JP2004123566A - ヒト血漿由来血液凝固第xiii因子製剤およびその製造方法 - Google Patents

ヒト血漿由来血液凝固第xiii因子製剤およびその製造方法 Download PDF

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Kazunori Oshima
大嶋 一紀
Hiroshi Kaneko
金子 博
Takahito Matsuo
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Abstract

【課題】本発明は、ヒト血液凝固第XIII因子含有画分から、アナフィラトキシンとして知られている活性化補体C3a等を効率的に除去する方法および実質的にアナフィラトキシンを含まないヒト血液凝固第XIII因子製剤を提供しようとするものである。
【解決手段】ヒト血漿由来の血液凝固第XIII因子含有画分を疎水性担体により処理しその後さらに必要により陰イオン交換体による処理を行うことにより、血液凝固第XIII因子含有画分からのアナフィラトキシンを効率的に除去することができる。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は血漿由来の血液凝固第XIII因子含有画分から活性化補体を除去する方法および活性化補体を実質的に含まない血液凝固第XIII因子製剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
ヒト血漿中に存在する血液凝固第XIII因子は、フィブリン安定化因子として知られている分子量32万の血漿蛋白であり、aサブユニットおよびbサブユニットがそれぞれ2量体を形成し、aサブユニットの2量体であるaとbサブユニットの2量体であるbが結合したaというという4量体で構成されており、活性の発現には活性体に転換されその作用を発現する。このaサブユニットの2量体であるaは実質的なフィブリン安定化因子として作用する活性部位を有し、bサブユニットの2量体bがaサブユニットの2量体aの血漿中での安定化に関与していると考えられている。この血液凝固第XIII因子の活性化体の前駆体aの4量体は、トロンビンの存在下でaサブユニットがa’サブユニットとなり、a’の4量体となる。その後、カルシウムイオンの存在下でa’の2量体となり、血液凝固第XIII因子の活性化体として活性を発現する。
【0003】
血液凝固第XIII因子は血小板膜上あるいは胎盤からも生成されるものであるが、これらは膜上にaダイマー(分子量16万)として存在しているものであり、このaダイマーがトロンビンの存在下にa’ダイマーとなって活性を発現する。この点において血漿中の血液凝固第XIII因子が4量体として存在するのとは、対照的である。
【0004】
血漿由来の血漿蛋白質製剤の製造工程にはウイルスを始め、種々の夾雑物を除去又は不活化するための工程を組み込むことが必要である。
ウイルス不活化の方法としては、液状または乾燥状態での加熱処理によりウイルスを不活化する方法(非特許文献1、特許文献1)、界面活性剤と有機溶媒を用いて脂質膜を有するウイルスを不活化する方法(特許文献2)等が知られている。また、ウイルスを除去する方法としては、一定の孔径サイズをもったウイルス除去膜で除去する方法(特許文献3)、陽イオン交換体処理により除去する方法などが知られている。
【0005】
ヒト血液より分離されたヒト血漿から血液凝固第XIII因子製剤を分離、精製する工程において、加熱処理時に血液凝固因子を安定化する方法(特許文献4)も開示されている。
特許文献5には、脂質性のエンベローブを有するウイルスの夾雑可能性のある蛋白質を疎水性担体によって処理し、脂質性のエンベローブを有するウイルスを除去する製造方法が示されている。
一方、血液凝固第XIII因子の精製に関して下記のような精製方法が開示されている。
【0006】
特許文献6には、血液凝固因子を含む溶液を疎水性リガンドに接触させることにより夾雑するフィブリノーゲンを効率よく除去する精製法が開示されている。
