JP2004124002A - 炭化室炉壁位置測定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】コークス炉炭化室の炉壁耐火物損傷状況を評価するための炭化室炉壁位置測定方法であって、炉幅ではなく左右の炉壁までの個別の距離を測定しつつ、炭化室内における炉幅方向の距離計の軌跡のずれに影響されずに正確に炉壁損耗状況を評価することのできる炭化室炉壁位置測定方法を提供する。
【解決手段】距離計1を炭化室窯口から挿入して炭化室内を移動しつつ炭化室の炉壁と距離計との間の距離を測定する炭化室炉壁位置測定方法において、挿入側Aの窯口金物6aと距離計との距離Xa及び出口側Bの窯口金物6bと距離計との距離Xbを測定することによって炭化室挿入側Aと出口側Bにおける距離計の炉幅方向位置を特定し、当該特定結果に基づいて炭化室内各位置における距離計の炉幅方向位置(測定装置2の中心10の軌跡12)を定め、炭化室の炉壁と距離計との間の距離測定結果から炉壁位置を算出することを特徴とする炭化室炉壁位置測定方法。
【選択図】 図1
【解決手段】距離計1を炭化室窯口から挿入して炭化室内を移動しつつ炭化室の炉壁と距離計との間の距離を測定する炭化室炉壁位置測定方法において、挿入側Aの窯口金物6aと距離計との距離Xa及び出口側Bの窯口金物6bと距離計との距離Xbを測定することによって炭化室挿入側Aと出口側Bにおける距離計の炉幅方向位置を特定し、当該特定結果に基づいて炭化室内各位置における距離計の炉幅方向位置(測定装置2の中心10の軌跡12)を定め、炭化室の炉壁と距離計との間の距離測定結果から炉壁位置を算出することを特徴とする炭化室炉壁位置測定方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コークス炉炭化室の炉壁耐火物損傷状況を評価するための炭化室炉壁位置測定方法であって、距離計を炭化室窯口から挿入して炭化室内を移動しつつ炭化室の炉壁と距離計との間の距離を測定する炭化室炉壁位置測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
コークス炉の炭化室をはじめとする高温の炉室においては、炉室を構成する炉壁が耐火物で構成され、該耐火物の劣化状況を的確に把握することが必要である。特にコークス炉の炭化室は、常温で水分を約10%含む石炭の装入と、乾留が完了した約1000℃のコークスの押し出し作業の繰り返しという過酷な条件下で通常20年以上の長期間にわたって連続操業されるものであり、炭化室を構成する耐火煉瓦は熱的、化学的および機械的要因によって徐々に劣化し、煉瓦表面は損耗したり角欠けを起こしたり煉瓦間の目地が開いたり、又は壁が湾曲したりという老朽化現象が見られる。そのため耐火煉瓦の劣化に起因するコークスの押し詰まりが生じたり、耐火煉瓦が脱落したりする。このような耐火煉瓦の脱落などの事故が生じるとその補修は困難であり、操業に著しい影響が及ぼされる。従って、炭化室内の特に炉壁を構成する耐火煉瓦の状況を常時把握しておくことは、コークス炉操業管理上極めて重要である。
【0003】
コークス炉炭化室は左右の壁の間隔が0.4m程度と狭く、一方その長さは16m程度と長い形状を有する。炭化室の炉壁状況の調査はコークス乾留と乾留の合間に行うことになるが、この際炭化室内は極めて高温であり、直接人間の目で炉壁表面を観察することは困難である。
【0004】
炉壁表面の損耗は表面の凹凸として現れるので、表面の凹凸が計測できれば炉壁の損耗状況を把握することが可能になる。炉壁の表面直近に沿って距離計を移動させ、距離計によって距離計から対面する炉壁表面までの距離を測定できれば、表面の凹凸状況を把握することができる。この場合、距離計が移動する軌跡が計画したとおりに正確であることが必要である。コークス炉炭化室内に挿入する、例えばコークス押出機ラムビームのような挿入機構に距離計を設置して炉内に挿入して炉壁との距離を計測する場合においては、距離計の炉幅方向の軌跡を正確に炉中心位置に平行に移動させることは極めて困難である。距離計の軌跡を正確に制御できない限り、距離計による測定で炉壁損耗状況を評価することは難しい。
【0005】
特許文献1においては、炭化室内に挿入する距離計と炉外の定位置との間に耐熱性線材を張り、該定位置における耐熱性線材の張り角度を測定することによって炭化室内における距離計の幅方向位置を決定する発明が開示されている。この方法では、直線的な耐熱性線材を張ることが難しく、炉内の高温雰囲気と炉外の雰囲気との急激な温度差にさらされるため、耐熱性線材として材質的に耐久性を有するものを得ることが難しい。
【0006】
コークス炉炭化室の炉壁のように、狭い炉室において左右の炉壁が略平行に相対している場合には、炉壁耐火物が損耗すれば両炉壁間の距離が増大する。両炉壁間の距離(炉幅)を測定することにより、炉壁を構成する耐火物の損耗状況を推定することができる。また、炭化室内において炉幅測定器を炉の長手方向に移動させて炉幅を測定する際、炉幅方向の炉幅測定器の位置のずれは炉幅測定値に有害な影響を与えない。従って、従来は炭化室炉壁損耗状況の評価に炉幅測定方法が用いられ、例えばコークス押出機に炉幅測定器を取り付けて炭化室内を移動させ、炉幅を測定する方法が用いられていた。
【0007】
