JP2004126499A - 光学素子及び光学素子の製造方法、積層型光学素子及び積層型光学素子の製造方法、または光学材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】回折光学素子において、光線の入射角が大きいと、光線がけられてフレア光やゴーストが発生し、色収差が大きくなってしまう。
【解決手段】光学素子材料としてポリビニルカルバゾールを用い、熱成形、溶媒蒸発、熱重合、光重合等により成形型で回折光学素子を成形する。特に熱重合、光重合には、流動性を有するモノマーでありN−ビニルカルバゾールを、成形型内に供給した後重合するため、回折構造が複雑で微細な場合においても、容易に形状を成形することができる。また、ポリビニルカルバゾールに、熱開始材、光開始材、光開始材と2個以上の不飽和エチレン基を有する化合物等を添加した光学材料を使用する。
【選択図】 図3
【解決手段】光学素子材料としてポリビニルカルバゾールを用い、熱成形、溶媒蒸発、熱重合、光重合等により成形型で回折光学素子を成形する。特に熱重合、光重合には、流動性を有するモノマーでありN−ビニルカルバゾールを、成形型内に供給した後重合するため、回折構造が複雑で微細な場合においても、容易に形状を成形することができる。また、ポリビニルカルバゾールに、熱開始材、光開始材、光開始材と2個以上の不飽和エチレン基を有する化合物等を添加した光学材料を使用する。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レンズ、フィルター、ミラー、屈折光学素子等の光学素子の製造方法、光学素子、光学系、光学材料及び画像形成装置に関し、特に屈折率分散の大きな光学材料を使用した光学素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、光線を屈折させる複数のレンズによって構成される光学系においては、分散特性の異なる硝材を組み合わせることによって色収差を減らしている。例えば、望遠鏡等の対物レンズでは分散の小さい硝材を正レンズ、分散の大きい硝材を負レンズとし、これらを組み合わせて用いることで軸上に現れる色収差を補正している。この為、レンズの構成、枚数が制限される場合や使用される硝材が限られている場合などでは、色収差を十分に補正することができない事があった。
【0003】
前述の硝材の組み合わせにより色収差を減じる方法に対して、レンズやあるいは光学系の一部に回折格子を設ける事で色収差を減じる方法が、SPIE Vol.1354 International Lens Design Conference(1990)等の文献により開示されている。光学系において屈折面と回折面とは、ある基準波長の光線に対して、その色収差は逆方向となる事が知られている。この現象を利用し、両者の色収差を相殺し、全体として色収差の低減を実現している。さらに、このような回折光学素子においては、その回折格子の構造の周期を連続的に変化させる事により、非球面レンズと等価な機能を持たせることもできる。従ってこのような回折格子を有するレンズを採用すれば、色収差を大幅に低減させることが可能となる。
【0004】
通常の屈折面において1本の光線は屈折後も1本の光線であるのに対し、回折面において1本の光線は回折され各次数の複数の光線に分かれてしまう。そこで、光学系として回折光学素子を用いる場合には、回折された複数の光線のうち、使用波長領域の光束が設計された特定次数に集中するように格子構造を決定する必要がある。特定次数に光線が集中している状態では、それ以外の次数の回折光の強度は低く、強度が0の場合にはその回折光は存在しないものとなる。逆に、特定次数以外の次数をもった光線が存在する場合は、その光線は特定次数の光線とは別な所に結像しフレア光となってしまう。従って、色収差を効率的に低減させるには、特定次数の光線の回折効率を十分に高くすることが必要である。
【0005】
このような使用波長領域の光束が設計された特定次数に集中するように格子構造を決定する構成は、特開平9−127321号公報、特開平9−127322号公報、特開平11−044808号公報、特開平11−044810号公報等に開示されている。これらは、異なる分散を有する複数の材料と各回折格子の厚さを最適に選ぶことで、広波長範囲で高い回折効率を有する構成となっている。具体的には基板上に複数の異なる光学材料を積層し、それらの境界面の少なくとも1つに、レリーフパターン、階段形状、キノフォーム等を形成することで、所望の積層型回折光学素子が形成されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述した特開平9−127321号公報、特開平9−127322号公報、特開平11−044808号公報、特開平11−044810号公報においては、広波長範囲で高い回折効率を有する構成を得るために、相対的に屈折率分散の低い材料と屈折率分散の高い材料との組み合わせを用いている。
【0007】
具体的には、特開平9−127321号公報の場合はBMS81(nd=1.64,νd=60.1:オハラ製)とプラスチック光学材料PC(nd=1.58,νd=30.5:帝人化成)、特開平9−127322号公報の場合はLaL14(nd=1.6968,νd=55.5:オハラ製)、アクリル樹脂(nd=1.49,νd=57.7)、Cytop(nd=1.34149,νd=93.8:旭硝子製)、PC(nd=1.58,νd=30.5:帝人化成)、特開平11−044808号公報及び特開平11−044810号公報の場合はC001(nd=1.5250,νd=50.8:大日本インキ製)、プラスチック光学材料PC(nd=1.58,νd=30.5:帝人化成)、PS(nd=1.5918,νd=31.1)、PMMA(nd=1.4917,νd=57.4)、BMS81(nd=1.64,νd=60.1:オハラ製)等を、それぞれ組み合わせて用いている。
【0008】
しかしながら、回折光学素子においては、その形状のため光線の入射角が大きい場合、光線がけられてフレア光やゴーストが発生するという問題が生じる。そこで回折格子の総厚を薄くするために、従来の光学材料よりもより屈折率分散の大きな材料を使用する事が必要である。図29は、光学材料として市販、もしくは研究開発されている光学材料のアッベ数と屈折率を示したグラフである。縦軸は屈折率(nd)、横軸はアッベ数(νd)である。この中でポリビニルカルバゾールが有機高分子の中ではアッペ数が17.3と最も小さい事が知られている。
【0009】
ポリビニルカルバゾールを積層型回折光学素子に用いた例は、特開平10−268116号公報に記載されている。特開平10−268116号公報では、表3に弾性樹脂としてポリビニルカルバゾールを挙げている。回折格子に弾性樹脂であるポリビニルカルバゾールを押し付ける事により、回折格子面に圧着し一体化する事で多層回折格子を形成している。しかしながら、ポリビニルカルバゾールは非常に脆い物質であるため、少ない荷重で簡単にクラック等が発生してしまう。従って特開平10−268116号公報に記載されているように、弾性樹脂であるポリビニルカルバゾールを、回折格子に押し付けて光学素子を成形するには、多大な時間をかけて押し付ける必要があり、産業上実施する事は非常に困難である。また近年、回折格子の形状は微細でかつ複雑になってきており、更に困難なものとなっている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明の第1の手段は、ポリビニルカルバゾールを成形型に供給し、熱可塑成形によって光学素子を成形する光学素子の製造方法を提供することである。
【0011】
また本発明の第2の手段は、溶媒に溶解させたポリビニルカルバゾールを成形型に供給し、該溶媒を蒸発させて光学素子を成形する光学素子の製造方法を提供することである。
【0012】
また本発明の第3の手段は、主にN−ビニルカルバゾールからなる物質を成形型に供給し、該成形型の内部において重合反応により硬化させ、ポリビニルカルバゾールに変換して光学素子を成形する光学素子の製造方法を提供することである。
【0013】
また本発明の第4の手段は、前記重合反応は熱重合である本発明の第3の手段は記載の光学素子の製造方法を提供することである。
【0014】
また本発明の第5の手段は、前記物質は熱開始剤を含む本発明の第4の手段に記載の光学素子の製造方法を提供することである。
【0015】
また本発明の第6の手段は、前記熱重合は、70℃以上130℃以下の温度での加熱処理により行われる本発明の第4または第5の手段に記載の光学素子の製造方法を提供することである。
【0016】
また本発明の第7の手段は、前記重合反応は光重合である本発明の第3の手段に記載の光学素子の製造方法を提供することである。
【0017】
また本発明の第8の手段は、前記物質は光開始剤を含む本発明の第7の手段に記載の光学素子の製造方法を提供することである。
【0018】
また本発明の第9の手段は、前記光開始剤は、紫外光または可視光照射処理によってラジカル種の生成が可能な、ラジカル重合開始剤を含有する本発明の第7または第8の手段に記載の光学素子の製造方法を提供することである。
【0019】
また本発明の第10の手段は、前記光開始剤は、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニル−ケトンを含有する本発明の第8の手段に記載の光学素子の製造方法を提供することである。
【0020】
また本発明の第11の手段は、前記光学材料は、2個以上の不飽和エチレン基を有する化合物を含む本発明の第8の手段に記載の光学素子の製造方法を提供することである。
【0021】
また本発明の第12の手段は、前記2個以上の不飽和エチレン基を有する化合物が、ジビニルベンゼンである本発明の第11の手段に記載の光学素子の製造方法を提供することである。
【0022】
また本発明の第13の手段は、前記2個以上の不飽和エチレン基を有する化合物は、その重量割合が0.5wt%〜2.5wt%の範囲である本発明の第10または11の手段に記載の光学素子の製造方法を提供することである。
【0023】
また本発明の第14の手段は、前記光学素子が回折光学素子である本発明の第1乃至第13のいずれか1つの手段に記載の光学素子の製造方法を提供することである。
【0024】
また本発明の第15の手段は、主に流動性を有するN−ビニルカルバゾールからなる物質を、回折形状を有する成形型に供給し、該N−ビニルカルバゾールを該成形型の内部において重合反応により硬化させポリビニルカルバゾールに変換し、該硬化したポリビニルカルバゾールを該成形型から離型することにより光学素子を成形する光学素子の製造方法を提供することである。
【0025】
また本発明の第16の手段は、本発明の第1乃至15の手段のいずれか1つの手段に記載の光学素子の製造方法によって製造した光学素子を提供することである。
【0026】
また本発明の第17の手段は、主に流動性を有するN−ビニルカルバゾールからなる物質を、回折形状を有する成形型に供給し、該N−ビニルカルバゾールを該成形型の内部において重合反応により硬化させポリビニルカルバゾールに変換して回折光学素子とし、該回折光学素子と他の回折光学素子とを、お互いの回折面を対向させて組み合わせることにより積層型光学素子を成形する積層型回折光学素子の製造方法を提供することである。
【0027】
また本発明の第18の手段は、硬化樹脂を、回折形状を有する成形型に供給し、該硬化樹脂を該成形型の内部において硬化させ、該硬化した硬化樹脂を、該成形型から離型して回折光学素子とし、主に流動性を有するN−ビニルカルバゾールからなる物質を前記回折光学素子に供給すし、該N−ビニルカルバゾールを前記回折光学素子の内部において重合反応により硬化させ、ポリビニルカルバゾールに変換することにより積層型光学素子を成形する積層型回折光学素子の製造方法を提供することである。
【0028】
また本発明の第19の手段は、硬化樹脂を、回折形状を有する第1、第2の成形型に供給し、該硬化樹脂を該第1、第2の成形型の内部において硬化させ、該硬化した硬化樹脂を、該第1、第2の成形型から離型して、第1、第2の回折光学素子とし、該第1、第2の回折光学素子を、お互いの回折面を対向させて配置し、その間に、主にN−ビニルカルバゾールからなる物質を供給し、該N−ビニルカルバゾールを該第1、第2の回折光学素子の内部において重合反応により硬化させ、ポリビニルカルバゾールに変換することにより積層型光学素子を成形する積層型回折光学素子の製造方法を提供することである。
【0029】
また本発明の第20の手段は、硬化樹脂を、回折形状を有する成形型に供給し、該硬化樹脂を該成形型の内部において硬化させ、該硬化した硬化樹脂を、該成形型から離型して回折光学素子とし、主に流動性を有するN−ビニルカルバゾールからなる物質を該回折光学素子に供給し、該N−ビニルカルバゾールを該回折光学素子の内部において重合反応により、該回折光学素子の回折形状を埋め込み、平坦化されるように硬化させてポリビニルカルバゾールに変換し、お互いの回折面が対向するように、該回折光学素子と他の回折光学素子とを組み合わせることにより積層型光学素子を成形する積層型回折光学素子の製造方法を提供することである。
【0030】
また本発明の第21の手段は、前記回折光学素子の屈折率分散は、前記他の回折光学素子の屈折率分散よりも高いことを特徴とする本発明の第17または第20の手段に記載の積層型回折光学素子の製造方法を提供することである。
【0031】
また本発明の第22の手段は、本発明の第17乃至第21のいずれか1つの手段に記載の積層型回折光学素子の製造方法によって製造した積層型回折光学素子を提供することである。
【0032】
また本発明の第23の手段は、熱重合により光学素子を成形する光学材料であって、N−ビニルカルバゾールと熱開始剤とを含む光学材料を提供することである。
【0033】
また本発明の第24の手段は、光重合により光学素子を成形する光学材料であって、N−ビニルカルバゾールと光開始剤とを含む光学材料を提供することである。
【0034】
また本発明の第25の手段は、前記光開始剤として、紫外光または可視光照射処理によってラジカル種の生成が可能な、ラジカル重合開始剤を含有する光学材料を提供することである。
【0035】
また本発明の第26の手段は、前記光開始剤として、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニル−ケトンを含有する本発明の第24の手段に記載の光学材料を提供することである。
【0036】
また本発明の第27の手段は、2個以上の不飽和エチレン基を有する化合物を含む本発明の第24の手段に記載の光学材料を提供することである。
【0037】
また本発明の第28の手段は、前記2個以上の不飽和エチレン基を有する化合物が、ジビニルベンゼンである本発明の第27の手段に記載の光学材料を提供することである。
【0038】
また本発明の第29の手段は、前記2個以上の不飽和エチレン基を有する化合物は、その重量割合が0.5wt%〜2.5wt%の範囲である本発明の第27または第28の手段に記載の光学材料を提供することである。
【0039】
また本発明の第30の手段は、本発明の第23または第29のいずれか1つの手段に記載の光学材料からなる光学素子を提供することである。
【0040】
また本発明の第31の手段は、本発明の第15または第25の手段に記載の光学素子、もしくは、本発明の第22の手段に記載の積層型光学素子を含む光学系を提供することである。
【0041】
また本発明の第32の手段は、前記光学系は、撮影光学系である本発明の第31の手段に記載の光学系を提供することである。
【0042】
また本発明の第33の手段は、前記光学系は、投影光学系である本発明の第31の手段に記載の光学系を提供することである。
【0043】
また本発明の第34の手段は、本発明の第31の手段に記載の光学系を用いて感光体上に像を形成する画像形成装置を提供することである。
【0044】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明は、前述の屈折率分散が大きい(νd=17.3)有機高分子材料であるポリビニルカルバゾールを、成形材料として使用した光学素子からなる積層型回折光学素子およびその製造方法に関する。本発明の製造方法によれば、ポリビニルカルバゾールを任意形状に成形する事が可能となり、100μmの領域で80%以上の透過率を有する光学素子を得ることができる。また、屈折率分散が大きいため、積層構造において回折格子形状の厚さは薄くなっている。
