JP2004118893A - カード機器のクリーニングカード - Google Patents
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Abstract
【課題】銀行のATM(自動貯金支払機)やCD機などのカード機器内部をクリーニングするのに好適なクリーニングカードを提供すること。
【解決手段】単繊維繊度0.001〜1.1デシテックスの極細繊維を少なくとも表面に有する繊維布が、芯材シートの表面および裏面に張り合わされてなり、全体平面形状は実質的に方形のカード状シートを呈していて、かつ、カード機器に挿入する方向と平行な方向のシート断面の一部において、該シート断面形状が湾曲した弧状を呈するように成形された弧状成形部が設けられていて、該弧状成形部はカード機器に挿入する方向と直角方向に延びて存在していることを特徴とするカード機器のクリーニングカード。
【選択図】図1
【解決手段】単繊維繊度0.001〜1.1デシテックスの極細繊維を少なくとも表面に有する繊維布が、芯材シートの表面および裏面に張り合わされてなり、全体平面形状は実質的に方形のカード状シートを呈していて、かつ、カード機器に挿入する方向と平行な方向のシート断面の一部において、該シート断面形状が湾曲した弧状を呈するように成形された弧状成形部が設けられていて、該弧状成形部はカード機器に挿入する方向と直角方向に延びて存在していることを特徴とするカード機器のクリーニングカード。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カード機器のクリーニングカードに関し、更に詳しくは、例えば、銀行のATM(自動貯金支払機)やCD機などの通帳記帳部内の磁気ヘッド部、搬送機構部、記帳プリンタ機構部などを効果的にクリーニングすることのできるカード機器のクリーニングカードに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
銀行のATM(自動貯金支払機)やCD機などの通帳記帳部は、挿入口の内部には、該挿入口から吸入された通帳の磁気データ(磁気ストライプ:MS)を読み取るMSユニット、通帳上の画像を読み取る光学スキャナと、該光学スキャナが検出した通帳の印字行の印字を行う印字部と、通帳のページを捲るターンページ部や搬送機構部などが設けられている。
【0003】
これら部分は、必要時には通帳に印字を行ない、ページを捲り、搬送したりするものであることから、汚れることも多く、適時にクリーニングすることが必要である。
【0004】
従来、磁気ヘッドの清掃用クリーニングカードとして、樹脂シートの少なくとも片面に、0.2〜0.00001デニールの極細繊維からなる繊維シートを張り合わせたものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
しかし、このものは、ごく薄いカード機器のヘッド等の清掃には使用できても、一般に1ミリメートルから数mm程度もの厚さになる貯金通帳に対して設計されている銀行のATM(自動貯金支払機)やCD機などの記帳部内部機構のクリーニングには不向きであった。
【0006】
特に、通帳が厚いこと、また上下両面に対してクリーニングされるべき部分があり、一回で簡単に効果的なクリーニングをしようとすることはむずかしいのが実状であった。
【0007】
【特許文献1】特開平6−335998号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記したような点に鑑み、本発明の目的は、特に、銀行のATM(自動貯金支払機)やCD機の通帳記帳部などのカード機器をクリーニングするのに好適なクリーニングカードを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成する本発明のカード機器のクリーニングカードは、以下の(1)の構成を有するものである。
(1)単繊維繊度0.001〜1.1デシテックスの極細繊維を少なくとも表面に有する繊維布が、芯材シートの表面および裏面に配されてなり、全体平面形状は実質的に方形のカード状シートを呈していて、かつ、カード機器に挿入する方向と平行な方向のシート断面の一部において、該シート断面形状が突出した弧状を呈するように成形された突出弧状成形部が設けられていて、該突出弧状成形部は実質的にカード機器に挿入する方向と直角方向に延びて存在していることを特徴とするカード機器のクリーニングカード。
【0010】
また、かかる(1)記載の本発明のカード機器のクリーニングカードにおいて、より好ましくは、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)(9)、(10)、(11)、(12)、(13)、(14)または(15)の構成からなるものである。
(2)繊維布が、織物からなることを特徴とする上記(1)に記載のカード機器のクリーニングカード。
(3)繊維布が、編物からなることを特徴とする上記(1)に記載のカード機器のクリーニングカード。
(4)繊維布が、不織布からなることを特徴とする上記(1)に記載のカード機器のクリーニングカード。
(5)単繊維繊度0.001〜1.1デシテックスの極細繊維を少なくとも表面に有する繊維布が、芯材シートの表面および裏面に張り合わされて配されていることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のカード機器のクリーニングカード。
(6)突出弧状成形部の撓み硬さが、4.0〜20.0kPaの範囲内にあることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載のカード機器のクリーニングカード。
(7)突出弧状成形部の撓み硬さが、5.0〜17.0kPaの範囲内にあることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載のカード機器のクリーニングカード。
(8)突出弧状成形部の撓み硬さが、8.0〜14.0kPaの範囲内にあることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載のカード機器のクリーニングカード。
(9)芯材シートが、剛軟度500〜3500mgの合成繊維不織布からなることを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれかに記載のカード機器のクリーニングカード。
(10)突出弧状成形部が、少なくとも2箇所で設けられてなることを特徴とする上記(1)〜(9)のいずれかに記載のカード機器のクリーニングカード。
(11)芯材シートが、ポリエステルスパンボンド不織布からなることを特徴とする上記(1)〜(10)のいずれかに記載のカード機器のクリーニングカード。
