JP2004129469A - ハイブリット車の動力伝達装置 - Google Patents

ハイブリット車の動力伝達装置 Download PDF

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Abstract

【課題】ハイブリット車の動力伝達装置を小型化および軽量化する。
【解決手段】このハイブリット車は、クランク軸11を駆動するエンジン12と、モータロータ13を駆動するモータ14と、エンジン12により駆動されてバッテリに充電する電力を発生する発電機19とを有している。モータロータ13には駆動歯車26が設けられたモータ側入力軸25が連結され、クランク軸11によりダンパー23を介して連結されるエンジン側入力軸24はモータ側入力軸25と同心上に配置され、モータ側入力軸25は出力軸27に噛み合っている。エンジン側入力軸24の動力をモータ側入力軸25を介して出力軸27に伝達する係合状態と動力伝達を遮断する状態とに切り換えるクラッチ機構36がモータ側入力軸25とエンジン側入力軸24との間に設けられている。
【選択図】  図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は駆動輪を駆動するための動力源としてエンジンとモータとを有するハイブリット車の動力伝達装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
動力源としてエンジンとモータとを有するハイブリット車つまりハイブリット電気自動車には、シリーズ式とパラレル式とシリーズ・パラレル式とがある。シリーズ式は、エンジンにより発電機を回転して発電された電力をバッテリに充電し、モータにより車両を駆動するようにしたハイブリット車であり、エンジンは発電のために使用される。パラレル式は、エンジンを車両走行用の駆動源として使用し、エンジンに負荷がかかる発進時や加速時にモータにより駆動力を補助するようにしたハイブリット車であり、エンジン効率が悪い軽負荷時にはモータを発電機に変えてバッテリの充電を行うようにしている。
【0003】
一方、シリーズ・パラレル式は、エンジンとモータとに加えて発電機を有しており、車両の駆動は、走行状態に応じてエンジンによる駆動とモータによる駆動と両方による駆動とのいずれかに切り換えられることになる。この方式のハイブリット車は、発進時や低速時にはモータにより車両を駆動し、車速がある程度以上になるとエンジンにより車両を駆動し、登坂時のような高負荷時にはモータとエンジンとにより車両を駆動することができ、軽負荷時には走行しながら発電することができる。このようなタイプのハイブリット車としては、たとえば特許文献1に記載されるものがある。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−226393号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
エンジンとモータとに加えて単独の発電機を有する従来のシリーズ・パラレル式のハイブリット車の動力伝達装置は、駆動輪に対する動力と発電との分担比率を調整するために動力分配機構を有している。この動力分配機構としては従来では分配比を比較的狭い範囲ではあるが設定できる遊星歯車が使用されているので、ハイブリット車の動力伝達装置は部品点数が増えて製造コストが高くなるだけでなく、動力伝達装置の構造の複雑化および高重量化が避けられない。このため、比較的エンジン排気量の小さい小型車をシリーズ・パラレル式のハイブリット車とすることは困難であった。
【0006】
本発明の目的は、ハイブリット車の動力伝達装置を小型化および軽量化して、車両への搭載性を改善することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のハイブリット車の動力伝達装置は、クランク軸を駆動するエンジンと、モータロータを駆動するモータと、前記エンジンにより駆動されてバッテリに充電する電力を発生する発電機とを有し、車両の走行状況に応じて前記エンジンと前記モータの一方または両方により駆動輪を駆動するハイブリット車の動力伝達装置であって、前記モータロータに連結され、かつ駆動歯車が設けられたモータ側入力軸と、前記モータ側入力軸と同心上に配置され、前記クランク軸によりダンパーを介して駆動されるエンジン側入力軸と、前記駆動歯車と噛み合う被駆動歯車が設けられ、差動機構を介して駆動輪に連結される出力軸と、前記エンジン側入力軸の動力を前記モータ側入力軸を介して前記出力軸に伝達する係合状態と動力伝達を遮断する状態とに切り換えるクラッチ機構とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明のハイブリット車の動力伝達装置は、前記クラッチ機構を前記エンジンと前記モータとの間に配置することを特徴とする。
