JP2004123737A - 新規抗体及びその利用法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 疾患と密接に関連する、チロシンリン酸化CagAタンパク質を認識する抗体を提供すると共に、さらにその抗体を用いた、胃潰瘍、胃癌等の疾患と密接に関連したH.ピロリ菌の感染を検出する方法、H.ピロリ菌の感染検出剤、疾患の発症または発症危険性判定方法、治療方法、及びワクチンを提案する。
【解決手段】 ヘリコバクター・ピロリ菌が感染している宿主細胞に見出される、チロシンリン酸化されているCagAタンパク質を特異的に認識する抗体を作製した。この抗体を用いることにより、チロシンリン酸化されたCagAタンパク質を高精度で検出することができるため、種々の疾患と密接に関連するH.ピロリ菌の感染を検出可能である。
【選択図】 なし

Description

 本発明は、ヘリコバクター・ピロリ菌(Helicobacter pylori)由来のチロシンリン酸化CagAタンパク質を認識する抗体、及びその利用法に関するものである。
 ヘリコバクター・ピロリ菌(以下、H.ピロリ菌と称する)は、ヒトの胃内から分離されたグラム陰性桿菌であり、ヒト等の動物の胃上皮細胞に接着し、感染することが知られている。そして、H.ピロリ菌の感染は、慢性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の主な原因と考えられており、さらに、胃癌との関連性も指摘されている。
 このようなH.ピロリ菌は、病原性関連因子として、ウレアーゼ、空胞化サイトトキシンVacA(vaculoating cytotoxin)タンパク質、空胞化サイトトキシン関連遺伝子CagA(cytotoxin-associated gene A)タンパク質等を産生することが知られており、これらの病原性因子が、H.ピロリ菌の感染により引き起こされる種々の疾患の原因の一つと考えられている(例えば、非特許文献1及び非特許文献2参照。)。
 このように、H.ピロリ菌の感染が種々の疾患の原因となるため、上記疾患の早期発見、早期治療を行うために、H.ピロリ菌の感染を検出、診断する方法がいくつか考えられている。例えば、上記病原性関連因子の一つであるウレアーゼを標的としたウレアーゼ試験がある。具体的には、内視鏡的に採取した生検組織を用いて、ウレアーゼ活性を指標としてH.ピロリ菌が感染しているか否かを診断する方法である。その他には、血中、尿中のH.ピロリ菌に対するIgG抗体を測定する方法等も利用されている(例えば、非特許文献3参照。)。
 上記方法によって、H.ピロリ菌が感染しているか否かを簡便に診断することができる。
ライナー・ハス(Rainer Haas)、ブレンダン・バーンズ(Brendan P. Burns)、朝日百百代共著、「Pathogenesis of Helicobacter pylori」、Current Opinion in Gastroenterology、リピンコット・ウイリアムズ アンド ウィルキンス(Lippincott Williams & Wilkins, Inc.)、2001年、第17巻、第1号(suppl 1)、S1-S5 朝日百百代、外11名共著、「Helicobacter pylori CagA Protein Can Be Tyrosine Phosphorylated in Gastric Epithelial Cells」、Journal of Experimental Medicine、ロックフェラー大学出版(Rockefeller University Press)、2000年2月21日、第191巻、第4号、p.593-602 坂本長逸著、「H.pylori感染胃・十二指腸粘膜における組織学的変化とその除菌後におよぼす影響」、Journal of Nippon medicine School、日本医科大学、2002年、第69巻、第1号、p.67-70
 しかし、H.ピロリ菌の感染者の全てに上記疾患が発生するわけではない。例えば、胃・十二指腸潰瘍等の消化性潰瘍は、H.ピロリ菌感染者のほんの一部、約2〜3%、さらに胃癌は1〜2%にしか発生しないことが知られている。
 このため、上述した従来の方法による診断では、網羅的にH.ピロリ菌の感染を調べることはできるが、慢性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、さらに、胃癌といった疾患と密接に関連するH.ピロリ菌の感染を効率的に精度よく調べることはできない。即ち、慢性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、さらに、胃癌等の疾患を効率的に、早期に検出、診断、治療することはできないという問題がある。
 本発明は、上記の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、疾患と密接に関連する、チロシンリン酸化CagAタンパク質を認識する抗体を提供するとともに、さらにその抗体を用いた、胃潰瘍、胃癌等の疾患と密接に関連したH.ピロリ菌の感染を検出する方法、H.ピロリ菌の感染検出剤、疾患の発症または発症危険性の判定方法、治療方法、及びワクチンを提供することにある。
 本発明者は、上記の課題に鑑み鋭意検討した結果、H.ピロリ菌に感染した宿主細胞に見出される、チロシンリン酸化されたCagAタンパク質を特異的に認識する抗体を作製し、ヒトの萎縮性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、MALTリンパ腫、胃癌等の患者から得られた生検標本に該抗体を作用させることにより、これらの疾患部位からチロシンリン酸化されたCagAタンパク質を検出できることを独自に見出し、本発明を完成させるに至った。
 即ち、本発明に係る抗体は、(a)ヘリコバクター・ピロリ菌が感染している宿主細胞に見出される、チロシンリン酸化されているCagAタンパク質を特異的に認識する抗体である。
 上記抗体は、本発明者が今回新たに、ヘリコバクター・ピロリ菌が感染している宿主細胞に特異的に見出される、チロシンリン酸化されているCagAタンパク質を認識する抗体として生産したものである。
 なお、本発明で「抗体」とは、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体を含むものである。
 また、本発明に係る抗体は、(b)配列番号1に示すアミノ酸配列のうち、1番目のシステイン残基を除く2〜16番目のアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、10番目のチロシン残基がリン酸化されているポリペプチドを含むリン酸化CagAタンパク質を特異的に認識する抗体である。
 上記「ポリペプチド」とは、後述するように、H.ピロリ菌由来のCagAタンパク質の抗原決定基(エピトープ)領域であり、その10番目のチロシン残基がリン酸化されているものである。配列番号1中、1番目のシステイン残基は抗体作製時にキャリアタンパク質との結合のため付加されたものであり、CagAタンパク質の配列には存在しない。
