JP2004117489A - レンズシステム - Google Patents
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Abstract
【課題】オートフォーカス実行時であってズームの移動時に、撮影レンズのピント状態が合焦とみなせる状態か否かを判定し、合焦とみなせる状態でないと判定した場合にはズームの最大速度を低下させてズームの移動速度をその最大速度範囲内に制限することにより、ズームの移動時、特にワイド側からテレ側へのズームの移動時に、AFが間に合わずピンボケの映像となる不具合を防止することができるレンズシステムを提供する。
【解決手段】CPU54は、焦点評価値生成部から焦点評価値を取得し、合焦とみなせる状態でない場合にはズームの最大速度を示すリミット値を低下させてそのリミット値をリミッタ回路116に与える。これにより、ズームの移動速度を指令するズームコントローラ106からの制御信号の電圧値がそのリミット値を超えないように制限される。
【選択図】 図6
【解決手段】CPU54は、焦点評価値生成部から焦点評価値を取得し、合焦とみなせる状態でない場合にはズームの最大速度を示すリミット値を低下させてそのリミット値をリミッタ回路116に与える。これにより、ズームの移動速度を指令するズームコントローラ106からの制御信号の電圧値がそのリミット値を超えないように制限される。
【選択図】 図6
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はレンズシステムに係り、特にオートフォーカス制御と共にズーム制御を行うレンズシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
ビデオカメラなどのオートフォーカスは、コントラスト方式によるものが一般的である。このコントラスト方式は、撮像素子から得られた映像信号のうちある範囲(フォーカスエリア)内の映像信号の高域周波数成分を積算して焦点評価値を生成し、その焦点評価値が最大(極大)となるようにピント調整を自動で行うものである。これによって、撮像素子で撮像された画像の鮮鋭度(コントラスト)が最大となる最良ピント(合焦)が得られる。
【0003】
また、従来、光路長の異なる位置に配置した複数の撮像素子を用いて撮影レンズのピント状態(前ピン、後ピン、合焦)を検出する方法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。これによれば、現在のフォーカス位置において、例えばフォーカスを前後に移動させたときの焦点評価値を、複数の撮像素子から得られた映像信号によって同時に知ることができ、その情報から現在のピント状態を検出することができる。
【0004】
【特許文献1】
特願2001−168246
【0005】
【特許文献2】
特願2001−168247
【0006】
【特許文献3】
特願2001−168248
【0007】
【特許文献4】
特願2001−168249
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来、ズームを急速に動かした場合、オートフォーカスによるピント合わせが間に合わず、ピンボケの映像となることがあった。例えば、ズームがワイド側に設定されている状態でオートフォーカスによりピントが合わせられたとする。この状態で仮にフォーカスを固定し、ズームをワイド側からテレ側に移動させたとすると、通常は、ズームアップされた被写体に対して正確にピントが合っておらず、ピンボケの映像となる。一方、オートフォーカスを有効にしてズームをワイド側からテレ側に移動させる場合、ズームの移動が遅いときには、ズームの移動中にオートフォーカスによるピント合わせが追従するため、ピンボケの映像にはならない。
【0009】
しかしながら、ズームの移動が速いと、オートフォーカスによるピント合わせが間に合わずにズームの移動中及び停止直後にピンボケの映像となる不具合があった。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、オートフォーカス実行時において、ズームを操作した際にピンボケの映像となる不具合を防止することができるレンズシステムを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、撮影レンズのピント合わせを自動で行うオートフォーカス手段と、前記撮影レンズのズームの動作を指令するズーム指令手段と、前記ズーム指令手段の指令に基づいて前記撮影レンズのズームを制御するズーム制御手段とを備えたレンズシステムにおいて、前記撮影レンズのズームの移動速度が、最大速度を示す所定の設定値を超えないように制限するズーム移動速度制限手段と、前記オートフォーカス手段によるピント合わせにより前記撮影レンズのピント状態が合焦とみなせる状態になっているか否かを判定する合焦判定手段と、
前記ズーム制御手段により前記撮影レンズのズームが移動している際に、前記合焦判定手段により前記撮影レンズのピント状態が合焦とみなせる状態になっていないと判定された場合に、前記ズームの最大速度を示す設定値を低下させるズーム最大速度変更手段と、を備えたことを特徴としている。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記合焦判定手段は、前記撮影レンズに入射した被写体光を光路長の異なる位置で撮像する複数の撮像手段と、前記各撮像手段により得られた映像信号に基づいて画像の鮮鋭度を示す焦点評価値を生成する焦点評価値生成手段と、を備え、前記焦点評価値生成手段によって生成された各撮像素子に対応する焦点評価値に基づいて前記撮影レンズのピント状態が合焦とみなせる状態になっているか否かを判定することを特徴としている。
【0013】
本発明によれば、オートフォーカス実行時であって撮影レンズのズームの移動時に、撮影レンズのピント状態が合焦とみなせる状態か否かを判定し、合焦とみなせる状態でないと判定した場合にはズームの最大速度を低下させてズームの移動速度をその最大速度範囲内に制限するようにしたため、ズームの移動時、特にワイド側からテレ側へのズームの移動時に、ピンボケの映像となる不具合を防止することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に従って本発明に係るレンズシステムの好ましい実施の形態について詳説する。
【0015】
図1は、本発明が適用されたテレビカメラシステムの光学系の構成を示したブロック図である。同図に示すテレビカメラシステムは、撮影レンズ10を備えたレンズ装置とカメラ本体12等から構成されており、カメラ本体12には、再生用(放映用等)の映像を撮影し、所定形式の映像信号として出力又は記録媒体に記録するための撮像素子(以下、映像用撮像素子という)や所要の回路等が搭載されている。
【0016】