【0045】
積層型光学素子の構成は、回折格子構造を有する屈折率分散の異なる2種の光学材料からなる2つの光学素子が、それぞれ基板上に配置された状態で、お互いの回折格子が対向するように積層されている。2種の光学材料にうち屈折率分散の高い光学材料として、ポリビニルカルバゾールが使用されている。また3つの光学素子を積層し、少なくともその1つの光学材料がポリビニルカルバゾールである構成とすることもできる。
【0046】
このような回折格子構造を有する光学素子を、ポリビニルカルバゾールを利用して製造するためには、回折格子構造に対応した形状を有する金型を用いて成形する事ができる。製造方法としては、ポリビニルカルバゾールの粉末を型内に充填し、加熱し、加圧する熱可塑成形を挙げることができる。ポリビニルカルバゾールの粉末を使用することで、複雑で微細の形状を有する金型に対しても、容易にポリビニルカルバゾールを充填する事ができる。
【0047】
また、重合させたポリビニルカルバゾールを溶剤に溶解した後、金型内に充填し加熱する事で硬化させる方法も挙げる事もできる。溶解した状態で金型に充填されるため、複雑で微細の形状を有する金型に対しても、容易にポリビニルカルバゾールを充填する事ができる。ただしこの場合、使用した溶剤を金型内において、徐々に蒸発除去することにより所望の形状を得るものである。
【0048】
また、金型内で重合反応させることにより製造する事もできる。原料体としては、モノマー主成分のN−ビニルカルバゾールを使用する。N−ビニルカルバゾールは流動性を有しているため、複雑な回折格子構造を有する型の隙間にも、原材料を容易に充填することができる。N−ビニルカルバゾールは重合する事でポリビニルカルバゾールへと変換する。N−ビニルカルバゾールを型内に充填し、その後重合させることにより、ポリビニルカルバゾールの回折格子構造を高精度に成形する事ができる。
【0049】
N−ビニルカルバゾールの型内における重合反応には、熱重合を使用する事ができる。具体的には、まず基板となるガラス平板と、微細な回折格子構造に対応する型となる金属材料からなる型を対向して配置する。次に基板と型との間に流動性を有するN−ビニルカルバゾールを流し込む。次にその状態を維持したまま加熱する。これにより、モノマー主成分のN−ビニルカルバゾールは、熱重合反応しポリビニルカルバゾールとなる。
【0050】
尚、基板の熱膨張率と型の熱膨張率に大きな差が有る場合には、加熱温度が高いと回折格子の間隔等に不一致が生じてしまう。この不一致を回避するためには、熱重合における加熱温度を150℃以下に選択することが好ましい。またモノマーの揮発を防止するためには130℃以下に選択することが好ましい。また加熱温度が低いと、重合反応が完了するのに要する時間が長くなるため、少なくとも70℃以上に設定することが好ましい。従って、熱重合におけるに加熱温度は70℃以上、130℃以下の範囲に選択することが好ましい。
【0051】
また、反応速度を遅くする事なく加熱温度を低く抑えるためには、熱重合開始剤を添加し、重合反応を誘起する形態をとることができる。利用可能な熱重合開始剤として、例えば、アゾビソイソブチルニトリル(AIBN)、ベンゾイルパーオキサイド、t‐ブチルパーオキシピバレート、t‐ブチルパーオキシネオヘキサノエート、t‐ヘキシルパーオキシネオヘキサノエート、t‐ブチルパーオキシネオデカノエート、t‐ヘキシルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオヘキサノエート、クミルパーオキシネオデカノエート等を好適なものとして挙げることができる。
【0052】
尚、熱重合開始剤の添加比率は、加熱温度に応じて適宜選択することができ、また得られる重合体の目標とする平均分子量に応じて調整することもできる。本発明の実施の形態において、原料体であるモノマー主成分のN−ビニルカルバゾールに対する熱重合開始剤の添加比率は、0.005〜10質量%の範囲に選択することが好ましい。
【0053】
また、N−ビニルカルバゾールの型内における重合反応には、前述の熱重合に代えて光重合を使用する事もできる。光照射による光重合反応の誘起は、N−ビニルカルバゾール自体の光吸収に付随するラジカル生成に起因する機構の他に、光重合開始剤を利用して重合を開始する機構を利用するもできる。光重合開始剤としてラジカル開始剤を利用して、光照射によるラジカル生成に起因する機構を利用するものが好ましい。
【0054】
前記N−ビニルカルバゾールにおいて、利用可能な光重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、4−フェニルベンゾフェノン、4−フェノキシベンゾフェノン、4,4′−ジフェニルベンゾフェノン、4,4′−ジフェノキシベンゾフェノンなどを好適なものとして挙げることができる。なお、モノマー主成分のN−ビニルカルバゾールに対する光重合開始剤の添加比率は、光照射量や付加的な加熱温度に応じて適宜選択することができる。また得られる重合体の目標とする平均分子量に応じて調整することもできる。尚、本発明にかかる回折光学素子の製造に利用する際、N−ビニルカルバゾールに対する光重合開始剤の添加比率として、原料体全体における光重合開始剤の含有率を0.005〜10質量%の範囲に選択することが好ましい。光重合開始剤を使用することで、照射条件を自由に設定することが可能となり、照射時間を大幅に短くする事も可能となる。
【0055】
光照射により、ポリビニルカルバゾールからなる回折光学素子を成形する場合、基板としては透明なガラス平板を使用し、型として微細な回折格子構造に対応する金属材料を使用する。基板と型との間に流動性を示すN−ビニルカルバゾールを流し込む。その状態を維持したまま、光照射してモノマー主成分のN−ビニルカルバゾールの光重合を行う。かかる光重合反応に供する光照射は、光重合開始剤を利用したラジカル生成に起因する機構に応じて、好適な波長の光を利用して行われる。光照射は、基板と型の間に保持されたN−ビニルカルバゾールに対して、ガラス平板を介して均一に実施される。照射される光量は、光重合開始剤を利用した、ラジカル生成に起因する機構に応じて、また、含有される光重合開始剤の含有比率に応じて、適宜選択される。
【0056】
尚、前述の光重合及び熱重合を使用すれば、溶剤を使用する必要がないため、光学素子を短い作業時間で製造することができる。またN−ビニルカルバゾールはそれ自体に流動性を有しており、微細形状の型であっても容易に流し込む事ができる。従って、光重合及び熱重合を使用するほうがより好ましい形態である。また、光重合及び熱重合を使用する形態では、型の内部にN−ビニルカルバゾールを保持した状態で、ポリビニルカルバゾールへの変換を行うため、不要な揮発性成分の生成を回避することができる。そのため、型内部に残留する揮発性物質、溶剤などに起因する気泡の発生を回避する事もできる。
【0057】
次に、ポリビニルカルバゾールからなる回折光学素子を、重合反応により製造する際に有効な、ポリビニルカルバゾールへの添加物について説明する。
【0058】
ポリビニルカルバゾールは対衝撃性が低く、また線形ポリマーであるため温度による弾性率の変化が大きい。そのため、N−ビニルカルバゾールと重合開始剤の重合反応により形成されるポリビニルカルバゾールのみで構成された光学素子では、重合反応において型内で硬化収縮により残留応力が発生する。この残留応力は高温多湿の環境下や溶媒付着時に開放され、形状の変形やクラックの発生の原因となる。この変形やクラックを抑制するためには、N−ビニルカルバゾールと光重合開始剤に、2個以上の不飽和エチレン基を有する化合物を添加し、それらが架橋化することにより形成される光学材料を使用することが好ましい。これにより、成形時の残留応力が高温多湿の環境下や溶媒付着時に開放されることなく、形状の変形やクラックの発生を抑制することが可能となる。
【0059】
また、ここで使用されるのは光学材料であるため透明性を要求される。ポリビニルカルバゾールは透明であるが、その他の化合物を添加すると、光重合による成形後のポリマー同士の相溶性によっては、相分離を起こし、白く濁り、光学的散乱の原因となる事もある。しかしながら、添加する2個以上の不飽和エチレン基を有する化合物を2.5wt%以下の範囲とすることにより、相分離が起きたり、白く濁ることなく、光学的散乱のない光学素子を成形することができる。また0.25wt%以下の範囲とすることにより、形状の変形やクラックの発生を抑制する事ができる。
【0060】
また、添加する2個以上の不飽和エチレン基を有する化合物は、ジビニルベンゼンであることが好ましい。ジビニルベンゼンは、スチレン、ビニルトルエンのように酸素阻害する事なく光重合するものであり、80℃〜100℃の加温状態において反応や蒸発することもない安定な化合物である。
【0061】
また、N−ビニルカルバゾールは結晶性化合物であり、光重合するためには結晶を溶融するため、融点である65℃以上で保温する必要がある。ジビニルベンゼンは、反応性の高いアクリル系、メタクリル系の化合物のように、65℃以上の保温により数時間で反応することがないため、安定なモノマーを形成する事ができる。また、光学材料に要求される特性として、低アッペ数で高屈折率であることが要求される。ジビニルベンゼンの屈折率は(Nd=1.532:液体時)と高くなっている。尚、ジビニルベンゼンはメタ、パラ各種異性体が混在していても差し支えない。
【0062】
またジビニルベンゼンの他に、その不純物であるエチルビニルベンゼンやジエチルベンゼンを含んでもかまわない。光学素子の成形方法が光重合を用いた塊状重合である場合、若干のモノマーが型内に残留してしまう。そのため、エチルビニルベンゼンやジエチルベンゼンの混入により耐熱性の低下等といった問題はないが、光学的散乱を増加する可能性は高い。また重合時の架橋点が減少する。そのため、エチルビニルベンゼンやジエチルベンゼンの混入は極力を減らすほうが好ましい。
【0063】
次に本発明の実施の形態を図面を参照して具体的に説明する。
【0064】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態を、図1、図2、図3に参照して説明する。まず、図1(a)に示す様に回折格子形状に加工された金型1を窒素雰囲気中で280℃に加熱した後、市販のポリビニルカルバゾール(ACROS社製)の粉末2を供給した。その上にガラス(BK7)平板3を乗せ、図1(b)に示すように、280℃、圧力20MPa、2時間で成形を行った。その後4時間かけて室温まで徐冷した後、図1(c)に示すように、硬化したポリビニルカルバゾール2’を金型1から離型して回折光学素子4を製造した。
【0065】
一方、図2(a)に示す様に、回折格子形状に加工された金型5を窒素雰囲気中で280℃に加熱した後、光学特性が(nd=1.513,νd=51.0)の光硬化樹脂6を金型5に流し込んだ。その上にガラス(BK7)平板7を乗せて、図2(b)に示すように加圧した。その後不図示のUV露光機(EX250:HOYA−SCHOTT社製)で3000mJ/cm2照射した後、図2(c)に示すように、硬化した光硬化樹脂6を金型5から離型して回折光学素子8を製造した。
【0066】
次に回折光学素子4と回折光学素子8の回折面に反射防止膜を成膜した後、図3に示す様に、お互いの回折格子が対向する様に組み合わせて積層型回折光学素子10を製造した。9は回折光学素子4と回折光学素子8の間隔を決定するスペーサである。回折光学素子4と回折光学素子8のそれぞれの格子間ピッチは共に80μmである。回折光学素子4と回折光学素子8のお互いの回折格子の谷間の間隔は11.8μm、山間の間隔は1.5μmである。回折光学素子4の山の高さは3.91μm、回折光学素子8の山の高さは6.45μmである。
【0067】
図4(a)は、製造された積層型回折光学素子10における、入射角度0°の一次回折光の各波長における強度を示したグラフである。横軸は波長、縦軸は回折効率を示している。図4(a)において、波長400〜700nmにおいて、一次回折光に対する回折効率は95%以上になっている。この値は回折効率としては非常に高いものであるため、積層型回折光学素子10は、使用波長領域において良好な強度の波長分布を有していることとなる。
【0068】
図4(b)は、入射角度を変異させた際の、各入射角度における次回折光の強度の低下する比率を示したグラフである。横軸は入射角、縦軸は光の損失率である。入射角が大きくなればなるほど損失率は高くなるが、図4(b)において、入射角10°のおいて光損失率は3.52%である。この値は、非常に良好な特性を示す値であり、積層型回折光学素子10は、特定次数に光線が集中しているものである。
【0069】
(比較例1)
比較例1を図5、図2、図6を参照して説明する。第1の実施の形態に示した、ポリビニルカルバゾールの粉末2に代えて、光学特性(nd=1.636,νd=22.8)の光硬化樹脂12を使用した。図5(a)に示すように光硬化樹脂12を金型11に供給した。その上を図5(b)に示すように、ガラス(BK7)平板13で押さえ込み、不図示のUV露光機(EX250:HOYA−SCHOTT社製)で20000mJ/cm2照射した。その後図5(c)に示すように、光硬化樹脂12を金型11から離型して回折光学素子14を製造した。一方、第1の実施の形態を示した図2と同様にして回折素子18を製造した。
【0070】
次に回折光学素子14と回折光学素子8に反射防止膜を成膜した後、図6に示す様に、お互いの回折格子が対向する様に組み合わせて積層型回折光学素子20を製造した。回折光学素子14と回折光学素子8のそれぞれの格子間ピッチは80μmである。回折光学素子14と回折光学素子8のお互いの回折格子の谷間の間隔は17.06μm、山間の間隔は1.5μmである。回折光学素子14の山の高さは6.43μm、回折光学素子8の山の高さは9.13μmである。
【0071】
図7(a)は、製造された積層型回折光学素子20における、入射角度0°の一次回折光の各波長における強度を示したグラフである。横軸は波長、縦軸は回折効率を示している。図7(a)より、使用波長領域である400〜700nmにおいて、一次回折光に対する回折効率は95%以上になっている。この値は回折効率としては非常に高いものであるため、多層回折光学素子20は、使用波長領域において良好な強度の波長分布を有していることとなる。
【0072】
図7(b)は、入射角度を変異させた際の、各入射角度における次回折光の強度の低下する比率を示したグラフである。横軸は入射角、縦軸は光の損失率である。比較のため第1の実施の形態の値も重ねて表示している。図7(b)から分かるように、比較例1の光損失率は、第1の実施の形態の光損失率よりも多くなっている。入射角10°において比較例1の光損失率は4.58%である。これは第1の実施の形態に較べ1.06%損失率が上昇している。つまり第1の実施の形態に比べて、特定次数に光線が集中していないため、フレア光が発生し、色収差を大きくなっている。
【0073】
[第2の実施の形態]
次に本発明の第2の実施の形態を、図8を参照して説明する。本実施の形態では、第1の実施の形態に示したポリビニルカルバゾールの粉末2に代えて、30w%ポリビニルカルバゾール(ACROS社製)/クロロホルムの溶液32を使用した。第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同じ部材には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0074】
まず図8(a)に示すように、回折格子形状に加工された金型31の上に、30w%ポリビニルカルバゾール(ACROS社製)/クロロホルムの溶液32を供給した。その上に図8(b)に示すように、ガラス(BK7)平板33を乗せ、70℃、24時間で溶媒をとばした。その後室温で48時間、真空乾燥させた後、図8(c)に示すように、硬化したポリビニルカルバゾール32’を金型31から離型して回折光学素子34を製造した。また一方、第1の実施の形態と同様にして回折光学素子8を製造した。
【0075】
次に回折光学素子34と回折光学素子8の回折面に反射防止膜を成膜した後、お互いの回折格子が対向する様に組み合わせて積層型回折光学素子を製造した。それぞれの格子間ピッチは80μmであり、回折部分の層厚は11.8μmである。
【0076】
