JP2004123926A - タイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】シリカ充填剤配合ゴム組成物の物性の低下を伴うことなく加工性及び生産性を改良し、更に、天然ゴムの加硫戻り性を改良することによって、硬度低下を抑制し、低発熱性、耐摩耗性を向上させたタイヤ,特に重荷重用タイヤを提供することを目的とする。
【解決手段】天然ゴムおよびジエン系合成ゴムから選ばれた少なくとも一種からなるゴム成分(a)100質量部と、シリコーンオイルで熱処理されたシリカ(b)を3〜50質量部含み、かつ、ヒドラゾン化合物(c)を0.1〜5.0質量部配合されたゴム組成物をタイヤ部材として使用するタイヤである。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、タイヤ製品製造時の加工性及び生産性を改良し、加硫ゴムの他の物性に悪影響を与えることなく、耐摩耗性を維持改良しながら低発熱性を向上したタイヤに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、トラックやバスなどに用いられる重荷重用空気入りタイヤにおいて、耐摩耗性を向上させ、タイヤの寿命を長くするには、トレッドの剛性を向上させると共に、外傷による寿命の低下を抑制することと、走行により繰り返し加わる歪によるトレッドゴムの温度上昇を抑制することが重要である。
また、重荷重用空気入りタイヤのトレッドゴムには、耐摩耗性と低発熱性能を高いレベルでバランスさせるために、一般に、天然ゴムなどのイソプレン系ゴムをベースとし、補強用充填剤としてカーボンブラック/シリカ併用系を配合することが行われている。
しかしながら、ゴム成分としてイソプレン系ゴムを主体とするものは、過加硫による加硫戻りに起因して弾性率が低下し、低発熱性能が悪化しやすく、特にオフロードタイヤに見られるように、タイヤハンプトータルゲージが50mm以上の大型サイズのタイヤにおいては、低発熱性能が悪化すると共に、耐摩耗性も低下するなど、好ましくない事態を招来する。
【0003】
従来から、シリカはヒステリシスロスを高くするために、悪路走行によるチッピング発生に対して効果がある。しかしながら、シリカを多量に配合すると組成物の粘度が上昇し、工場での混練りや押出し工程における作業性と生産性が悪化し製造条件からくる制約によってシリカの配合量が制限される。
また、トレッド部の発熱を低減するためには、シリカとシランカップリング剤を併用することで達成することができるが、やはりシリカを増量する必要があり上記の理由により両立が困難であつた。
さらに、カーボンブラックを充填した場合に比べてシリカ配合組成物は剛性が低く性能が経時的に変化しやすい欠点があった。そのため、弾性率を上げる目的で、シリカの充填量を増やしプロセス油や加工性助剤の配合量を減らすとことがおこなわれてきたが、この対策は工場での作業性、生産性を悪化させる要因となっていた。
【0004】
このため、プロセス油や加工助剤などを添加することにより、未加硫ゴム組成物の加工性を向上させ、工場作業性及び生産性を向上させることは可能であるが、耐摩耗性や発熱性等の物性の低下を伴うため、特に、低発熱性と耐摩耗性の両立を高いレベルで要求される重荷重用タイヤのトレッドなどに適用することは事実上困難であった。
さらに、重荷重用タイヤのトレッドゴムは天然ゴムの使用比率が高く、従来の天然ゴムを含むゴム製品の製造における加工工程では、天然ゴム分子鎖同士の絡み合いや天然ゴムのイソプレン鎖中の官能基同士又はそのような官能基と天然ゴム中の非ゴム成分との反応によるポリマーゲルが存在するため、練り回数を増加させる必要があり、生産性が良好であるとは言えなかった。
また、未加硫ゴム組成物を可塑化させるために練り回数を増加させれば、天然ゴム分子の分子量低下が起こるとともに、加硫ゴム組成物の物性に悪影響を及ぼすことになり、また、充填剤としてシリカを適用することによりシリカの分散性の悪さから、更に工場作業性の悪化を招くことになり、本来天然ゴムの持つ性能を十分には使いきれてはいなかった。
したがって、従来より、未加硫ゴム組成物及び加硫ゴム組成物の物性低下を伴わずに工場作業性を向上させることが、特に天然ゴム含有ゴム製品の製造においては要望されていた。
【0005】
一方、最近ではこれらの問題を解決するため、いくつかの提案がなされている。例えば、シリコーンオイルで熱処理したシリカを使用することで工場作業性を改善できることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この方法では、シリカ配合組成物の剛性の低さが充分解決されていない。
