JP2004124064A - 粗面樹脂フィルム、粗面樹脂フィルム被覆金属板、粗面樹脂フィルム被覆金属板の製造方法、粗面樹脂フィルム被覆面を有する金属缶およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリエステル樹脂中に無機質粒子を含有させるかまたは樹脂中にポリオレフィン樹脂などのポリエステル樹脂と非相溶の樹脂を含有させて表面を粗面化した粗面樹脂フィルム、または樹脂フィルム表面にエンボス加工を施した粗面樹脂フィルムを金属板に積層、もしくは表面が粗面化されていない樹脂フィルムを金属板に積層した樹脂フィルム被覆金属板にエンボス加工を施してなる樹脂フィルム被覆金属板を、絞り缶や絞りしごき加工を施して缶に成形加工して、表面粗さをさらに増大させる。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、粗面樹脂フィルム、粗面樹脂フィルム被覆金属板、粗面樹脂フィルム被覆金属板の製造方法、粗面樹脂フィルム被覆面を有する金属缶およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、樹脂フィルム、特にポリエスル樹脂を被覆した金属板を成形加工してなる、食品用の金属缶が広く上市されている。これらのポリエスル樹脂被覆金属板を用いた缶は表面が極めて平滑であるが、この平滑さのため、缶に充填した内容物を取り出す際に内容物が缶の表面に強固に付着して取り出しにくい、という難点を有している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
かかる難点を克服するため、本発明は充填した内容物を取り出しやすい、食品用のポリエステル樹脂フィルムまたはポリエステル樹脂を主体とする樹脂からなるフィルムを被覆してなる金属缶、それに用いる粗面樹脂フィルム被覆金属板、それに用いる粗面樹脂フィルム、およびそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、缶内面となる金属板に被覆されたポリエステル樹脂フィルムの表面を粗面化してなる、食品用の金属缶を得ることを究極の目的とする。すなわち、
本発明の粗面ポリエステル樹脂フィルムは、表面粗さRa(JIS B 0601)が0.2μm以上、好ましくはRa(JIS B 0601)が0.5μm以上であるポリエステル樹脂フィルムからなり、また
粒子径が1μm以上である無機質粒子を1重量%以上含有させたポリエステル樹脂を押出成形してなり、さらに
無機質粒子が二酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、二酸化珪素のいずれか1種、または2種以上であることを特徴とする粗面樹脂フィルムである。
【0005】
また、本発明の粗面樹脂フィルムは、ポリエステル樹脂に、ポリエステル樹脂と非相溶性の樹脂を5〜30重量%含有させてなる樹脂を押出成形してなり、さらに
ポリエステル樹脂と非相溶性の樹脂が、ポリオレフィン樹脂またはポリメチルメタクリルレートのいずれか1種、または2種以上であることを特徴とする。
【0006】
さらに、本発明の粗面樹脂フィルムは、上記のいずれかに記載の粗面樹脂フィルムを上層フィルムとして、その下に、1種または2種以上のポリエステル樹脂と、ポリオレフィン樹脂およびポリオレフィンエラストマーからなる群より選択された少なくとも1種からなるポリオレフィン成分とをブレンドしてなる樹脂からなる下層フィルムを設けた2層フィルムからなる粗面樹脂フィルムであってもよく、その場合
ポリオレフィン成分としてポリオレフィン樹脂または、ポリオレフィン樹脂とポリオレフィンエラストマーからなる樹脂が使用されていること、また
ポリオレフィン樹脂が、炭素数が2〜8個の1−アルケン重合樹脂の1種または2種以上からなる樹脂であること、また
1−アルケン重合樹脂がポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体のいずれかであること、また
ポリオレフィン樹脂がメタロセン触媒により重合されたポリオレフィン樹脂であること、また
ポリオレフィン樹脂の少なくとも一部が、無水マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸ジグリシジルのいずれかで変性した変性ポリオレフィン樹脂であることを特徴とする、また
ポリオレフィンエラストマーが、メルトフローレート(MFR、230℃)0.4〜30g/10分の、インプラントで作成したエチレン−プロピレン共重合エラストマーであること、そして
下層フィルムを構成するブレンド樹脂が、ポリオレフィン成分を1〜30重量%含有してなることを特徴とする。
【0007】
本発明の粗面樹脂フィルム被覆金属板は、上記のいずれかの粗面樹脂フィルムを金属板に積層してなる粗面樹脂フィルム被覆金属板、または
エンボス加工により表面に凹凸模様を形成してなるポリエステル樹脂フィルムが被覆されてなる粗面樹脂フィルム被覆金属板であり、
粗面樹脂フィルムの表面粗さRa(JIS B 0601)が0.2μm以上、好ましくはRa(JIS B 0601)が0.5μm以上であることを特徴とする。
【0008】
本発明の粗面ポリエステル樹脂フィルム被覆金属板の製造方法は、上記のいずれかの粗面樹脂フィルムを接着剤を介して、または介さずに直接金属板に積層すること、または
エンボス加工により表面に凹凸模様を形成してなるポリエステル樹脂フィルムを接着剤を介して、または介さずに直接金属板に積層すること、または
ポリエステル樹脂フィルムを接着剤を介して、または介さずに直接金属板に積層した後、ポリエステル樹脂フィルム表面にエンボス加工を施すことを特徴とする製造方法である。