図9(a)は、製造された積層型回折光学素子における、入射角度0°の一次回折光の各波長における強度を示したグラフである。横軸は波長、縦軸は回折効率を示している。図9(a)において、波長400〜700nmにおいて、一次回折光に対する回折効率は95%以上になっている。この値は回折効率としては非常に高いものであるため、本実施の形態における積層型回折光学素子は、使用波長領域において良好な強度の波長分布を有していることとなる。
【0077】
図9(b)は、入射角度を変異させた際の、各入射角度における次回折光の強度の低下する比率を示したグラフである。横軸は入射角、縦軸は光の損失率である。入射角が大きくなればなるほど損失率は高くなるが、図9(b)において、入射角10°のおいて光損失率は3.52%である。この値は、非常に良好な特性を示す値であり、本実施の形態における積層型回折光学素子10は、特定次数に光線が集中しているものである。
【0078】
[第3の実施の形態]
本発明の第3の実施の形態を、図10を参照して示す。本実施の形態では、第1の実施の形態に示したポリビニルカルバゾール2の粉末に代えて、流動性を有する熱重合用原料体として、N−ビニルカルバゾール42(東京化成工業製)を使用した。第3の実施の形態において、第1の実施の形態と同じ部材には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0079】
まず図10(a)に示すように、回折格子形状に加工された金型41の上に、N−ビニルカルバゾール42を供給した。その上に図10(b)に示すように、ガラス(BK7)平板43を乗せ、120℃で5時間加熱し、熱重合成形を行った。この加熱によりN−ビニルカルバゾール42は重合し、硬化したポリビニルカルバゾール42’に変換する。その後図10(c)に示すように、ポリビニルカルバゾールを金型41から離型して回折光学素子44を製造した。また一方、第1の実施の形態と同様にして回折光学素子8を製造した。
【0080】
次に回折光学素子44と回折光学素子8の回折面に反射防止膜を成膜した後、お互いの回折格子が対向する様に組み合わせて積層型回折光学素子を製造した。それぞれの格子間ピッチは80μmであり、回折部分の層厚は11.8μmである。
【0081】
図11(a)は、製造された積層型回折光学素子における、入射角度0°の一次回折光の各波長における強度を示したグラフである。横軸は波長、縦軸は回折効率を示している。図11(a)において、波長400〜700nmにおいて、一次回折光に対する回折効率は95%以上になっている。この値は回折効率としては非常に高いものであるため、本実施の形態における積層型回折光学素子は、使用波長領域において良好な強度の波長分布を有していることとなる。
【0082】
図11(b)は、入射角度を変異させた際の、各入射角度における次回折光の強度の低下する比率を示したグラフである。横軸は入射角、縦軸は光の損失率である。入射角が大きくなればなるほど損失率は高くなるが、図11(b)において、入射角10°のおいて光損失率は3.52%である。この値は、非常に良好な特性を示す値であり、本実施の形態における積層型回折光学素子10は、特定次数に光線が集中しているものである。
【0083】
[第4の実施の形態]
次に本発明の第4の実施の形態を、図12を参照して説明する。本実施の形態では、第1の実施の形態に示したポリビニルカルバゾール2の粉末に代えて、流動性を有する光重合用原料体として、N−ビニルカルバゾール52(東京化成工業製)を使用した。第4の実施の形態において、第1の実施の形態と同じ部材には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0084】
まず図12(a)に示すように、回折格子形状に加工された金型51の上に、N−ビニルカルバゾール52を供給した。その上に図12(b)に示すように、ガラス(BK7)平板53を乗せ、70℃で加熱しつつ、ガラス平板53を介して、UV露光機(EX250:HOYA−SCHOTT社製)で、紫外光を500J/cm2(100mW/cm2 5000秒)照射し、光重合成形を行った。この照射によりN−ビニルカルバゾール52は重合し、硬化したポリビニルカルバゾール52’に変換する。その後図12(c)に示すように、ポリビニルカルバゾールを金型51から離型して回折光学素子54を製造した。また一方、第1の実施の形態と同様にして回折光学素子8を製造した。
【0085】
次に回折光学素子54と回折光学素子8の回折面に反射防止膜を成膜した後、お互いの回折格子が対向する様に組み合わせて積層型回折光学素子を製造した。それぞれの格子間ピッチは80μmであり、回折部分の層厚は11.8μmである。
【0086】
図13(a)は、製造された積層型回折光学素子における、入射角度0°の一次回折光の各波長における強度を示したグラフである。横軸は波長、縦軸は回折効率を示している。図13(a)において、波長500〜700nmにおいて、一次回折光に対する回折効率は95%以上になっている。また、波長400〜500nmの領域においても、85%以上となっている。この値は回折効率としては高いものであるため、本実施の形態における積層型回折光学素子は、使用波長領域において良好な強度の波長分布を有していることとなる。
【0087】
図13(b)は、入射角度を変異させた際の、各入射角度における次回折光の強度の低下する比率を示したグラフである。横軸は入射角、縦軸は光の損失率である。入射角が大きくなればなるほど損失率は高くなるが、図13(b)において、入射角10°のおいて光損失率は3.52%である。この値は、非常に良好な特性を示す値であり、本実施の形態における積層型回折光学素子10は、特定次数に光線が集中しているものである
[第5の実施の形態]
次に本発明の第5の実施の形態を、図14を参照して説明する。本実施の形態では、熱重合用原料体として、第3の実施の形態に示したN−ビニルカルバゾール42に、熱重合開始剤(AIBM)0.5%を添加したものを熱重合用原料体62として使用した。第5の実施の形態において、第1の実施の形態と同じ部材には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0088】
まず図14(a)に示すように、回折格子形状に加工された金型61の上に、熱重合用原料体62を供給した。その上に図14(b)に示すように、ガラス(BK7)平板63を乗せ、100℃で2時間加熱し、熱重合成形を行った。この照射により熱重合用原料体62は、硬化したポリビニルカルバゾール62’に変換する。その後図14(c)に示すように、ポリビニルカルバゾールを金型61から離型して回折光学素子64を製造した。また一方、第1の実施の形態と同様にして回折光学素子8を製造した。
【0089】
次に回折光学素子64と回折光学素子8の回折面に反射防止膜を成膜した後、お互いの回折格子が対向する様に組み合わせて積層型回折光学素子を製造した。それぞれの格子間ピッチは80μmであり、回折部分の層厚は11.8μmである。
【0090】
図15(a)は、製造された積層型回折光学素子における、入射角度0°の一次回折光の各波長における強度を示したグラフである。横軸は波長、縦軸は回折効率を示している。図15(a)において、波長400〜700nmにおいて、一次回折光に対する回折効率は95%以上になっている。この値は回折効率としては非常に高いものであるため、本実施の形態における積層型回折光学素子は、使用波長領域において良好な強度の波長分布を有していることとなる。
【0091】
図15(b)は、入射角度を変異させた際の、各入射角度における次回折光の強度の低下する比率を示したグラフである。横軸は入射角、縦軸は光の損失率である。入射角が大きくなればなるほど損失率は高くなるが、図15(b)において、入射角10°のおいて光損失率は3.52%である。この値は、非常に良好な特性を示す値であり、本実施の形態における積層型回折光学素子10は、特定次数に光線が集中しているものである。
【0092】
本実施の形態に示すように、N−ビニルカルバゾールに熱重合開始剤を添加したものを、熱重合用原料体として使用する事により、加熱温度を低く抑え、加熱時間を短くする事が可能となる。
【0093】
[第6の実施の形態]
次に本発明の第6の実施の形態を、図16を参照して説明する。本実施の形態では、光重合用原料体として、第4の実施の形態に示したN−ビニルカルバゾール52に、光重合開始剤2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン 1%を添加したものを光重合用原料体72として使用した。第6の実施の形態において、第1の実施の形態と同じ部材には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0094】
まず図16(a)に示すように、回折格子形状に加工された金型1の上に、光重合用原料体72を供給した。その上に図16(b)に示すように、ガラス(BK7)平板73を乗せ、70℃で加熱しつつ、ガラス平板73を介して、UV露光機(EX250:HOYA−SCHOTT社製)で、紫外光を20000mJ/cm2(100mW/cm2 200秒)照射し、光重合成形を行った。この照射により光重合用原料体72は、その中のN−ビニルカルバゾール52が重合し、硬化したポリビニルカルバゾール72’に変換する。その後図16(c)に示すように、ポリビニルカルバゾールを金型71から離型して回折光学素子74を製造した。また一方、第1の実施の形態と同様にして回折光学素子8を製造した。
【0095】
次に回折光学素子74と回折光学素子8の回折面に反射防止膜を成膜した後、お互いの回折格子が対向する様に組み合わせて積層型回折光学素子を製造した。それぞれの格子間ピッチは80μmであり、回折部分の層厚は11.8μmである。
【0096】
図17(a)は、製造された積層型回折光学素子における、入射角度0°の一次回折光の各波長における強度を示したグラフである。横軸は波長、縦軸は回折効率を示している。図17(a)において、波長450〜700nmにおいて、一次回折光に対する回折効率は95%以上になっている。また、波長400〜450nmの領域においても、90%以上となっているこの値は回折効率としては非常に高いものであるため、本実施の形態における積層型回折光学素子は、使用波長領域において良好な強度の波長分布を有していることとなる。
【0097】
図17(b)は、入射角度を変異させた際の、各入射角度における次回折光の強度の低下する比率を示したグラフである。横軸は入射角、縦軸は光の損失率である。入射角が大きくなればなるほど損失率は高くなるが、図17(b)において、入射角10°のおいて光損失率は3.52%である。この値は、非常に良好な特性を示す値であり、本実施の形態における積層型回折光学素子は、特定次数に光線が集中しているものである。
【0098】
本実施の形態に示すように、N−ビニルカルバゾールに光重合開始剤を添加したものを、光重合用原料体として使用する事により、照射時間を大幅に短くする事が可能となる。
【0099】
[第7の実施の形態]
次に本発明の第7の実施の形態を、図18を参照して説明する。本実施の形態では、光重合用原料体として、第4の実施の形態に示したN−ビニルカルバゾール52に、光重合開始剤1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン 1%を添加したものを光重合用原料体82として使用した。第8の実施の形態において、第1の実施の形態と同じ部材には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0100】
まず図18(a)に示すように、回折格子形状に加工された金型81に、熱重合用原料体82を供給した。その上に図18(b)に示すように、ガラス(BK7)平板83を乗せ、70℃で加熱しつつ、ガラス(BK7)平板83を介して、UV露光機(EX250:HOYA−SCHOTT社製)で、紫外光を20000mJ/cm2(100mW/cm2 200秒)照射し、光重合成形を行った。この照射により熱重合用原料体82は、その中のN−ビニルカルバゾール52が重合し、硬化したポリビニルカルバゾール82’に変換する。次いで、図18(c)に示すように、ポリビニルカルバゾールを金型71から離型して回折光学素子74を製造した。また一方、第1の実施の形態と同様にして回折光学素子8を製造した。
【0101】
次に回折光学素子74と回折光学素子8の回折面に反射防止膜を成膜した後、お互いの回折格子が対向する様に組み合わせて積層型回折光学素子を製造した。それぞれの格子間ピッチは80μmであり、回折部分の層厚は11.8μmである。
【0102】
図19(a)は、製造された積層型回折光学素子における、入射角度0°の一次回折光の各波長における強度を示したグラフである。横軸は波長、縦軸は回折効率を示している。図19(a)において、波長400〜700nmにおいて、一次回折光に対する回折効率は95%以上になっている。この値は回折効率としては非常に高いものであるため、本実施の形態における積層型回折光学素子は、使用波長領域において良好な強度の波長分布を有していることとなる。 図19(b)は、入射角度を変異させた際の、各入射角度における次回折光の強度の低下する比率を示したグラフである。横軸は入射角、縦軸は光の損失率である。入射角が大きくなればなるほど損失率は高くなるが、図19(b)において、入射角10°のおいて光損失率は3.52%である。この値は、非常に良好な特性を示す値であり、本実施の形態における積層型回折光学素子は、特定次数に光線が集中しているものである。
【0103】
本実施の形態に示すように、N−ビニルカルバゾールに光重合開始剤を添加したものを、光重合用原料体として使用する事により、照射時間を大幅に短くする事が可能となる。
【0104】
[第8の実施の形態]
次に本発明の第8の実施の形態を説明する。本実施の形態では、光重合用原料体として、第7の実施の形態に示した光重合用原料体82に加えて、添加物として2個以上の不飽和エチレン基を有する化合物を加えたもの(光重合用原料体92)を使用した。
【0105】
添加物の有効性を示すために、次のような実験を行った。図20は、実験の手順を示す概略図である。尚2個以上の不飽和エチレン基を有する化合物としては、〔表1〕の実験例1〜実験例8に示す化合物を使用した。
【0106】
【表1】
【0107】
まず、N−ビニルカルバゾール(東京化成工業株式会社製)9.8gと光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン0.1gを混合し、80℃で2時間加熱溶解した。更に、十分に攪拌した後、〔表1〕に示す2個以上の不飽和エチレン基を有する化合物をそれぞれ0.1g混合した後、十分に80℃で攪拌し、光重合用原料体92は調製した。次に図20(a)に示すように、約0.04gの光重合用原料体92を、平面状の金型91にディスペンサーを用いて供給した。金型温度はヒーター95の温調制御によって±1.0℃以内に制御されている。次に、金型91の上に図20(b)に示すように、50μmのスペーサを上に載せた後、80℃に保温されたガラス(BK7)平板93を光重合用原料体92に圧着させる。光重合用原料体92を押し広げ、所望の形状になったところで、ガラス平板93を介して、中心波長365nmの紫外線を40mWで1000s照射し、光重合成形を行った。この照射により光重合用原料体92は、その中のN−ビニルカルバゾールが重合し、硬化したポリビニルカルバゾール92’に変換する。最後に図20(c)に示すように、金型91からポリビニルカルバゾール92’を離型することで成形物94を得た。
【0108】
実験例1〜8に示した化合物を添加した光重合用原料体92のモノマー混合の状態を確認した。また、モノマー混合状態での安定性を確認するために80℃で5hrの保温試験を行った。更に、硬化時の成形物として硬化時の白濁、エタノール滴下による溶剤クラックの有無、高温高湿下70℃、70%、200hrの環境耐久試験後における成形面の変形を確認した。実験例7に関してはモノマー混合時に硬化したため、それ以降の成形及び試験は行えなかった。その他に関しては混合後、直ぐに増粘したが成形可能であったので成形を行った。これらの結果を〔表2〕に示す。
【0109】
【表2】
【0110】
〔表2〕から分かるように、実験例7を除いて2個以上の不飽和エチレン基を有する化合物の添加によって光学的に透明であり、溶剤クラックや、高温下の耐久による面の変形のない成形物を得ることができた。
【0111】
[第9の実施の形態]
