JP2004116754A - 動圧軸受、モータ装置、及び塑性変形加工方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】小型モータの動圧軸受を、加工性、耐摩耗性、耐食性、に優れ、非磁性である特定鋼材によって構成する。この特定鋼材は、Crを14.00%、Mnを8.00%、Cを0.20%、Niを2.00%、Siを0.35%、Pを0.05%未満含んだ鋼材である。この特定鋼材は、加工性が高いため、面粗度や直角度などの加工精度を高めることができ、これによって動圧軸受の回転精度を高めることができる。また、この特定鋼材は圧力を加えて塑性変形させると圧力を加えた表面が硬化するという性質がある。この性質を用いて、動圧軸受の回転する部分と静止している部分が接触する面をプレスして硬化させることにより、耐摩耗性を向上させる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は動圧軸受、モータ装置などに関し、例えば、磁気記憶媒体を回転駆動するのに使用されるものに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年のコンピュータの高性能化に伴い、記憶装置の高容量化、高速化が求められており、このような記憶装置として様々なものが実用化されている。このような記憶装置の中でも、特に、円板状の記憶媒体をスピンドルモータにより高速回転させ、この記憶媒体上にデータの読み書きを行うハードディスク駆動装置が多用されている。
ハードディスク駆動装置は、記憶媒体を毎分数千回転で回転させながら、記憶媒体上の数ミクロンの位置に浮揚したヘッドで高速にデータの読み書きを行うため、記憶媒体を回転させるスピンドルモータには、高い回転精度が要求される。そして、スピンドルモータでシャフトを軸支する軸受は、スピンドルモータの回転精度を決める重要な要素である。
【0003】
この軸受として、従来は、ボールベアリングを用いた転がり軸受が用いられてきたが、近年では、より高い回転精度が得られ、衝撃にも強い流体動圧軸受(以下、動圧軸受)が用いられるようになってきた。
動圧軸受は、オイルなどの流体に動圧力を発生させることにより、シャフトを軸支するものである。
動圧軸受で適切に動圧力を発生させて、シャフトを良好に軸支するためには、部品の加工精度の高さが必要である。そのため、動圧軸受に用いる軸受材料は、高い加工精度を達成するための加工性の良さが要求される。
【0004】
また、近年のハードディスク駆動装置は、コンピュータの低消費電力化のため、必要なときにモータを回転させてデータの読み書きを行う使い方が一般的になっている。このような使用方法では、モータの回転、停止の頻度が大幅に増加する。
また、回転、停止で軸受は接触を繰り返すこととなり、その接触によって摩耗粉が発生する。動圧軸受の軸受間隙は2ミクロン程度であるため、摩耗粉が軸受性能に影響を与える場合がある。そのため、軸受材料の対摩耗性の向上も製品の信頼性において大変重要である。耐摩耗性を高めることにより、回転、停止の繰り返し寿命を長くすることができる。
【0005】
更に、動圧軸受は、オイルなどの流体に接触しているため、耐食性が必要である。例えば、軸受材料に硫黄分が含まれていると軸受からアウトガスが発生する場合がある。このアウトガスはハードディスク駆動装置のヘッドを腐食させたりなどする。また、軸受材料に鉛が含まれていると、オイルと反応してオイルがゲル化する場合がある。
このような要件を満たすために、軸受材料として、銅合金を用いたり、各種のステンレス鋼を用いたり、あるいは部品の表面を所定の処理(チッ化処理など)したり、あるいは熱処理したりすることが行われている。
加工性に優れる素材を用いた発明としては次のものがある。
【0006】
【特許文献1】特開2002−13534号公報
【0007】
特許文献1に記載されている発明は、加工性が優れた軸受材料として、軸受の素材に銅合金を用いたものである。
また、部品の加工性の良さを追求した発明としては次のものがある。
【0008】
【特許文献2】特開2001−298899号公報
【0009】
特許文献2に記載されている発明は、スピンドルモータのシャフトを快削ステンレス鋼で構成するものである。
更に、加工性、耐摩耗性の高い素材を用いてスピンドルモータを構成した発明としては次のものがある。
【0010】
【特許文献3】特開2002−30386号公報
【0011】
特許文献3に記載の発明は、上記の要求を満たす、所定の成分からなるステンレス鋼を用いてスピンドルモータのシャフトを構成し、このシャフトをボールベアリングによりステータに軸支したものである。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、銅合金は、ステンレス鋼に比べて、加工性に優れるものの耐摩耗性が劣る欠点を持つ。回転、停止の繰り返し試験の結果ではステンレス鋼製軸受に比べて寿命が短くなっている。
