JP2004122398A - 液体噴射装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】液体流路の数が増えた場合でも樹脂成形により支障なく製造できるヘッドケースを備えた液体噴射装置を提供する。
【解決手段】ヘッドケース20に形成される液体流路22は、液体供給針23の位置からノズル形成面21aに向かって延びる細長の第1の金型40と、第1の金型40の先端が突き当てられる突起状の第2の金型41とを用いた樹脂成形で形成される。第1の金型40の先端部には先細りのテーパ部40aが形成され、液体流路22の下流端部に形成されたテーパ部22aによって所望の流速が確保される。第1の金型40のテーパ部以外の部分40bは、液体流路22が傾斜している場合であっても第1の金型40が撓んで第2の金型41との突き合わせが不能とならないように十分な径を有している。
【選択図】 図2
【解決手段】ヘッドケース20に形成される液体流路22は、液体供給針23の位置からノズル形成面21aに向かって延びる細長の第1の金型40と、第1の金型40の先端が突き当てられる突起状の第2の金型41とを用いた樹脂成形で形成される。第1の金型40の先端部には先細りのテーパ部40aが形成され、液体流路22の下流端部に形成されたテーパ部22aによって所望の流速が確保される。第1の金型40のテーパ部以外の部分40bは、液体流路22が傾斜している場合であっても第1の金型40が撓んで第2の金型41との突き合わせが不能とならないように十分な径を有している。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ノズル開口から液滴を噴射する液体噴射装置に関する。従来の液体噴射装置の代表例としては、画像記録用のインクジェット式記録ヘッドを備えたインクジェット式記録装置がある。その他の液体噴射装置としては、例えば液晶ディスプレー等のカラーフィルタ製造に用いられる色材噴射ヘッドを備えた装置、有機ELディスプレー、FED(面発光ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッドを備えた装置、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドを備えた装置、精密ピペットとしての試料噴射ヘッドを備えた装置等が挙げられる。
【0002】
【従来の技術】
液体噴射装置の代表例であるインクジェット式記録装置は、印刷時の騒音が比較的小さく、しかも小さなドットを高い密度で形成できるため、昨今においてはカラー印刷を含めた多くの印刷に使用されている。
【0003】
このようなインクジェット式記録装置は、一般に、キャリッジに搭載されて記録紙等の記録媒体の幅方向(ヘッド走査方向)に往復移動するインクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)と、記録媒体をヘッド走査方向と直交する方向(媒体送り方向)に移動させる送り手段と、を備えている。
【0004】
このインクジェット式記録装置においては、印刷データに対応して記録ヘッドより記録媒体に対してインク滴(液滴)を吐出させることで印刷が行われる。そして、キャリッジに搭載される記録ヘッドを、例えばブラック、イエロー、シアン、マゼンタの各色のインクの吐出が可能なものとすることにより、ブラックインクによるテキスト印刷ばかりでなく、各インクの吐出割合を変えることにより、フルカラー印刷を可能としている。
【0005】
図4は、記録ヘッドの上部にインクカートリッジを装着する状態を示した断面図である。記録ヘッド50を構成するヘッドケース51の下側面には、記録ヘッド50のノズル形成面52aを含むヘッドプレート52が取り付けられている。このヘッドプレート52には複数のノズル開口53が形成されている。記録ヘッド50の内部には、各ノズル開口53に対応して各圧力室(図示せず)が設けられており、各圧力室に対応して圧電振動子を含むアクチュエータ54が設けられている。
【0006】
そして、ヘッドケース51の内部には、各圧力室に供給されるインクを輸送するための4本のインク流路55が形成されている。ヘッドケース51の上面には、各インク流路55の上流端に連通するようにして各中空針56が立設されている。各中空針56とインク流路55の上流端との間には各フィルタ部材57が介装されている。
【0007】
図4中の最も左側の中空針56にはブラックインクのカートリッジ58が装着され、他の3本の中空針56にはカラーインクカートリッジ59が装着される。カラーインクカートリッジ59には、イエロー、シアン、マゼンタの各インクが個別に収納されており、3本の中空針56が各色に対応している。
【0008】