次に本発明の第9の実施の形態を説明する。本実施の形態は、光重合用原料体として、第8の実施の形態の実験例8に相当する、N−ビニルカルバゾールと、光重合開始剤である1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンと、添加剤であるジビニルベンゼンとを混合したものを使用する。
【0112】
各材料を〔表3〕の実験例9〜15に示す割合で混合し、80℃で2時間加熱溶解した後、十分に攪拌し本実施例の光重合用原料体を得た。次に第8の実施の形態と同様の方法で成形物を製造した。尚、比較例としてジビニルベンゼンを添加光重合用原料体も同様の方法で製造した。
【0113】
【表3】
【0114】
実験例9〜15に示した化合物、及び比較実験例からなる各光重合用原料体について、成形物の白濁を評価するために透過率を測定し、白濁等を確認した。またエタノール滴下による溶剤クラック試験及び高温高湿下70℃、70%、200hrの環境耐久試験後における成形面の変形を確認した。高温高湿下の環境耐久試験における面変形及び溶剤クラック試験についての結果について〔表4〕に示す。尚、実験例9〜15と比較実験例の400nmでの透過率を図21に示す。図21の横軸はジビンルベンゼン(DVB)の濃度であり、縦軸は透過率を示している。
【0115】
【表4】
【0116】
図21から分かるように、ジビニルベンゼンの添加量が0.25%〜2.5%の領域である実験例9〜12においては、透過率にはジビニルベンゼンを添加していない比較実験例とほぼ同等の透過率を示している。また〔表4〕から分かるように、ジビニルベンゼンの添加量が5.0%以上の領域である実験例13〜15においては、成形物は白濁し、透過率の低下が観測された。また、溶剤クラック、面の変形においてはジビニルベンゼン0.5%以上添加した実験例10〜15においては変形、溶剤クラック共に観測されなかった。
【0117】
従ってジビニルベンゼンの添加量は、0.5wt%〜2.5wt%の範囲とする事が最も好ましいと言うことができる。
【0118】
[第10の実施の形態]
次に本発明の第10の実施の形態を、図22を参照して説明する。本実施の形態では、光重合用原料体102として、第9の実施の形態の実験例11に相当する、N−ビニルカルバゾール9.900gと、光重合開始剤である1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン0.100gと、添加剤であるジビニルベンゼン0.100gとを混合したものを使用した。
【0119】
まず図22(a)に示すように、回折格子形状に加工された金型の上に、前述の実験例11に相当する光重合用原料体102を供給した。その上に22(b)に示すように、ガラス(BK7)平板101を乗せ、70℃で加熱しつつ、ガラス平板101を介して、UV露光機(EX250:HOYA−SCHOTT社製)で、紫外光を20000mJ/cm2(100mW/cm2 200秒)照射し、光重合成形を行った。この照射によりN−ビニルカルバゾールは重合し、硬化したポリビニルカルバゾール102’に変換する。その後22(c)に示すように、ポリビニルカルバゾールを金型101から離型して回折光学素子104を製造した。この時の回折光学素子104のアッペ数を測定したところνd=17.5であった。また一方、第1の実施の形態と同様にして回折光学素子8を製造した。
【0120】
次に図23に示すように、回折光学素子と回折光学素子8の回折面に反射防止膜を成膜した後、お互いの回折格子が対向する様に組み合わせて積層型回折光学素子110を製造した。回折光学素子102と回折光学素子8のそれぞれの格子間ピッチは80μmである。回折光学素子102と回折光学素子8のお互いの回折格子の谷間の間隔は11.9μm、山間の間隔は1.5μmである。回折光学素子102の山の高さは3.91μm、回折光学素子18の山の高さは6.49μmである。
【0121】
図24(a)は、製造された積層型回折光学素子110における、入射角度0°の一次回折光の各波長における強度を示したグラフである。横軸は波長、縦軸は回折効率を示している。図24(a)より、使用波長領域である400〜700nmにおいて、一次回折光に対する回折効率は95%以上になっている。この値は回折効率としては非常に高いものであるため、積層型回折光学素子110は、使用波長領域において良好な強度の波長分布を有していることとなる。 図24(b)は、入射角度を変異させた際の、各入射角度における次回折光の強度の低下する比率を示したグラフである。横軸は入射角、縦軸は光の損失率である。入射角が大きくなればなるほど損失率は高くなるが、図24(b)において、入射角10°のおいて光損失率は3.52%である。この値は、非常に良好な特性を示す値であり、本実施の形態における積層型回折光学素子110は、特定次数に光線が集中しているものである。
【0122】
[第11の実施の形態]
次に本発明の第11の実施の形態を、図25を参照して説明する。前述の実施の形態1〜10においては、回折光学素子を成形するために金型を使用しているが、本発明はこれに限られるものではない。図25に示すように、積層型回折光学素子の場合は、金型に代えて他方の回折光学素子を成形型として、一方のポリビニルカルバゾールからなる回折光学素子を成形する事もできる。図25において第4の実施の形態を示す図12と同じ部材には同じ符号を付してある。図25において図12と異なるのは、金型51の代わりに、ガラス平板7及び光硬化樹脂6からなる回折光学素子8を使用した点である。この様にすることで、回折光学素子8と凹凸が逆の回折光学素子を正確に製造する事ができる。
【0123】
[第12の実施の形態]
次に本発明の第12の実施の形態を、図26を参照して説明する。前述の実施の形態1〜10の積層型回折光学素子においては、一方のガラス基板に接触している回折光学素子をポリビニルカルバゾールにより成形しているが、本発明はこのような構成に限られるものではない。図26は、2つの回折光学素子201、202を対向して組み合わせた多層型回折光学素子である。
【0124】
各回折光学素子201、202は共に、ガラス基板203、204に光硬化樹脂(nd=1.636,νd=22.8)205、206を成形した。2つの回折光学素子201、202の間に、ポリビニルカルバゾール207を充填し、両方の回折光学素子201,202を成形型として、その回折形状をN−ビニルカルバゾールに転写した。この様にして、3層からなる積層型回折光学素子210を製造する事により、更に複雑な光学設計に対応する事ができる。
【0125】
[第13の実施の形態]
次に本発明の第13の実施の形態を、図27、図28を参照して説明する。本実施の形態は図27に示すように、前述の第12の実施の形態における光硬化樹脂206の回折形状を、ポリビニルカルバゾール217により埋め込み、平坦化した積層型回折光学素子である。この場合、回折光学素子201、202を形成した後、一方の回折光学素子202を成形型として、ポリビニルカルバゾール217を成形した。
【0126】
ポリビニルカルバゾール217の成形方法を図28に示す。図28(a)において、ガラス(BK7)平板214及び光硬化樹脂216からなる回折光学素子212に、流動性を有するN−ビニルカルバゾール217’を供給した。その上にガラス(BK7)平板218を乗せ、図28(b)に示すように成形を行った。その後図28(c)に示すように、硬化したポリビニルカルバゾール217をガラス平板218から離型して表面が平坦化された回折光学素子220を製造した。
【0127】
次にガラス(BK7)平板213及び光硬化樹脂215からなる回折光学素子211と、回折光学素子220の回折面に反射防止膜を成膜した後、図27に示す様に、お互いの回折格子が対向する様に組み合わせて3層からなる積層型回折光学素子230を製造した。この様にして、多層型回折光学素子230を製造する事により、更に複雑な光学設計に対応するとともに、3層以上の積層型回折光学素子を容易に形成する事が可能となる。
【0128】
尚、本実施の形態における回折光学素子は1〜3層の回折光学素子であるが、本発明はこれに限られるものではなく、4層以上の積層型回折光学素子でもかまわない。
【0129】
尚、本実施の形態における回折光学素子は、他のレンズ等の光学素子と組み合わせることにより、撮影光学系や投影光学系等の光学系を形成する事もできる。またこれらの光学系を使用して、銀塩フィルムやCCD等の感光体上に像を形成する画像形成装置を形成する事もできる。
【0130】
尚、本実施の形態における光学素子は、回折形状を有している回折光学素子であるが、本発明はこれに限られるものではなく、特定の光学性能を発現する微細な形状を有する光学素子であればかまわない。
【0131】
【発明の効果】
本発明における回折光学素子によれば、光学材料として屈折率分散の大きいポリビニルカルバゾールを用いているため、入射角が大きくなった場合でも、フレア光やゴーストが発生する事がなく、光損失を少なくし、色収差を抑制することができる。また回折格子の総厚を薄くする事も可能となる。
【0132】
また、流動性を有するモノマー主成分のN−ビニルカルバゾールを、金型内に展開し、金型内において重合することにより、脆い材料であるポリビニルカルバゾールを回折光学素子の材料として使用する事を可能としている。これにより、回折格子の形状が微細化、複雑化した場合においても、容易にポリビニルカルバゾールからなる回折光学素子を高精度に製造する事ができる。
【0133】
また、熱重合により製造する場合、N−ビニルカルバゾールに熱重合開始剤を添加したものを熱重合用原料体として使用する事により、加熱温度を低く抑え、加熱時間を短くする事が可能となる。
【0134】
また、光重合により製造する場合、N−ビニルカルバゾールに光重合開始剤を添加したものを光重合用原料体として使用する事により、照射時間を大幅に短くする事が可能となる。
【0135】
また、重合用原料体として2個以上の不飽和エチレン基を有する化合物を添加する事により、光学的に透明であり、溶剤クラックや、高温下の耐久による面の変形のない成形物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態における、ポリビニルカルバゾール(PVCZ)からなる回折光学素子の成形プロセスを示す概略図
【図2】第1の実施の形態における、光硬化樹脂からなる回折光学素子の成形プロセスを示す概略図
【図3】第1の実施の形態における、PVCZを用いた積層型回折光学素子の断面図。
【図4】(a)は第1の実施の形態における、積層型回折光学素子の入射角度0°の一次回折光強度を示すグラフ、(b)は第1の実施の形態における、入射角度を変異させた際の次回折光強度の低下比率(光損失率)を示すグラフ。
【図5】比較例1における、光硬化樹脂からなる回折光学素子の成形プロセスを示す概略図。
【図6】比較例1における、光硬化樹脂を用いた積層型回折光学素子の断面図。
【図7】(a)は比較例1における、積層型回折光学素子の入射角度0°の一次回折光強度を示すグラフ、(b)は比較例1及び第1の実施の形態における、入射角度を変異させた際の次回折光強度の低下比率(光損失率)を示すグラフ。
【図8】第2の実施の形態における、PVCZ/クロロホルムの溶液からなる回折光学素子の成形プロセスを示す概略図。
【図9】(a)は第2の実施の形態における、積層型回折光学素子の入射角度0°の一次回折光強度を示すグラフ、(b)は第2の実施の形態における、入射角度を変異させた際の次回折光強度の低下比率(光損失率)を示すグラフ。
【図10】第3の実施の形態における、N−PVCZを熱重合により成形する回折光学素子の成形プロセスを示す概略図
【図11】(a)は第3の実施の形態における、積層型回折光学素子の入射角度0°の一次回折光強度を示すグラフ、(b)は第3の実施の形態における、入射角度を変異させた際の次回折光強度の低下比率(光損失率)を示すグラフ。
【図12】第4の実施の形態における、N−PVCZを光重合により成形する回折光学素子の成形プロセスを示す概略図。
【図13】(a)は第4の実施の形態における、積層型回折光学素子の入射角度0°の一次回折光強度を示すグラフ、(b)は第4の実施の形態における、入射角度を変異させた際の次回折光強度の低下比率(光損失率)を示すグラフ。
【図14】第5の実施の形態における、熱重合用原材料からなる回折光学素子の成形プロセスを示す概略図。
【図15】(a)は第5の実施の形態における、積層型回折光学素子の入射角度0°の一次回折光強度を示すグラフ、(b)は第5の実施の形態における、入射角度を変異させた際の次回折光強度の低下比率(光損失率)を示すグラフ。
【図16】第6の実施の形態における、光重合用原材料からなる回折光学素子の成形プロセスを示す概略図。
【図17】(a)は第6の実施の形態における、積層型回折光学素子の入射角度0°の一次回折光強度を示すグラフ、(b)は第6の実施の形態における、入射角度を変異させた際の次回折光強度の低下比率(光損失率)を示すグラフ。
【図18】第7の実施の形態における、光重合用原材料からなる回折光学素子の成形プロセスを示す概略図。
【図19】(a)は第7の実施の形態における、積層型回折光学素子の入射角度0°の一次回折光強度を示すグラフ、(b)は第7の実施の形態における、入射角度を変異させた際の次回折光強度の低下比率(光損失率)を示すグラフ。
【図20】第8の実施の形態における、光重合用原材料からなる回折光学素子に関する実験の手順を示す概略図。
【図21】第9の実施の形態における回折光学素子の、400nmの透過率を示すグラフ。
【図22】第10の実施の形態における、光重合用原材料からなる回折光学素子の成形プロセスを示す概略図。
【図23】第10の実施の形態における、PVCZを用いた積層型回折光学素子の断面図。
【図24】(a)は第10の実施の形態における、積層型回折光学素子の入射角度0°の一次回折光強度を示すグラフ、(b)は第10の実施の形態における、入射角度を変異させた際の次回折光強度の低下比率(光損失率)を示すグラフ。
【図25】第11の実施の形態における、回折光学素子の成形プロセスを示す概略図。
【図26】第12の実施の形態における、PVCZを用いた積層型回折光学素子の断面図。
【図27】第13の実施の形態における、PVCZを用いた積層型回折光学素子の断面図。
【図28】第13の実施の形態における、積層型回折光学素子の成形プロセスを示す概略図。
【図29】従来の光学材料における光学ガラス、ポリマーの屈折率、アッペ数分布を示す図。
【符号の説明】
1、5、11、31、41,51,61,71,81,91、101 金型
2 ポリビニルカルバゾールの粉末
2’、32’、42’、52’、62’、72’、82’、92’、102’、207、217 ポリビニルカルバゾール
3、7、13、33、43、53、63、73、83、93、103、203、204、213、214 ガラス平板
4、8、14,34,44,54、64、74、84、94、104、201、202、211,220 回折光学素子
6、12、205、206、216 光硬化樹脂
9 スペーサ
10、20、40、50、60、70、80、90、110、210、230積層型回折光学素子
32 ポリビニルカルバゾール/クロロホルムの溶液
42、52、217’ N−ビニルカルバゾール(N−VCZ)
62 熱重合用原材料
72、82、92、102 光重合用原材料
95 ヒーター
【発明の属する技術分野】
本発明は、レンズ、フィルター、ミラー、屈折光学素子等の光学素子の製造方法、光学素子、光学系、光学材料及び画像形成装置に関し、特に屈折率分散の大きな光学材料を使用した光学素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、光線を屈折させる複数のレンズによって構成される光学系においては、分散特性の異なる硝材を組み合わせることによって色収差を減らしている。例えば、望遠鏡等の対物レンズでは分散の小さい硝材を正レンズ、分散の大きい硝材を負レンズとし、これらを組み合わせて用いることで軸上に現れる色収差を補正している。この為、レンズの構成、枚数が制限される場合や使用される硝材が限られている場合などでは、色収差を十分に補正することができない事があった。
【0003】
