JP5598816B2 - バンドパスフィルター - Google Patents
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Description
テラヘルツ波とは、0.1〜100THzの帯域の電磁波を指す。この帯域は、分子の振動や分子間相互作用に対応する帯域であり、従来得られなかった情報を得ることができると期待されている。
しかし、テラヘルツ波は、空気中の水蒸気により吸収されやすいという問題があった。そのため、大気中の実用的な利用は困難であった。
バンドパスフィルターを用いて、テラヘルツ波のうち水分の影響を受けない周波数成分を選ぶことができれば、大気中でもテラヘルツ波を各種検査や通信などへ利用できる。
しかし、テラヘルツ波のバンドパスフィルターで実用的なものはあまり報告されていない。
本発明のバンドパスフィルターは、前記開口部の中心同士の間隔が互いに等間隔とされ、前記間隔が30〜500μmであることを特徴とする。この距離はバンドパスフィルターのピーク周波数と大きな相関があり、0.1〜3.0THzの帯域にピーク周波数を得るためには、開口の中心間隔は30〜500μmであることが望ましい。
本発明のバンドパスフィルターは、前記基板の厚さが0.1〜3.0mmであることを特徴とする。厚さが0.1mm以下となると、開口による回折ピークだけでなく、基板内での多重反射によるピークが大きくなってしまう。逆に厚さが3.0mm以上となってくると透過強度が低下してくる。このため、基板の厚さは0.1〜3.0mmであることが好ましい。
本発明のバンドパスフィルターは、前記マスク部の厚さが0.1〜1.0μmであることを特徴とする。厚さが0.1μm以下となると、電磁波の表皮深さよりも小さくなってくるため、マスク部の無開口部であっても透過できるようになり、シャープな帯域を有するバンドパスフィルターとして機能しなくなる。一方で厚さが1.0μm以上となってくると透過率は飽和し、さらに厚くすると減少していく。このため、マスク部の厚さが0.1〜1.0μmであることが好ましい。
本発明のバンドパスフィルターは、前記マスク部が金属又は合金からなることを特徴とする。
本発明のバンドパスフィルターは、前記合金がAl、Au、Cu、Ag、Pt、Cr、Pb、又はNiのいずれかの金属を含有することを特徴とする。
テラヘルツ波の照射により、マスク部表面を電磁表面波が伝播する。周期的な開口が存在すると、この表面波が開口部にて回折干渉を起こし、開口の周期性に対応した共振ピークを有する透過波もしくは反射波となって発信される。このため、マスク部表面は導電体であり、電磁波が少なくとも数100μm伝播出来る必要がある。高い電気伝導性を持つ材料ほど表面電磁波の伝播距離が長くなり、開口の周期が大きくても共鳴させることができ、フィルターのピーク周波数の制御幅を大きくすることができる。
本発明のバンドパスフィルターは、一面側に入射したテラヘルツ波のうちピーク周波数が0.10〜3.00THzの範囲内にあるテラヘルツ波のみを他面側から出射することを特徴とする。
本発明のバンドパスフィルターは、各開口部で前記突出部が偶数個設けられており、各突出部の先端部はそれぞれいずれか他の突出部の先端部に対向するように設けられていることを特徴とする。
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態であるバンドパスフィルターを説明する。
図1は、本発明の実施形態であるバンドパスフィルター10の一例を示す平面図であり、図2は図1のA部拡大図であり、図3は図2のB−B’線における断面図であり、図4は図2のC部の拡大図である。
図1に示すように、バンドパスフィルター10は、基板3の一部を略四角形状に覆うマスク部4に格子状に開口部2が設けられて構成されている。
図2に示すように、開口部2は、その中心O同士の間隔lが互いに等間隔とされている。
前記間隔lは0.03〜0.5mmとすることが好ましく、0.05〜0.3mmとすることがより好ましく、0.08〜0.15mmとすることが更に好ましい。また、開口部2aから隣接する2つの開口部2b、2cへ結ぶ線の間の角度βが60°とされている。
本実施形態では、一の開口部2aから隣接する2つの開口部2b、2cへ結ぶ線の間の角度βが60°としたが、角度βはこれに限られず、例えば、90°としてもよい。
基板3の厚さは0.1〜3.0mmとすることが好ましく、0.2〜2.5mmとすることがより好ましく、0.3〜1.4mmとすることが更に好ましい。基板3の厚さを前記範囲とすることにより、基板3内で多重反射の干渉を効率よく生じさせることができる。
また、基板3は、Si、光透過性樹脂又は光透過性ガラスのいずれかからなることが好ましい。例えば、Si基板を用いた場合には、Si基材内での多重反射の干渉と、規則的に整列した開口部2による近接場の干渉を組み合わせて、十分な透過特性を発現させることができる。このように、バンドパスの透過率は、Alからなるマスク部4だけでなく、基板3内の干渉によっても影響を受ける。つまり、前記干渉は、基板3の厚さに影響される。
