JP2004130687A - アルミニウム合金ブレージングシート及び熱交換器 - Google Patents

アルミニウム合金ブレージングシート及び熱交換器 Download PDF

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Abstract

【課題】薄肉であっても、高強度であり、かつ冷媒が接触するチューブ内面側と外面側の双方の耐食性が優れたアルミニウム合金ブレージングシート及び熱交換器を提供する。
【解決手段】板厚0.14mm以下のアルミニウム合金からなる芯材1の片面にAl−Si系アルミニウム合金からなるろう材2が形成され、芯材1の他面にアルミニウム合金からなる皮材3が形成されている。ろう材2は、Inを0.01乃至0.08質量%又はZnを0.1乃至0.8質量%含有し、皮材3は、Znを0.5乃至5.0質量%含有し、更に、必要に応じて、Mnを0.3乃至1.2質量%、Siを0.3乃至1.0質量%含有する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のラジエータのチューブ等に使用されるアルミニウム合金ブレージングシート及びそれを伝熱管(チューブ)として使用した熱交換器に関し、特に、高強度であると共に、ラジエータ及びヒータコア用のチューブとして使用された場合に、冷媒(クーラント)が通流する内面側の耐食性が優れており、チューブの薄肉化が可能なろう付用アルミニウム合金ブレージングシート及びそれを使用した熱交換器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、アルミニウム合金製熱交換器の素材として、芯材の片面にろう材を配置し、又は芯材の両面にろう材及び皮材(犠牲材)を配置した種々のブレージングシートが使用されている。そのうち、熱交換器のチューブ部に使用される材料は、特開平11−61306号公報等に開示されているように、芯材には強度を向上させるためにCu又はSi等を添加したAl−Mn系合金を使用し、冷媒が接触するチューブの内面側には、犠牲陽極効果を持たせるために、Znを添加したAl−Zn系合金等からなる皮材を配置する一方、外面側にはAl−Si系合金等のろう材が配置された全体板厚0.23乃至0.3mm程度のブレージングシートが使用されている。このようなブレージングシートからなるチューブは、Al合金製フィン材に形成された孔を挿通するようにフィン材に組み合わされた後、ろう付け加熱により前記ろう材が溶融してチューブがフィン材にろう付けされる。この加熱により、皮材中のZnは芯材に拡散し、皮材中にZnの濃度勾配が形成される状態となる。これにより、チューブ内面側の冷媒に接触する皮材表層ほど電位が低く、芯材側のブレージングシート中央に向かうほど電位が高くなる電位分布状態が皮材に形成される結果、チューブ使用時において、チューブ内面からの腐食が内面側表層に止まり、芯材まで進展しないという所謂犠牲陽極効果が得られる。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−61306号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年、熱交換器の軽量化の要求から、使用されるブレージングシートも板厚の薄い材料が求められ、その板厚は従来よりも薄い0.13〜0.2mm程度のものが必要とされている。このような薄肉材で、高強度及び高耐食性を実現することは極めて困難である。例えば、従来のように高強度にするために、芯材にCuを添加した材料を薄肉としただけでは、ろう付け加熱した際に、犠牲材(皮材)中のZnが、拡散により前記芯材中を通過してチューブ外面側の表面近傍にまで到達することにより、チューブ外面側の耐食性を損ねるという問題があった。
【0005】
更に、芯材中のCuがろう材中に拡散し、その結果、ろう付け後のろう材側組織のAl−Si共晶部分及び初晶様部位には、Cuが偏析するため、この偏析部分とその他の部分で電位に差が生じるため、チューブ外面側の耐食性が損なわれるという問題点もあった。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、薄肉であっても、高強度であり、かつ冷媒が接触するチューブ内面側と外面側の双方の耐食性が優れたアルミニウム合金ブレージングシート及び熱交換器を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートは、板厚0.14mm以下のアルミニウム合金からなる芯材の片面にAl−Si系アルミニウム合金からなるろう材が形成され、前記芯材の他面にアルミニウム合金からなる皮材が形成されたアルミニウム合金複合材からなるブレージングシートにおいて、前記ろう材は、Inを0.01乃至0.08質量%含有し、前記皮材は、Znを0.5乃至5.0質量%含有することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る他のアルミニウム合金ブレージングシートは、板厚0.14mm以下のアルミニウム合金からなる芯材の片面にAl−Si系アルミニウム合金からなるろう材が形成され、前記芯材の他面にアルミニウム合金からなる皮材が形成されたアルミニウム合金複合材からなるブレージングシートにおいて、前記ろう材は、Znを0.1乃至0.8質量%含有し、前記皮材は、Znを0.5乃至5.0質量%含有することを特徴とする。
【0009】
これらのアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、前記皮材は、更に、Mnを0.3乃至1.2質量%、Siを0.3乃至1.0質量%含有することができる。また、前記芯材は、Cuを0.6乃至0.9質量%含有することができる。
【0010】
そして、本発明に係る熱交換器は、前記アルミニウム合金ブレージングシートを前記皮材が内面側になるように成形されたチューブを、その内部に冷媒が通流する伝熱管として使用したことを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。図1は本発明の実施形態のアルミニウムブレージングシート4を示す断面図である。このブレージングシート4は、芯材1の片面にろう材2が形成され、他面に皮材3が形成されている。芯材1は板厚が0.14mm以下のアルミニウム合金からなる。この芯材1は、Cuを0.6乃至0.9質量%含有することができる。ろう材2はInを0.01乃至0.08質量%含有するか、又はZnを0.1乃至0.8質量%含有するAl−Si系アルミニウム合金からなる。また、皮材3はZnを0.5乃至5.0質量%含有するアルミニウム合金からなる。この皮材3は、更に、Mnを0.3乃至1.2質量%、Siを0.3乃至1.0質量%含有することもできる。
【0012】
このブレージングシート4は、皮材3が内面側になるようにチューブに成形され、このチューブの内部に冷媒が通流する伝熱管とすることにより、例えば、自動車ラジエータ等の熱交換器に組み立てられる。
【0013】
以下、本発明の成分添加理由について説明する。
【0014】
ろう材2(In,Zn)
