JP2004117703A - 位相差板 - Google Patents
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Abstract
【課題】位相差板に関して、構造が簡単で、特に、比較的大きい透過面積を要する用途においても製造と支持が容易な位相差板を提供する。
【解決手段】金属板と、該金属板の面域を貫通する1個以上の開口とから成り、金属板の厚みが、開口を透過する光の波長の0.3〜2.0倍の範囲として、開口が、正多角形若しくは円形であり、開口の寸法が波長の0.3〜2.0倍の範囲にあり、多数の開口が、金属板の面域に、周期的に形成されて、該金属板に対する入射電磁波の入射角が、1〜30°の範囲として、電磁波、特にギガヘルツ波から可視光領域までを対象にした位相差板とする。
【選択図】 図1
【解決手段】金属板と、該金属板の面域を貫通する1個以上の開口とから成り、金属板の厚みが、開口を透過する光の波長の0.3〜2.0倍の範囲として、開口が、正多角形若しくは円形であり、開口の寸法が波長の0.3〜2.0倍の範囲にあり、多数の開口が、金属板の面域に、周期的に形成されて、該金属板に対する入射電磁波の入射角が、1〜30°の範囲として、電磁波、特にギガヘルツ波から可視光領域までを対象にした位相差板とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光を含む電磁波の位相差板に関し、特に、有孔金属板ないし金属皮膜による位相差板に関する。
【0002】
【従来の技術】
位相差板は、光の位相差板について直線偏光の光が通過する時にその偏光の直交成分の間に位相差を生じさせるような板を言い、従来は、複屈折性の板ないし膜を用いて偏光を制御する用途に用いられていた。
【0003】
古くから、光の位相差板は、1軸性の結晶をその光学軸に平行な平面で切断ないし劈開した結晶板が、1/4波長板、あるいは1/2波長板として、利用されていた。このような結晶には、雲母や水晶が知られている。この結晶板は、入射面からその内部を透過する光偏波の直交成分の間の位相差が伝播距離に比例して重積されて、結晶板の出口面で、2つの偏光が合成されて、所望の偏光を得ていた。
【0004】
位相差板の最近の用途の一例として、特開平3−87720号、特開平8−292432号、特開平11−231133号、さらに、特開2001−021720号などの先行文献に開示されているように、液晶ディスプレーの偏光制御素子として用いられているが、液晶ディスプレー等に使用される位相差板は、透明基板上に液晶性高分子と他の高分子との合成皮膜を形成したものであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記結晶形成の位相差板は、肉厚が大きく、あるいは、透過光に対して光透過率が低い場合には、媒体の光吸収による通過損失が大きく、光の利用効率が低くなっていた。また、大きな光照射面や通過面を確保するには、大きな結晶体の薄板加工が困難であった。
【0006】
さらに、液晶高分子膜による位相差板は、強度の確保のために、適当な基板と、表面を覆う保護膜を必要とし、長期に亘る使用耐久性が比較的低かった。特に、その製造においては、多数の工程を必要とし、その製造が一般には複雑である。さらに、液晶高分子を使用した位相差板の性能は、温度に敏感であり、照射エネルギー密度の高い用途には、耐熱的に使用上の限界があった。
【0007】
本発明は、上記従来の問題に鑑み、構造が簡単な位相差板を提供しようとするものであり、特に、比較的大きい透過面積を要する用途においても製造と支持が容易な位相差板を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基本的には、金属板と、金属板を貫通する開口とから成り、金属板の厚みと開口寸法を電磁波の波長レベルに調製設定することにより、位相差板とするのである。
【0009】
より詳しくは、本発明の位相差板は、金属板の厚みと開口寸法とを通過すべき電磁波の波長レベルとなし、且つ、後述の如く金属板面域内の開口の形状と配置に光学的異方性を付与することにより、開口を透過する直線偏向の電磁波の直交する2つの成分光に所要の位相差を生じさせ、楕円偏光に変えるのである。
【0010】
この構成の位相差板は、多数の開口を配置した金属板であるから、このような開口金属板単体を使用するか、又は開口金属板を適当な基板上に電磁波的に透明にして支持・形成すればよいので、構造上極めて簡単に構成でき、各種用途に提供することができる。
【0011】
本発明の位相差板が利用されるべき電磁波には、特に、メガヘルツ波、テラヘルツ波を含む。さらに、電磁波には、光を含み、テラヘルツ波につながる遠赤外光から、近赤外光、可視光、紫外光までを広く含む。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の位相差板は、入射電磁波の波長レベルの厚みの金属膜と、この金属膜を貫通して波長レベルの寸法を有する1つ以上の開口から構成される。
【0013】
金属板は、入射波長の波長レベルの厚みを有し、好ましくは、波長の0.3〜2.0倍の厚みのものが利用される。その厚みから、この明細書中「金属板」の語は、金属板の他に、金属シート、金属膜、金属フィルムを広く含む。
【0014】
本発明は、金属板に開口を形成したことを特徴とするが、開口は、金属板面内にあって対称形又は非対称形でもよい。このような開口の寸法は、入射波の波長レベルとし、特に、波長の0.3〜2.0倍の開口直径が好ましい。