【0009】
本発明のハイブリット車の動力伝達装置は、前記モータの前記エンジンに対向する端部側に対して反対側に前記クラッチ機構を配置することを特徴とする。
【0010】
本発明のハイブリット車の動力伝達装置は、前記モータの前記エンジンに対向する端部側に対して反対側に前記モータ側入力軸と前記出力軸とを配置し、後輪を駆動する後輪アクスルシャフトを前記出力軸に連結することを特徴とする。
【0011】
本発明のハイブリット車の動力伝達装置は、前記モータと前記発電機とを一体のケース内に組み込むことを特徴とする。
【0012】
本発明のハイブリット車の動力伝達装置は、前記エンジンに取り付けられるオイルパン内に前記差動機構を組み込むことを特徴とする。
【0013】
本発明のハイブリット車の動力伝達装置は、前記クランク軸に前記発電機の発電ロータを取り付け当該発電ロータを前記クランク軸により直接駆動することを特徴とする。
【0014】
本発明のハイブリット車の動力伝達装置は、前記モータロータの回転数を検出するモータ回転数検出手段と、前記クランク軸の回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、車両の走行速度を検出する車速検出手段と、エンジンのスロットルバルブの開度を検出するスロットル開度検出手段とを有し、これらの検出手段からの信号に基づいて前記モータによる駆動と前記エンジンによる駆動との切り換えを判定することを特徴とする。
【0015】
本発明のハイブリット車の動力伝達装置は、車両の走行状態に応じて前記モータと前記エンジンの動力を合成して駆動輪に伝達することを特徴とする。
【0016】
本発明のハイブリット車の動力伝達装置は、駆動輪を前記モータによる駆動から前記エンジンによる駆動に切り換える車速を前記エンジンによる駆動から前記モータによる駆動に切り換える車速より高速とすることを特徴とする。
【0017】
本発明のハイブリット車の動力伝達装置は、駆動輪を前記モータによる駆動から前記エンジンによる駆動に切り換えるエンジン回転数を前記発電機の発電用定格回転数よりも大きな回転数とすることを特徴とする。
【0018】
本発明のハイブリット車の動力伝達装置においては、モータロータに連結されたモータ側入力軸とエンジン側入力軸とをクラッチ機構により係合状態と遮断状態とに切り換えるようにしたので、モータ動力はモータ側入力軸を介して駆動輪に伝達され、エンジン動力はクラッチ機構とモータ側入力軸とを介して駆動輪に伝達されることになる。したがって、差動歯車機構に連結される出力軸とモータ側入力軸との間には駆動側と被駆動側の歯車を配置することにより、簡単な構造によりモータ動力とエンジン動力とを切り換えて伝達することができ、動力伝達装置の小型化を達成することができる。
【0019】
クラッチ機構をエンジンとモータとの間に配置すると、これらの間にダンパーとともにクラッチ機構をコンパクトに組み込むことができ、クラッチ機構をモータに対してエンジンの反対側に配置すると、クラッチ機構のメンテナンスを容易に行うことかできる。モータ側入力軸とエンジン側入力軸とをモータに対してエンジンの反対側に配置すると、エンジン側入力軸に噛み合う出力軸に連結される後輪駆動用のアクスルシャフトを介して四輪駆動車両とすることができる。
【0020】
モータと発電機と差動機構とを一体型のケースに組み込むことにより、動力伝達装置を小型化することができる。オイルパンの内部に差動機構を組み込むことにより、前輪と後輪との間のホイールベースを大きくし、車両のフロントオーバーハングを短くすることができる。発電機の発電ロータをクランク軸により直接回転駆動することにより、発電効率を向上させることができる。
【0021】
