JP4566142B2 - 不織布 - Google Patents

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本発明は、立体捲縮繊維を含む不織布に関する。また本発明は、該不織布を表面シートとして用いた吸収性物品に関する。
不織布の肌触りを判断する場合には、不織布を握ってみたり、軽く引っ張ったり、さすったり、或いは曲げたりするといった様々な力を不織布に与えることで、その不織布が伸びたり、皺ができたり、曲がったりするといった変形との関係を調べるのが通常である。不織布の肌触りは、これら様々な観点から総合的に判断される。
不織布の肌触りの判断要素の一つである表面平滑性に関し、この特性を高めることを目的として、表面の毛羽立ちを抑えた吸収性物品の表面シートが提案されている(特許文献1及び2参照)。特許文献1においては、短繊維ウエブを形成しその表面から突出した該短繊維の先端を120〜130℃に加熱された熱ロールによって抑え込んで得た表面層と、天然繊維の混在するウエブから得た前記表面層と積層される第2の層とを含む2以上の層を積層することによって表面シートを得ている。一方、特許文献2においては、二本のローラーの間に不織布を挟むか、又は不織布表面にローラーを転がして、毛羽立つ繊維を不織布表面に寝かせるように押さえ付けている。不織布表面の毛羽立ちを抑えることは肌触りの向上にとって重要な要因である。しかし、毛羽立ちを抑えただけでは総合的に肌触りが良好であるとは言えず、肌触りの向上に大きな影響を及ぼす他の要因であるしなやかさやふんわり感の面で不十分である。
特開2003−235896号公報 特開2003−265528号公報
従って本発明の目的は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る不織布及びそれを用いた吸収性物品を提供することにある。
本発明は、立体捲縮繊維を含み、該立体捲縮繊維の巻き上げ方向が、軸線の方向に対して55度以下の角度θをなして傾斜している不織布を提供するものである。
また立体捲縮繊維を含み、該立体捲縮繊維の巻き上げ方向が、軸線の方向に対して55度以下の角度θをなして傾斜している不織布を表面シートとして用いた吸収性物品を提供するものである。
更に本発明は、潜在捲縮性繊維を含むウエブを形成し、このウエブの構成繊維どうしを融着させ、その融着と同時に又はその後に前記潜在捲縮性繊維に立体捲縮を発現させ、次いでカレンダー加工を施して立体捲縮が発現した繊維を変形させ、繊維の巻き上げ方向を軸線の方向に対して傾斜させる不織布の製造方法を提供するものである。
本発明の不織布は、それに含まれる立体捲縮繊維の巻き上げ方向が、軸線方向に対して傾斜しているので、不織布表面が滑らかなものとなり、また曲げに対する剛性が低く、柔らかで且つドレープ性に優れたしなやかなものである。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の不織布の好ましい実施形態の断面が模式的に示されている。不織布1は、一方の面を含む第1層11と、他方の面を含む第2層12とを有する2層構造のものである。第1層11及び第2層12は、それぞれ繊維集合体からなり、互いに積層されて部分的に接合されている。第1層11と第2層12との接合部13は、図示の如く、熱及び/又は圧力の作用によって圧密化されて不織布1の他の部位よりも厚みが小さくなっている。これによって第1層11側には、所定のパターンで分散配置された多数の凸部15と、接合部13上に形成された多数の凹部14とが存在しており、これらの凸部15及び凹部14により不織布1の第1層の表面に凹凸形状が形成されている。
第1層11及び第2層12の構成繊維は、その交点において接合されているか、又は接合されていない状態になっている。交点において繊維どうしが接合されている場合、その接合様式としては、例えばエアスルー法による熱融着や、接着剤による接着などが挙げられる。後述するように、第2層12に捲縮繊維が含まれている場合には、該捲縮繊維が接合しておらず、絡み合いによってシート化されていることが、繊維間の自由度が高くなり、厚さ方向の圧縮回復性及び平面方向の伸縮性が向上する観点から好ましい。