【0015】
開口の1つの形態は、対称形であって、円形、正多角形等の幾何学的形状から選ばれる。特に、正四角形又は正三角形が選ばれる。また、開口の別の形態は、楕円形又は、多角形、特に、四角形が面域の一方向に伸ばされた長多角形ないし長四角形が利用される。
【0016】
この明細書においては、以下の説明のために、図2を参照して、金属板1は、入射波9の伝播方向(光ならば光軸)90をz軸として、z軸と直交する2つの直交軸、x軸とy軸、においても少なくともy軸内にあるとする。後述のように、金属板は、y軸廻りの回転位置を取ることがあるが、伝播方向(z軸)90と金属板1との成す各を入射角θとする。
【0017】
本発明においては、入射電磁波は、直線偏波が利用されるが、その入射波9の偏波方向(光であれば、偏光方向)96がx軸とy軸との間に設定される。このとき、図2に示すように、入射波の偏波方向96とx軸との成す角を、方位角φとする。
【0018】
入射波は、金属板の開口を伝播する電磁波としてTEモード(入射面に対して電界だけが垂直である)、TMモード(入射面に対して磁界だけが垂直である)、TEMモードを取り得るが、本発明は、例えば、入射波としてTMモードの直線偏波を金属開口に入射して、開口においてTMモードとTEモードとのカップリングを行なわせて、出射光をTM偏波とTE偏波の両方の成分を持った電磁波にするのである。TM偏波とTE偏波とは、互い直交しているので、両者の位相差によって合成波を楕円偏波にすることができる。これにより、本発明は、有孔金属板は、入射光の直線偏波に対して、出射波を楕円偏波にする位相差板として利用する。
【0019】
上記のTM偏波とTE偏波とのモードカップリングは、モードのエネルギーが等しく(2つのモードの周波数が同じ)、モードの波数が等しく(波長が同じ)、且つ、パリティミスマッチが生じないことが必要である。パリティとは、電磁波や光の進行方向に沿った面に対する電場分布を言うが、図3において、この電場分布91が遇関数であるときは、パリティはevenといい、奇関数のときはoddとすると、2つの伝播モードが、共にevenか、又は共にoddであるときは、モードカップリングを起し易いが、2つのモードが、evenとoddの関係にあるときは、モードはカップリングしないで、ミスマッチにあると言われる。
【0020】
開口を設ける金属板は、開口におけるTMモードとTEモードとが同じパリティであり、これら両モードの間ではカップリングが可能である。TMモードの電磁波、例えば、光を開口金属板に入射したとき、開口によりその一部は、TEモードに変換されるので、金属板の開口通過後は、TMモードとTEモードの合成波が得られる。
【0021】
以上は金属板の場合であったが、他方、開口を設ける板に半導体や誘電体を使用した場合には、これらのTM波とTE波とのパリティはミスマッチの関係にあるので、TMとTEとのモードカップリングは実質的に起きない。以上が、本発明において金属板を位相差板の基板として使用する理由である。このような波長レベルの開口と厚みとを有する金属板の構造体は、特に、金属フォトニック結晶と呼ぶことがある。
【0022】
開口した金属板において、上記TM/TEモードカップリングの大きさは、開口の形状・寸法と、金属板面域内の開口の配置・分布と共に、光学軸に対する開口の形状・配置の非対称性が寄与することが判っている。例えば、対称な円形開口で対称な開口配置(例えば、金属板の多数の開口が金属板の垂直軸廻りに少なくとも3回回転対称、ないしは、4回以上の回転対称を成す場合)においては、入射波の金属板面との入射角θが0°の入射に対しては、偏波ないし偏光の変化は殆ど生じない。この金属板に対する入射波の入射角θをわずか1°以上の入射角θにずらすと、TMモードからTEモードへの部分変換が生じ、フォトニック結晶出射後の偏波を変化させることができる。
【0023】
また、金属板の開口の形状又は配置を、x方向とy方向とで変えること(例えば、金属板の多数の開口が金属板の垂直軸廻りに2回回転対称の配置にすること)により、光学的異方性を生じ、金属板への垂直入射する入射波(入射角θ=0°)に対しても、上記モード変換を生じ、偏波の変化が可能であり、位相差を生じさせることができる。
【0024】
この実施形態においては、金属板に貫通する上記開口は、上記のように、開口寸法が、入射波長に対して、0.3〜2.0倍の範囲するのが好ましい。開口寸法が、入射波長の0.3倍未満では、入射電磁波の透過率が極端に低下し、2.0倍を越えると、出射後の偏光を変化させる効果がなくなり、好ましくない。図1のように、円形開口では、開口寸法に直径3を取り、上記の範囲に規定する。多角形においては、開口寸法は、対辺間の距離、又は、頂角−対辺の間の距離を言う。また、一方向に延びた光学異方的な開口において、その寸法は、開口の幅方向長さ32(図4、図5参照)を言うものとする。
【0025】
位相差板は、上記の金属板に複数個、特に、多数個で配置するのが、透過光量を増加させる点で好ましい。多数の開口はランダムに配置されても偏光を変化させることができるが、多数の開口を設けるには、周期的配置されているのが好ましい。
【0026】
金属板の開口の周期的な配置には、金属板の面域に複数の開口が等間隔で1方向に直線的に配列すること、さらに、1方向の配列が多数並列して二次元方向に配置されていること、を含む。開口の周期的な配置には、複数の開口が等間隔で、2方向に配列され、各方向に直線的に配列することを含む。配列の2方向は直行してもよく、また、斜交してもよい。開口は、これら直交した格子(例えば、正方格子)又は斜交した格子(斜方格子)の格子点位置に配置される。
