JP2004120865A - ハイブリッド車両の走行駆動制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】エンジン1、及び、そのエンジン1と直結されて力行及び回生作動する電動モータ2が備えられ、バッテリー4の充電状態が設定充電状態よりも低い場合には、エンジン1のトルクから電動モータ2の回生トルクを減算した差分値が、アクセル操作量が大になるほど大になる傾向を維持するように、且つ、アクセル操作量が大になるほど電動モータ2の回生トルクが大になるように、電動モータ2の回生作動を制御するよう構成されている。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジン、及び、そのエンジンと一体回転するように直結されて力行及び回生作動する電動モータが備えられ、アクセル操作量の検出情報並びにバッテリーの充電状態の検出情報に基づいて前記エンジン及び前記電動モータの作動を制御する制御手段が備えられているハイブリッド車両の走行駆動制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
このようなハイブリッド車両は、減速走行時等において電動モータが回生作動を実行することにより回生作動にて得られた電力をバッテリーに充電させ、そして、バッテリーの電力を用いて電動モータを力行作動させてエンジンの動力を補助することにより、所望の走行駆動力を得られるようにしながらエンジンの燃料消費量を低減させることができるようにしたものである。そして、バッテリーの充電状態が低くなった場合には、エンジンの動力により電動モータを回生作動させることでバッテリーを充電させる構成となっている。又、このようなハイブリッド車両では、通常のエンジン制御として、アクセル操作量が大になるほど大になるように走行に必要なトルク又は出力が設定されて、その設定されたトルク又は出力が得られるようにアクセル操作量の検出情報に基づいてエンジンを制御するようになっている。
【0003】
そして、従来では、バッテリーの充電状態が所定下限値より低く充電量が少ない状態であれば、アクセル操作量の情報に基づいて求められた走行に必要な出力としての走行パワーに、バッテリーを充電するための出力としての一定量の充電用パワーを加えた値をエンジンパワーとして設定して、そのエンジンパワーが得られるようにエンジンを制御するとともに、充電用パワーにて回生作動させるように電動モータを制御して、エンジンの動力により電動モータを回生作動させるようにしたものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−299004号公報(第3頁、図3)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来構成においては、アクセル操作量の情報に基づいて求められた走行に必要な出力(走行パワー)と、バッテリーを充電するための出力(充電用パワー)とを加えた出力が得られるようにエンジンを制御するものであり、バッテリーの充電状態が低くなったときのエンジンの制御が複雑になる不利がある。
【0006】
しかも、上記従来構成では、エンジンの動作状態にかかわらず前記充電用パワーは常に一定であるから、例えば、充分大きな充電量を得られるように前記充電用パワーを大きめに設定すると、アイドリング状態からアクセル操作具が踏み込み操作された直後のようにエンジンの出力が未だ小さいとき等において走行用パワーが不足して車体の加速が良好に行えないものとなる。そこで、前記充電用パワーを小さめの値に設定しておくと、電動モータによる回生量が充分でなくバッテリーの充電状態が非常に低くなっている場合にはバッテリーの充電状態を速やかに回復させることが難しいものとなる。
【0007】