第2層12には立体捲縮繊維が含まれている。立体捲縮繊維が含まれていることで、不織布1に伸縮性が付与される。立体捲縮繊維は、図5に示すように、軸線Aに沿って繊維がコイル状(螺旋状)に巻き上げられた形状を有するものである。同図に示すように、立体捲縮繊維は一般にその繊維の巻き上げ方向が軸線Aの方向に対して水平に近い角度θになっている。これに対して、本実施形態の不織布1に含まれている立体捲縮繊維は、図2に示すように、繊維の巻き上げ方向が、繊維の軸線Aの方向に対して傾斜して角度θをなしている。これによって、同径の立体捲縮繊維で比較した場合、図2に示す本実施形態の立体捲縮繊維は、図5に示す一般の立体捲縮繊維に比較して、断面二次モーメントが低下する。その結果、不織布1全体として曲げに対する剛性が低下し、それによって不織布1は柔らかで且つドレープ性に優れたしなやかなものとなる。更に、不織布1の有する凹凸構造に起因するふんわり感と相まって、不織布1の柔らかさが一層顕著なものとなる。従って、不織布1を高坪量としても、柔らかさやしなやかさが維持される。その上、図2に示す本実施形態の立体捲縮繊維は、図5に示す一般の立体捲縮繊維に比較して、その全体として見たときに、繊維の表面が滑らかになる。その結果、立体捲縮繊維が含まれている第2層12の表面は滑らかなものとなる。
不織布1を一層柔らかで且つドレープ性に優れたしなやかなものとする観点、及びその表面を一層滑らかにする観点から、本実施形態の立体捲縮繊維は、繊維の巻き上げ方向が、軸線Aの方向に対して55度以下、好ましくは45度以下の角度(以下、この角度を巻き上げ角ともいう)θをなしている。下限は特に制限はないが、5度以上であることが好ましい。巻き上げ角θは、立体捲縮繊維を電子顕微鏡観察することで実測される。この場合、立体捲縮繊維が軸線Aに沿って一周巻き上がる範囲で、測定位置によって傾斜角度が異なる場合には、傾斜角度が最も小さい位置における当該傾斜角度を巻き上げ角θと定義する。なお、第2層12に含まれる立体捲縮繊維の巻き上げ角θがすべて前記の範囲内になることは必要とされず、複数本の立体捲縮繊維を対象として測定された巻き上げ角θの平均値が前記範囲内であれば、不織布1に所望の特性が付与される。巻き上げ角θを測定するための立体捲縮繊維の本数は5〜10本とすることが適切である。
以上の通り、本実施形態の不織布1は、図2に示す状態の立体捲縮繊維を含んでいることで、立体捲縮繊維本来の性質に由来する伸縮性を有することに加えて、柔らかで且つドレープ性に優れたしなやかなものとなり、また第2層12の表面が滑らかなものとなる。第2層12の滑らかさを一層顕著なものとする観点から、立体捲縮繊維は、図2に示すように、その横断面Sの形状が扁平であることが好ましい。図2に示す本実施形態の立体捲縮繊維と異なり、一般の立体捲縮繊維は、図5に示すように、その横断面Sの形状が円形である。
立体捲縮繊維の横断面Sが扁平である場合、その扁平率(長軸長/短軸長)が1.2以上、とりわけ1.3以上の値となる扁平形状であることが好ましい。立体捲縮繊維は、その全長に亘って横断面が扁平になっていることが好ましいが、それに限定されず、全長のうちの70%以上、特に80%以上の部分における横断面が扁平になっていれば、不織布1の表面の滑らかさが極めて顕著となる。特に、立体捲縮繊維どうしの交点が接合されている場合、接合部において横断面が扁平になっていることが好ましい。
また立体捲縮繊維は、そのすべてが扁平であることが望ましいが、それに限定されない。第2層12の縦断面を電子顕微鏡で拡大して、立体捲縮繊維の横断面形状を観察した場合に、本数基準で70%以上の繊維が扁平な形状であれば、不織布1の表面の滑らかさが極めて顕著となる。また、立体捲縮繊維の全長に亘って扁平な形状でなくてもよい。扁平状態を観察するための立体捲縮繊維の本数は10本とすることが適切である。