【0009】
本発明の金属缶は、樹脂フィルム被覆してなる金属板を成形加工してなる金属缶であって、缶に成形加工した後の樹脂フィルムの表面粗さRa(JIS B 0601)が0.5μm以上である粗面樹脂フィルム被覆面を有する金属缶であり、樹脂フィルムがポリエステル樹脂フィルムであることを特徴とする。
または本発明の金属缶は、上記のいずれかの粗面樹脂フィルム被覆金属板を成形加工してなる金属缶、または
樹脂フィルムを被覆してなる金属板を、表面を粗面化したポンチを用いて絞り加工、または絞りしごき加工し、上記の粗面樹脂フィルム被覆面を有するようにした金属缶である。
【0010】
本発明の金属缶の製造方法は、ポリエステル樹脂フィルムを被覆してなる金属板を、表面を粗面化したポンチを用いて絞り加工、または絞りしごき加工して缶体に成形加工することを特徴とする、粗面樹脂フィルム被覆面を有する金属缶の製造方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の発明者らは上記の難点を克服するため鋭意検討した結果、樹脂フィルムを被覆した金属板を成型加工した缶の内面側の表面となる樹脂フィルムの表面を粗面化することにより、缶に充填した内容物が缶壁に強固に付着することなく、容易に取り出すことが可能となることを見出した。以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の目的とする食品用の金属缶は、金属板に表面を粗面化した樹脂フィルム、特にポリエステル樹脂に無機質粒子またはポリエステル樹脂と非相溶性の樹脂を含有させることにより表面を粗面化した単層の樹脂フィルム、または上層としての上記と同一の単層の樹脂フィルムと、下層としてのポリエステル樹脂にポリオレフィン成分をブレンドしてなる樹脂からなる樹脂フィルムの2層フィルムが積層され、かつ上層フィルムの表面を粗面化した樹脂被覆フィルム金属板で構成されている。
【0012】
本発明の粗面樹脂フィルム被覆金属缶においては、缶内面の最表面となる樹脂フィルムが、絞り加工や絞りしごき加工により缶に成形加工された後において粗面化されていること、特にRaが0.5μm以上の表面粗さを有していることが好ましい。表面粗さRaが0.5μm未満であると、缶に充填した内容物を取り出しにくくなる。
【0013】
缶に成形加工された後において、樹脂フィルムの表面が粗面化されているためには、後記するように、
1)表面を粗面化したポンチを用いて絞り加工や絞りしごき加工により、樹脂フィルム被覆金属板を缶に成形加工する方法。
2)金属板に樹脂フィルムを積層し、次いでエンボス加工を施して樹脂フィルム表面に凹凸を形成させてなる粗面樹脂フィルム被覆金属板を缶に成形加工する方法。
3)エンボス加工により表面に凹凸を形成させた樹脂フィルムを金属板に積層した、粗面樹脂フィルム被覆金属板を缶に成形加工する方法、
などもあるが、エンボス加工を施すことなく、予め表面を粗面化した樹脂フィルムを金属板に積層して粗面樹脂フィルム被覆金属板とし、この粗面樹脂フィルム被覆金属板を缶に成形加工してもよい。
【0014】
本発明の粗面樹脂フィルム、および粗面樹脂フィルム被覆金属板において、樹脂フィルムの表面はフィルムの状態、または金属板に積層された状態で、特にRaが0.2μm以上の表面粗さを有していることが好ましい。表面粗さRaが0.2μm未満であると、缶に成形加工した後において、Raが0.5μm以上の表面粗さとすることが困難になる。
【0015】
本発明の粗面樹脂フィルムである、エンボス加工を施すことなく予め表面を粗面化した樹脂フィルムは、以下のようにして得ることができる。すなわち
1)粒子径が1μm以上である二酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、二酸化珪素などの無機質粒子のいずれか1種、または2種以上を1重量%以上含有させたポリエステル樹脂を押出成形して粗面ポリエステル樹脂フィルムとする。製膜されたフィルムにおいては表面に無機質粒子が突出し、表面が粗面化される。この場合、粒子径が1μm以上の無機質粒子の含有量が1重量%未満であると、フィルムに製膜した後にRaが0.2μm以上の表面粗さを得ることができない。
【0016】
2)ポリエステル樹脂に、ポリエステル樹脂と非相溶性であるポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体などのポリオレフィン樹脂、ポリメチルメタクリルレートなどの樹脂のいずれか1種、または2種以上を5〜30重量%含有させてなる樹脂を押出成形して粗面ポリエステル樹脂フィルムとする。これらの樹脂はポリエステル樹脂と非相溶性であるため、両者を加熱溶融させた後に押出してフィルムに製膜すると、これらのポリエステル樹脂と非相溶性の樹脂が、ポリエステル樹脂中に粒子状で分散した状態で存在し、フィルム表面に非相溶樹脂粒子が凸出し、表面が粗面化される。
この場合、ポリエステル樹脂に含有させるポリオレフィン樹脂、ポリメチルメタクリルレートなどの含有量が5重量%未満であるとフィルムに製膜した後にRa0.2μm以上の表面粗さが得られない。一方、含有量が30重量%を超えると分散状態が不均一になり、目的とする粗面の状態とすることが著しく困難になる。
【0017】
上記のポリエステル樹脂に、ポリエステル樹脂と非相溶性の樹脂を含有させた樹脂からなる樹脂フィルムは金属板との接着性にやや乏しく、絞り加工や絞りしごき加工により缶に成形加工する際に剥離することがある。そのため、このフィルムと金属板の間に、樹脂フィルムと金属板の両方との接着性に優れた層を介在させてもよい。すなわち、ポリエステル樹脂にポリエステル樹脂と非相溶性の樹脂を含有させた樹脂からなる樹脂フィルムを上層フィルムとして、その下にポリエステル樹脂と、ポリオレフィン樹脂およびポリオレフィンエラストマーからなる群より選択されたポリオレフィン成分とをブレンドしてなる樹脂からなる下層フィルムを設けた2層フィルムを共押出法を用いて作製し、下層フィルムを金属板と接するようにして積層することにより、金属板との良好な接着性が得られるようになる。