撮影レンズ10を備えたレンズ装置は、カメラ本体12に着脱可能に装着され、主に光学系(撮影レンズ10)と制御系(後述)とから構成されている。撮影レンズ10には、光軸Oに沿ってフォーカスレンズ(群)16、変倍系及び補正系(図示せず)からなるズームレンズ(群)18、アイリス20、前側リレーレンズ22A及び後側リレーレンズ22Bからなるリレーレンズ(リレー光学系)等が配置されている。
【0017】
リレー光学系の前側リレーレンズ22Aと後側リレーレンズ22Bとの間には、ピント状態検出用の被写体光を映像用の被写体光から分岐するためのハーフミラー24が配置されている。このハーフミラー24は、撮影レンズ10の光軸Oに対して略45度傾斜して設置されており、前側リレーレンズ22Aを通過した被写体光の例えば1/3の光量を直角に反射して、映像用の被写体光から分岐する。
【0018】
ハーフミラー24を透過した被写体光は、映像用の被写体光として撮影レンズ10の後端側から射出されたのち、カメラ本体12の撮像部14に入射する。撮像部14の構成については省略するが、撮像部14に入射した被写体光は、例えば色分解光学系により、赤色光、緑色光、青色光の3色に分解され、各色ごとの映像用撮像素子の撮像面に入射する。これによって放映用のカラー映像が撮影される。なお、図中のピント面Pは、各映像用撮像素子の撮像面に対して光学的に等価な位置を撮影レンズ10の光軸O上に示したものである。
【0019】
一方、ハーフミラー24で反射された被写体光は、ピント状態検出用の被写体光として光軸Oに対して垂直な光軸O′に沿って進行し、リレーレンズ26に入射する。そして、このリレーレンズ26で集光されてピント状態検出部28に入射する。
【0020】
ピント状態検出部28は、光分割光学系を構成する2つのプリズム30A、30Bと、ピント状態検出用の一対の撮像素子32A、32B(以下、ピント状態検出用撮像素子という)とで構成されている。
【0021】
上述したようにハーフミラー24で反射した被写体光は、光軸O′に沿って進行し、まず、第1プリズム30Aに入射する。そして、第1プリズム30Aのハーフミラー面Mで反射光と透過光に等分割される。このうち反射光は一方のピント状態検出用撮像素子32Aの撮像面に入射され、透過光は他方のピント状態検出用撮像素子32Bに入射される。このとき、各ピント状態検出用撮像素子32A、32Bの撮像面には、それぞれ撮影レンズ10に入射した全被写体光のうちの約1/6の光量が入射する。
【0022】
図2は、カメラ本体12の映像用撮像素子に入射する被写体光の光軸と一対のピント状態検出用撮像素子32A、32Bに入射する被写体光の光軸を同一直線上に表した図である。同図に示すように、一方のピント状態検出用撮像素子32Aに入射する被写体光の光路長は、他方のピント状態検出用撮像素子32Bに入射する被写体光の光路長よりも短く設定され、映像用撮像素子の撮像面(ピント面P)に入射する被写体光の光路長は、その中間の長さとなるように設定されている。すなわち、一対のピント状態検出用撮像素子32A、32B(の撮像面)は、それぞれ映像用撮像素子の撮像面(ピント面P)に対して前後等距離の位置に配置されている。
【0023】
このように配置された一対のピント状態検出用撮像素子32A、32Bにより、撮影レンズ10に入射した被写体光が映像用撮像素子の撮像面(ピント面P)に対して前後等距離の位置で撮像されるようになっている。尚、一対のピント状態検出用撮像素子32A、32Bは、映像用撮像通素子の撮像面に対して前後等距離の位置に撮像面を配置したときに撮像される映像を撮像するもので必ずしもピント状態検出用撮像素子32A、32Bと映像用撮像素子との光路長の関係が図2のようになる場合に限らない。また、ピント状態検出用撮像素子32A、32Bは後述のようにピント状態検出(オートフォーカス制御)のための映像信号を取得するものであり、カラー映像を撮像するものである必要はなく、本実施の形態では白黒画像を撮像するCCDであるものとする。
【0024】
次に、レンズ装置におけるオートフォーカス制御に関連する制御系について説明する。図3は、オートフォーカス制御に関連する制御系の構成を示したブロック図である。上記フォーカスレンズ16は、図3に示すようにフォーカスモータ50に連結されており、フォーカスモータ50が駆動されると、フォーカスレンズ16が光軸方向に移動しフォーカスが変更される。フォーカスモータ50には、フォーカスモータ駆動回路52から駆動電圧が与えられ、フォーカスモータ駆動回路52にはCPU54からの制御信号が与えられる。
【0025】
CPU54からの制御信号は、例えば、フォーカスモータ50の回転速度、即ち、フォーカスレンズ16の移動速度に対応する電圧値を示しており、その電圧値がフォーカスモータ駆動回路52に与えられると、フォーカスモータ駆動回路52によって電圧増幅され、その増幅された電圧が駆動電圧としてフォーカスモータ50に印加される。これによって、フォーカスモータ50の回転速度がCPU54によって制御される。
【0026】
また、フォーカスレンズ位置検出器56によってフォーカスレンズ16の現在位置が検出され、その検出信号がCPU54に与えられるようになっている。従って、CPU54の処理において、上述のようにフォーカスモータ50の回転速度を制御することにより、フォーカスレンズ16の動作速度を所望の速度に制御することができると共に、フォーカスレンズ位置検出器56からの検出信号によりフォーカスレンズ16の現在位置を読み取りながら、フォーカスモータ50の回転速度を制御することにより、フォーカスレンズ16の設定位置を所望の位置に制御することができるようになっている。
【0027】
一方、オートフォーカス制御は、上記ピント状態検出用撮像素子32A、32Bからの映像信号に基づいて行われるようになっており、一対のピント状態検出用撮像素子32A、32Bで撮像された画像(映像)は、1画面を構成する複数の走査線(水平ライン)にそって各画素値を順次伝送する映像信号として出力され、焦点評価値生成部58に入力される。焦点評価値生成部58の構成、処理については後述するが、焦点評価値生成部58において、各ピント状態検出用撮像素子32A、32Bから入力された映像信号から、各ピント状態検出用撮像素子32A、32Bで撮像された各画像のコントラスト(鮮鋭度)の高低を示す焦点評価値が生成され、それらの生成された焦点評価値がCPU54に与えられるようになっている。尚、ピント状態検出用撮像素子32Aからの映像信号に基づいて生成された焦点評価値を、チャンネルA(chA)の焦点評価値といい、ピント状態検出用撮像素子32Bからの映像信号に基づいて生成された焦点評価値を、チャンネルB(chB)の焦点評価値という。CPU54では、詳細を後述するように、焦点評価値生成部58から取得したchAとchBの焦点評価値を取得し、その取得した焦点評価値に基づいて、撮影レンズ10のピント状態(前ピン、後ピン、合焦)を検出すると共に、撮影レンズ10のピント状態が合焦となるようにフォーカスレンズ16の位置を制御する。