不織布1の第2層12に滑らかさを更に一層付与するために、第2層12に含まれる前述の横断面Sが扁平な立体捲縮繊維は、その横断面の長軸方向が不織布1の平面方向に概ね配向していることが好ましい。この観点から、第2層12の表面及びその近傍に位置する立体捲縮繊維ほど、その横断面Sの長軸方向が不織布1の平面方向に配向していることが好ましい。概ね配向しているとは、第2層12の縦断面を電子顕微鏡で拡大して、扁平な立体捲縮繊維の長軸方向を観察したときに、本数基準で70%以上の繊維の長軸方向が、不織布1の平面方向と±30度以内の角度をなしていることをいう。
また、不織布1の両面の滑らかさを一層顕著なものとする観点から、第1層11の構成繊維も、第2層12に含まれる立体捲縮繊維のように、その横断面の形状が扁平であることが好ましく、更に、その横断面Sの長軸方向が不織布1の平面方向に配向していることが一層好ましい。
本実施形態においては、不織布1における第1層11にも立体捲縮繊維が含まれていることが好ましい。これによって、(1)クリンプ形状による伸縮性、及び(2)融着していない絡み合いによる間の自由度の高さに起因して、第1層11の凸部の圧縮回復性が高まり、クッション性が良好になるという付加的な効果が奏される。第1層11に含まれる立体捲縮繊維は、第2層12に含まれる立体捲縮繊維と同種のものでもよく、或いは異なるものでもよい。この場合、第1層11に含まれる立体捲縮繊維の割合よりも、第2層12に含まれる立体捲縮繊維の割合の方が高くなっていることが、第1層11に凹凸構造を首尾良く形成する観点から好ましい。
第1層11に立体捲縮繊維が含まれる場合、その割合は、第2層12に含まれる立体捲縮繊維の割合の10〜90%、特に30〜50%であることが好ましい。各層に含まれる立体捲縮繊維の割合そのものの値は、第1層11については10〜70重量%、特に10〜50重量%であることが好ましい。第2層12については50〜100重量%、特に70〜100重量%であることが好ましい。
第1層11に立体捲縮繊維が含まれる場合、該立体捲縮繊維は、第2層12に含まれる立体捲縮繊維と同様に、繊維の巻き上げ方向が、軸線方向に対して傾斜していることが好ましい。これによって、不織布に1に伸縮性が一層付与され、更に、柔らかさやしなやかさが一層付与される。その上、第1層11の表面が滑らかなものとなる。これらの観点から、第1層11に含まれる立体捲縮繊維は、第2層12に含まれる立体捲縮繊維に関して説明した形状や構造を有していることが好ましい。つまり、第1層11に含まれる立体捲縮繊維については、第2層12に含まれる立体捲縮繊維に関する説明が適宜適用される。
不織布1においては、第2層12よりも第1層11の方が、密度(繊維密度)が低くなっていることが好ましい。つまり、第2層12よりも第1層11の方が疎な構造になっていることが好ましい。これによって、第1層11の側に形成されている凸部15が嵩高なものとなり、不織布1全体としてのクッション性が良好になり、風合いが向上する。また後述するように、不織布1を吸収性物品の表面シートとして用い、且つ第1層11を肌当接面側に配置した場合、表面シート上に排出された液が、第1層11内に素早く吸収され、しかも第1層11内に吸収された液が粗密勾配によりスムーズに第2層12に移行するので、液が表面シートの表面に残ることに起因するむれの発生、痒みやかぶれ、不快感等を効果的に防止することができる。
これらの観点から、第1層11の密度d1と第2層12の密度d2との比(d2/d1)は1.2〜10、特に3〜10であることが好ましい。各層の密度そのものに関しては、第1層11の密度は0.001〜0.05g/cm3、特に0.01〜0.03g/cm3であることが好ましい。一方、第2層12の密度は0.03〜0.2g/cm3、特に0.04〜0.1g/cm3であることが好ましい。密度の測定方法は次の通りである。
先ず、不織布1から、縦横の長さが30mm×30mmの試験片を切り出す。第1層11の密度d1については、試験片の縦方向〔第1層を構成する不織布の繊維配向方向(不織布製造時の流れ方向)〕に略平行で且つ接合部13を通る線上で厚み方向に垂直に切断面を作る。この断面から、第1層11の見掛け厚みt1(mm)を測定する。見掛け厚みt1の測定方法は後述する。次に、第1層11と第2層12の接合前に予め測定した第1層11の面積(a1×b1)と第1層11を第2層12に接合させた後に測定した第1層11の面積(a2×b2)とから、以下の式に従い試験片の収縮面積率A(%)を求める。