【0027】
開口配置の他の形態は、金属板上で互いに近接する3個の開口が三角形を成すように、周期的に配列することを含み、この配列は、1個の開口に対して、6個の最近接開口が配置される(三方格子、ないし六方格子)。
図1には、多数の円形開口20を、金属板1に正三角形格子点に設けた例を示している。
【0028】
開口部による開口面積は、入射波に対する出射波の透過率を決めるので、上記開口の大きさと近接距離との条件から、最大の開口率を設けるのが好ましい。
【0029】
このような周期的な開口配列においては、互いに近接する開口の中心間の距離4(三角格子点配置の例については、図1、図4など参照、以下、単に「開口間隔」という)を、好ましくは、入射波の波長のレベルにし、特に、波長の0.5〜2.0倍が好ましい。0.5倍未満であれば、出射後の偏光を変化させる効果が弱まり、2.0倍を越えると、入射電磁波の透過率が低下し、好ましくない。開口を最大開口率に設定する点からは、各開口を三角点に配置する上記三角形配置が好ましい。
【0030】
本発明の実施形態において、金属板1の開口2が、周期的で且つ光軸(z軸)に対して対称的である場合は、上述のように入射光9を金属板1に斜め入射をさせることにより、入射光の偏光を変えることができ、位相差を生じさせる。この周期的且つ対称的な配置は、開口形状を円形、正多角形、例えば、正六角形、正方形、正三角形とする。
【0031】
このような開口が三角点に配置した金属板では、図2に一例として、開口が占める三角配置の格子点の主ベクトルの1つをx軸に取るように配置される。このとき、当該主ベクトルと他の1つの主ベクトルとの間に、偏波方向96が入るように、入射波9の偏波面が決められ、偏波方向は、y軸−x軸から傾斜するように、方位角φが設定される。
【0032】
さらに、入射波9は、金属板1の法線に対する入射角θを、1°〜89°の範囲に設定するが、好ましくは、1°〜30°の範囲とする。入射角を変えることにより、開口において入射光のy軸成分とx軸成分との間に位相差が生じ、その位相差は、入射角に依存するので、所望の入射角に設定される。入射角は、金属板をz軸に対して上記y軸廻りの回転角を設定することにより、容易に設定できる。
【0033】
入射光軸の金属板に対する入射角が大きくなるときは、金属板の厚みを考慮すると、開口を通過する光の透過量が減少するので、入射角が30°を越えるのは好ましくない。亦、入射角が大きいと、透過させるべき電磁波ビーム、例えば、光ビームの所要のビーム幅ないし照射幅に対して、金属板に開口形成する面域が増加することになる。
【0034】
本発明の別の実施形態は、金属板1を電磁波の伝播方向(即ち、光の場合の光軸)に正向させて、入射角を0°近くに配置させることができ、位相差を生じさせるために、開口形状または開口配置自体に光学的異方性を与えることを含む。一例として、光学的異方性のある開口それぞれは、金属板面域内でいずれかの一方向に延びた形状を含んでいる。例えば、x軸方向とy軸方向とのいずれか一方向が、他方向より延びた形状を有し、開口のこのような形状は、一方向に(例えばy軸方向に)伸びた楕円形ないし長円形があり、多角形においては、一方向に長い長六角形、長四角形、長三角形(二等辺三角形)などを含む。この実施例として。例として、図4には、開口として、x軸方向の長さ(幅方向寸法32)よりy軸方向の長さ(長手方向の長さ31)を大きくした長四辺形開口21を示している。図5には、x方向長さ(幅方向寸法32)に対してy方向の長さ(長手方向長さ31)が延びた楕円形開口22を示している。
【0035】
さらに、金属板1上の開口配置についても、x軸方向に対してy軸方向に相対的に延びた形状の長方格子点や長三角形状の格子点を多数の開口が占めるように配置される。上記図4と図5には、長三角形状の開口配置を示している。
【0036】
これらの開口の形状と配置は、前述したy軸廻りに回転配置した金属板の周期的且つ対称配置の上記開口を、入射光軸に垂直なx−y平面上(入射角零の)に投影した開口の配置と等価である。それ故、この実施形態は、入射光の偏向方向がx軸−y軸に斜交した方位角φを有し、上記の光学的異方な開口を配置した金属板に垂直照射されたとき、出射光は、x方向成分とy方向成分との間に位相差を生じ、楕円偏光となる。その位相差は、開口形状及び又は開口配置のx軸寸法に対するy軸寸法の対称性からの変位に依存する(これは、上記光学的等方性の場合の、入射角の変位に相当する)。
【0037】
本発明に使用する金属板は、その厚みが入射波の波長に依存するが、通常、その厚みは、入射波の波長の0.3〜2.0倍の範囲が好ましい。金属膜は、入射波長の0.3倍より薄いと、出射後の偏波を回転させる効果が弱くなり、他方、厚みが波長の2.0倍よりも大きいと、入射電磁波の透過率が極端に下がることになり、妥当でない。金属板の厚みは、好ましくは、0.3〜1.5倍とする。
【0038】
金属板は、その材質を特に限定しないが、例示すれば、銅、銀、金、アルミニウム、鉄、ニッケル、コバルトなどがある。このような金属板は、単体でもよく、また、電磁波に対して透明な基板上に固定されてもよい。金属板は、入射光の波長が長いとき(例えば、テラ波や遠赤外光)、その波長に対応して、0.1mm以上、あるいは、1mm以上での厚みである時は、特に、表面や裏面に支持体を設けずに、多数の開口を形成した金属板を単体で利用することができる。
