JP2004116128A - コンクリート構造物接合材 - Google Patents

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Yoji Hosokawa
細川 洋治
Yasue Yagisawa
八木沢 康衛
Kiyoshi Sasaki
佐々木 清
Ritsu Uchiumi
内海 立
Toshinobu Suga
須賀 俊順
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Abstract

【課題】引張り耐力を高めたコンクリート構造物接合材であって、既設のコンクリート躯体に梁等の増設工事又は耐震補強工事をする際の鉄筋定着用に適した接合材を提供すること。
【解決手段】アンカー100が異形鉄筋101と拡張部材102とからなる。拡張部材102は先端に向って大径となるコーン形状に形成する。コンクリート躯体1にあけた下穴2の奥部をアンダーカット型の拡張穴3に形成し、下穴内2に接着剤又は無収縮モルタルによる充填材4を投入する。充填材4が投入された下穴2内にアンカー100を拡張部材102が拡張穴3の底部に当接するまで挿入し、下穴2とアンカー100の外側との隙間a,bに充填材4を充填してアンカーを定着する。
【選択図】   図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンクリート構造物接合材に関しており、さらに詳しくは、既設のコンクリート躯体に梁等の増設工事又は耐震補強工事をする際に最適なコンクリート構造物接合材に関している。
【0002】
【従来の技術】
既設のコンクリート躯体に、梁等の増設工事をするか又は耐震補強工事をする際の鉄筋は、異形鉄筋をあと施工アンカーとして定着することが多い。「あと施工アンカー」は各種のものが開発され実施されているが、基本的な構造は、金属拡張アンカーと接着系アンカーである(1990年6月10日 株式会社技術書院発行の「あと施工アンカー・設計と施工」 52頁所載の図3.11金属拡張アンカーの形状 60頁所載の図3.18接着系アンカーの概念図,図3.19接着系アンカーの形状)。
【0003】
金属拡張アンカーの引張り耐力は、先端拡張部のくさび効果に依存しているので、コンクリート躯体のコーン状破壊による耐力となるが、引張り力は接合筋、本体雌ネジ部、アンカー本体、先端拡張部へと伝達されるので、これら各部の引張り耐力が小さければその耐力で決まることになる。又、接着系アンカーの引張り耐力は、1コンクリートのコーン状破壊、2コンクリートと硬化した樹脂との間の付着破壊、3アンカー筋と硬化した樹脂との間の付着破壊、4アンカー筋の破断の各場合による。この結果、アンカー筋の引張り耐力がアンカー固着部の耐力、すなわち、上記1,2,3の破壊耐力より小さい場合のアンカーの引張り耐力は、アンカー筋の引張り耐力により決まる。
【0004】
アンカーは、有効埋込み深さを満たしていれば、設計以上の引張り力に対し所謂コーン状破壊を呈して崩壊するが、これ以外にも、地震などの発生によりコンクリート躯体に対し強力な引張り力が繰り返して加わった場合に崩壊することがある。
【0005】
金属拡張アンカーの場合は、先端拡張部と接合筋のネジ結合部分が他の部分に比べて小径なので、雄ネジ部分に強力な引張り力が集中して当該部分から破壊することが予測される。現状でアンカーの引張り耐力を向上させるためには、アンカー本体ならびに接合筋の径を大きくする以外になく、アンカーの拡張部分と接合筋の接続部分が、繰り返して加わる強力な引張り力に抗してアンカーの性能を維持できるものは開発されていない。一方、接着系アンカーの場合は、強力な引張り力が繰り返して加わって鉄筋の降伏荷重を越えると、接合筋が伸びて細くなり、コンクリート孔壁面と接合筋の間に僅かな隙間が生じ、このため接合筋が抜け出てしまうことが予測される。又、コンクリート躯体のアンカー定着部分にクラックが生じた場合も、コンクリート孔壁面と接合筋の間に隙間が生じ接合筋が抜け出てしまうことが予測される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来のあと施工アンカーよりも引張り耐力を高めたコンクリート構造物接合材であって、接着系及び金属拡張系の双方の長所を備えており、既設のコンクリート躯体に梁等を増設し又は耐震補強工事をするのに適したコンクリート構造物接合材を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
解決手段の第1は、アンカーが異形鉄筋と拡張部材とからなり、該拡張部材は先端に向って大径となるコーン形状に形成し、コンクリート躯体にあけた下穴の奥部をアンダーカット型の拡張穴に形成し、上記下穴内に接着剤又は無収縮モルタルによる充填材を投入して当該下穴内に上記アンカーを上記拡張部材が上記拡張穴の底部に向けて挿入し、該下穴と上記アンカーの隙間に上記充填材を充填して当該アンカーを定着したことを特徴とする。