車両は車速やスロットル開度などをパラメータとして車両の走行状態に応じてエンジンによる駆動とモータによる駆動とに自動的に切り換えられるので、燃費を向上させることができる。モータ駆動からエンジン駆動に切り換える車速をエンジン駆動からモータ駆動に切り換える車速よりも大きくすることにより、駆動源が頻繁に切りかわるハンチングの発生を防止することができる。モータ駆動からエンジン駆動に切り換えられるエンジン回転数を発電機の定格回転数よりも大きい回転数とすることにより、バッテリへの充電を確実に行うことができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の一実施の形態であるハイブリット車の動力伝達装置を示すスケルトン図であり、この動力伝達装置は燃料の燃焼によってクランク軸11を回転するエンジン12と、モータロータ13を回転するモータ14とを有している。エンジン12はクランク軸11を車両の幅方向に向けて横向きに配置され、モータ14はエンジン12に対向して車両に配置される。
【0023】
エンジン12とモータ14の間には動力伝達機構組立体15が配置されており、それぞれは一体となったメインケース16内に組み込まれている。クランク軸11には発電ロータ17が固定されており、この発電ロータ17はディスク部17aとこれと一体となった円筒部17bとを有しており、円筒部17bには永久磁石が装着される。発電ロータ17を囲むようにしてメインケース16にはステータコイル18が固定されており、発電ロータ17とステータコイル18によってジェネレータつまり発電機19が形成され、発電ロータ17の回転により発生される電力をバッテリに充電することができる。このように、発電ロータ17はクランク軸11により直接回転駆動されるので、動力伝達ロスを発生させることなく、効率的な発電が可能となる。
【0024】
モータ14はメインケース16に取り付けられるモータケース21内に組み込まれており、モータロータ13には永久磁石が組み込まれ、モータロータ13を囲むようにしてモータケース21にはステータコイル22が固定されている。このステータコイル22とモータロータ13とによりモータ14が形成され、ステータコイル22に電力を供給するとモータロータ13は回転駆動される。一方、このモータ14はジェネレータとしても機能し、モータロータ13を回転駆動することによりステータコイル22に発生した電気エネルギーをバッテリに充電することができ、さらにはモータ14を回生ブレーキとしても機能させることができる。
【0025】
発電ロータ17に形成された収容空間にはダンパー23が組み込まれ、ダンパー23の入力側は発電ロータ17のディスク部17aに取り付けられ、出力側部にはエンジン側入力軸24が取り付けられている。このダンパー23によりクランク軸11の振動は減衰されてエンジン側入力軸24に伝達される。一方、モータロータ17にはモータ側入力軸25が設けられており、モータ側入力軸25とエンジン側入力軸24とが同心上となるようにしてエンジン12とモータ14とが車両に搭載されることになる。前述のように、ダンパー23が発電ロータ17の内部に組み込まれているので、動力伝達装置の軸方向の寸法を短くすることが可能となる。
【0026】
モータ側入力軸25には駆動歯車26が設けられ、この駆動歯車26はモータ側入力軸25に平行となってメインケース16内に回転自在に装着された出力軸27に設けられた被駆動歯車28に常時噛み合っている。被駆動歯車28の直径を駆動歯車26の直径よりも大きくすると、モータ側入力軸25の回転は減速されて出力軸27に伝達されることになる。
【0027】
出力軸27には被駆動歯車28よりも小径の中間歯車31が取り付けられ、この中間歯車31はこれよりも大径の終減速大歯車32に噛み合っており、中間歯車31と終減速大歯車32により終減速機構が形成されている。終減速大歯車32には左右駆動輪の回転差を吸収するための差動機構33が設けられ、差動機構33はアクスルシャフト34a,34bを介して左右の駆動輪35a,35bに連結されている。差動機構33はエンジンルーム内に組み込まれており、左右の駆動輪35a,35bは前輪となっている。前輪に併せて後輪も駆動する四輪駆動用車両にこの動力伝達装置を適用する場合には、出力軸27は図示しないドライブシャフトを介して後輪に伝達される。
【0028】
エンジン側入力軸24とモータ側入力軸25の間には、エンジン側入力軸24の回転をモータ側入力軸25を介して出力軸27に伝達する状態と遮断する状態とに切り換えるために、クラッチ機構36が装着されている。このクラッチ機構36は、パイロットクラッチ37aとメインクラッチ37bとから構成されている。