【特許文献1】
特開平9−279147号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
炉幅測定によって炉壁の損耗を評価する方法においては、左右の炉壁損耗量の合計が計測されるのみであり、左右のそれぞれの炉壁損耗を単独で評価することができない。従って、左右の炉壁が同じように損耗している場合は正確な評価が可能であるが、左右いずれかの炉壁のみが損耗している個所においては、どちらの炉壁が損耗しているのかが不明であり、また損耗量を把握することもできない。
【0009】
本発明は、コークス炉炭化室の炉壁耐火物損傷状況を評価するための炭化室炉壁位置測定方法であって、炉幅ではなく左右の炉壁までの個別の距離を測定しつつ、炭化室内における炉幅方向の距離計の軌跡のずれに影響されずに正確に炉壁損耗状況を評価することのできる炭化室炉壁位置測定方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明の要旨とするところは以下のとおりである。
(1)距離計1を炭化室窯口から挿入して炭化室内を移動しつつ炭化室の炉壁と距離計との間の距離を測定する炭化室炉壁位置測定方法において、挿入側Aの窯口金物6aと距離計との距離及び出口側Bの窯口金物6bと距離計との距離を測定することによって炭化室挿入側Aと出口側Bにおける距離計の炉幅方向位置を特定し、当該特定結果に基づいて炭化室内各位置における距離計の炉幅方向位置を定め、炭化室の炉壁と距離計との間の距離測定結果から炉壁位置を算出することを特徴とする炭化室炉壁位置測定方法。
(2)前記炭化室内各位置における距離計の炉幅方向位置を定めるに際し、炭化室挿入側から出口側までの間において距離計が直線移動するものとすることを特徴とする上記(1)に記載の炭化室炉壁位置測定方法。
【0011】
距離計を炭化室窯口から挿入して炭化室内を移動しつつ炉壁までの距離を測定する炭化室炉壁位置測定方法においては、距離計1を含む測定装置2をコークス押出機15に設置したり、あるいは炭化室への挿入・抽出が可能なコークス炉診断装置に距離計を配置することによって測定を行う。コークス押出機やコークス炉診断装置においては、炭化室への挿入に際し、測定装置2の炉幅方向中心位置(測定装置中心11)を炭化室の炉幅方向中心位置(炭化室中心10)と一致させて移動を行うことは困難であり、両中心位置の間にはずれ(測定装置ずれZ)が生じ、また各測定タイミング毎、炭化室内の挿入位置毎に測定装置ずれZは変動する。図1において、炭化室中心10のラインと測定装置中心11の軌跡12との間にずれが生じている。しかし、炭化室の挿入側Aと出口側Bの2個所において測定装置ずれZを把握することができれば、炭化室内の各位置における測定装置ずれZは、この挿入側Aと出口側Bにおける測定装置ずれZの実績に基づいて正確に算出できることが判明した。
【0012】
コークス炉炭化室の挿入側A及び出口側Bの窯口には窯口金物6が配置されている。炭化室の使用に伴って炭化室内炉壁耐火物の損耗が進行した状況においても、この窯口金物6の表面位置は不変である。従って、図2(a)(b)に示すように、炭化室炉壁位置測定に際して挿入側Aの窯口金物6aと距離計1との距離Xa及び出口側Bの窯口金物6bと距離計1との距離Xbを測定すれば、この測定データに基づいて測定装置中心11から窯口金物6までの距離(Ya、Yb)を計算できる。また炭化室中心10から窯口金物6までの距離(Da、Db)は予め判明しているから、これらの値を比較することにより、炭化室挿入側Aと出口側Bにおける距離計の炉幅方向位置(測定装置中心11と炭化室中心10との間のずれ(Za、Zb))を特定することができる。
【0013】
炭化室内において距離計1を載せた測定装置2を移動させる際における測定装置中心11の軌跡は、通常は直線的軌跡をたどることが多い。この場合、上記のように炭化室挿入側Aと出口側Bにおける距離計1の炉幅方向位置を特定できれば、炭化室内各位置における距離計の炉幅方向位置を定めることができる。言い換えれば炭化室挿入側Aと出口側Bにおける測定装置中心11と炭化室中心10との間の測定装置ずれ(Za、Zb)を特定できれば、両者を直線で結ぶことにより、炭化室内各位置における測定装置ずれZを定めることができる。その結果炭化室の炉壁と距離計との間の距離Xの測定結果から炉壁位置を算出することが可能になる。また、炭化室内の距離計の軌跡が直線とはならない場合においても、炭化室内における軌跡の形状自身は各測定毎あるいは炭化室毎に変動せず再現性を有する。従って、予め軌跡の形状を把握しておけば、あとは炭化室挿入側と出口側における距離計の炉幅方向位置を特定することにより、軌跡が直線である場合と同様に炭化室内各位置における距離計の炉幅方向位置を定めることができ、その結果炭化室の炉壁と距離計との間の距離測定結果から炉壁位置を算出することが可能になる。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1、2に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