特許文献7には、ヒト血液凝固第XIII因子および夾雑物を含有する水溶液から、ヒト血液凝固第XIII因子製剤を疎水性クロマトグラフィーで処理してその吸着画分を回収することを特徴とするヒト血液凝固第XIII因子製剤の製造方法が開示されている。しかしながら当該発明は胎盤からの血液凝固第XIII因子aの精製に関するもので、血漿中よりaの4量体を精製するものではない。
【0007】
特許文献8には、胎盤由来の血液凝固第XIII因子を精製する方法が開示され、疎水性クロマトグラフィーにて吸着分離する工程、さらに、ハイドロキシアパタイトあるいは陰イオン交換樹脂に吸着させて精製することが示されている。しかしながら、この方法もaの2量体である血液凝固第XIII因子に関するものである。
近年、ヒト血液凝固第XIII因子製剤としては、ヒト血漿由来、胎盤由来(特許文献8)、遺伝子組換え体(特許文献9)などが知られている。
しかし胎盤由来のものは、胎盤を提供したドナー毎にウイルスのチェックを行うことが難しく、ウイルスに対する安全性確保の観点より、過去に市販されていたが現在では国内では市販されていない。さらに胎盤に由来する血液凝固第XIII因子はaサブユニットの2量体のものであり、4量体の血液凝固第XIII因子に関するものではない。
【0008】
また、遺伝子組換え技術によるものも、現在では未だ臨床応用には至っておらす、工業的に安価に製造され現実に市販に至っているものは存在しない。
一方、ヒト血液由来の製剤は供血者毎にHIV、HBV、HCVなどの臨床上問題とされるウイルスについて、採血時にドナーの血液毎にウイルスのチェックが血液センターで実施され、更に前述のウイルス不活化処理が確実に実行されている結果、ウイルス安全性について十分な対策が講じられている。このため、本邦では献血血漿より血漿分画製剤が製造され供給されており、その安全性は十分に確保されている。
【0009】
血液凝固第XIII因子は、単独の血液凝固第XIII因子製剤として先天性血液凝固第XIII因子の欠乏患者や外科手術時の縫合不全あるいはシェーンライン・ヘノッホ紫斑病などに用いられている。また、血液凝固第XIII因子はフィブリノーゲンよりトロンビンによりフィブリンへと変換されたフィブリンモノマーを架橋して安定なフィブリン塊へと転換させる性質を利用して、トロンビンとフィブリノーゲンよりなる生理的接着剤に配合され、外科手術時の臓器、組織の接着あるいは止血を目的として臨床で用いられている。
【0010】
外科手術時等の生体侵襲の強い状況下では、炎症反応を抑制することが極めて重要である。そこで、本発明者らは、第XIII因子製剤に炎症を助長するような因子が他に含まれていないか精査したところ、製剤、加熱処理を施した血液凝固第XIII因子含有画分においても、無視し得ない量のアナフィラトキシンとして知られている活性化補体が含まれていることが判明した。しかしながら、現在までに血液凝固第XIII因子の精製法あるいはその製剤において活性化補体あるいはアナフィラトキシンに着目して、その除去が検討されたことはなかった。
【0011】
【特許文献1】
特開2002−112765号公報
【特許文献2】
特開昭60−51116号公報
【特許文献3】
特開2002−114799号公報
【特許文献4】
特公昭62−54286号公報
【特許文献5】
特開平2−209814号公報
【特許文献6】
特開平2−36199号公報
【特許文献7】
特開平2−247199号公報
【特許文献8】
特開平6−105683号公報
【特許文献9】
特表平7−506479号公報
【非特許文献1】
Murrayら、The New York Academy of Medicine, 31巻(5), 341〜358(1955)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、ヒト血液由来の補体成分、特にC3の活性型でありアナフィラトキシンとして知られているC3aが市販の血漿由来の血液凝固第XIII因子製剤に夾雑していることを確認した。また、本発明者らは、活性化補体が血液凝固第XIII因子製剤に夾雑しており、精製の工程において、その除去効果を検討し、特に血漿中に多く存在している補体成分C3の活性型C3aに注目し、検討を行ったところ、原料血漿に由来する補体成分が精製工程中に補体の活性化(cold activation)として知られている臨床検査時のサンプルの低温保管による補体の活性化が血液凝固第XIII因子製剤の精製工程のおいても引き起こされる危険性のあることを考慮して検討を進め、特に活性化補体の中でもアナフィラトキシンが夾雑していることを見出した。アナフィラトキシンの中でも夾雑量の多いC3aに注目し、ウイルスの不活性化の加熱処理時においても不活性化されずアナフィラトキシンC3aがそのアナフィラトキシン活性を保持したまま夾雑してくることをも見出した。