 即ち、本発明に係る抗体は、10番目のチロシン残基がリン酸化されている場合のみ、上記ポリペプチドを含むリン酸化CagAタンパク質を特異的に認識する。実際、本発明者が作製した抗体は、胃潰瘍患者等から採取した胃上皮組織において、リン酸化CagAタンパク質を特異的に認識することが示された(後述の実施例参照)。
 また、本発明に係るヘリコバクター・ピロリ菌の宿主細胞への感染検出剤は、上記(a)または(b)の抗体を含有するものであり、本発明に係るヘリコバクター・ピロリ菌の宿主細胞への感染を検出する方法は、上記(a)または(b)の抗体を用いて行うものである。上述したように、上記(a)または(b)の抗体は、高精度でチロシンリン酸化されたCagAタンパク質を認識することができる。このため、本発明に係るヘリコバクター・ピロリ菌の感染検出剤、感染検出方法を用いることにより、高精度で、効率よく疾患と密接に関連するH.ピロリ菌の宿主細胞への感染を検出することができる。
 また、本発明に係る疾患の発症または発症危険性判定方法は、上記(a)または(b)の抗体を用いて、萎縮性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、MALTリンパ腫、および胃癌のうち、いずれかの疾患の発症または発症危険性を判定する方法である。この判定方法を用いることにより、容易に、上記疾患の発症または発症危険性を判定することができ、上記疾患の早期診断、早期治療または予防を行うことができる。
 また、本発明に係る疾患の治療方法は、上記抗体を用いて、萎縮性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、MALTリンパ腫、および胃癌のうち、いずれかの疾患を治療する方法である。
 また、本発明に係るワクチンは、配列番号4に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、10番目のチロシン残基がリン酸化されているポリペプチドを含有するワクチンである。
 本発明のワクチンを用いることにより、H.ピロリ菌の感染、または萎縮性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、MALTリンパ腫、および胃癌のうち、いずれかの疾患を治療、または予防することができる。
 上述したように、本発明に係る抗体は、H.ピロリ菌が感染している宿主細胞に見出される、チロシンリン酸化されたCagAタンパク質を精度良く認識することができる。このため、本発明に係る抗体は、高精度で種々の疾患と密接に関連しているH.ピロリ菌の感染を、高精度、かつ効率的に検出できるという効果を奏する。
 また、本発明に係るH.ピロリ菌の感染検出剤、H.ピロリ菌の感染検出方法を用いることにより、高精度、かつ効率的に種々の疾患と密接に関連しているH.ピロリ菌の感染を検出することができるという効果を奏する。
 さらに、本発明に係る疾患の発症または発症危険性判定方法を用いることにより、萎縮性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、MALTリンパ腫、胃癌等の疾患の発症または発症危険性を高精度、かつ効率的に判断することができ、上記疾患の予防、早期診断、早期治療に利用することができるという効果を奏する。
 また、本発明に係る疾患の治療方法を用いることにより、萎縮性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、MALTリンパ腫、胃癌等の疾患の発症または発症危険性を高精度、かつ効率的に治療することができるという効果を奏する。
 また、本発明に係るワクチンを用いることにより、効果的にH.ピロリ菌の感染を治療することができ、ひいては、H.ピロリ菌の感染により引き起こされる種々の疾患を予防、治療することができるという効果を奏する。
 本発明の実施の一形態について説明すれば、以下の通りである。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
 本発明は、萎縮性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、MALTリンパ腫、胃癌等の疾患と密接に関連するチロシンリン酸化されたCagAタンパク質を特異的に認識する新規な抗体を提供するとともに、その利用方法を提案するものである。
 CagAタンパク質が、ヒトの胃上皮細胞内に注入され、チロシンリン酸化されると、胃上皮細胞内のシグナル伝達を阻害することが知られている。このことが胃上皮細胞に与える影響についての詳細は、未だ明らかとなっていない。しかし、CagAタンパク質等の病原性関連因子は、胃上皮細胞に様々な影響を与えることが予想される。例えば、これら病原性関連因子の刺激により、胃上皮細胞からIL−8(interleukin-8)をはじめとした種々のサイトカインが分泌され、好中球やその他の炎症細胞が粘膜固有層に遊走する。そして胃上皮細胞が障害を受け、さらに炎症細胞が遊走し、免疫反応が賦活されると考えられる。
 そのため、本発明者は、CagAタンパク質のチロシンリン酸化は、H.ピロリ菌の感染が引き起こす種々の疾患(例えば、慢性胃炎、萎縮性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、MALTリンパ腫、胃癌等)に特異的な現象であって、これら疾患の発症機構の1つではないかと注目した。
 そこで、本発明者は、種々の疾患における、チロシンリン酸化されたCagAタンパク質の作用に注目し、H.ピロリ菌が感染している宿主細胞に特異的に見出される、チロシンリン酸化されているCagAタンパク質を認識する抗体を生産し、該抗体を利用して、疾患と密接に関連するH.ピロリ菌の感染を高精度で、効率よく検出する手段を独自に開発した。
 即ち、後述する実施例に示すように、本発明に係る抗体を用いることにより、萎縮性胃炎(腸上皮化性が見られる)の生検標本において、チロシンリン酸化されたCagAタンパク質が検出されることが実験的に示された。この萎縮性胃炎、腸上皮化性は、胃癌や胃潰瘍の発生母地(前癌状態)と一般的に考えられている。このため、チロシンリン酸化されたCagAタンパク質は、萎縮性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、MALTリンパ腫、胃癌等の疾患と密接に関連していることがin vivoにて初めて示唆された。即ち、チロシンリン酸化されたCagAタンパク質が検出されることは、萎縮性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、MALTリンパ腫、及び胃癌等が発症している、あるいは発症する危険性が高いことを示すと考えられる。
 従って、この手段、即ち、チロシンリン酸化されたCagAタンパク質を検出する手段は、慢性胃炎、萎縮性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、MALTリンパ腫、胃癌等のH.ピロリ菌の感染によって引き起こされる種々の疾患の予防、早期発見、早期治療を行うための重要な手段となる可能性が高い。
 そこで以下に、まず本発明に係る抗体の特徴について説明し、次いで上記抗体の生産方法、機能、及び利用方法について説明することとする。
 (1)本発明に係る抗体の特徴