本発明の炭化室炉壁位置測定のための距離計1としては、非接触の距離計を用いることが好ましい。非接触の距離計としては、レーザ距離計、マイクロ波距離計等を用いることができる。レーザ距離計を用いる場合を例にとると、1対のレーザ距離計を準備し、各レーザ距離計1を相対する各炉壁5に向け、それぞれのレーザ距離計1から各炉壁表面4までの距離Xを測定することにより、同時に左右両側の炉壁の距離を測定することができ、好都合である。
【0015】
距離計1を収納した測定装置2は、図4に示すようにコークス押出機15に搭載して炭化室内を移動することも可能であり、また炭化室観察装置又は炭化室観察補修装置として炭化室内に挿入する機能を有する装置に搭載して炭化室内を操作することも可能である。測定装置2を炭化室内で移動するためのこれら装置を「移動装置7」と呼ぶ。測定装置2を移動装置7に搭載した状態において、炭化室の幅方向中心と図面上で一致する測定装置2の位置を「測定装置中心11」と呼ぶ。
【0016】
コークス炉炭化室3は、長手方向一方の端は押出機を挿入するための窯口であり、ここでは挿入側Aと呼ぶ。また、挿入側Aと反対側はコークスを押し出すための窯口であり、ここでは出口側Bと呼ぶ。挿入側窯口、出口側窯口ともに、金属製の炉枠が配置されており、窯口金物6又は炉枠金物と呼ばれる。この窯口金物6は炭化室3において正しく固定されており、炭化室煉瓦が欠損や湾曲を起こしやすいのに対比して変形する可能性が少ない状況にある。本発明においては、炭化室炉壁位置測定に際して挿入側Aの窯口金物6aと距離計1との距離Xa(図2(a))及び出口側Bの窯口金物6bと距離計1との距離Xb(図2(b))を測定し、この測定データから炭化室挿入側Aと出口側Bにおける測定装置中心11から窯口金物表面までの距離(Ya、Yb)を算出する。炭化室中心10から窯口金物表面までの距離(Da、Db)はわかっているから、これらデータの比較からから測定装置中心11と炭化室の炉幅方向中心(炭化室中心10)との間のずれ(以下「測定装置ずれZ」という。)(この場合は炭化室装入側Aと出口側Bにおける測定装置ずれ(Za、Zb))を特定することができる。
【0017】
コークス炉炭化室において、通常は炭化室長手方向に炉幅が変化し、装入側に比較して出口側の方が炉幅が広くなっている。これに伴って、炭化室中心位置から窯口金物の表面までの距離も、装入側に比較して出口側の方が大きい値となる。上記測定装置ずれを特定するに際しても、装入側と出口側との間の窯口金物の寸法の相違を考慮した上で行うことはいうまでもない。
【0018】
移動装置に搭載した測定装置を炭化室内において移動する際において、移動装置の特性として測定装置中心11の炭化室内の軌跡12が図1に示すように直線となる特性を有する場合には、以上測定した炭化室装入側と出口側における測定装置ずれ(Za、Zb)の測定結果に基づき、炭化室内の長手方向各位置における測定装置ずれZは、炭化室装入側と出口側の測定装置ずれ(Za、Zb)を直線で結んだ線上にあるものとして算出することができる。例えば、図2(c)に示す例では、測定点Cにおける測定装置ずれZcを計算で求めることができる。
【0019】
図2(c)に示すように、測定点Cにおける距離計1による測定で、距離計から炉壁表面までの距離Xcが求まり、この値に基づいて測定装置中心から炉壁表面までの距離Ycを算出することができる。これに上記Zcを参酌することにより、炭化室中心から炉壁表面までの測定された距離Pcを算出する。測定点Cにおける炭化室中心から炉壁表面までの当初距離Dcがわかっているから、PcとDcを比較して両者の差を取ることにより、炉壁表面損耗量Qcを算出することができる。
【0020】
また、測定装置中心の炭化室内の軌跡が、直線ではないが再現性のある曲線状軌跡として把握できている場合には、炭化室装入側Aにおける測定装置ずれZaと出口側Bにおける測定装置ずれZbとを当該把握された曲線状軌跡によって結ぶことにより、炭化室長手方向各位置における測定装置ずれZの値を特定することができる。
【0021】
距離計1を内蔵した測定装置2を、コークス押出機等の移動装置7に搭載する。炭化室高さ方向の搭載位置を任意に選定することにより、任意の高さにおける炭化室長手方向全長の炉壁煉瓦の損傷状況を把握することができる。同時に複数個所に測定装置2を搭載することにより、あるいは搭載高さを変更しつつ複数回の測定を行うことにより、複数の高さにおける炭化室長手方向全長の炉壁煉瓦の損傷状況を把握することができる。炉壁表面と距離計との間の距離Xを炭化室長手方向位置毎のデータとして把握し、この距離に上記炭化室長手方向各位置における測定装置ずれZの値を参酌することにより、炭化室炉幅方向中心から炉壁表面までの距離P、ひいては炉壁表面の損耗量Qを炭化室長手方向位置毎に定めることができる。
【0022】
測定に際しては、測定装置2を炭化室挿入側Aから移動開始し、まず挿入側Aの窯口金物6aまでの距離を測定して測定装置ずれZaを求め、次いで炭化室内に測定装置2を順次挿入しつつ連続的に距離計から炉壁表面までの距離Xを測定して測定データを蓄積し、測定装置2が出口側Bに到達した時点で窯口金物6bまでの距離を測定して測定装置ずれZbを求める順序を採用しても良い。
【0023】
炉壁の損耗量を正確に測定するためには、炉壁に付着している付着カーボンを除去した後に距離の測定を行う。付着カーボンは焼き落とし等の手段によって除去する。一方、付着カーボン除去前と除去後に距離の測定を行い、両者の比較を行えば、付着カーボンの厚みを知ることができる。