【0013】
本発明は、ヒト血漿由来のヒト血液凝固第XIII因子含有画分から、活性化補体として知られ動物に投与した際にアナフィラキシー様反応を惹起することが知られているアナフィラトキシンである活性化補体C3a等を効率的に除去する方法および実質的に活性化補体を含まないヒト血漿由来のヒト血液凝固第XIII因子製剤を提供しようとするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決する為に種々の研究を重ねた結果、活性化補体が夾雑する可能性があるヒト血液凝固第XIII因子含有画分を疎水性坦体による処理によって活性化補体を効率的に除去できることを見いだし、更に研究を進めて、疎水性坦体による処理、それに続く陰イオン交換体による処理によりアナフィラトキシンとして知られている活性化補体C3aを効率的に除去できることを見いだし、更に検討を重ねて発明を完成した。
【0015】
また、本発明者らは、血液凝固第XIII因子含有画分に夾雑が懸念されるウイルスの加熱処理によるウイルス不活化時に安定化剤として加えられる糖、アミノ酸などを疎水性担体で処理することで事前に限外濾過処理等によりアミノ酸、糖などの安定化剤を除去することなくそのまま適用でき、且つ、熱処理により発生した熱変成血液凝固第XIII因子をも除去でき、製造工程が簡便化できることも見いだし、本発明の完成に至ったものである。
特にウイルス不活化のための加熱処理時に補体成分C3aの活性が保持されていることから、加熱処理した後の血液凝固第XIII因子含有画分を疎水性担体で処理することが効果的であることも見い出した。
【0016】
すなわち本発明は、
(1)ヒト血漿由来の血液凝固第XIII因子含有画分を疎水性担体により処理する血液凝固第XIII因子含有画分から活性化補体を除去する方法、
(2)疎水性担体処理後さらに陰イオン交換体による処理を行う(1)記載の方法、
(3)血液凝固第XIII因子含有画分がウイルス不活化のために加熱処理されたものである(1)または(2)記載の方法、
(4)活性化補体がアナフィラトキシンである(1)〜(3)のいずれかに記載の方法、
(5)アナフィラトキシンがC3aである(4)記載の方法、
(6)活性化補体を実質的に含まないヒト血漿由来の血液凝固第XIII因子製剤、
(7)活性化補体がアナフィラトキシンである(6)記載の血液凝固第XIII因子製剤、
(8)アナフィラトキシンがC3aである(7)記載の血液凝固第XIII因子製剤、
(9)アナフィラトキシンの含量が血液凝固XIII因子の単位数当たり50ng以下である(8)記載の血液凝固第XIII因子製剤、
である。
【0017】
【発明の実施の形態】
(1)血液凝固第XIII因子を含む血漿画分
本発明が適用される血液凝固第XIII因子を含む血漿画分は、公知のいずれの方法によって得られたものでも利用できる。例えば、血漿のコーン分画によるエタノール分画Iペーストを50〜60℃で3〜30分加熱し、脱フィブリノーゲン処理を行いグリシンおよび塩化ナトリウムを添加して血液凝固第XIII因子を選択的に沈澱させて得る方法(特許第2678193号)により得ることができる。より具体的な方法としてはたとえば次の方法があげられる。まず、コーン低温エタノール分画の画分Iを採取し、0.02Mクエン酸緩衝液(pH7.5)を加え、ミキサーで画分を充分に撹拌して溶解させる。この溶液を遠心分離器により3000g、20℃で15分間遠心分離し上清を得る。この上清に、1Mクエン酸緩衝液(pH7.5)をゆっくりと加え、撹拌後20℃で1時間放置する。この溶液を再び遠心分離器でにて3000g、10℃で15分遠心分離し、沈殿物を濾取する。この沈澱を0.02Mクエン酸緩衝液(pH7.5)に溶解し、56℃、3分間加熱処理して熱変性物を遠心分離して上清を得る。この上清に終濃度として1.8Mグリシンと2M塩化ナトリウムを添加して沈澱画分より血液凝固第XIII因子を含む溶液を得ることができる。