ヘッドケース51は樹脂成形によって製造され、インク流路55は、図5に示したように細長丸棒状の第1の金型60と、この第1の金型60の先端が突き当てられる突起状の第2の金型61とを使用して形成される。第1の金型60の先端には位置合わせ用の凸部62が形成されており、第2の金型61には凸部62が嵌合される凹部63が形成されている。
【0009】
【特許文献1】
特開2000−141707号公報(図2)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、インクジェット式記録装置における近年の多色化傾向のために、キャリッジに搭載されるインクカートリッジのインクの種類が増加している。そして、図4から分かるように、装着されるカートリッジの数だけインク供給針が必要になり、インク供給針の数だけインク流路が必要となる。
【0011】
このようにインク流路の数が増えると、ヘッドケースの左右端部に近い側に形成されたインク流路は、その流路長が長くなると共に、ノズル形成面に対する角度が小さくなる(即ち、より水平に近くなる)。このため、図5に示した細長丸棒状の第1の金型60の全長が長くなり、ヘッドーケースの樹脂成形において第1の金型60を第2の金型61に突き当てる際に、第1の金型60がその自重によって下方に撓んでしまい、第1の金型60の先端の凸部62が第2の金型61の凹部63に位置決めできない場合があった。このように第1の金型60と第2の金型61とが不整合の状態で型締めを行うとそれらが破損する危険があった。
【0012】
前記の問題を回避するためには、例えば細長丸棒状の第1の金型60の径を太くしてその剛性を高めれば良いが、インク流路において十分なインク流速を確保する必要があるために、インク流路の大径化、即ち第1の金型60の大径化には限界がある。
【0013】
また、前記の如く第1の金型と第2の金型とを突き合わせてインク流路を形成する場合、両金型の突当て部ににバリが発生しやすく、第1の金型の先端に付着したバリが離型時にインク流路を傷つけてしまうという問題もあった。
【0014】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたものであって、その目的とするところは、液体流路の数が増えた場合でも樹脂成形により支障なく製造できるヘッドケースを備えた液体噴射装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明による液体噴射装置は、液滴が噴射されるノズル開口が形成されたノズル形成面を有する液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置であって、前記液体噴射ヘッドは、前記ノズル開口から噴射される液体を前記液体噴射ヘッドの内部に供給するための複数の液体供給針と、前記複数の液体供給針が装着されたヘッドケースと、前記複数の液体供給針を介して供給された液体を前記ノズル形成面の方向に導くために前記複数の液体供給針の各々に対応させて前記ヘッドケースの内部に形成された複数の液体流路と、を備え、前記ヘッドケースは樹脂成形によって製造され、前記複数の液体流路のうちの少なくとも一つは、前記液体供給針の装着位置に隣接する位置から前記ノズル形成面に向かって延びる細長の部分を含む第1の金型と、前記第1の金型の先端が突き当てられる突起状の部分を含む第2の金型とを用いた樹脂成形で形成され、前記第1の金型の先端部には先細りのテーパ部が形成されており、前記第1の金型の前記テーパ部によって前記液体流路の下流端部に形成されたテーパ部によって前記流体流路内で前記液体の所望の流速を確保することが可能となり、前記第1の金型の前記テーパ部以外の部分は、前記液体流路が傾斜している場合であっても前記第1の金型が撓んで前記第2の金型との突き合わせが不能とならないように十分な径を有していることを特徴とする。
【0016】
また、好ましくは、前記第1及び第2の金型によって形成される前記液体流路は、前記ノズル形成面に対する角度が30度以下である。
【0017】
また、好ましくは、前記第1及び第2の金型によって形成される前記液体流路は、前記第1の金型に対応する部分の流路長が20mm以上である。
【0018】
また、好ましくは、前記第1及び第2の金型によって形成される前記液体流路は、前記複数の液体流路のうち前記ヘッドケースの側方端部に最も近い位置にある液体流路である。
【0019】
また、好ましくは、前記複数の液体流路が少なくとも6本形成されている。
【0020】
また、好ましくは、前記複数の液体流路のすべてが前記第1及び第2の金型によって形成される。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による液体噴射装置の一実施形態としてのインクジェット式記録装置について図面を参照して説明する。