本発明はかかる点に着目してなされたものであり、その目的は、バッテリーの充電状態が低くなっている状態において、車体の加速を良好に行え、且つ、バッテリーの充電状態を速やかに回復させることが可能となるハイブリッド車両の走行駆動制御装置を提供する点にある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載のハイブリッド車両の走行駆動制御装置は、エンジン、及び、そのエンジンと一体回転するように直結されて力行及び回生作動する電動モータが備えられ、アクセル操作量の検出情報並びにバッテリーの充電状態の検出情報に基づいて前記エンジン及び前記電動モータの作動を制御する制御手段が備えられているものであって、前記制御手段が、前記バッテリーの充電状態が設定充電状態よりも低い場合には、前記電動モータを回生作動させると共に、前記エンジンのトルクから前記電動モータの回生トルクを減算した差分値が、前記アクセル操作量が大になるほど大になる傾向を維持するように、且つ、前記アクセル操作量が大になるほど前記電動モータの回生トルクが大になるように、前記電動モータの回生作動を制御するよう構成されていることを特徴とする。
【0009】
すなわち、バッテリーの充電状態が設定充電状態よりも低い場合には、電動モータを回生作動させるのであるが、そのとき次のような条件を満足するように作動が制御されることになる。
つまり、エンジンのトルクから電動モータの回生トルクを減算した差分値が、アクセル操作量が大になるほど大になる状態で変化するとともに、電動モータの回生トルクも同様に、アクセル操作量が大になるほど大になる状態で変化するように、電動モータの回生作動の制御が行われる。つまり、前記差分値及び前記回生トルクの夫々が共にアクセル操作量が大になるほど大になる状態で変化することになる。
尚、前記差分値というのは、エンジンのトルクから電動モータの回生トルクを減算した値であり、エンジンのトルクのうち車体走行用の動力として利用されるトルクである。
【0010】
このように、アクセル操作量が大になるほど前記差分値が大になる状態で変化するので、言い換えると、アクセル操作量が大きくなるほどエンジンのトルクのうち車体走行用の動力として利用されるトルクが増加していくことになるので、アクセル操作に伴う車体の加速状態が悪くなることはなく、アクセル操作に伴う車体の加速が良好に行えるものとなる。又、アクセル操作量が大きくなるほど電動モータの回生トルクも増加していくから、言い換えると、アクセル操作量が大きいと回生トルクも大きく電動モータによる回生作動によって発生する電力も大になっていくから、バッテリーに対する充電量を大にして充電を迅速に行うことが可能となる。
【0011】
従って、バッテリーの充電状態が低くなっている状態において、車体の加速を良好に行え、且つ、バッテリーの充電状態を速やかに回復させることが可能となるハイブリッド車両の走行駆動制御装置を提供できるに至った。
【0012】
請求項2に記載のハイブリッド車両の走行駆動制御装置は、請求項1において、アクセル操作量が大きい領域において、前記制御手段が、前記アクセル操作量の増加に対する前記エンジントルクの増加量が小さくなるように、又は、前記アクセル操作量が大になるほど前記エンジントルクが減少するように、前記エンジンの作動を制御すると共に、前記エンジンのトルクから前記電動モータの回生トルクを減算した差分値が、前記アクセル操作量が大になるほど大になる傾向を維持するように、又は、前記アクセル操作量の増加にかかわらず一定となるように、前記電動モータの回生作動を制御するよう構成されていることを特徴とする。
【0013】
すなわち、アクセル操作量が大きい領域においては、アクセル操作量の増加に対するエンジントルクの増加量が小さくなるように、又は、アクセル操作量が大になるほどエンジントルクが減少するように、エンジンの作動が制御されるが、このような領域においては、エンジンのトルクから電動モータの回生トルクを減算した差分値が、アクセル操作量が大になるほど大になる状態で変化するか、又は、アクセル操作量の増加にかかわらず一定となるように、電動モータの回生作動が制御されるので、アクセル操作量の増加に伴って前記差分値が減少することがない。尚、アクセル操作量が小さい領域においては、アクセル操作量が大になるほどエンジントルクを増加させていくことになり、又、アクセル操作量が大になるほど前記差分値が大になる傾向を維持するように電動モータの回生作動が制御されるので、アクセル操作に伴う車体の加速を良好に行えるようにすることができる。