【0039】
電磁波が、概ね、0.1mm以下の短波長光(近赤外光、可視光など)である場合には、金属板は、電磁波に対して透明な基板を担持体にして、その表面に金属膜として固定することができる。担持体には、ガラスやポリマー、セラミックなどの誘電体の板その他の成形体が利用される。金属膜は、真空中蒸着その他の方法で形成された種々の金属蒸着膜や化学的めっき膜(例えば、無電解めっき膜など)が利用され、公知の製膜方法で所要の開口を形成することができる。
【0040】
開口は、その媒質が、空気その他の気体のほか、電磁波に対して透明な誘電体であってもよい。また、開口の出口(あるいは、入口)は、上記のように、金属板を支持ないし担持する誘電体に覆われていてもよい。多数の開口は、金属板、ないし金属膜をマスキングした後、エッチングする方法などにより、比較的簡便に精密に形成することができる。
【0041】
【実施例】
本発明の開口金属板による実施例においては、波長約1mmのテラ波を使用して、偏光を測定した位相差板10は、金属板1に、厚み0.5mmで、縦横15×15mmのアルミニウム板を使用し、開口2は、直径0.65mmの円形開口20にし、開口間隔1.0mmで、三角形配置にし、金属板の面域10mm×10mmの範囲に形成した。
【0042】
偏光測定は、図6(A〜C)に示すように、光源には、レーザ光源60(Spectra Physics 社製 Tunami: レーザ波長800nmの赤外光)からレーザパルス61を、放射素子65としてフォトコンダクティブアンテナ光スイッチに照射して、1mm波パルスを放射させ、その電磁波を試料位相差板10に入射し、位相差板の通過波を、検出器71に入射するように配置して、検出器71により、開口金属板の通過波の強度を電気信号に変換して出力した。
【0043】
放射素子のフォトコンダクティブアンテナ光スイッチは、図6(C)に示すように、GaAs基板73上に、2つの特定長さのアンテナ素子74を金により成形し、アンテナ素子74間に ギャップ75を設けて高圧を印加してあり、ギャップ75に、レーザ源60からのレーザパルス61を照射したときだけ、半導体73内に励起キャリャを発生させて、パルスで変調された電磁波を放射させるものである。他方の検出器71は、放射素子65と同様のフォトコンダクティブアンテナ光スイッチを用いて、レーザ光源からの遅延されたレーザパルス63の到達時にだけ通過波の強度を、アンテナ出力として検出する。
【0044】
レーザパルスの到達時間は、四つの鏡から成る遅延時間制御機構64により通過光路長を変更する形で、調節して、検出器の検出タイミングを調節ながら通過波強度のサンプリングをした。
【0045】
詳細には、図6(B)に示すように、放射素子と検出器との間には、2つの反射鏡を配置し、反射鏡の間には、入射波の光軸上に、第1の偏光子67と、試料位相差板10である上記開口金属板と第2の偏光子68と、次いで、第3の偏光子69を配置した。
【0046】
図7は、上記装置で、位相差板10を配置しないで、入射波パルスを測定した時間的電界強度分布をx−y座標で示している。図中の座標で、x軸方向の鋭いピークを持つ強度分布だけが観察され、y軸方向の強度は、実質的には観察されない。これから、入射波パルスが直線偏波であることがわかる。
【0047】
図8は、位相差板10を、装置に装入し、y軸廻りにわずかに回転させて、入射角θを3°に設定して、この位相差板に上記入射波パルスを透過させた時のこの開口金属板からの出射波の時間的な強度分布変化の測定結果を示すが、x軸方向と共にy軸方向にも電界強度の時間的変化が検出され、主ピークには、楕円偏波を示し、その付随する共振波も、この例では、殆ど、円偏波を示している。
【0048】
参考のために、図9は、上記試料の開口金属板を測定装置に装入したが、入射波の金属板に対する入射角をθ=0°に設定して、上記の入射パルスを開口金属板に入射した時の出射波の強度測定結果を示すが、主ピークとそれに時間的に付随する共振波を伴なうが、いずれもx軸方向の振動であり、y軸方向には、検出されず、従って、θ=0°では、偏光の変化は生じない。
【0049】
このように、開口金属板は、その開口の形状と配置が、対称的で等方的であっても、入射角をわずかに設定することにより、入射光を楕円偏光に変え得て位相差板としての性質を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る位相差板の模式的斜視図。
【図2】本発明の位相差板における入射波の関係を示す図。
【図3】誘電体を通過する電磁波の電界分布を示す図。
【図4】本発明の別の実施形態における位相差板の模式的な斜視図。
【図5】本発明の別の実施形態における位相差板の図4同様図。
【図6】本発明の実施例における位相差板の偏波の変化を調べた試験装置の概要図(A〜C)。
【図7】図6の装置に用いた入射波を測定した時間的電界強度変化を示す図。
【図8】図6の装置により入射角3°で入射した電磁波の位相差板からの出射波について測定した時間的電界強度変化を示す図。
【図9】図6の装置により入射角0°での位相差板から出射波について測定した時間的電界強度の変化を示す図。
【符号の説明】
10 位相差板
1 金属板
2 開口
20 円形開口
9 入射波
【発明の属する技術分野】
本発明は、光を含む電磁波の位相差板に関し、特に、有孔金属板ないし金属皮膜による位相差板に関する。
【0002】
【従来の技術】