血液凝固第XIII因子含有溶液における蛋白、即ち第XIII因子の濃度は特に限定されないが、通常0.01〜30.0重量%、好ましくは0.03〜10.0重量%、特に好ましくは、0.05〜3.0重量%である。蛋白溶液のpHは、通常5.0〜10.0、好ましくは6.0〜8.5である。
【0018】
本発明に用いる血液凝固第XIII因子含有画分は加熱処理にウイルス不活化を行ったものが効果的である。加熱処理時に変性あるいは失活した血液凝固第XIII因子は、疎水性担体への吸着が未変性のものと比べて弱く、カラムの溶出条件を適当にすることによって未変性血液凝固第XIII因子のみを取り出すことが可能である。さらに加熱処理時に加えた糖、アミノ酸などの安定化剤を事前に除去することなく、加熱処理した画分をそのまま疎水性担体で処理することが可能である。
【0019】
本発明に用いる疎水性担体は、如何なるものでも利用できるが、例えばブチル基、プロピル基等のアルキル基、フェニル基等のアリル基を有するものが例示される。より好適には、疎水性クロマトグラフィーを用いることが好ましく、例えばフェニルセルロースFF、ブチルセルロファイン(チッソ社製)、オクチルセファロース(ファルマシア社製)、エチルトヨパール(東ソー製)等が用いられる。処理条件としては、前処理として、疎水性担体に対して前処理が行われていることが好ましい。当該前処理としては、通常、緩衝液による処理が例示される。前処理緩衝液としては、具体的にはクエン酸ナトリウム緩衝液、リン酸緩衝液、トリス緩衝液等が例示され、より具体的には前記緩衝液にて0.01〜0.5M、特に好ましくは0.05〜0.2Mの濃度で、pH5〜9、好ましくはpH6〜8にて前もって平衡化された疎水性担体が使用される。血液凝固第XIII因子含有画分は上記の緩衝液にて調製し、平衡化処理した疎水性担体に負荷する。次いで、前記緩衝液にて0.001〜0.2M、特に好ましくは0.01〜0.1Mの濃度でpH5〜9、好ましくはpH6〜8にて洗浄する。
【0020】
その後、塩濃度0.0001〜0.1M、好ましくは0.001〜0.05M、pH5〜9、好ましくはpH6〜8の緩衝液、例えばクエン酸ナトリウム、リン酸緩衝液、トリス緩衝液等で疎水性坦体に吸着した血液凝固第XIII因子を溶出し、回収する。なお、溶出条件は具体的なカラムの種類等の条件に応じて適宜設定することができる。また、本発明の疎水性担体による処理はバッチ法、カラム法のいずれの方法にても行うことができるが、カラム法を用いることが特に好ましい。
【0021】
回収された蛋白質は、必要に応じて、さらに陰イオン交換体処理により活性化補体をさらに除去することが好ましい。かかる精製方法としては、例えばアニオン交換クロマト処理等が例示される。より具体的には、陰イオン交換基を有する不溶性担体であれば如何なるものでも使用できるが、ジエチルアミノエチル基を有する不溶性担体、DEAE−セファロース(ファルマシア製)DEAE−トヨパール(東ソー製)などの弱陰イオン交換体であっても、Q−セファロース(ファルマシア製)、QAE−トヨパール(東ソー製)などの強陰イオン交換体であっても利用できるが、特にジエチルアミノエチル基を有する不溶性担体を用いることが好ましい。
【0022】
カラム法で実施する場合、処理条件としては、前処理として、前記不溶性担体に対して前処理が行われていることが好ましい。当該前処理としては、通常、緩衝液による処理が例示される。前処理緩衝液としては、具体的には食塩水、クエン酸ナトリウム緩衝液、リン酸緩衝液、トリス緩衝液等が例示され、より具体的には前記緩衝液にて0.02〜1M、特に好ましくは0.1〜0.5Mの濃度で、pH5〜9、好ましくは、pH6〜8にて前もって活性化された不溶性担体が使用される。次いで、前記緩衝液にて0.0001〜0.1M、特に好ましくは0.001〜0.01Mの濃度で、pH5〜9、好ましくはpH6〜8にて前もって平衡化された不溶性担体が使用される。次いで、疎水性担体に施された血液凝固第XIII因子含有画分を平衡化処理した不溶性担体に負荷する。次いで、前記緩衝液にて0.0001〜0.1M、特に好ましくは0.001〜0.01Mの濃度で、pH5〜9、好ましくはpH6〜8にて洗浄する。その後、塩濃度0.01〜0.2M、好ましくは0.05〜0.1M、pH5〜9好ましくはpH6〜8の緩衝液、例えば食塩水、クエン酸ナトリウム緩衝液、リン酸緩衝液、トリス緩衝液等で前記不溶性担体に吸着した血液凝固第XIII因子を溶出し、回収する。なお、溶出条件は具体的なカラムの種類等の条件に応じて適宜設定することができる。