【0029】
パイロットクラッチ37aは、エンジン側入力軸24に配置されたクラッチドラム38に所定間隔隔てて装着された一対のクラッチディスク43,43と、このクラッチディスク43間に位置するクラッチディスク45と、これら一対のクラッチディスク43,43の外周に配置された電磁コイル40と、アーマチュア40aとから構成される。また、クラッチディスク45の内周面にはカムプレート45aが一体に設けられている。さらにカムプレート45aに対向してメインクラッチ37bを構成するクラッチドラム49に装着されたクラッチディスク44には、カムプレート44aが一体に設けられている。これらのカムプレート44a,45aを拡大して示すと図2の通りである。それぞれのカムプレート44a,45aの対向面には、所定の半径位置に環状の凹部46,47が形成され、これらの凹部46,47はそれぞれの半径方向の中央部から径方向内方と外方とに向かうに従って深さが浅くなったテーパ面となっており、両方の凹部46,47の間にはボール48が組み込まれている。
【0030】
また、メインクラッチ37bは、カムプレート44aに一体に設けられたクラッチドラム49の内側に装着された駆動側のクラッチディスク41と、モータ側入力軸25に取り付けられたクラッチハブ39の外側に装着された従動側のクラッチディスク42とを有しており、それぞれのクラッチディスク41,42は複数枚装着されている。
【0031】
このように構成されたクラッチ機構36は、モータ側入力軸25に代えてエンジン側入力軸24からの回転を出力軸27に伝達する際には、先ず、電磁コイル40に電力を供給する。これにより、電磁コイル40とアーマチュア40aとの間に磁界が発生し、クラッチディスク43,44,45が相互に接触して一体化する。すると、パイロットクラッチ37aが締結された状態となり、エンジン側入力軸24に連結されたカムプレート45aがエンジン側入力軸24と一体化する。
【0032】
これにより、カムプレート45aと、メインクラッチ37bのクラッチドラム49に連結されたカムプレート44aとの間に回転差が発生して回転トルクが生じる。すると、それぞれのカムプレート44a,45aの凹部46,47間に位置するボール48がテーパ面に沿って変位し、カムプレート44aをカムプレート45aから遠ざかる方向、すなわちメインクラッチ37b側に変位させるスラスト力が発生する。
【0033】
このカムプレート45aのメインクラッチ37b側への変位により、メインクラッチ37bのクラッチディスク41,42が締結されてエンジン側入力軸24からの回転が出力軸27に伝達されるようになる。このクラッチ機構36を用いることで、モータ側入力軸25による回転をエンジン側入力軸24による回転に切り換える際に、パイロットクラッチ37aの締結の後でメインクラッチ37bを締結することで半クラッチ状態を実現でき、円滑な切換が可能となる。
【0034】
この動力伝達装置においては、モータロータ13に直結されたモータ側入力軸25の駆動歯車26は出力軸27の被駆動歯車28と常時噛合って一定の歯車比で回転するようになっており、車両をエンジン12により駆動するときにはエンジン動力はモータ側入力軸25を介して駆動輪に動力伝達が行われるようになっている。これにより、クラッチ機構36を含めた動力伝達経路が簡潔となり、小型の動力伝達装置により所望の動力を駆動輪に伝達することができる。
【0035】
図3は図1に示した動力伝達装置の作動を制御する制御回路を示すブロック図であり、メインコントローラ51にはアクセルペダルの開度を検出するアクセル開度センサ52、車両の走行速度を検出する車速センサ53、モータロータ13の回転数を検出するモータ回転数センサ54、およびクランク軸11の回転数を検出するエンジン回転数センサ55からの検出信号が送られるようになっている。一方、メインコントローラ51からは、エンジン12の作動を制御するエンジンコントローラ56、モータ14の作動を制御するモータコントローラ57、および発電機19の作動を制御する発電機コントローラ58に対してそれぞれ制御信号が送られるようになっている。バッテリ59はモータコントローラ57と発電機コントローラ58に接続されており、モータ14により車両を駆動する場合には充電装置つまりバッテリ59からの電力がモータ14のステータコイル22に供給される。一方、バッテリ59への充電は、発電機19を作動させることにより行われるが、モータ14をジェネレータとして機能させてモータ14により行うこともできる。