また、快削ステンレス鋼であっても耐摩耗性は十分なものではない。そのため、快削ステンレス鋼を用いた場合、切削加工後軸受の接触部にチッ化処理あるいはDLC(ダイヤモンドライクカーボン)被膜処理を施すことによって、耐摩耗性を向上させる必要がある。しかし、こうした表面処理は大変高価である。また、快削性を上げるために添加された硫黄はアウトガスの問題を引き起こす。
更に、特開2002−30386号公報で使用している鋼材は、加工性、耐摩耗性は高いが、回転する部材と静止している部材が接触することがある動圧軸受に用いる場合、耐摩耗性がやや不足している。
【0013】
そこで、本発明の目的は、回転精度が高く、信頼性の高い動圧軸受などを提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、少なくとも一端に開口部が設けられた中空部を有する中空部材と、前記中空部内に、前記中空部材に対して回転可能に配置された回転部と、前記開口部を貫通し、前記回転部の回転軸線と同軸に配置されたシャフト部と、を備えた回転部材と、前記中空部材と前記回転部材の間に介在する流体と、前記中空部材と前記回転部材の対向する面の間で前記流体に作用し、前記対向する面の間で動圧力を発生させる動圧力発生手段と、前記開口部の内周側に形成された、前記流体の遺漏を抑止するシール部と、を具備した動圧軸受であって、前記回転部材、及び前記中空部材のうちの少なくとも一方が、クロムを12%以上及び16%以下含有し、かつマンガンを6%以上及び10%以下含有するステンレス鋼によって構成され、前記回転部材と前記中空部材の対向する面のうち、少なくとも一方の表面が塑性変形加工されていることを特徴とする動圧軸受を提供する。
請求項2に記載の発明では、前記ステンレス鋼の組成成分が、炭素を2%、ニッケルを2%、硫黄を0.15%、シリコンを0.35%、リンを0.05%以下、のうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする請求項1に記載の動圧軸受を提供する。
請求項3に記載の発明では、前記回転部材の表面、及び前記中空部の内周面の少なくとも一方には動圧力発生溝が形成されており、前記動圧力発生手段は、前記回転部材が回転しているときに、前記動圧力発生溝が前記流体を輸送することにより、動圧力を発生させることを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載の動圧軸受を提供する。
請求項4に記載の発明では、前記回転部は、円板形状に形成された円板部材であり、前記シャフト部は前記円板部材のラジアル方向中央部に、前記円板部材の円板面に対して垂直に連接していることを特徴とする請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の動圧軸受を提供する。
請求項5に記載の発明では、請求項1から請求項4までのうちの何れか1の請求項に記載の動圧軸受と、前記動圧軸受のシャフトに連接したロータと、前記中空部材に連接し、前記動圧軸受と前記ロータを支持するステータと、前記ロータを回転させる駆動手段と、を具備したことを特徴とするモータを提供する。
請求項6に記載の発明では、少なくとも一端に開口部が設けられた中空部を有する中空部材と、前記中空部内に、前記中空部材に対して回転可能に配置された回転部と、前記開口部を貫通し、前記回転部の回転軸線と同軸に配置されたシャフト部と、を備えた回転部材と、前記中空部材と前記回転部材の間に介在する流体と、前記中空部材と前記回転部材の対向する面の間で前記流体に作用し、前記対向する面の間で動圧力を発生させる動圧力発生手段と、前記開口部の内周側に形成された、前記流体の遺漏を抑止するシール部と、を具備し、前記回転部材、及び前記中空部材のうちの少なくとも一方がクロムを12%以上16%以下含有し、かつマンガンを6%以上10%以下含有するステンレス鋼によって構成された動圧軸受を塑性変形加工する塑性変形加工方法であって、前記塑性変形加工方法は、前記回転部材と前記中空部材の対向する面のうち、少なくとも一方の表面をプレス加工することにより前記表面を硬化させるプレス加工ステップから構成されたことを特徴とする塑性変形加工方法を提供する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
(1)実施形態の概要
ハードディスク装置の駆動などに使用する小型モータの動圧軸受を加工性、耐摩耗性、耐食性に優れ、非磁性である特定鋼材によって構成する。特定鋼材の代表的な成分は、図3に示した通りである。
この特定鋼材は、加工性が高いため、面粗度や直角度などの加工精度を高めることができ、これによって動圧軸受の回転精度を高めることができる。
この特定鋼材は圧力を加えて塑性変形させると圧力を加えた表面が硬化するという性質がある。これは、組織がオーステナイトからマルテンサイトに相転移することにより硬化すると考えられている。
【0016】
この性質を用いて、動圧軸受の回転する部分と静止している部分が接触する面をプレスして硬化させることにより、耐摩耗性を向上させることができる。これにより、動圧軸受の信頼性の向上と長寿命化を計ることができる。
また、動圧軸受で動圧発生手段として作用する動圧力発生溝をプレス加工により生成すれば、塑性変形加工と、動圧力発生溝の生成を同時に行うことができる。