【0028】
ここで、焦点評価値生成部58の構成及び処理について説明する。図4に示すように、各ピント状態検出用撮像素子32A、32Bから出力された映像信号は、焦点評価値生成部58のハイパスフィルタ(HPF)80A、80Bに入力される。ここでピント状態検出用撮像素子32A、32Bは、いずれも白黒画像を撮影するCCDであることから、各ピント状態検出用撮像素子32A、32Bから出力される映像信号は、それぞれの画面を構成する各画素の輝度値を示す輝度信号である
HPF80A、80Bに入力された映像信号は、それぞれHPF80A、80Bによってその高域周波数成分が抽出され、その高域周波数成分の信号は、続いてA/D変換器82A、82Bによってデジタル信号に変換される。そして、ピント状態検出用撮像素子32A、32Bにより撮像された画像の1画面分(1フィールド分)のデジタル信号のうち所定のフォーカスエリア内(例えば、画面中央部分)の画素に対応するデジタル信号のみがゲート回路84A、84Bによって抽出され、抽出された範囲のデジタル信号の値が加算器86A、86Bによって加算される。これにより、フォーカスエリア内における映像信号の高域周波数成分の値の総和が求められる。加算器86A、86Bによって得られた値は、フォーカスエリア内における画像の鮮鋭度の高低を示す焦点評価値であり、加算器86Aで得られた焦点評価値はチャンネルA(chA)の焦点評価値として、加算器86Bで得られた焦点評価値はチャンネルB(chB)の焦点評価値としてCPU54に与えられる。
【0029】
尚、同図に示す同期信号発生回路88からは、各種同期信号が各ピント状態検出用撮像素子32A、32Bやゲート回路84A、84B等の各回路に与えられており、各回路の処理の同期が図られている。
【0030】
続いて、上記焦点評価値に基づくピント状態検出及びフォーカス(フォーカスレンズ16)の制御について説明すると、上記のように焦点評価値生成部58から取得されるchAとchBの焦点評価値により映像用撮像素子の撮像面(ピント面P)に対する撮影レンズ10の現在のピント状態を検出することができる。
【0031】
図5は、横軸に撮影レンズのフォーカスレンズ16の位置(フォーカス位置)、縦軸に焦点評価値をとり、ある被写体を撮影した際のフォーカス位置に対する焦点評価値の様子を示した図である。図中点線で示す曲線Cは、映像用撮像素子(又は映像用撮像素子と共役の位置に配置された撮像素子)からの映像信号により焦点評価値を求めたと仮定した場合にその焦点評価値をフォーカス位置に対して示したものであり、図中実線で示す曲線A、Bは、それぞれピント状態検出用撮像素子32A、32Bから得られるchAとchBの焦点評価値をフォーカス位置に対して示したものである。同図において、曲線Cの焦点評価値が最大(極大)となる位置F3が合焦位置である。
【0032】
撮影レンズのフォーカス位置が同図のF1に設定された場合、chAの焦点評価値VA1は、曲線Aの位置F1に対応する値となり、chBの焦点評価値VB1は、曲線Bの位置F1に対応する値となる。そして、この場合、chAの焦点評価値VA1の方が、chBの焦点評価値VB1よりも大きくなり、このことから、フォーカス位置が合焦位置(F3)よりも至近側に設定された状態、すなわち、前ピンの状態であることが分かる。
【0033】
一方、撮影レンズのフォーカス位置が同図のF2に設定された場合、chAの焦点評価値VA2は、曲線Aの位置F2に対応する値となり、chBの焦点評価値VB2は、曲線Bの位置F2に対応する値となる。そして、この場合、chAの焦点評価値VA2の方が、chBの焦点評価値VB2よりも小さくなり、このことから、フォーカス位置が合焦位置(F3)よりも無限遠側に設定された状態、すなわち、後ピンの状態であることが分かる。
【0034】
これに対して、撮影レンズ10のフォーカス位置がF3、すなわち合焦位置に設定された場合、chAの焦点評価値VA3は、曲線Aの位置F3に対応する値となり、chBの焦点評価値VB3は、曲線Bの位置F3に対応する値となる。このとき、chAの焦点評価値VA3とchBの焦点評価値VB3は等しくなり、このことから、フォーカス位置が合焦位置(F3)に設定された状態であることが分かる。
【0035】
このように、焦点評価値生成部58から得られるchAとchBの焦点評価値により、撮影レンズ10の現在のピント状態が前ピン、後ピン、合焦のいずれの状態であるかを検出することができる。
【0036】
従って、焦点評価値生成部58から得られるchAとchBの焦点評価値に基づいてフォーカスレンズ16の位置を制御することにより、フォーカスレンズ16を合焦位置に移動させることができる。即ち、chAとchBの焦点評価値が、前ピンであると判断される状態の場合には、フォーカスレンズ16を無限遠方向に移動させ、後ピンであると判断される状態の場合には、フォーカスレンズ16を至近方向に移動させ、合焦であると判断される状態となった場合には、フォーカスレンズ16をその位置で停止させることによって、フォーカスレンズ16を合焦位置に移動させることができる。
【0037】
次に、レンズ装置におけるズーム制御に関連する制御系について説明する。図6は、ズーム制御に関連する制御系の構成を示したブロック図である。上記ズームレンズ18は、図6に示すようにズームモータ100に連結されており、ズームモータ100が駆動されると、ズームレンズ18が光軸方向に移動しズーム(焦点距離)が変更される。尚、ズームレンズ18は、図示しない変倍系レンズ(群)と補正系レンズ(群)とから構成されており、これらの変倍系レンズ及び補正系レンズは所定の位置関係で光軸方向に移動し、変倍系レンズの移動により焦点距離が変化し、それに対応した補正系レンズの移動により焦点位置が一定に保持されるようになっている。
【0038】
ズームモータ100には、ズームモータ駆動回路102から駆動電圧が与えられ、ズームモータ駆動回路102にはレンズ装置に接続されるズームコントローラ106からの制御信号が与えられる。
【0039】
ズームコントローラ106には、例えば、ズームの移動速度を操作者が操作指示するズーム操作部材が設けられている。そのズーム操作部材の操作位置は、ズーム操作位置検出回路108によって検出され、そのズーム操作部材の操作位置に応じた電圧信号がズームの移動速度を指示する指示値としてアンプ等からなる所定の出力回路110を介してズームコントローラ106から出力される。ズームコントローラ106から出力さ指令信号は、レンズ装置の所定のコネクタを介して、ズームモータ駆動回路102に与えられる。
【0040】
このようにズームコントローラ106からの制御信号がズームモータ駆動回路102に与えられると、ズームモータ駆動回路102によって電圧増幅され、その増幅された電圧が駆動電圧としてズームモータ100に印加される。これによって、ズームレンズ18がズームコントローラ106のズーム操作部材によって指示された移動速度となるように移動する。