また、天然ゴムを主体とするカーボンブラック/シリカ混合系組成物に特定のヒドラゾン化合物を配合することが提案されているが(例えば、特許文献2)、この方法では、工場作業性及び生産性の問題が残る。
【0006】
【特許文献1】
特開平2002−97311号公報(第1頁)
【特許文献2】
特開平2001−213112号公報(第1頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況下、本発明は、前記の課題を解決するためになされたものであり、シリカ充填剤配合ゴム組成物の物性の低下を伴うことなく加工性及び生産性を改良し、更に、天然ゴムの加硫戻り性を改良することによって、硬度低下を抑制し、低発熱性、耐摩耗性を向上させたタイヤ、特に重荷重用タイヤを提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、シリコーンオイルで熱処理したシリカと、特定のヒドラゾン化合物を配合したゴム組成物をタイヤ部材に適用することで、前記の目的を達成することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、天然ゴムおよびジエン系合成ゴムから選ばれた少なくとも一種からなるゴム成分(a)100質量部と、シリコーンオイルで熱処理されたシリカ(b)を3〜50質量部含み、かつ、ヒドラゾン化合物(c)を0.1〜5.0質量部配合されたゴム組成物をタイヤ部材として使用することを特徴とするタイヤを提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のタイヤに用いられるゴム組成物おいては、ゴム成分(a)としては天然ゴム及びジエン系ゴムのうちで、主に天然ゴムが用いられる。ジエン系ゴムとしてはイソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)などが挙げられ、これらは単独でもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
天然ゴムの量としては、ゴム成分(a)100質量部に対して20質量部以上含むことが必要であり、好ましくは50質量部以上、更に好ましくは70質量部以上である。天然ゴムの量が20質量部未満では発熱性が悪くなる。
【0010】
本発明のタイヤに用いられるゴム組成物においては、(b)成分としてシリコーンオイルで熱処理をしたシリカを配合することができる。このシリカ(b)は、窒素吸着比表面積(NSA)が180〜270m/gの範囲にあるものが好適である。このNSAが180m/g未満では耐摩耗性が不充分になるおそれがあり、一方、NSAが270m/gを超えると分散不良を引き起こし、低発熱性能、耐摩耗性及び工場作業性が著しく低下する原因となることがある。
なお、上記NSAは、300℃で1時間乾燥後、ASTM D4820−93に準拠して測定した値である。
このシリカとしては、例えば湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムなどが挙げられるが、これらの中で、特に湿式シリカが好適である。
また、本発明のタイヤに用いられるゴム組成物における(b)成分のシリカは、前記(a)成分のゴム成分100質量部に対し、3〜50質量部の範囲で配合されることが好ましい。この配合量が50質量部を超えると作業性の著しい悪化及び破壊特性の低下のおそれがある。さらに好ましいシリカの配合量は5〜25質量部の範囲である。3質量部未満では低発熱化の効果が小さいと共に、チッピング改良の効果が乏しい。
【0011】
前記シリコーンオイルで熱処理をしたシリカ(b)は、表面エネルギーを低下させ、シリカ粒子間の凝集を弱め、流動性を向上させることが出来る。これらの目的に使用されるシリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アルコキシ基含有メチルシリコーンオイル等が挙げられ、これらは無触媒あるいは硬化触媒と共にシリカ粉体に表面処理を施した後、必要に応じて加熱焼き付け処理が行なわれる。
【0012】
本発明のタイヤに用いられるゴム組成物においては、シリコーンオイルで熱処理したシリカ(b)を配合する場合には、シリカとゴム成分間の結合を強化し、低発熱性と耐摩耗性を維持向上させるために、更に、シランカップリング剤(f)を添加することが好ましい。
【0013】