更に、特定鋼材は鉛を含まないため、従来の鉛の漏出を防ぎ、かつ表面の耐摩耗性を向上させるための表面処理を行わなくて済む。
加えて、耐食性に優れているため、錆の発生を抑制することができる。
【0017】
(2)実施形態の詳細
図1は、本実施の形態に係るモータ1の軸線方向の断面を示した断面図である。
モータ1は、ロータ2(回転部材)と、これを支持するステータ3、及びオイルの動圧力によってロータ2をステータ3に回転自在に軸支する動圧軸受部23とを備えている。
動圧軸受部23は、スリーブ12とエンドプレート11から形成される中空部分と、この中空部分に収納されたシャフト6、回転ディスク5、及び中空部分の間隙部分に満たされたオイル13(流体)から構成されている。
【0018】
図1に示したようにモータ1は、ステータ3の周囲にロータ2が形成されたインナーロータ型のモータ装置である。以下では一例としてアウターロータ型のモータ装置について説明するが、これに限定するものではなく、インナーロータ型のモータについても同様に構成することができる。
【0019】
モータ1の外寸は、回転軸方向の厚さが約3.5[mm]程度であり、径方向の長さが2〜3[cm]程度である。モータ1は、例えば1.8インチハードディスクドライブなどに使用される超小型動圧モータである。
モータ1は、例えば7200[回転/分]等の高速回転を行う上、ラジアル方向の振れ量(NRRO)が0.05[μm]以下、回転軸方向の振れ量が2[μm]以下等の高い位置精度が要求されるため、この目的に適した軸受構造である動圧軸受構造を採用している。
【0020】
なお、これはモータ1の大きさを限定するものではなく、より大きなモータ装置や更に小さいモータ装置を構成しても良い。
また、これは、モータ1の用途をハードディスク駆動に限定するものではなく、例えば、レーザプリンタのポリゴンミラーを回転させるなど、小型で精密なモータ装置を必要とする部分に使用することができる。
【0021】
まず、ロータ2について説明する。
ロータ2は、シャフト6と、シャフト6の先端部分(図1に向かって上端部分)に配設されたハブ7、ハブ7の内周に固着された永久磁石9、及びシャフト6の他端部分(図1に示した下端部分)に形成された回転ディスク5から構成されている。
ハブ7は、ハードディスクなどを載せる回転板である。ハブ7は、段部24を有した凸型の円盤形状を有しており、凸型の内部には、動圧軸受部23とコイル8を収納するための凹型の空間が形成されている。
ハブ7のラジアル方向中央部には、シャフト6を挿着するための貫通孔が回転軸方向に形成されている。
ハブ7は、例えば、ステンレス鋼をプレス加工や切削加工することにより形成される。
【0022】
段部24に形成された円筒部分の外周面は、ハードディスクを複数段に装着することができるようになっている。これら各ハードディスクの表面には、図示しないヘッドがサーボ機構によりラジアル方向に移動可能に配設され、ハードディスクに対してデータの読み書きを行うことができる。
【0023】
また、段部24を、光磁気ディスクなどの円板型記憶媒体の中心に形成されたクランプの取り付け穴に合致して、これを位置決めするように構成し、着脱可能な記憶媒体を駆動するように構成することもできる。
ハブ7の上端部分の貫通孔には、シャフト6の上端部分が圧入してあり、ハブ7とシャフト6は一体となって回転することができる。
なお、これは、ハブ7とシャフト6の取り付けを、圧入に限定するものではなく、ねじ止め機構にしたり、あるいは接着剤や溶接によって固定しても良い。
【0024】
ハブ7の内部に形成された凹型を構成する円筒の内周面には、永久磁石9がシャフト6と同心円上に接着されている。永久磁石9は、例えば希土類磁石などによって形成されている。
永久磁石9は、所定の極数でラジアル方向(シャフト6に向かう方向、及びシャフト6から外側に向かう方向)に磁化されており、永久磁石9の内周面には、周方向にN極とS極が等間隔で交互に現れる。
【0025】
極数は、各種のものが可能であるが本実施の形態では12極とする。即ち、永久磁石9の内周面において、周方向にN極とS極が等間隔で12極形成されている。
永久磁石9は、コイル8が発生する回転磁界により吸引され、ロータ2を回転駆動するためのトルクを生じる。
【0026】
シャフト6は、回転軸線と同心に配設された略円柱状の回転軸である。
シャフト6は、回転ディスク5、及び他端部34と共に所定の組成を有するステンレス鋼(以下特定鋼材)から削り出すことにより、一体加工される。
詳細は後述するが、特定鋼材は、例えば、Cr(クロム)を14.00%程度(以下で%は、重量%を意味する)、Mn(マンガン)を8.00%程度含むオーステナイト系ステンレス鋼である。この特定鋼材は、加工性が高く、耐摩耗性、耐食性、アウトガスの発生の抑制などの特性が優れた素材である。
【0027】
シャフト6は、シャフト6の軸線方向の中央付近に全周に渡って円板状に形成された回転ディスク5、図1中で回転ディスク5より上側に形成された上端部分35、及び、回転ディスク5の下側に形成された他端部分34から構成されている。