【0041】
一方、このようなズーム制御をオートフォーカス制御時において行う場合、ズーム制御とオートフォーカス制御とが同時に行われており、上述のようにレンズ装置のCPU54には焦点評価値生成部58からchAとchBの焦点評価値が与えられている。CPU54は、それらのchAとchBの焦点評価値に基づいて、ズームコントローラ106によって指令されるズームの移動速度に対して実際に駆動されるズームの移動速度を所定速度以下に制限する。
【0042】
ここで、ズームの移動速度の制限は、例えば、ズームコントローラ106から出力される制御信号の電圧を後述のリミッタ回路116で制限することにより行われるようになっている。リミッタ回路116による制限が無い場合、ズームコントローラ106から出力される制御信号(ズームの移動速度)は、例えば図7に示すように、ズーム操作部材の操作位置に対して比例した電圧値VCを示す。尚、制御信号の電圧が原点Oよりも大きい場合と小さい場合(即ち、便宜上、原点Oを零(V)とすると、制御信号の電圧が正の場合と負の場合)とでズームの移動方向が異なり、その電圧の絶対値が移動速度の大きさを示す。
【0043】
一方、リミッタ回路116によりズームの移動速度を制限する場合、CPU54は、制限する移動速度(最大速度)に対応した電圧値(リミット値)をD/A変換器114を介してリミッタ回路116に与える。これによってリミッタ回路116は、ズームコントローラ106から出力される制御信号の電圧値がCPU54から与えられたリミット値(最大速度)を超えないように処理する。即ち、CPU54から与えられたリミット値がVL(正数)とすると、図8に示すようにズームコントローラ106から出力される制御信号の電圧値VCがVC>VL、又は、VC<−VLの場合には、制御信号の電圧値をVC又はーVCとしてズームモータ駆動回路102に与えるようにする。これによって、ズームの移動速度がリミット値によって指定された最大速度を超えない範囲に制限される。
【0044】
上記ズームの最大速度を示すリミット値の設定手順について説明すると、図9は、上記CPU54におけるオートフォーカス制御とズームの移動速度制限の処理手順を示したフローチャートである。
【0045】
まず、CPU54は、焦点評価値生成部58からchAの焦点評価値VAとchBの焦点評価値VBを取得する(ステップS10、ステップS12)。次いで、VA>VBか否かを判定し(ステップS14)、YESと判定した場合にはフォーカスレンズ16を無限遠側に移動させる制御信号をフォーカスモータ駆動回路52に出力する(ステップS16)。一方、ステップS14においてNOと判定した場合には、次にVA<VBか否かを判定する(ステップS18)。YESと判定した場合にはフォーカスレンズ16を至近側に移動させる制御信号をフォーカスモータ駆動回路52に出力する(ステップS20)。ステップS18においてNOと判定した場合には、フォーカスレンズ16を停止した状態にする(特別な処理を行わない)。
【0046】
次に、CPU54は、chAの焦点評価値VAとchBの焦点評価値VBの差の絶対値|VA−VB|が所定値Xより大きいか否か、即ち、撮影レンズ10のピント状態が合焦とみなせる状態でないか否かを判定する(ステップS22)。YESと判定した場合(合焦とみなせる状態でない場合)にはリミッタ回路116に与えるリミット値を現在値よりも所定値分だけ低下させる(ステップS24)。尚、リミット値の初期値は、決められた上限値とする。一方、ステップS22においてNOと判定した場合、リミット値を現在値よりも所定値分だけ増加させる(ステップS26)。以上のステップS10からステップS26の処理を繰り返し実行する。
【0047】
以上のように、撮影レンズ10のピント状態が合焦とみなせる状態でない場合にズームの最大速度を下げる方向に制限することで、ズーム移動時にピンボケの映像となる不具合が防止される。
【0048】
以上、上記実施の形態では、AF用として2つのピント状態検出用撮像素子32A、32Bから2つの焦点評価値を取得してAF制御を行う場合について説明したが、これに限らず、AF用の撮像素子が1つ又は3つ以上の場合においても本発明を適用できる。
【0049】
また、上記実施の形態では、本発明をテレビカメラシステムに適用した場合を例に説明したが、本発明はこれに限らず、ビデオカメラや静止画を撮影するスチルカメラにも適用することができる。
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係るレンズシステムによれば、オートフォーカス実行時であって撮影レンズのズームの移動時に、撮影レンズのピント状態が合焦とみなせる状態か否かを判定し、合焦とみなせる状態でないと判定した場合にはズームの最大速度を低下させてズームの移動速度をその最大速度範囲内に制限するようにしたため、ズームの移動時、特にワイド側からテレ側へのズームの移動時に、ピンボケの映像となる不具合を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明が適用されたテレビカメラシステムの光学系の構成を示したブロック図である。
【図2】図2は、映像用撮像素子に入射する被写体光の光軸と一対のピント状態検出用撮像素子に入射する被写体光の光軸を同一直線上に表示した図である。
【図3】図3は、オートフォーカス制御に関連する制御系の構成を示したブロック図である。
【図4】図4は、焦点評価値生成部の構成を示したブロック図である。
【図5】図5は、横軸に撮影レンズのフォーカス位置、縦軸に焦点評価値をとり、ある被写体を撮影した際のフォーカス位置に対する焦点評価値の様子を示した図である。
【図6】図6は、レンズ装置におけるズーム制御に関連する制御系の構成を示したブロック図である。
【図7】図7は、ズームの移動速度の制限についての説明に使用した説明図である。
【図8】図8は、ズームの移動速度の制限についての説明に使用した説明図である。
【図9】図9は、上記CPU54におけるオートフォーカス制御とズームの移動速度制限の処理手順を示したフローチャートである。
【符号の説明】
10…撮影レンズ、12…カメラ本体、14…撮像部、16…フォーカスレンズ(群)、18…ズームレンズ(群)、20…アイリス、22A…前側リレーレンズ、22B…後側リレーレンズ、24…ハーフミラー、26…リレーレンズ、28…ピント状態検出部、30A…第1プリズム、30B…第2プリズム、32A、32B…ピント状態検出用撮像素子、50…フォーカスモータ、52…フォーカスモータ駆動回路、54…CPU、56…フォーカスレンズ位置検出器、58…焦点評価値生成部、80A、80B…ハイパスフィルタ(HPF)、82A、82B…A/D変換器、84A、84B…ゲート回路、86A、86B…加算器、100…ズームモータ、102…ズームモータ駆動回路、106…ズームコントローラ、116…リミッタ回路