【0024】
炉壁に目地切れがある場合には、その部分で距離測定値が異常に大きな値となるため、本発明の炉壁位置測定によって目地切れを検出することが可能である。従って、本発明の炉壁位置測定により、重大な炉壁の劣化も把握することが可能である。
【0025】
本発明の炉壁位置測定データを採取した後、このデータに基づいて両側の各炉壁毎に煉瓦損耗状況を特定し、補修方法と補修の程度を決定する。損耗個所と損耗状況が炉内の位置との関係で正確に把握できているので、損耗状況に応じて正確に補修を行うことができ、良好な補修を短時間で行うことができる。
【0026】
【実施例】
炉高6m、炉長15m、炭化室平均幅450mmの形状を有するコークス炉炭化室の炉壁位置測定を本発明によって行った。距離計1としてレーザー距離計を2式、右壁用と左壁用を測定装置2内に格納し、電源とアンプ及びアンテナを測定装置内に内蔵し、炉外にデータをリアルタイムで送信し、窯の外のアンテナでデータを受信し記録する機器構成を採用した。測定装置2は、蒸発顕熱利用の水冷式冷却ボックス内に収納した。図4に示すように、測定装置2をコークス押出機15の押出しラムに設置し、コークス押出機15の挿入側Aから出口側Bまで移動して測定を行うことができる。
【0027】
炭化室高さ方向の測定位置は、測定装置2を押出しラム上に設置する位置を選択することによって任意の高さに照準を当てることができるが、本実施例においては炭化室上部の天井から2m下の位置とした。
【0028】
レーザー距離計は、ガリウム砒素半導体を使用した半導体レーザーによって発光し、鏡にて壁面に垂直に光を照射し、壁面での反射光のうち特定の角度で戻ってくる光を限定してとらえ、その特定の角度の光が反射されてくる位置に基づいて距離計から炉壁表面までの距離を計測する原理のものを採用した。
【0029】
コークス炉炭化室の窯口付近における構造は、挿入側A、出口側Bともに同じ構造であり、最も外側に窯口金物6、その内側にプロテクター、その内側に煉瓦が配されており、窯口金物6およびプロテクターは鋳物製であり、変形などの損傷が発生していないものである。
【0030】
コークス押出機15を炭化室内に挿入し、一定速度で炭化室内を移動しつつ炭化室長手方向1mmピッチで距離測定を行った。図3(a)において、距離計から炉壁表面までの距離Xの炭化室長手方向の測定全データが示されている。このデータから直ちに図3(b)に示すように測定装置中心から炉壁表面までの距離Yの炭化室長手方向全データを算出した。図3(b)において、A点におけるYaとDaの比較からZaを求め、B点におけるYbとDbの比較からZbを求めた。本実施例では、実測の結果、挿入側Aにおいて測定装置中心12は左側に20mmずれておりZa=−20mmであり、出口側Bにおいて測定装置中心12は右側に20mmずれておりZb=20mmであった。
【0031】
次いで、測定装置中心の軌跡12が直線であるとして、炭化室内長手方向各位置における測定装置ずれZを上記Za、Zbの測定結果に基づいて定め、この値と蓄積した炭化室内各位置における測定データYとを用いることにより、図3(c)に示すように炉内各位置の炭化室中心から炉壁表面までの測定された距離Pを算出した。炉内各位置における炭化室中心から炉壁表面までの当初距離Dがわかっているので、PとDを比較することにより、炉内各位置における炉壁表面損耗量Qを算出することができた。
【0032】
図3(c)の図面で、C1点においては炉壁表面損耗量Qcが正の値となり、この部分が煉瓦損耗個所21であることがわかる。また、C2点ではQcが負の値となり、この部分に付着カーボン22が付着していることが分かる。
【0033】
【発明の効果】
本発明は、コークス炉炭化室の炉壁耐火物損傷状況を評価するための炭化室炉壁位置測定方法であって、距離計を炭化室窯口から挿入して炭化室内を移動しつつ炭化室の炉壁と距離計との間の距離を測定する炭化室炉壁位置測定方法ににおいて、炭化室挿入側と出口側それぞれの窯口金物表面までの距離を測定して当該測定結果に基づいて距離測定結果を補正することにより、炭化室内における炉幅方向の距離計の軌跡のずれに影響されずに正確に炉壁損耗状況を評価することのできる炭化室炉壁位置測定方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】炭化室内における測定装置の位置関係を示す概略断面図である。
【図2】炭化室内各位置における測定状況を示す概略断面図であり、(a)は炭化室挿入側Aにおける状況、(b)は出口側Bにおける状況、(c)は炭化室内C点における状況を示す図である。
【図3】炭化室長手方向に測定した距離計測定データのデータ処理状況を示す図であり、(a)は距離計から炉壁表面までの距離X測定結果、(b)は(a)のデータをもとに算出した測定装置中心から炉壁表面までの距離Y、(c)は測定装置ずれ補正を行った後の炭化室中心から炉壁表面までの測定された距離Pと当初距離Dとを対比した図である。
【図4】距離計をコークス押出機に搭載して炭化室内を測定する本発明の方法を示す図である。
【符号の説明】
1 距離計
2 測定装置
3 炭化室
4 炉壁表面
5 炉壁
6 窯口金物
7 移動装置
8 窯口
9 窯口金物表面