【0018】
上記の単層フィルム、または2層フィルムの上層のポリエステル樹脂に含有させる非相溶性としてのポリオレフィン樹脂、および2層フィルムの下層のポリエステル樹脂とブレンドするポリオレフィン成分として使用するポリオレフィン樹脂としては、炭素数が2〜8個の1−アルケン共重合樹脂の1種または2種以上からなる樹脂を挙げることができる。炭素数が2〜8個の1−アルケン共重合樹脂としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリペンテン−1、ポリヘキセン−1、ポリヘプテン−1、ポリオクテン−1、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体などを挙げることができる。これらのうち、2層フィルムの下層のポリエステル樹脂とブレンドするポリオレフィン成分としては、特にインプラントで作成したエチレン−プロピレン共重合体が好ましい。また、これらのポリオレフィン樹脂として、メタロセン触媒によるポリオレフィン樹脂を用いた場合は、缶に充填する内容物のフレーバーに影響を与えるオリゴマーの発生が少なく、好ましい。
【0019】
また上記の2層フィルムの下層のポリエステル樹脂とブレンドするポリオレフィン樹脂、例えばポリエチレンやポリプロピレンを、無水マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリル酸アイオノマー、メタクリル酸ジグリシジルなどのいずれかで変性した変性ポリオレフィン樹脂を用いることも可能であり、このような変性ポリオレフィン樹脂が、未変性のポリオレフィン樹脂に対して1〜100重量%の比率でブレンドしたものをポリオレフィン成分として用いることにより、ポリエステル樹脂中にポリオレフィン成分が微細に分散するようになり、また金属板との接着性も向上するので好ましい。
【0020】
2層フィルムの下層のポリエステル樹脂とブレンドするポリオレフィンエラストマーとしては、メルトフローレート(MFR、230℃)が0.4〜30g/10分、特に0.8〜25g/10分であるエチレン−プロピレン共重合エラストマーを用いることが好ましい。MFRが上記範囲よりも小さい場合は、樹脂を加熱溶融した際に溶融粘度がポリエステル樹脂の溶融粘度よりも高くなりすぎて、ポリエステル樹脂中に分散するポリオレフィン樹脂の粒子が粗大化し、好適な粗面状態が得られにくくなり、また耐衝撃性に乏しくなり、金属板に被覆した後や、被覆金属板を缶に成形した後に落下や缶同士の衝突などの衝撃が加わると、樹脂フィルムにクラックが入り、クラックが上層フィルムまで伝播して内容物が直接金属板に触れるようになり、金属板が腐食して腐食穿孔することがある。一方、MFRが上記範囲を超えても耐衝撃性に乏しくなる。このエチレン−プロピレン共重合エラストマーは、インプラントで作製されたものであることが好ましい。
【0021】
上記の2層フィルムの下層のポリエステル樹脂とブレンドするポリオレフィン成分の、ポリエステル樹脂に対するブレンド率は1〜30重量%であることが好ましい。1重量%未満であると金属板に被覆した後や、被覆金属板を缶に成形した後に耐衝撃性に乏しくなる。一方、ブレンド率が30重量%を超えると均一なフィルムが得にくくなり、また硬度も低下するので樹脂表面が疵付きやすくなる。
【0022】
上記の単層フィルム、または2層フィルムの上層に用いるポリエステル樹脂としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルスルホンカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、3,3−ジエチルコハク酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、ダイマー酸、セバシン酸、スベリン酸、ドデカジカルボン酸などのジカルボン酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサジオール、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンなどのジオールを、それぞれ1種を重縮合してなるホモポリマー、またはジカルボン酸1種以上とジオール2種以上を重縮合してなる共重合体、あるいはジカルボン酸2種以上とジオールを1種以上を重縮合してなる共重合体、およびこれらのホモポリマーや共重合体を2種以上ブレンドしてなるブレンド樹脂のいずれかのポリエステル樹脂を挙げることができるが、好適にはエチレンテレフタレート/エチレンイソフタレート共重合体やポリブチレンテレフタレートが使用される。特に、エチレンテレフタレート:85〜95モル%とエチレンイソフタレート:5〜15モル%からなるポリエステル樹脂は加工性に優れており、前記したように無機質粒子やポリエステル樹脂と非相溶性の樹脂を含有させて金属板に積層した後、絞り加工や絞りしごき加工により缶に成形加工しても樹脂フィルムにクラックが生じることがなく、金属板との接着性にも優れている。さらに缶に充填される内容物と接してもその内容物の香りや風味を損なうことがなく、良好なフレーバー性を示す。
【0023】