【0022】
本実施形態によるインクジェット式記録装置は、複数のノズル開口のそれぞれに連通する各圧力室に対応して設けられた各圧力発生素子により、各圧力室内のインクに圧力変動を生じさせて各ノズル開口からインク滴(液滴)を吐出させるインクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)を備えている。圧力発生素子としては、例えば圧電振動子を用いることができる。
【0023】
図1は、本実施形態によるインクジェット式記録装置の概略構成を示した斜視図である。図1中符号1はキャリッジであり、このキャリッジ1はキャリッジモータ2により駆動されるタイミングベルト3を介して、ガイド部材4に案内されてプラテン5の軸方向に往復移動されるように構成されている。プラテン5は、記録紙6(記録媒体の一種)をその裏面から支持して記録ヘッド12に対する記録紙6の位置を規定する。
【0024】
キャリッジ1、キャリッジモータ2、タイミングベルト3、及びガイド部材4は、インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)12をキャリッジ1と共にヘッド走査方向に走査させるキャリッジ機構を構成している。
【0025】
記録ヘッド12は、キャリッジ1の記録紙6に対向する側に搭載されている。また、キャリッジ1には、記録ヘッド12にインクを供給するインクカートリッジ7が着脱可能に装着されている。インクカートリッジ7には合計6色のインクが収容されている。
【0026】
インクジェット式記録装置の非印刷領域であるホームポジション(図1中、右側)にはキャップ部材13が配置されており、このキャップ部材13はキャリッジ1に搭載された記録ヘッド12がホームポジションに移動した時に、記録ヘッド12のノズル形成面に押し当てられてノズル形成面との間に密閉空間を形成するように構成されている。そして、キャップ部材13の下方には、キャップ部材13により形成された密閉空間に負圧を与えるための吸引ポンプ10が配置されている。
【0027】
キャップ部材13の印刷領域側の近傍には、ゴムなどの弾性板(弾性ブレード)から成るワイピング部材11が記録ヘッド12の移動軌跡に対して例えば水平方向に進退できるように配置されていて、キャリッジ1がキャップ部材13側から印刷領域側に移動するに際して、必要に応じて記録ヘッド12のノズル形成面を払拭することができるように構成されている。
【0028】
本実施形態によるインクジェット式記録装置は、さらに、記録ヘッド12により印刷(記録)が行われる記録紙6をヘッド走査方向に対して直交する媒体送り方向に間欠的に搬送する媒体送り機構を備えている。
【0029】
図2(a)、(b)は、本実施形態によるインクジェット式記録装置の記録ヘッド(液体噴射ヘッド)12を拡大して示した断面図である。
【0030】
図2(a)に示したように記録ヘッド12はヘッドケース20を有し、このヘッドケース20の下側面には、記録ヘッド12のノズル形成面21aを含むヘッドプレート21が取り付けられている。このヘッドプレート21には多数のノズル開口が形成されている。
【0031】
図2(b)に示したようにヘッドプレート21にはアクチュエータユニット25が積層されており、このアクチュエータユニット25には、各ノズル開口に対応して各圧力室が設けられており、各圧力室に対応して圧電振動子を含むアクチュエータが設けられている。また、ヘッドプレート21の外周縁はカバー26によって支持されている。
【0032】
ヘッドケース20の内部には、各圧力室に供給されるインクを輸送するための6本のインク流路22が形成されている。ヘッドケース20の上面には、各インク流路22の上流端に連通するようにして各中空針23が立設されている。各中空針23とインク流路22の上流端との間には各フィルタ部材24が介装されている。
【0033】
そして、本実施形態においては、6本のインク流路22のうちの記録ヘッド左右端側の2本は、図2(b)に示したようにその下流側の端部近傍に先細りのテーパ部22aが形成されている。このテーパ部22aによってインク流路22内の所望の流速が確保される。
【0034】
図2(a)、(b)に示したヘッドケース20は樹脂成形によって製造される。図3は6本のインク流路22のうちの記録ヘッド左右端側の2本を樹脂成形により形成する様子を示しており、インク供給針23の装着位置に隣接する位置からノズル形成面21aに向かって直線上に延びる細長丸棒状の部分を含む第1の金型40と、この第1の金型40の先端が突き当てられる突起状の部分を含む第2の金型41とが使用される。第1の金型40の先端面には位置合わせ用の凸部42が形成されており、第2の金型41には凸部42が嵌合される凹部43が形成されている。