位相差板は、光の位相差板について直線偏光の光が通過する時にその偏光の直交成分の間に位相差を生じさせるような板を言い、従来は、複屈折性の板ないし膜を用いて偏光を制御する用途に用いられていた。
【0003】
古くから、光の位相差板は、1軸性の結晶をその光学軸に平行な平面で切断ないし劈開した結晶板が、1/4波長板、あるいは1/2波長板として、利用されていた。このような結晶には、雲母や水晶が知られている。この結晶板は、入射面からその内部を透過する光偏波の直交成分の間の位相差が伝播距離に比例して重積されて、結晶板の出口面で、2つの偏光が合成されて、所望の偏光を得ていた。
【0004】
位相差板の最近の用途の一例として、特開平3−87720号、特開平8−292432号、特開平11−231133号、さらに、特開2001−021720号などの先行文献に開示されているように、液晶ディスプレーの偏光制御素子として用いられているが、液晶ディスプレー等に使用される位相差板は、透明基板上に液晶性高分子と他の高分子との合成皮膜を形成したものであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記結晶形成の位相差板は、肉厚が大きく、あるいは、透過光に対して光透過率が低い場合には、媒体の光吸収による通過損失が大きく、光の利用効率が低くなっていた。また、大きな光照射面や通過面を確保するには、大きな結晶体の薄板加工が困難であった。
【0006】
さらに、液晶高分子膜による位相差板は、強度の確保のために、適当な基板と、表面を覆う保護膜を必要とし、長期に亘る使用耐久性が比較的低かった。特に、その製造においては、多数の工程を必要とし、その製造が一般には複雑である。さらに、液晶高分子を使用した位相差板の性能は、温度に敏感であり、照射エネルギー密度の高い用途には、耐熱的に使用上の限界があった。
【0007】
本発明は、上記従来の問題に鑑み、構造が簡単な位相差板を提供しようとするものであり、特に、比較的大きい透過面積を要する用途においても製造と支持が容易な位相差板を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基本的には、金属板と、金属板を貫通する開口とから成り、金属板の厚みと開口寸法を電磁波の波長レベルに調製設定することにより、位相差板とするのである。
【0009】
より詳しくは、本発明の位相差板は、金属板の厚みと開口寸法とを通過すべき電磁波の波長レベルとなし、且つ、後述の如く金属板面域内の開口の形状と配置に光学的異方性を付与することにより、開口を透過する直線偏向の電磁波の直交する2つの成分光に所要の位相差を生じさせ、楕円偏光に変えるのである。
【0010】
この構成の位相差板は、多数の開口を配置した金属板であるから、このような開口金属板単体を使用するか、又は開口金属板を適当な基板上に電磁波的に透明にして支持・形成すればよいので、構造上極めて簡単に構成でき、各種用途に提供することができる。
【0011】
本発明の位相差板が利用されるべき電磁波には、特に、メガヘルツ波、テラヘルツ波を含む。さらに、電磁波には、光を含み、テラヘルツ波につながる遠赤外光から、近赤外光、可視光、紫外光までを広く含む。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の位相差板は、入射電磁波の波長レベルの厚みの金属膜と、この金属膜を貫通して波長レベルの寸法を有する1つ以上の開口から構成される。
【0013】
金属板は、入射波長の波長レベルの厚みを有し、好ましくは、波長の0.3〜2.0倍の厚みのものが利用される。その厚みから、この明細書中「金属板」の語は、金属板の他に、金属シート、金属膜、金属フィルムを広く含む。
【0014】
本発明は、金属板に開口を形成したことを特徴とするが、開口は、金属板面内にあって対称形又は非対称形でもよい。このような開口の寸法は、入射波の波長レベルとし、特に、波長の0.3〜2.0倍の開口直径が好ましい。
【0015】
開口の1つの形態は、対称形であって、円形、正多角形等の幾何学的形状から選ばれる。特に、正四角形又は正三角形が選ばれる。また、開口の別の形態は、楕円形又は、多角形、特に、四角形が面域の一方向に伸ばされた長多角形ないし長四角形が利用される。
【0016】
この明細書においては、以下の説明のために、図2を参照して、金属板1は、入射波9の伝播方向(光ならば光軸)90をz軸として、z軸と直交する2つの直交軸、x軸とy軸、においても少なくともy軸内にあるとする。後述のように、金属板は、y軸廻りの回転位置を取ることがあるが、伝播方向(z軸)90と金属板1との成す各を入射角θとする。
【0017】
本発明においては、入射電磁波は、直線偏波が利用されるが、その入射波9の偏波方向(光であれば、偏光方向)96がx軸とy軸との間に設定される。このとき、図2に示すように、入射波の偏波方向96とx軸との成す角を、方位角φとする。
【0018】
入射波は、金属板の開口を伝播する電磁波としてTEモード(入射面に対して電界だけが垂直である)、TMモード(入射面に対して磁界だけが垂直である)、TEMモードを取り得るが、本発明は、例えば、入射波としてTMモードの直線偏波を金属開口に入射して、開口においてTMモードとTEモードとのカップリングを行なわせて、出射光をTM偏波とTE偏波の両方の成分を持った電磁波にするのである。TM偏波とTE偏波とは、互い直交しているので、両者の位相差によって合成波を楕円偏波にすることができる。これにより、本発明は、有孔金属板は、入射光の直線偏波に対して、出射波を楕円偏波にする位相差板として利用する。