収縮面積率A=((a1×b1−a2×b2 )÷(a1×b1))×100
更に、求めた収縮面積率A(%)と、第1層11と第2層12の接合前に予め測定した第1層11の坪量P1(g/m2)とから、以下の式に従い第1層11と第2層12の接合後の第1層の坪量P2(g/m2)を求める。
第1層の坪量P2=P1×100/(100−A)
そして、第1層11の繊維密度d1(g/cm3)を、以下の式に従い求める。
d1=P2×(1/1000)×(1/t1)
第2層12の密度については、第1層11の密度の測定と同様にして求めることができる。この場合、第2層12の見掛け厚みt2は、後述する方法で測定し、測定された値を用いて密度d2を算出する。
見掛け厚みt1及びt2の測定方法は以下の通りである。先ず、不織布から、縦横の長さが30mm×30mmの試験片を切り出す。そして、縦方向〔第1層を構成する不織布の繊維配向方向(不織布製造時の流れ方向)〕に略平行で且つ接合部13を通る線で切断面を作る。オリンパス製のハイスコープSZH10にて、この断面の拡大写真を得る。拡大写真のスケールを合わせて、第1層11の最大厚みを求め、これを第1層の見掛け厚み(t1)とする。また、その第1層の最大厚み測定部位において、第2層の厚みを測定し、これを第2層の見掛け厚み(t2)とする。即ち、第1層及び第2層の見掛け厚みは、不織布の厚み方向に延びる同一直線に沿って測定する。
具体的な用途にもよるが、不織布1は、その坪量が40〜110g/m2、特に50〜90g/m2であることが好ましい。不織布1を構成する各層に関しては、第1層11の坪量は20〜55g/m2、特に25〜45g/m2であることが好ましい。第2層12の坪量は20〜55g/m2、特に25〜45g/m2であることが好ましい。
各層の構成繊維について説明すると、先に述べた通り、第2層12は立体捲縮繊維を含んでいる。第2層12は立体捲縮繊維のみから構成されていてもよく、或いは他の繊維を含んでいてもよい。他の繊維としては、例えば通常の熱可塑性繊維や、レーヨン等の再生繊維、コットン等の天然繊維が挙げられる。立体捲縮繊維に加えて他の繊維が含まれている場合、他の繊維の配合量は、第2層12全体に対して1〜50重量%、特に5〜30重量%であることが好ましい。
一方、第1層11の構成繊維としては、例えば通常の熱可塑性繊維や、レーヨン等の再生繊維、コットン等の天然繊維が挙げられる。また、先に述べた通り、第1層11は、立体捲縮繊維を含んでいてもよい。その場合の立体捲縮繊維の配合量は、先に述べた通りである。
第1層11や第2層12に立体捲縮繊維以外の繊維が含まれる場合、不織布1の両面の滑らかさを一層顕著なものとする観点から、立体捲縮繊維以外の繊維も、立体捲縮繊維のように、その横断面の形状が扁平であることが好ましく、更に、その横断面Sの長軸方向が不織布1の平面方向に配向していることが、一層好ましい。
次に、本実施形態の不織布1の好ましい製造方法について説明する。先ず、第1層11及び第2層12を構成する繊維集合体をそれぞれ製造する。かかる繊維集合体としては、例えばウエブや不織布を用いることができる。不織布は、例えばエアスルー法、ヒートロール法(熱エンボス法)、エアレイド法、メルトブローン法などによって製造される。ウエブは例えばカード機によって製造される。特に、第1層11を構成する繊維集合体として不織布を用い、第2層12を構成する繊維集合体としてウエブを用いることが好ましい。
第2層12を構成するウエブには、潜在捲縮繊維が含まれていることが好ましい。潜在捲縮繊維は、加熱される前は、通常の不織布用の繊維と同様に取り扱うことができ、且つ所定温度での加熱によってコイル状の立体捲縮が発現して収縮する性質を有する繊維である。潜在捲縮繊維は、例えば収縮率の異なる2種類の熱可塑性ポリマー材料を成分とする偏心芯鞘型複合繊維又はサイド・バイ・サイド型複合繊維からなる。その例としては、特開平9−296325号公報や特許2759331号明細書に記載のものが挙げられる。