【0014】
従って、アクセル操作量が小さい領域だけでなく、アクセル操作量が大きい領域においても、アクセル操作量が大になるほどエンジンのトルクのうち車体走行用の動力として利用されるトルクが減少することがないので、アクセル操作量が大になるほど走行用のトルクが減少することに起因して操縦者が違和感を感じるという不都合を回避しながら電動モータによる回生作動を行うことができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るハイブリッド車両について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、ハイブリッド車両は、走行駆動用のエンジン1の出力軸1aに直結される状態で走行駆動用の電動モータ2を備えて、エンジン1及び電動モータ2の動力により走行装置としての左右の車輪3を駆動して走行するように駆動手段としての駆動ユニットKUが構成されている。前記電動モータ2は、エンジン1の出力軸1aにロータ2aが同一軸芯で一体回動するように連結され、そのロータ2aの外周部を囲うステータ2bが位置固定状態で図示しない車体支持部に支持される構成となっている。
【0016】
そして、この電動モータ2は、エンジン1の作動が停止している状態においてその出力軸1aに対して駆動力を与えてエンジン1を始動させるように構成され、且つ、エンジン1が始動した後は、出力軸1aに対してエンジン回転方向と同方向の駆動力を与えてトルクアシストを行う力行状態と、前記出力軸1aから駆動力が与えられて発電する回生状態とに切り換え可能に構成されている。つまり、電動モータ2が、エンジン1にて回転駆動される出力軸1aに対してその回転方向と同一方向にトルクを出力させる、いわゆる力行状態に切り換えることで、所望の走行駆動力を出力しながらエンジン1の燃料消費を低減できるように、エンジン1の出力に対する動力の補助つまりトルクアシストを行うことができる構成となっている。この作動状態が力行作動に対応する。又、バッテリー4の充電状態が低下しているときは、電動モータ2が回生状態となって回生トルクを生じさせて発電を行って回生電力をバッテリー4に充電することができる構成となっている。この作動状態が回生作動に対応する。
【0017】
前記駆動ユニットKUの動力は、トルクコンバータ5を介してトランスミッション6に伝えられ、このトランスミッション6内部のギア式の自動変速機構により変速された後に差動機構7を介して左右の車輪3に伝えられる構成となっている。
【0018】
次に、このハイブリッド車両における走行駆動用の制御構成について説明する。
図1及び図2に示すように、車両全体の動作を統括して管理する車両制御部8、この車両制御部8からの制御情報に基づいて電動モータ2の動作を制御するモータ制御部9、車両制御部8からの制御情報に基づいてエンジン1の出力、具体的には、電子スロットル弁10のスロットル開度及びインジェクタ11による燃料噴射量を自動調節するエンジン制御部12夫々が備えられ、アクセル操作具13の操作量を検出するポテンショメータ式のアクセル操作量検出センサS1、ブレーキ操作具14が踏み込み操作されているか否かを検出するスイッチ式のブレーキ操作検出センサS2、電動モータ2の回転速度を検出する回転速度検出手段としての回転速度センサS3、車輪3の車軸の回転速度に基づいて車速を検出する車速センサS4、シフトポジションレバー17の位置を検出するシフトポジションセンサS5、バッテリー4の充電状態SOCを検出する充電状態検出部S6等による各種の検出情報が車両制御部8に入力される構成となっている。前記電動モータ2並びに前記各制御部8、9、12に対する駆動電力はバッテリー4から供給され、このバッテリー4は回生作動により電動モータ2より得られる電力によって充電される構成となっている。
【0019】