【0035】
そして、本実施形態においては、第1の金型40の先端部に先細りのテーパ部40aが形成されている。この第1の金型40のテーパ部40aによってインク流路22のテーパ部22aが形成される。
【0036】
第1の金型40のテーパ部40a以外の部分40bの直径は、ノズル形成面21aに対するインク流路22の角度が30度以下で且つ第1の金型40に対応する部分のインク流路22の長さが20mm以上であっても、第2の金型41との突き合わせが不能となるような撓みが発生しないように設定されている。ここで、インク流路22における流速はそのテーパ部22aによって確保することができるので、テーパ部22aの部分よりも上流側の部分については従来のインク流路よりも径を大きくすることができる。このため、第1の金型40についても、そのテーパ部40a以外の部分40bについてはその径を従来よりも大きくすることが可能である。
【0037】
以上述べたように本実施形態によるインクジェット式記録装置においては、第1の金型40は前記の如く十分な剛性を備えているので、ヘッドケース20内のインク流路数の増加によって、記録ヘッド左右端側のインク流路22のノズル形成面21aに対する角度が小さくなって例えば30度以下となり且つインク流路22の流路長が長くなって例えば20mm以上になった場合でも、樹脂成型時において第1の金型40が撓んで第2の金型41との突き合わせが不能となるようなことがない。さらに、第1の金型40の先端部にテーパ部40aが形成されていることにより、第1の金型40と第2の金型41との突き合わせ部にバリが発生した場合でも、第1の金型40に付着したバリによって離型時にインク流路が傷つけられるようなことがない。
【0038】
なお、上記実施形態においては記録ヘッド左右端側の2本のインク流路22にのみテーパ部22aを形成するようにしたが、これら以外のインク流路22についても、図3に示した第1の金型40と同様のテーパ部40aを備えた金型を用いて形成することが可能であり、これにより離型時のバリによる損傷を防止することができる。
【0039】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、液体供給針の装着位置に隣接する位置からノズル形成面に向かって直線上に延びる細長の部分を含む第1の金型と、第1の金型の先端が突き当てられる突起状の部分を含む第2の金型とを用いた樹脂成形で液体流路が形成され、第1の金型の先端部には先細りのテーパ部が形成されているので、液体流路における液体の流速は、第1の金型の先端部のテーパ部で形成されたテーパ状の流路部分で確保される。このため、流体流路のテーパ状の流路部分以外の部分を従来よりも太くすること、即ち第1の金型のテーパ部以外の部分を太くすることが可能であり、大径化により第1の金型の剛性を高めることができるので、液体流路の数が増えた場合でも第2の金型との突き合わせの際に第1の金型が撓んで突き合わせ不能となるようなことがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による液体噴射装置の一実施形態としてのインクジェット式記録装置の概略構成を示した斜視図。
【図2】(a)は図1に示したインクジェット式記録装置の記録ヘッドを拡大して示した断面図、(b)は(a)のA部を拡大して示した断面図。
【図3】図2に示した記録ヘッドのヘッドケースのインク流路を形成する様子を示した図。
【図4】従来のインクジェット式記録装置の記録ヘッドの上部にインクカートリッジを装着する状態を示した断面図。
【図5】従来のインクジェット式記録装置の記録ヘッドのヘッドケースのインク流路を形成する様子を示した図。
【符号の説明】
12 記録ヘッド
20 ヘッドケース
21 ノズルプレート
21a ノズル形成面
22 インク流路
22a インク流路のテーパ部
23 インク供給針
40 第1の金型
40a 第1の金型のテーパ部
40b 第1の金型のテーパ部以外の部分
41 第2の金型
【発明の属する技術分野】
本発明は、ノズル開口から液滴を噴射する液体噴射装置に関する。従来の液体噴射装置の代表例としては、画像記録用のインクジェット式記録ヘッドを備えたインクジェット式記録装置がある。その他の液体噴射装置としては、例えば液晶ディスプレー等のカラーフィルタ製造に用いられる色材噴射ヘッドを備えた装置、有機ELディスプレー、FED(面発光ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッドを備えた装置、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドを備えた装置、精密ピペットとしての試料噴射ヘッドを備えた装置等が挙げられる。