【0036】
図4は図1に示した動力伝達装置の車両走行状態に応じた動力伝達経路を示す動作表であり、図4を参照しつつ動力伝達装置により駆動状態を説明する。車両を発進させる際にはモータ14から駆動輪に動力を伝達し、そのときにはクラッチ機構36を動力遮断状態としてエンジン動力は駆動輪に伝達しない。したがって、発進時にはエンジン12は停止状態とされるが、バッテリ59の充電量などにより必要に応じてエンジン12を作動させるとともに発電機19を作動させてバッテリ59に充電するようにしても良い。
【0037】
車両が低速走行および中速走行する場合つまり通常走行する場合には、モータ14によって車両を駆動するとともに、クラッチ機構36の動力遮断状態のもとでエンジン12を駆動することにより発電機19を作動させてバッテリ59に充電する。このときのエンジン12の回転数は一定の定格回転数に設定される。車両の走行中にブレーキペダルが踏み込まれたときには、エンジン12を停止状態としてモータ14を回生ブレーキとして制動力を加えるとともにモータ14をジェネレータとして機能させてモータ14からバッテリ59に充電を行う。ブレーキの作動によって車両が停止寸前となったら、モータ14の回生ブレーキとしての作動を停止させる。
【0038】
車両が高速走行となったとき、たとえば車速が80km/h程度の所定値以上となったときには、モータ14による駆動を停止してエンジン12によって車両を駆動する。このときには発電機19からバッテリ59への充電を停止させる。一方、車両を追い越し加速したり、車両が登坂路を走行する際には、エンジン12とモータ14の両方の動力が合成されて駆動輪に伝達される。このときには、必要に応じてバッテリ59を充電するようにしても良い。なお、モータ14による駆動によって車速が上述した所定値となったときには、瞬間的にクラッチ機構36を動力伝達状態として、モータ側入力軸24の回転をクランク軸11に伝達することによりエンジン12を始動させることができる。
【0039】
このような動力伝達装置における動力伝達経路の切換は、車両の走行状態に応じて自動的に行われるようになっており、車両の走行状態を示すパラメータとしては、モータ14の回転数、エンジン12の回転数、車速、スロットル開度などである。これらの走行状態を示すパラメータに基づいてメインコントローラ51からはエンジン12、モータ14および発電機19の作動が制御される。
【0040】
上述のように、車速が所定の車速以上となったときには、モータ14による駆動からエンジン14による駆動に切り換えられ、所定の車速以上の走行状態から所定の車速以下となったときにはエンジン12による駆動からモータ14による駆動に切り換えられるが、モータ駆動からエンジン駆動に切り換えられる車速をVeとし、逆にエンジン駆動からモータ駆動に切り換えられる車速をVmとすると、Ve>Vmに設定されている。つまり、モータ駆動からエンジン駆動に切り換えられる車速Veは、エンジン駆動からモータ駆動に切り換えられる車速Vmよりも高速に設定されている。これにより、モータ駆動とエンジン駆動とが頻繁に切り換わるハンチング現象の発生を防止することができる。
【0041】
また、モータ駆動からエンジン駆動に切り換えられるエンジン回転数をNeとし、発電機19の定格回転数をNsとすると、エンジン駆動に切り換えられるエンジン回転数Neは、定格回転数Nsよりも大きな回転数(Ne>Ns)に設定されている。これにより、通常走行時に確実にバッテリ59に対する充電を行うことができる。
【0042】
図5は他の実施の形態である動力伝達装置を示すスケルトン図であり、図5においては図1における部材と共通する部材には同一の符号が付されている。この動力伝達装置にあっては、図1に示したクラッチ機構36がエンジン12とモータ14との間に組み込まれているのに対して、クラッチ機構36はモータ14のエンジン12に対向する端部側に対して反対側に配置されている。このようにクラッチ機構36がエンジン12に対して反対側に配置されているので、エンジン側入力軸24をクラッチドラム38に取り付けるために、モータロータ13およびモータ側入力軸25は中空となっており、エンジン側入力軸24はモータ14の中心部を貫通している。また、モータ側入力軸25はモータロータ13の両端部から突出しており、一端部には駆動歯車26が取り付けられ、他端部にはクラッチハブ39が取り付けられている。このようにクラッチ機構36がモータ14の端部に突出して設けられているので、クラッチ機構36のメンテナンスをメインケース16を分解することなく行うことができるとともに、メインケース16の車幅方向の寸法を短くすることができる。なお、モータケース21にはクラッチ機構36を覆うように図示しないカバーが取り付けられることになる。