前述の硝材の組み合わせにより色収差を減じる方法に対して、レンズやあるいは光学系の一部に回折格子を設ける事で色収差を減じる方法が、SPIE Vol.1354 International Lens Design Conference(1990)等の文献により開示されている。光学系において屈折面と回折面とは、ある基準波長の光線に対して、その色収差は逆方向となる事が知られている。この現象を利用し、両者の色収差を相殺し、全体として色収差の低減を実現している。さらに、このような回折光学素子においては、その回折格子の構造の周期を連続的に変化させる事により、非球面レンズと等価な機能を持たせることもできる。従ってこのような回折格子を有するレンズを採用すれば、色収差を大幅に低減させることが可能となる。
【0004】
通常の屈折面において1本の光線は屈折後も1本の光線であるのに対し、回折面において1本の光線は回折され各次数の複数の光線に分かれてしまう。そこで、光学系として回折光学素子を用いる場合には、回折された複数の光線のうち、使用波長領域の光束が設計された特定次数に集中するように格子構造を決定する必要がある。特定次数に光線が集中している状態では、それ以外の次数の回折光の強度は低く、強度が0の場合にはその回折光は存在しないものとなる。逆に、特定次数以外の次数をもった光線が存在する場合は、その光線は特定次数の光線とは別な所に結像しフレア光となってしまう。従って、色収差を効率的に低減させるには、特定次数の光線の回折効率を十分に高くすることが必要である。
【0005】
このような使用波長領域の光束が設計された特定次数に集中するように格子構造を決定する構成は、特開平9−127321号公報、特開平9−127322号公報、特開平11−044808号公報、特開平11−044810号公報等に開示されている。これらは、異なる分散を有する複数の材料と各回折格子の厚さを最適に選ぶことで、広波長範囲で高い回折効率を有する構成となっている。具体的には基板上に複数の異なる光学材料を積層し、それらの境界面の少なくとも1つに、レリーフパターン、階段形状、キノフォーム等を形成することで、所望の積層型回折光学素子が形成されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述した特開平9−127321号公報、特開平9−127322号公報、特開平11−044808号公報、特開平11−044810号公報においては、広波長範囲で高い回折効率を有する構成を得るために、相対的に屈折率分散の低い材料と屈折率分散の高い材料との組み合わせを用いている。
【0007】
具体的には、特開平9−127321号公報の場合はBMS81(nd=1.64,νd=60.1:オハラ製)とプラスチック光学材料PC(nd=1.58,νd=30.5:帝人化成)、特開平9−127322号公報の場合はLaL14(nd=1.6968,νd=55.5:オハラ製)、アクリル樹脂(nd=1.49,νd=57.7)、Cytop(nd=1.34149,νd=93.8:旭硝子製)、PC(nd=1.58,νd=30.5:帝人化成)、特開平11−044808号公報及び特開平11−044810号公報の場合はC001(nd=1.5250,νd=50.8:大日本インキ製)、プラスチック光学材料PC(nd=1.58,νd=30.5:帝人化成)、PS(nd=1.5918,νd=31.1)、PMMA(nd=1.4917,νd=57.4)、BMS81(nd=1.64,νd=60.1:オハラ製)等を、それぞれ組み合わせて用いている。
【0008】
しかしながら、回折光学素子においては、その形状のため光線の入射角が大きい場合、光線がけられてフレア光やゴーストが発生するという問題が生じる。そこで回折格子の総厚を薄くするために、従来の光学材料よりもより屈折率分散の大きな材料を使用する事が必要である。図29は、光学材料として市販、もしくは研究開発されている光学材料のアッベ数と屈折率を示したグラフである。縦軸は屈折率(nd)、横軸はアッベ数(νd)である。この中でポリビニルカルバゾールが有機高分子の中ではアッペ数が17.3と最も小さい事が知られている。
【0009】
ポリビニルカルバゾールを積層型回折光学素子に用いた例は、特開平10−268116号公報に記載されている。特開平10−268116号公報では、表3に弾性樹脂としてポリビニルカルバゾールを挙げている。回折格子に弾性樹脂であるポリビニルカルバゾールを押し付ける事により、回折格子面に圧着し一体化する事で多層回折格子を形成している。しかしながら、ポリビニルカルバゾールは非常に脆い物質であるため、少ない荷重で簡単にクラック等が発生してしまう。従って特開平10−268116号公報に記載されているように、弾性樹脂であるポリビニルカルバゾールを、回折格子に押し付けて光学素子を成形するには、多大な時間をかけて押し付ける必要があり、産業上実施する事は非常に困難である。また近年、回折格子の形状は微細でかつ複雑になってきており、更に困難なものとなっている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明の第1の手段は、ポリビニルカルバゾールを成形型に供給し、熱可塑成形によって光学素子を成形する光学素子の製造方法を提供することである。
【0011】
また本発明の第2の手段は、溶媒に溶解させたポリビニルカルバゾールを成形型に供給し、該溶媒を蒸発させて光学素子を成形する光学素子の製造方法を提供することである。
【0012】
また本発明の第3の手段は、主にN−ビニルカルバゾールからなる物質を成形型に供給し、該成形型の内部において重合反応により硬化させ、ポリビニルカルバゾールに変換して光学素子を成形する光学素子の製造方法を提供することである。
【0013】
また本発明の第4の手段は、前記重合反応は熱重合である本発明の第3の手段は記載の光学素子の製造方法を提供することである。
【0014】
また本発明の第5の手段は、前記物質は熱開始剤を含む本発明の第4の手段に記載の光学素子の製造方法を提供することである。
【0015】
また本発明の第6の手段は、前記熱重合は、70℃以上130℃以下の温度での加熱処理により行われる本発明の第4または第5の手段に記載の光学素子の製造方法を提供することである。
【0016】
また本発明の第7の手段は、前記重合反応は光重合である本発明の第3の手段に記載の光学素子の製造方法を提供することである。
【0017】
また本発明の第8の手段は、前記物質は光開始剤を含む本発明の第7の手段に記載の光学素子の製造方法を提供することである。
【0018】
また本発明の第9の手段は、前記光開始剤は、紫外光または可視光照射処理によってラジカル種の生成が可能な、ラジカル重合開始剤を含有する本発明の第7または第8の手段に記載の光学素子の製造方法を提供することである。
【0019】
また本発明の第10の手段は、前記光開始剤は、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニル−ケトンを含有する本発明の第8の手段に記載の光学素子の製造方法を提供することである。
【0020】
また本発明の第11の手段は、前記光学材料は、2個以上の不飽和エチレン基を有する化合物を含む本発明の第8の手段に記載の光学素子の製造方法を提供することである。
【0021】
また本発明の第12の手段は、前記2個以上の不飽和エチレン基を有する化合物が、ジビニルベンゼンである本発明の第11の手段に記載の光学素子の製造方法を提供することである。
【0022】
また本発明の第13の手段は、前記2個以上の不飽和エチレン基を有する化合物は、その重量割合が0.5wt%〜2.5wt%の範囲である本発明の第10または11の手段に記載の光学素子の製造方法を提供することである。
【0023】
また本発明の第14の手段は、前記光学素子が回折光学素子である本発明の第1乃至第13のいずれか1つの手段に記載の光学素子の製造方法を提供することである。
【0024】
また本発明の第15の手段は、主に流動性を有するN−ビニルカルバゾールからなる物質を、回折形状を有する成形型に供給し、該N−ビニルカルバゾールを該成形型の内部において重合反応により硬化させポリビニルカルバゾールに変換し、該硬化したポリビニルカルバゾールを該成形型から離型することにより光学素子を成形する光学素子の製造方法を提供することである。
【0025】
また本発明の第16の手段は、本発明の第1乃至15の手段のいずれか1つの手段に記載の光学素子の製造方法によって製造した光学素子を提供することである。
【0026】
また本発明の第17の手段は、主に流動性を有するN−ビニルカルバゾールからなる物質を、回折形状を有する成形型に供給し、該N−ビニルカルバゾールを該成形型の内部において重合反応により硬化させポリビニルカルバゾールに変換して回折光学素子とし、該回折光学素子と他の回折光学素子とを、お互いの回折面を対向させて組み合わせることにより積層型光学素子を成形する積層型回折光学素子の製造方法を提供することである。
【0027】
また本発明の第18の手段は、硬化樹脂を、回折形状を有する成形型に供給し、該硬化樹脂を該成形型の内部において硬化させ、該硬化した硬化樹脂を、該成形型から離型して回折光学素子とし、主に流動性を有するN−ビニルカルバゾールからなる物質を前記回折光学素子に供給すし、該N−ビニルカルバゾールを前記回折光学素子の内部において重合反応により硬化させ、ポリビニルカルバゾールに変換することにより積層型光学素子を成形する積層型回折光学素子の製造方法を提供することである。
【0028】
また本発明の第19の手段は、硬化樹脂を、回折形状を有する第1、第2の成形型に供給し、該硬化樹脂を該第1、第2の成形型の内部において硬化させ、該硬化した硬化樹脂を、該第1、第2の成形型から離型して、第1、第2の回折光学素子とし、該第1、第2の回折光学素子を、お互いの回折面を対向させて配置し、その間に、主にN−ビニルカルバゾールからなる物質を供給し、該N−ビニルカルバゾールを該第1、第2の回折光学素子の内部において重合反応により硬化させ、ポリビニルカルバゾールに変換することにより積層型光学素子を成形する積層型回折光学素子の製造方法を提供することである。
【0029】
また本発明の第20の手段は、硬化樹脂を、回折形状を有する成形型に供給し、該硬化樹脂を該成形型の内部において硬化させ、該硬化した硬化樹脂を、該成形型から離型して回折光学素子とし、主に流動性を有するN−ビニルカルバゾールからなる物質を該回折光学素子に供給し、該N−ビニルカルバゾールを該回折光学素子の内部において重合反応により、該回折光学素子の回折形状を埋め込み、平坦化されるように硬化させてポリビニルカルバゾールに変換し、お互いの回折面が対向するように、該回折光学素子と他の回折光学素子とを組み合わせることにより積層型光学素子を成形する積層型回折光学素子の製造方法を提供することである。
【0030】
また本発明の第21の手段は、前記回折光学素子の屈折率分散は、前記他の回折光学素子の屈折率分散よりも高いことを特徴とする本発明の第17または第20の手段に記載の積層型回折光学素子の製造方法を提供することである。
【0031】
また本発明の第22の手段は、本発明の第17乃至第21のいずれか1つの手段に記載の積層型回折光学素子の製造方法によって製造した積層型回折光学素子を提供することである。
【0032】
また本発明の第23の手段は、熱重合により光学素子を成形する光学材料であって、N−ビニルカルバゾールと熱開始剤とを含む光学材料を提供することである。
【0033】
また本発明の第24の手段は、光重合により光学素子を成形する光学材料であって、N−ビニルカルバゾールと光開始剤とを含む光学材料を提供することである。
【0034】
また本発明の第25の手段は、前記光開始剤として、紫外光または可視光照射処理によってラジカル種の生成が可能な、ラジカル重合開始剤を含有する光学材料を提供することである。
【0035】
また本発明の第26の手段は、前記光開始剤として、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニル−ケトンを含有する本発明の第24の手段に記載の光学材料を提供することである。
【0036】
また本発明の第27の手段は、2個以上の不飽和エチレン基を有する化合物を含む本発明の第24の手段に記載の光学材料を提供することである。
【0037】
また本発明の第28の手段は、前記2個以上の不飽和エチレン基を有する化合物が、ジビニルベンゼンである本発明の第27の手段に記載の光学材料を提供することである。
【0038】
また本発明の第29の手段は、前記2個以上の不飽和エチレン基を有する化合物は、その重量割合が0.5wt%〜2.5wt%の範囲である本発明の第27または第28の手段に記載の光学材料を提供することである。
【0039】
また本発明の第30の手段は、本発明の第23または第29のいずれか1つの手段に記載の光学材料からなる光学素子を提供することである。
【0040】
また本発明の第31の手段は、本発明の第15または第25の手段に記載の光学素子、もしくは、本発明の第22の手段に記載の積層型光学素子を含む光学系を提供することである。
【0041】
また本発明の第32の手段は、前記光学系は、撮影光学系である本発明の第31の手段に記載の光学系を提供することである。
【0042】
また本発明の第33の手段は、前記光学系は、投影光学系である本発明の第31の手段に記載の光学系を提供することである。
【0043】
また本発明の第34の手段は、本発明の第31の手段に記載の光学系を用いて感光体上に像を形成する画像形成装置を提供することである。
【0044】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明は、前述の屈折率分散が大きい(νd=17.3)有機高分子材料であるポリビニルカルバゾールを、成形材料として使用した光学素子からなる積層型回折光学素子およびその製造方法に関する。本発明の製造方法によれば、ポリビニルカルバゾールを任意形状に成形する事が可能となり、100μmの領域で80%以上の透過率を有する光学素子を得ることができる。また、屈折率分散が大きいため、積層構造において回折格子形状の厚さは薄くなっている。
【0045】
積層型光学素子の構成は、回折格子構造を有する屈折率分散の異なる2種の光学材料からなる2つの光学素子が、それぞれ基板上に配置された状態で、お互いの回折格子が対向するように積層されている。2種の光学材料にうち屈折率分散の高い光学材料として、ポリビニルカルバゾールが使用されている。また3つの光学素子を積層し、少なくともその1つの光学材料がポリビニルカルバゾールである構成とすることもできる。
【0046】
このような回折格子構造を有する光学素子を、ポリビニルカルバゾールを利用して製造するためには、回折格子構造に対応した形状を有する金型を用いて成形する事ができる。製造方法としては、ポリビニルカルバゾールの粉末を型内に充填し、加熱し、加圧する熱可塑成形を挙げることができる。ポリビニルカルバゾールの粉末を使用することで、複雑で微細の形状を有する金型に対しても、容易にポリビニルカルバゾールを充填する事ができる。
【0047】
また、重合させたポリビニルカルバゾールを溶剤に溶解した後、金型内に充填し加熱する事で硬化させる方法も挙げる事もできる。溶解した状態で金型に充填されるため、複雑で微細の形状を有する金型に対しても、容易にポリビニルカルバゾールを充填する事ができる。ただしこの場合、使用した溶剤を金型内において、徐々に蒸発除去することにより所望の形状を得るものである。
【0048】
また、金型内で重合反応させることにより製造する事もできる。原料体としては、モノマー主成分のN−ビニルカルバゾールを使用する。N−ビニルカルバゾールは流動性を有しているため、複雑な回折格子構造を有する型の隙間にも、原材料を容易に充填することができる。N−ビニルカルバゾールは重合する事でポリビニルカルバゾールへと変換する。N−ビニルカルバゾールを型内に充填し、その後重合させることにより、ポリビニルカルバゾールの回折格子構造を高精度に成形する事ができる。
【0049】
N−ビニルカルバゾールの型内における重合反応には、熱重合を使用する事ができる。具体的には、まず基板となるガラス平板と、微細な回折格子構造に対応する型となる金属材料からなる型を対向して配置する。次に基板と型との間に流動性を有するN−ビニルカルバゾールを流し込む。次にその状態を維持したまま加熱する。これにより、モノマー主成分のN−ビニルカルバゾールは、熱重合反応しポリビニルカルバゾールとなる。
【0050】
尚、基板の熱膨張率と型の熱膨張率に大きな差が有る場合には、加熱温度が高いと回折格子の間隔等に不一致が生じてしまう。この不一致を回避するためには、熱重合における加熱温度を150℃以下に選択することが好ましい。またモノマーの揮発を防止するためには130℃以下に選択することが好ましい。また加熱温度が低いと、重合反応が完了するのに要する時間が長くなるため、少なくとも70℃以上に設定することが好ましい。従って、熱重合におけるに加熱温度は70℃以上、130℃以下の範囲に選択することが好ましい。