この目的に使用されるシランカップリング剤としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ポリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ポリスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−ニトロプロピルトリメトキシシラン、3−ニトロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、2−クロロエチルトリメトキシシラン、2−クロロエチルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルポリスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルポリスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルポリスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールポリスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールポリスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)ポリスルフィド、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、3−ニトロプロピルジメトキシメチルシラン、3−クロロプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルポリスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾールポリスルフィド等が挙げられる。
【0014】
これらは、1種で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールポリスルフィドなどが好ましい。
上記シランカップリング剤(f)の配合量としては、シリコーンオイルで熱処理したシリカ(b)の配合量に対して、5〜20重量%が好ましく、5〜15重量%がより好ましい。
【0015】
本発明のタイヤに用いられるゴム組成物においては、前記シリコーンオイルで熱処理したシリカ(b)以外の充填剤として、通常の未処理シリカ、カーボンブラック、水酸化アルミニウム、アルミナ及びクレーのうち少なくとも一種を配合することが出来る。これらの中でもカーボンブラックが好ましい。
このうち(e)成分としてのカーボンブラックは、窒素吸着比表面積(NSA)が30〜160m/gであり、かつジブチルフタレート吸油量(DBP)が60〜150ml/100gの範囲のものが好適である。このNSAが30m/g未満では発熱性には優れるが、耐摩耗性など破壊特性が著しく低下し、また、NSAが160m/gを超えると作業性著しく低下する。耐摩耗性及び低発熱性能のバランスなどの面から、上記の範囲が好ましい。
また、DBPが60ml/100g未満では耐摩耗性が得られにくく、150ml/100gを超えると耐疲労性が低下してチッピングの発生等により、耐摩耗性が低下するおそれがある。
(e)成分のカーボンブラックはゴム成分(a)100質量部に対して20〜80質量部の範囲で使用されることが好ましい。この使用量が20質量部未満では耐摩耗性が充分に発揮されないおそれがあり、80質量部を超えると低発熱性能が低下したり、分散不良をもたらし、耐摩耗性などが悪化する原因となる。耐摩耗性、低発熱性能及び分散性などを考慮すると、このカーボンブラックの配合量は30〜70質量部の範囲がより好ましい。
なお、NSAはASTM D3037−88に準拠して測定した値であり、DBPは、JIS K6221−1982(A法)に準拠して測定した値である。
上記カーボンブラックとしては特に制限はなく、従来ゴムの補強用充填材として慣用されているものの中から任意のものを適宜選択して用いることができる。上記好適なボンブラックの例としては、耐摩耗性に優れるHAF,ISAF及びSAFが好適である。
【0016】
さらに、本発明のタイヤに用いられるゴム組成物において(c)成分として用いられるヒドラゾン化合物としては、例えば一般式 (I)、(II) で表されるナフトエ酸ヒドラジド類、サリチル酸ヒドラジド類が性能の点から好ましい。
【0017】
【化1】
Figure 2004123926
【0018】