【0043】
図1および図5に示した動力伝達装置は、いずれもエンジンが横置きとなったタイプであるが、この動力伝達装置はクランク軸11が車両の進行方向を向くようにしてエンジン12が車両に搭載されるようになったエンジン縦置き式にも適用することができる。
【0044】
図6はエンジン縦置きタイプに適用した場合の動力伝達装置であり、図6においては図1および図5に示した部材と共通の機能を有する部材には同一の符号が付されている。この動力伝達装置にあっては、エンジン12の車両進行方向後方にはエンジン12に対向してモータ14が配置されており、クラッチ機構36はエンジン12とモータ14の間に配置されている。エンジン12の後端部に設けられた発電機19とモータ14とこれらの間に配置されるクラッチ機構36は、一体型のメインケース16内に組み込まれており、メインケース16は前述したモータケース21を兼ねている。モータロータ13の一端部にはクラッチ機構36のクラッチハブ39が取り付けられ、他端部にはモータ側入力軸25が取り付けられている。メインケース16に取り付けられるエクステンションケース20内には、モータ側入力軸25と出力軸27が組み込まれており、出力軸27の歯車28に噛み合う連結歯車61はフロントドライブシャフト62に取り付けられ、このドライブシャフト62はメインケース16とエクステンションケース20内に組み込まれている。
【0045】
フロントドライブシャフト62には終減速大歯車32に噛み合う終減速小歯車63が取り付けられており、終減速大歯車32には図1に示した場合と同様の構造の差動機構33が設けられている。この差動機構33はメインケース16内に組み込まれており、一体構造のメインケース16内にはモータ14,発電機19、クラッチ機構36および差動機構33が収容されている。ただし、メインケース16をモータ14と差動機構33とを収容する部分と、発電機19とクラッチ機構36とを収容する部分とに分割するようにしても良い。フロントドライブシャフト62には車両を駐車する際にフロントドライブシャフト62をロックするためのパーキング用の歯車64が取り付けられている。なお、図6における符号Odは差動機構33の回転中心軸の位置を示し、符号Owは前輪の回転中心軸の位置を示す。
【0046】
図7は図6に示した動力伝達装置の変形例であり、図7においては図6に示された部材と共通する部材には同一の符号が付されている。この動力伝達装置にあっては、エンジン12とモータ14との間に発電機19が配置されており、クラッチ機構36はモータ14のエンジン12に対向する端部側に対して反対側に配置されている。したがって、モータ14は、図6に示した場合よりもエンジン12に接近しモータ14の前後方向の重心位置が図6に示した場合よりも車輪の回転中心軸Owの位置に近づくので、比較的高重量となるモータ14が回転中心軸Owの真上に配置されることになり、車両の組立作業性のみならず、動力伝達装置の重量バランスに優れ走行安定性が向上することになる。
【0047】
図7に示すように、エンジン側入力軸24をクラッチドラム38に取り付けるために、モータロータ13およびモータ側入力軸25は中空となっており、エンジン側入力軸24はモータ14の中心部を貫通している。また、モータ側入力軸25の端部には、駆動歯車26とクラッチハブ39とが取り付けられている。
【0048】
メインケース16内には発電機19とモータ14と差動機構33とが収容されており、このメインケース16に取り付けられるエクステンションケース20内には、モータ14とクラッチ機構36との間に設けられた駆動歯車26と、出力軸27とフロントドライブシャフト62とが収容されている。この場合には、クラッチ機構36が動力伝達相の端部に配置されているので、クラッチ機構36のメンテナンスをメインケース16を分解することなく、エクステンションケース20を外すことにより行うことができる。