10 炭化室中心
11 測定装置中心
12 測定装置中心の軌跡
15 コークス押出機
21 煉瓦損耗個所
22 付着カーボン
A 炭化室挿入側
B 出口側
D 炭化室中心から炉壁表面までの当初距離
X 距離計から炉壁表面までの距離
Y 測定装置中心から炉壁表面までの距離
Z 測定装置ずれ
P 炭化室中心から炉壁表面までの測定された距離
Q 炉壁表面損耗量
【発明の属する技術分野】
本発明は、コークス炉炭化室の炉壁耐火物損傷状況を評価するための炭化室炉壁位置測定方法であって、距離計を炭化室窯口から挿入して炭化室内を移動しつつ炭化室の炉壁と距離計との間の距離を測定する炭化室炉壁位置測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
コークス炉の炭化室をはじめとする高温の炉室においては、炉室を構成する炉壁が耐火物で構成され、該耐火物の劣化状況を的確に把握することが必要である。特にコークス炉の炭化室は、常温で水分を約10%含む石炭の装入と、乾留が完了した約1000℃のコークスの押し出し作業の繰り返しという過酷な条件下で通常20年以上の長期間にわたって連続操業されるものであり、炭化室を構成する耐火煉瓦は熱的、化学的および機械的要因によって徐々に劣化し、煉瓦表面は損耗したり角欠けを起こしたり煉瓦間の目地が開いたり、又は壁が湾曲したりという老朽化現象が見られる。そのため耐火煉瓦の劣化に起因するコークスの押し詰まりが生じたり、耐火煉瓦が脱落したりする。このような耐火煉瓦の脱落などの事故が生じるとその補修は困難であり、操業に著しい影響が及ぼされる。従って、炭化室内の特に炉壁を構成する耐火煉瓦の状況を常時把握しておくことは、コークス炉操業管理上極めて重要である。
【0003】
コークス炉炭化室は左右の壁の間隔が0.4m程度と狭く、一方その長さは16m程度と長い形状を有する。炭化室の炉壁状況の調査はコークス乾留と乾留の合間に行うことになるが、この際炭化室内は極めて高温であり、直接人間の目で炉壁表面を観察することは困難である。
【0004】
炉壁表面の損耗は表面の凹凸として現れるので、表面の凹凸が計測できれば炉壁の損耗状況を把握することが可能になる。炉壁の表面直近に沿って距離計を移動させ、距離計によって距離計から対面する炉壁表面までの距離を測定できれば、表面の凹凸状況を把握することができる。この場合、距離計が移動する軌跡が計画したとおりに正確であることが必要である。コークス炉炭化室内に挿入する、例えばコークス押出機ラムビームのような挿入機構に距離計を設置して炉内に挿入して炉壁との距離を計測する場合においては、距離計の炉幅方向の軌跡を正確に炉中心位置に平行に移動させることは極めて困難である。距離計の軌跡を正確に制御できない限り、距離計による測定で炉壁損耗状況を評価することは難しい。
【0005】
特許文献1においては、炭化室内に挿入する距離計と炉外の定位置との間に耐熱性線材を張り、該定位置における耐熱性線材の張り角度を測定することによって炭化室内における距離計の幅方向位置を決定する発明が開示されている。この方法では、直線的な耐熱性線材を張ることが難しく、炉内の高温雰囲気と炉外の雰囲気との急激な温度差にさらされるため、耐熱性線材として材質的に耐久性を有するものを得ることが難しい。
【0006】
コークス炉炭化室の炉壁のように、狭い炉室において左右の炉壁が略平行に相対している場合には、炉壁耐火物が損耗すれば両炉壁間の距離が増大する。両炉壁間の距離(炉幅)を測定することにより、炉壁を構成する耐火物の損耗状況を推定することができる。また、炭化室内において炉幅測定器を炉の長手方向に移動させて炉幅を測定する際、炉幅方向の炉幅測定器の位置のずれは炉幅測定値に有害な影響を与えない。従って、従来は炭化室炉壁損耗状況の評価に炉幅測定方法が用いられ、例えばコークス押出機に炉幅測定器を取り付けて炭化室内を移動させ、炉幅を測定する方法が用いられていた。
【0007】
【特許文献1】
特開平9−279147号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
炉幅測定によって炉壁の損耗を評価する方法においては、左右の炉壁損耗量の合計が計測されるのみであり、左右のそれぞれの炉壁損耗を単独で評価することができない。従って、左右の炉壁が同じように損耗している場合は正確な評価が可能であるが、左右いずれかの炉壁のみが損耗している個所においては、どちらの炉壁が損耗しているのかが不明であり、また損耗量を把握することもできない。
【0009】
本発明は、コークス炉炭化室の炉壁耐火物損傷状況を評価するための炭化室炉壁位置測定方法であって、炉幅ではなく左右の炉壁までの個別の距離を測定しつつ、炭化室内における炉幅方向の距離計の軌跡のずれに影響されずに正確に炉壁損耗状況を評価することのできる炭化室炉壁位置測定方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明の要旨とするところは以下のとおりである。
(1)距離計1を炭化室窯口から挿入して炭化室内を移動しつつ炭化室の炉壁と距離計との間の距離を測定する炭化室炉壁位置測定方法において、挿入側Aの窯口金物6aと距離計との距離及び出口側Bの窯口金物6bと距離計との距離を測定することによって炭化室挿入側Aと出口側Bにおける距離計の炉幅方向位置を特定し、当該特定結果に基づいて炭化室内各位置における距離計の炉幅方向位置を定め、炭化室の炉壁と距離計との間の距離測定結果から炉壁位置を算出することを特徴とする炭化室炉壁位置測定方法。
