミニウム合金製略矩形中空形材には、ルーフパネル1 側に張り出したフランジ25と、サイドメンバアウタパネル6 側とに各々張り出したフランジ26とを一体に設ける。
【0023】
そして、ルーフパネル1 の側縁部1aと、中空形材 (ルーフサイドレール)20 のルーフパネル1 側フランジ25とを、前記した通り水密に構成した上で、セルフピアシングリベットや通常のリベットあるいはボルト12などの機械的接合か、レーザー、スポットなどの溶接接合、更には接着剤等の適宜の手段、これら適宜の手段の組み合わせによって、一体に接合する。
【0024】
この際、ルーフパネル1 と中空形材20とは、同じアルミニウム合金であるので、接合に際しても、前記図8 に示したような鋼製アウタパネル6 とアルミニウム合金製ルーフパネル1 との異材接合での電食の問題は無い。したがって、前記図8 に示したような通常使用されるような中間樹脂層13は必要ない。また、本発明において、中間樹脂層13として前記図8 のような従来の熱硬化型樹脂を用いた場合、却って、ルーフパネル1 の側縁部1aの面ひずみを助長し、本発明効果を相殺することにもつながる可能性がある。言い換えると、前記した従来の図8 の接合構造で、ルーフパネル1 の側縁部1aに面ひずみが生じるのは、この剪断強度の高い熱硬化型樹脂を用いて剛体接合している点にも一因があると考えられる。即ち接合強度を高くするために従来から使用されている、エポキシ系あるいはウレタン系などの剪断強度の高い熱硬化型樹脂を用いて接合した場合、車体の加熱により、前記口開き変形部分が生じた際に、熱硬化型樹脂が熱硬化してしまう。このため、前記口開き変形部分が残されたままで、ルーフサイドレールやサイドメンバアウタパネルとの取り付け部が接合、固定される可能性が高い。
【0025】
このため、上記接合部分にシール効果を持たせるために中間樹脂層13を設けるのであれば、前記面ひずみを抑制するために、熱硬化型樹脂ではなく、熱発泡型樹脂あるいはマスチック接着剤からなる比較剪断強度の低い樹脂を用いることが好ましい。例えば、この中でも、剪断強度がJIS K6850 による試験方法で2MPa以下の引張剪断強度とした樹脂を用いた場合、前記車体の加熱により、樹脂は熱発泡して、ルーフパネルフランジ部1aの取り付け部を比較的柔らかく接合する。このため、前記車体の加熱により、アルミニウム合金ルーフパネル側に熱ひずみが生じた場合でも、この取り付け部によって、ルーフパネルの熱による伸縮を吸収して、前記ルーフパネルフランジ部1aに口開き部分が生じるなどの変形が起こるのを防止乃至抑制する。また、水密シール用のシーラー14にも、同じく、熱発泡型樹脂あるいはマスチック接着剤からなる比較剪断強度の低い樹脂を用いることが好ましい。このルーフパネルの取付部には、更に、外装部材15が設置される点は、従来と同じである。
【0026】
本発明では、更に、図1(a)に示すように、サイドメンバアウタパネル6 の上端部6aと、中空形材の矩形辺 (辺部)23 とを、セルフピアシングリベットや通常のリベット16などによって接合する。このサイドメンバアウタパネル6 の上端部6aと中空形材の辺部との接合は、上記辺部23に直接接合する他、上記辺部23を上方に張り出したようなフランジを設け( 図示せず) 、このフランジとサイドメンバアウタパネル6 の上端部6aとを同様に接合するようにしても良い。
【0027】
サイドメンバアウタパネル6 は、また、図1(a)に示すように、その下端部6bと、中空形材のサイドメンバアウタパネル6 側フランジ26とを、例えばブラインドリベット17によって接合されている。
【0028】