【0051】
また、反応速度を遅くする事なく加熱温度を低く抑えるためには、熱重合開始剤を添加し、重合反応を誘起する形態をとることができる。利用可能な熱重合開始剤として、例えば、アゾビソイソブチルニトリル(AIBN)、ベンゾイルパーオキサイド、t‐ブチルパーオキシピバレート、t‐ブチルパーオキシネオヘキサノエート、t‐ヘキシルパーオキシネオヘキサノエート、t‐ブチルパーオキシネオデカノエート、t‐ヘキシルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオヘキサノエート、クミルパーオキシネオデカノエート等を好適なものとして挙げることができる。
【0052】
尚、熱重合開始剤の添加比率は、加熱温度に応じて適宜選択することができ、また得られる重合体の目標とする平均分子量に応じて調整することもできる。本発明の実施の形態において、原料体であるモノマー主成分のN−ビニルカルバゾールに対する熱重合開始剤の添加比率は、0.005〜10質量%の範囲に選択することが好ましい。
【0053】
また、N−ビニルカルバゾールの型内における重合反応には、前述の熱重合に代えて光重合を使用する事もできる。光照射による光重合反応の誘起は、N−ビニルカルバゾール自体の光吸収に付随するラジカル生成に起因する機構の他に、光重合開始剤を利用して重合を開始する機構を利用するもできる。光重合開始剤としてラジカル開始剤を利用して、光照射によるラジカル生成に起因する機構を利用するものが好ましい。
【0054】
前記N−ビニルカルバゾールにおいて、利用可能な光重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、4−フェニルベンゾフェノン、4−フェノキシベンゾフェノン、4,4′−ジフェニルベンゾフェノン、4,4′−ジフェノキシベンゾフェノンなどを好適なものとして挙げることができる。なお、モノマー主成分のN−ビニルカルバゾールに対する光重合開始剤の添加比率は、光照射量や付加的な加熱温度に応じて適宜選択することができる。また得られる重合体の目標とする平均分子量に応じて調整することもできる。尚、本発明にかかる回折光学素子の製造に利用する際、N−ビニルカルバゾールに対する光重合開始剤の添加比率として、原料体全体における光重合開始剤の含有率を0.005〜10質量%の範囲に選択することが好ましい。光重合開始剤を使用することで、照射条件を自由に設定することが可能となり、照射時間を大幅に短くする事も可能となる。
【0055】
光照射により、ポリビニルカルバゾールからなる回折光学素子を成形する場合、基板としては透明なガラス平板を使用し、型として微細な回折格子構造に対応する金属材料を使用する。基板と型との間に流動性を示すN−ビニルカルバゾールを流し込む。その状態を維持したまま、光照射してモノマー主成分のN−ビニルカルバゾールの光重合を行う。かかる光重合反応に供する光照射は、光重合開始剤を利用したラジカル生成に起因する機構に応じて、好適な波長の光を利用して行われる。光照射は、基板と型の間に保持されたN−ビニルカルバゾールに対して、ガラス平板を介して均一に実施される。照射される光量は、光重合開始剤を利用した、ラジカル生成に起因する機構に応じて、また、含有される光重合開始剤の含有比率に応じて、適宜選択される。
【0056】
尚、前述の光重合及び熱重合を使用すれば、溶剤を使用する必要がないため、光学素子を短い作業時間で製造することができる。またN−ビニルカルバゾールはそれ自体に流動性を有しており、微細形状の型であっても容易に流し込む事ができる。従って、光重合及び熱重合を使用するほうがより好ましい形態である。また、光重合及び熱重合を使用する形態では、型の内部にN−ビニルカルバゾールを保持した状態で、ポリビニルカルバゾールへの変換を行うため、不要な揮発性成分の生成を回避することができる。そのため、型内部に残留する揮発性物質、溶剤などに起因する気泡の発生を回避する事もできる。
【0057】
次に、ポリビニルカルバゾールからなる回折光学素子を、重合反応により製造する際に有効な、ポリビニルカルバゾールへの添加物について説明する。
【0058】
ポリビニルカルバゾールは対衝撃性が低く、また線形ポリマーであるため温度による弾性率の変化が大きい。そのため、N−ビニルカルバゾールと重合開始剤の重合反応により形成されるポリビニルカルバゾールのみで構成された光学素子では、重合反応において型内で硬化収縮により残留応力が発生する。この残留応力は高温多湿の環境下や溶媒付着時に開放され、形状の変形やクラックの発生の原因となる。この変形やクラックを抑制するためには、N−ビニルカルバゾールと光重合開始剤に、2個以上の不飽和エチレン基を有する化合物を添加し、それらが架橋化することにより形成される光学材料を使用することが好ましい。これにより、成形時の残留応力が高温多湿の環境下や溶媒付着時に開放されることなく、形状の変形やクラックの発生を抑制することが可能となる。
【0059】
また、ここで使用されるのは光学材料であるため透明性を要求される。ポリビニルカルバゾールは透明であるが、その他の化合物を添加すると、光重合による成形後のポリマー同士の相溶性によっては、相分離を起こし、白く濁り、光学的散乱の原因となる事もある。しかしながら、添加する2個以上の不飽和エチレン基を有する化合物を2.5wt%以下の範囲とすることにより、相分離が起きたり、白く濁ることなく、光学的散乱のない光学素子を成形することができる。また0.25wt%以下の範囲とすることにより、形状の変形やクラックの発生を抑制する事ができる。
【0060】
また、添加する2個以上の不飽和エチレン基を有する化合物は、ジビニルベンゼンであることが好ましい。ジビニルベンゼンは、スチレン、ビニルトルエンのように酸素阻害する事なく光重合するものであり、80℃〜100℃の加温状態において反応や蒸発することもない安定な化合物である。
【0061】
また、N−ビニルカルバゾールは結晶性化合物であり、光重合するためには結晶を溶融するため、融点である65℃以上で保温する必要がある。ジビニルベンゼンは、反応性の高いアクリル系、メタクリル系の化合物のように、65℃以上の保温により数時間で反応することがないため、安定なモノマーを形成する事ができる。また、光学材料に要求される特性として、低アッペ数で高屈折率であることが要求される。ジビニルベンゼンの屈折率は(Nd=1.532:液体時)と高くなっている。尚、ジビニルベンゼンはメタ、パラ各種異性体が混在していても差し支えない。
【0062】
またジビニルベンゼンの他に、その不純物であるエチルビニルベンゼンやジエチルベンゼンを含んでもかまわない。光学素子の成形方法が光重合を用いた塊状重合である場合、若干のモノマーが型内に残留してしまう。そのため、エチルビニルベンゼンやジエチルベンゼンの混入により耐熱性の低下等といった問題はないが、光学的散乱を増加する可能性は高い。また重合時の架橋点が減少する。そのため、エチルビニルベンゼンやジエチルベンゼンの混入は極力を減らすほうが好ましい。
【0063】
次に本発明の実施の形態を図面を参照して具体的に説明する。
【0064】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態を、図1、図2、図3に参照して説明する。まず、図1(a)に示す様に回折格子形状に加工された金型1を窒素雰囲気中で280℃に加熱した後、市販のポリビニルカルバゾール(ACROS社製)の粉末2を供給した。その上にガラス(BK7)平板3を乗せ、図1(b)に示すように、280℃、圧力20MPa、2時間で成形を行った。その後4時間かけて室温まで徐冷した後、図1(c)に示すように、硬化したポリビニルカルバゾール2’を金型1から離型して回折光学素子4を製造した。
【0065】
一方、図2(a)に示す様に、回折格子形状に加工された金型5を窒素雰囲気中で280℃に加熱した後、光学特性が(nd=1.513,νd=51.0)の光硬化樹脂6を金型5に流し込んだ。その上にガラス(BK7)平板7を乗せて、図2(b)に示すように加圧した。その後不図示のUV露光機(EX250:HOYA−SCHOTT社製)で3000mJ/cm2照射した後、図2(c)に示すように、硬化した光硬化樹脂6を金型5から離型して回折光学素子8を製造した。
【0066】
次に回折光学素子4と回折光学素子8の回折面に反射防止膜を成膜した後、図3に示す様に、お互いの回折格子が対向する様に組み合わせて積層型回折光学素子10を製造した。9は回折光学素子4と回折光学素子8の間隔を決定するスペーサである。回折光学素子4と回折光学素子8のそれぞれの格子間ピッチは共に80μmである。回折光学素子4と回折光学素子8のお互いの回折格子の谷間の間隔は11.8μm、山間の間隔は1.5μmである。回折光学素子4の山の高さは3.91μm、回折光学素子8の山の高さは6.45μmである。
【0067】
図4(a)は、製造された積層型回折光学素子10における、入射角度0°の一次回折光の各波長における強度を示したグラフである。横軸は波長、縦軸は回折効率を示している。図4(a)において、波長400〜700nmにおいて、一次回折光に対する回折効率は95%以上になっている。この値は回折効率としては非常に高いものであるため、積層型回折光学素子10は、使用波長領域において良好な強度の波長分布を有していることとなる。
【0068】
図4(b)は、入射角度を変異させた際の、各入射角度における次回折光の強度の低下する比率を示したグラフである。横軸は入射角、縦軸は光の損失率である。入射角が大きくなればなるほど損失率は高くなるが、図4(b)において、入射角10°のおいて光損失率は3.52%である。この値は、非常に良好な特性を示す値であり、積層型回折光学素子10は、特定次数に光線が集中しているものである。
【0069】
(比較例1)
比較例1を図5、図2、図6を参照して説明する。第1の実施の形態に示した、ポリビニルカルバゾールの粉末2に代えて、光学特性(nd=1.636,νd=22.8)の光硬化樹脂12を使用した。図5(a)に示すように光硬化樹脂12を金型11に供給した。その上を図5(b)に示すように、ガラス(BK7)平板13で押さえ込み、不図示のUV露光機(EX250:HOYA−SCHOTT社製)で20000mJ/cm2照射した。その後図5(c)に示すように、光硬化樹脂12を金型11から離型して回折光学素子14を製造した。一方、第1の実施の形態を示した図2と同様にして回折素子18を製造した。
【0070】
次に回折光学素子14と回折光学素子8に反射防止膜を成膜した後、図6に示す様に、お互いの回折格子が対向する様に組み合わせて積層型回折光学素子20を製造した。回折光学素子14と回折光学素子8のそれぞれの格子間ピッチは80μmである。回折光学素子14と回折光学素子8のお互いの回折格子の谷間の間隔は17.06μm、山間の間隔は1.5μmである。回折光学素子14の山の高さは6.43μm、回折光学素子8の山の高さは9.13μmである。
【0071】
図7(a)は、製造された積層型回折光学素子20における、入射角度0°の一次回折光の各波長における強度を示したグラフである。横軸は波長、縦軸は回折効率を示している。図7(a)より、使用波長領域である400〜700nmにおいて、一次回折光に対する回折効率は95%以上になっている。この値は回折効率としては非常に高いものであるため、多層回折光学素子20は、使用波長領域において良好な強度の波長分布を有していることとなる。
【0072】
図7(b)は、入射角度を変異させた際の、各入射角度における次回折光の強度の低下する比率を示したグラフである。横軸は入射角、縦軸は光の損失率である。比較のため第1の実施の形態の値も重ねて表示している。図7(b)から分かるように、比較例1の光損失率は、第1の実施の形態の光損失率よりも多くなっている。入射角10°において比較例1の光損失率は4.58%である。これは第1の実施の形態に較べ1.06%損失率が上昇している。つまり第1の実施の形態に比べて、特定次数に光線が集中していないため、フレア光が発生し、色収差を大きくなっている。
【0073】
[第2の実施の形態]
次に本発明の第2の実施の形態を、図8を参照して説明する。本実施の形態では、第1の実施の形態に示したポリビニルカルバゾールの粉末2に代えて、30w%ポリビニルカルバゾール(ACROS社製)/クロロホルムの溶液32を使用した。第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同じ部材には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0074】
まず図8(a)に示すように、回折格子形状に加工された金型31の上に、30w%ポリビニルカルバゾール(ACROS社製)/クロロホルムの溶液32を供給した。その上に図8(b)に示すように、ガラス(BK7)平板33を乗せ、70℃、24時間で溶媒をとばした。その後室温で48時間、真空乾燥させた後、図8(c)に示すように、硬化したポリビニルカルバゾール32’を金型31から離型して回折光学素子34を製造した。また一方、第1の実施の形態と同様にして回折光学素子8を製造した。
【0075】
次に回折光学素子34と回折光学素子8の回折面に反射防止膜を成膜した後、お互いの回折格子が対向する様に組み合わせて積層型回折光学素子を製造した。それぞれの格子間ピッチは80μmであり、回折部分の層厚は11.8μmである。
【0076】
図9(a)は、製造された積層型回折光学素子における、入射角度0°の一次回折光の各波長における強度を示したグラフである。横軸は波長、縦軸は回折効率を示している。図9(a)において、波長400〜700nmにおいて、一次回折光に対する回折効率は95%以上になっている。この値は回折効率としては非常に高いものであるため、本実施の形態における積層型回折光学素子は、使用波長領域において良好な強度の波長分布を有していることとなる。
【0077】
図9(b)は、入射角度を変異させた際の、各入射角度における次回折光の強度の低下する比率を示したグラフである。横軸は入射角、縦軸は光の損失率である。入射角が大きくなればなるほど損失率は高くなるが、図9(b)において、入射角10°のおいて光損失率は3.52%である。この値は、非常に良好な特性を示す値であり、本実施の形態における積層型回折光学素子10は、特定次数に光線が集中しているものである。
【0078】
[第3の実施の形態]
本発明の第3の実施の形態を、図10を参照して示す。本実施の形態では、第1の実施の形態に示したポリビニルカルバゾール2の粉末に代えて、流動性を有する熱重合用原料体として、N−ビニルカルバゾール42(東京化成工業製)を使用した。第3の実施の形態において、第1の実施の形態と同じ部材には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0079】
まず図10(a)に示すように、回折格子形状に加工された金型41の上に、N−ビニルカルバゾール42を供給した。その上に図10(b)に示すように、ガラス(BK7)平板43を乗せ、120℃で5時間加熱し、熱重合成形を行った。この加熱によりN−ビニルカルバゾール42は重合し、硬化したポリビニルカルバゾール42’に変換する。その後図10(c)に示すように、ポリビニルカルバゾールを金型41から離型して回折光学素子44を製造した。また一方、第1の実施の形態と同様にして回折光学素子8を製造した。
【0080】
次に回折光学素子44と回折光学素子8の回折面に反射防止膜を成膜した後、お互いの回折格子が対向する様に組み合わせて積層型回折光学素子を製造した。それぞれの格子間ピッチは80μmであり、回折部分の層厚は11.8μmである。
【0081】
図11(a)は、製造された積層型回折光学素子における、入射角度0°の一次回折光の各波長における強度を示したグラフである。横軸は波長、縦軸は回折効率を示している。図11(a)において、波長400〜700nmにおいて、一次回折光に対する回折効率は95%以上になっている。この値は回折効率としては非常に高いものであるため、本実施の形態における積層型回折光学素子は、使用波長領域において良好な強度の波長分布を有していることとなる。
【0082】