(2)前記炭化室内各位置における距離計の炉幅方向位置を定めるに際し、炭化室挿入側から出口側までの間において距離計が直線移動するものとすることを特徴とする上記(1)に記載の炭化室炉壁位置測定方法。
【0011】
距離計を炭化室窯口から挿入して炭化室内を移動しつつ炉壁までの距離を測定する炭化室炉壁位置測定方法においては、距離計1を含む測定装置2をコークス押出機15に設置したり、あるいは炭化室への挿入・抽出が可能なコークス炉診断装置に距離計を配置することによって測定を行う。コークス押出機やコークス炉診断装置においては、炭化室への挿入に際し、測定装置2の炉幅方向中心位置(測定装置中心11)を炭化室の炉幅方向中心位置(炭化室中心10)と一致させて移動を行うことは困難であり、両中心位置の間にはずれ(測定装置ずれZ)が生じ、また各測定タイミング毎、炭化室内の挿入位置毎に測定装置ずれZは変動する。図1において、炭化室中心10のラインと測定装置中心11の軌跡12との間にずれが生じている。しかし、炭化室の挿入側Aと出口側Bの2個所において測定装置ずれZを把握することができれば、炭化室内の各位置における測定装置ずれZは、この挿入側Aと出口側Bにおける測定装置ずれZの実績に基づいて正確に算出できることが判明した。
【0012】
コークス炉炭化室の挿入側A及び出口側Bの窯口には窯口金物6が配置されている。炭化室の使用に伴って炭化室内炉壁耐火物の損耗が進行した状況においても、この窯口金物6の表面位置は不変である。従って、図2(a)(b)に示すように、炭化室炉壁位置測定に際して挿入側Aの窯口金物6aと距離計1との距離Xa及び出口側Bの窯口金物6bと距離計1との距離Xbを測定すれば、この測定データに基づいて測定装置中心11から窯口金物6までの距離(Ya、Yb)を計算できる。また炭化室中心10から窯口金物6までの距離(Da、Db)は予め判明しているから、これらの値を比較することにより、炭化室挿入側Aと出口側Bにおける距離計の炉幅方向位置(測定装置中心11と炭化室中心10との間のずれ(Za、Zb))を特定することができる。
【0013】
炭化室内において距離計1を載せた測定装置2を移動させる際における測定装置中心11の軌跡は、通常は直線的軌跡をたどることが多い。この場合、上記のように炭化室挿入側Aと出口側Bにおける距離計1の炉幅方向位置を特定できれば、炭化室内各位置における距離計の炉幅方向位置を定めることができる。言い換えれば炭化室挿入側Aと出口側Bにおける測定装置中心11と炭化室中心10との間の測定装置ずれ(Za、Zb)を特定できれば、両者を直線で結ぶことにより、炭化室内各位置における測定装置ずれZを定めることができる。その結果炭化室の炉壁と距離計との間の距離Xの測定結果から炉壁位置を算出することが可能になる。また、炭化室内の距離計の軌跡が直線とはならない場合においても、炭化室内における軌跡の形状自身は各測定毎あるいは炭化室毎に変動せず再現性を有する。従って、予め軌跡の形状を把握しておけば、あとは炭化室挿入側と出口側における距離計の炉幅方向位置を特定することにより、軌跡が直線である場合と同様に炭化室内各位置における距離計の炉幅方向位置を定めることができ、その結果炭化室の炉壁と距離計との間の距離測定結果から炉壁位置を算出することが可能になる。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1、2に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
本発明の炭化室炉壁位置測定のための距離計1としては、非接触の距離計を用いることが好ましい。非接触の距離計としては、レーザ距離計、マイクロ波距離計等を用いることができる。レーザ距離計を用いる場合を例にとると、1対のレーザ距離計を準備し、各レーザ距離計1を相対する各炉壁5に向け、それぞれのレーザ距離計1から各炉壁表面4までの距離Xを測定することにより、同時に左右両側の炉壁の距離を測定することができ、好都合である。
【0015】
距離計1を収納した測定装置2は、図4に示すようにコークス押出機15に搭載して炭化室内を移動することも可能であり、また炭化室観察装置又は炭化室観察補修装置として炭化室内に挿入する機能を有する装置に搭載して炭化室内を操作することも可能である。測定装置2を炭化室内で移動するためのこれら装置を「移動装置7」と呼ぶ。測定装置2を移動装置7に搭載した状態において、炭化室の幅方向中心と図面上で一致する測定装置2の位置を「測定装置中心11」と呼ぶ。
【0016】