なお、このバンドパスフィルター10に入射させる電磁波は、マスク部4の一面4a側から、または基板3の他面3b側からのどちら側から入射させてもよい。電磁波は、それぞれの面に略垂直な方向から入射させる。
また、マスク部4が金属又は合金からなることが好ましく、前記金属はAl、Au、Cu、Ag、Pt、Cr、Pb、又はNiのいずれかの金属からなることが好ましく、前記合金はAl、Au、Cu、Ag、Pt、Cr、Pb、又はNiのいずれかの金属を含有することが好ましい。マスク部4を前記金属又は前記合金からなるものとすることにより、規則的に配列した開口部2による近接場の干渉を強めることができる。
4つの鋭く対向する先端部7を備えることにより、Si/Al界面の表面プラズモンの生成を促進して、マスク部4に入射されるTHz電磁場を強める。結果として、テラヘルツ光は、先端部間の狭いギャップで、特別な共鳴周波数に狭められ、すなわち、マスク部の反対側への透過を高める。
突出部6は各開口部2で偶数個設けることが好ましく、各突出部6の先端部7はそれぞれいずれか他の突出部6の先端部7に対向するように設けることが好ましい。これにより、各開口部2の中心の周りに突出部6を対称的に配置することができ、基板を光照射面の方向を維持したまま光照射面内で回転させても、出射光に偏光特性を生じさせることはない。
突出部6の先端部7同士の最短の間隔d、すなわち、間隙(ギャップ)の距離dは0.1〜10μmとすることが好ましく、0.5〜5μmとすることがより好ましく、1〜3μmとすることが更に好ましい。これにより、先端部7に発生する近接場の効果を強めることができる。
開口部2の径mは、10〜200μmとすることが好ましく、20〜100μmとすることがより好ましく、30〜50μmとすることが更に好ましい。これにより、先端部7に発生する近接場の効果を強めることができる。
また、このように開口部2の構造を制御することにより、バンドパスの位置をTHzの領域内で調整でき、共鳴透過率の鋭さ、すなわち、半値幅を制御できる。
図5は、バンドパスフィルターの透過率を測定する装置構成概略図である。
図5に示すように、バンドパスフィルターの特性評価装置100の一端側には、フェムト秒パルスレーザー11が配置されている。フェムト秒パルスレーザー11から出射された光は、ビームスプリッター12で、ポンプ光13とプローブ光21に分離される。ポンプ光13はレンズ14aを透過し、GaAs基板と低温成長GaAsフィルムからなる光伝導性アンテナ15aに入射される。光伝導性アンテナ15aには電圧計16が取り付けられ、光伝導性を制御できる構成とされている。光伝導性アンテナ15aのSiレンズ18aから出射されたポンプ光は、2枚の軸外パラボラミラー17a、17bを経由して、サンプルであるバンドパスフィルター10に一面10a側から入射される。その後、バンドパスフィルター10の他面10b側から光が出射され、2枚の軸外パラボラミラー17c、17dを経由して、光伝導性アンテナ15bのSiレンズ18bに入射される。この光伝導性アンテナ15bには電流計19が取り付けられるとともに、電流アンプ25に接続され、電流の変化が記録システム24に記録される構成とされている。
図6に示すように、一面側の一部マスク部4で覆われた基板3からなるバンドパスフィルター10は、サンプルフォルダー31に取り付けられている。サンプルフォルダー31は、保持部材30の上をX方向に移動自在とされている。これにより、バンドパスフィルター10上の電磁波の照射位置をX方向に移動自在とされている。
また、サンプルフォルダーは回転部32によりX方向と垂直なY方向に回転自在とされている。これにより、バンドパスフィルター10の偏光特性を測定することができる。
まず、所定の大きさの基板3の両面を、公知の方法により研磨する。
次に、マスク部4の一面にレジストを塗布してから、乾燥する。次に、前記レジスト上に所定のパターンを設けた露光マスクを配置してから前記レジストを露光する。
次に、露光部のレジストのみを除去した後、マスク部4を蒸着法により形成する。
次に、レジスト除去剤を用いて、前記レジストを完全に除去して、マスク部4に開口部2を形成して、本発明の実施形態であるバンドパスフィルター10を製造する。
なお、本発明の実施形態であるバンドパスフィルターは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で、種々変更して実施することができる。本実施形態の具体例を以下の実施例で示す。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<バンドパスフィルター製造プロセス>
リソグラフィ法により、以下のようにして基板にマスク部を形成した。
まず、板厚400μm、縦30mm、横30mmのSi基板の両面を、公知の方法によりポリッシュした。
次に、前記Si基板の一面の所定の位置に、レジストを塗布してから、乾燥した。