また、ポリブチレンテレフタレートは、ポリオレフィン樹脂や、他のポリオレフィン成分であるポリオレフィンエラストマーとブレンドしやすく、例えば、ポリオレフィン樹脂とブレンドした場合に、ブレンド樹脂中においてポリオレフィン樹脂がより細かく分散し、適度な粗面の形成、および耐衝撃性や加工性の向上に有効である。さらに、ポリブチレンテレフタレートは結晶化速度が大きく、樹脂被覆金属板を缶に成形加工し、その後外面塗装などで缶を加熱する際に、脆い粗大な結晶の成長を抑制する特性を有している。そのため、耐衝撃性の改善に極めて有効である。またさらに、ポリブチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートと他のポリエステル樹脂とのブレンド樹脂にポリオレフィン樹脂やポリメチチルメタクリルレートを含有させてなる樹脂は耐水劣化性(加水分解性)に優れており、この樹脂からなるフィルムを被覆した金属板を成形加工した缶は、水系の内容物を充填して長期間経時させても樹脂の分子量の低下が少なく、そのため長期にわたって安定して良好な耐衝撃性を維持することができる。
【0024】
本発明において、上述した無機質粒子やポリエステル樹脂と非相溶性のポリオレフィン樹脂やポリメチルメタクリルレートを含有させてなる単層の樹脂フィルム、または2層フィルムの上層の樹脂フィルムに用いるポリエステル樹脂、および2層フィルムの下層の樹脂フィルムに用いる上記のポリオレフィン成分とブレンドするポリエステル樹脂は、絞り加工や絞りしごき加工のような厳しい加工を樹脂フィルムのクラック、割れ、削れ、剥離等を生じることなく実施可能とするため、成形加工性に優れた無配向の状態で使用することを前提としており、樹脂の固有粘度を高め、樹脂を強化させる必要がある。このため、上記のポリエステル樹脂の固有粘度を0.5〜1.5の範囲とすることが好ましく、0.8〜1.2の範囲とすることがより好ましい。固有粘度が0.5未満のポリエステル樹脂を用いた場合は樹脂の強度が極端に低下し、本発明の粗面樹脂フィルム被覆金属板を絞り加工や絞りしごき加工を施して缶に成形することが困難になる。また、フレーバー性にも劣るようになる。一方、固有粘度が1.5を超えると樹脂を加熱溶融させた際の溶融粘度が極端に高くなり、溶融樹脂を押し出して金属板に積層する作業が極めて困難になる。
【0025】
上記の粗面樹脂フィルムが単層フィルムである場合は、5〜50μmの厚さを有していることが好ましく、2層フィルムである場合は、上層が3〜15μm、下層が2〜47μmの厚さを有していることが好ましく、さらに全体として5〜50μmの厚さを有していることが好ましい。
【0026】
次に本発明の粗面樹脂フィルム被覆金属板について説明する。本発明の粗面樹脂フィルム被覆金属板は以下のようにして作製することができる。すなわち、金属板を上記の単層の粗面樹脂フィルムの融解温度より20〜40℃高い温度に加熱し、粗面樹脂フィルムの粗面化していない面を加熱金属板に当接し、1対のラミネートロールで挟み付けて圧着する。または、上記の2層の粗面樹脂フィルムの下層フィルムの融解温度より20〜40℃高い温度に加熱し、2層の粗面樹脂フィルムの下層フィルム面を加熱金属板に当接し、1対のラミネートロールで挟み付けて圧着し、積層する。金属板と粗面樹脂フィルムとのより強力な接着性を必要とする場合は、金属板と粗面樹脂フィルムの間に接着剤を介して積層してもい。すなわち、金属板または粗面樹脂フィルムのいずれかの接着予定面に、予めウレタン系、エポキシ系などの接着剤を予め塗布してから上記のように圧着し、積層する。
【0027】
本発明の粗面樹脂フィルム被覆金属板は以下のようにしても作製することができる。すなわち、金属板に樹脂フィルムを積層し、次いでエンボス加工を施して樹脂フィルム表面に凹凸を形成させてなる粗面樹脂フィルム被覆金属板とする(後加工法)か、または、エンボス加工により表面に凹凸を形成させた樹脂フィルムを金属板に積層して粗面樹脂フィルム被覆金属板とする(前加工法)のいずれかの方法を用いて作製する。
【0028】
まず、後加工法を用いて作製する場合を説明する。まず、前記のいずれかのポリエステル樹脂を加熱溶融し、押出法を用いて5〜50μmの厚さの樹脂フィルムを製膜する。次いで、この樹脂フィルムを金属板に積層する。積層する方法は公知の熱接着法、ウレタン系やエポキシ系などの接着剤を用いる方法、および金属板と樹脂フィルムの間に接着剤を介在させて熱接着する方法のいずれを用いてもよい。または、加熱溶融したポリエステル樹脂を直接金属板上に押し出して積層してもよい。この場合、予め接着剤を塗布した金属板上に押し出すことにより、金属板と樹脂フィルムの間に接着剤を介在させて積層することもできる。
【0029】
以上のようにして得られた樹脂フィルム被覆金属板を、樹脂フィルム表面の温度が樹脂フィルムのガラス転移温度以上となるように加熱し、表面粗さRaが0.2μm以上となるように表面を粗面加工したエンボスロールを一方とし、表面に弾性体を有するロールを他方とする1対のロール他方を用い、エンボスロールが樹脂フィルムと接するようにして、上記のように加熱した樹脂フィルム被覆金属板を挟み付けて加圧し、樹脂フィルム面にエンボスロールの粗面を転写し、樹脂フィルム表面をRa0.2μm以上の表面粗さとする。
【0030】
次に、前加工法を用いて作製する場合を説明する。
次に、前加工法を用いて製造する場合を説明する。まず、上記した後加工法の工程に従って、前記のいずれかのポリエステル樹脂を加熱溶融し樹脂フィルムを作成する。次いで、この樹脂フィルムを樹脂フィルムのガラス転移温度以上の温度に加熱し、表面粗さRaが0.2μm以上となるように表面を粗面加工したエンボスロールを一方とし、表面に弾性体を有するロールを他方とする1対のロール他方を用い、上記のように加熱した樹脂フィルム被覆金属板を挟み付けて加圧し、樹脂フィルム面にエンボスロールの粗面を転写し、樹脂フィルム表面をRa0.2μm以上の表面粗さとする。