【0023】
このようにして処理された血液凝固第XIII因子は、常套手段により製剤化され、血液凝固第XIII因子製剤に調製される。例えば、糖、アミノ酸等の安定化剤を加え、場合によっては界面活性剤を添加して調製した後に、凍結乾燥して、凍結乾燥組成物とすることができる。
また、組織の接着、止血を目的として使用するために、フィブリノーゲン、トロンビン等の成分と混合して生理的接着剤の構成成分として任意に製剤化することも可能である。
【0024】
本発明で除去される活性化補体は、原料血漿に由来するもので、血液採血後の低温保存による補体の活性化(cold activition)によるもの、あるいは血漿より種々の精製工程中に活性化されたものも含めそれ自体では不活性な補体成分の活性成分の活性型のものをいう。活性化補体は食作用促進、アナフィラキシー、白血球遊走、免疫複合体の可溶化、B細胞の活性化などの作用を有するものである。
【0025】
本発明で除去されるアナフィラトキシンとは、ヒト血漿中に存在する血漿タンパク質である補体に由来するもので、その活性型である活性化補体のうち、C3a、C4a、C5aは生物活性が著明で、動物に靜注すると、アナフィラキシー様症状が見られることからアナフィラトキシンと呼ばれており、これらの3つの活性型を示すものである。特に血液凝固第XIII因子製剤にはアナフィラトキシンC3aの夾雑量が多く、前駆体であるC3の除去も重要であり、C3についても疎水性担体処理および/又は陰イオン交換体処理により効率的に除去できることも見出している。中でもC3の分解断片であるC3aが精製された血液凝固第XIII因子の電気泳動による分析で夾雑してくることを見出した。
【0026】
C3は分子量12万のα鎖、7.5万のβ鎖がS−S結合で架橋された構造をとり、C3転換酵素の基質として、C3a(分子量8,000)とC3b(分子量18万)に分解される。この分解されたC3aはポリペプチドでアナフィラトキシンであり、平滑筋収縮作用、血管透過性の亢進、肥満細胞からのヒスタミン放出作用などの局所炎症を強力に助長することが知られている。
【0027】
また、C3aは白血球に対する走化能を持ちアナフィラキシー様反応を引き起こす。この為、本発明はC3および活性型であるC3aを実質的に除去することを目的としている。実質的に活性化補体を含まないとは、血液凝固第XIII因子含有製剤の適用時の溶液状態にした際に、検出される活性化補体の含有量が、正常ヒト血漿における基準値に示される濃度範囲の上限以下であることをいう。実質的にアナフィラトキシンを含まないとは、C3a、C4a、C5aの夾雑量が前記適用時における状態でC3aが200ng/ml以下、C4aが200ng/ml以下、C5aが10ng/ml以下であることを示すものとする。なお、活性化補体C3aの基準値は50〜200ng/ml、C4aの基準値は50〜200ng/ml、C5aの基準値は10ng/ml以下である。アナフィラトキシンC3aを含まないとは、C3aをRIA(2抗体法)による測定方法(Human Coplement C3a des Arg[125I] assay system [kit]、Amersham Pharmacia Biotech社製)により測定した場合に、検出されないか、検出されたとしても、例えば血液凝固第XIII因子製剤の投与時の製剤中濃度として200ng/ml以下であることを意味し、血液凝固第XIII因子含有組成物の血液凝固第XIII因子の活性単位(1倍)あたり、C3aのレベルとして50ng以下、より好ましくは10ng以下、特に好適には5ng以下であることを意味する。血液凝固第XIII因子の活性は、血液凝固試験用標準ヒト血漿(デイドベーリングマールブルグ社製)を標準としてダンシルカタベリン法(Tromb.Res., 36, p123〜131(1984))、クロット溶解法(J. Biol. Chem., 236巻、2625〜2633(1961))などの方法により測定することができる。