(12)カードを形成するシートの厚さが0.5〜5mmの範囲内のものであることを特徴とする上記(1)〜(11)のいずれかに記載のカード機器のクリーニングカード。
(13)突出弧状成形部の突出高さが、2〜7mmの範囲内のものであることを特徴とする上記(1)〜(12)のいずれかに記載のカード機器のクリーニングカード。
(14)突出弧状成形部のふもと部長さが、1〜5cmの範囲内のものであることを特徴とする上記(1)〜(13)のいずれかに記載のカード機器のクリーニングカード。
(15)カードを形成するシートのKES法による曲げ硬さ(B)が1×10−3〜10×10−3N・m2 /mであり、かつ、ヒステリシスの幅(2HB)が5×10−2〜30×10−2 N・m /mであることを特徴とする上記(1)〜(14)のいずれかに記載のカード機器のクリーニングカード。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面等を用いて、本発明にかかるカード機器のクリーニングカードについて詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明に係るカード機器のクリーニングカードの一実施態様例を説明する図であり、本発明に係るカード機器のクリーニングカードを外観斜視図で表した概略モデル図である。
【0013】
同図において、1は本発明にかかるカード機器のクリーニングカードであり、該クリーニングカード1は、単繊維繊度0.001〜1.1デシテックスの極細繊維を少なくとも表面に有する繊維布が表裏面に存在して、全体平面形状としては、実質的に方形のカード状シートを呈しているものである。そして、カード機器に挿入する方向Aと平行な方向のシート断面の一部において、該シート断面形状が突出したした弧状を呈するように成形された突出弧状成形部2が設けられていて、該突出弧状成形部はカード機器に挿入する方向と直角方向に延びて存在しているものである。
【0014】
図2は、本発明にかかるカード機器のクリーニングカード1の構造例を更にわかりやすく説明するものであり、同図(a)は該カードを上方から見た概略平面図、同図(b)は該平面図に対応する概略側面図である。
【0015】
本発明において、「全体平面形状は実質的に方形である」とは、平面形状が全体として、実質的に長方形状あるいは正方形状を呈しているものをいう。本発明において、該形状は、完全な長方形状や正方形状を呈している必要はなく、四隅部がいわゆる「面取り」のように丸みや斜辺を呈していて、角が落とされているものでよい。
【0016】
同図2(b)に示したように、該カード1には、断面形状が突出した弧状を呈するように成形された突出弧状成形部2が成形されて設けられているものである。該突出した弧状は、湾曲した形状で突出しているような円弧状や、弓弧状などであれば良く、なだらかなほぼ台形状になっているような形状のもの等でもよいものである。
【0017】
図3は、該カードを構成するシート構造例を示すためにカードシートの断面を示した概略モデル図であり、該シート(カード)は、この構造例では、芯材3の表裏面に繊維布4が張り合わされているものである。張り合わせには、適宜の接着剤を使用することができるが、接着剤はパウダー状あるいは液体状のものや、図3に示した低融点のフィルム5状のものなどを利用することができる。低融点のフィルム状のものは、張り合わせに際して、単繊維繊度0.001〜1.1デシテックスの極細繊維を少なくとも表面に有する繊維布を痛めることがないように一般には70〜120℃程度の温度で接合作用を発揮できるもの等を使用するのがよい。
【0018】
本発明のカード機器のクリーニングカードは、表裏面に存在する単繊維繊度0.001〜1.1デシテックスの極細繊維を少なくとも表面に有する繊維布がワイピング性能を発揮して、カード機器に通された際に内部の磁気ヘッド部や搬送機器部、プリンタ機構部などを効果的に清掃することができるものである。
【0019】
特に、厚い通帳などを通すように形成されている銀行のATM(自動貯金支払機)やCD機などの記帳部内に対しても、突出弧状成形部2が存在しているために、カード通過経路上から多少離れて位置している被クリーニング部に対しても、効果的にクリーニングカード表面の繊維布を接触させることができ、効果的なクリーニングをすることができるものである。
【0020】
突出弧状成形部2は、一つだけ設けても良いが、カード通過経路上から多少離れて位置している被クリーニング部に対しても、より良好にクリーニングすることができるように複数個設けてもよい。
【0021】
該突出弧状成形部2は、成形されているといっても、完全に剛直な状態で成形されていることは必要でなく、むしろ、カード機器内の通過に際して、通過に支障がないようにある程度はたわむことができて、一方で、カード機器を通過したときもしくは排出されてきたときには、自らが持つ弾力性によって、もとの突出弧状の成形形状に戻っているだけの剛軟性を有していることが重要である。そのような剛軟性や、成形性は極細繊維布だけで実現することは難しく、特に、芯材シートを基体として用いて、その表裏面に上述した極細繊維布を張り合わせて構成するのが良いものである。すなわち、該芯材シートに、上述した剛軟性や成形性を主に持たせるのが良いのである。
【0022】
上記の観点から、該突出弧状成形部2の撓み硬さは、好ましくは4.0〜20.0kPaの範囲内、より好ましくは5.0〜17.0kPaの範囲内、最も好ましくは8.0〜14.0kPaの範囲内である。
【0023】
ここで、「突出弧状成形部の撓み硬さ」は、(株)イマダ社製デジタルフォースゲージ(DPS−20)を用いて、弧状突出成型部の頂点部分でかつカード巾方向の中央点で付属アタッチメント平型(S−2、荷重部15mmφの円形)に交換した測定部を押し当てて、該押し当てを行うことにより、へこみ始める時点での硬度計読みとり値を該「撓み硬さ」とし、更に、該値をSI単位系に換算したものである。測定はN数を2として行い、それらの平均をとったものである。
【0024】
本発明者らの各種検討によれば、該芯材シートとしては、ポリエステル繊維やナイロン繊維の合成繊維不織布が好適であり、中でもポリエステルスパンボンド不織布は、本発明のクリーニングカードに最適な剛軟性や成形性、さらに全体としての厚さを適度に出す上においても良好に用いられるものである。
【0025】
本発明のクリーニングカードは、被クリーニング対象にもよるが、好ましくは、その厚さが0.5〜5mm程度の範囲内にあるのが好ましく、より好ましくは0.5〜3.5mmの範囲内、最も好ましくは1〜1.5mmの範囲内にあるものである。
【0026】
芯材シートとしても、ほとんどこれと同等の範囲内の厚さのものを用いるのがよいが、特に、厚さが0.3〜1.5mm程度で、剛軟度(曲げ剛性)が500〜3500mgの範囲内ある合成繊維不織布を用いるがよい。ここで、芯材シートの剛軟度は、ガーレ法(JIS L 1096)によって測定される値である。