【0002】
【従来の技術】
液体噴射装置の代表例であるインクジェット式記録装置は、印刷時の騒音が比較的小さく、しかも小さなドットを高い密度で形成できるため、昨今においてはカラー印刷を含めた多くの印刷に使用されている。
【0003】
このようなインクジェット式記録装置は、一般に、キャリッジに搭載されて記録紙等の記録媒体の幅方向(ヘッド走査方向)に往復移動するインクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)と、記録媒体をヘッド走査方向と直交する方向(媒体送り方向)に移動させる送り手段と、を備えている。
【0004】
このインクジェット式記録装置においては、印刷データに対応して記録ヘッドより記録媒体に対してインク滴(液滴)を吐出させることで印刷が行われる。そして、キャリッジに搭載される記録ヘッドを、例えばブラック、イエロー、シアン、マゼンタの各色のインクの吐出が可能なものとすることにより、ブラックインクによるテキスト印刷ばかりでなく、各インクの吐出割合を変えることにより、フルカラー印刷を可能としている。
【0005】
図4は、記録ヘッドの上部にインクカートリッジを装着する状態を示した断面図である。記録ヘッド50を構成するヘッドケース51の下側面には、記録ヘッド50のノズル形成面52aを含むヘッドプレート52が取り付けられている。このヘッドプレート52には複数のノズル開口53が形成されている。記録ヘッド50の内部には、各ノズル開口53に対応して各圧力室(図示せず)が設けられており、各圧力室に対応して圧電振動子を含むアクチュエータ54が設けられている。
【0006】
そして、ヘッドケース51の内部には、各圧力室に供給されるインクを輸送するための4本のインク流路55が形成されている。ヘッドケース51の上面には、各インク流路55の上流端に連通するようにして各中空針56が立設されている。各中空針56とインク流路55の上流端との間には各フィルタ部材57が介装されている。
【0007】
図4中の最も左側の中空針56にはブラックインクのカートリッジ58が装着され、他の3本の中空針56にはカラーインクカートリッジ59が装着される。カラーインクカートリッジ59には、イエロー、シアン、マゼンタの各インクが個別に収納されており、3本の中空針56が各色に対応している。
【0008】
ヘッドケース51は樹脂成形によって製造され、インク流路55は、図5に示したように細長丸棒状の第1の金型60と、この第1の金型60の先端が突き当てられる突起状の第2の金型61とを使用して形成される。第1の金型60の先端には位置合わせ用の凸部62が形成されており、第2の金型61には凸部62が嵌合される凹部63が形成されている。
【0009】
【特許文献1】
特開2000−141707号公報(図2)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、インクジェット式記録装置における近年の多色化傾向のために、キャリッジに搭載されるインクカートリッジのインクの種類が増加している。そして、図4から分かるように、装着されるカートリッジの数だけインク供給針が必要になり、インク供給針の数だけインク流路が必要となる。
【0011】
このようにインク流路の数が増えると、ヘッドケースの左右端部に近い側に形成されたインク流路は、その流路長が長くなると共に、ノズル形成面に対する角度が小さくなる(即ち、より水平に近くなる)。このため、図5に示した細長丸棒状の第1の金型60の全長が長くなり、ヘッドーケースの樹脂成形において第1の金型60を第2の金型61に突き当てる際に、第1の金型60がその自重によって下方に撓んでしまい、第1の金型60の先端の凸部62が第2の金型61の凹部63に位置決めできない場合があった。このように第1の金型60と第2の金型61とが不整合の状態で型締めを行うとそれらが破損する危険があった。
【0012】
前記の問題を回避するためには、例えば細長丸棒状の第1の金型60の径を太くしてその剛性を高めれば良いが、インク流路において十分なインク流速を確保する必要があるために、インク流路の大径化、即ち第1の金型60の大径化には限界がある。
【0013】
また、前記の如く第1の金型と第2の金型とを突き合わせてインク流路を形成する場合、両金型の突当て部ににバリが発生しやすく、第1の金型の先端に付着したバリが離型時にインク流路を傷つけてしまうという問題もあった。