【0031】
次いで、金属板を、エンボス加工を施した樹脂フィルムの融点±10℃の温度に加熱し、樹脂フィルムを加熱された金属板に当接し、1対のラミネートロールを用いてエンボス加工を施した樹脂フィルムと金属板を挟み付けて加圧して接着する。金属板と樹脂フィルムとの優れた接着性が必要な場合は、金属板と樹脂フィルムの間に接着剤介して上記のようにして熱接着することが好ましい。
このようにして、本発明の粗面樹脂フィルム被覆金属板を得ることができる。
【0032】
金属板としては、通常の缶用素材として広範に使用されている電解クロム酸処理鋼板(ティンフリースチール、以下TFSで示す)や錫めっき鋼板(ぶりき、以下ぶりきで示す)などの各種表面処理鋼板、およびアルミニウム合金板を使用することができる。表面処理鋼板としては、10〜200mg/m2 の皮膜量の金属クロムからなる下層と、クロム換算で1〜30mg/m2 の皮膜量のクロム水和酸化物からなる上層とからなる2層皮膜を形成させたTFSが好ましく、本発明の粗面樹脂フィルムとの十分な接着性を有し、さらに耐食性も兼ね備えている。ぶりきとしては、鋼板表面に錫を0.1〜11.2g/m2 のめっき量でめっきし、その上にクロム換算で1〜30mg/m2 の皮膜量の金属クロムとクロム水和酸化物からなる2層皮膜を形成させたもの、またはクロム水和酸化物のみからなる単層皮膜を形成させたものが好ましい。いずれの場合も、基板となる鋼板は、缶用素材として一般的に用いられている低炭素冷延鋼板であることが好ましい。鋼板の厚さは0.1〜0.32mmであることが好ましい。アルミニウム合金に関しては、JISの3000系、または5000系のものが好ましく、表面に電解クロム酸処理を施して、0〜200mg/m2 の皮膜量の金属クロムからなる下層と、クロム換算で1〜30mg/m2 の皮膜量のクロム水和酸化物からなる上層とからなる2層皮膜を形成させたものか、またはリン酸クロム酸処理を施して、クロム換算で1〜30mg/m2 のクロム成分とリン酸換算で0〜30mg/m2 のリン成分が付着しているものが好ましい。アルミニウム合金の板厚は0.15〜0.4mmであることが好ましい。
【0033】
次に本発明の粗面樹脂フィルム被覆面を有する金属缶について説明する。本発明の粗面樹脂フィルム被覆面を有する金属缶は、上記のいずれかの粗面樹脂フィルム被覆金属板を缶に成形加工することにより得られる。缶としては切板を曲げまたは丸めて筒状とし、端部を重ねて溶接して缶胴とし、この缶胴の上下部に天板および地板を巻締めて缶体とする3ピースの溶接缶や、円板等の形状に打ち抜いたブランクを絞り加工して缶胴とし、この缶胴の上部に天板を巻締めて缶体とするいわゆる絞り缶、絞り加工時に曲げ曲げ戻し加工を行って缶胴壁を薄肉化して缶胴とし、この缶胴の上部に天板を巻締めて缶体とするいわゆる薄肉化絞り缶、ブランクを絞り加工してカップ状とした後、カップ壁部をしごき加工して薄肉化して缶胴とし、この缶胴の上部に天板を巻締めて缶体とするいわゆる絞りしごき缶などの2ピース缶がある。
【0034】
本発明の粗面樹脂フィルム被覆金属板をこれら3ピース缶や2ピース缶に成形加工した缶の内面においては、缶に充填した内容物を取り出しやすいように、缶内面の樹脂フィルムの表面粗さRaは0.5μm以上であることが好ましい。3ピース缶に成形加工する場合、粗面樹脂フィルム被覆金属板の樹脂フィルムの表面は殆ど加工を受けることがなく、樹脂フィルムの表面粗さは事実上変化することがない。そのため、本発明の粗面樹脂フィルム被覆金属板を3ピース缶に適用する場合は、樹脂フィルムの表面粗さRaが0.5μm以上である粗面樹脂フィルム被覆金属板を用いることが好ましい。
【0035】
絞り加工、薄肉化絞り加工、絞りしごき加工のいずれかを施して2ピース缶に成形加工する場合、粗面樹脂フィルム被覆金属板の樹脂フィルムの表面はこれらのいずれかの加工により、樹脂フィルムの表面粗さが増大する。そのため、樹脂フィルムの表面粗さRaが0.2μm以上である粗面樹脂フィルム被覆金属板をこれらのいずれかの加工を施して2ピース缶に成形した場合、加工後の缶の表面の樹脂フィルムの表面粗さRaが0.5μm以上である缶が得られる。
【0036】
缶内面の樹脂フィルムの表面粗さRaが0.5μm以上である缶は、次のようにして得ることも可能である。すなわち、前記したポリエステル樹脂を加熱溶融して直接前記した金属板上に直接押し出す、または前記したポリエステル樹脂をフィルムに製膜し、この樹脂フィルムを金属板に積層する、いずれかの方法を用いて樹脂フィルム被覆金属板を作製し、この樹脂フィルム被覆金属板円板等の形状に打ち抜いたブランクを、上記の絞り加工、薄肉化絞り加工、絞りしごき加工のいずれかを施して2ピース缶に成形加工する際に、最終工程で表面粗さRaが0.5μm以上となるように表面を粗面加工したポンチを用いて加工することにより、樹脂フィルム表面にポンチの粗面を転写して、樹脂フィルム表面Raを0.5μm以上の表面粗さとすることができる。
【0037】
【実施例】
以下、実施例にて本発明をさらに詳細に説明する。
[実施例1](試料番号1〜16)
表1に示す樹脂組成のポリエステル樹脂(表中PESで表す。以下同様)に、表2に示す種類および粒子径の無機質粒子、または表3に示すようにポリエチレン(表3中でPEで表す。以下同様)、ポリプロピレン(表3中でPPで表す。以下同様)、エチレン−プロピレン共重合体、(表3中でEPで表す。以下同様)、ポリメチルメタクリルレート(表3中でPMCで表す。以下同様)のいずれかであるポリエステル樹脂と非相溶性の樹脂を、表3に示す含有率(重量%)で含有させてなり、表3に示す厚さの単層の粗面樹脂フィルムを、押し出し法を用いて作製した。これらの単層フィルムの表面粗さRa(JIS B 0601)を表面粗さ計(サーフコム1500A、東京精密社製)を用いて測定した。結果を表3に示す。