 本発明者は、以前、胃の上皮細胞に感染したH.ピロリ菌によって、CagAタンパク質が宿主細胞(例えば、ヒトの胃上皮細胞)の細胞質内に注入された後、宿主細胞内のタンパク質チロシンキナーゼ(PTKs)によって、リン酸化されることを明らかにした(上記非特許文献2:Asahi. M., et al. J. Exp. Med. 191, No.4: 2000 593-602)。そして、この現象に着目し、この現象を利用して効率的に、上記疾患と密接に関連するH.ピロリ菌の感染を検出する方法等を開発しようと鋭意努力を重ねた。
 その結果、本発明者は、効率的に、上記疾患と密接に関連するH.ピロリ菌の宿主細胞への感染を検出することを目的とし、H.ピロリ菌が感染している宿主細胞に見出される、チロシンリン酸化されているCagAタンパク質を特異的に認識する抗体を生産することに成功し、本発明を完成するに至った。なお、本発明でいう「チロシンリン酸化されたCagAタンパク質」とは、CagAタンパク質のチロシン残基にリン酸基が結合しているものをいう。H.ピロリ菌由来のCagAタンパク質には、その893番目と912番目と965番目と999番目と1033番目とにチロシン残基が存在するが、これら5つのチロシン残基の少なくとも一つのチロシン残基がリン酸化されていればよい。即ち、本発明に係る抗体は、上記5つのチロシン残基のリン酸化を認識するものである。なお、上記5つのチロシン残基のうち、965番目、999番目および1033番目に存在するチロシン残基はいずれも、ITAM(immunoreceptor tyrosine-based activation motif)とよばれるモチーフと非常に類似する領域(ITAM様モチーフ)に存在する。そのため、上記965番目、999番目および1033番目のチロシン残基のリン酸化を特異的に認識する抗体であることがより好ましい。
 また、上記「宿主細胞」とは、例えば、H.ピロリ菌が感染することができる細胞であればよく、その細胞の由来生物種、器官、組織等は特に限定されるものではない。上記宿主細胞として、例えば、ヒトの胃上皮細胞や十二指腸上皮細胞等が挙げられる。
 また、本発明に係る抗体は、チロシンリン酸化されたCagAタンパク質の抗原決定基(エピトープ)領域である、配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、10のチロシン残基がリン酸化されているポリペプチドを特異的に認識するものであればよい。なお、上記「ポリペプチド」とは、チロシンリン酸化されたCagAタンパク質のエピトープ領域(H.ピロリ菌由来のCagAタンパク質の957番目〜971番目のアミノ酸残基、991番目〜1005番目のアミノ酸残基、1025番目〜1039番目のアミノ酸残基)に相当し、さらに、配列番号1に示すアミノ酸配列のうち、10番目のチロシン残基がリン酸化されているものをいう。
 本実施の形態では、本発明に係る抗体の一例として、本発明者がH.ピロリ菌由来のチロシンリン酸化されたCagAタンパク質のエピトープ領域(H.ピロリ菌由来のCagAタンパク質の957番目〜971番目のアミノ酸残基、991番目〜1005番目のアミノ酸残基、1025番目〜1039番目のアミノ酸残基)に相当し、さらに、配列番号1に示すアミノ酸配列のうち、10番目のチロシン残基がリン酸化されているポリペプチドを抗原として生産したポリクローナル抗体を例に挙げて説明する。
 なお、上記本実施の形態に係る抗体は、後述する実施例に示すように、配列番号3に示すアミノ酸配列からなり、8番目のチロシン残基がリン酸化されているポリペプチドとアフィニティ結合するポリクローナル抗体として精製されたものである。このため、配列番号4に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、4番目のチロシン残基がリン酸化されているポリペプチドを特異的に認識することができる。
 さらに、例えば、後述する実施例のアフィニティ精製において、配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、10番目のチロシン残基がリン酸化されているポリペプチドとアフィニティ結合するポリクローナル抗体を精製することで、CagAタンパク質の965番目、999番目および1033番目のチロシン残基のリン酸化を特異的に認識する抗体を取得することもできる。
 また、本発明に係る抗体は、ポリクローナル抗体のみでなく、モノクローナル抗体も含むものである。ポリクローナル抗体、及びモノクローナル抗体は、免疫グロブリンクラス(immunoglobulin class)が、IgGのモノクローナル抗体であることが好ましいが、それ以外の免疫グロブリンクラス、例えば、IgMやIgA等であってもよく、特に限られるものではない。
 (2)本発明に係る抗体の生産方法
 (2−1)ポリクローナル抗体の生産方法
 本発明に係るポリクローナル抗体を生産する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、抗原タンパク質で動物を免疫した後、その動物から血清を採取し、ポリクローナル抗体を得ればよい。なお、「生産」とは、この抗体の生合成に加えて各種人為的な作用を含む、本発明に係る抗体(ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体を含む)を得るための全体的な流れを指すものとする。
 本実施の形態に係るポリクローナル抗体は、後述する実施例に示すように、10番目のチロシン残基をリン酸化した配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドを抗原として、ウサギを免疫した後、そのウサギの血液から血清を得て、さらに、この血清からIgGを精製して取得された。
 なお、本実施形態では、免疫させる動物としてウサギを用いたが、マウス、ラット等のその他の実験動物を用いてもよく、特に限定されるものではない。
 さらに、本発明に係るポリクローナル抗体は、例えば、チロシンリン酸化されたCagAタンパク質、その抗原決定基(エピトープ)を含むフラグメントまたはその誘導体、あるいはそれらのアナログ、またはそれらの変異体、もしくはそれらを発現する細胞を免疫源(抗原)として用いることにより産生することができる。
 即ち、本発明に係るポリクローナル抗体は、例えば、チロシンリン酸化されたCagAタンパク質、その抗原決定基(エピトープ)を含むフラグメントまたはその誘導体、あるいはそれらのアナログ、またはそれらの変異体、もしくはそれらを発現する細胞を認識することができる。
 なお、ここにいう「変異体」は、部位特異的突然変異誘発法等の公知の変異タンパク質作製法により置換、欠失、挿入、及び/または付加できる程度の数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/または付加されたものをいう。
 また、上記抗原としては、ポリペプチドであれば特に限定されるものではないが、抗原決定基とする物質をキャリアタンパク質に結合してなる抗原タンパク質が用いられてもよい。
 具体的には、上記抗原がハプテンであれば、抗体の産生等を誘導する能力をもたないため、抗体を産生することができないが、抗原を異種由来のタンパク質などの生体高分子からなる担体と共有結合させて抗原タンパク質を得て、これで免疫すれば、抗体産生を誘導することができる。上記担体としては、特に限定されるものではなく、オボアルブミン、γグロブリン、ヘモシアニン等、この分野で従来公知の各種タンパク質を好適に用いることができる。