【0014】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたものであって、その目的とするところは、液体流路の数が増えた場合でも樹脂成形により支障なく製造できるヘッドケースを備えた液体噴射装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明による液体噴射装置は、液滴が噴射されるノズル開口が形成されたノズル形成面を有する液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置であって、前記液体噴射ヘッドは、前記ノズル開口から噴射される液体を前記液体噴射ヘッドの内部に供給するための複数の液体供給針と、前記複数の液体供給針が装着されたヘッドケースと、前記複数の液体供給針を介して供給された液体を前記ノズル形成面の方向に導くために前記複数の液体供給針の各々に対応させて前記ヘッドケースの内部に形成された複数の液体流路と、を備え、前記ヘッドケースは樹脂成形によって製造され、前記複数の液体流路のうちの少なくとも一つは、前記液体供給針の装着位置に隣接する位置から前記ノズル形成面に向かって延びる細長の部分を含む第1の金型と、前記第1の金型の先端が突き当てられる突起状の部分を含む第2の金型とを用いた樹脂成形で形成され、前記第1の金型の先端部には先細りのテーパ部が形成されており、前記第1の金型の前記テーパ部によって前記液体流路の下流端部に形成されたテーパ部によって前記流体流路内で前記液体の所望の流速を確保することが可能となり、前記第1の金型の前記テーパ部以外の部分は、前記液体流路が傾斜している場合であっても前記第1の金型が撓んで前記第2の金型との突き合わせが不能とならないように十分な径を有していることを特徴とする。
【0016】
また、好ましくは、前記第1及び第2の金型によって形成される前記液体流路は、前記ノズル形成面に対する角度が30度以下である。
【0017】
また、好ましくは、前記第1及び第2の金型によって形成される前記液体流路は、前記第1の金型に対応する部分の流路長が20mm以上である。
【0018】
また、好ましくは、前記第1及び第2の金型によって形成される前記液体流路は、前記複数の液体流路のうち前記ヘッドケースの側方端部に最も近い位置にある液体流路である。
【0019】
また、好ましくは、前記複数の液体流路が少なくとも6本形成されている。
【0020】
また、好ましくは、前記複数の液体流路のすべてが前記第1及び第2の金型によって形成される。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による液体噴射装置の一実施形態としてのインクジェット式記録装置について図面を参照して説明する。
【0022】
本実施形態によるインクジェット式記録装置は、複数のノズル開口のそれぞれに連通する各圧力室に対応して設けられた各圧力発生素子により、各圧力室内のインクに圧力変動を生じさせて各ノズル開口からインク滴(液滴)を吐出させるインクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)を備えている。圧力発生素子としては、例えば圧電振動子を用いることができる。
【0023】
図1は、本実施形態によるインクジェット式記録装置の概略構成を示した斜視図である。図1中符号1はキャリッジであり、このキャリッジ1はキャリッジモータ2により駆動されるタイミングベルト3を介して、ガイド部材4に案内されてプラテン5の軸方向に往復移動されるように構成されている。プラテン5は、記録紙6(記録媒体の一種)をその裏面から支持して記録ヘッド12に対する記録紙6の位置を規定する。
【0024】
キャリッジ1、キャリッジモータ2、タイミングベルト3、及びガイド部材4は、インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)12をキャリッジ1と共にヘッド走査方向に走査させるキャリッジ機構を構成している。
【0025】
記録ヘッド12は、キャリッジ1の記録紙6に対向する側に搭載されている。また、キャリッジ1には、記録ヘッド12にインクを供給するインクカートリッジ7が着脱可能に装着されている。インクカートリッジ7には合計6色のインクが収容されている。
【0026】
インクジェット式記録装置の非印刷領域であるホームポジション(図1中、右側)にはキャップ部材13が配置されており、このキャップ部材13はキャリッジ1に搭載された記録ヘッド12がホームポジションに移動した時に、記録ヘッド12のノズル形成面に押し当てられてノズル形成面との間に密閉空間を形成するように構成されている。そして、キャップ部材13の下方には、キャップ部材13により形成された密閉空間に負圧を与えるための吸引ポンプ10が配置されている。
【0027】