コークス炉炭化室3は、長手方向一方の端は押出機を挿入するための窯口であり、ここでは挿入側Aと呼ぶ。また、挿入側Aと反対側はコークスを押し出すための窯口であり、ここでは出口側Bと呼ぶ。挿入側窯口、出口側窯口ともに、金属製の炉枠が配置されており、窯口金物6又は炉枠金物と呼ばれる。この窯口金物6は炭化室3において正しく固定されており、炭化室煉瓦が欠損や湾曲を起こしやすいのに対比して変形する可能性が少ない状況にある。本発明においては、炭化室炉壁位置測定に際して挿入側Aの窯口金物6aと距離計1との距離Xa(図2(a))及び出口側Bの窯口金物6bと距離計1との距離Xb(図2(b))を測定し、この測定データから炭化室挿入側Aと出口側Bにおける測定装置中心11から窯口金物表面までの距離(Ya、Yb)を算出する。炭化室中心10から窯口金物表面までの距離(Da、Db)はわかっているから、これらデータの比較からから測定装置中心11と炭化室の炉幅方向中心(炭化室中心10)との間のずれ(以下「測定装置ずれZ」という。)(この場合は炭化室装入側Aと出口側Bにおける測定装置ずれ(Za、Zb))を特定することができる。
【0017】
コークス炉炭化室において、通常は炭化室長手方向に炉幅が変化し、装入側に比較して出口側の方が炉幅が広くなっている。これに伴って、炭化室中心位置から窯口金物の表面までの距離も、装入側に比較して出口側の方が大きい値となる。上記測定装置ずれを特定するに際しても、装入側と出口側との間の窯口金物の寸法の相違を考慮した上で行うことはいうまでもない。
【0018】
移動装置に搭載した測定装置を炭化室内において移動する際において、移動装置の特性として測定装置中心11の炭化室内の軌跡12が図1に示すように直線となる特性を有する場合には、以上測定した炭化室装入側と出口側における測定装置ずれ(Za、Zb)の測定結果に基づき、炭化室内の長手方向各位置における測定装置ずれZは、炭化室装入側と出口側の測定装置ずれ(Za、Zb)を直線で結んだ線上にあるものとして算出することができる。例えば、図2(c)に示す例では、測定点Cにおける測定装置ずれZcを計算で求めることができる。
【0019】
図2(c)に示すように、測定点Cにおける距離計1による測定で、距離計から炉壁表面までの距離Xcが求まり、この値に基づいて測定装置中心から炉壁表面までの距離Ycを算出することができる。これに上記Zcを参酌することにより、炭化室中心から炉壁表面までの測定された距離Pcを算出する。測定点Cにおける炭化室中心から炉壁表面までの当初距離Dcがわかっているから、PcとDcを比較して両者の差を取ることにより、炉壁表面損耗量Qcを算出することができる。
【0020】
また、測定装置中心の炭化室内の軌跡が、直線ではないが再現性のある曲線状軌跡として把握できている場合には、炭化室装入側Aにおける測定装置ずれZaと出口側Bにおける測定装置ずれZbとを当該把握された曲線状軌跡によって結ぶことにより、炭化室長手方向各位置における測定装置ずれZの値を特定することができる。
【0021】
距離計1を内蔵した測定装置2を、コークス押出機等の移動装置7に搭載する。炭化室高さ方向の搭載位置を任意に選定することにより、任意の高さにおける炭化室長手方向全長の炉壁煉瓦の損傷状況を把握することができる。同時に複数個所に測定装置2を搭載することにより、あるいは搭載高さを変更しつつ複数回の測定を行うことにより、複数の高さにおける炭化室長手方向全長の炉壁煉瓦の損傷状況を把握することができる。炉壁表面と距離計との間の距離Xを炭化室長手方向位置毎のデータとして把握し、この距離に上記炭化室長手方向各位置における測定装置ずれZの値を参酌することにより、炭化室炉幅方向中心から炉壁表面までの距離P、ひいては炉壁表面の損耗量Qを炭化室長手方向位置毎に定めることができる。
【0022】
測定に際しては、測定装置2を炭化室挿入側Aから移動開始し、まず挿入側Aの窯口金物6aまでの距離を測定して測定装置ずれZaを求め、次いで炭化室内に測定装置2を順次挿入しつつ連続的に距離計から炉壁表面までの距離Xを測定して測定データを蓄積し、測定装置2が出口側Bに到達した時点で窯口金物6bまでの距離を測定して測定装置ずれZbを求める順序を採用しても良い。
【0023】
炉壁の損耗量を正確に測定するためには、炉壁に付着している付着カーボンを除去した後に距離の測定を行う。付着カーボンは焼き落とし等の手段によって除去する。一方、付着カーボン除去前と除去後に距離の測定を行い、両者の比較を行えば、付着カーボンの厚みを知ることができる。
【0024】
炉壁に目地切れがある場合には、その部分で距離測定値が異常に大きな値となるため、本発明の炉壁位置測定によって目地切れを検出することが可能である。従って、本発明の炉壁位置測定により、重大な炉壁の劣化も把握することが可能である。
【0025】
本発明の炉壁位置測定データを採取した後、このデータに基づいて両側の各炉壁毎に煉瓦損耗状況を特定し、補修方法と補修の程度を決定する。損耗個所と損耗状況が炉内の位置との関係で正確に把握できているので、損耗状況に応じて正確に補修を行うことができ、良好な補修を短時間で行うことができる。
【0026】
【実施例】
炉高6m、炉長15m、炭化室平均幅450mmの形状を有するコークス炉炭化室の炉壁位置測定を本発明によって行った。距離計1としてレーザー距離計を2式、右壁用と左壁用を測定装置2内に格納し、電源とアンプ及びアンテナを測定装置内に内蔵し、炉外にデータをリアルタイムで送信し、窯の外のアンテナでデータを受信し記録する機器構成を採用した。測定装置2は、蒸発顕熱利用の水冷式冷却ボックス内に収納した。図4に示すように、測定装置2をコークス押出機15の押出しラムに設置し、コークス押出機15の挿入側Aから出口側Bまで移動して測定を行うことができる。
【0027】