 なお、ここでいう「ポリペプチド」とは、アミノ酸が数個結合した短いペプチド、及び組換えタンパク質を含むものである。また、ポリペプチドは、天然に存在するもの、化学的、生物学的方法にて合成されたものを含む。
 また、本発明に係るポリクローナル抗体の生産においては、抗血清によって得られたポリクローナル抗体を、従来公知の方法で精製したり、修飾したりする工程が含まれていてもよい。
 (2−2)モノクローナル抗体の生産方法
 本発明に係るモノクローナル抗体を生産する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、抗原でマウスを免疫した後、そのマウス脾臓リンパ球とマウス由来のミエローマ細胞とを融合させてなる抗体産生ハイブリドーマにより、モノクローナル抗体を得ればよい。なお、本実施の形態における「産生」とは、ハイブリドーマによる抗体の生合成を指すものとする。
 ハイブリドーマの生産方法は、従来公知の方法、例えば、ハイブリドーマ法(Kohler, G. and Milstein, C., Nature 256, 495-497(1975))、トリオーマ法、ヒトB−細胞ハイブリドーマ法(Kozbor, Immunology Today 4, 72(1983))、及びEBV−ハイブリドーマ法(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R Liss, Inc., 77-96(1985))等を利用することが可能であり、特に限定されるものではない。
 例えば、本発明に係るモノクローナル抗体は、10番目のチロシン残基をリン酸化した配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドを抗原として、ハイブリドーマを作製して取得することができる。
 なお、免疫させる動物としては、マウスの他にも、ラット、ウサギ等のその他の実験動物を用いてもよく、特に限定されるものではない。また、モノクローナル抗体は遺伝子組換え技術等によっても生産できる。
 このようにして得られたハイブリドーマクローンは、本発明に係るモノクローナル抗体を大量に産生することができるものである。
 さらに、本発明に係るモノクローナル抗体は、上記ポリクローナル抗体と同様に、抗原として種々の物質を用いて生産することができる。例えば、チロシンリン酸化されたCagAタンパク質、その抗原決定基(エピトープ)を含むフラグメントまたはその誘導体等を、免疫源(抗原)として用いることにより産生することができる。
 従って、本発明に係るモノクローナル抗体は、例えば、チロシンリン酸化されたCagAタンパク質、その抗原決定基(エピトープ)を含むフラグメントまたはその誘導体、あるいはそれらのアナログ、またはそれらの変異体、もしくはそれらを発現する細胞を認識することができる。
 また、上記抗原としては、上記ポリクローナル抗体と同様に、ポリペプチド、ハプテン等を利用することができる。
 また、本発明に係るモノクローナル抗体の生産においては、ハイブリドーマによって産生されたモノクローナル抗体を、従来公知の方法で精製したり、修飾したりする工程が含まれていてもよい。
 (3)本発明に係る抗体の機能
 後述する実施例に示すように、本発明に係る抗体を用いて、H.ピロリ菌の感染により引き起こされた胃潰瘍、胃癌のそれぞれの患者から取り出した胃の生検組織の免疫染色を行った結果、萎縮性胃炎を裏付ける腸上皮化性細胞において、チロシンリン酸化されたCagAタンパク質を精度よく検出することができた。
 従って、本発明に係る抗体は、チロシンリン酸化されているCagAタンパク質を精度良く認識できることが実験的に示された。さらに、上述したように、CagAタンパク質のチロシンリン酸化は、H.ピロリ菌の感染によって引き起こされる種々の疾患と密接に関連していると考えられる。
 このため、本発明に係る抗体は、胃や十二指腸における種々の疾患と密接に関連しているH.ピロリ菌の宿主細胞への感染を、精度よく、効率的に検出することができる。即ち、本発明に係る抗体は、H.ピロリ菌の感染によって引き起こされる種々の疾患の発症、または発症危険性(可能性)を判断する際の指標に利用(換言すれば、疾患の診断方法に利用)することができる。
 (4)本発明に係る抗体の利用法
 上述したように、本発明に係る抗体は、チロシンリン酸化されたCagAタンパク質を特異的に認識する新規な抗体である。また、本発明者は、H.ピロリ菌が感染したヒトの胃上皮細胞において、チロシン残基がリン酸化されたCagAタンパク質が見出されることを明らかにしており、CagAタンパク質のチロシンリン酸化は、H.ピロリ菌の感染によって引き起こされる種々の疾患と密接に関連していると考えられる。そのため、本発明の抗体は、以下に示すように利用することができる。
 (4−1)本発明に係るH.ピロリ菌の感染検出剤
 本発明に係る抗体は、H.ピロリ菌の宿主細胞への感染を検出するためのH.ピロリ菌の感染検出剤として用いることができる。即ち、本発明に係るH.ピロリ菌の感染検出剤の具体的な組成は、上記抗体を含んでいればよく、特に限定されるものではない。具体的には、使用(検査)対象の生物個体、器官、組織、細胞塊、糞便、あるいは細胞等の種類に応じて、H.ピロリ菌の感染を検出するために、本発明に係る抗体の機能が発揮できるような緩衝液等が含まれていればよい。
 即ち、本発明に係るH.ピロリ菌の感染検出剤中に含まれる上記抗体は、特異的な抗原抗体反応によって、チロシンリン酸化されたCagAタンパク質を認識、検出する。このため、上記抗体を、顕微鏡等による目視で、または機械的に識別できる手段を用いて標識する等の処理を施すと、抗体が結合したチロシンリン酸化されたCagAタンパク質も高精度で標識される。その結果、種々の疾患と密接に関連したH.ピロリ菌の感染を高精度で、効率よく検出可能となる。
 従って、チロシンリン酸化されたCagAタンパク質を指標に、H.ピロリ菌の感染によって引き起こされる種々の疾患についての診断を行う際に、容易に疾患と密接に関連するH.ピロリ菌の感染を検出することができ、上記疾患に対する早期診断、早期治療に用いることができる。
 上記抗体の標識手段としては、従来公知の方法を用いることができ、特に限定されるものではない。例えば、後述する実施例に示すように、従来公知の抗原抗体反応を利用して、免疫染色により標識する方法が挙げられる。即ち、チロシンリン酸化されたCagAタンパク質を認識する抗体を1次抗体とし、この1次抗体に対する抗体を2次抗体として、この2次抗体を例えば、ペルオキシダーゼ等の酵素等により標識しておけば、染色処理により、目視的にチロシンリン酸化されたCagAタンパク質を検出できる。その結果、種々の疾患と密接に関連したH.ピロリ菌の感染を高精度で、効率よく検出可能となる。
 その他にも、例えば、蛍光物質で本発明の抗体を直接標識する方法が挙げられる。即ち、上記抗体を蛍光物質で標識した場合、チロシンリン酸化されたCagAタンパク質は蛍光物質により標識される。従って、その蛍光を指標に顕微鏡等を用いて観察することにより、H.ピロリ菌の感染を検出することができる。なお、上記抗体を標識する方法は蛍光物質によるものに限られない。