図11(b)は、入射角度を変異させた際の、各入射角度における次回折光の強度の低下する比率を示したグラフである。横軸は入射角、縦軸は光の損失率である。入射角が大きくなればなるほど損失率は高くなるが、図11(b)において、入射角10°のおいて光損失率は3.52%である。この値は、非常に良好な特性を示す値であり、本実施の形態における積層型回折光学素子10は、特定次数に光線が集中しているものである。
【0083】
[第4の実施の形態]
次に本発明の第4の実施の形態を、図12を参照して説明する。本実施の形態では、第1の実施の形態に示したポリビニルカルバゾール2の粉末に代えて、流動性を有する光重合用原料体として、N−ビニルカルバゾール52(東京化成工業製)を使用した。第4の実施の形態において、第1の実施の形態と同じ部材には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0084】
まず図12(a)に示すように、回折格子形状に加工された金型51の上に、N−ビニルカルバゾール52を供給した。その上に図12(b)に示すように、ガラス(BK7)平板53を乗せ、70℃で加熱しつつ、ガラス平板53を介して、UV露光機(EX250:HOYA−SCHOTT社製)で、紫外光を500J/cm2(100mW/cm2 5000秒)照射し、光重合成形を行った。この照射によりN−ビニルカルバゾール52は重合し、硬化したポリビニルカルバゾール52’に変換する。その後図12(c)に示すように、ポリビニルカルバゾールを金型51から離型して回折光学素子54を製造した。また一方、第1の実施の形態と同様にして回折光学素子8を製造した。
【0085】
次に回折光学素子54と回折光学素子8の回折面に反射防止膜を成膜した後、お互いの回折格子が対向する様に組み合わせて積層型回折光学素子を製造した。それぞれの格子間ピッチは80μmであり、回折部分の層厚は11.8μmである。
【0086】
図13(a)は、製造された積層型回折光学素子における、入射角度0°の一次回折光の各波長における強度を示したグラフである。横軸は波長、縦軸は回折効率を示している。図13(a)において、波長500〜700nmにおいて、一次回折光に対する回折効率は95%以上になっている。また、波長400〜500nmの領域においても、85%以上となっている。この値は回折効率としては高いものであるため、本実施の形態における積層型回折光学素子は、使用波長領域において良好な強度の波長分布を有していることとなる。
【0087】
図13(b)は、入射角度を変異させた際の、各入射角度における次回折光の強度の低下する比率を示したグラフである。横軸は入射角、縦軸は光の損失率である。入射角が大きくなればなるほど損失率は高くなるが、図13(b)において、入射角10°のおいて光損失率は3.52%である。この値は、非常に良好な特性を示す値であり、本実施の形態における積層型回折光学素子10は、特定次数に光線が集中しているものである
[第5の実施の形態]
次に本発明の第5の実施の形態を、図14を参照して説明する。本実施の形態では、熱重合用原料体として、第3の実施の形態に示したN−ビニルカルバゾール42に、熱重合開始剤(AIBM)0.5%を添加したものを熱重合用原料体62として使用した。第5の実施の形態において、第1の実施の形態と同じ部材には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0088】
まず図14(a)に示すように、回折格子形状に加工された金型61の上に、熱重合用原料体62を供給した。その上に図14(b)に示すように、ガラス(BK7)平板63を乗せ、100℃で2時間加熱し、熱重合成形を行った。この照射により熱重合用原料体62は、硬化したポリビニルカルバゾール62’に変換する。その後図14(c)に示すように、ポリビニルカルバゾールを金型61から離型して回折光学素子64を製造した。また一方、第1の実施の形態と同様にして回折光学素子8を製造した。
【0089】
次に回折光学素子64と回折光学素子8の回折面に反射防止膜を成膜した後、お互いの回折格子が対向する様に組み合わせて積層型回折光学素子を製造した。それぞれの格子間ピッチは80μmであり、回折部分の層厚は11.8μmである。
【0090】
図15(a)は、製造された積層型回折光学素子における、入射角度0°の一次回折光の各波長における強度を示したグラフである。横軸は波長、縦軸は回折効率を示している。図15(a)において、波長400〜700nmにおいて、一次回折光に対する回折効率は95%以上になっている。この値は回折効率としては非常に高いものであるため、本実施の形態における積層型回折光学素子は、使用波長領域において良好な強度の波長分布を有していることとなる。
【0091】
図15(b)は、入射角度を変異させた際の、各入射角度における次回折光の強度の低下する比率を示したグラフである。横軸は入射角、縦軸は光の損失率である。入射角が大きくなればなるほど損失率は高くなるが、図15(b)において、入射角10°のおいて光損失率は3.52%である。この値は、非常に良好な特性を示す値であり、本実施の形態における積層型回折光学素子10は、特定次数に光線が集中しているものである。
【0092】
本実施の形態に示すように、N−ビニルカルバゾールに熱重合開始剤を添加したものを、熱重合用原料体として使用する事により、加熱温度を低く抑え、加熱時間を短くする事が可能となる。
【0093】
[第6の実施の形態]
次に本発明の第6の実施の形態を、図16を参照して説明する。本実施の形態では、光重合用原料体として、第4の実施の形態に示したN−ビニルカルバゾール52に、光重合開始剤2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン 1%を添加したものを光重合用原料体72として使用した。第6の実施の形態において、第1の実施の形態と同じ部材には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0094】
まず図16(a)に示すように、回折格子形状に加工された金型1の上に、光重合用原料体72を供給した。その上に図16(b)に示すように、ガラス(BK7)平板73を乗せ、70℃で加熱しつつ、ガラス平板73を介して、UV露光機(EX250:HOYA−SCHOTT社製)で、紫外光を20000mJ/cm2(100mW/cm2 200秒)照射し、光重合成形を行った。この照射により光重合用原料体72は、その中のN−ビニルカルバゾール52が重合し、硬化したポリビニルカルバゾール72’に変換する。その後図16(c)に示すように、ポリビニルカルバゾールを金型71から離型して回折光学素子74を製造した。また一方、第1の実施の形態と同様にして回折光学素子8を製造した。
【0095】
次に回折光学素子74と回折光学素子8の回折面に反射防止膜を成膜した後、お互いの回折格子が対向する様に組み合わせて積層型回折光学素子を製造した。それぞれの格子間ピッチは80μmであり、回折部分の層厚は11.8μmである。
【0096】
図17(a)は、製造された積層型回折光学素子における、入射角度0°の一次回折光の各波長における強度を示したグラフである。横軸は波長、縦軸は回折効率を示している。図17(a)において、波長450〜700nmにおいて、一次回折光に対する回折効率は95%以上になっている。また、波長400〜450nmの領域においても、90%以上となっているこの値は回折効率としては非常に高いものであるため、本実施の形態における積層型回折光学素子は、使用波長領域において良好な強度の波長分布を有していることとなる。
【0097】
図17(b)は、入射角度を変異させた際の、各入射角度における次回折光の強度の低下する比率を示したグラフである。横軸は入射角、縦軸は光の損失率である。入射角が大きくなればなるほど損失率は高くなるが、図17(b)において、入射角10°のおいて光損失率は3.52%である。この値は、非常に良好な特性を示す値であり、本実施の形態における積層型回折光学素子は、特定次数に光線が集中しているものである。
【0098】
本実施の形態に示すように、N−ビニルカルバゾールに光重合開始剤を添加したものを、光重合用原料体として使用する事により、照射時間を大幅に短くする事が可能となる。
【0099】
[第7の実施の形態]
次に本発明の第7の実施の形態を、図18を参照して説明する。本実施の形態では、光重合用原料体として、第4の実施の形態に示したN−ビニルカルバゾール52に、光重合開始剤1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン 1%を添加したものを光重合用原料体82として使用した。第8の実施の形態において、第1の実施の形態と同じ部材には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0100】
まず図18(a)に示すように、回折格子形状に加工された金型81に、熱重合用原料体82を供給した。その上に図18(b)に示すように、ガラス(BK7)平板83を乗せ、70℃で加熱しつつ、ガラス(BK7)平板83を介して、UV露光機(EX250:HOYA−SCHOTT社製)で、紫外光を20000mJ/cm2(100mW/cm2 200秒)照射し、光重合成形を行った。この照射により熱重合用原料体82は、その中のN−ビニルカルバゾール52が重合し、硬化したポリビニルカルバゾール82’に変換する。次いで、図18(c)に示すように、ポリビニルカルバゾールを金型71から離型して回折光学素子74を製造した。また一方、第1の実施の形態と同様にして回折光学素子8を製造した。
【0101】
次に回折光学素子74と回折光学素子8の回折面に反射防止膜を成膜した後、お互いの回折格子が対向する様に組み合わせて積層型回折光学素子を製造した。それぞれの格子間ピッチは80μmであり、回折部分の層厚は11.8μmである。
【0102】
図19(a)は、製造された積層型回折光学素子における、入射角度0°の一次回折光の各波長における強度を示したグラフである。横軸は波長、縦軸は回折効率を示している。図19(a)において、波長400〜700nmにおいて、一次回折光に対する回折効率は95%以上になっている。この値は回折効率としては非常に高いものであるため、本実施の形態における積層型回折光学素子は、使用波長領域において良好な強度の波長分布を有していることとなる。 図19(b)は、入射角度を変異させた際の、各入射角度における次回折光の強度の低下する比率を示したグラフである。横軸は入射角、縦軸は光の損失率である。入射角が大きくなればなるほど損失率は高くなるが、図19(b)において、入射角10°のおいて光損失率は3.52%である。この値は、非常に良好な特性を示す値であり、本実施の形態における積層型回折光学素子は、特定次数に光線が集中しているものである。
【0103】
本実施の形態に示すように、N−ビニルカルバゾールに光重合開始剤を添加したものを、光重合用原料体として使用する事により、照射時間を大幅に短くする事が可能となる。
【0104】
[第8の実施の形態]
次に本発明の第8の実施の形態を説明する。本実施の形態では、光重合用原料体として、第7の実施の形態に示した光重合用原料体82に加えて、添加物として2個以上の不飽和エチレン基を有する化合物を加えたもの(光重合用原料体92)を使用した。
【0105】
添加物の有効性を示すために、次のような実験を行った。図20は、実験の手順を示す概略図である。尚2個以上の不飽和エチレン基を有する化合物としては、〔表1〕の実験例1〜実験例8に示す化合物を使用した。
【0106】
【表1】
【0107】
まず、N−ビニルカルバゾール(東京化成工業株式会社製)9.8gと光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン0.1gを混合し、80℃で2時間加熱溶解した。更に、十分に攪拌した後、〔表1〕に示す2個以上の不飽和エチレン基を有する化合物をそれぞれ0.1g混合した後、十分に80℃で攪拌し、光重合用原料体92は調製した。次に図20(a)に示すように、約0.04gの光重合用原料体92を、平面状の金型91にディスペンサーを用いて供給した。金型温度はヒーター95の温調制御によって±1.0℃以内に制御されている。次に、金型91の上に図20(b)に示すように、50μmのスペーサを上に載せた後、80℃に保温されたガラス(BK7)平板93を光重合用原料体92に圧着させる。光重合用原料体92を押し広げ、所望の形状になったところで、ガラス平板93を介して、中心波長365nmの紫外線を40mWで1000s照射し、光重合成形を行った。この照射により光重合用原料体92は、その中のN−ビニルカルバゾールが重合し、硬化したポリビニルカルバゾール92’に変換する。最後に図20(c)に示すように、金型91からポリビニルカルバゾール92’を離型することで成形物94を得た。
【0108】
実験例1〜8に示した化合物を添加した光重合用原料体92のモノマー混合の状態を確認した。また、モノマー混合状態での安定性を確認するために80℃で5hrの保温試験を行った。更に、硬化時の成形物として硬化時の白濁、エタノール滴下による溶剤クラックの有無、高温高湿下70℃、70%、200hrの環境耐久試験後における成形面の変形を確認した。実験例7に関してはモノマー混合時に硬化したため、それ以降の成形及び試験は行えなかった。その他に関しては混合後、直ぐに増粘したが成形可能であったので成形を行った。これらの結果を〔表2〕に示す。
【0109】
【表2】
【0110】
〔表2〕から分かるように、実験例7を除いて2個以上の不飽和エチレン基を有する化合物の添加によって光学的に透明であり、溶剤クラックや、高温下の耐久による面の変形のない成形物を得ることができた。
【0111】
[第9の実施の形態]
次に本発明の第9の実施の形態を説明する。本実施の形態は、光重合用原料体として、第8の実施の形態の実験例8に相当する、N−ビニルカルバゾールと、光重合開始剤である1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンと、添加剤であるジビニルベンゼンとを混合したものを使用する。
【0112】
各材料を〔表3〕の実験例9〜15に示す割合で混合し、80℃で2時間加熱溶解した後、十分に攪拌し本実施例の光重合用原料体を得た。次に第8の実施の形態と同様の方法で成形物を製造した。尚、比較例としてジビニルベンゼンを添加光重合用原料体も同様の方法で製造した。
【0113】
【表3】
【0114】
実験例9〜15に示した化合物、及び比較実験例からなる各光重合用原料体について、成形物の白濁を評価するために透過率を測定し、白濁等を確認した。またエタノール滴下による溶剤クラック試験及び高温高湿下70℃、70%、200hrの環境耐久試験後における成形面の変形を確認した。高温高湿下の環境耐久試験における面変形及び溶剤クラック試験についての結果について〔表4〕に示す。尚、実験例9〜15と比較実験例の400nmでの透過率を図21に示す。図21の横軸はジビンルベンゼン(DVB)の濃度であり、縦軸は透過率を示している。
【0115】
【表4】
【0116】
図21から分かるように、ジビニルベンゼンの添加量が0.25%〜2.5%の領域である実験例9〜12においては、透過率にはジビニルベンゼンを添加していない比較実験例とほぼ同等の透過率を示している。また〔表4〕から分かるように、ジビニルベンゼンの添加量が5.0%以上の領域である実験例13〜15においては、成形物は白濁し、透過率の低下が観測された。また、溶剤クラック、面の変形においてはジビニルベンゼン0.5%以上添加した実験例10〜15においては変形、溶剤クラック共に観測されなかった。
【0117】
従ってジビニルベンゼンの添加量は、0.5wt%〜2.5wt%の範囲とする事が最も好ましいと言うことができる。
【0118】
[第10の実施の形態]
次に本発明の第10の実施の形態を、図22を参照して説明する。本実施の形態では、光重合用原料体102として、第9の実施の形態の実験例11に相当する、N−ビニルカルバゾール9.900gと、光重合開始剤である1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン0.100gと、添加剤であるジビニルベンゼン0.100gとを混合したものを使用した。
【0119】