【0027】
中でも、目付100〜300g/m2 のポリエステルスパンボンド不織布は、厚さ、曲げ剛性および成形性を兼ね備えることが容易に可能なことから好ましいものである。
【0028】
上述の突出弧状成形部2の撓み硬さを所望の値として得るためには、本発明者らの各種知見によれば、上述したような曲げ剛性を持つ芯材シートの選択と熱成形温度・処理条件の適宜の組合せによって得ることができるものであり、該突出弧状成形部2の撓み硬さを、例えば、4.0〜20.0kPaの範囲内のものを得るには成型温度140〜190℃の範囲内で成型時間を約1〜7分とすること、特に5.0〜17.0kPaの範囲内のものを得るには成型温度150〜180℃の範囲内で成型時間を約1〜7分とすること、更に8.0〜14.0kPaの範囲内のものを得るには成型温度140〜160℃の範囲内で成型時間を約2〜4分とすること、等によって得ることができる。但し、これらの条件は1例であって、芯材シートの物理的特性との組合わせに応じて変わってくることがあるものである。
【0029】
突出弧状成形部2の突出形状は、ワイピング性能に関わることなので重要であり、本発明者らの知見によれば、突出高さは2〜7mm程度、一般的により好ましくは、3〜5mm程度の突出高さであるのが良いものである。また、突出弧状成形部のふもと部長さが、1〜5cmの範囲内のものであるのが良いものである。
【0030】
図4は突出弧状成形部2の各種態様例をモデル的に示した概略断面図であるが、同図において、突出高さはH、突出弧状成形部のふもと部長さはLで示したものである。ちなみに、同図(a)は円弧状のもの、同図(b)は略台形状のものを例示している。
【0031】
極細繊維からなる繊維布は、細かな立体凹凸のある被クリーニング部まで払拭できるように柔軟な繊維布であることが望ましい。また、該繊維布は極細繊維を少なくとも表面層に有することが重要である。
【0032】
本発明にかかるクリーニングカードにおいて、繊維布は、織物、編物、不織布などのうちいずれからなるものであってもよいが、上述のように柔軟な繊維布であることが払拭効果の点から好ましく、芯材に張り合わせるに際しては、該柔軟性が損なわれないようにして張り合わせを行うことが重要である。
【0033】
また、芯材に張り合わせて形成したカード用シートの硬さもまた重要であり、好ましくはKES法による曲げ硬さ(B)が1×10−3 〜10×10−3 N・m2 /mであり、かつ、ヒステリシスの幅(2HB)が5×10−2〜30×10−2N・m /mである。より好ましくは該(B)が2×10−3 〜9×10−3 N・m2 /mであり、かつ、ヒステリシスの幅(2HB)が8×10−2〜25×10−2 N・m /mである。
【0034】
さらに最も好ましくは(B)が3×10−3 〜8×10−3 N・m2 /mであり、かつ、ヒステリシスの幅(2HB)が10×10−2〜20×10−2 N・m /mである。
【0035】
KES法による曲げ硬さが(B)が、10×10−3 N・m2 /mを上回り、かつ、ヒステリシスの幅(2HB)が30×10−2 N・m /mを上回る場合、または逆に、該(B)が1×10−3 を下回り、かつ、ヒステリシスの幅(2HB)が5×10−2 を下回る場合、カード機器内に詰まってしまう問題が生じることがあるので、好ましくない。
【0036】
ここで、KES法とはKawabata’s Evaluation System for Faburics のことであり、測定装置は、カトーテック(株)製を用い、曲げ特性は、KES−FB2を使用し、感度(SENS)は、5×1として測定することができる。Bおよび2HBの値は、シートの曲げ剛性および曲げヒステリシスを意味する。測定は、幅0.5cm、長さ7.0cmのシートに裁断し、間隔1cmのチャックに長手方向に把持し、曲率K=±2.5cm−1 の範囲で、変形速度0.5cm−1/secの等速度曲率の純曲げを行う。Bはシートの単位長さ当たりの曲げモーメントMと曲率Kとの曲線の傾斜を表す。ここでは、曲率K=0.2と0.7の間の傾斜、曲率K=−0.2と−0.7間の傾斜を平均した値を用いる。また2HBとは、曲率K=±0.4の範囲におけるヒステリシス幅の平均値のことである。
【0037】
なお、本発明の場合、n数4で測定し、幅方向のタテ方向とヨコ方向の平均値を用い、Bおよび2HBの値は1cmに換算(2倍)して、数値化することができる。
【0038】
なお、KES法による曲げ硬さ(B)が1×10−3 〜10×10−3 N・m2 /mであり、かつ、ヒステリシスの幅(2HB)が5×10−2〜30×10−2 N・m /mであるものを得るには、特に限定されないが、例えば、芯材シートとして、前述したような厚さが0.3〜1.5mm程度で、剛軟度(曲げ剛性)が500〜3500mgの範囲内ある合成繊維不織布を用いて、前述の突出弧状成形部2の撓み硬さのコントロールとほぼ同様に、成型温度140〜190℃の範囲内で成型時間を約1〜7分とすること、また、該(B)が2×10−3 〜9×10−3 N・m2 /mであり、かつ、ヒステリシスの幅(2HB)が8×10−2〜25×10−2 N・m /mであるものを得るには、芯材シートとして、同じく厚さが0.3〜1.5mm程度で、剛軟度(曲げ剛性)が500〜3500mgの範囲内ある合成繊維不織布を用いて、同じく、成型温度150〜180℃の範囲内で成型時間を約1〜7分とすること、また、該(B)が3×10−3 〜8×10−3 N・m2 /mであり、かつ、ヒステリシスの幅(2HB)が10×10−2〜20×10−2 N・m /mであるものを得るには、芯材シートとして、同じく厚さが0.3〜1.5mm程度で、剛軟度(曲げ剛性)が500〜3500mgの範囲内ある合成繊維不織布を用いて、同じく、成型温度140〜160℃の範囲内で成型時間を約2〜4分とすること等の、芯材材質と成形時間・成型温度を組合わせることにより得ることができる。
【0039】
該繊維布において、単繊維繊度0.001〜1.1デシテックスの極細繊維を表面層に位置させるには、通常は、該極細繊維100%使いで該繊維布を構成することや、あるいは緯糸あるいは経糸のいずれかの織糸や編糸が表面に表れる織編物組織として、該表面に表れる織糸や編糸に極細繊維糸を用いる等の手段で実現することができる。
【0040】
また、不織布である場合には、単繊維繊度0.001〜1.1デシテックスの極細繊維を用いて該不織布を構成することによっても達成できる。
【0041】
単繊維繊度0.001〜1.1デシテックスの極細繊維は、特に限定されないが、ポリエステル系繊維やポリアミド系繊維など、また、円形断面のものや異形断面のものなどを適宜に使用することができる。特に、ポリエステル系繊維の場合、強度も大きく丈夫なクリーニングカードを実現することができる。
【0042】