一方、第1層11を構成する不織布には、潜在捲縮繊維又はコイル状の立体捲縮繊維が含まれていることが好ましい。また第1層11を構成する不織布には、潜在捲縮繊維以外の熱収縮性繊維が含まれていないことが好ましい。
次いで、第2層12を構成する繊維集合体上に、第1層11を構成する繊維集合体を重ね、これらを所定のパターンで部分的に接合する。両者を接合する方法は、少なくとも第1層11の厚みが他の部位よりも減少した接合部13を形成できる限り各種の方法を用いることができる。例えば、熱エンボス又は超音波エンボスが好ましい。接合部13は、互いに独立した散点状のものであっても良いし、直線状や曲線状(連続波形等を含む)、格子状、ジグザグ形状等であっても良い。接合部13を散点状に配置する場合の各接合部の形状は、円形状、三角形状、四角形状等、任意の形状とすることができる。
接合された第1層11と第2層12に対して、熱を付与し、第2層12に含まれる潜在捲縮繊維をコイル状に立体捲縮させる。この状態の立体捲縮繊維は、図5に示す状態になっている。即ち、繊維の巻き上げ方向は、軸線Aの方向に対してほぼ水平方向になっている。捲縮によって、接合部13間に位置する第2層12の構成繊維が収縮する。この収縮に伴い、接合部13間に位置する第1層11の構成繊維が隆起する。この隆起によって、凸部15が形成される。また凸部15間、即ち接合部13の位置に凹部が形成される。このようにして、第1層側の表面が凹凸形状となっている不織布が得られる。このような不織布の製造方法の詳細は、例えば本出願人の先の出願に係る特開2002−187228号公報や特開2004−202890号公報に記載されている。
得られた不織布は次いでカレンダー加工に付される。カレンダー加工には一対のロールが用いられる。これらのロールのうち、一方のロールは、金属製のカレンダーロールである。他方のロールは、D硬度(JIS K6253)が好ましくは40〜100度、更に好ましくは70〜95度の樹脂製又は金属製ロールである。カレンダーロールは、他方のロールよりもD硬度が高くなっているか、又は同硬度になっている。これらのロールの組み合わせを用いることで、不織布に含まれている立体捲縮繊維は、その巻き上げ方向が、軸線の方向に対して傾斜する。
詳細には、不織布は、一対のロールの間に導入されてカレンダー加工に付されて挟圧される。その結果、立体捲縮繊維が変形してその巻き上げ方向が、軸線の方向に対して傾斜する。また横断面が扁平になる。更に、挟圧によって不織布に「揉み」の作用が加わり、繊維どうしの結合点の一部が変形ないし破壊されて、不織布がしなやかになる。更に、扁平に変形した立体捲縮繊維は、その横断面における長軸方向が、不織布の平面方向に配向する。この場合、第2層12に、立体捲縮繊維に加えて、他の繊維(捲縮を有さない繊維又は二次元捲縮している繊維)が含まれていると、立体捲縮繊維に集中的に挟圧力が加わり、繊維の巻き上げ方向の傾斜が一層顕著となる。また、繊維の扁平化が一層顕著となる。第1層11に捲縮繊維が含まれている場合も同様である。
不織布にカレンダー加工を施すことは従来行われていたが、その目的は、従来技術の項で述べたように、不織布表面の毛羽立ちを防止することがほとんどであった。従って、カレンダー加工の条件は比較的緩やかなものであり、繊維が変形するほどにカレンダー加工を行うことは希であった。特に、コイル状に立体捲縮した繊維を含む不織布にカレンダー加工を施して該立体捲縮繊維を変形させることは、せっかく形成したコイル状の捲縮状態を破壊することになるので、有利な加工ではないと考えられていた。これに対して、意外にも、本発明者らは、立体捲縮繊維を含む不織布にカレンダー加工を施し、該立体捲縮繊維を図2に示すように変形させることで、曲げに対する剛性が低下して不織布が柔らかくなること、及び表面が滑らかになることを見いだしたものである。この理由は、先に述べた通り、立体捲縮繊維の断面二次モーメントが低下することによるところが大きい。