(式中R、Rは水素原子または炭素数1〜18のヒドロカルビル基を示し、それらは互いに同一でも異なっていても良く、またRとRとはたがいに結合して環構造を形成しても良い。ここで炭素数1〜18のヒドロカルビル基としては、炭素数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数2〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜18のアリール基および炭素数7〜18のアラルキル基を挙げることができる。上記シクロアルキル基、アリール基およびアラルキル基の環上には、低級アルキル基や低級アルコキシル基、アミノ基、アルキル置換アミノ基、ヒドロキシル基などの適当な置換基を有していてもよい。)
【0019】
前記一般式(I)及び(II)で表されるヒドラジド化合物(c)は、具体的には2−ヒドロキシ−N’−(1−メチルエチリデン)−3−ナフトエ酸ヒドラジド,2−ヒドロキシ−N’−(1−メチルプロピリデン)−3−ナフトエ酸ヒドラジド,2−ヒドロキシ−N’−(1−メチルブチリデン)−3−ナフトエ酸ヒドラジド,2−ヒドロキシ−N’−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−ナフトエ酸ヒドラジド,2−ヒドロキシ−N’−(2,6−ジメチル−4−ヘプチリデン)−3−ナフトエ酸ヒドラジド,N’−(1−メチルエチリデン)−サリチル酸ヒドラジド,N’−(1−メチルプロピリデン)−サリチル酸ヒドラジド,N’−(1−メチルブチリデン)−サリチル酸ヒドラジド,N’−(1,3−ジメチルブチリデン)−サリチル酸ヒドラジド,N’−(2,6−ジメチル−4−ヘプチリデン)−サリチル酸ヒドラジドである。
その中で、2−ヒドロキシ−N’−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−ナフトエ酸ヒドラジド(BMH)が特に好ましい。
【0020】
この(c)成分のヒドラゾン化合物は、天然ゴムの加硫戻りによる過加硫に起因する弾性率の低下を抑え、低発熱性能及び耐摩耗性の低下を抑制する作用を有している。
上記(c)成分のヒドラゾン化合物は一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その配合量は、前記(a)成分であるゴム成分100質量部に対し、0.1〜5質量部の範囲で選定されることが好ましい。この量が0.1質量部未満では弾性率低下の抑制効果が充分に発揮されないおそれがあり、
低発熱化の効果に乏しい。
一方、5質量部を超えるとその量の割には効果の向上がみられず、作業性に悪影響をおよぼす。効果及び経済性などを考慮すると、この(c)成分の好ましい配合量は、0.2〜1.5質量部の範囲である。
また、トレッドゴムとしての耐摩耗性、耐チッピング性及び低発熱性すべてを満足させるためには、シリコンオイルで熱処理したシリカ(b)を、ゴム成分(a)100質量部に対して6〜25質量部、ヒドラゾン化合物(c)「2−ヒドロキシ−N’−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−ナフトエ酸ヒドラジド」(BMH)をゴム成分(a)100質量部に対して0.2〜1.5質量部配合することが好ましい。
【0021】
また、本発明のタイヤに用いられるゴム組成物においては、(d)成分として無水マレイン酸と(ポリ)オキシプロピレン誘導体との部分エステルが使用される。
このエステルは、下記一般式(III)で表わされるものが好ましい。
【0022】
【化2】
Figure 2004123926
【0023】
〔式(I)中、mは平均重合度を表わす1以上の数であり、Rはアルキル基、アルケニル基、アルキルアリール基又はアシル基である。〕
前記一般式(I)において、より好ましくは、mが3〜7,Rが炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基である。
【0024】
前記の部分エステル(d)は、(i)無水マレイン酸と、(ii)(ポリ)オキシプロピレン誘導体とを反応させることで得られる。
(ポリ)オキシプロピレン誘導体としては、ポリオキシプロピレンラウリルエ−テル、ポリオキシプロピレンミリスチルエーテル、ポリオキプロピレンデシルエーテル、ポリオキシプロピレンオクチルエーテル、ポリオキシプロピレン−2−エチルヘキシルエーテル、ポリオキシプロピレンステアリルエーテル、ポリオキシプロピレンオレイルエーテルなどのポリオキシプロピレン脂肪族エーテル;ポリオキシプロピレンベンジルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンベンジル化フェニルエーテルなどのポリオキシプロピレン芳香族エーテルなどが挙げられるが、ポリオキシプロピレン脂肪族エーテルが好ましく、その中でも特にポリオキシプロピレンラウリルエ−テルが好ましい。