また、それらの極細繊維は、ポリエステル系繊維あるいはポリアミド系繊維などのうちの単独の使用であってもよく、あるいは、ポリエステル系繊維とポリアミド系繊維などの混用使用であってもよい。このような異種繊維を混合使用する場合、繊維間の間隙を形成しやすいことによって、より高いワイピング効果を得ることができる。
【0043】
本発明において、繊維布とは、織物や編物、あるいは不織布のいずれをも含む概念であり、これら単独でも使用でき、さらにはこれらが組合わされた複合繊維布としても使用できる。
【0044】
また、繊維布は、立毛パイルを持つ立毛布やタオル地などでもよく、その場合は、立毛パイルを構成する繊維が、単繊維繊度0.001〜1dtexの極細繊維からなるものとするのがよい。ビロード織物やタオル編地のような立毛パイル布帛も、単位面積当たりの極細繊維量が多くできることから、高いワイピング効果を得ることが可能になるからである。
【0045】
特に、織物の場合には、布構造としてよりしっかりとしたものにできるので好ましい。また、編物の場合には、布自体に膨らみ感や肉厚感を出すことが比較的簡単であり好ましい。不織布は、耐久性やコストの点で有利であり、使い捨てに近い感覚で使用するようなものに適している。
【0046】
繊維布は、多少厚めにした方が、丈夫さという観点から好ましい。繊維布は、二重等の多層のものにしてもよく、さらに、多層構造のものとして、その内部には薄目のスポンジシートやポリエステル繊維等の綿状シート状物等を適宜に包み込んだ構成のものにしてもよい。
【0047】
また、全体にわたりキルティングを施したものなどでもよい。このようなキルティングをすることは、スポンジや綿状シート等を内部に包み込んだ形として構成するときに、スポンジ等の移動や形崩れを防止できる等の点で良いものである。
【0048】
このような単繊維繊度0.001〜1.1デシテックスの極細繊維を少なくとも表面に有する繊維布を製造する方法は、特に限定されないが、例えば、複数の成分から構成される複合繊維を用いて、特に、該複合成分のうち、一成分を溶出除去する、あるいは各成分ごとに分割する等の、後の極細化加工により極細化が可能にされてなる複合繊維を原料繊維に用いて製布すること等により製造できる。
【0049】
このような極細繊維を有する繊維布の製造は、近年、合成繊維関係業界では広く行われてきているものであり、極細化加工は、繊維や、その集合体たる糸の段階、あるいは繊維布に形成された後などの段階で行うことができる。極細繊維としての太さは、製造のしやすさ、コストの点、ワイピング性能・クリーニング性能、効果などから、単繊維繊度0.01〜1.1デシテックスの範囲内であることが有効であり、中でも、単繊維繊度0.01〜0.6デシテックスの範囲内が最も実用的かつ効果的である。
【0050】
該繊維布の製造に際しては、例えば、上記の複合繊維が集合した糸の段階で、仮より加工などの捲縮嵩高加工を施してもよいし、あるいは、織物や編物、不織布などに形成した後、ウォーターパンチング加工等を施すことなどにより、極細繊維に、いわゆるバラけ効果とも言うべき開繊効果(極細繊維の1本1本が、集束した束状から多少バラけて、互いに広がってスポンジのような立体構造の状態を示す効果)を与えることなどもできる。
【0051】
このような開繊効果は、上記の捲縮嵩高加工によっても付与することができ、また、ポリエステル系繊維とポリアミド系繊維などの混用使用の場合には、それらの異種繊維が持つ収縮差などによっても付与することができる。
【0052】
このような開繊効果により、極細繊維の1本1本が、集束した束状から多少バラけて、互いに広がってスポンジのような立体構造がうまく形成されているものは、上述したように、細径の繊維が、被クリーニング物に付着した汚れや油分などをそぎ取り、かつ細径の繊維間に形成される繊維間間隙に該汚れや油分などをより効果的に取り込むことができるので、より高くかつ持続する拭き取り効果を得ることができ好ましいものである。
【0053】
また、繊維布としては、適宜に撥水加工、撥油加工などの各種の機能性付与加工を施したものを使用してもよい。
【0054】
【発明の効果】
以上述べたとおりの本発明によれば、銀行のATM(自動貯金支払機)やCD機の通帳記帳部などのカード読取り機器を、簡単にかつ効果的にクリーニングすることができるクリーニングカードが提供されるものである。
【0055】
本発明にかかるクリーニングカードによれば、カード通過経路の両サイドに該経路から離れて位置している被クリーニング部材に対しても効果的にクリーニング・ワイピング効果を発揮することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係るカード機器のクリーニングカードの一実施態様例を説明する図であり、本発明に係るカード機器のクリーニングカードを外観斜視図で表した概略モデル図である。
【図2】図2は、本発明にかかるカード機器のクリーニングカードの構造例を説明するものであり、同図(a)は該カードを上方から見た概略平面図、同図(b)は該平面図に対応する概略側面図である。
【図3】図3は、本発明にかかるカード機器のクリーニングカードを構成するシート構造例を示すためにカードシートの断面を示した概略モデル図である。
【図4】図4は、突出弧状成形部2の各種態様例をモデル的に示した概略断面図である。
【符号の説明】
1:本発明に係るクリーニングカード
2:突出弧状成形部
3:芯材
4:繊維布
5:低融点フィルム
A:カード機器に挿入する方向
H:突出弧状成形部の突出高さ
L:突出弧状成形部のふもと部長さ
【発明の属する技術分野】
本発明は、カード機器のクリーニングカードに関し、更に詳しくは、例えば、銀行のATM(自動貯金支払機)やCD機などの通帳記帳部内の磁気ヘッド部、搬送機構部、記帳プリンタ機構部などを効果的にクリーニングすることのできるカード機器のクリーニングカードに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
銀行のATM(自動貯金支払機)やCD機などの通帳記帳部は、挿入口の内部には、該挿入口から吸入された通帳の磁気データ(磁気ストライプ:MS)を読み取るMSユニット、通帳上の画像を読み取る光学スキャナと、該光学スキャナが検出した通帳の印字行の印字を行う印字部と、通帳のページを捲るターンページ部や搬送機構部などが設けられている。
【0003】
これら部分は、必要時には通帳に印字を行ない、ページを捲り、搬送したりするものであることから、汚れることも多く、適時にクリーニングすることが必要である。
【0004】
従来、磁気ヘッドの清掃用クリーニングカードとして、樹脂シートの少なくとも片面に、0.2〜0.00001デニールの極細繊維からなる繊維シートを張り合わせたものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