前記モータ制御部9の構成について説明すると、図3に示すように、このモータ制御部9は、バッテリー4から供給される直流電力を三相交流電力に変換して電動モータ2に供給する駆動用電力を制御したり、回生作動により電動モータにて発生してバッテリー4に供給される回生電力を制御するインバータ28と、車両制御部8からの制御情報に基づいてパルス幅変調(PWM)されたパルス駆動信号をインバータ28における各スイッチングトランジスタの各ベース端子に供給するPWM制御回路29等を備えて構成され、電動モータ2に通流する電流の大きさや交流電流の周波数を変更させることにより、アシスト用の駆動トルクや回転速度を調整したり、回生作動における回生トルクを調整することができる構成となっている。
【0020】
前記ブレーキ操作具14により機械式制動手段KSを作動させて機械的な制動力を発生させるための構成について説明を加えると、運転者の足踏み操作にてブレーキ操作具14が操作されると、その足踏み操作力に対応させて制動用の油圧操作力を発生させる周知構成のマスターシリンダ15が備えられ、このマスターシリンダ15から作動油供給路15aを通して出力される油圧操作力にて前記車輪3の近傍に設けられた摩擦式の制動装置16を作動させて車体を制動させる構成となっている。このような機械式制動手段KSは、ブレーキ操作具14に対する運転者の操作力が大きくなるほど、その油圧操作力、すなわち、機械的な制動力が大となるように変更調節自在に構成されている。
【0021】
前記シフトポジションレバー17の位置としては、「P」(駐車位置)、「R」(後進走行位置)、「N」(中立位置)、「D」(前進走行位置)があり、運転者により運転状況に応じて適宜切り換え操作されることになる。
【0022】
前記車両制御部8は、シフトポジションセンサS5の検出情報、アクセル操作量検出センサS1の検出情報、車速センサS4の検出情報、充電状態検出部S6によるバッテリー4の充電量情報等の情報に基づいてエンジン1及び電動モータ2の作動を制御すべく、モータ制御部9およびエンジン制御部12に制御情報を指令するようになっている。従って、車両制御部8、モータ制御部9、および、エンジン制御部12の夫々により、エンジン1及び電動モータ2の作動を制御する制御手段Hが構成されており、この制御手段Hは、バッテリー4の充電状態が設定充電状態よりも低い場合には、少なくともアクセル操作量が設定量以下の領域において、そのアクセル操作量が大になるほどエンジン1のトルクが大になるようにエンジン1の作動を制御し、且つ、アクセル操作量が大になるほどエンジン1のトルクが大になる領域においては、エンジン1のトルクから電動モータ2の回生トルクを減算した差分値が、アクセル操作量が大になるほど大になる傾向を維持するように、且つ、アクセル操作量が大になるほど電動モータ2の回生トルクが大になるように、電動モータ2の回生作動を制御するよう構成されている。
【0023】
以下、各部の具体的な動作について説明する。
先ず、車両制御部8によるエンジン1及び電動モータ2の制御について説明する。例えば、シフトポジションレバー17が、「P」(駐車位置)や「N」(中立位置)にあるときは、基本的にはエンジン1を停止し電動モータ2によるトルクアシストや回生作動は行わない。しかし、バッテリー4の充電状態が設定量以下にまで低下してバッテリー4を充電する必要があるような場合には、車両制御部8は、エンジン1を作動させてエンジン1の動力を電動モータ2の回生作動により発電した電力をバッテリー4に充電するように、エンジン1及び電動モータ2の作動を制御すべく、モータ制御部9およびエンジン制御部12に制御情報を指令するよう構成されている。
【0024】
又、シフトポジションレバー17が「D」(前進走行位置)に操作されている場合には、アクセル操作具13が踏み込み操作されて車体を発進させるときは、そのときエンジン1が停止していれば電動モータ2を回転させてエンジン1を始動させ、車体が前進走行すると、アクセル操作量に応じてエンジン1の出力を調整するとともに、後述するように電動モータ2が力行作動や回生作動を実行するように、モータ制御部9およびエンジン制御部12に制御情報を指令するよう構成されている。そして、シフトポジションレバー17が「R」(後進走行位置)に操作されている場合には、アクセル操作量に応じてエンジン1の出力を調整するが、電動モータ2の力行作動及び回生作動はいずれも行わないようになっている。