なお、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体としては、いずれもメタロセン触媒により合成されたものを用いた。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
[実施例2](試料番号17〜31)
ポリエステル樹脂であるエチレンテレフタレート−エチレンイソフタレート共重合体に、ポリエステル樹脂と非相溶性の樹脂であるエチレン−プロピレン共重合体を含有させた樹脂からなる、表3に示した試料番号11、13、14、および15のいずれかの樹脂フィルムを上層フィルムとして、その下に表3に示したポリエステル樹脂と、表4に示すポリオレフィン樹脂(表4中でPOLで示す。以下同様)およびポリオレフィンエラストマー(表4中でPELで示す。以下同様)からなる群より選択されたポリオレフィン成分とを表5に示す含有率(重量%)でブレンドしてなる樹脂からなる下層フィルムを設けた表5に示す厚さの2層の粗面樹脂フィルムを共押出法を用いて作製した。これらの2層の粗面樹脂フィルムの表面粗さを実施例1と同様にして測定した。結果を表5に示す。
なお、オレフィン樹脂としては、いずれもメタロセン触媒により合成されたものを用いた。またポリオレフィンエラストマーとしてはインプラントで作製したものを用いた。
【0042】
【表4】
【0043】
【表5】
【0044】
[実施例3](試料番号32〜43)
表3に示した試料番号2、6、8、11、14、15の単層の粗面樹脂フィルム、および表5に示した試料番号18、20、22、24、26、31の2層の粗面樹脂フィルムを、表6に示す下記の3種類の表面処理鋼板のいずれかに積層し、粗面樹脂フィルム被覆金属板を作製した。すなわち、これらの金属板を加熱し、その片面にこれらの粗面樹脂フィルムを粗面と反対側の面が金属板と接するようにして当接し、他の片面に酸化チタン顔料を含有する厚さ20μmの白色のポリエステル樹脂フィルム(エチレンテレフタレート(88モル%)−エチレンイソフタレート(12モル%)共重合体。表6中で白色ET(88)−EI(12)で示す)を当接して、1対の圧着ロールを用いて3者を挟み付けて加圧し、積層した。一部の粗面樹脂フィルムについては、粗面と反対側の金属板と接する面に予めエポキシ系の接着剤を塗布したものを用い、粗面樹脂フィルムと金属板の間に接着剤が介在するようにして積層した。これらの粗面樹脂フィルム被覆板に被覆した粗面樹脂フィルムの表面粗さを実施例1と同様にして測定した。結果を表6に示す。
【0045】
【0046】
[実施例4](試料番号44〜46)
上層がポリエチレンテレフタレート(厚さ20μm。表6中でPETで示す)、下層がポリエステル樹脂(エチレンテレフタレート(88モル%)−エチレンイソフタレート(12モル%)共重合体、厚さ5μm。表6中でET(88)−EI(12)で示す)の2層のポリエステル樹脂フィルムと、実施例3に示した白色のポリエステル樹脂フィルムを、実施例3に示したのと同様のTFSのそれぞれの面に圧着ロールを用い、実施例3と同様にして積層した。次いで、積層鋼板を230〜240℃に加熱し、表面をRa(JIS B 0601)0.7μmに粗面化加工したエンボスロールを一方とし、シリコン系ゴムをライニングした弾性ロールを他方とする1対のエンボスロールを用い、20000〜120000Nの加圧力を負荷して積層鋼板を挟み付けて加圧して樹脂フィルム表面にエンボスロールの粗面を転写し、粗面樹脂フィルム被覆金属板とした。これらの粗面樹脂フィルム被覆板に被覆した粗面樹脂フィルムの表面粗さを実施例1と同様にして測定した。結果を表6に示す。
【0047】
[実施例5](試料番号47〜49)
ポリエチレンテレフタテートの二軸延伸フィルム(厚さ25μm、固有粘度0.8。表6中でPET−BOで示す)を、160℃に加熱し、表面をRa:0.7μmに粗面化加工したエンボスロールを一方とし、シリコン系ゴムをライニングした弾性ロールを他方とする1対のエンボスロールを用い、20000〜120000Nの加圧力を負荷して挟み付けて加圧して樹脂フィルム表面にエンボスロールの粗面を転写し、粗面樹脂フィルムとした。この粗面樹脂フィルムの非粗面化面、および実施例3に示した白色のポリエステル樹脂フィルムの片面にエポキシ系樹脂を塗布し溶媒を乾燥除去し、これらの樹脂フィルムを接着剤塗布面がET面と接するようにして、実施例3に示したのと同様のETのそれぞれの面に圧着ロールを用い、実施例3と同様にして積層し、粗面樹脂フィルム被覆金属板とした。これらの粗面樹脂フィルム被覆板に被覆した粗面樹脂フィルムの表面粗さRaを実施例1と同様にして測定した。結果を表6に示す。
【0048】
【表6】
【0049】
[実施例6](溶接缶)
試料番号34、35、47、49の粗面樹脂フィルム被覆金属板から矩形のブランクを切り出し、白色樹脂フィルム被覆面が缶外面側となるようにして円筒状に丸め、端部を重ねてシーム溶接して溶接缶胴を作製した。なお、溶接部となる端部の樹脂フィルムは予め切削除去した。次いで溶接部にポリエステル樹脂フィルムからなる補正テープを貼着して補正した後、底板を巻締め溶接缶とした。この溶接缶に、市販の業務用缶に充填された油漬ツナをミキサーで粉砕したものを充填し、天板を巻締め、130℃の水蒸気中でで90分間加熱殺菌処理を施した。その後、天板を開封し、缶を逆さまにして内容物を取り出した後、缶内壁に付着した内容物の程度を目視観察し、下記の基準で内容物の取り出しやすさを評価した。
<内容物の取り出しやすさの評価>.