しかし、このものは、ごく薄いカード機器のヘッド等の清掃には使用できても、一般に1ミリメートルから数mm程度もの厚さになる貯金通帳に対して設計されている銀行のATM(自動貯金支払機)やCD機などの記帳部内部機構のクリーニングには不向きであった。
【0006】
特に、通帳が厚いこと、また上下両面に対してクリーニングされるべき部分があり、一回で簡単に効果的なクリーニングをしようとすることはむずかしいのが実状であった。
【0007】
【特許文献1】特開平6−335998号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記したような点に鑑み、本発明の目的は、特に、銀行のATM(自動貯金支払機)やCD機の通帳記帳部などのカード機器をクリーニングするのに好適なクリーニングカードを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成する本発明のカード機器のクリーニングカードは、以下の(1)の構成を有するものである。
(1)単繊維繊度0.001〜1.1デシテックスの極細繊維を少なくとも表面に有する繊維布が、芯材シートの表面および裏面に配されてなり、全体平面形状は実質的に方形のカード状シートを呈していて、かつ、カード機器に挿入する方向と平行な方向のシート断面の一部において、該シート断面形状が突出した弧状を呈するように成形された突出弧状成形部が設けられていて、該突出弧状成形部は実質的にカード機器に挿入する方向と直角方向に延びて存在していることを特徴とするカード機器のクリーニングカード。
【0010】
また、かかる(1)記載の本発明のカード機器のクリーニングカードにおいて、より好ましくは、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)(9)、(10)、(11)、(12)、(13)、(14)または(15)の構成からなるものである。
(2)繊維布が、織物からなることを特徴とする上記(1)に記載のカード機器のクリーニングカード。
(3)繊維布が、編物からなることを特徴とする上記(1)に記載のカード機器のクリーニングカード。
(4)繊維布が、不織布からなることを特徴とする上記(1)に記載のカード機器のクリーニングカード。
(5)単繊維繊度0.001〜1.1デシテックスの極細繊維を少なくとも表面に有する繊維布が、芯材シートの表面および裏面に張り合わされて配されていることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のカード機器のクリーニングカード。
(6)突出弧状成形部の撓み硬さが、4.0〜20.0kPaの範囲内にあることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載のカード機器のクリーニングカード。
(7)突出弧状成形部の撓み硬さが、5.0〜17.0kPaの範囲内にあることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載のカード機器のクリーニングカード。
(8)突出弧状成形部の撓み硬さが、8.0〜14.0kPaの範囲内にあることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載のカード機器のクリーニングカード。
(9)芯材シートが、剛軟度500〜3500mgの合成繊維不織布からなることを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれかに記載のカード機器のクリーニングカード。
(10)突出弧状成形部が、少なくとも2箇所で設けられてなることを特徴とする上記(1)〜(9)のいずれかに記載のカード機器のクリーニングカード。
(11)芯材シートが、ポリエステルスパンボンド不織布からなることを特徴とする上記(1)〜(10)のいずれかに記載のカード機器のクリーニングカード。
(12)カードを形成するシートの厚さが0.5〜5mmの範囲内のものであることを特徴とする上記(1)〜(11)のいずれかに記載のカード機器のクリーニングカード。
(13)突出弧状成形部の突出高さが、2〜7mmの範囲内のものであることを特徴とする上記(1)〜(12)のいずれかに記載のカード機器のクリーニングカード。
(14)突出弧状成形部のふもと部長さが、1〜5cmの範囲内のものであることを特徴とする上記(1)〜(13)のいずれかに記載のカード機器のクリーニングカード。
(15)カードを形成するシートのKES法による曲げ硬さ(B)が1×10−3〜10×10−3N・m2 /mであり、かつ、ヒステリシスの幅(2HB)が5×10−2〜30×10−2 N・m /mであることを特徴とする上記(1)〜(14)のいずれかに記載のカード機器のクリーニングカード。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面等を用いて、本発明にかかるカード機器のクリーニングカードについて詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明に係るカード機器のクリーニングカードの一実施態様例を説明する図であり、本発明に係るカード機器のクリーニングカードを外観斜視図で表した概略モデル図である。
【0013】
同図において、1は本発明にかかるカード機器のクリーニングカードであり、該クリーニングカード1は、単繊維繊度0.001〜1.1デシテックスの極細繊維を少なくとも表面に有する繊維布が表裏面に存在して、全体平面形状としては、実質的に方形のカード状シートを呈しているものである。そして、カード機器に挿入する方向Aと平行な方向のシート断面の一部において、該シート断面形状が突出したした弧状を呈するように成形された突出弧状成形部2が設けられていて、該突出弧状成形部はカード機器に挿入する方向と直角方向に延びて存在しているものである。
【0014】
図2は、本発明にかかるカード機器のクリーニングカード1の構造例を更にわかりやすく説明するものであり、同図(a)は該カードを上方から見た概略平面図、同図(b)は該平面図に対応する概略側面図である。
【0015】
本発明において、「全体平面形状は実質的に方形である」とは、平面形状が全体として、実質的に長方形状あるいは正方形状を呈しているものをいう。本発明において、該形状は、完全な長方形状や正方形状を呈している必要はなく、四隅部がいわゆる「面取り」のように丸みや斜辺を呈していて、角が落とされているものでよい。
【0016】
同図2(b)に示したように、該カード1には、断面形状が突出した弧状を呈するように成形された突出弧状成形部2が成形されて設けられているものである。該突出した弧状は、湾曲した形状で突出しているような円弧状や、弓弧状などであれば良く、なだらかなほぼ台形状になっているような形状のもの等でもよいものである。