なお、図1(a)の態様では、図5(a)のようなサイドメンバインナパネル7 を設けていない。本発明では、サイドメンバインナパネル7 を設けず、ルーフサイドレール20をサイドメンバインナパネル7 の代わりとして良いし、その方が、車体上部構造が軽量化される。但し、車体衝突時に乗員の頭部保護などのために、サイドメンバインナパネル7 を設けても良い。この場合、図1(b)に示すように、サイドメンバインナパネル7 は、ルーフパネル1 の側縁部1aと中空形材 (ルーフサイドレール)20 のフランジ25との接合部において機械的接合手段12や、サイドメンバアウタパネル6 の下端部6bと中空形材のフランジ26との接合部において例えばブラインドリベット17によって、図1(a)と同様に一体に接合する。
【0029】
このように、アルミニウム合金製ルーフパネル1 と、鋼製サイドメンバアウタパネル6 とを、アルミニウム合金製ルーフサイドレール20を介して、一体に接合したことで、アルミニウム合金ルーフパネル1 側に大きな熱ひずみが生じるのを抑制して、ルーフパネル側縁部1aの取り付け部に、口開き部分が生じるなどの変形が起こるのを防止できる。また、ルーフサイドレール20をアルミニウム合金製とすることによって、ルーフパネル1 をアルミニウム合金製とすることと合わせて、車体上部の軽量化が図れ、自動車の操作性、運転性が向上する。
【0030】
ルーフサイドレール20を構成するアルミニウム合金製中空形材は、図1 のように、略矩形の4 辺を構成する横壁21、22と、縦壁23、24から構成される他、中リブ (内部壁)27 が設けられて、日型断面を構成し、断面方向の圧壊強度を高めている。中空形材圧壊強度を高めるには、肉厚を厚くする、材料強度を高める等の方法があり、この方法と適宜組み合わせて、中リブの無い日型断面や、中リブを2 本平行に設けた目型断面、互いに十字状に交差させた中リブを設けた田型断面など適宜の断面形状が選択される。また、この中空形材の全体断面形状も、矩形に限らず、丸みを帯びた円形状や楕円形状にするなど、中空形材であれば、車体デザインや設計条件に合わせて、適宜の全体形状が選択される。
【0031】
更に、ルーフパネル1 側に張り出したフランジ25と、サイドメンバアウタパネル6 側とに各々張り出したフランジ26との形状や長さ、あるいは張り出す位置や角度なども、車体デザインや設計条件に合わせて、適宜の形状が選択される。
【0032】
また、アルミニウム合金製ルーフパネル1 、鋼製サイドメンバアウタパネル6 、アルミニウム合金製ルーフサイドレール20、の上記した互いの接合は、上記した機械的な接合以外に、溶接接合 (スポット溶接等) しても良く、これら接合方法を適宜組み合わせても良い。
【0033】
本発明において、ルーフパネル1 はアルミニウム合金板よりなるものの、ルーフパネル本体以外の、上記リインフォースメント2 などのルーフ補強材やルーフ付属フレームやパネルは、必ずしもアルミニウム合金材でなくとも、従来から使用されている鋼材などから適宜構成されて良い。また、前記図4 におけるルーフパネル1 の車体前後側のK−K 部やルーフパネル1 の中央部は、前記図6 や図7 で説明した、従来と同じ接合構造として良い。
【0034】
素材である平板状のアルミニウム合金板は、プレス成形 (絞り) されて、ルーフパネル形状とされる。そして、余分な四周囲周辺部をトリム後、前後、左右から寄せ曲げされて、前記図3(b)や図3(c)に示した略箱型で一定の曲率を持ったルーフパネルとされる。
【0035】
前記プレス成形の加工率は小さいため、素材であるアルミニウム合金板は、あまり加工硬化しない。したがって、ルーフパネルでは、プレス成形時の加工硬化による剛性向上効果は期待できない。このため、ルーフパネルにとって重要な張り剛性K を向上させるためには、(1) ルーフパネルの板厚t を向上させる、(2) ルーフパネル中央部の車体左右方向の曲率 R aと車体前後方向の曲率R b とを小さくする、(3) 意匠ビード等の凹凸を設ける、(4) 自動車車体側への取り付け部の接合剛性を、点溶接から線溶接や面接着に変更して、向上させる、(5) 車体前後方向に延在するビード (凸条、畝) をルーフパネルに設ける、などの方法が適宜採用できる。