【0025】
次に、エンジン1の制御構成について説明する。
シフトポジションレバー17が「D」(前進走行位置)に操作されている場合におけるアクセル操作量に対するエンジン1のトルクの変化特性が図4のラインP1に示すように予め設定されており、車両制御部8は、前記変化特性に対応させてトルクを出力するように、アクセル操作量検出センサS1の検出情報に基づいて指令情報を求めて、エンジン制御部12に指令するように構成され、エンジン制御部12はその指令情報に基づいて、電子スロットル弁10のスロットル開度及びインジェクタ11による燃料噴射量を自動調節することで、エンジン1の作動を制御する構成となっている。
説明を加えると、前記エンジン1のトルクの変化特性は、アクセル操作量が設定量X以下の領域においてはアクセル操作量が増加するに伴ってエンジン1のトルクが大になるように、且つ、アクセル操作量が大きい領域、すなわち、アクセル操作量が前記設定量Xよりも大きい領域においては、アクセル操作量の増加に対するエンジン1のトルクの増加量が小さくなるように設定されている。
尚、エンジンのトルク調整においては、アクセル操作量検出センサS1の検出情報だけではなく車速の情報等も加味されることになるが、アクセル操作量に対応して図4に示すように変化する傾向となる。
【0026】
次に、電動モータ2の制御構成について説明する。
車両制御部8は、バッテリー4の充電状態SOCが設定充電状態よりも高い場合には、アクセル操作量が大になるほど大になる状態で電動モータ2がアシストトルクを出力するように電動モータ2の力行作動を制御するように、モータ制御部9に制御情報を指令するよう構成されている。又、バッテリー4の充電状態SOCが設定充電状態よりも低い場合には、アクセル操作量が大になるほどエンジンのトルクが大になる領域においては、エンジン1のトルクから電動モータ2の回生トルクを減算した差分値が、アクセル操作量が大になるほど大になる傾向を維持するように、且つ、アクセル操作量が大になるほど電動モータ2の回生トルクが大になるように電動モータ2の回生作動を制御すべくモータ制御部9に制御情報を指令するよう構成されている。
【0027】
更に、車両制御部8は、アクセル操作量が大きい領域、つまり、アクセル操作量の増加に対するエンジン1のトルクの増加量が小さくなるように設定されている領域においては、エンジン1のトルクから電動モータ2の回生トルクを減算した差分値が、アクセル操作量が大になるほど大になる傾向を維持するように電動モータ2の回生作動を制御すべくモータ制御部9に制御情報を指令するよう構成されている。
【0028】
そして、力行作動および回生作動を実行する場合には、電動モータ2の目標トルクTmを求めて、その求めた目標トルクTmを発生させるように電動モータ2の作動を制御することにより行われる。
すなわち、電動モータ2の回転速度の変化に対する電動モータ2の目標トルクの変化特性が図5に示すような特性として予め設定されており、前記車両制御部8がこの特性に基づいて電動モータ2の目標トルクを求める構成となっている。図5に示されるラインq1は、バッテリー4の充電状態SOCが高い場合におけるアクセル操作量が最大(全開)になったとき(以下、フルアクセル状態という)に対応する回転速度の変化に対する目標トルクの変化を示している。又、ラインq2はアクセル操作量が最小(全閉)になったとき(以下、アクセルオフ状態という)の値に対応する目標トルクの変化を示している。そして、ラインq3は、バッテリー4の充電状態SOCが低い状態であるときにおけるフルアクセル状態に対応する回転速度の変化に対する目標トルクの変化を示している。
【0029】
又、図7に示すように、バッテリー4の充電状態SOCの変化に対してモータトルクを制限するためのモータトルク制限率が予め設定されている。図7のラインr1は、フルアクセル状態に対応する電動モータ2の目標トルクの制限率を示している。つまり、バッテリー4の充電状態SOCが設定充電状態としての下部側閾値A0よりも高い状態であればトルク制限率は「正」の値になり、バッテリー4の充電状態SOCが上部側閾値A2より高く満充電に近い状態であれば「+1」の値になる。このときは、図5に示されるラインq1がそのまま適用されることになる。そして、バッテリー4の充電状態SOCが少し低下してバッテリー4の充電状態SOCが上部側閾値A2より低く下部側閾値A0よりも高い状態であれば、モータトルク制限率が「+1」よりも小さい比率になる。そうすると、図5のラインq1に対してその比率に応じて低くなる変化特性が適用されることになる。