本発明で使用するろう材2は、Inを0.01乃至0.08質量%、又は、Znを0.1乃至0.8質量%のいずれか1種を含有する。これは、ろう材2の電位を低くし、チューブ外面側に配置されるろう材2内の腐食進行方向を、ろう材2の表面に沿う方向に制御するためである。これによって、犠牲材である皮材3から拡散してくるZnが、チューブ外面側のろう材2に到達しても、チューブ外面側のろう材2の表面から芯材1側へ向かってろう材2の深さ方向へ腐食が進展することが抑制され、ろう材2においては、その表面に均一に腐食する。
【0015】
更に、特に芯材1のCuが0.6質量%以上含まれている場合、ろう材2へ拡散した場合でも、均一にろう材2を腐食させることができる。ろう付加熱時には溶融したろうにCuが多く含まれることになり、Cuを多く含んだろうが凝固する際には、共晶が生成する。
【0016】
このとき、図2に示すように、Cuの偏析が大きくなる。図2において、ろう材2が溶融して凝固したときには、この部分に、初晶様部位5が形成され、ろう付け後Al−Si共晶部7が形成される。そして、この初晶様部位5とAl−Si共晶部7との境界に、Cu偏析(組成変化部位)6が形成される。この共晶部7の偏析が起きると、局所的に電位が変動し、電位差が大きくなり、電位の低いところが孔食の発生部位となる。
【0017】
これに対し、ろう材2にInを添加し、ろう材全体の電位を下げることによって、Cu偏析による部分的な電位差を解消することができる。Inの添加量が0.01質量%未満、又は、Zn添加量が0.1質量%未満の場合には、この効果を得ることができない。また、Inが0.08質量%を超えるか、又はZnが0.8質量%を超えると、ろう付け時に、ろう材2からのIn又はZnのチューブ内面側の芯材方向への拡散量が増大し、チューブ内面側の皮材から拡散するZnと重なることにより、電位が低いZn含有部が全板厚にわたって形成されることになり、一旦表面からの腐食が貫通に至りやすくなるため、チューブ外面側の耐食性が低下する。よって、ろう材2における添加成分の範囲は、Inの場合は0.01乃至0.08質量%、Znの場合は0.1乃至0.8質量%とする。
【0018】
なお、ろう材2の基本成分として、ろう付けに必要な融点を確保するため、また溶融状態での湯流れを向上させるため、Siを8乃至15質量%含有することが好ましい。
【0019】
その他、ろう材2中には、前記In及びZnの効果を損なわない程度で、不純物を含んでいても構わない。例えば、0.5%以下のFe、0.3%以下のMn、0.1%以下のTi、0.1以下のBは許容される。
【0020】
皮材(Zn,Mn,Si)
チューブ内面の皮材3(犠牲材)は、Znを0.5乃至5質量%含有する。Znはチューブ内面側の皮材(犠牲材)3と芯材1に電位勾配を形成し、皮材3に犠牲陽極効果を持たせるために添加するものであるが、このZn添加量が5.0質量%を超えると、ろう付け加熱によってZnが芯材1を超えて外面側のろう材2にまで拡散する量が増大する。このような皮材3からのZnの拡散量が増大すると、その結果、ろう材2にIn又はZnを添加した場合でも、使用時にチューブ外面から腐食が発生すると、電位が低いチューブ断面方向(ろう材の厚さ方向)に腐食が進展する結果、腐食形態は孔食となり、耐久性を著しく短くしてしまう。従って、皮材3(犠牲材)のZn量は5.0質量%以下とする。なお、Zn量が0.5質量%より低いと、チューブ内面側の犠牲陽極効果が十分でないため、Zn添加量は0.5質量%以上とすることが必要である。
【0021】
また、ろう付後の強度を増大させるため、皮材3(犠牲材)にMn及びSiを添加することが有効であり、Mn及びSiの組成範囲を、夫々Mn:0.3乃至1.2質量%、Si:0.3乃至1.0質量%とすることにより、強度を更に一層向上させることができる。
【0022】
本発明のブレージングシートの芯材1は、一般的なアルミニウム合金を使用可能である。例えば、JIS3003等のAl−Mn系合金を使用することができる。
【0023】
芯材1(Cu)
更に、芯材1には、強度を向上させるために、Cuを0.6乃至0.9質量%添加することができる。
【0024】
【実施例】
以下、本発明の実施例について、本発明の範囲から外れる比較例と比較して本発明の効果を説明する。下記表1に示す組成の皮材(S1〜S4)、ろう材(F1〜F6)及び芯材(C1,C2)を製作し、これらの皮材、ろう材、芯材を下記表2に示すように組み合わせて、クラッド率を夫々13%にしてクラッド圧延し、全体の板厚が0.15mm(芯材の厚さは全板厚の74%の0.11mm)の3層ブレージングシートを製造した。
【0025】
これらの試料について,ろう付条件に相当する温度600℃で5分間加熱した後、耐食性及び強度を以下の方法で測定して、評価した。
【0026】
チューブ外面側のろう材側の耐食性は、連続250時間のCASS試験を行い、試験後の腐食深さを測定した。
【0027】
チューブ内面側の皮材(犠牲材)側の耐食性は、88℃の人工水(Cl:300質量ppm、SO :100質量ppm、Cu:5質量ppm)に試験材を8時間浸漬し、その後、浸漬したまま、室温で16時間放置した。このサイクルの腐食試験を30日間試験し、試験後の腐食深さを測定した。
【0028】
また、引張強さを室温で引張試験することにより測定した。その測定結果を表2に併せて示す。
【0029】
【表1】
Figure 2004130687
【0030】
【表2】
Figure 2004130687
【0031】
表2に示す評価結果から明らかなように、本発明の実施例1、2,2−3,2−3のブレージングシートは、チューブの外面(ろう材)及び内面(皮材)ともに貫通がなく、耐食性が優れている。更に、芯材にCuを添加した実施例2、皮材にSi、Mnを添加した実施例2−2,4−2では、より高い強度が得られた。一方、比較例3,4,4−1,4−2,5,6の内、比較例3ではろう材中のInが少ないため、比較例4−1ではろう材Znが少ないため、外面の耐食性が劣っていた。また、比較例4ではろう材中のInが多すぎたため、比較例4−2ではろう材中のZnが多すぎたため、ろう付け時にろう材からのIn又はZnの芯材側(チューブ内面側)方向への拡散量が増大し、チューブ内面の皮材から拡散するZnと重なることにより、外面側の耐食性が低下する。また、比較例5では、皮材(犠牲材)中のZnが少ないため、チューブ内面の耐食性が劣っていた。また、比較例6では皮材(犠牲材)中のZnが多すぎたため、外面耐食性が劣っていた。
【0032】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、薄肉であっても、高強度であり、かつ冷媒が接触するチューブ内面側の耐食性とチューブ外面側の耐食性の双方が優れているブレージングシートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態のアルミニウム合金ブレージングシートの層構成を示す断面図である。
【図2】ろう付け後の共晶部、Cu偏析及び初晶部位を示す断面図である。
【符号の説明】
1:芯材
2:ろう材
3:皮材
4:ブレージングシート
5:初晶部位
6:Cu偏析(組成変化部位)
7:ろう付け後Al−Si共晶部