 (4−2)本発明に係るH.ピロリ菌の感染検出方法
 また、本発明に係る抗体は、H.ピロリ菌の宿主細胞への感染を検出するための手段として用いることができる。即ち、本発明に係るH.ピロリ菌の感染検出方法は、上記抗体を用いていればよく、その他の構成手段は特に限定されるものではない。
 本発明に係るH.ピロリ菌の感染を検出する方法の一例をより具体的に説明すれば、検体取得工程、標識工程、検出工程を含んでいればよく、特に限定されるものではない。
 検体取得工程とは、目的とする組織、細胞塊、糞便、細胞等の生検標本を取得する工程であればよく、特に限定されるものではない。目的の生検標本を取得するための手段としては、例えば、生物の個体そのものから、または生物の器官や組織等から目的の生検標本を採取する工程であればよく、従来公知の方法を利用でき、特に限定されるものではない。例えば、生物個体、器官や組織等から内視鏡を用いて細胞を取得する工程等が挙げられる。糞便は、防腐剤の入った溶液に縣濁させる工程などが挙げられる。
 標識工程とは、上記検体取得工程にて取得した生検標本を用いて、本発明に係る抗体により、チロシンリン酸化されたCagAタンパク質を標識する工程であればよく、このときの反応条件、例えば、細胞等の濃度、抗体の濃度、反応温度や反応時間、塩の濃度(使用するバッファーの種類)等については特に限定されるものではない。また、標識手段も従来公知の方法であればよく、例えば、目視で、または機械的に識別できるように標識すればよい。具体的には、後述する実施例に示すように、従来公知の抗原抗体反応や蛍光物質等を用いることができるが、特に限定されるものではない。
 検出方法とは、上記標識工程で標識されたチロシンリン酸化CagAタンパク質を検出する工程であればよく、特に限定されるものではない。具体的には、顕微鏡等による目視観察により、または、蛍光等の情報を感知できる機器(例えば、フローサイトメトリー機器)により機械的にチロシンリン酸化CagAタンパク質を検出する工程等が挙げられる。糞便縣濁液は、抗体を固定したマイクロプレートを用いた酵素抗体法で検出する工程が挙げられる。
 また、本発明に係る抗体は、例えば、後述する実施例に示すように、本発明に係る抗体で標識した生検標本と、CagAタンパク質を特異的に認識するモノクローナル抗体で標識した生検標本とを、比較分析することにより、より高精度で、胃や十二指腸において発生する種々の疾患と密接に関連するH.ピロリ菌の宿主細胞への感染を検出、診断することもできる。
 また、上記抗体を用いて、所定の領域がチロシンリン酸化されたCagAタンパク質の検出剤を開発することも可能であり、また、上記抗体を用いた、所定の領域がチロシンリン酸化CagAタンパク質を検出する方法を開発することもできる。なお、「所定の領域」とは、CagAタンパク質の893番目、912番目、965番目、999番目、1033番目のチロシン残基のうち、少なくとも一つのチロシン残基をいい、より好ましくは、965番目、999番目、1033番目のチロシン残基をいう。
 (4−3)本発明に係る疾患の発症または発症危険性判定方法(診断方法)
 また、本発明に係る抗体は、萎縮性胃炎、胃潰瘍、MALTリンパ腫、および胃癌等のH.ピロリ菌の感染によって引き起こされる種々の疾患の発症または発症危険性を判定するための手段として用いることができる。即ち、本発明に係る上記疾患の発症または発症危険性判定方法(診断方法)は、上記抗体を用いていればよく、その他の構成手段は特に限定されるものではない。
 本発明に係る上記疾患の発症または発症危険性を判定する方法の一例をより具体的に説明すれば、上述したH.ピロリ菌の感染検出方法と同様の検体取得工程、標識工程、検出工程に加えて、さらに判定工程を含んでいればよく、特に限定されるものではない。
 検体取得工程、標識工程、および検出工程は、上記(4−2)で述べたものと同様の工程であればよい。
 判定方法とは、上記検出工程において得られた、チロシンリン酸化CagAタンパク質の検出の有無およびH.ピロリ菌の感染状態等の情報に基づき、用いた生検標本において萎縮性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、MALTリンパ腫、及び胃癌のうち、いずれかの疾患が発症しているか、あるいは発症する危険性(可能性)があるか否かを判定する工程であればよい。具体的には、例えば、チロシンリン酸化CagAタンパク質が一定量以上検出された場合、またはチロシンリン酸化CagAタンパク質が器官や組織等の特定の部位において検出された場合、上記疾患が発症している、あるいは発症する危険性があると判断することができるが、特に限られるものではない。
 この疾患の発症または発症危険性の判定方法を用いることにより、例えば、チロシンリン酸化されたCagAタンパク質を指標に、H.ピロリ菌の感染によって引き起こされる種々の疾患の発症または発症危険性(可能性)を容易に判定することができる。従って、本発明に係る上記疾患の発症または発症危険性判定方法は、上記疾患に対する予防、早期診断、早期治療に用いることができる。
 (4−4)本発明に係る抗体を用いた治療方法等
 本発明に係る抗体は、さらに、H.ピロリ菌の感染によって引き起こされる種々の疾患の治療に利用できる可能性がある。即ち、上記疾患の原因の一つと考えられるチロシンリン酸化されたCagAタンパク質を標的として、本発明に係る抗体を用いた治療剤または治療方法等を開発することができる。
 上記治療剤としては、本発明に係る抗体を含んでいればよい。即ち、例えば、使用(検査)対象の生物個体、器官、組織、細胞塊、あるいは細胞等の種類に応じて、チロシンリン酸化されたCagAタンパク質と結合するために、本発明に係る抗体の機能が発揮できるような緩衝液等を含んでいればよい。
 また、上記治療方法は、本発明に係る抗体を用いるものであればよい。即ち、具体的には、緩衝液等と混合した上記抗体を注射等により、直接患部(器官、組織等)に接種する方法や、上記抗体を可溶性カプセルに内包させ、経口的に患者に与えて治療する方法等が挙げられるが、特に限られるものではない。
 即ち、上記治療剤または治療方法は、本発明に係る抗体とチロシンリン酸化されたCagAタンパク質とを結合させて、CagAタンパク質の機能を阻害するようになっていればよい。
 従って、上記治療剤または治療方法を用いることにより、H.ピロリ菌の感染によって引き起こされる種々の疾患の治療を行うことができる。
 また、CagAタンパク質、またはその一部を含むワクチンを作製することができる。このワクチンは、H.ピロリ菌の感染やH.ピロリ菌の感染により引き起こされる種々の疾患の治療または予防に用いることができるものである。
 このワクチンの具体的な構成としては、免疫原性を損なわないように低毒化または無毒化したCagAタンパク質、またはその一部の領域を含んでいればよく、その他の構成は特に限定されるものではない。より具体的には、ワクチンは、例えば、配列番号4に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、4番目のチロシン残基がリン酸化されているポリペプチドを含んでいることが好ましい。即ち、前記ワクチンは、ITAM様モチーフを含む領域からなるポリペプチドを含んでいることが好ましい。なお、配列番号1に示すアミノ酸配列のうち、1番目のシステイン残基を除く2〜16番目のアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、10番目のチロシン残基がリン酸化されているポリペプチドを含んでいることがより好ましい。