【0036】
本発明で用いるルーフパネル用のアルミニウム合金板は、通常、板の製造がしやすく、ルーフパネルへの成形が容易で、強度にも優れたAA乃至JIS 3000系、5000系、6000系等のアルミニウム合金が適宜選択して用いられる。特に、6000系アルミニウム合金は、自動車車体の塗装焼き付け処理条件での人工時効硬化性を有する。このため、高強度を得るのに合金元素量が少なくて済み、そのスクラップを元の6000系アルミニウム合金の溶解原料としてリサイクルできる利点がある。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、アルミニウム合金製ルーフパネルの熱ひずみが生じた場合でも、ルーフパネル側縁部と、ルーフサイドレールやサイドメンバアウタパネルとの取り付け部に変形が生じない自動車ルーフ取り付け構造を提供できる。このため、自動車の軽量化が図れ、自動車へのアルミニウム合金板の用途を大きく拡大するものであり、工業的な価値が大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)、(b)とも、各々本発明に係る自動車ルーフ取り付け構造の一態様を示す車体幅方向の断面図である。
【図2】図1(a)の車体前後方向の断面図である。
【図3】代表的なルーフパネルの構造を示し、図3(a)はルーフパネル全体の斜視図、図3(b)は(a) のR a 方向の断面図、図3(c)は(a) のR b 方向の断面図である。
【図4】自動車車体の斜視図である。
【図5】ルーフパネルの自動車車体側への従来の取り付け構造例を示す断面図である。
【図6】ルーフパネルの自動車車体側への従来の取り付け構造例を示す断面図である。
【図7】ルーフパネルの自動車車体側への従来の取り付け構造例を示す断面図である。
【図8】ルーフパネルの自動車車体側への従来の取り付け構造例を示す断面図である。
【符号の説明】
1:ルーフパネル、2:リインフォースメント、
3:ウインドシールドヘッダパネル、4:バックウインドウフレームアッパ、
5:自動車車体、6:サイドメンバアウタ、7:サイドメンバインナ、
8:ルーフサイドレール、10: 接合部、11: 接合部、12、16、17: 接合具、
13: 中間樹脂層、14: シーラー、15: 外装部材、20: ルーフサイドレール、
21、22: 横壁、23、24: 縦壁、25、26: フランジ、27: 中リブ
Claims (4)
- 車体前後方向に延在するルーフパネルを、車体の両側にて前後方向に延在するルーフサイドレールと、サイドメンバアウタパネルとに取り付ける構造において、ルーフパネルをアルミニウム合金パネルとするとともに、ルーフパネル側とサイドメンバアウタパネル側とに各々張り出したフランジを一体に設けたアルミニウム合金製中空形材からルーフサイドレールを構成する一方、サイドメンバアウタパネルを鋼板パネルとし、前記ルーフパネルの側縁部と前記中空形材のルーフパネル側フランジとを接合し、更に、前記サイドメンバアウタパネルの上端部と前記中空形材の辺部とを接合するとともに、前記サイドメンバアウタパネル下端部と前記中空形材のサイドメンバアウタパネル側フランジとを接合することで、前記ルーフパネルとサイドメンバアウタパネルとを、前記ルーフサイドレールを介して、一体に接合したことを特徴とする自動車ルーフ取り付け構造。
- 前記中空形材に中リブが設けられている請求項1に記載の自動車ルーフ取り付け構造。
- 前記ルーフパネルの側縁部と前記中空形材のルーフパネル側フランジとが樹脂を介して水密に接合されている請求項1または2に記載の自動車ルーフ取り付け構造。
- 前記ルーフパネルが6000系アルミニウム合金板からなる請求項1乃至3のいずれか1項に記載の自動車ルーフ取り付け構造。
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