そして、バッテリー4の充電状態SOCが下部側閾値A0よりも低い状態であれば、フルアクセル状態に対応する電動モータ2の目標トルクの制限率は「負」の値になり、その値が「−1」であれば、図5のラインq3がフルアクセル状態に対応する電動モータ2の目標トルクになる。
【0030】
図7のラインr2は、アクセルオフ状態に対応する電動モータ2の目標トルクの制限率を示している。つまり、バッテリー4の充電状態SOCが中間閾値A1よりも低い状態であればこのトルク制限率はほぼ全ての領域で「+1」の値になり、このときは、図5に示されるラインq2がそのまま適用されることになる。そして、バッテリー4の充電状態SOCが中間閾値A1より高ければトルク制限率が零となり、アクセルオフ状態であれば電動モータ2の目標トルクは常に零となる。
【0031】
更に、図6に示すように、アクセル操作量が変化した場合の目標トルクの変化割合である出力率Bについての変化特性が予め設定されている。つまり、アクセル操作量が零であれば出力率Bは零であり、アクセル操作量が最大値でありフルアクセル状態であれば出力率Bは100%になる。
【0032】
上記したような各特性から電動モータ2の目標トルクは、次のようにして求められる。
つまり、図5〜図7に示される特性から、バッテリー4の充電状態SOCの検出情報に基づいて、フルアクセル状態における目標トルクとアクセルオフ状態における目標トルクとが求められ、それらの目標トルクとアクセル操作量の検出値に基づく変化割合(出力率)とにより、そのときの回転速度とアクセル操作量に対応する目標トルクが求められる。
例えば、バッテリー4の充電状態SOCが上部側閾値A2よりも高ければ、図8に示すように、アクセル操作量が変化するに伴って目標トルクがラインq1と零との間で変化する。アクセル操作量の出力率が零であれば目標トルクは零となり、出力率Bが100%であればラインq1上の値として目標トルクが求められる。つまり、回転速度センサS3にて検出される電動モータ2の回転速度に対応するラインq1上の値が定まり、ラインq1上の値と零との間で出力率Bの大きさに応じて異なる状態で目標トルクが求められる。
又、バッテリー4の充電状態SOCが上部側閾値A2よりも低く下部側閾値A0より高ければ、図9に示すように、アクセル操作量が変化するに伴って目標トルクがラインq1とラインq2との間で変化するから、上部側閾値A2よりも高い場合と同様にして、それらの間でアクセル操作量の出力率Bにより目標トルクが求められる。
そして、バッテリーの充電状態SOCが下部側閾値A0よりも低ければ、図10に示すように、アクセル操作量が変化するに伴って目標トルクがラインq2とラインq3との間で変化するから、それらの間でアクセル操作量の出力率Bにより目標トルクが求められる。この図10から明らかなように、バッテリーの充電状態SOCが下部側閾値A0よりも低ければ、電動モータ2は常に回生作動のみを行う構成となっている。
【0033】
以上の関係を数式で表すと、次のように表すことができる。
ラインq1で示されるトルクをq1、ラインq2で示されるトルクをq2、ラインq3で示されるトルクをq3、ラインr1で示されるトルク制限率をr1、ラインr2で示されるトルク制限率をr2、アクセル操作の出力率をBとすると、バッテリーの充電状態SOCが下部側閾値A0よりも高い場合には、電動モータの目標トルクTmは、次の数1で表すことができる。
【0034】
【数1】
Tm=(r1×q1−r2×q2)×B/100+r2×q2
(SOC≧A0)
【0035】
又、バッテリー4の充電状態SOCが下部側閾値A0よりも低い場合には、電動モータ2の目標トルクTmは、次の数2で表すことができる。
【0036】
【数2】