上端部分35の先端部分はハブ7に形成された貫通孔に挿着されている。
回転ディスク5の両端面には、図示しないが、それぞれスラスト方向の動圧力を発生させるための動圧力発生溝(例えばヘリングボーン溝)が形成されている。この動圧力発生溝は、プレス加工やエッチング、放電加工などにより形成される。
【0028】
ところで、特定鋼材は、プレスして表面を塑性変形加工すると、表面が硬化するという性質がある。これは、プレスにより表面の金属組織がオーステナイトからマルテンサイトに相転移するためであると考えられている。
この性質を利用し、回転ディスク5の両面はプレスすることにより表面が硬化されている。これにより、耐摩耗性が向上している。
本実施の形態では、動圧力発生溝をプレス加工で生成することにより、動圧力発生溝の生成と表面の硬化を同時に行っている。
また、回転ディスク5の両端面を塑性変形加工して硬化させた後、エッチングや放電加工などすることにより、動圧力発生溝を形成しても良い。
【0029】
シャフト6の他端部分34の周面には、ラジアル方向の動圧力を発生させるための動圧力発生溝10(軸線方向に対して互いに異なる方向へ傾いた2段の斜線状の溝)が形成されている。動圧力発生溝10は、転造(ロールプレス)やエッチングなどにより形成される。転造により、他端部34の周面が硬化し耐摩耗性が向上する。
ロータ2は、動圧軸受部23により軸支された回転部材を構成している。
【0030】
次に、ステータ3について説明する。
ステータ3は、シャフト6などを収納するスリーブ12、スリーブ12の上端に勘合してスリーブ12と共にディスク中空部22を形成するアッパープレート33、スリーブ12の外周面に配設されたコイル8、スリーブ12の底部を構成するエンドプレート11、スリーブ12の外周面に配設され、モータ1をハードディスクドライブなどに固定するのに用いられるフレーム20などから構成されている。スリーブ12とアッパープレート33は、共に特定鋼材で構成されている。
【0031】
スリーブ12は、動圧軸受部23のステータ側部分を構成する部材であって、特定鋼材を削り加工することにより形成されている。
スリーブ12は、略円柱形状をしており、ラジアル方向を中心に、回転ディスク5を収納するためのディスク中空部22と、他端部34を収納するための挿通孔21が形成されている。
ディスク中空部22の下端面は、適当な治工具を用いてプレスして塑性変形させることにより硬化させてある。
ディスク中空部22の上端には、アッパープレート33を勘合して装着するための座グリ部が形成されている。この座グリ部にアッパープレート33を装着すると、回転ディスク5と略相似な回転ディスク5のディスク中空部22が形成される。
【0032】
挿通孔21の内径は、シャフト6の他端部分34の外径よりも大きく設定されており、挿通孔21の内周面と他端部分34の外周面の間にオイル13を満たすための所定の間隙が設けられている。
挿通孔21の底部には、エンドプレート11を勘合して装着するための座グリ部が形成されている。
この座グリ部にエンドプレート11を装着することにより、他端部分34の下側にオイル13を溜めるオイルリザーバーが形成される。
【0033】
アッパープレート33は、円板形状を有した部材であって、ラジアル方向中央にシャフト6を挿通するための貫通孔が形成されている。アッパープレート33は、特定鋼材によって構成されている。
貫通孔の内径は、シャフト6の先端部分に向かう方向に向かって、所定の勾配で大きくなるようになっており、スリーブ側テーパ部17を形成している。
そして、スリーブ側テーパ部17と、これに対面するシャフト6の外周面からオイル13の遺漏を抑制するシール部15が形成されている。
アッパープレート33の両端面はプレスして塑性変形加工することにより硬化している。
【0034】
シール部15では、スリーブ側テーパ部17が、所定の間隙を隔ててシャフト6の外周面に対面する。そして、この間隙の大きさは、シャフト6の先端に向かうほど大きくなる。
一方、オイル13は、スリーブ側テーパ部17の軸線方向中程程度まで満たされている。
シール部15において、オイル13には、オイル13を動圧軸受部23側に引っ張る毛細管現象による力と表面張力が作用する。これらの力により、シール部15には、オイル13の遺漏を抑制するキャピラリーシールが形成されている。
【0035】
スリーブ12の外周面には、複数のコイル8が外周方向に等間隔で配設されている。本実施の形態では、コイル8を9個配設し、9極のステータコイルを形成している。
コイル8の磁極は、ラジアル方向外側に形成されており、所定の間隙を隔てて、永久磁石9の内周面に対面するようになっている。
コイル8には、図示しない電源装置により、3相交流が供給され、複数配設されたコイル8の外周方向に回転磁界を発生する。そして、この回転磁界で永久磁石9の磁極を吸引し、ロータ2にトルクを発生することができるようになっている。
【0036】
フレーム20は、フランジ状の部材であって、その内周面がスリーブ12の底部の外周に勘合して配設されている。