【0049】
図8は図6に示した動力伝達装置の変形例であり、クラッチ機構36とモータ14の基本的配置は図6に示した場合と同一である。また、図9は図7に示した動力伝達装置の変形例であり、クラッチ機構36とモータ14の基本的配置は図7に示した場合と同様である。
【0050】
図8および図9に示した動力伝達装置にあっては、差動機構33がエンジン12の真下に配置されている。したがって、エンジン12の下部に取り付けられて潤滑油を収容するためのオイルパン65の位置に差動機構33およびこれに連結されるアクスルシャフトを配置することができ、オイルパン65を図6および図7に示す場合よりも大型化することにより、終減速大歯車32およびこれに取り付けられた差動機構33をオイルパン65内に配置することができる。この場合にはアクスルシャフトはオイルパンを貫通することになる。また、フロントドライブシャフト62は図6および図7に示す場合よりも長くなり、中間部に連結シャフト62aを連結するようにしても良い。このフロントドライブシャフト62の中間部を図示しないカバーにより覆うようにしても良い。
【0051】
このように、差動機構33をエンジン12の真下に配置すると、前輪の回転中心軸Owの位置を図6および図8に示した場合よりも車両の前側に設けることができるので、前輪の回転中心と後輪の回転中心との間の前後方向の長さであるホイールベースの距離を大きくすることができるとともに、車両のフロントオーバーハングを短く設定することができる。
【0052】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。たとえば、図6〜図9図に示すタイプの動力伝達装置においても、出力軸27を動力分配装置を介して後輪にも動力を伝達するようにすれば、四輪駆動用の動力伝達装置とすることができる。
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、モータ動力はモータ側入力軸を介して駆動輪に伝達され、エンジン動力はクラッチ機構とモータ側入力軸とを介して駆動輪に伝達され、差動歯車機構に連結される出力軸とモータ側入力軸との間には駆動側と被駆動側の歯車を配置することにより、簡単な構造によりモータ動力とエンジン動力とを切り換えて伝達することができ、動力伝達装置の小型化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態であるハイブリット車の動力伝達装置を示すスケルトン図である。
【図2】(A)は図1に示されたカムプレートを拡大して示す断面図であり、(B)はカムプレート間のボール配置図である。
【図3】動力伝達装置の作動を制御する制御回路を示すブロック図である。
【図4】動力伝達装置の車両走行状態に応じた動力伝達経路を示す動作表である。
【図5】本発明の他の実施の形態である動力伝達装置を示すスケルトン図である。
【図6】本発明の他の実施の形態である動力伝達装置を示すスケルトン図である。
【図7】本発明の他の実施の形態である動力伝達装置を示すスケルトン図である。
【図8】本発明の他の実施の形態である動力伝達装置を示すスケルトン図である。
【図9】本発明の他の実施の形態である動力伝達装置を示すスケルトン図である。
【符号の説明】
11   クランク軸
12   エンジン
13   モータロータ
14   モータ
16   メインケース
17   発電ロータ
18   ステータコイル
19   発電機
22   ステータコイル
23   ダンパー
24   エンジン側入力軸
25   モータ側入力軸
26   駆動歯車
27   出力軸
28   被駆動歯車
32   終減速大歯車
33   差動機構
36   クラッチ機構
37a  パイロットクラッチ
37b  メインクラッチ
38   クラッチドラム
39   クラッチハブ
40   電磁コイル
43   クラッチディスク
44a,45a  カムプレート
48   ボール
65   オイルパン

Claims (11)

  1. クランク軸を駆動するエンジンと、モータロータを駆動するモータと、前記エンジンにより駆動されてバッテリに充電する電力を発生する発電機とを有し、車両の走行状況に応じて前記エンジンと前記モータの一方または両方により駆動輪を駆動するハイブリット車の動力伝達装置であって、