【0028】
C4a、C5aの測定は、臨床検査等で用いられる従来公知のいずれの方法も使用できるが、例えばC4a測定キット、C5a測定キット(RIA法:Amerscham社製)などが利用できる。
また、活性化補体の測定は、電気泳動法によっても行うことができ、補体成分の移動度のバンドの有無により、当該活性化補体が実質的に除去されていることを確認することもできる。
さらに安全性を高めるために、ウイルスの除去膜処理と組み合わせることで実質的にウイルスも含め夾雑が危惧される物質を含まない第XIII因子の精製および製剤化が可能となる。
【0029】
【実施例】
以下に実施例および試験例をあげて本発明を具体的に説明する。
実施例1
コーン低温エタノール分画の画分Iを約1Kg採取し、これに5リットルの0.02Mクエン酸緩衝液(pH7.5)を加え、ミキサーにて画分Iを十分に攪拌しながら溶解した。この溶液を遠心分離器により3000g、20℃で15分間遠心分離し上清を得た。この上清に、2.5リットルの1Mクエン酸緩衝液(pH7.5)をゆっくりと添加攪拌し、20℃で1時間放置した。この溶液を再び3000g、10℃で15分間遠心分離して沈殿物を採取した。この沈殿物に3リットルの0.02Mクエン酸緩衝液(pH7.5)を加えて溶解し、56℃、3分間加熱処理を行い、遠心分離器により3000g、20℃で15分間遠心分離して上清を得ることで熱変性物を分離した。
この上清に蔗糖およびグリシンを30%重量および1.5Mとなるように添加し、60℃10時間の加熱処理を行い、以下の工程に使用した。
【0030】
実施例2
実施例1で得たサンプルを0.02Mクエン酸緩衝液(pH7.5)で平衡化した疎水性担体(Phenyl−Cellulofine)グラマトグラフィに負荷し、同平衡化緩衝液にて洗浄し、0.01Mクエン酸緩衝液(pH7.5)で溶出し吸着画分を得た。
【0031】
実施例3
実施例2で得たサンプルを0.02Mクエン酸緩衝液(pH7.5)で平衡化した陰イオン交換体(DEAEセファロースCL−6B;ファルマシア社製)に負荷し、0.1M塩化ナトリウム溶液で溶出した画分1リットルを限外濾過膜を用いて濃縮し、約120倍/mlとなるように第XIII因子の力価を調整した。得られた溶液に塩化ナトリウムを0.1M、アルブミンを0.8%となるように添加した後、0.2μmの平均孔径を有するフィルター(商品名:ミリパック、ミリポア社製)で予備濾過を施した試料15.0mlをデッドエンド法により平均孔径35nmのウイルス除去フィルター(プラノバ35N、0.01m2 旭化成(株)製)で濾過した。試料を濾過した後0.01Mクエン酸緩衝液(0.1mM塩化ナトリウム含有、pH7.5)100mlを通過させ、濾液として得られた溶液と試料の濾液とを混合した。
【0032】
実施例4
実施例3で得た溶液を最終濃度としてブドウ糖0.5重量%、塩化ナトリウム0.85重量%となるように安定化剤を添加した後、4mlを10本のバイアルに充填し、凍結乾燥した後に窒素雰囲気下で密栓を行い血液凝固第XIII因子含有製剤を作成した。
【0033】
試験例1
実施例1、実施例2、実施例3および実施例4で得たサンプルのC3aの含有量および血液凝固第XIII因子の力価を測定し、血液凝固第XIII因子の活性単位あたりのC3aの夾雑量を測定し表1に結果を示した。実施例4で得られたサンプルは注射用水4mlにて溶解して測定を行った。
血液凝固第XIII因子の活性は、血液凝固試験用標準ヒト血漿(デイドベーリングマールブルグ社)を標準としてダンシルカタベリン法(Tromb. Res., 36, 123〜131 (1984) )によって測定し、280nmにおける吸光度A280の値で徐して血液凝固第XIII因子の比活性(活性(倍)/A280)で示した。
C3a量は、血液凝固第XIII因子の単位(1倍)あたりのC3aの量として示す。
C3a残存(%)は、実施例1で夾雑しているC3a量を基準として、以下の工程での残存を百分率で示した。また、前後の減少率は各実施例の処理前のサンプルと処理後のサンプルのC3aの減少率で示した。
C3a量(ng)=(C3a(ng/ml)/血液凝固第XIII因子活性(倍/ml))
【0034】
【表1】
Figure 2004123566