フレーム20の外周部分には、上端に、外側に張り出した段部を有する円筒部材が形成されている。この円筒部材の内周側には、所定の間隙を隔ててハブ7が同心状に配置されている。
フレーム20は、外周部分の段部を、ハードディスクドライブの筐体などの設置場所に据え付けることにより、モータ1を設置された場所に保持する。
【0037】
次に、以上のように構成されたモータ1の動作について説明する。
各コイル8に3相電流を供給し、モータ1を始動すると、まず、同心状に配設されたコイル8の外周側に回転磁界が発生する。
この回転磁界に永久磁石9の内周面に形成された各磁極が吸引されて、ロータ2を回転軸線の周りに回転させるトルクが生じる。このトルクよりロータ2が回転を始める。
【0038】
ロータ2が回転すると、シャフト6の他端部分34と回転ディスク5の両端面に形成された動圧力発生溝10によりオイル13に動圧力が発生する。
今、ロータ2が図1の紙面上から見て反時計回り方向に回転するとすると、動圧力発生溝10によるポンプ作用によって他端部分34の周囲に、回転軸線から外側に向かう方向にラジアル方向の動圧力が生じる。
【0039】
これは、動圧力発生溝10のポンプ作用によるものである。今、シャフト6が、モータ1を図1の上側から回転軸線方向に見て反時計回り方向に回転すると、オイル13は、上の動圧力発生溝10に関しては下方向に輸送(ポンピング)され、下の動圧力発生溝10に関しては上方向に輸送される。
その結果、上下の動圧力発生溝10の間でオイル13の圧力が高くなる。このため、シャフト6の他端部分34と挿通孔21の間にラジアル方向の圧力が発生する。
発生した動圧力によって、他端部分34の外周面と、オイル13を介して対向するステータ3側の挿通孔21の内周面との間にラジアル方向の圧力を生じる。この圧力のバランスにより、シャフト6は、ラジアル方向に支持される。
【0040】
回転ディスク5に関しては、図中上側から回転軸線方向に反時計回り方向に回転すると、回転ディスク5の両端面に形成された動圧力発生溝10によるポンプ作用によって回転ディスク5の両端面にスラスト方向の動圧力が生じる。
そして、発生した動圧力によって、回転ディスク5の両端面と、オイル13を介して対向するステータ側の面との間にスラスト方向の圧力が生じ、この両端面に生じた圧力のバランスによって、シャフト6はスラスト方向に支持される。
【0041】
なお、本実施の形態では、回転ディスク5、スリーブ12、アッパープレート33の全てを塑性変形加工したが、これに限定するものではなく、これらのうちの少なくとも1つを塑性変形加工するように構成しても良い。
また、回転ディスク5の形状は、例えば断面が菱形、台形など様々な形状のものを用いることができる。
このように、他端部分34で発生するラジアル方向の圧力と回転ディスク5で発生するスラスト方向の圧力のバランスにより、ロータ2は、回転軸の回りに回転自在に軸支される。
更に、本実施の形態では、動圧力発生溝をロータ2に設けたが、これに限定するものではなく、ステータ3側か、もしくはロータ2とステータ3の両方に形成しても良い。
【0042】
図2は、従来の素材(例えばSUS300系のステンレス鋼)を用いた動圧軸受と、特定鋼材を用いた動圧軸受のCSS(Contact Start Stop)特性を計測したものである。CSS特性とは、モータの始動と停止を繰り替えした回数と、そのときのNRRO(Non Repeatable RunOut)の値の変化をプロットしたグラフである。
なお、NRROとは、ロータの振れの再現性の程度を規定する数値であって、この数値が小さいほどロータの振れの再現性が良く、ディスクの読込み書き込みエラーを低減することができる。
計測は、モータ1にハードディスクを搭載し、ハードディスク面のスラスト方向の振れを計測することにより行った。
【0043】
図2のグラフは、縦軸にNRROを[μm]単位でプロットし、横軸に始動・停止の回数を1000回単位で示している。
グラフAは、特定鋼材によって構成された動圧軸受(以下、特定鋼材動圧軸受)のCSS特性である。また、グラフBは、Mnを2%、Crを18%含有したSUS300系のステンレス鋼で構成され、チッ化処理を施された動圧軸受(以下、従来動圧軸受)のCSS特性である。これは、従来の代表的な動圧軸受である。
グラフCは、比較のためデータであり、グラフBのものと同じ素材で構成され、チッ化処理が施されていない動圧軸受(以下、比較動圧軸受)のCSS特性である。
これらのグラフは、同じ構成の動圧軸受を複数用意し、その平均値をプロットしたものである。
【0044】
NRROの初期値が、新素材動圧軸受では、0.09[μm]であり、従来動圧軸受と、比較動圧軸受では、0.11[μm]程度であり、新素材が0.02[μm]程度優れている。ハードディスク駆動装置のヘッドとディスク面との距離は、数十[nm]程度であるので、この差は、ハードディスク駆動装置にとっては、非常に大きいものである。
【0045】
従来動圧軸受と、比較動圧軸受の違いはチッ化処理の有無である。初期値において、従来動圧軸受と比較動圧軸受のNRROが同じ程度の値であり、これに比べて特定鋼材軸受のNRROが良いことから、これらのNRROの違いは、加工精度の違いによるものであると推定される。