Tm=(―r1×q3−r2×q2)×B/100+r2×q2
(SOC<A0)
【0037】
図5、図8〜10に示す特性において、零よりも上側である正(+)側はエンジン1の回転方向に対してアシストする方向に沿うトルクであることを示し、図において上側ほどトルクが大となる。零よりも下側である負(−)側は、エンジン1の回転方向と逆方向のトルク、すなわち、回生トルクであることを示しており、図において下側ほど回生トルクが大となる。
【0038】
バッテリー4の充電状態SOCが下部側閾値A0よりも低い場合には、アクセル操作量が大になるほどエンジン1のトルクが大になる領域においては、エンジン1のトルクから電動モータ2の回生トルクを減算した差分値が、アクセル操作量が大になるほど大になる傾向を維持するように、且つ、アクセル操作量が大になるほど電動モータ2の回生トルクが大になるように、電動モータ2の回生作動を制御するように構成されている。
【0039】
そして、バッテリー4の充電状態SOCが下部側閾値A0よりも低い場合における、アクセル操作量の変化に対する回生トルクの変化特性が図4のラインP2にて示すように設定されている。この図から明らかなように、アクセル操作量が大側に操作されるに伴って回生トルクが大になるように予め特性が設定されている。又、エンジン1のトルクから電動モータ2の回生トルクを減算した差分値が、図4のラインP3に示すように、アクセル操作量が大になるほど大になる傾向を維持するようにエンジントルク及び回生トルクが設定されている。
そして、車両制御部8は、アクセル操作量の検出情報に基づいて、上述したようにエンジン1の作動を制御するとともに、回生トルクが上記したように設定された目標トルクになるように電動モータ2の回生作動を制御する。
【0040】
前記電動モータ2の制御について説明を加えると、上述したようにして求めた電動モータ2の目標トルクが「正」であれば前記力行作動を実行する。つまり、エンジン1の回転方向と同じ方向に電動モータ2が目標トルクを出力するように、その目標トルクに対応する制御情報がPWM制御回路29に与えられる。そうすると、PWM制御回路29がその目標トルクに対応するようにタイミング及びデューティ比が設定された3相交流用のパルス信号が前記インバータ28の各スイッチングトランジスタのベース端子に印加され、電動モータ2が目標トルクでエンジン1をアシストすることになる。
【0041】
目標トルクが「正」でなく「負」であれば前記回生作動を実行する。つまり、電動モータ2がエンジン1の回転方向とは反対方向に前記目標トルクを出力するように、その目標トルクに対応する制御情報がPWM制御回路29に与えられる。そうすると、PWM制御回路29がその目標トルクに対応するようにタイミング及びデューティ比が設定された3相交流用のパルス信号がインバータ28の各スイッチングトランジスタのベース端子に印加され、電動モータ2がエンジン1に対して逆向きのトルク、つまり、回生トルクを付与するように作用することになる。そうすると、電動モータ2がエンジン1の動力によって駆動されて発電機として作用して、インバータ28によって回生トルクに対応する回生電力に変更調整される状態でバッテリー4に充電される。
【0042】
このとき、図4の特性から明らかなように、アクセル操作量が設定量X以下の領域において、そのアクセル操作量が大になるほどエンジン1のトルクが大になるようにエンジン1の作動を制御し、且つ、アクセル操作量が大になるほどエンジン1のトルクが大になる領域においては、エンジン1のトルクから電動モータ2の回生トルクを減算した差分値が、アクセル操作量が大になるほど大になる傾向を維持するように、且つ、アクセル操作量が大になるほど電動モータ2の回生トルクが大になるように、電動モータ2の回生作動を制御することになる。
【0043】
〔別実施形態〕
以下、別実施形態を列記する。
【0044】
(1)上記実施形態では、アクセル操作量が大きい領域において、エンジンのトルクが、アクセル操作量の増加に対するエンジン1のトルクの増加量が小さくなるように設定される構成としたが、このような構成に限らず、前記アクセル操作量が大になるほどエンジンのトルクが減少するように前記エンジンの作動を制御するようにしてもよい。