 また、本発明のワクチンには、H.ピロリ菌が産生する他の病原性因子、例えば、ウレアーゼやVacA等を、免疫原性を損なわないように低毒化または無毒化処理を施したもの(例えば、ポリペプチド等)を含んでいてもよい。この場合、複数の病原性因子を同時に標的としているため、より効率的に、H.ピロリ菌の感染やH.ピロリ菌の感染により引き起こされる種々の疾患の治療や予防に用いることができる。
 なお、ここでいう「ポリペプチド」とは、アミノ酸が数個結合した短いペプチド、及び組換えタンパク質を含むものである。また、ポリペプチドは、天然に存在するもの、化学的、生物学的方法にて合成、生産されたものを含む。
 前記ワクチンを用いることにより、より効率的にH.ピロリ菌の感染やH.ピロリ菌の感染により引き起こされる種々の疾患の治療や予防に用いることができる。
 上述したように、本発明に係る抗体、H.ピロリ菌の宿主細胞への感染検出剤、H.ピロリ菌の宿主細胞への感染を検出する方法、または萎縮性胃炎等の疾患の発症または発症危険性判定方法、治療方法、ワクチン(以下、本発明に係る抗体等と称する)は、H.ピロリ菌の感染によって引き起こされる種々の疾患の効率的な早期診断、早期治療、または予防等に利用することができる。さらに、本発明に係る抗体等を利用し、未だ明らかとなっていないH.ピロリ菌の感染によって引き起こされる種々の疾患の発生メカニズムについて詳細な解析を行うこともでき、基礎研究的な利用もできる。
 即ち、本発明に係る抗体等は、チロシンリン酸化されたCagAタンパク質の検出を通して、H.ピロリ菌の感染により引き起こされる疾患、特に萎縮性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、MALTリンパ腫、胃癌等の早期診断、予防、臨床検査、及び治療等に利用できる可能性があるだけでなく、H.ピロリ菌の感染により引き起こされる種々の疾患の発病機序解明という基礎的研究への利用も利用可能である。
 以下添付した図面に沿って実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。
 以下に、本発明の抗体のうち、ポリクローナル抗体について具体的に説明する。
 〔実施例1〕ポリクローナル抗体の作製
 以下にポリクローナル抗体の作製方法を説明する。
 (1-1)抗原調製
 具体的には、以下の方法で行った。まず、配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、10番目のチロシン残基がリン酸化されている、リン酸化ペプチドを合成した。より詳細には、アミノ酸残基を活性化させるHBTU、あるいはジイソプロピルカルボジイミドを用いた、Fmoc-based化学固相法を利用した。合成したポリペプチドは保護剤(プロテクト)を外し、チオアニソール等からなるスカベンジャーを含んだトリフルオロ酢酸を用いて、レジンベースのポリスチレンからなる固相支持体から切り離した。その後、抽出したポリペプチドは、エーテル内で沈殿させ、5,000rpmにて遠心回収し、エーテルで洗浄した。その後、HPLCにて精製を行った。
 逆相HPLCによるポリペプチドの精製には、粒子型10μmカラムであるC18カラムを用いて、BioCad 60装置(Perkin-Elmer, Foster City CA)にて行った。流速20ml/分で、45分間にわたって、直線勾配を10%〜80%までかけた(溶液A:0.05%TFA溶液、溶液B:0.05%TFA含有アセトニトリル)。主ピークを、Lasermat 2000(Finnigan Ma, San Jose, CA)にて、タイムオブフライトマススペクトメトリー(MALDI-TOF)により解析した。フラクションは、正確な重量で集めて、抗原として凍結乾燥した。
 (1−2)免疫処理
 上記方法により得られた合成リン酸化ポリペプチドを抗原として、メスのニュージーランド白ウサギ(平均年齢:6ヶ月、平均重量:5-6 lbs)を用いて免疫処理を行った。
 抗原と補助剤との混合物を、ウサギ背中皮下と後ろ足の筋肉とに接種した。接種量は、1箇所につき0.1ml以下で行った。最初の接種では、1.0mlの抗原に対して、同量の完全補助剤(Complete Freund’s Adjuvant)を混合して用い、それ以外の接種では、抗原と同量の非完全補助剤(Incomplete Freund’s Adjuvant)を混合して用いた。接種は、背中皮下に10箇所、後ろ足筋肉に10箇所行った。
 より詳細には、1日目に抗原200μgを結合溶液0.5mlに溶解させ、同量の完全補助剤と混ぜたものを0.1mlずつ10箇所に接種した。その14日後に抗原200μgを結合溶液0.5mlに溶解させ、同量の非完全補助剤と混ぜたものを0.1mlずつ10箇所に接種した。さらに、最初の接種日から28日後、42日後、56日後に抗原溶液を接種した。
 そして、最初の接種日から42日後、56日後、70日後にそれぞれ20mlずつ血清採取できるように採血した。採血した血液は、室温に2時間放置し、その後、1晩冷蔵庫に放置した。翌日、この血液を5,000rpm、15分遠心分離し、血清を得た。得られた血清は、さらにクロット塊を取り除き、さらに5,000rpm、5分遠心を行った。最終的に得られた血清はバイアルに入れられ、−20℃にて保存された。
 なお、免疫する物質が十分に免疫原性をもつには、分子量が10,000以上必要であるため、本発明者は、N末端またはC末端にシステイン残基を導入し、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシニミドエステル(MBS)を用いてキャリアタンパク質に結合させて、抗原タンパク質として免疫に用いた。キャリアタンパク質としては、KLH(Keyhole Limpet Hemocyanin)を用いた。
 (1−3)アフィニティ精製用カラム作製
 以下にアフィニティ精製用カラム作製について説明する。
 まず、ポリペプチド結合ゲルカラム(アフィニティ精製用カラム)は以下のように作製した。10mlの硫酸結合ゲル(Sulfo-Link Coupling Gel)を加えて、2mlのカラムを一度に5本作製した。次いで、カップリング溶液(50mM Tris溶液、pH 8.5)により平衡化し、カラムの底部にキャップをした。次に、カラムに結合させるポリペプチド(抗原等)がシステインを有するか否かを調べた。
 そして、上記ポリペプチドをカップリング溶液1mlに溶解させた(5mgのポリペプチドを1mlに溶解させた)。
 次いで、4〜5mgのTCEP-HCLを用いて、上記ポリペプチドを減らした。溶液をpH 5.0に調製し、30分間放置した。
 2倍量のカップリング溶液を、上記ポリペプチド溶液に添加し、pH7.0〜7.5に調製した。カラムに、このポリペプチド溶液を添加し、カラムの上部と底部とにキャップした。4℃で1晩、カラムを静置してゲルを安定化させた。その後、1時間カラムを室温に放置し、リガンド溶液をチューブに回収した。その後、2mlのカップリング溶液をカラムに添加し、同じチューブに回収した(この溶液は、ポリペプチドがゲルに結合していない場合は保存しておく)。その後、15mlのカップリング溶液をカラムに流し、洗浄し、アフィニティ精製用カラムを得た。