【0017】
図3は、該カードを構成するシート構造例を示すためにカードシートの断面を示した概略モデル図であり、該シート(カード)は、この構造例では、芯材3の表裏面に繊維布4が張り合わされているものである。張り合わせには、適宜の接着剤を使用することができるが、接着剤はパウダー状あるいは液体状のものや、図3に示した低融点のフィルム5状のものなどを利用することができる。低融点のフィルム状のものは、張り合わせに際して、単繊維繊度0.001〜1.1デシテックスの極細繊維を少なくとも表面に有する繊維布を痛めることがないように一般には70〜120℃程度の温度で接合作用を発揮できるもの等を使用するのがよい。
【0018】
本発明のカード機器のクリーニングカードは、表裏面に存在する単繊維繊度0.001〜1.1デシテックスの極細繊維を少なくとも表面に有する繊維布がワイピング性能を発揮して、カード機器に通された際に内部の磁気ヘッド部や搬送機器部、プリンタ機構部などを効果的に清掃することができるものである。
【0019】
特に、厚い通帳などを通すように形成されている銀行のATM(自動貯金支払機)やCD機などの記帳部内に対しても、突出弧状成形部2が存在しているために、カード通過経路上から多少離れて位置している被クリーニング部に対しても、効果的にクリーニングカード表面の繊維布を接触させることができ、効果的なクリーニングをすることができるものである。
【0020】
突出弧状成形部2は、一つだけ設けても良いが、カード通過経路上から多少離れて位置している被クリーニング部に対しても、より良好にクリーニングすることができるように複数個設けてもよい。
【0021】
該突出弧状成形部2は、成形されているといっても、完全に剛直な状態で成形されていることは必要でなく、むしろ、カード機器内の通過に際して、通過に支障がないようにある程度はたわむことができて、一方で、カード機器を通過したときもしくは排出されてきたときには、自らが持つ弾力性によって、もとの突出弧状の成形形状に戻っているだけの剛軟性を有していることが重要である。そのような剛軟性や、成形性は極細繊維布だけで実現することは難しく、特に、芯材シートを基体として用いて、その表裏面に上述した極細繊維布を張り合わせて構成するのが良いものである。すなわち、該芯材シートに、上述した剛軟性や成形性を主に持たせるのが良いのである。
【0022】
上記の観点から、該突出弧状成形部2の撓み硬さは、好ましくは4.0〜20.0kPaの範囲内、より好ましくは5.0〜17.0kPaの範囲内、最も好ましくは8.0〜14.0kPaの範囲内である。
【0023】
ここで、「突出弧状成形部の撓み硬さ」は、(株)イマダ社製デジタルフォースゲージ(DPS−20)を用いて、弧状突出成型部の頂点部分でかつカード巾方向の中央点で付属アタッチメント平型(S−2、荷重部15mmφの円形)に交換した測定部を押し当てて、該押し当てを行うことにより、へこみ始める時点での硬度計読みとり値を該「撓み硬さ」とし、更に、該値をSI単位系に換算したものである。測定はN数を2として行い、それらの平均をとったものである。
【0024】
本発明者らの各種検討によれば、該芯材シートとしては、ポリエステル繊維やナイロン繊維の合成繊維不織布が好適であり、中でもポリエステルスパンボンド不織布は、本発明のクリーニングカードに最適な剛軟性や成形性、さらに全体としての厚さを適度に出す上においても良好に用いられるものである。
【0025】
本発明のクリーニングカードは、被クリーニング対象にもよるが、好ましくは、その厚さが0.5〜5mm程度の範囲内にあるのが好ましく、より好ましくは0.5〜3.5mmの範囲内、最も好ましくは1〜1.5mmの範囲内にあるものである。
【0026】
芯材シートとしても、ほとんどこれと同等の範囲内の厚さのものを用いるのがよいが、特に、厚さが0.3〜1.5mm程度で、剛軟度(曲げ剛性)が500〜3500mgの範囲内ある合成繊維不織布を用いるがよい。ここで、芯材シートの剛軟度は、ガーレ法(JIS L 1096)によって測定される値である。
【0027】
中でも、目付100〜300g/m2 のポリエステルスパンボンド不織布は、厚さ、曲げ剛性および成形性を兼ね備えることが容易に可能なことから好ましいものである。
【0028】
上述の突出弧状成形部2の撓み硬さを所望の値として得るためには、本発明者らの各種知見によれば、上述したような曲げ剛性を持つ芯材シートの選択と熱成形温度・処理条件の適宜の組合せによって得ることができるものであり、該突出弧状成形部2の撓み硬さを、例えば、4.0〜20.0kPaの範囲内のものを得るには成型温度140〜190℃の範囲内で成型時間を約1〜7分とすること、特に5.0〜17.0kPaの範囲内のものを得るには成型温度150〜180℃の範囲内で成型時間を約1〜7分とすること、更に8.0〜14.0kPaの範囲内のものを得るには成型温度140〜160℃の範囲内で成型時間を約2〜4分とすること、等によって得ることができる。但し、これらの条件は1例であって、芯材シートの物理的特性との組合わせに応じて変わってくることがあるものである。
【0029】
突出弧状成形部2の突出形状は、ワイピング性能に関わることなので重要であり、本発明者らの知見によれば、突出高さは2〜7mm程度、一般的により好ましくは、3〜5mm程度の突出高さであるのが良いものである。また、突出弧状成形部のふもと部長さが、1〜5cmの範囲内のものであるのが良いものである。
【0030】
図4は突出弧状成形部2の各種態様例をモデル的に示した概略断面図であるが、同図において、突出高さはH、突出弧状成形部のふもと部長さはLで示したものである。ちなみに、同図(a)は円弧状のもの、同図(b)は略台形状のものを例示している。
【0031】
極細繊維からなる繊維布は、細かな立体凹凸のある被クリーニング部まで払拭できるように柔軟な繊維布であることが望ましい。また、該繊維布は極細繊維を少なくとも表面層に有することが重要である。
【0032】
本発明にかかるクリーニングカードにおいて、繊維布は、織物、編物、不織布などのうちいずれからなるものであってもよいが、上述のように柔軟な繊維布であることが払拭効果の点から好ましく、芯材に張り合わせるに際しては、該柔軟性が損なわれないようにして張り合わせを行うことが重要である。
【0033】
また、芯材に張り合わせて形成したカード用シートの硬さもまた重要であり、好ましくはKES法による曲げ硬さ(B)が1×10−3 〜10×10−3 N・m2 /mであり、かつ、ヒステリシスの幅(2HB)が5×10−2〜30×10−2N・m /mである。より好ましくは該(B)が2×10−3 〜9×10−3 N・m2 /mであり、かつ、ヒステリシスの幅(2HB)が8×10−2〜25×10−2 N・m /mである。
【0034】