まず図22(a)に示すように、回折格子形状に加工された金型の上に、前述の実験例11に相当する光重合用原料体102を供給した。その上に22(b)に示すように、ガラス(BK7)平板101を乗せ、70℃で加熱しつつ、ガラス平板101を介して、UV露光機(EX250:HOYA−SCHOTT社製)で、紫外光を20000mJ/cm2(100mW/cm2 200秒)照射し、光重合成形を行った。この照射によりN−ビニルカルバゾールは重合し、硬化したポリビニルカルバゾール102’に変換する。その後22(c)に示すように、ポリビニルカルバゾールを金型101から離型して回折光学素子104を製造した。この時の回折光学素子104のアッペ数を測定したところνd=17.5であった。また一方、第1の実施の形態と同様にして回折光学素子8を製造した。
【0120】
次に図23に示すように、回折光学素子と回折光学素子8の回折面に反射防止膜を成膜した後、お互いの回折格子が対向する様に組み合わせて積層型回折光学素子110を製造した。回折光学素子102と回折光学素子8のそれぞれの格子間ピッチは80μmである。回折光学素子102と回折光学素子8のお互いの回折格子の谷間の間隔は11.9μm、山間の間隔は1.5μmである。回折光学素子102の山の高さは3.91μm、回折光学素子18の山の高さは6.49μmである。
【0121】
図24(a)は、製造された積層型回折光学素子110における、入射角度0°の一次回折光の各波長における強度を示したグラフである。横軸は波長、縦軸は回折効率を示している。図24(a)より、使用波長領域である400〜700nmにおいて、一次回折光に対する回折効率は95%以上になっている。この値は回折効率としては非常に高いものであるため、積層型回折光学素子110は、使用波長領域において良好な強度の波長分布を有していることとなる。 図24(b)は、入射角度を変異させた際の、各入射角度における次回折光の強度の低下する比率を示したグラフである。横軸は入射角、縦軸は光の損失率である。入射角が大きくなればなるほど損失率は高くなるが、図24(b)において、入射角10°のおいて光損失率は3.52%である。この値は、非常に良好な特性を示す値であり、本実施の形態における積層型回折光学素子110は、特定次数に光線が集中しているものである。
【0122】
[第11の実施の形態]
次に本発明の第11の実施の形態を、図25を参照して説明する。前述の実施の形態1〜10においては、回折光学素子を成形するために金型を使用しているが、本発明はこれに限られるものではない。図25に示すように、積層型回折光学素子の場合は、金型に代えて他方の回折光学素子を成形型として、一方のポリビニルカルバゾールからなる回折光学素子を成形する事もできる。図25において第4の実施の形態を示す図12と同じ部材には同じ符号を付してある。図25において図12と異なるのは、金型51の代わりに、ガラス平板7及び光硬化樹脂6からなる回折光学素子8を使用した点である。この様にすることで、回折光学素子8と凹凸が逆の回折光学素子を正確に製造する事ができる。
【0123】
[第12の実施の形態]
次に本発明の第12の実施の形態を、図26を参照して説明する。前述の実施の形態1〜10の積層型回折光学素子においては、一方のガラス基板に接触している回折光学素子をポリビニルカルバゾールにより成形しているが、本発明はこのような構成に限られるものではない。図26は、2つの回折光学素子201、202を対向して組み合わせた多層型回折光学素子である。
【0124】
各回折光学素子201、202は共に、ガラス基板203、204に光硬化樹脂(nd=1.636,νd=22.8)205、206を成形した。2つの回折光学素子201、202の間に、ポリビニルカルバゾール207を充填し、両方の回折光学素子201,202を成形型として、その回折形状をN−ビニルカルバゾールに転写した。この様にして、3層からなる積層型回折光学素子210を製造する事により、更に複雑な光学設計に対応する事ができる。
【0125】
[第13の実施の形態]
次に本発明の第13の実施の形態を、図27、図28を参照して説明する。本実施の形態は図27に示すように、前述の第12の実施の形態における光硬化樹脂206の回折形状を、ポリビニルカルバゾール217により埋め込み、平坦化した積層型回折光学素子である。この場合、回折光学素子201、202を形成した後、一方の回折光学素子202を成形型として、ポリビニルカルバゾール217を成形した。
【0126】
ポリビニルカルバゾール217の成形方法を図28に示す。図28(a)において、ガラス(BK7)平板214及び光硬化樹脂216からなる回折光学素子212に、流動性を有するN−ビニルカルバゾール217’を供給した。その上にガラス(BK7)平板218を乗せ、図28(b)に示すように成形を行った。その後図28(c)に示すように、硬化したポリビニルカルバゾール217をガラス平板218から離型して表面が平坦化された回折光学素子220を製造した。
【0127】
次にガラス(BK7)平板213及び光硬化樹脂215からなる回折光学素子211と、回折光学素子220の回折面に反射防止膜を成膜した後、図27に示す様に、お互いの回折格子が対向する様に組み合わせて3層からなる積層型回折光学素子230を製造した。この様にして、多層型回折光学素子230を製造する事により、更に複雑な光学設計に対応するとともに、3層以上の積層型回折光学素子を容易に形成する事が可能となる。
【0128】
尚、本実施の形態における回折光学素子は1〜3層の回折光学素子であるが、本発明はこれに限られるものではなく、4層以上の積層型回折光学素子でもかまわない。
【0129】
尚、本実施の形態における回折光学素子は、他のレンズ等の光学素子と組み合わせることにより、撮影光学系や投影光学系等の光学系を形成する事もできる。またこれらの光学系を使用して、銀塩フィルムやCCD等の感光体上に像を形成する画像形成装置を形成する事もできる。
【0130】
尚、本実施の形態における光学素子は、回折形状を有している回折光学素子であるが、本発明はこれに限られるものではなく、特定の光学性能を発現する微細な形状を有する光学素子であればかまわない。
【0131】
【発明の効果】
本発明における回折光学素子によれば、光学材料として屈折率分散の大きいポリビニルカルバゾールを用いているため、入射角が大きくなった場合でも、フレア光やゴーストが発生する事がなく、光損失を少なくし、色収差を抑制することができる。また回折格子の総厚を薄くする事も可能となる。
【0132】
また、流動性を有するモノマー主成分のN−ビニルカルバゾールを、金型内に展開し、金型内において重合することにより、脆い材料であるポリビニルカルバゾールを回折光学素子の材料として使用する事を可能としている。これにより、回折格子の形状が微細化、複雑化した場合においても、容易にポリビニルカルバゾールからなる回折光学素子を高精度に製造する事ができる。
【0133】
また、熱重合により製造する場合、N−ビニルカルバゾールに熱重合開始剤を添加したものを熱重合用原料体として使用する事により、加熱温度を低く抑え、加熱時間を短くする事が可能となる。
【0134】
また、光重合により製造する場合、N−ビニルカルバゾールに光重合開始剤を添加したものを光重合用原料体として使用する事により、照射時間を大幅に短くする事が可能となる。
【0135】
また、重合用原料体として2個以上の不飽和エチレン基を有する化合物を添加する事により、光学的に透明であり、溶剤クラックや、高温下の耐久による面の変形のない成形物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態における、ポリビニルカルバゾール(PVCZ)からなる回折光学素子の成形プロセスを示す概略図
【図2】第1の実施の形態における、光硬化樹脂からなる回折光学素子の成形プロセスを示す概略図
【図3】第1の実施の形態における、PVCZを用いた積層型回折光学素子の断面図。
【図4】(a)は第1の実施の形態における、積層型回折光学素子の入射角度0°の一次回折光強度を示すグラフ、(b)は第1の実施の形態における、入射角度を変異させた際の次回折光強度の低下比率(光損失率)を示すグラフ。
【図5】比較例1における、光硬化樹脂からなる回折光学素子の成形プロセスを示す概略図。
【図6】比較例1における、光硬化樹脂を用いた積層型回折光学素子の断面図。
【図7】(a)は比較例1における、積層型回折光学素子の入射角度0°の一次回折光強度を示すグラフ、(b)は比較例1及び第1の実施の形態における、入射角度を変異させた際の次回折光強度の低下比率(光損失率)を示すグラフ。
【図8】第2の実施の形態における、PVCZ/クロロホルムの溶液からなる回折光学素子の成形プロセスを示す概略図。
【図9】(a)は第2の実施の形態における、積層型回折光学素子の入射角度0°の一次回折光強度を示すグラフ、(b)は第2の実施の形態における、入射角度を変異させた際の次回折光強度の低下比率(光損失率)を示すグラフ。
【図10】第3の実施の形態における、N−PVCZを熱重合により成形する回折光学素子の成形プロセスを示す概略図
【図11】(a)は第3の実施の形態における、積層型回折光学素子の入射角度0°の一次回折光強度を示すグラフ、(b)は第3の実施の形態における、入射角度を変異させた際の次回折光強度の低下比率(光損失率)を示すグラフ。
【図12】第4の実施の形態における、N−PVCZを光重合により成形する回折光学素子の成形プロセスを示す概略図。
【図13】(a)は第4の実施の形態における、積層型回折光学素子の入射角度0°の一次回折光強度を示すグラフ、(b)は第4の実施の形態における、入射角度を変異させた際の次回折光強度の低下比率(光損失率)を示すグラフ。
【図14】第5の実施の形態における、熱重合用原材料からなる回折光学素子の成形プロセスを示す概略図。
【図15】(a)は第5の実施の形態における、積層型回折光学素子の入射角度0°の一次回折光強度を示すグラフ、(b)は第5の実施の形態における、入射角度を変異させた際の次回折光強度の低下比率(光損失率)を示すグラフ。
【図16】第6の実施の形態における、光重合用原材料からなる回折光学素子の成形プロセスを示す概略図。
【図17】(a)は第6の実施の形態における、積層型回折光学素子の入射角度0°の一次回折光強度を示すグラフ、(b)は第6の実施の形態における、入射角度を変異させた際の次回折光強度の低下比率(光損失率)を示すグラフ。
【図18】第7の実施の形態における、光重合用原材料からなる回折光学素子の成形プロセスを示す概略図。
【図19】(a)は第7の実施の形態における、積層型回折光学素子の入射角度0°の一次回折光強度を示すグラフ、(b)は第7の実施の形態における、入射角度を変異させた際の次回折光強度の低下比率(光損失率)を示すグラフ。
【図20】第8の実施の形態における、光重合用原材料からなる回折光学素子に関する実験の手順を示す概略図。
【図21】第9の実施の形態における回折光学素子の、400nmの透過率を示すグラフ。
【図22】第10の実施の形態における、光重合用原材料からなる回折光学素子の成形プロセスを示す概略図。
【図23】第10の実施の形態における、PVCZを用いた積層型回折光学素子の断面図。
【図24】(a)は第10の実施の形態における、積層型回折光学素子の入射角度0°の一次回折光強度を示すグラフ、(b)は第10の実施の形態における、入射角度を変異させた際の次回折光強度の低下比率(光損失率)を示すグラフ。
【図25】第11の実施の形態における、回折光学素子の成形プロセスを示す概略図。
【図26】第12の実施の形態における、PVCZを用いた積層型回折光学素子の断面図。
【図27】第13の実施の形態における、PVCZを用いた積層型回折光学素子の断面図。
【図28】第13の実施の形態における、積層型回折光学素子の成形プロセスを示す概略図。
【図29】従来の光学材料における光学ガラス、ポリマーの屈折率、アッペ数分布を示す図。
【符号の説明】
1、5、11、31、41,51,61,71,81,91、101 金型
2 ポリビニルカルバゾールの粉末
2’、32’、42’、52’、62’、72’、82’、92’、102’、207、217 ポリビニルカルバゾール
3、7、13、33、43、53、63、73、83、93、103、203、204、213、214 ガラス平板
4、8、14,34,44,54、64、74、84、94、104、201、202、211,220 回折光学素子
6、12、205、206、216 光硬化樹脂
9 スペーサ
10、20、40、50、60、70、80、90、110、210、230積層型回折光学素子
32 ポリビニルカルバゾール/クロロホルムの溶液
42、52、217’ N−ビニルカルバゾール(N−VCZ)
62 熱重合用原材料
72、82、92、102 光重合用原材料
95 ヒーター
Claims (18)
- ポリビニルカルバゾールを成形型に供給し、熱可塑成形によって光学素子を成形することを特徴とする光学素子の製造方法。
- 溶媒に溶解させたポリビニルカルバゾールを成形型に供給し、該溶媒を蒸発させて光学素子を成形することを特徴とする光学素子の製造方法。
- 主にN−ビニルカルバゾールからなる物質を成形型に供給し、該成形型の内部において重合反応により硬化させ、ポリビニルカルバゾールに変換して光学素子を成形することを特徴とする光学素子の製造方法。
- 前記重合反応は熱重合であり、前記熱重合は70℃以上130℃以下の温度での加熱処理により行われることを特徴とする請求項3に記載の光学素子の製造方法。
- 前記重合反応は光重合であり、前記光学材料は2個以上の不飽和エチレン基を有する化合物を含むことを特徴とする請求項3に記載の光学素子の製造方法。
- 前記2個以上の不飽和エチレン基を有する化合物が、ジビニルベンゼンであることを特徴とする請求項5に記載の光学素子の製造方法。
- 前記2個以上の不飽和エチレン基を有する化合物は、その重量割合が0.5wt%〜2.5wt%の範囲であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の光学素子の製造方法。
- 前記光学素子が回折光学素子であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の光学素子の製造方法。
- 主に流動性を有するN−ビニルカルバゾールからなる物質を、回折形状を有する成形型に供給し、該N−ビニルカルバゾールを該成形型の内部において重合反応により硬化させポリビニルカルバゾールに変換し、該硬化したポリビニルカルバゾールを該成形型から離型することにより光学素子を成形することを特徴とする光学素子の製造方法。
- 請求項1乃至9のいずれか1項に記載の光学素子の製造方法によって製造することを特徴とする光学素子。
- 主に流動性を有するN−ビニルカルバゾールからなる物質を、回折形状を有する成形型に供給し、該N−ビニルカルバゾールを該成形型の内部において重合反応により硬化させポリビニルカルバゾールに変換して回折光学素子とし、該回折光学素子と他の回折光学素子とを、お互いの回折面を対向させて組み合わせることにより積層型光学素子を成形することを特徴とする積層型回折光学素子の製造方法。
- 硬化樹脂を、回折形状を有する成形型に供給し、該硬化樹脂を該成形型の内部において硬化させ、該硬化した硬化樹脂を、該成形型から離型して回折光学素子とし、主に流動性を有するN−ビニルカルバゾールからなる物質を該回折光学素子に供給し、該N−ビニルカルバゾールを該回折光学素子の内部において重合反応により、該回折光学素子の回折形状を埋め込み、平坦化されるように硬化させてポリビニルカルバゾールに変換し、お互いの回折面が対向するように、該回折光学素子と他の回折光学素子とを組み合わせることにより積層型光学素子を成形することを特徴とする積層型回折光学素子の製造方法。
- 請求項11または請求項12に記載の積層型回折光学素子の製造方法によって製造することを特徴とする積層型回折光学素子。
- 熱重合により光学素子を成形する光学材料であって、N−ビニルカルバゾールと熱開始剤とを含むことを特徴とする光学材料。
- 光重合により光学素子を成形する光学材料であって、N−ビニルカルバゾールと光開始剤とを含むことを特徴とする光学材料。
- 2個以上の不飽和エチレン基を有する化合物を含むことを特徴とする請求項15に記載の光学材料。
- 前記2個以上の不飽和エチレン基を有する化合物が、ジビニルベンゼンであることを特徴とする請求項16に記載の光学材料。
- 前記2個以上の不飽和エチレン基を有する化合物は、その重量割合が0.5wt%〜2.5wt%の範囲であることを特徴とする請求項16または17に記載の光学材料。
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