【0019】
上記のTM偏波とTE偏波とのモードカップリングは、モードのエネルギーが等しく(2つのモードの周波数が同じ)、モードの波数が等しく(波長が同じ)、且つ、パリティミスマッチが生じないことが必要である。パリティとは、電磁波や光の進行方向に沿った面に対する電場分布を言うが、図3において、この電場分布91が遇関数であるときは、パリティはevenといい、奇関数のときはoddとすると、2つの伝播モードが、共にevenか、又は共にoddであるときは、モードカップリングを起し易いが、2つのモードが、evenとoddの関係にあるときは、モードはカップリングしないで、ミスマッチにあると言われる。
【0020】
開口を設ける金属板は、開口におけるTMモードとTEモードとが同じパリティであり、これら両モードの間ではカップリングが可能である。TMモードの電磁波、例えば、光を開口金属板に入射したとき、開口によりその一部は、TEモードに変換されるので、金属板の開口通過後は、TMモードとTEモードの合成波が得られる。
【0021】
以上は金属板の場合であったが、他方、開口を設ける板に半導体や誘電体を使用した場合には、これらのTM波とTE波とのパリティはミスマッチの関係にあるので、TMとTEとのモードカップリングは実質的に起きない。以上が、本発明において金属板を位相差板の基板として使用する理由である。このような波長レベルの開口と厚みとを有する金属板の構造体は、特に、金属フォトニック結晶と呼ぶことがある。
【0022】
開口した金属板において、上記TM/TEモードカップリングの大きさは、開口の形状・寸法と、金属板面域内の開口の配置・分布と共に、光学軸に対する開口の形状・配置の非対称性が寄与することが判っている。例えば、対称な円形開口で対称な開口配置(例えば、金属板の多数の開口が金属板の垂直軸廻りに少なくとも3回回転対称、ないしは、4回以上の回転対称を成す場合)においては、入射波の金属板面との入射角θが0°の入射に対しては、偏波ないし偏光の変化は殆ど生じない。この金属板に対する入射波の入射角θをわずか1°以上の入射角θにずらすと、TMモードからTEモードへの部分変換が生じ、フォトニック結晶出射後の偏波を変化させることができる。
【0023】
また、金属板の開口の形状又は配置を、x方向とy方向とで変えること(例えば、金属板の多数の開口が金属板の垂直軸廻りに2回回転対称の配置にすること)により、光学的異方性を生じ、金属板への垂直入射する入射波(入射角θ=0°)に対しても、上記モード変換を生じ、偏波の変化が可能であり、位相差を生じさせることができる。
【0024】
この実施形態においては、金属板に貫通する上記開口は、上記のように、開口寸法が、入射波長に対して、0.3〜2.0倍の範囲するのが好ましい。開口寸法が、入射波長の0.3倍未満では、入射電磁波の透過率が極端に低下し、2.0倍を越えると、出射後の偏光を変化させる効果がなくなり、好ましくない。図1のように、円形開口では、開口寸法に直径3を取り、上記の範囲に規定する。多角形においては、開口寸法は、対辺間の距離、又は、頂角−対辺の間の距離を言う。また、一方向に延びた光学異方的な開口において、その寸法は、開口の幅方向長さ32(図4、図5参照)を言うものとする。
【0025】
位相差板は、上記の金属板に複数個、特に、多数個で配置するのが、透過光量を増加させる点で好ましい。多数の開口はランダムに配置されても偏光を変化させることができるが、多数の開口を設けるには、周期的配置されているのが好ましい。
【0026】
金属板の開口の周期的な配置には、金属板の面域に複数の開口が等間隔で1方向に直線的に配列すること、さらに、1方向の配列が多数並列して二次元方向に配置されていること、を含む。開口の周期的な配置には、複数の開口が等間隔で、2方向に配列され、各方向に直線的に配列することを含む。配列の2方向は直行してもよく、また、斜交してもよい。開口は、これら直交した格子(例えば、正方格子)又は斜交した格子(斜方格子)の格子点位置に配置される。
【0027】
開口配置の他の形態は、金属板上で互いに近接する3個の開口が三角形を成すように、周期的に配列することを含み、この配列は、1個の開口に対して、6個の最近接開口が配置される(三方格子、ないし六方格子)。
図1には、多数の円形開口20を、金属板1に正三角形格子点に設けた例を示している。
【0028】
開口部による開口面積は、入射波に対する出射波の透過率を決めるので、上記開口の大きさと近接距離との条件から、最大の開口率を設けるのが好ましい。
【0029】
このような周期的な開口配列においては、互いに近接する開口の中心間の距離4(三角格子点配置の例については、図1、図4など参照、以下、単に「開口間隔」という)を、好ましくは、入射波の波長のレベルにし、特に、波長の0.5〜2.0倍が好ましい。0.5倍未満であれば、出射後の偏光を変化させる効果が弱まり、2.0倍を越えると、入射電磁波の透過率が低下し、好ましくない。開口を最大開口率に設定する点からは、各開口を三角点に配置する上記三角形配置が好ましい。
【0030】
本発明の実施形態において、金属板1の開口2が、周期的で且つ光軸(z軸)に対して対称的である場合は、上述のように入射光9を金属板1に斜め入射をさせることにより、入射光の偏光を変えることができ、位相差を生じさせる。この周期的且つ対称的な配置は、開口形状を円形、正多角形、例えば、正六角形、正方形、正三角形とする。
【0031】