さらに最も好ましくは(B)が3×10−3 〜8×10−3 N・m2 /mであり、かつ、ヒステリシスの幅(2HB)が10×10−2〜20×10−2 N・m /mである。
【0035】
KES法による曲げ硬さが(B)が、10×10−3 N・m2 /mを上回り、かつ、ヒステリシスの幅(2HB)が30×10−2 N・m /mを上回る場合、または逆に、該(B)が1×10−3 を下回り、かつ、ヒステリシスの幅(2HB)が5×10−2 を下回る場合、カード機器内に詰まってしまう問題が生じることがあるので、好ましくない。
【0036】
ここで、KES法とはKawabata’s Evaluation System for Faburics のことであり、測定装置は、カトーテック(株)製を用い、曲げ特性は、KES−FB2を使用し、感度(SENS)は、5×1として測定することができる。Bおよび2HBの値は、シートの曲げ剛性および曲げヒステリシスを意味する。測定は、幅0.5cm、長さ7.0cmのシートに裁断し、間隔1cmのチャックに長手方向に把持し、曲率K=±2.5cm−1 の範囲で、変形速度0.5cm−1/secの等速度曲率の純曲げを行う。Bはシートの単位長さ当たりの曲げモーメントMと曲率Kとの曲線の傾斜を表す。ここでは、曲率K=0.2と0.7の間の傾斜、曲率K=−0.2と−0.7間の傾斜を平均した値を用いる。また2HBとは、曲率K=±0.4の範囲におけるヒステリシス幅の平均値のことである。
【0037】
なお、本発明の場合、n数4で測定し、幅方向のタテ方向とヨコ方向の平均値を用い、Bおよび2HBの値は1cmに換算(2倍)して、数値化することができる。
【0038】
なお、KES法による曲げ硬さ(B)が1×10−3 〜10×10−3 N・m2 /mであり、かつ、ヒステリシスの幅(2HB)が5×10−2〜30×10−2 N・m /mであるものを得るには、特に限定されないが、例えば、芯材シートとして、前述したような厚さが0.3〜1.5mm程度で、剛軟度(曲げ剛性)が500〜3500mgの範囲内ある合成繊維不織布を用いて、前述の突出弧状成形部2の撓み硬さのコントロールとほぼ同様に、成型温度140〜190℃の範囲内で成型時間を約1〜7分とすること、また、該(B)が2×10−3 〜9×10−3 N・m2 /mであり、かつ、ヒステリシスの幅(2HB)が8×10−2〜25×10−2 N・m /mであるものを得るには、芯材シートとして、同じく厚さが0.3〜1.5mm程度で、剛軟度(曲げ剛性)が500〜3500mgの範囲内ある合成繊維不織布を用いて、同じく、成型温度150〜180℃の範囲内で成型時間を約1〜7分とすること、また、該(B)が3×10−3 〜8×10−3 N・m2 /mであり、かつ、ヒステリシスの幅(2HB)が10×10−2〜20×10−2 N・m /mであるものを得るには、芯材シートとして、同じく厚さが0.3〜1.5mm程度で、剛軟度(曲げ剛性)が500〜3500mgの範囲内ある合成繊維不織布を用いて、同じく、成型温度140〜160℃の範囲内で成型時間を約2〜4分とすること等の、芯材材質と成形時間・成型温度を組合わせることにより得ることができる。
【0039】
該繊維布において、単繊維繊度0.001〜1.1デシテックスの極細繊維を表面層に位置させるには、通常は、該極細繊維100%使いで該繊維布を構成することや、あるいは緯糸あるいは経糸のいずれかの織糸や編糸が表面に表れる織編物組織として、該表面に表れる織糸や編糸に極細繊維糸を用いる等の手段で実現することができる。
【0040】
また、不織布である場合には、単繊維繊度0.001〜1.1デシテックスの極細繊維を用いて該不織布を構成することによっても達成できる。
【0041】
単繊維繊度0.001〜1.1デシテックスの極細繊維は、特に限定されないが、ポリエステル系繊維やポリアミド系繊維など、また、円形断面のものや異形断面のものなどを適宜に使用することができる。特に、ポリエステル系繊維の場合、強度も大きく丈夫なクリーニングカードを実現することができる。
【0042】
また、それらの極細繊維は、ポリエステル系繊維あるいはポリアミド系繊維などのうちの単独の使用であってもよく、あるいは、ポリエステル系繊維とポリアミド系繊維などの混用使用であってもよい。このような異種繊維を混合使用する場合、繊維間の間隙を形成しやすいことによって、より高いワイピング効果を得ることができる。
【0043】
本発明において、繊維布とは、織物や編物、あるいは不織布のいずれをも含む概念であり、これら単独でも使用でき、さらにはこれらが組合わされた複合繊維布としても使用できる。
【0044】
また、繊維布は、立毛パイルを持つ立毛布やタオル地などでもよく、その場合は、立毛パイルを構成する繊維が、単繊維繊度0.001〜1dtexの極細繊維からなるものとするのがよい。ビロード織物やタオル編地のような立毛パイル布帛も、単位面積当たりの極細繊維量が多くできることから、高いワイピング効果を得ることが可能になるからである。
【0045】
特に、織物の場合には、布構造としてよりしっかりとしたものにできるので好ましい。また、編物の場合には、布自体に膨らみ感や肉厚感を出すことが比較的簡単であり好ましい。不織布は、耐久性やコストの点で有利であり、使い捨てに近い感覚で使用するようなものに適している。
【0046】
繊維布は、多少厚めにした方が、丈夫さという観点から好ましい。繊維布は、二重等の多層のものにしてもよく、さらに、多層構造のものとして、その内部には薄目のスポンジシートやポリエステル繊維等の綿状シート状物等を適宜に包み込んだ構成のものにしてもよい。
【0047】
また、全体にわたりキルティングを施したものなどでもよい。このようなキルティングをすることは、スポンジや綿状シート等を内部に包み込んだ形として構成するときに、スポンジ等の移動や形崩れを防止できる等の点で良いものである。
【0048】
このような単繊維繊度0.001〜1.1デシテックスの極細繊維を少なくとも表面に有する繊維布を製造する方法は、特に限定されないが、例えば、複数の成分から構成される複合繊維を用いて、特に、該複合成分のうち、一成分を溶出除去する、あるいは各成分ごとに分割する等の、後の極細化加工により極細化が可能にされてなる複合繊維を原料繊維に用いて製布すること等により製造できる。
【0049】
このような極細繊維を有する繊維布の製造は、近年、合成繊維関係業界では広く行われてきているものであり、極細化加工は、繊維や、その集合体たる糸の段階、あるいは繊維布に形成された後などの段階で行うことができる。極細繊維としての太さは、製造のしやすさ、コストの点、ワイピング性能・クリーニング性能、効果などから、単繊維繊度0.01〜1.1デシテックスの範囲内であることが有効であり、中でも、単繊維繊度0.01〜0.6デシテックスの範囲内が最も実用的かつ効果的である。
【0050】