また、加工後の部品を計測することにより、特定鋼材は、直角度や面粗度などの加工精度が従来の素材に比べて良いことがわかっている。
【0046】
更に、特定鋼材動圧軸受は、始動・停止を50万回程度繰り返しても、NRROがほとんど変化せず、50万回後のNRROも、従来動圧軸受の初期値よりも小さくなっている。これは、特定鋼材動圧軸受の耐摩耗性が優れていることに起因すると考えられる。
一方、従来動圧軸受は、始動・停止を繰り返すにつれいて、若干NRROが増える傾向がある。
また、比較動圧軸受は、始動・停止につれてNRROが大きく増えている。これは、チッ化処理を施していないため、多くの摩耗が発生したためと考えられる。
【0047】
図3は、特定鋼材の代表的な成分を示した成分表である。
成分表からわかるように、特定鋼材は、0.20%のC(炭素)、0.35%のSi(ケイ素)、8.00%のMn、0を越え、0.005%以下のP(リン)、0.15%のS(硫黄)、0を越え2.00%のNi(ニッケル)、14.00%のCrを含有し、残部が実質的にFe(鉄)からなるオーステナイト系ステンレス鋼である。ここで、%は重量%である。なお、特定鋼材は、Pb(鉛)を含まない。
特定鋼材のMnの含有量は、望ましくは、12%以上かつ16%以下、より望ましくは、13%以上かつ15%以下、最も好ましくは14%である。
また、Crの含有量は、望ましくは、6%以上かつ10%以下、より望ましくは、7%以上かつ9%以下、最も好ましくは8%である。
【0048】
以上の組成のうち、Siは、脱酸剤として添加されているが、Siは耐食性の低下の要因ともなるので、その含有量は0.35%程度としている。
Mnは、鋼組織をオーステナイト化組織とするために必須の成分であることから、8.00%だけ添加されている。この値はCの含有量を考慮して決定される。また、Mnは、特定鋼材をプレスした際に、表面を硬化させるのに重要な働きを行っていると考えられている。
Pは、鋼材の摩擦係数を低下させるものであるが、局部電池として働くので耐食性を低下させてしまう。そのため、極力混入しないことが望ましい。
Sは、切削性を向上させる効果を奏するが、Pと同様に、鋼材中に局部電池を形成して腐食を引き起こすため、耐食性の点で好ましくない。また、製品として完成した後に、材料自体から硫化化合物のアウトガスを発生させる原因となる。
そこで、本実施の形態では、Sの添加量を0.15%としている。
【0049】
Niは、Mnと同様にオーステナイト組織を保持する成分であることから添加されているが、その添加量は、2.00%以下とする。これは、Niの添加により得られる効果は1%あたりから顕著となり、また、Niを多量に包含すると合金としての製造コストが大幅に高くなるためである。
Crは不動態膜の形成により耐食性の向上に寄与する成分である。特にCrは耐塩性の向上に寄与する。更にCrの添加は鋼材の引っ張り強さを向上させ、降伏点を上昇させると共に、鋼材の強度も上昇させることができる。また、Crの添加は溶接による劣化を減少させ、これにより溶接性も向上する。しかしながら、Crは製造コストの大幅な増大をきたさない範囲で添加量を決定する必要がある。
【0050】
更に、0.20%のN(窒素)、0を越え0.10%以下のAl(アルミニウム)、0を越え3.0%以下のMo(モリブデン)、0を越え3.0%以下のCu(銅)を含有させる場合もある。
AlはAl酸化物として存在すると錆の進行を早めるので、0を越え0.10%以下とし、更にAlを炭化物として存在させることにより、耐食性の向上を図っている。
Moは、引っ張り強さの降伏点を上昇させるために役立ち、電気腐食性やその他の耐食性を向上させ、特に塩水噴霧試験に対する特性を改善するものである。しかしながら、Moの含有量は、5%を超えると合金としての製造コストが高くなるため、本実施の形態では、0を越え3%以下の添加量としている。また、冷間加工性などのため、0を越え3.0%以下のCuを含有させることも可能である。
【0051】
以上の成分比を有する特定鋼材は、メッキ不要の耐食性と、熱処理/軟チッ化不要の耐摩耗性を有している。また、従来から使用していたステンレス鋼の場合には、切削性を向上させるためにPbを添加する場合が多かったが、本実施の形態に係る特定鋼材は、Pbを全く含まないために、Pbフリー材料としても対応している。更に、後述するように、切削面の面粗度は従来のステンレス鋼より良好である。
係る特性は、オーステナイトの安定化を狙い、8%のMn、14%のCrを中心とする鋼中に微量のC、Sを添加し、MnSを非常に微細かつ均一に分布させることで達成されたものである。
【0052】
図4は、特定鋼材をプレスすることによる硬度の変化を示したグラフである。
試験素材としては、特定素材とSUS302により構成した回転ディスク5を用いた。そして、回転ディスク5の両端面をプレス機によりプレスした後、ビッカース硬さ試験器により硬度を測定した。プレスによる加重は、5トンまで行った。
試験の結果、SUS303は、加重を加えても硬度がHv290程度で変化が無かった。一方、特定鋼材は、加重を加えるにつれて表面硬度が上昇し、加重を加えない場合にはHv380程度であったものが、5トンの加重を加えた場合にはHv430程度となった。