Claims (5)

  1. 板厚0.14mm以下のアルミニウム合金からなる芯材の片面にAl−Si系アルミニウム合金からなるろう材が形成され、前記芯材の他面にアルミニウム合金からなる皮材が形成されたアルミニウム合金複合材からなるブレージングシートにおいて、前記ろう材は、Inを0.01乃至0.08質量%含有し、前記皮材は、Znを0.5乃至5.0質量%含有することを特徴とするアルミニウム合金ブレージングシート。
  2. 板厚0.14mm以下のアルミニウム合金からなる芯材の片面にAl−Si系アルミニウム合金からなるろう材が形成され、前記芯材の他面にアルミニウム合金からなる皮材が形成されたアルミニウム合金複合材からなるブレージングシートにおいて、前記ろう材は、Znを0.1乃至0.8質量%含有し、前記皮材は、Znを0.5乃至5.0質量%含有することを特徴とするアルミニウム合金ブレージングシート。
  3. 前記皮材は、更に、Mnを0.3乃至1.2質量%、Siを0.3乃至1.0質量%含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
  4. 前記芯材は、Cuを0.6乃至0.9質量%含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
  5. 前記請求項1乃至4のいずれか1項に記載のアルミニウム合金ブレージングシートを前記皮材が内面側になるように成形されたチューブを、その内部に冷媒が通流する伝熱管として使用したことを特徴とする熱交換器。
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