該繊維布の製造に際しては、例えば、上記の複合繊維が集合した糸の段階で、仮より加工などの捲縮嵩高加工を施してもよいし、あるいは、織物や編物、不織布などに形成した後、ウォーターパンチング加工等を施すことなどにより、極細繊維に、いわゆるバラけ効果とも言うべき開繊効果(極細繊維の1本1本が、集束した束状から多少バラけて、互いに広がってスポンジのような立体構造の状態を示す効果)を与えることなどもできる。
【0051】
このような開繊効果は、上記の捲縮嵩高加工によっても付与することができ、また、ポリエステル系繊維とポリアミド系繊維などの混用使用の場合には、それらの異種繊維が持つ収縮差などによっても付与することができる。
【0052】
このような開繊効果により、極細繊維の1本1本が、集束した束状から多少バラけて、互いに広がってスポンジのような立体構造がうまく形成されているものは、上述したように、細径の繊維が、被クリーニング物に付着した汚れや油分などをそぎ取り、かつ細径の繊維間に形成される繊維間間隙に該汚れや油分などをより効果的に取り込むことができるので、より高くかつ持続する拭き取り効果を得ることができ好ましいものである。
【0053】
また、繊維布としては、適宜に撥水加工、撥油加工などの各種の機能性付与加工を施したものを使用してもよい。
【0054】
【発明の効果】
以上述べたとおりの本発明によれば、銀行のATM(自動貯金支払機)やCD機の通帳記帳部などのカード読取り機器を、簡単にかつ効果的にクリーニングすることができるクリーニングカードが提供されるものである。
【0055】
本発明にかかるクリーニングカードによれば、カード通過経路の両サイドに該経路から離れて位置している被クリーニング部材に対しても効果的にクリーニング・ワイピング効果を発揮することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係るカード機器のクリーニングカードの一実施態様例を説明する図であり、本発明に係るカード機器のクリーニングカードを外観斜視図で表した概略モデル図である。
【図2】図2は、本発明にかかるカード機器のクリーニングカードの構造例を説明するものであり、同図(a)は該カードを上方から見た概略平面図、同図(b)は該平面図に対応する概略側面図である。
【図3】図3は、本発明にかかるカード機器のクリーニングカードを構成するシート構造例を示すためにカードシートの断面を示した概略モデル図である。
【図4】図4は、突出弧状成形部2の各種態様例をモデル的に示した概略断面図である。
【符号の説明】
1:本発明に係るクリーニングカード
2:突出弧状成形部
3:芯材
4:繊維布
5:低融点フィルム
A:カード機器に挿入する方向
H:突出弧状成形部の突出高さ
L:突出弧状成形部のふもと部長さ
Claims (15)
- 単繊維繊度0.001〜1.1デシテックスの極細繊維を少なくとも表面に有する繊維布が、芯材シートの表面および裏面に配されてなり、全体平面形状は実質的に方形のカード状シートを呈していて、かつ、カード機器に挿入する方向と平行な方向のシート断面の一部において、該シート断面形状が突出した弧状を呈するように成形された突出弧状成形部が設けられていて、該突出弧状成形部は実質的にカード機器に挿入する方向と直角方向に延びて存在していることを特徴とするカード機器のクリーニングカード。
- 繊維布が、織物からなることを特徴とする請求項1に記載のカード機器のクリーニングカード。
- 繊維布が、編物からなることを特徴とする請求項1に記載のカード機器のクリーニングカード。
- 繊維布が、不織布からなることを特徴とする請求項1に記載のカード機器のクリーニングカード。
- 単繊維繊度0.001〜1.1デシテックスの極細繊維を少なくとも表面に有する繊維布が、芯材シートの表面および裏面に張り合わされて配されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のカード機器のクリーニングカード。
- 突出弧状成形部の撓み硬さが、4.0〜20.0kPaの範囲内にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のカード機器のクリーニングカード。
- 突出弧状成形部の撓み硬さが、5.0〜17.0kPaの範囲内にあることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のカード機器のクリーニングカード。
- 突出弧状成形部の撓み硬さが、8.0〜14.0kPaの範囲内にあることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のカード機器のクリーニングカード。
- 芯材シートが、剛軟度500〜3500mgの合成繊維不織布からなることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のカード機器のクリーニングカード。
- 突出弧状成形部が、少なくとも2箇所で設けられてなることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のカード機器のクリーニングカード。
- 芯材シートが、ポリエステルスパンボンド不織布からなることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のカード機器のクリーニングカード。
- カードを形成するシートの厚さが0.5〜5mmの範囲内のものであることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のカード機器のクリーニングカード。
- 突出弧状成形部の突出高さが、2〜7mmの範囲内のものであることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のカード機器のクリーニングカード。
- 突出弧状成形部のふもと部長さが、1〜5cmの範囲内のものであることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のカード機器のクリーニングカード。
- カードを形成するシートのKES法による曲げ硬さ(B)が1×10−3 〜10×10−3 N・m2 /mであり、かつ、ヒステリシスの幅(2HB)が5×10−2〜30×10−2 N・m /mであることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載のカード機器のクリーニングカード。
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- 2002-09-24 JP JP2002277265A patent/JP2004118893A/ja active Pending
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