カレンダー加工における線圧は好ましくは50〜700N/cm、更に好ましくは100〜300N/cmとする。この条件下にカレンダー加工を施すことで、生産性の高いライン速度を保ちつつ、立体捲縮繊維の巻き上げ方向を確実に傾斜させることができる。また横断面を確実に扁平に変形させ得る。各ロールは通常、非加熱状態で用いられる。一対のロールのうち、カレンダーロールは鏡面加工された平滑なものであってもよく、或いは梨地等の微細な凹凸が施されたものであってもよい。他方のロールは、それが樹脂ロールである場合には、例えば硬質ゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体(EPDM)等の樹脂から構成されるものを用いることができる。他方のロールが金属製ロールである場合には、カレンダーロールと同様に、鏡面加工された平滑なものであってもよく、或いは梨地等の微細な凹凸が施されたものであってもよい。
以上の通り、前記の製造方法は、(i)潜在捲縮性繊維を含むウエブを形成する工程、(ii)このウエブの構成繊維どうしを融着させる工程、(iii)その後に前記の潜在捲縮性繊維に立体捲縮を発現させる工程、(iv)カレンダー加工を施して立体捲縮が発現した繊維を変形させ、繊維の巻き上げ方向を軸線の方向に対して傾斜させる工程を含んでいる。場合によっては、(ii)のウエブの構成繊維どうしを融着させる工程と、(iii)の潜在捲縮性繊維に立体捲縮を発現させる工程とを同時に行うこともある。
このようにして得られた不織布1は、例えば生理用ナプキンやパンティライナ、使い捨ておむつなどの各種吸収性物品の表面シート、外科用衣類、清掃シート等の各種の用途に用いることができる。先に述べた通り、不織布1は、表面が滑らかであり、また曲げに対する剛性が低く、柔らかで且つドレープ性に優れたしなやかなものなので、不織布1を、特に吸収性物品の表面シートとして用いると、肌触りが良好で装着感に優れた吸収性物品を得ることができる。不織布1を表面シートとして用いる場合には、第1層側が、使用者の肌に接するように配されることが、肌触りを一層良好にする観点から好ましい。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態の不織布1は2層構造のものであったが、これに代えて不織布を単層構造とすることもでき、或いは3層以上の多層構造とすることもできる。単層構造とする場合には、捲縮繊維が50重量%以上、特に70重量%以上含まれていることが好ましい。捲縮繊維100%から構成されていてもよい。3層以上の多層構造とする場合には、少なくとも最外層に捲縮繊維が含まれていることが、滑らかさの一層の向上の点から好ましい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されない。
〔実施例1〕
(1)第1層の繊維集合体の製造
大和紡績(株)製の潜在捲縮性繊維CPP(商品名、2.2dtex×51mm、鞘成分樹脂の融解温度(融点):145℃)を原料としてカード法によって坪量15g/m2のウエブを製造した。熱エンボスロール(145℃±10℃)を用いてウエブを熱エンボス加工し、第1層の繊維集合体を製造した。エンボス面積率は28%であった。
(2)第2層の繊維集合体の製造
大和紡績(株)製の潜在捲縮性繊維CPP(商品名、2.2dtex×51mm、鞘成分樹脂の融解温度(融点):135℃)を原料としてカード法によって坪量30g/m2の第2層の繊維集合体を製造した。
(3)不織布の製造
第1層の繊維集合体と第2層の繊維集合体とを重ね合わせ、超音波エンボス法によって両繊維集合体を部分的に接合し積層体を得た。エンボスによる各接合部の形状は円形であり、その配列パターンは菱形格子状であった。熱風炉において積層体に130℃±10℃の熱風を5〜10秒間エアスルー方式で吹き付けた。これによって各繊維集合体に含まれる潜在捲縮性繊維を捲縮させて各繊維集合体をその面内方向に収縮させた。このとき、第1層の繊維集合体に含まれている潜在捲縮性繊維は、先に行った熱エンボス加工によってその捲縮が妨げられているので、第2層の繊維集合体の面積収縮率の方が第1層の繊維集合体の面積収縮率よりも高くなった。その結果、第1層の繊維集合体から形成される第1層においては接合点間において凸部が多数形成された。このようにして得られた不織布はその坪量が92g/m2であり、接合点の面積率は不織布の面積の7%であった。