このような開口が三角点に配置した金属板では、図2に一例として、開口が占める三角配置の格子点の主ベクトルの1つをx軸に取るように配置される。このとき、当該主ベクトルと他の1つの主ベクトルとの間に、偏波方向96が入るように、入射波9の偏波面が決められ、偏波方向は、y軸−x軸から傾斜するように、方位角φが設定される。
【0032】
さらに、入射波9は、金属板1の法線に対する入射角θを、1°〜89°の範囲に設定するが、好ましくは、1°〜30°の範囲とする。入射角を変えることにより、開口において入射光のy軸成分とx軸成分との間に位相差が生じ、その位相差は、入射角に依存するので、所望の入射角に設定される。入射角は、金属板をz軸に対して上記y軸廻りの回転角を設定することにより、容易に設定できる。
【0033】
入射光軸の金属板に対する入射角が大きくなるときは、金属板の厚みを考慮すると、開口を通過する光の透過量が減少するので、入射角が30°を越えるのは好ましくない。亦、入射角が大きいと、透過させるべき電磁波ビーム、例えば、光ビームの所要のビーム幅ないし照射幅に対して、金属板に開口形成する面域が増加することになる。
【0034】
本発明の別の実施形態は、金属板1を電磁波の伝播方向(即ち、光の場合の光軸)に正向させて、入射角を0°近くに配置させることができ、位相差を生じさせるために、開口形状または開口配置自体に光学的異方性を与えることを含む。一例として、光学的異方性のある開口それぞれは、金属板面域内でいずれかの一方向に延びた形状を含んでいる。例えば、x軸方向とy軸方向とのいずれか一方向が、他方向より延びた形状を有し、開口のこのような形状は、一方向に(例えばy軸方向に)伸びた楕円形ないし長円形があり、多角形においては、一方向に長い長六角形、長四角形、長三角形(二等辺三角形)などを含む。この実施例として。例として、図4には、開口として、x軸方向の長さ(幅方向寸法32)よりy軸方向の長さ(長手方向の長さ31)を大きくした長四辺形開口21を示している。図5には、x方向長さ(幅方向寸法32)に対してy方向の長さ(長手方向長さ31)が延びた楕円形開口22を示している。
【0035】
さらに、金属板1上の開口配置についても、x軸方向に対してy軸方向に相対的に延びた形状の長方格子点や長三角形状の格子点を多数の開口が占めるように配置される。上記図4と図5には、長三角形状の開口配置を示している。
【0036】
これらの開口の形状と配置は、前述したy軸廻りに回転配置した金属板の周期的且つ対称配置の上記開口を、入射光軸に垂直なx−y平面上(入射角零の)に投影した開口の配置と等価である。それ故、この実施形態は、入射光の偏向方向がx軸−y軸に斜交した方位角φを有し、上記の光学的異方な開口を配置した金属板に垂直照射されたとき、出射光は、x方向成分とy方向成分との間に位相差を生じ、楕円偏光となる。その位相差は、開口形状及び又は開口配置のx軸寸法に対するy軸寸法の対称性からの変位に依存する(これは、上記光学的等方性の場合の、入射角の変位に相当する)。
【0037】
本発明に使用する金属板は、その厚みが入射波の波長に依存するが、通常、その厚みは、入射波の波長の0.3〜2.0倍の範囲が好ましい。金属膜は、入射波長の0.3倍より薄いと、出射後の偏波を回転させる効果が弱くなり、他方、厚みが波長の2.0倍よりも大きいと、入射電磁波の透過率が極端に下がることになり、妥当でない。金属板の厚みは、好ましくは、0.3〜1.5倍とする。
【0038】
金属板は、その材質を特に限定しないが、例示すれば、銅、銀、金、アルミニウム、鉄、ニッケル、コバルトなどがある。このような金属板は、単体でもよく、また、電磁波に対して透明な基板上に固定されてもよい。金属板は、入射光の波長が長いとき(例えば、テラ波や遠赤外光)、その波長に対応して、0.1mm以上、あるいは、1mm以上での厚みである時は、特に、表面や裏面に支持体を設けずに、多数の開口を形成した金属板を単体で利用することができる。
【0039】
電磁波が、概ね、0.1mm以下の短波長光(近赤外光、可視光など)である場合には、金属板は、電磁波に対して透明な基板を担持体にして、その表面に金属膜として固定することができる。担持体には、ガラスやポリマー、セラミックなどの誘電体の板その他の成形体が利用される。金属膜は、真空中蒸着その他の方法で形成された種々の金属蒸着膜や化学的めっき膜(例えば、無電解めっき膜など)が利用され、公知の製膜方法で所要の開口を形成することができる。
【0040】
開口は、その媒質が、空気その他の気体のほか、電磁波に対して透明な誘電体であってもよい。また、開口の出口(あるいは、入口)は、上記のように、金属板を支持ないし担持する誘電体に覆われていてもよい。多数の開口は、金属板、ないし金属膜をマスキングした後、エッチングする方法などにより、比較的簡便に精密に形成することができる。
【0041】
【実施例】
本発明の開口金属板による実施例においては、波長約1mmのテラ波を使用して、偏光を測定した位相差板10は、金属板1に、厚み0.5mmで、縦横15×15mmのアルミニウム板を使用し、開口2は、直径0.65mmの円形開口20にし、開口間隔1.0mmで、三角形配置にし、金属板の面域10mm×10mmの範囲に形成した。
【0042】
偏光測定は、図6(A〜C)に示すように、光源には、レーザ光源60(Spectra Physics 社製 Tunami: レーザ波長800nmの赤外光)からレーザパルス61を、放射素子65としてフォトコンダクティブアンテナ光スイッチに照射して、1mm波パルスを放射させ、その電磁波を試料位相差板10に入射し、位相差板の通過波を、検出器71に入射するように配置して、検出器71により、開口金属板の通過波の強度を電気信号に変換して出力した。