又、アクセル操作量が大になるほどエンジンのトルクが大になるように前記エンジンの作動を制御する構成、すなわち、アクセル操作量が変化する全領域において、アクセル操作量が大になるほどエンジンのトルクが大になるように前記エンジンの作動を制御するものでもよい。
【0045】
(2)上記実施形態では、前記エンジンのトルクが前記アクセル操作量の増加にかかわらず一定となる領域においては、前記エンジンのトルクから前記電動モータの回生トルクを減算した差分値が、前記アクセル操作量が大になるほど大になる傾向を維持するように前記電動モータの回生作動を制御するよう構成したが、このような構成に代えて、前記差分値がアクセル操作量の増加にかかわらず一定となるように電動モータの回生作動を制御するよう構成するものでよい。
【0046】
(3)上記実施形態では、前記駆動手段の動力がトルクコンバータ及び自動変速機構内装式のトランスミッションを介して走行装置に伝えられる構成としたが、前記トルクコンバータの代わりに、前記駆動手段の動力が走行クラッチと手動変速式の変速機構を介して走行装置に伝えられる構成としたり、ベルト式無段変速装置を介して走行装置に伝えられる構成としてもよい。
【0047】
(4)上記実施形態における図4〜図7に示すような各種の変化特性は一例であって、図示したような特性に限定されるものではなく、要するに、アクセル操作量が大になるほど前記差分値が大になる傾向を維持するように、且つ、アクセル操作量が大になるほど電動モータの回生トルクが大になるように電動モータの回生作動を制御するものであればよく、目標トルクを定めるための特性は適宜変更して実施してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】ハイブリッド車両の概略構成を示す図
【図2】制御ブロック図
【図3】電動モータの制御構成を示す図
【図4】エンジントルク及び回生トルクの変化を示す図
【図5】電動モータの目標トルクの特性図
【図6】アクセル操作量に対応する出力率を示す図
【図7】トルク制限率を示す図
【図8】バッテリーの充電状態が上部側閾値よりも高いときの電動モータの目標トルクの特性図
【図9】バッテリーの充電状態が上部側閾値よりも低く下部側閾値より高いときの電動モータの目標トルクの特性図
【図10】バッテリーの充電状態が下部側閾値より低いときの電動モータの目標トルクの特性図
【符号の説明】
1 エンジン
2 電動モータ
H 制御手段
A0 設定充電状態
SOC 充電状態
X 設定値
Claims (2)
- エンジン、及び、そのエンジンと一体回転するように直結されて力行及び回生作動する電動モータが備えられ、アクセル操作量の検出情報並びにバッテリーの充電状態の検出情報に基づいて前記エンジン及び前記電動モータの作動を制御する制御手段が備えられているハイブリッド車両の走行駆動制御装置であって、
前記制御手段が、
前記バッテリーの充電状態が設定充電状態よりも低い場合には、
前記電動モータを回生作動させると共に、前記エンジンのトルクから前記電動モータの回生トルクを減算した差分値が、前記アクセル操作量が大になるほど大になる傾向を維持するように、且つ、前記アクセル操作量が大になるほど前記電動モータの回生トルクが大になるように、前記電動モータの回生作動を制御するよう構成されているハイブリッド車両の走行駆動制御装置。 - アクセル操作量が大きい領域において、前記制御手段が、前記アクセル操作量の増加に対する前記エンジントルクの増加量が小さくなるように、又は、前記アクセル操作量が大になるほど前記エンジントルクが減少するように、前記エンジンの作動を制御すると共に、前記エンジンのトルクから前記電動モータの回生トルクを減算した差分値が、前記アクセル操作量が大になるほど大になる傾向を維持するように、又は、前記アクセル操作量の増加にかかわらず一定となるように、前記電動モータの回生作動を制御するよう構成されている請求項1記載のハイブリッド車両の走行駆動制御装置。
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