◎:缶内壁に付着物が殆ど認められない。
○:缶内壁に付着物が若干認められるが、缶を手で振ることにより付着物は殆ど除去される。
△:缶内壁に付着物が認められ、缶を手で振っても付着物がかなり残存する。
×:缶内壁に付着物が認められ、缶を手で振っても付着物は殆ど除去されない。
評価結果を表7に示す。
【0050】
[実施例7](絞り缶)
試料番号37、39、42、44、46の粗面樹脂フィルム被覆金属板から円板のブランクを打ち抜き、白色樹脂フィルム被覆面が缶外面側となるようにして絞り比:1.88で絞り缶に成形加工した。また、白色樹脂フィルム被覆面と反対側の面に被覆する2層樹脂フィルムの上層フィルムにおいて、エチレン−プロピレン共重合体を含有しないポリエステル樹脂(PES6)を用いた以外は試料番号42と同一構成の樹脂フィルム被覆金属板を作製した(試料番号50)。この樹脂フィルム被覆金属板から上記と同様にして円板のブランクを打ち抜き、表面を研削加工によりRa:0.78μmの表面粗さに粗面化仕上げしたポンチを用いた以外は上記と同様にして絞り缶に成形加工した。次いで、絞り缶の内壁の樹脂フィルムの表面粗さを実施例1と同様にして測定した。測定結果を表7に示す。絞り加工を施すことにより、樹脂フィルムの表面粗さが増大することが分かる。次いで絞り缶に実施例6と同様の内容物を充填し、天板を巻締めた後、実施例6と同様にして加熱殺菌処理した後天板を開封し、実施例6と同様にして内容物の取り出しやすさを評価した。評価結果を表7に示す。
【0051】
[実施例8](絞りしごき缶)
試料番号33、36、43、45、48の粗面樹脂フィルム被覆金属板から円板のブランクを打ち抜き、白色樹脂フィルム被覆面が缶外面側となるようにして2段の絞り加工(総絞り比:2.21)を施してカップに成形し、次いでこのカップを2段のしごき加工(総しごき率:50%)で絞りしごき缶(表7中でDI缶で示す)に成形加工した。また、白色樹脂フィルム被覆面と反対側の面に被覆する樹脂フィルムにおいて、エチレン−プロピレン共重合体を含有しないポリエステル樹脂(PES6)を用いた以外は試料番号36と同一構成の樹脂フィルム被覆金属板を作製した(試料番号51)。この樹脂フィルム被覆金属板から上記と同様にして円板のブランクを打ち抜き、上記と同様にして絞りカップに成形した後、しごき工程において表面を研削加工によりRa:0.55μmの表面粗さに粗面化仕上げしたしごきポンチを用いた以外は上記と同様にして絞りしごき缶に成形加工した。次いで、絞りしごき缶の内壁の樹脂フィルムの表面粗さを実施例1と同様にして測定した。測定結果を表7に示す。絞りしごき加工を施すことにより、樹脂フィルムの表面粗さが増大することが分かる。次いで絞りしごき缶に実施例6と同様の内容物を充填し、天板を巻締めた後、実施例6と同様にして加熱殺菌処理した後天板を開封し、実施例6と同様にして内容物の取り出しやすさを評価した。評価結果を表7に示す。
【0052】
【表7】
【0053】
表7に示したように、本発明の粗面樹脂フィルムを被覆した金属板を溶接缶に成形した場合、溶接缶に充填した内容物を容易に取り出すことができる。また、本発明の粗面樹脂フィルム被覆金属板を絞り缶、または絞りしごき缶に成形した場合も、これらの缶に充填した内容物を容易に取り出すことができる。さらに樹脂フィルム被覆金属板を粗面加工を施したポンチを用いて絞り缶または絞りしごき缶に成形した場合も、これらの缶に充填した内容物を容易に取り出すことができる。
【0054】
【発明の効果】
本発明の粗面樹脂フィルムはポリエステル樹脂中に無機質粒子を含有させる、または樹脂中にポリオレフィン樹脂などのポリエステル樹脂と非相溶の樹脂を含有させることにより、表面を粗面化した粗面樹脂フィルムである。
また本発明の粗面樹脂フィルム被覆金属板は、これらの粗面樹脂フィルムまたは樹脂フィルム表面にエンボス加工を施した粗面樹脂フィルムを金属板に積層することにより得られる。もしくは、表面が粗面化されていない樹脂フィルムを金属板に積層した樹脂フィルム被覆金属板にエンボス加工を施すことによっても得られる。
これらの粗面樹脂フィルム被覆金属板を溶接缶、絞り缶、絞りしごき缶に成形加工して、本発明の粗面樹脂フィルム被覆面を有する金属缶とする。絞り加工または絞りしごき加工により、樹脂フィルムの表面粗さはさらに増大する。本発明の粗面樹脂フィルム被覆面を有する金属缶は、表面が粗面化されていない樹脂フィルムを金属板に積層した樹脂フィルム被覆金属板を、表面を粗面加工したポンチを用いて絞り加工または絞りしごき加工することによっても得られる。
このような粗面樹脂フィルム被覆面を有する本発明の金属缶に充填された内容物を取り出す場合、樹脂フィルムの表面が粗面化されているので内容物が缶壁に強固に付着することなく、容易に取り出すことができる。
Claims (26)
- 表面粗さRa(JIS B 0601)が0.2μm以上であるポリエステル樹脂フィルムからなる粗面樹脂フィルム。