【0043】
放射素子のフォトコンダクティブアンテナ光スイッチは、図6(C)に示すように、GaAs基板73上に、2つの特定長さのアンテナ素子74を金により成形し、アンテナ素子74間に ギャップ75を設けて高圧を印加してあり、ギャップ75に、レーザ源60からのレーザパルス61を照射したときだけ、半導体73内に励起キャリャを発生させて、パルスで変調された電磁波を放射させるものである。他方の検出器71は、放射素子65と同様のフォトコンダクティブアンテナ光スイッチを用いて、レーザ光源からの遅延されたレーザパルス63の到達時にだけ通過波の強度を、アンテナ出力として検出する。
【0044】
レーザパルスの到達時間は、四つの鏡から成る遅延時間制御機構64により通過光路長を変更する形で、調節して、検出器の検出タイミングを調節ながら通過波強度のサンプリングをした。
【0045】
詳細には、図6(B)に示すように、放射素子と検出器との間には、2つの反射鏡を配置し、反射鏡の間には、入射波の光軸上に、第1の偏光子67と、試料位相差板10である上記開口金属板と第2の偏光子68と、次いで、第3の偏光子69を配置した。
【0046】
図7は、上記装置で、位相差板10を配置しないで、入射波パルスを測定した時間的電界強度分布をx−y座標で示している。図中の座標で、x軸方向の鋭いピークを持つ強度分布だけが観察され、y軸方向の強度は、実質的には観察されない。これから、入射波パルスが直線偏波であることがわかる。
【0047】
図8は、位相差板10を、装置に装入し、y軸廻りにわずかに回転させて、入射角θを3°に設定して、この位相差板に上記入射波パルスを透過させた時のこの開口金属板からの出射波の時間的な強度分布変化の測定結果を示すが、x軸方向と共にy軸方向にも電界強度の時間的変化が検出され、主ピークには、楕円偏波を示し、その付随する共振波も、この例では、殆ど、円偏波を示している。
【0048】
参考のために、図9は、上記試料の開口金属板を測定装置に装入したが、入射波の金属板に対する入射角をθ=0°に設定して、上記の入射パルスを開口金属板に入射した時の出射波の強度測定結果を示すが、主ピークとそれに時間的に付随する共振波を伴なうが、いずれもx軸方向の振動であり、y軸方向には、検出されず、従って、θ=0°では、偏光の変化は生じない。
【0049】
このように、開口金属板は、その開口の形状と配置が、対称的で等方的であっても、入射角をわずかに設定することにより、入射光を楕円偏光に変え得て位相差板としての性質を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る位相差板の模式的斜視図。
【図2】本発明の位相差板における入射波の関係を示す図。
【図3】誘電体を通過する電磁波の電界分布を示す図。
【図4】本発明の別の実施形態における位相差板の模式的な斜視図。
【図5】本発明の別の実施形態における位相差板の図4同様図。
【図6】本発明の実施例における位相差板の偏波の変化を調べた試験装置の概要図(A〜C)。
【図7】図6の装置に用いた入射波を測定した時間的電界強度変化を示す図。
【図8】図6の装置により入射角3°で入射した電磁波の位相差板からの出射波について測定した時間的電界強度変化を示す図。
【図9】図6の装置により入射角0°での位相差板から出射波について測定した時間的電界強度の変化を示す図。
【符号の説明】
10 位相差板
1 金属板
2 開口
20 円形開口
9 入射波
Claims (13)
- 金属板と、該金属板の面域を貫通する1個以上の開口と、から成る電磁波位相差板。
- 金属板の厚みが、開口を通過する電磁波の波長の0.5〜2.0倍の範囲にある請求項1に記載の位相差板。
- 開口が正多角形若しくは円形であり、開口の寸法が開口を通過する電磁波の波長の0.3〜2.0倍の範囲にある請求項1又は2に記載の位相差板。
- 多数の開口が、金属板の面域に、周期的に形成されている請求項1ないし3いずれかに記載の位相差板。
- 各開口が四方格子若しくは三角格子の格子点を占めるように配置されて、最近接の開口間の距離が、波長の0.3〜2.0倍の範囲にある請求項4に記載の位相差板。
- 開口が、該金属板の面域内一方向に延びた長多角形、長円形、若しくは楕円形であり、開口の幅方向寸法が開口を通過する電磁波の波長の0.3〜2.0倍の範囲にある請求項1又は2に記載の位相差板。
- 多数の開口が、金属板の面域に、周期的に形成されている請求項6に記載の位相差板。
- 各開口が、金属板の面域に四方格子若しくは三角格子の格子点を占めるように配置されて、上記四方格子又は三角格子が金属板の一方向に延びており、最近接の開口間の距離が、波長の0.5〜2.0倍の範囲にある請求項6又は7に記載の位相差板。
- 開口が、空気若しくは電磁波に透明な誘電体により充填されている請求項1ないし8いずれかに記載の位相差板。
- 金属板が、誘電体又は半導体の基板上に支持されている請求項1ないし9いずれかに記載の位相差板。
- 該基板が、電磁波に対して実質的に透明である請求項10に記載の位相差板。
- 電磁波が、ギガヘルツ波、テラヘルツ波を含む請求項1ないし11いずれかに記載の位相差板。
- 電磁波が光を含む請求項1ないし12いずれかに記載の位相差板。
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