次に、前記レジスト上に所定のパターンが格子状に設けられた露光マスクを配置してから前記レジストを露光した。
次に、露光部を公知の方法により除去した後、膜厚0.4μm、縦1cm、横1cmのAlからなるマスク部を蒸着法により形成した。
次に、レジスト除去剤を用いて、前記レジストを全て除去して、マスク部に開口部を形成して、バンドパスフィルターを製造した。
次に、図5に示したバンドパスフィルターの特性評価装置を用いて、実施例1のバンドパスフィルターの特性評価結果を行った。
図9及び図10は、実施例1のバンドパスフィルターの特性評価結果(Array on Si in air)である。サンプルを置かない場合の測定結果、すなわち、空気に対する測定結果(Air)及びSi基板のみの測定結果(Si substrate in Air)を比較の為、併せて表示している。
図9に示すように、実施例1のバンドパスフィルターは、0.5〜1.5THzの範囲で複数のピークを有し、0.81THzに最も大きなピークを示した。
0.81THzを第1のピークとする出射光は0.83THz付近に第2のピークを有しており、0.78〜0.85THzの光を出射した。つまり、実施例1のバンドフィルターは、0.78〜0.85THzの特定の周波数の電磁波のみを他面側から出射した。
まず、バンドパスフィルター10の一面10aに略垂直な方向から図11に示すX0の位置に電磁波を照射し、空気を通過させて対面側で電磁波をパラボラミラーにより光伝導性アンテナに取り込み、強度を測定した。
その後、保持部材30上を、サンプルフォルダー31を移動させながら、X0からX54000の位置までの電磁波強度を測定した。
その結果、図11に示すAir、Si、Al、Array、Al、Si、Airに対応する位置の電磁波が得られた。
電磁波として、0.81THzの電磁波を用いた場合のほかに、比較の為、1.85THzの電磁波を用いた場合を示している。マスク部4(図12では、Arrayと表示)の領域では、1.85THzの電磁波の場合には、出射電磁波の強度がほぼ0であるのに対し、0.81THzの電磁波の場合は、約45%の透過率であった。Si基板の透過率が約35%であることから、マスク部4(Array)により、約10%透過率が向上したことが分かった。
Claims (11)
- 一面側に入射した電磁波のうち特定の周波数の電磁波のみを他面側から出射、もしくは前記一面側に反射するバンドパスフィルターであって、
基板と、前記基板の一面もしくは両面を覆うマスク部とを有し、
前記マスク部には、前記基板の一面を露出させる複数の開口部が格子状に設けられており、
前記開口部には、前記開口部の縁部から中心方向に向けて先細り形状とされた突出部が4つ以上備えられており、
前記突出部の先端部の開き角度が30°以下であり、前記先端部同士の最短の間隔が0.1〜10μmであることを特徴とするバンドパスフィルター。 - 前記先端部の開き角度が5〜25°であることを特徴とする請求項1に記載のバンドパスフィルター。
- 前記開口部の中心同士の間隔が互いに等間隔とされ、前記間隔が30〜500μmであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のバンドパスフィルター。
- 前記基板の厚さが0.1〜3.0mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のバンドパスフィルター。
- 前記基板がSi、光透過性樹脂又は光透過性ガラスのいずれかからなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のバンドパスフィルター。
- 前記マスク部の厚さが0.1〜1.0μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のバンドパスフィルター。
- 前記マスク部が金属又は合金からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のバンドパスフィルター。
- 前記金属がAl、Au、Cu、Ag、Pt、Cr、Pb、又はNiのいずれかの金属からなることを特徴とする請求項7に記載のバンドパスフィルター。
- 前記合金がAl、Au、Cu、Ag、Pt、Cr、Pb、又はNiのいずれかの金属を含有することを特徴とする請求項7に記載のバンドパスフィルター。
- 一面側に入射したテラヘルツ波のうちピーク周波数が0.10〜3.00THzの範囲内にあるテラヘルツ波のみを他面側から出射することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のバンドパスフィルター。
- 各開口部で前記突出部が偶数個設けられており、各突出部の先端部はそれぞれいずれか他の突出部の先端部に対向するように設けられていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のバンドパスフィルター。
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