【発明の属する技術分野】
本発明はレンズシステムに係り、特にオートフォーカス制御と共にズーム制御を行うレンズシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
ビデオカメラなどのオートフォーカスは、コントラスト方式によるものが一般的である。このコントラスト方式は、撮像素子から得られた映像信号のうちある範囲(フォーカスエリア)内の映像信号の高域周波数成分を積算して焦点評価値を生成し、その焦点評価値が最大(極大)となるようにピント調整を自動で行うものである。これによって、撮像素子で撮像された画像の鮮鋭度(コントラスト)が最大となる最良ピント(合焦)が得られる。
【0003】
また、従来、光路長の異なる位置に配置した複数の撮像素子を用いて撮影レンズのピント状態(前ピン、後ピン、合焦)を検出する方法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。これによれば、現在のフォーカス位置において、例えばフォーカスを前後に移動させたときの焦点評価値を、複数の撮像素子から得られた映像信号によって同時に知ることができ、その情報から現在のピント状態を検出することができる。
【0004】
【特許文献1】
特願2001−168246
【0005】
【特許文献2】
特願2001−168247
【0006】
【特許文献3】
特願2001−168248
【0007】
【特許文献4】
特願2001−168249
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来、ズームを急速に動かした場合、オートフォーカスによるピント合わせが間に合わず、ピンボケの映像となることがあった。例えば、ズームがワイド側に設定されている状態でオートフォーカスによりピントが合わせられたとする。この状態で仮にフォーカスを固定し、ズームをワイド側からテレ側に移動させたとすると、通常は、ズームアップされた被写体に対して正確にピントが合っておらず、ピンボケの映像となる。一方、オートフォーカスを有効にしてズームをワイド側からテレ側に移動させる場合、ズームの移動が遅いときには、ズームの移動中にオートフォーカスによるピント合わせが追従するため、ピンボケの映像にはならない。
【0009】
しかしながら、ズームの移動が速いと、オートフォーカスによるピント合わせが間に合わずにズームの移動中及び停止直後にピンボケの映像となる不具合があった。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、オートフォーカス実行時において、ズームを操作した際にピンボケの映像となる不具合を防止することができるレンズシステムを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、撮影レンズのピント合わせを自動で行うオートフォーカス手段と、前記撮影レンズのズームの動作を指令するズーム指令手段と、前記ズーム指令手段の指令に基づいて前記撮影レンズのズームを制御するズーム制御手段とを備えたレンズシステムにおいて、前記撮影レンズのズームの移動速度が、最大速度を示す所定の設定値を超えないように制限するズーム移動速度制限手段と、前記オートフォーカス手段によるピント合わせにより前記撮影レンズのピント状態が合焦とみなせる状態になっているか否かを判定する合焦判定手段と、
前記ズーム制御手段により前記撮影レンズのズームが移動している際に、前記合焦判定手段により前記撮影レンズのピント状態が合焦とみなせる状態になっていないと判定された場合に、前記ズームの最大速度を示す設定値を低下させるズーム最大速度変更手段と、を備えたことを特徴としている。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記合焦判定手段は、前記撮影レンズに入射した被写体光を光路長の異なる位置で撮像する複数の撮像手段と、前記各撮像手段により得られた映像信号に基づいて画像の鮮鋭度を示す焦点評価値を生成する焦点評価値生成手段と、を備え、前記焦点評価値生成手段によって生成された各撮像素子に対応する焦点評価値に基づいて前記撮影レンズのピント状態が合焦とみなせる状態になっているか否かを判定することを特徴としている。
【0013】
本発明によれば、オートフォーカス実行時であって撮影レンズのズームの移動時に、撮影レンズのピント状態が合焦とみなせる状態か否かを判定し、合焦とみなせる状態でないと判定した場合にはズームの最大速度を低下させてズームの移動速度をその最大速度範囲内に制限するようにしたため、ズームの移動時、特にワイド側からテレ側へのズームの移動時に、ピンボケの映像となる不具合を防止することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に従って本発明に係るレンズシステムの好ましい実施の形態について詳説する。
【0015】
図1は、本発明が適用されたテレビカメラシステムの光学系の構成を示したブロック図である。同図に示すテレビカメラシステムは、撮影レンズ10を備えたレンズ装置とカメラ本体12等から構成されており、カメラ本体12には、再生用(放映用等)の映像を撮影し、所定形式の映像信号として出力又は記録媒体に記録するための撮像素子(以下、映像用撮像素子という)や所要の回路等が搭載されている。
【0016】
撮影レンズ10を備えたレンズ装置は、カメラ本体12に着脱可能に装着され、主に光学系(撮影レンズ10)と制御系(後述)とから構成されている。撮影レンズ10には、光軸Oに沿ってフォーカスレンズ(群)16、変倍系及び補正系(図示せず)からなるズームレンズ(群)18、アイリス20、前側リレーレンズ22A及び後側リレーレンズ22Bからなるリレーレンズ(リレー光学系)等が配置されている。
【0017】
リレー光学系の前側リレーレンズ22Aと後側リレーレンズ22Bとの間には、ピント状態検出用の被写体光を映像用の被写体光から分岐するためのハーフミラー24が配置されている。このハーフミラー24は、撮影レンズ10の光軸Oに対して略45度傾斜して設置されており、前側リレーレンズ22Aを通過した被写体光の例えば1/3の光量を直角に反射して、映像用の被写体光から分岐する。
【0018】
ハーフミラー24を透過した被写体光は、映像用の被写体光として撮影レンズ10の後端側から射出されたのち、カメラ本体12の撮像部14に入射する。撮像部14の構成については省略するが、撮像部14に入射した被写体光は、例えば色分解光学系により、赤色光、緑色光、青色光の3色に分解され、各色ごとの映像用撮像素子の撮像面に入射する。これによって放映用のカラー映像が撮影される。なお、図中のピント面Pは、各映像用撮像素子の撮像面に対して光学的に等価な位置を撮影レンズ10の光軸O上に示したものである。
【0019】