 なお、上記カラムに結合させるポリペプチドとして、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド(非リン酸化ポリペプチド)と、配列番号3に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、8番目のチロシン残基がリン酸化されているポリペプチドとを用いた。即ち、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド(非リン酸化ポリペプチド)を結合させたカラムAと、配列番号3に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、8番目のチロシン残基がリン酸化されているポリペプチドを結合させたカラムBとの2種類のアフィニティ精製用カラムを作製した。
 (1−4)アフィニティ精製用カラムのブロッキング
 上記カラムの底部にキャップがされていることを確認した後、15.8mgのL-システイン-HClを2mlのカップリング溶液に添加し、上記ゲルカラムにアプライした。そして、1時間室温にてインキュベートした。その後、10〜15mlの1M NaClにて洗浄し、フィルターをセットした。次いで、10〜15mlの0.5%アザイドNaにて洗浄し、3〜4mlのアザイドNaにてカラム内を満たし、キャップをしっかり閉めて4℃にて保存した。
 (1−5)血清精製
 上記2種類のアフィニティ精製用カラムA、Bを用いて、血清精製を行った。具体的には、まず、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドを結合させたアフィニティ精製用カラムAに血清を通した。次いで、前記カラムAからパスしてきた溶液を、配列番号3に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、8番目のチロシン残基がリン酸化されているポリペプチドが結合しているアフィニティ精製用カラムBに通した。そして、前記カラムBに結合した抗体を、チロシンリン酸化CagAタンパク質を特異的に認識する抗体として取得した。
 具体的な方法は以下のように行った。まず、カラムを10〜15mlの1×PBS溶液(phosphate-buffered saline;137mM NaCl、2.7mM KCl、1.5mM KH2PO4、8.0mM Na2HPO4、pH7.2)で洗浄した。次に、血清 1mlとPBS 1mlとを混合し、上記カラムにアプライした。そして、カラムの底部にキャップをし、1〜2時間室温にてインキュベートした。
 次に、再びカラムを10〜15mlの1×PBS溶液にて洗浄した。次いで、溶出溶液(100mM Glycine溶液、pH 2.8)を1ml添加し、カラムから溶出してきた回収液をチューブに集めた。この処理を6回繰り返した。得られた各回収液から50μl採取し、10μlのBioRad溶液でコーティングしたマイクロウェルプレートに添加し試験した。その結果、BioRad溶液が青色に変化した回収液1mlに対して、1M Tris(pH 9.5)溶液を50μlずつ加えた。そして、その回収液を4リットルの1×PBS溶液で、24時間透析を行った。そして、スペクトロメーターを用いて、280nmのODを測定した(消滅係数は1.4)。使用し終わったカラムは10〜15mlのアザイドNa溶液にて洗浄した後、約4mlのアザイドNa溶液でカラムを満たし、4℃にて保存した。
 上述の処理により、配列番号4に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、4番目のチロシンがリン酸化されているポリペプチドを特異的に認識するポリクローナル抗体を取得できた。即ち、チロシンリン酸化されたCagAタンパク質を特異的に認識するポリクローナル抗体を取得できた。
 (1−6)IgG精製
 IgG精製は以下の手順で行った。まず、カラムを10mlの1×PBS(pH7.3)溶液で洗浄した。次に、上記血清 3mlとPBS 3mlとを2本のIgGカラムにアプライした。カラムを透過した血清をテストチューブに集めた。この血清を再びカラムにかけるという工程を5〜6回繰り返した。
 次に、再びカラムを10mlの1×PBS溶液にて洗浄した。そして、1M Tris(pH 9.5)溶液を50μlずつ加えた1mlチューブを準備した。次いで、溶出溶液(100mM Glycine溶液、pH 2.8)を1ml添加し、カラムから溶出してきた回収液を前記チューブに集めた。この処理を繰り返した後、得られた各回収液から50μl採取し、10μlのBradford Assay溶液の入ったELISAプレートに添加して、試験した。その結果、陽性だったサンプル1mlを4リットルの1×PBS溶液(pH 7.2)内で、24時間透析を行った。そして、溶液中のIgGの濃度を280nmのスペクトロメーターを用いて測定した(消滅係数は1.4)。得られたIgG溶液は、−20〜−4℃にて保存した。なお、ゲルの容量は、各カラム1mlのゲルを用いた。
 〔実施例2〕ポリクローナル抗体の機能解析
 上記実施例1に記載した方法により得たポリクローナル抗体の機能を免疫組織染色法により、以下のように解析した。
 まず、生検標本を、10%のホルマリン溶液にて固定した。これらは、処理した後、端を揃えてパラフィンにはめ込んだ。そして、4〜5mm角に切断した。生検標本は、インフォームド・コンセントの後に、福井病院(日本)の患者から集められた。胃粘膜の生検標本は、H.ピロリ菌が感染している患者から、計15標本(胃潰瘍:3、胃癌:9、十二指腸潰瘍:2、MALTリンパ腫:1)、H.ピロリ菌に感染していない患者から2標本を得られた。
 そして、これらの粘膜層は、以下に示す免疫組織染色に用いられた。脱パラフィンされた生検標本の画分を、室温にてキシレン(Xylene)と5分間インキュベートし(2回繰り返す)、そして100%エタノールと3分間インキュベートし(3回繰り返す)、80%エタノールと3分間インキュベートした。
 その後、前記画分を水で洗浄した後、内在性のペルオキシダーゼをブロックするために、0.2%アザイドNa含有0.03%過酸化水素溶液にて20分間インキュベートした。そして、前記画分をPBS溶液で洗浄した後、室温にて、チロシンリン酸化CagAタンパク質に対するポリクローナル抗体、またはCagAタンパク質に対するモノクローナル抗体とともに、60分間インキュベートした。
 なお、CagAタンパク質に対するモノクローナル抗体は、リン酸化されていないCagAタンパク質とリン酸化されているCagAタンパク質の両方を認識するものであり、市販のものを使用した(AUSTRAL Biologicals, HPM-5001-5)。
 そして、前記抗体処理した画分を、ペルオキシダーゼでラベルした抗ウサギ抗体、または抗マウス抗体(DAKO Envision System, DAKO Corp., Carpinteria, CA)とともに30分間インキュベートした。その後、過酸化水素(DAKO Envision System)含有3-アミノ-9-エチルカルバゾール溶解アセトン溶液にて染色した。また、ヘマトキシリンにてカウンター染色した後、水溶性のマウント培地にのせて顕微鏡観察した。