炭化室高さ方向の測定位置は、測定装置2を押出しラム上に設置する位置を選択することによって任意の高さに照準を当てることができるが、本実施例においては炭化室上部の天井から2m下の位置とした。
【0028】
レーザー距離計は、ガリウム砒素半導体を使用した半導体レーザーによって発光し、鏡にて壁面に垂直に光を照射し、壁面での反射光のうち特定の角度で戻ってくる光を限定してとらえ、その特定の角度の光が反射されてくる位置に基づいて距離計から炉壁表面までの距離を計測する原理のものを採用した。
【0029】
コークス炉炭化室の窯口付近における構造は、挿入側A、出口側Bともに同じ構造であり、最も外側に窯口金物6、その内側にプロテクター、その内側に煉瓦が配されており、窯口金物6およびプロテクターは鋳物製であり、変形などの損傷が発生していないものである。
【0030】
コークス押出機15を炭化室内に挿入し、一定速度で炭化室内を移動しつつ炭化室長手方向1mmピッチで距離測定を行った。図3(a)において、距離計から炉壁表面までの距離Xの炭化室長手方向の測定全データが示されている。このデータから直ちに図3(b)に示すように測定装置中心から炉壁表面までの距離Yの炭化室長手方向全データを算出した。図3(b)において、A点におけるYaとDaの比較からZaを求め、B点におけるYbとDbの比較からZbを求めた。本実施例では、実測の結果、挿入側Aにおいて測定装置中心12は左側に20mmずれておりZa=−20mmであり、出口側Bにおいて測定装置中心12は右側に20mmずれておりZb=20mmであった。
【0031】
次いで、測定装置中心の軌跡12が直線であるとして、炭化室内長手方向各位置における測定装置ずれZを上記Za、Zbの測定結果に基づいて定め、この値と蓄積した炭化室内各位置における測定データYとを用いることにより、図3(c)に示すように炉内各位置の炭化室中心から炉壁表面までの測定された距離Pを算出した。炉内各位置における炭化室中心から炉壁表面までの当初距離Dがわかっているので、PとDを比較することにより、炉内各位置における炉壁表面損耗量Qを算出することができた。
【0032】
図3(c)の図面で、C1点においては炉壁表面損耗量Qcが正の値となり、この部分が煉瓦損耗個所21であることがわかる。また、C2点ではQcが負の値となり、この部分に付着カーボン22が付着していることが分かる。
【0033】
【発明の効果】
本発明は、コークス炉炭化室の炉壁耐火物損傷状況を評価するための炭化室炉壁位置測定方法であって、距離計を炭化室窯口から挿入して炭化室内を移動しつつ炭化室の炉壁と距離計との間の距離を測定する炭化室炉壁位置測定方法ににおいて、炭化室挿入側と出口側それぞれの窯口金物表面までの距離を測定して当該測定結果に基づいて距離測定結果を補正することにより、炭化室内における炉幅方向の距離計の軌跡のずれに影響されずに正確に炉壁損耗状況を評価することのできる炭化室炉壁位置測定方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】炭化室内における測定装置の位置関係を示す概略断面図である。
【図2】炭化室内各位置における測定状況を示す概略断面図であり、(a)は炭化室挿入側Aにおける状況、(b)は出口側Bにおける状況、(c)は炭化室内C点における状況を示す図である。
【図3】炭化室長手方向に測定した距離計測定データのデータ処理状況を示す図であり、(a)は距離計から炉壁表面までの距離X測定結果、(b)は(a)のデータをもとに算出した測定装置中心から炉壁表面までの距離Y、(c)は測定装置ずれ補正を行った後の炭化室中心から炉壁表面までの測定された距離Pと当初距離Dとを対比した図である。
【図4】距離計をコークス押出機に搭載して炭化室内を測定する本発明の方法を示す図である。
【符号の説明】
1 距離計
2 測定装置
3 炭化室
4 炉壁表面
5 炉壁
6 窯口金物
7 移動装置
8 窯口
9 窯口金物表面
10 炭化室中心
11 測定装置中心
12 測定装置中心の軌跡
15 コークス押出機
21 煉瓦損耗個所
22 付着カーボン
A 炭化室挿入側
B 出口側
D 炭化室中心から炉壁表面までの当初距離
X 距離計から炉壁表面までの距離
Y 測定装置中心から炉壁表面までの距離
Z 測定装置ずれ
P 炭化室中心から炉壁表面までの測定された距離
Q 炉壁表面損耗量
Claims (2)
- 距離計を炭化室窯口から挿入して炭化室内を移動しつつ炭化室の炉壁と距離計との間の距離を測定する炭化室炉壁位置測定方法において、挿入側の窯口金物と距離計との距離及び出口側の窯口金物と距離計との距離を測定することによって炭化室挿入側と出口側における距離計の炉幅方向位置を特定し、当該特定結果に基づいて炭化室内各位置における距離計の炉幅方向位置を定め、炭化室の炉壁と距離計との間の距離測定結果から炉壁位置を算出することを特徴とする炭化室炉壁位置測定方法。
- 前記炭化室内各位置における距離計の炉幅方向位置を定めるに際し、炭化室挿入側から出口側までの間において距離計が直線移動するものとすることを特徴とする請求項1に記載の炭化室炉壁位置測定方法。
Priority Applications (1)
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