キャップ部材13の印刷領域側の近傍には、ゴムなどの弾性板(弾性ブレード)から成るワイピング部材11が記録ヘッド12の移動軌跡に対して例えば水平方向に進退できるように配置されていて、キャリッジ1がキャップ部材13側から印刷領域側に移動するに際して、必要に応じて記録ヘッド12のノズル形成面を払拭することができるように構成されている。
【0028】
本実施形態によるインクジェット式記録装置は、さらに、記録ヘッド12により印刷(記録)が行われる記録紙6をヘッド走査方向に対して直交する媒体送り方向に間欠的に搬送する媒体送り機構を備えている。
【0029】
図2(a)、(b)は、本実施形態によるインクジェット式記録装置の記録ヘッド(液体噴射ヘッド)12を拡大して示した断面図である。
【0030】
図2(a)に示したように記録ヘッド12はヘッドケース20を有し、このヘッドケース20の下側面には、記録ヘッド12のノズル形成面21aを含むヘッドプレート21が取り付けられている。このヘッドプレート21には多数のノズル開口が形成されている。
【0031】
図2(b)に示したようにヘッドプレート21にはアクチュエータユニット25が積層されており、このアクチュエータユニット25には、各ノズル開口に対応して各圧力室が設けられており、各圧力室に対応して圧電振動子を含むアクチュエータが設けられている。また、ヘッドプレート21の外周縁はカバー26によって支持されている。
【0032】
ヘッドケース20の内部には、各圧力室に供給されるインクを輸送するための6本のインク流路22が形成されている。ヘッドケース20の上面には、各インク流路22の上流端に連通するようにして各中空針23が立設されている。各中空針23とインク流路22の上流端との間には各フィルタ部材24が介装されている。
【0033】
そして、本実施形態においては、6本のインク流路22のうちの記録ヘッド左右端側の2本は、図2(b)に示したようにその下流側の端部近傍に先細りのテーパ部22aが形成されている。このテーパ部22aによってインク流路22内の所望の流速が確保される。
【0034】
図2(a)、(b)に示したヘッドケース20は樹脂成形によって製造される。図3は6本のインク流路22のうちの記録ヘッド左右端側の2本を樹脂成形により形成する様子を示しており、インク供給針23の装着位置に隣接する位置からノズル形成面21aに向かって直線上に延びる細長丸棒状の部分を含む第1の金型40と、この第1の金型40の先端が突き当てられる突起状の部分を含む第2の金型41とが使用される。第1の金型40の先端面には位置合わせ用の凸部42が形成されており、第2の金型41には凸部42が嵌合される凹部43が形成されている。
【0035】
そして、本実施形態においては、第1の金型40の先端部に先細りのテーパ部40aが形成されている。この第1の金型40のテーパ部40aによってインク流路22のテーパ部22aが形成される。
【0036】
第1の金型40のテーパ部40a以外の部分40bの直径は、ノズル形成面21aに対するインク流路22の角度が30度以下で且つ第1の金型40に対応する部分のインク流路22の長さが20mm以上であっても、第2の金型41との突き合わせが不能となるような撓みが発生しないように設定されている。ここで、インク流路22における流速はそのテーパ部22aによって確保することができるので、テーパ部22aの部分よりも上流側の部分については従来のインク流路よりも径を大きくすることができる。このため、第1の金型40についても、そのテーパ部40a以外の部分40bについてはその径を従来よりも大きくすることが可能である。
【0037】
以上述べたように本実施形態によるインクジェット式記録装置においては、第1の金型40は前記の如く十分な剛性を備えているので、ヘッドケース20内のインク流路数の増加によって、記録ヘッド左右端側のインク流路22のノズル形成面21aに対する角度が小さくなって例えば30度以下となり且つインク流路22の流路長が長くなって例えば20mm以上になった場合でも、樹脂成型時において第1の金型40が撓んで第2の金型41との突き合わせが不能となるようなことがない。さらに、第1の金型40の先端部にテーパ部40aが形成されていることにより、第1の金型40と第2の金型41との突き合わせ部にバリが発生した場合でも、第1の金型40に付着したバリによって離型時にインク流路が傷つけられるようなことがない。
【0038】
なお、上記実施形態においては記録ヘッド左右端側の2本のインク流路22にのみテーパ部22aを形成するようにしたが、これら以外のインク流路22についても、図3に示した第1の金型40と同様のテーパ部40aを備えた金型を用いて形成することが可能であり、これにより離型時のバリによる損傷を防止することができる。