これは、加重を加えて表面を組成変形加工することにより、特定鋼材の表面の金属組織がオーステナイトからマルテンサイトに相転移したためと推定される。
この相転移には、特定鋼材中のMnが寄与していると思われる。また、Niもこの相転移に寄与していると思われる。
【0053】
以上の試験結果から、特定鋼材に加重を加えると特定鋼材の表面の硬度が上昇することが確認できたので、これを用いて特定鋼材の表面硬度を上昇させ、耐摩耗性を向上することができる。
また、今回の試験は、特定鋼材の表面について硬度を測定したが、特定鋼材の厚みが薄いほど材料中の硬度も上昇していると考えられる。
以上の結果を踏まえ、本実施の形態では、回転ディスク5に5トン程度の加重を加えて、回転ディスク5の両端面に動圧力発生溝をプレス加工し、表面の硬化と動圧力発生溝の形成を同時に行うこととした。
また、アッパープレート33の両端面や、スリーブ12に形成されたディスク中空部22の底面に5トン程度の加重をかけて、これらの表面を硬化させることもできる。
【0054】
図5は、旋盤を用いた特定鋼材の被切削性を示した図である。
なお、当該比較試験における旋盤の回転数は2650[rpm]、周速は50[m/分]、フィード量は25[μm]である。
図5の表に示したように、面粗度、バラツキの点で特定鋼材はSUS416よりも良好な結果を得ている。しかも、バラツキに関しては、測定誤差の範囲内で0[μm]を達成している。切削粉厚に関しては特定鋼材の方が若干厚くなっているが、状態は良好であり、夜間無人稼動による生産が可能である。
図6は、特定鋼材の穿孔加工性を示したグラフである。
当該比較試験におけるドリルの回転速度は50[rpm]、送り量は0.07[mm/rev]、送り速度は35[mm/分]、送り深さは10[mm]である。図6に示したように、特定鋼材は、S45Cには及ばないものの、SUS304よりも抵抗力[N]は小さく、穿孔加工性は良好である。
【0055】
図7は、特定鋼材の冷間加工率と硬度との関係を示した図である。
図示したように、特定鋼材は始め冷間加工率の増加と共に硬度増加を増し、冷間加工率15%で、硬度値約HRC40に達する。次いで、冷間加工率の増加と共に緩やかな増加に転じ、冷間加工率25%で硬度値約HRC48となる。そして、非磁性高硬度材(DSH400F)、SUS303の何れをも上回る硬度を得ている。
図8は、耐食性試験(塩水噴霧試験)の比較結果を示している。発錆度合いのランクは、A:全く腐食されない、B:ほとんど腐食されない、C:わずかに腐食される、D:腐食される、E:かなり腐食される、となっている。ここで、特定鋼材は、SUS303には劣るが、SUS430Fと同等の耐食性(ランクB)を獲得している。
【0056】
図9は、摺動摩耗性試験の比較結果を示した図である。
図から明らかなように、特定鋼材は、SUM24Lチッ化材、SUS416の何れよりも摩耗量が少なく、高い耐摩耗性を備えていることがわかる。
図10は、環境試験の結果を示した表である。
環境試験の条件は、80[℃]、湿度[95%]である。表に示したようにSUS416は、96時間で錆が発生しているが、その後の進行はない。ただし、試験片の切削部を拡大観察したところ、切削痕(切削時のMnSの脱落によるものと思われるピンホール)に錆の発生が確認された。
SUS303は、120時間で全周に渡り均一な斑点状の錆が発生した。特定鋼材は、120時間で切削部にしみ状の錆が発生した。
なお、試験片の切削部において、硫化物(MnS)の脱落痕がSUS303、SUS416で確認できたのに対し、特定鋼材は痕跡が皆無であることが、本環境試験で良好な結果を示した一因であると考えられる。
【0057】
図11は、耐食性試験の比較結果を示した表である。
耐食試験の条件は、35[℃]、5%NaClである。SUS416は、8時間から錆が発生し、時間経過に伴う錆の進行が、試験片の切削部と研削部双方に確認できる。SUS303は、168時間で試験片の切削先端部に錆が発生している。
特定鋼材は、48時間から試験片の切削部の根本に錆が発生し、また、表中には記載していないが168時間後は、塩水の流れ落ちた部分に拡大している。従って、特定鋼材は、浸透(海水中など)状態での耐食性は十分でないが、パソコン用電子機器、ファクシミリ(OA機器)など、本実施の形態の適用分野への使用における耐食性は十分に確保されていることがわかる。
【0058】
以上に説明した本実施の形態により、以下のような効果を得ることができる。
(1)特定鋼材は、加工性が良く切削面の面粗度や直角度などが向上するため、動圧軸受部23を特定鋼材で構成することにより、NRRO、耐振動特性が向上する。
(2)動圧軸受部23で、動く部品と静止している部品が接する面に塑性変形加工を施すことにより、部品の表面の硬度が大幅に増し、耐摩耗性が向上する。
(3)Pbを含まないため、オイルがゲル化しない。また、ゲル化防止の表面処理も不要である。
(4)耐食性が優れているため、表面処理が不要である。