〔表1〕から明らかなように疎水性担体処理および陰イオン交換体処理は、アナフィラトキシンC3aの除去効率が非常に高く、疎水性担体と陰イオン交換体処理の組み合わせにより補体成分が非常に効率的に除去できた。
なお、実施例3の工程におけるウイルス除去膜工程による補体C3aの除去効果はほとんど認められないことを別途確認している。
【0035】
試験例2
C3の除去率を評価する為、疎水性担体処理前後および陰イオン交換体処理前後のC3の値を測定し、それぞれの工程前後での除去率をC3の重量の百分率で示した。
C3は、ラテックス凝集免疫法(坪田ら、医用電子と生体工学22:p267〜273、1984年)にて、LX試薬“栄研”C3、LX−緩衝液(栄研化学社製)を用いて、全自動免疫化学分析装置LX6000(エイアンドディー社製)で測定した。
【0036】
【表2】
Figure 2004123566
〔表2〕より明らかな通り、C3は、疎水性担体処理および陰イオン交換体処理により有意に減少することが示され、疎水性担体処理および陰イオン交換体処理は、C3aの除去に加え、C3aの前駆体であるC3量も有意に低下させることが示された。
これは、これらの処理工程後の工程あるいは生体に投与された後に、製剤に由来したC3よりC3aへの転換量を減少できる可能性があることを示すものである。
【0037】
試験例3
実施例4で作成した凍結乾燥製剤に注射用蒸留水を添加して製剤を調整し、C3aの濃度を測定した。また、市販のA社製の血液凝固第XIII因子製剤を添付の溶解液で溶解して製剤を調製後、同様にC3a濃度を測定した。また、血液凝固第XIII因子の活性単位あたりのC3a量を表3右欄に示した。
上記の測定結果を下記に示す。
【0038】
【表3】
Figure 2004123566
[表3]から明らかな通り、本発明により得られた血液凝固第XIII因子製剤は、アナフィラトキシンC3aの夾雑が非常に低いものを得ることができた。
なお、健常人における血漿中のC3a濃度は、50〜200ng/mlである。
【0039】
試験例4
実施例1で得たサンプルを実施例3の条件で陰イオン交換体処理を行ったところ、加熱処理時の安定化剤の夾雑により、血液凝固第XIII因子が陰イオン交換体に吸着する量が低下し、著しい回収率の低下を認めた。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、ヒト血漿由来の活性化補体として知られている補体成分が夾雑する血液凝固第XIII因子含有画分を疎水性坦体による処理によって補体成分を効率的に除去することができる。この疎水性坦体による処理に続く陰イオン交換体による処理により更に高度にC3aを除去することができる。
また、血液凝固第XIII因子含有画分に夾雑が懸念されるウイルスの加熱処理によるウイルス不活化時に安定化剤として加えられる糖、アミノ酸などを疎水性担体で処理することで事前に限外濾過処理等によりアミノ酸、糖などの安定化剤を除去することなくそのまま適用でき、且つ、熱処理により発生した熱変性血液凝固第XIII因子をも除去でき製造工程の簡便化も達成できる。

Claims (9)

  1. ヒト血漿由来の血液凝固第XIII因子含有画分を疎水性担体により処理する血液凝固第XIII因子含有画分から活性化補体を除去する方法。
  2. 疎水性担体処理後さらに陰イオン交換体による処理を行う請求項1記載の方法。
  3. 血液凝固第XIII因子含有画分がウイルス不活化のために加熱処理されたものである請求項1または2記載の方法。
  4. 活性化補体がアナフィラトキシンである請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. アナフィラトキシンがC3aである請求項4記載の方法。
  6. 活性化補体を実質的に含まないヒト血漿由来の血液凝固第XIII因子製剤。
  7. 活性化補体がアナフィラトキシンである請求項6記載の血液凝固第XIII因子製剤。
  8. アナフィラトキシンがC3aである請求項7記載の血液凝固第XIII因子製剤。
  9. アナフィラトキシンの含量が血液凝固XIII因子の単位数当たり50ng以下である請求項8記載の血液凝固第XIII因子製剤。
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