(4)カレンダー加工
一対の金属鏡面ロールを用いてカレンダー加工を行った。線圧は300N/cmであった。
〔実施例2〕
大和紡績(株)製の潜在捲縮繊維〔CPP繊維(商品名)、2.2dtex×51mm〕及び大和紡績(株)製の芯鞘型熱融着性複合繊維を原料として、カード法によってカードウエブを製造した。潜在捲縮繊維と熱融着性複合繊維との重量比(前者:後者)は50:50であった。潜在捲縮繊維は芯がポリプロピレン、鞘がエチレン−プロピレンランダム共重合体からなるものであった。熱融着性複合繊維は芯がポリエチレンテレフタレート、鞘がポリエチレンからなるものであった。このカードウエブに超音波エンボスを施した。エンボスパターンは実施例1と同様とした。次いで、熱風をエアスルー方式で吹き付けて、繊維交点を熱融着させた。これにより坪量92g/m2 の不織布を得た。
得られた不織布をカレンダー加工した。カレンダー加工は、一対の金属鏡面ロールを用いてカレンダー加工を行った。線圧は300N/cmであった。
〔比較例1及び2〕
実施例1及び2においてカレンダー加工を施さない以外は実施例1及び2と同様にして不織布を得た。
〔評価〕
実施例及び比較例で得られた不織布について、立体捲縮繊維の巻き上げ角及び断面形状を電子顕微鏡で測定した。巻き上げ角は、5本の繊維を対象として測定され、その平均値を算出して巻き上げ角の値とした。また、以下の方法で表面特性(表面粗さの平均偏差SMD、摩擦係数MIU、摩擦係数の平均偏差MMD)、圧縮特性の線形性LC、曲げ剛性Bを測定した。これらの測定は、以下の書籍に記載の方法に従い、カトーテック株式会社製のKESFB4−AUTO−A(商品名)を用いて測定した。
川端季雄著、「風合い評価の標準化と解析」、第2版、社団法人日本繊維機会学会 風合い計量と規格化研究委員会、昭和55年7月10日発行
また、不織布の肌触りを、以下の方法で官能評価した。結果を表1に示す。更に、実施例1及び比較例1で得られた不織布における立体捲縮繊維の電子顕微鏡像を図3及び図4に示す。
〔表面粗さの平均偏差SMDの測定法〕
20cm×20cmの試験片を準備し、平滑な金属平面の試験台に取りつける。接触子を9.8cN(誤差±0.49cN以内)で試験片に圧着する。試験片を0.1cm/secの一定速度で水平に2cm移動させる。試験片には19.6cN/cmの一軸張力が与えられる。接触子は、0.5mm径のピアノ線を幅5mmでU字状に曲げたものからなり、9.8cNで試験片を圧着する。接触子は、ばねで圧着される。ばねの定数は24.5cN/mm(誤差±0.98cN/mm以内)とし、共振周波数は表面接触から離れた状態で30Hz以上とする。表面粗さの平均偏差の測定値はSMD値で表される。この測定をMD及びCDともに行い、下記式(1)から平均値を出し、これを表面粗さの平均偏差SMDとする。
表面粗さの平均偏差SMD={(SMDMD 2+SMDCD 2)/2}1/2 (1)
〔摩擦係数MIU及び摩擦係数の平均偏差MMDの測定法〕
20cm×20cmの試験片を準備し、平滑な金属平面の試験台に取りつける。接触子を49cNの力で接触面を試験片に圧着し、試験片を0.1cm/secの一定速度で水平に2cm移動させる。試験片には19.6cN/cmの一軸張力が与えられる。接触子は、表面粗さの測定に用いた接触子と同じ0.5mm径のピアノ線を20本並べ幅10mmでU字状に曲げたもので、重錘によって49cNの力で接触面を試験片に圧着させている。摩擦係数の測定値はMIU値で表され、この摩擦係数MIU値の平均偏差がMMD値で表される。この測定をMD及びCDともに行い、下記式(2−1)、(2−2)から平均値を出し、これを摩擦係数MIU及び摩擦係数の平均偏差MMDとする。
摩擦係数MIU={(MIUMD 2+MIUCD 2)/2}1/2 (2−1)
摩擦係数の平均偏差MMD={(MMDMD 2+MMDCD 2)/2}1/2 (2−2)
〔圧縮特性の線形性LCの測定法〕
20cm×20cmの試験片を準備し、試験台に取りつける。その試験片を面積2cm2の円形平面をもつ鋼板間で圧縮する。圧縮速度は20μm/sec、圧縮最大荷重は4.9kPaとする。回復過程も同一速度で測定を行う。圧縮特性の線形性はLC値で表される。LC値は下記式(3)で定義される。