【0025】
さらに、ポリプロピレンの重合度が3〜7、アルキル基またはアルケニル基の炭素数が8〜18であることが好ましい。具体的には、ポリオキシプロピレンをPOP(r)と略し、rを各々平均重合度とすれば、POP(3)オクチルエーテル、POP(4)2−エチルヘキシルエーテル、POP(3)デシルエーテル、POP(5)デシルエーテル、POP(3)ラウリルエーテル、POP(5)ラウリルエーテル、POP(8)ラウリルエーテル、POP(1)ステアリルエーテル、POP(5)ミリスチルエーテルなどが挙げられる。
上記(ii)(ポリ)オキシアルキレン誘導体は、単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0026】
また、本発明のタイヤに用いられるゴム組成物における(d)成分の配合量は、ゴム成分(a)100質量部に対し、0.1〜5質量部であることが好ましい。0. 1質量部以上であれば加工性が向上し、5質量部以下であればゴム物性は保持され、かつコストの面からも望ましい。これらの成分は、例えば混練時に配合すればよい。
また、本発明のタイヤに用いられるゴム組成物において使用されるゴム成分(a)が、天然ゴム単独、天然ゴムと合成ゴムのブレンドゴムの系において加工性の改良効果が顕著である。ゴム成分(a)が天然ゴムを含む場合には、天然ゴム分子の分子量を低下させずに天然ゴムのポリマーゲル量を低減することができ、かつゴム分子間でのすべりを増加させることにより成形作業性を向上させると共に、未加硫又は加硫ゴムの物性低下が抑制される、さらに、シリカ充填剤の分散を著しく改善することができる。
いずれにしても、加硫ゴム組成物の物性に悪影響を与えることなく、優れたゴム加工性を得ることができる。
【0027】
また、本発明のタイヤに用いられるゴム組成物には、必要に応じて他のゴム配合剤、例えば硫黄、加硫促進剤、プロセスオイル、老化防止剤などを適宜配合できる。
本発明のタイヤに用いられるゴム組成物は、ロール、インターナルミキサー等の混練り機を用いて混練りすることによって得られ、タイヤトレッド部(キャップトレッドおよび/またはアンダートレッド),カーカス,サイドウォール,ビード部分等のタイヤ用部材として用いることができるが、特に耐摩耗性と低発熱性を高度にバランスさせた重荷重用タイヤのトレッド部(キャップトレッドおよび/またはアンダートレッド)のゴム組成物として好適に使用される。
本発明のタイヤは、ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて、上記のように各種薬品を含有させたゴム組成物が、未加硫の段階で各タイヤ用部材に押出し加工され、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り付け成形され、生タイヤが成形される。この生タイヤを加硫機中で加熱加圧して、タイヤが得られる。
このようにして得られた本発明のタイヤは、発熱性に優れ、かつ耐摩耗性、耐チッピング性を維持改良し、同時に工場作業性を著しく改善することができる。
また、本発明のタイヤは、その内部に空気や窒素などの気体を充填して用いることができる。
【0028】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
各種の測定は以下の方法により行なった。
[ムーニー粘度(ML1+4)]
ゴム組成物の加工性の評価として、SHIMADZU社製 MOONY VISCOMETER SMV201を用いて、加硫系配合剤を添加して混練した未加硫ゴム試料を、130℃で1分間予熱をした後、ロータの回転をスタートさせ4分後の値をML1+4として測定した。値が小さいほど、加工性がよいことを示す。
[硬度]
JIS K 6301に準拠してスプリングかたさ試験(A型)にて硬度を測定した。数値の大きい方が硬度が高いことを示す。
[発熱性の評価]
一定速度でのステップロード条件のドラムテストを実施してタイヤ内部の一定深さ位置の温度を測定し、コントロール(比較例1)の値を100として、指数で評価した。指数の値が大きい程、低発熱化の効果が大きいことを示す。
【0029】
[耐摩耗性の評価]
2000時間走行後のタイヤにおけるトレッドゴムの耐摩耗指数Aを、下記式