- 表面粗さRa(JIS B 0601)が0.5μm以上であるポリエステル樹脂フィルムからなる、請求項1に記載の粗面樹脂フィルム。
- 粒子径が1μm以上である無機質粒子を1重量%以上含有させたポリエステル樹脂を押出成形してなる、請求項1又は2に記載の粗面樹脂フィルム。
- 前記無機質粒子が二酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、二酸化珪素のいずれか1種、または2種以上である請求項3に記載の粗面樹脂フィルム。
- 前記ポリエステル樹脂と非相溶性の樹脂を5〜30重量%含有させてなる樹脂を押出成形してなる、請求項1又は2に記載の粗面樹脂フィルム。
- 前記ポリエステル樹脂と前記非相溶性の樹脂が、ポリオレフィン樹脂またはポリメチルメタクリルレートのいずれか1種または2種以上である請求項5に記載の粗面樹脂フィルム。
- 請求項1乃至6のいずれかに記載の粗面樹脂フィルムを上層フィルムとして、その下に、1種または2種以上のポリエステル樹脂と、ポリオレフィン樹脂およびポリオレフィンエラストマーからなる群より選択された少なくとも1種からなるポリオレフィン成分とをブレンドしてなる樹脂からなる下層フィルムを設けた2層フィルムからなる粗面樹脂フィルム。
- 前記ポリオレフィン成分としてポリオレフィン樹脂またはポリオレフィン樹脂とポリオレフィンエラストマーからなる樹脂が使用されている、請求項7に記載の粗面樹脂フィルム。
- 前記ポリオレフィン樹脂が、炭素数が2〜8個の1−アルケン重合樹脂の1種または2種以上からなる樹脂である、請求項6乃至8のいずれかに記載の粗面樹脂フィルム。
- 前記1−アルケン重合樹脂がポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体のいずれかである、請求項9に記載の粗面樹脂フィルム。
- 前記ポリオレフィン樹脂がメタロセン触媒により重合されたポリオレフィン樹脂である、請求項6、8または9のいずれかに記載の粗面樹脂フィルム。
- 前記ポリオレフィン樹脂の少なくとも一部が、無水マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸ジグリシジルのいずれかで変性した変性ポリオレフィン樹脂である、請求項7に記載の粗面樹脂フィルム。
- 前記ポリオレフィンエラストマーが、メルトフローレート(MFR、230℃)0.4〜30g/10分の、インプラントで作成したエチレン−プロピレン共重合エラストマーである、請求項7または8に記載の粗面樹脂フィルム。
- 前記下層フィルムを構成するブレンド樹脂が、ポリオレフィン成分を1〜30重量%含有してなる、請求項7に記載の粗面樹脂フィルム。
- 請求項1乃至14のいずれかに記載の粗面樹脂フィルムを金属板に積層してなる、粗面樹脂フィルム被覆金属板。
- エンボス加工により表面に凹凸模様を形成してなるポリエステル樹脂フィルムが被覆されてなる粗面樹脂フィルム被覆金属板。
- 粗面樹脂フィルムの表面粗さRa(JIS B 0601)が0.2μm以上である、請求項16に記載の粗面樹脂フィルム被覆金属板。
- 前記粗面樹脂フィルムの表面粗さRa(JIS B 0601)が0.5μm以上である、請求項17に記載の粗面樹脂フィルム被覆金属板。
- 請求項1〜14のいずれかに記載の粗面樹脂フィルムを金属板に積層することを特徴とする、粗面樹脂フィルム被覆金属板の製造方法。
- エンボス加工により表面に凹凸模様を形成してなるポリエステル樹脂フィルムを金属板に積層することを特徴とする、粗面樹脂フィルム被覆金属板の製造方法。
- ポリエステル樹脂フィルムを金属板に積層した後、ポリエステル樹脂フィルム表面にエンボス加工を施すことを特徴とする、粗面樹脂フィルム被覆金属板の製造方法。
- 樹脂フィルムを被覆してなる金属板を成形加工してなる金属缶であって、缶に成形加工した後の樹脂フィルムの表面粗さRa(JIS B0601)が0.5μm以上である粗面樹脂フィルム被覆面を有する金属缶。
- 樹脂フィルムがポリエステル樹脂フィルムである、請求項22に記載の粗面樹脂フィルム被覆面を有する金属缶。
- 請求項15乃至18のいずれかに記載の粗面樹脂フィルム被覆金属板を成形加工してなり、缶に成形加工した後の樹脂フィルムの表面粗さRa(JIS B 0601)が0.5μm以上である粗面樹脂フィルム被覆面を有する金属缶。
- 樹脂フィルムを被覆してなる金属板を、表面を粗面化したポンチを用いて絞り加工、または絞りしごき加工してなる、請求項22又は23の何れかに記載の粗面樹脂フィルム被覆面を有する金属缶。
- ポリエステル樹脂フィルムを被覆してなる金属板を、表面を粗面化したポンチを用いて絞り加工、または絞りしごき加工して缶体に成形加工することを特徴とする、粗面樹脂フィルム被覆面を有する金属缶の製造方法。
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