 その結果を図1〜図7に示す。図1(a)は、H.ピロリ菌に感染している胃潰瘍患者から採取した生検標本をHE(ヘマトキシリン−エオシン)染色し、倍率20倍にて顕微鏡観察した結果を示し、図1(b)は、図1(a)の生検標本を倍率40倍にて顕微鏡観察した結果を示すものである。
 図2は、CagAタンパク質を認識するモノクローナル抗体にて、H.ピロリ菌に感染している胃潰瘍患者から採取した生検標本を免疫染色し、倍率40倍にて顕微鏡観察した結果を示すものである。図3は、チロシンリン酸化されているCagAタンパク質を認識するポリクローナル抗体にて、H.ピロリ菌に感染している胃潰瘍患者から採取した生検標本を免疫染色し、倍率40倍にて顕微鏡観察した結果を示すものである。
 また、図4は、H.ピロリ菌に感染している胃癌患者から採取した生検標本をHE(ヘマトキシリン−エオシン)染色し、倍率4倍にて顕微鏡観察した結果を示すものである。図5は、チロシンリン酸化されているCagAタンパク質を認識するポリクローナル抗体にて、H.ピロリ菌に感染している胃癌患者から採取した生検標本を免疫染色し、倍率40倍にて顕微鏡観察した結果を示すものである。そして、図6は、チロシンリン酸化されているCagAタンパク質を認識するポリクローナル抗体にて、他のH.ピロリ菌に感染している胃癌患者から採取した生検標本を免疫染色し、倍率40倍にて顕微鏡観察した結果を示すものである。
 また、図7(a)は、H.ピロリ菌に感染している胃癌の患者から採取した癌細胞の生体標本(Tumor Cells)を、HE染色した結果を示し、図7(b)は、前記癌細胞の生体標本を、リン酸化CagAタンパク質を認識するポリクローナル抗体を用いて免疫染色した結果を示す図であり、図7(c)は、前記癌細胞の生体標本を、CagAタンパク質を認識するモノクローナル抗体を用いて免疫染色した結果を示した図である。また、図7(d)は、H.ピロリ菌に感染している胃癌の患者から採取した通常の細胞の生体標本(Normal Cells)を、HE染色した結果を示す図であり、図7(e)は、前記通常の細胞の生体標本を、リン酸化CagAタンパク質を認識するポリクローナル抗体を用いて免疫染色した結果を示す図であり、図7(f)は、前記通常の細胞の生体標本を、CagAタンパク質を認識するモノクローナル抗体により免疫染色した結果を示した図である。
 図1(a)(b)、図4に示すように、H.ピロリ菌に感染している胃潰瘍患者、及び胃癌患者から採取した生検標本は、HE染色の結果、萎縮性胃炎を裏付ける腸上皮化性が起こっていることがわかった。
 そして、図2に示すように、胃上皮細胞の近傍で、CagAタンパク質が検出された。さらに、図3、図5、及び図6に示すように、その腸上皮化性細胞において、チロシンリン酸化されたCagAタンパク質を検出することができた(図中の黒い点がCagAタンパク質)。なお、結果は示さないが、その他のMALTリンパ腫や、十二指腸潰瘍等の患者から採取した生検標本でも同様に、チロシンリン酸化されたCagAタンパク質を検出することができた。
 また、図7(a)〜(c)に示すように、癌細胞において、チロシンリン酸化されたCagAタンパク質が検出された。なお、図7(d)〜(f)に示すように、癌化していない細胞においてもチロシンリン酸化されたCagAタンパク質が検出されたが、これら癌化していない細胞は、癌前段階の胃縮性胃炎や胃潰瘍の細胞と相関があると考えられる。
 これらの結果から、H.ピロリ菌の感染により引き起こされた萎縮性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、MALTリンパ腫、胃癌等の疾患と、チロシンリン酸化されたCagAタンパク質とは、密接に関連していることが示された。そして、この知見は、H.ピロリ菌の感染と関連している疾患の発生機構の解明に繋がるだけでなく、H.ピロリ菌の感染の防止や、分析、検査等に応用可能である。
 本発明は、H.ピロリ菌の感染の予防、診断、分析、検査といった医学的、生理学的な分野だけでなく、製薬産業への利用も可能である。
(a)は、胃潰瘍患者から採取した生検標本のHE染色の結果を倍率20倍にて顕微鏡観察した図を示し、(b)は、(a)の生検標本を倍率40倍にて顕微鏡観察した図を示すものである。 CagAタンパク質に対するモノクローナル抗体にて、胃潰瘍患者から採取した生検標本を免疫染色した結果を、倍率40倍にて顕微鏡観察した図を示すものである。 チロシンリン酸化されているCagAタンパク質を認識するポリクローナル抗体にて、胃潰瘍患者から採取した生検標本を免疫染色した結果を、倍率40倍にて顕微鏡観察した図を示すものである。 胃癌患者から採取した生検標本をHE染色した結果を、倍率4倍にて顕微鏡観察した図を示すものである。 チロシンリン酸化されているCagAタンパク質を認識するポリクローナル抗体にて、胃癌患者から採取した生検標本を免疫染色した結果を、倍率40倍にて顕微鏡観察した図を示すものである。 チロシンリン酸化されているCagAタンパク質を認識するポリクローナル抗体にて、他のH.ピロリ菌に感染している胃癌患者から採取した生検標本を免疫染色した結果を、倍率40倍にて顕微鏡観察した図を示すものである。 (a)〜(f)は、H.ピロリ菌に感染している胃癌の患者から採取した癌細胞と通常の細胞との生体標本をそれぞれ、HE染色、リン酸化CagAタンパク質を認識するポリクローナル抗体による免疫染色、CagAタンパク質を認識するモノクローナル抗体による免疫染色の結果を示したものである。

Claims (7)

  1.  ヘリコバクター・ピロリ菌が感染している宿主細胞に見出される、チロシンリン酸化されているCagAタンパク質を特異的に認識する抗体。
  2.  配列番号1に示すアミノ酸配列のうち、1番目のシステイン残基を除く2〜16番目のアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、10番目のチロシン残基がリン酸化されているポリペプチドを含むリン酸化CagAタンパク質を特異的に認識する抗体。
  3.  請求項1または2に記載の抗体を含有するヘリコバクター・ピロリ菌の宿主細胞への感染検出剤。
  4.  請求項1または2に記載の抗体を用いて、ヘリコバクター・ピロリ菌の宿主細胞への感染を検出する方法。
  5.  請求項1または2に記載の抗体を用いて、萎縮性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、MALTリンパ腫、および胃癌のうち、いずれかの疾患の発症または発症危険性を判定する方法。
  6.  請求項1または2に記載の抗体を用いて、萎縮性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、MALTリンパ腫、および胃癌のうち、いずれかの疾患を治療する方法。
  7.  配列番号4に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、4番目のチロシン残基がリン酸化されているポリペプチドを含有するワクチン。
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