(5)非磁性材であるため、帯磁した摩耗粉が動圧軸受部23に付着しないため、軸受の信頼性が向上する。
【0059】
以上、本発明の1実施形態について説明したが、本発明は説明した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲において各種の変形を行うことが可能である。
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、回転精度が高く、信頼性の高い動圧軸受やモータ装置などを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係るモータの軸線方向の断面を示した断面図である。
【図2】特定鋼材を用いた動圧軸受のCSSとNRROの試験結果を示したグラフである。
【図3】特定鋼材の代表的な成分を示した成分表である。
【図4】特定鋼材をプレスすることによる硬度の変化を示したグラフである。
【図5】旋盤を用いた特定鋼材の被切削性を示した図である。
【図6】特定鋼材の穿孔加工性を示したグラフである。
【図7】特定鋼材の冷間加工率と硬度との関係を示した図である。
【図8】耐食性試験(塩水噴霧試験)の比較結果を示している。
【図9】摺動摩耗性試験の比較結果を示した図である。
【図10】環境試験の結果を示した表である。
【図11】耐食性試験の比較結果を示した表である。
【符号の説明】
1 モータ
2 ロータ
3 ステータ
5 回転ディスク
6 シャフト
7 ハブ
8 コイル
9 永久磁石
10 動圧力発生溝
11 エンドプレート
12 スリーブ
13 オイル
15 シール部
20 フレーム
22 ディスク中空部
23 動圧力軸受部
24 段部
33 アッパープレート
34 他端部分
Claims (6)
- 少なくとも一端に開口部が設けられた中空部を有する中空部材と、
前記中空部内に、前記中空部材に対して回転可能に配置された回転部と、前記開口部を貫通し、前記回転部の回転軸線と同軸に配置されたシャフト部と、を備えた回転部材と、
前記中空部材と前記回転部材の間に介在する流体と、
前記中空部材と前記回転部材の対向する面の間で前記流体に作用し、前記対向する面の間で動圧力を発生させる動圧力発生手段と、
前記開口部の内周側に形成された、前記流体の遺漏を抑止するシール部と、
を具備した動圧軸受であって、
前記回転部材、及び前記中空部材のうちの少なくとも一方が、クロムを12%以上及び16%以下含有し、かつマンガンを6%以上及び10%以下含有するステンレス鋼によって構成され、
前記回転部材と前記中空部材の対向する面のうち、少なくとも一方の表面が塑性変形加工されていることを特徴とする動圧軸受。 - 前記ステンレス鋼の組成成分は、炭素を2%、ニッケルを2%、硫黄を0.15%、シリコンを0.35%、リンを0.05%以下、のうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする請求項1に記載の動圧軸受。
- 前記回転部材の表面、及び前記中空部の内周面の少なくとも一方には動圧力発生溝が形成されており、
前記動圧力発生手段は、前記回転部材が回転しているときに、前記動圧力発生溝が前記流体を輸送することにより、動圧力を発生させることを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載の動圧軸受。 - 前記回転部は、円板形状に形成された円板部材であり、前記シャフト部は前記円板部材のラジアル方向中央部に、前記円板部材の円板面に対して垂直に連接していることを特徴とする請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の動圧軸受。
- 請求項1から請求項4までのうちの何れか1の請求項に記載の動圧軸受と、
前記動圧軸受のシャフトに連接したロータと、
前記中空部材に連接し、前記動圧軸受と前記ロータを支持するステータと、
前記ロータを回転させる駆動手段と、
を具備したことを特徴とするモータ装置。 - 少なくとも一端に開口部が設けられた中空部を有する中空部材と、
前記中空部内に、前記中空部材に対して回転可能に配置された回転部と、前記開口部を貫通し、前記回転部の回転軸線と同軸に配置されたシャフト部と、を備えた回転部材と、
前記中空部材と前記回転部材の間に介在する流体と、
前記中空部材と前記回転部材の対向する面の間で前記流体に作用し、前記対向する面の間で動圧力を発生させる動圧力発生手段と、
前記開口部の内周側に形成された、前記流体の遺漏を抑止するシール部と、
を具備し、
前記回転部材、及び前記中空部材のうちの少なくとも一方がクロムを12%以上16%以下含有し、かつマンガンを6%以上10%以下含有するステンレス鋼によって構成された動圧軸受を塑性変形加工する塑性変形加工方法であって、
前記塑性変形加工方法は、
前記回転部材と前記中空部材の対向する面のうち、少なくとも一方の表面をプレス加工することにより前記表面を硬化させるプレス加工ステップ
から構成されたことを特徴とする塑性変形加工方法。
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