〔曲げ剛性Bの測定法〕
20cm×20cmの試験片を準備し、試験台に取りつけ、1cmの間隔のチャックに試験片を把持する。試験片に対して、曲率K=−2.5〜+2.5cm-1の範囲で、等速度曲率の純曲げを行う。変形速度は0.50cm-1/secで、1サイクル変形を行う。曲げ剛性値Bは、前述の「風合い評価の標準化と解析」の記載では、曲率0.5〜1.5及び−0.5〜−1.5間の曲げモーメントの傾斜より算出しているが、不織布の測定では、この曲率間で屈曲が起きるケースがあり、正確な数値が表されにくい。そこで、本発明における曲げ剛性Bは、0〜最大曲げモーメント値及び0〜最小曲げモーメント値における傾斜より算出する。この測定をMD及びCDともに行い、下記式(4)から平均値を出し、これを曲げ剛性Bとする
曲げ剛性B={(BMD 2+BCD 2)/2}1/2 (4)
〔不織布の肌触り〕
不織布の肌触りを、やわらかさ及びなめらかさの観点から官能評価した。評価は、10人のパネラーを対象として以下の5段階で行った。結果は10人の平均点で示した。
・やわらかさに関して
「やわらかくて、肌触りがよい。」
5:そう思う
4:ややそう思う
3:どちらともいえない
2:あまりそう思わない
1:そう思わない
・なめらかさに関して
「なめらかで、肌触りがよい」
5:そう思う
4:ややそう思う
3:どちらともいえない
2:あまりそう思わない
1:そう思わない
表1に示す結果から明らかなように、実施例で得られた不織布は、立体捲縮繊維の巻き上げ方向が軸線の方向に対して傾斜し、且つ繊維の横断面が扁平になっていることで、曲げ剛性が低く柔らかいものであることが判る。また、表面が滑らかで肌触りが良好であることが判る。
本発明の不織布の一実施形態の断面を示す模式図である。 本発明の不織布に含まれる立体捲縮繊維の一例を示す模式図である。 実施例1で得られた不織布に含まれる立体捲縮繊維の電子顕微鏡像である。 比較例1で得られた不織布に含まれる立体捲縮繊維の電子顕微鏡像である。 通常の立体捲縮繊維を示す模式図である。
符号の説明
1 不織布
11 第1層
12 第2層
13 接合部
14 凹部
15 凸部

Claims (7)

  1. 立体捲縮繊維を含み、該立体捲縮繊維の巻き上げ方向が、軸線の方向に対して55度以下の角度θをなして傾斜している不織布であって、
    前記不織布は、その一方の面を含む第1層と、他方の面を含む第2層を有し、
    一方の面は、多数の凹凸部を有する凹凸形状からなり、
    他方の面を含む第2層に前記立体捲縮繊維が含まれており、
    第2層に、前記立体捲縮繊維に加えて捲縮を有さない繊維又は二次元捲縮している繊維が含まれている不織布
  2. 立体捲縮繊維は、その横断面形状が扁平である請求項1記載の不織布。
  3. 第1層にも立体捲縮繊維が含まれており、
    第1層に含まれる立体捲縮繊維の割合よりも、第2層に含まれる立体捲縮繊維の割合の方が高くなっている請求項記載の不織布。
  4. 第1層に含まれる立体捲縮繊維は、その巻き上げ方向が、軸線方向に対して傾斜しているものである請求項記載の不織布。
  5. 第2層よりも第1層の方が、密度が低くなっている請求項1ないし4の何れかに記載の不織布。
  6. 請求項1記載の不織布を表面シートとして用いた吸収性物品。
  7. 立体捲縮繊維を含み、該立体捲縮繊維の巻き上げ方向が、軸線の方向に対して55度以下の角度θをなして傾斜している不織布の製造方法であって、
    潜在捲縮性繊維を含むウエブを形成し、このウエブの構成繊維どうしを融着させ、その融着と同時に又はその後に前記潜在捲縮性繊維に立体捲縮を発現させ、次いでカレンダー加工を施して立体捲縮が発現した繊維を変形させ、繊維の巻き上げ方向を軸線の方向に対して傾斜させ、
    カレンダー加工を一対のロールを用いて行い、線圧を300〜700N/cmとする不織布の製造方法。
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