    前記モータロータに連結され、かつ駆動歯車が設けられたモータ側入力軸と、
    前記モータ側入力軸と同心上に配置され、前記クランク軸によりダンパーを介して駆動されるエンジン側入力軸と、
    前記駆動歯車と噛み合う被駆動歯車が設けられ、差動機構を介して駆動輪に連結される出力軸と、
    前記エンジン側入力軸の動力を前記モータ側入力軸を介して前記出力軸に伝達する係合状態と動力伝達を遮断する状態とに切り換えるクラッチ機構とを有することを特徴とするハイブリット車の動力伝達装置。
  2. 請求項1記載のハイブリット車の動力伝達装置において、前記クラッチ機構を前記エンジンと前記モータとの間に配置することを特徴とするハイブリット車の動力伝達装置。
  3. 請求項1記載のハイブリット車の動力伝達装置において、前記モータの前記エンジンに対向する端部側に対して反対側に前記クラッチ機構を配置することを特徴とするハイブリット車の動力伝達装置。
  4. 請求項1記載のハイブリット車の動力伝達装置において、前記モータの前記エンジンに対向する端部側に対して反対側に前記モータ側入力軸と前記出力軸とを配置し、後輪を駆動する後輪アクスルシャフトを前記出力軸に連結することを特徴とするハイブリット車の動力伝達装置。
  5. 請求項1記載のハイブリット車の動力伝達装置において、前記モータと前記発電機とを一体のケース内に組み込むことを特徴とするハイブリット車の動力伝達装置。
  6. 請求項1記載のハイブリット車の動力伝達装置において、前記エンジンに取り付けられるオイルパン内に前記差動機構を組み込むことを特徴とするハイブリット車の動力伝達装置。
  7. 請求項1記載のハイブリット車の動力伝達装置において、前記クランク軸に前記発電機の発電ロータを取り付け当該発電ロータを前記クランク軸により直接駆動することを特徴とするハイブリット車の動力伝達装置。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のハイブリット車の動力伝達装置において、前記モータロータの回転数を検出するモータ回転数検出手段と、前記クランク軸の回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、車両の走行速度を検出する車速検出手段と、エンジンのスロットルバルブの開度を検出するスロットル開度検出手段とを有し、これらの検出手段からの信号に基づいて前記モータによる駆動と前記エンジンによる駆動との切り換えを判定することを特徴とするハイブリット車の動力伝達装置。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載のハイブリット車の動力伝達装置において、車両の走行状態に応じて前記モータと前記エンジンの動力を合成して駆動輪に伝達することを特徴とするハイブリット車の動力伝達装置。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載のハイブリット車の動力伝達装置において、駆動輪を前記モータによる駆動から前記エンジンによる駆動に切り換える車速を前記エンジンによる駆動から前記モータによる駆動に切り換える車速より高速とすることを特徴とするハイブリット車の動力伝達装置。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載のハイブリット車の動力伝達装置において、駆動輪を前記モータによる駆動から前記エンジンによる駆動に切り換えるエンジン回転数を前記発電機の発電用定格回転数よりも大きな回転数とすることを特徴とするハイブリット車の動力伝達装置。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009296716A (ja) * 2008-06-03 2009-12-17 Nissan Motor Co Ltd 車両の発電装置
WO2012169663A1 (ja) * 2011-11-02 2012-12-13 株式会社Joho 油圧始動装置を備えた車両
JP2021066311A (ja) * 2019-10-23 2021-04-30 本田技研工業株式会社 車両の制御装置

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