A=M/(D−D
により算出し、コントロール(比較例1)の値を100として指数表示した。
指数の値が大きい程、耐摩耗性の改良が大きいことをしめす。
(ここで、Aは耐摩耗指数、Mは2000時間走行後の走行距離km、Dは走行前の溝深さmm、Dは走行後の溝深さmmである。)
[耐チッピング性の評価]
耐チッピング性は、2000時間走行後のタイヤにおけるトレッドゴム表面30cm×30cmあたりのゴムの欠落していない面積率を求め、コントロール(比較例1)の値を100とし、指数で示した。指数が大きい程、耐チッピング性が改良されたことをしめす。
それぞれの評価結果を第1表に示す。
【0030】
【表1】
Figure 2004123926
【0031】
*1.SBR:ジェイ・エス・アール(株)製、乳化重合SBR、商標「JSR#1500」
*2.熱処理シリカ:シリコーンオイルで熱処理シリカ
*3.エステル化合物:モノ[POP(5)ラウリルエーテル]マレイン酸エステル
*4.老化防止剤6C:N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン
*5.ワックス:精工化学(株)製、商標「WMO2」
*6.加硫促進剤CZ:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド
*7.カップリング剤:デグッサ社製、商標「Si69」
*8.ヒドラジド化合物:2−ヒドロキシ−N’−(1,3−ジメチルブチ
デン)−3−ナフトエ酸ヒドラジド(BMH)
注)第1表中のエステル化合物、老化防止剤6C、ステアリン酸、ワックス、亜鉛華、加硫促進剤 CZ、硫黄、カップリング剤、ヒドラジド化合物それぞれの欄に記載されている数値は、ゴム成分(a)100質量部に対する質量部の値。
【0032】
実施例1〜4及び比較例1〜4
第1表に示す配合表に基づいて各組成物をバンバリーミキサーを用いて混練りした。得られた未加硫ゴム組成物についてはムーニー粘度を測定した。
また、これらの未加硫ゴム組成物をトレッド部材として適用し、タイヤサイズ3700R57のタイヤを作成し、発熱性能、耐摩耗性及びチッピング性について前記の方法により評価した。
【0033】
上記の結果から、本発明におけるゴム組成物は、いずれも未加硫ゴムにおける加工性に著しく優れており、しかも、硬度の低下を抑制し、タイヤの発熱性、耐摩耗性および耐チッピング性が改良されていることがわかる。
【0034】
【発明の効果】
本発明のタイヤは、特に悪路用大型タイヤに好適であり、発熱性に優れ、かつ耐摩耗性、耐チッピング性及びトレッドゴムの剛性が維持改善され、同時に工場作業性を著しく改善することが可能なタイヤを提供することができる。

Claims (9)

  1. 天然ゴムおよびジエン系合成ゴムから選ばれた少なくとも一種からなるゴム成分(a)100質量部と、シリコーンオイルで熱処理されたシリカ(b)を3〜50質量部含み、かつ、ヒドラゾン化合物(c)を0.1〜5.0質量部配合されたゴム組成物をタイヤ部材として使用することを特徴とするタイヤ。
  2. シリコーンオイルで熱処理されたシリカ(b)の窒素吸着比表面積(NSA)が、180〜270m/gである請求項1記載のタイヤ。
  3. ヒドラゾン化合物(c)が、2−ヒドロキシ−N’ −(1,3−ジメチルブチリデン)−3−ナフトエ酸ヒドラジドである請求項1又は2記載のタイヤ。
  4. ゴム成分(a)100質量部に対して無水マレイン酸と(ポリ)オキシプロピレン誘導体との部分エステル(d)を、0.1〜5.0質量部含む請求項1,2又は3記載のタイヤ。
  5. ゴム成分(a)中に天然ゴムを20質量%以上含む請求項1ないし4のいずれかに記載のタイヤ。
  6. 前記ゴム組成物が、窒素吸着比表面積(NSA)が30〜160m/gであり、かつジブチルフタレート吸油量(DBP)が60〜150ml/100gであるカーボンブラック(e)を、ゴム成分(a)100質量部に対して20〜80質量部含む請求項1ないし5のいずれかに記載のタイヤ。
  7. 前記ゴム組成物が、シランカップリング剤(f)を、シリコーンオイルで熱処理されたシリカ(b)の配合量に対して5〜20質量%含む請求項1ないし6いずれかに記載のタイヤ。
  8. 請求項1ないし7のいずれかに記載のタイヤが重荷重用タイヤであるタイヤ。
  9. 前記重荷重用タイヤがオフロードタイヤである請求項8記載のタイヤ。
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