【0039】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、液体供給針の装着位置に隣接する位置からノズル形成面に向かって直線上に延びる細長の部分を含む第1の金型と、第1の金型の先端が突き当てられる突起状の部分を含む第2の金型とを用いた樹脂成形で液体流路が形成され、第1の金型の先端部には先細りのテーパ部が形成されているので、液体流路における液体の流速は、第1の金型の先端部のテーパ部で形成されたテーパ状の流路部分で確保される。このため、流体流路のテーパ状の流路部分以外の部分を従来よりも太くすること、即ち第1の金型のテーパ部以外の部分を太くすることが可能であり、大径化により第1の金型の剛性を高めることができるので、液体流路の数が増えた場合でも第2の金型との突き合わせの際に第1の金型が撓んで突き合わせ不能となるようなことがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による液体噴射装置の一実施形態としてのインクジェット式記録装置の概略構成を示した斜視図。
【図2】(a)は図1に示したインクジェット式記録装置の記録ヘッドを拡大して示した断面図、(b)は(a)のA部を拡大して示した断面図。
【図3】図2に示した記録ヘッドのヘッドケースのインク流路を形成する様子を示した図。
【図4】従来のインクジェット式記録装置の記録ヘッドの上部にインクカートリッジを装着する状態を示した断面図。
【図5】従来のインクジェット式記録装置の記録ヘッドのヘッドケースのインク流路を形成する様子を示した図。
【符号の説明】
12 記録ヘッド
20 ヘッドケース
21 ノズルプレート
21a ノズル形成面
22 インク流路
22a インク流路のテーパ部
23 インク供給針
40 第1の金型
40a 第1の金型のテーパ部
40b 第1の金型のテーパ部以外の部分
41 第2の金型
Claims (6)
- 液滴が噴射されるノズル開口が形成されたノズル形成面を有する液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置であって、
前記液体噴射ヘッドは、前記ノズル開口から噴射される液体を前記液体噴射ヘッドの内部に供給するための複数の液体供給針と、前記複数の液体供給針が装着されたヘッドケースと、前記複数の液体供給針を介して供給された液体を前記ノズル形成面の方向に導くために前記複数の液体供給針の各々に対応させて前記ヘッドケースの内部に形成された複数の液体流路と、を備え、
前記ヘッドケースは樹脂成形によって製造され、前記複数の液体流路のうちの少なくとも一つは、前記液体供給針の装着位置に隣接する位置から前記ノズル形成面に向かって延びる細長の部分を含む第1の金型と、前記第1の金型の先端が突き当てられる突起状の部分を含む第2の金型とを用いた樹脂成形で形成され、前記第1の金型の先端部には先細りのテーパ部が形成されており、前記第1の金型の前記テーパ部によって前記液体流路の下流端部に形成されたテーパ部によって前記流体流路内で前記液体の所望の流速を確保することが可能となり、
前記第1の金型の前記テーパ部以外の部分は、前記液体流路が傾斜している場合であっても前記第1の金型が撓んで前記第2の金型との突き合わせが不能とならないように十分な径を有していることを特徴とする液体噴射装置。 - 前記第1及び第2の金型によって形成される前記液体流路は、前記ノズル形成面に対する角度が30度以下であることを特徴とする請求項1記載の液体噴射装置。
- 前記第1及び第2の金型によって形成される前記液体流路は、前記第1の金型に対応する部分の流路長が20mm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体噴射装置。
- 前記第1及び第2の金型によって形成される前記液体流路は、前記複数の液体流路のうち前記ヘッドケースの側方端部に最も近い位置にある液体流路であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液体噴射装置。
- 前記複数の液体流路が少なくとも6本形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の液体噴射装置。
- 前記複数の液体流路のすべてが前記第1及び第2の金型によって形成されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の液体噴射装置。
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-
2002
- 2002-09-30 JP JP2002286219A patent/JP2004122398A/ja active Pending
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