一方、ハーフミラー24で反射された被写体光は、ピント状態検出用の被写体光として光軸Oに対して垂直な光軸O′に沿って進行し、リレーレンズ26に入射する。そして、このリレーレンズ26で集光されてピント状態検出部28に入射する。
【0020】
ピント状態検出部28は、光分割光学系を構成する2つのプリズム30A、30Bと、ピント状態検出用の一対の撮像素子32A、32B(以下、ピント状態検出用撮像素子という)とで構成されている。
【0021】
上述したようにハーフミラー24で反射した被写体光は、光軸O′に沿って進行し、まず、第1プリズム30Aに入射する。そして、第1プリズム30Aのハーフミラー面Mで反射光と透過光に等分割される。このうち反射光は一方のピント状態検出用撮像素子32Aの撮像面に入射され、透過光は他方のピント状態検出用撮像素子32Bに入射される。このとき、各ピント状態検出用撮像素子32A、32Bの撮像面には、それぞれ撮影レンズ10に入射した全被写体光のうちの約1/6の光量が入射する。
【0022】
図2は、カメラ本体12の映像用撮像素子に入射する被写体光の光軸と一対のピント状態検出用撮像素子32A、32Bに入射する被写体光の光軸を同一直線上に表した図である。同図に示すように、一方のピント状態検出用撮像素子32Aに入射する被写体光の光路長は、他方のピント状態検出用撮像素子32Bに入射する被写体光の光路長よりも短く設定され、映像用撮像素子の撮像面(ピント面P)に入射する被写体光の光路長は、その中間の長さとなるように設定されている。すなわち、一対のピント状態検出用撮像素子32A、32B(の撮像面)は、それぞれ映像用撮像素子の撮像面(ピント面P)に対して前後等距離の位置に配置されている。
【0023】
このように配置された一対のピント状態検出用撮像素子32A、32Bにより、撮影レンズ10に入射した被写体光が映像用撮像素子の撮像面(ピント面P)に対して前後等距離の位置で撮像されるようになっている。尚、一対のピント状態検出用撮像素子32A、32Bは、映像用撮像通素子の撮像面に対して前後等距離の位置に撮像面を配置したときに撮像される映像を撮像するもので必ずしもピント状態検出用撮像素子32A、32Bと映像用撮像素子との光路長の関係が図2のようになる場合に限らない。また、ピント状態検出用撮像素子32A、32Bは後述のようにピント状態検出(オートフォーカス制御)のための映像信号を取得するものであり、カラー映像を撮像するものである必要はなく、本実施の形態では白黒画像を撮像するCCDであるものとする。
【0024】
次に、レンズ装置におけるオートフォーカス制御に関連する制御系について説明する。図3は、オートフォーカス制御に関連する制御系の構成を示したブロック図である。上記フォーカスレンズ16は、図3に示すようにフォーカスモータ50に連結されており、フォーカスモータ50が駆動されると、フォーカスレンズ16が光軸方向に移動しフォーカスが変更される。フォーカスモータ50には、フォーカスモータ駆動回路52から駆動電圧が与えられ、フォーカスモータ駆動回路52にはCPU54からの制御信号が与えられる。
【0025】
CPU54からの制御信号は、例えば、フォーカスモータ50の回転速度、即ち、フォーカスレンズ16の移動速度に対応する電圧値を示しており、その電圧値がフォーカスモータ駆動回路52に与えられると、フォーカスモータ駆動回路52によって電圧増幅され、その増幅された電圧が駆動電圧としてフォーカスモータ50に印加される。これによって、フォーカスモータ50の回転速度がCPU54によって制御される。
【0026】
また、フォーカスレンズ位置検出器56によってフォーカスレンズ16の現在位置が検出され、その検出信号がCPU54に与えられるようになっている。従って、CPU54の処理において、上述のようにフォーカスモータ50の回転速度を制御することにより、フォーカスレンズ16の動作速度を所望の速度に制御することができると共に、フォーカスレンズ位置検出器56からの検出信号によりフォーカスレンズ16の現在位置を読み取りながら、フォーカスモータ50の回転速度を制御することにより、フォーカスレンズ16の設定位置を所望の位置に制御することができるようになっている。
【0027】
一方、オートフォーカス制御は、上記ピント状態検出用撮像素子32A、32Bからの映像信号に基づいて行われるようになっており、一対のピント状態検出用撮像素子32A、32Bで撮像された画像(映像)は、1画面を構成する複数の走査線(水平ライン)にそって各画素値を順次伝送する映像信号として出力され、焦点評価値生成部58に入力される。焦点評価値生成部58の構成、処理については後述するが、焦点評価値生成部58において、各ピント状態検出用撮像素子32A、32Bから入力された映像信号から、各ピント状態検出用撮像素子32A、32Bで撮像された各画像のコントラスト(鮮鋭度)の高低を示す焦点評価値が生成され、それらの生成された焦点評価値がCPU54に与えられるようになっている。尚、ピント状態検出用撮像素子32Aからの映像信号に基づいて生成された焦点評価値を、チャンネルA(chA)の焦点評価値といい、ピント状態検出用撮像素子32Bからの映像信号に基づいて生成された焦点評価値を、チャンネルB(chB)の焦点評価値という。CPU54では、詳細を後述するように、焦点評価値生成部58から取得したchAとchBの焦点評価値を取得し、その取得した焦点評価値に基づいて、撮影レンズ10のピント状態(前ピン、後ピン、合焦)を検出すると共に、撮影レンズ10のピント状態が合焦となるようにフォーカスレンズ16の位置を制御する。
【0028】
ここで、焦点評価値生成部58の構成及び処理について説明する。図4に示すように、各ピント状態検出用撮像素子32A、32Bから出力された映像信号は、焦点評価値生成部58のハイパスフィルタ(HPF)80A、80Bに入力される。ここでピント状態検出用撮像素子32A、32Bは、いずれも白黒画像を撮影するCCDであることから、各ピント状態検出用撮像素子32A、32Bから出力される映像信号は、それぞれの画面を構成する各画素の輝度値を示す輝度信号である
HPF80A、80Bに入力された映像信号は、それぞれHPF80A、80Bによってその高域周波数成分が抽出され、その高域周波数成分の信号は、続いてA/D変換器82A、82Bによってデジタル信号に変換される。そして、ピント状態検出用撮像素子32A、32Bにより撮像された画像の1画面分(1フィールド分)のデジタル信号のうち所定のフォーカスエリア内(例えば、画面中央部分)の画素に対応するデジタル信号のみがゲート回路84A、84Bによって抽出され、抽出された範囲のデジタル信号の値が加算器86A、86Bによって加算される。これにより、フォーカスエリア内における映像信号の高域周波数成分の値の総和が求められる。加算器86A、86Bによって得られた値は、フォーカスエリア内における画像の鮮鋭度の高低を示す焦点評価値であり、加算器86Aで得られた焦点評価値はチャンネルA(chA)の焦点評価値として、加算器86Bで得られた焦点評価値はチャンネルB(chB)の焦点評価値としてCPU54に与えられる。
【0029】
尚、同図に示す同期信号発生回路88からは、各種同期信号が各ピント状態検出用撮像素子32A、32Bやゲート回路84A、84B等の各回路に与えられており、各回路の処理の同期が図られている。
【0030】
続いて、上記焦点評価値に基づくピント状態検出及びフォーカス(フォーカスレンズ16)の制御について説明すると、上記のように焦点評価値生成部58から取得されるchAとchBの焦点評価値により映像用撮像素子の撮像面(ピント面P)に対する撮影レンズ10の現在のピント状態を検出することができる。
【0031】
図5は、横軸に撮影レンズのフォーカスレンズ16の位置(フォーカス位置)、縦軸に焦点評価値をとり、ある被写体を撮影した際のフォーカス位置に対する焦点評価値の様子を示した図である。図中点線で示す曲線Cは、映像用撮像素子(又は映像用撮像素子と共役の位置に配置された撮像素子)からの映像信号により焦点評価値を求めたと仮定した場合にその焦点評価値をフォーカス位置に対して示したものであり、図中実線で示す曲線A、Bは、それぞれピント状態検出用撮像素子32A、32Bから得られるchAとchBの焦点評価値をフォーカス位置に対して示したものである。同図において、曲線Cの焦点評価値が最大(極大)となる位置F3が合焦位置である。
【0032】
撮影レンズのフォーカス位置が同図のF1に設定された場合、chAの焦点評価値VA1は、曲線Aの位置F1に対応する値となり、chBの焦点評価値VB1は、曲線Bの位置F1に対応する値となる。そして、この場合、chAの焦点評価値VA1の方が、chBの焦点評価値VB1よりも大きくなり、このことから、フォーカス位置が合焦位置(F3)よりも至近側に設定された状態、すなわち、前ピンの状態であることが分かる。
【0033】
一方、撮影レンズのフォーカス位置が同図のF2に設定された場合、chAの焦点評価値VA2は、曲線Aの位置F2に対応する値となり、chBの焦点評価値VB2は、曲線Bの位置F2に対応する値となる。そして、この場合、chAの焦点評価値VA2の方が、chBの焦点評価値VB2よりも小さくなり、このことから、フォーカス位置が合焦位置(F3)よりも無限遠側に設定された状態、すなわち、後ピンの状態であることが分かる。
【0034】
これに対して、撮影レンズ10のフォーカス位置がF3、すなわち合焦位置に設定された場合、chAの焦点評価値VA3は、曲線Aの位置F3に対応する値となり、chBの焦点評価値VB3は、曲線Bの位置F3に対応する値となる。このとき、chAの焦点評価値VA3とchBの焦点評価値VB3は等しくなり、このことから、フォーカス位置が合焦位置(F3)に設定された状態であることが分かる。
【0035】
このように、焦点評価値生成部58から得られるchAとchBの焦点評価値により、撮影レンズ10の現在のピント状態が前ピン、後ピン、合焦のいずれの状態であるかを検出することができる。
【0036】
従って、焦点評価値生成部58から得られるchAとchBの焦点評価値に基づいてフォーカスレンズ16の位置を制御することにより、フォーカスレンズ16を合焦位置に移動させることができる。即ち、chAとchBの焦点評価値が、前ピンであると判断される状態の場合には、フォーカスレンズ16を無限遠方向に移動させ、後ピンであると判断される状態の場合には、フォーカスレンズ16を至近方向に移動させ、合焦であると判断される状態となった場合には、フォーカスレンズ16をその位置で停止させることによって、フォーカスレンズ16を合焦位置に移動させることができる。
【0037】
次に、レンズ装置におけるズーム制御に関連する制御系について説明する。図6は、ズーム制御に関連する制御系の構成を示したブロック図である。上記ズームレンズ18は、図6に示すようにズームモータ100に連結されており、ズームモータ100が駆動されると、ズームレンズ18が光軸方向に移動しズーム(焦点距離)が変更される。尚、ズームレンズ18は、図示しない変倍系レンズ(群)と補正系レンズ(群)とから構成されており、これらの変倍系レンズ及び補正系レンズは所定の位置関係で光軸方向に移動し、変倍系レンズの移動により焦点距離が変化し、それに対応した補正系レンズの移動により焦点位置が一定に保持されるようになっている。
【0038】
ズームモータ100には、ズームモータ駆動回路102から駆動電圧が与えられ、ズームモータ駆動回路102にはレンズ装置に接続されるズームコントローラ106からの制御信号が与えられる。
【0039】
ズームコントローラ106には、例えば、ズームの移動速度を操作者が操作指示するズーム操作部材が設けられている。そのズーム操作部材の操作位置は、ズーム操作位置検出回路108によって検出され、そのズーム操作部材の操作位置に応じた電圧信号がズームの移動速度を指示する指示値としてアンプ等からなる所定の出力回路110を介してズームコントローラ106から出力される。ズームコントローラ106から出力さ指令信号は、レンズ装置の所定のコネクタを介して、ズームモータ駆動回路102に与えられる。
【0040】
このようにズームコントローラ106からの制御信号がズームモータ駆動回路102に与えられると、ズームモータ駆動回路102によって電圧増幅され、その増幅された電圧が駆動電圧としてズームモータ100に印加される。これによって、ズームレンズ18がズームコントローラ106のズーム操作部材によって指示された移動速度となるように移動する。
【0041】
一方、このようなズーム制御をオートフォーカス制御時において行う場合、ズーム制御とオートフォーカス制御とが同時に行われており、上述のようにレンズ装置のCPU54には焦点評価値生成部58からchAとchBの焦点評価値が与えられている。CPU54は、それらのchAとchBの焦点評価値に基づいて、ズームコントローラ106によって指令されるズームの移動速度に対して実際に駆動されるズームの移動速度を所定速度以下に制限する。
【0042】
ここで、ズームの移動速度の制限は、例えば、ズームコントローラ106から出力される制御信号の電圧を後述のリミッタ回路116で制限することにより行われるようになっている。リミッタ回路116による制限が無い場合、ズームコントローラ106から出力される制御信号(ズームの移動速度)は、例えば図7に示すように、ズーム操作部材の操作位置に対して比例した電圧値VCを示す。尚、制御信号の電圧が原点Oよりも大きい場合と小さい場合(即ち、便宜上、原点Oを零(V)とすると、制御信号の電圧が正の場合と負の場合)とでズームの移動方向が異なり、その電圧の絶対値が移動速度の大きさを示す。
【0043】
一方、リミッタ回路116によりズームの移動速度を制限する場合、CPU54は、制限する移動速度(最大速度)に対応した電圧値(リミット値)をD/A変換器114を介してリミッタ回路116に与える。これによってリミッタ回路116は、ズームコントローラ106から出力される制御信号の電圧値がCPU54から与えられたリミット値(最大速度)を超えないように処理する。即ち、CPU54から与えられたリミット値がVL(正数)とすると、図8に示すようにズームコントローラ106から出力される制御信号の電圧値VCがVC>VL、又は、VC<−VLの場合には、制御信号の電圧値をVC又はーVCとしてズームモータ駆動回路102に与えるようにする。これによって、ズームの移動速度がリミット値によって指定された最大速度を超えない範囲に制限される。
【0044】
上記ズームの最大速度を示すリミット値の設定手順について説明すると、図9は、上記CPU54におけるオートフォーカス制御とズームの移動速度制限の処理手順を示したフローチャートである。
【0045】
まず、CPU54は、焦点評価値生成部58からchAの焦点評価値VAとchBの焦点評価値VBを取得する(ステップS10、ステップS12)。次いで、VA>VBか否かを判定し(ステップS14)、YESと判定した場合にはフォーカスレンズ16を無限遠側に移動させる制御信号をフォーカスモータ駆動回路52に出力する(ステップS16)。一方、ステップS14においてNOと判定した場合には、次にVA<VBか否かを判定する(ステップS18)。YESと判定した場合にはフォーカスレンズ16を至近側に移動させる制御信号をフォーカスモータ駆動回路52に出力する(ステップS20)。ステップS18においてNOと判定した場合には、フォーカスレンズ16を停止した状態にする(特別な処理を行わない)。
【0046】
次に、CPU54は、chAの焦点評価値VAとchBの焦点評価値VBの差の絶対値|VA−VB|が所定値Xより大きいか否か、即ち、撮影レンズ10のピント状態が合焦とみなせる状態でないか否かを判定する(ステップS22)。YESと判定した場合(合焦とみなせる状態でない場合)にはリミッタ回路116に与えるリミット値を現在値よりも所定値分だけ低下させる(ステップS24)。尚、リミット値の初期値は、決められた上限値とする。一方、ステップS22においてNOと判定した場合、リミット値を現在値よりも所定値分だけ増加させる(ステップS26)。以上のステップS10からステップS26の処理を繰り返し実行する。
【0047】
以上のように、撮影レンズ10のピント状態が合焦とみなせる状態でない場合にズームの最大速度を下げる方向に制限することで、ズーム移動時にピンボケの映像となる不具合が防止される。
【0048】
以上、上記実施の形態では、AF用として2つのピント状態検出用撮像素子32A、32Bから2つの焦点評価値を取得してAF制御を行う場合について説明したが、これに限らず、AF用の撮像素子が1つ又は3つ以上の場合においても本発明を適用できる。
【0049】
また、上記実施の形態では、本発明をテレビカメラシステムに適用した場合を例に説明したが、本発明はこれに限らず、ビデオカメラや静止画を撮影するスチルカメラにも適用することができる。
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係るレンズシステムによれば、オートフォーカス実行時であって撮影レンズのズームの移動時に、撮影レンズのピント状態が合焦とみなせる状態か否かを判定し、合焦とみなせる状態でないと判定した場合にはズームの最大速度を低下させてズームの移動速度をその最大速度範囲内に制限するようにしたため、ズームの移動時、特にワイド側からテレ側へのズームの移動時に、ピンボケの映像となる不具合を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明が適用されたテレビカメラシステムの光学系の構成を示したブロック図である。
【図2】図2は、映像用撮像素子に入射する被写体光の光軸と一対のピント状態検出用撮像素子に入射する被写体光の光軸を同一直線上に表示した図である。
【図3】図3は、オートフォーカス制御に関連する制御系の構成を示したブロック図である。
【図4】図4は、焦点評価値生成部の構成を示したブロック図である。
【図5】図5は、横軸に撮影レンズのフォーカス位置、縦軸に焦点評価値をとり、ある被写体を撮影した際のフォーカス位置に対する焦点評価値の様子を示した図である。
【図6】図6は、レンズ装置におけるズーム制御に関連する制御系の構成を示したブロック図である。
【図7】図7は、ズームの移動速度の制限についての説明に使用した説明図である。
【図8】図8は、ズームの移動速度の制限についての説明に使用した説明図である。
【図9】図9は、上記CPU54におけるオートフォーカス制御とズームの移動速度制限の処理手順を示したフローチャートである。
【符号の説明】
10…撮影レンズ、12…カメラ本体、14…撮像部、16…フォーカスレンズ(群)、18…ズームレンズ(群)、20…アイリス、22A…前側リレーレンズ、22B…後側リレーレンズ、24…ハーフミラー、26…リレーレンズ、28…ピント状態検出部、30A…第1プリズム、30B…第2プリズム、32A、32B…ピント状態検出用撮像素子、50…フォーカスモータ、52…フォーカスモータ駆動回路、54…CPU、56…フォーカスレンズ位置検出器、58…焦点評価値生成部、80A、80B…ハイパスフィルタ(HPF)、82A、82B…A/D変換器、84A、84B…ゲート回路、86A、86B…加算器、100…ズームモータ、102…ズームモータ駆動回路、106…ズームコントローラ、116…リミッタ回路
Claims (2)
- 撮影レンズのピント合わせを自動で行うオートフォーカス手段と、前記撮影レンズのズームの動作を指令するズーム指令手段と、前記ズーム指令手段の指令に基づいて前記撮影レンズのズームを制御するズーム制御手段とを備えたレンズシステムにおいて、
前記撮影レンズのズームの移動速度が、最大速度を示す所定の設定値を超えないように制限するズーム移動速度制限手段と、
前記オートフォーカス手段によるピント合わせにより前記撮影レンズのピント状態が合焦とみなせる状態になっているか否かを判定する合焦判定手段と、
前記ズーム制御手段により前記撮影レンズのズームが移動している際に、前記合焦判定手段により前記撮影レンズのピント状態が合焦とみなせる状態になっていないと判定された場合に、前記ズームの最大速度を示す設定値を低下させるズーム最大速度変更手段と、
を備えたことを特徴とするレンズシステム。 - 前記合焦判定手段は、
前記撮影レンズに入射した被写体光を光路長の異なる位置で撮像する複数の撮像手段と、前記各撮像手段により得られた映像信号に基づいて画像の鮮鋭度を示す焦点評価値を生成する焦点評価値生成手段と、を備え、
前記焦点評価値生成手段によって生成された各撮像素子に対応する焦点評価値に基づいて前記撮影レンズのピント状態が合焦とみなせる状態になっているか否かを判定することを特徴とする請求項1のレンズシステム。
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