【0008】
解決手段の第2は、アンカーが異形鉄筋であって、該異形鉄筋の先端に軸方向のすり割りを設けた拡張部を形成し、コンクリート躯体にあけた下穴の奥部をアンダーカット型の拡張穴に形成し、上記下穴内に接着剤又は無収縮モルタルによる充填材を投入して当該下穴内に上記アンカーを上記すり割りに楔部材を差し込んで挿入し、該楔部材が上記下穴の底部に達した時に上記アンカーを巧打して当該楔部材により上記拡張部を拡張し、上記下穴と上記アンカーの隙間に上記充填材を充填して当該アンカーを定着したことを特徴とする。
【0009】
解決手段の第3は、アンカーが異形鉄筋と拡張部材とからなり、該拡張部材は先端部を筒体部に形成すると共に先端から軸方向に複数のすり割りを形成し、コンクリート躯体にあけた下穴の奥部をアンダーカット型の拡張穴に形成し、上記下穴内に接着剤又は無収縮モルタルによる充填材を投入して当該下穴内に上記アンカーの先端にコーン栓体を差し込んで挿入し、該コーン栓体が上記下穴の底部に達した時に上記アンカーを巧打して当該コーン栓体により上記拡張部材を拡張し、上記下穴と上記アンカーの隙間に上記充填材を充填して当該アンカーを定着したことを特徴とする。
【0010】
解決手段の第4は、解決手段の第1又は3において、異形鉄筋と拡張部材の接合部が摩擦圧接により一体に結合したことを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
第1実施例
図1,図2は第1実施例の実施形態を示している。図1において、アンカー100は異形鉄筋101と拡張部材102とからなり、両者は接合部103を摩擦圧接により一体に結合したものである。又、拡張部材102は先端に向って大径となるコーン形状を有している。
【0012】
実施例において、異形鉄筋101と拡張部材102は摩擦圧接によって両者を一体に結合しているが、これは2つの部材をネジ結合やかしめ結合した場合よりも鉄筋接合部の引張り耐力が向上し、結果的にアンカーの引張り耐力が向上するからであって、鍛造加工などにより一体成形ができることは勿論である。
【0013】
図2は第1実施例のアンカーを施工する作業手順を示している。まず、コンクリート躯体1に下穴2をあけ、次いで該下穴2の奥部をアンダーカット型の拡張穴3に形成する(図2A)。実施例において、下穴2の穴径は拡張部材103の外径よりも僅かに大径に形成されている。次に、下穴2内に接着剤又は無収縮モルタルによる充填材4を投入する。ここで充填材4の投入量は、アンカー(100)を該下穴2内に挿入したとき該アンカーと当該下穴2の隙間を満たす量である(図2B)。
【0014】
続いて、下穴2にアンカー100の拡張部材102を底部に向けて挿入する。拡張部材102が下穴2の底部に達すると下穴2内に投入された充填材4は、下穴2と異形鉄筋101との間に形成される第1の隙間aと、拡張穴3と拡張部材102との間に形成される第2の隙間bに充填されてアンカー100を下穴2に定着する(図2C)。
【0015】
下穴2内に定着されたアンカー100は、コーン形状を呈する拡張部材102が先端に向って大径となる拡張穴3内に収容されておりかつ拡張部材102の外側に充填材4が充填されているので、当該拡張部材102の引張り耐力が高められ、このため軸方向に対し引張り力が強力な力で繰り返し加わったとしても抜け出るおそれがないものとなる。しかも、アンカー100は、下穴2内では異形鉄筋101の部分にも外側に充填材4が充填されているので、よりいっそう強固に下穴2内に定着されることになる。
【0016】
一方、アンカー100は、異形鉄筋101と拡張部材102の接合部103が摩擦圧接によって結合されているので、鉄筋の降伏荷重を越える前に接合部103が破断することがなく、軸方向の引張り力に対し力が集中して加わるところがない。従って、アンカーの引張り耐力が向上し、アンカーの崩壊は鋼材の降伏破断による場合だけとなる。
【0017】
第2実施例
図3,図4は第2実施例の実施形態を示している。図3において、アンカー200は異形鉄筋201であり、先端に軸方向に1条のすり割り203を設けた拡張部202を形成したものである。又、204は、すり割り203に打ち込む楔部材であって、アンカー200を下穴内に挿入した後に該アンカー200を巧打して、すり割り203内に当該楔部材204を圧入して拡張部202をコーン状に拡張するものである。
【0018】
図4は第2実施例のアンカー施工した状態を示している。図において、1はコンクリート躯体、2は下穴、3は拡張穴であり、図はアンカー200を下穴2内に充填材4を介して施工したところである。施工手順は第1実施例の場合と同様に、コンクリート躯体1に下穴2をあけ、下穴2の奥部を拡張穴3に形成する。また該下穴2内に充填材4を投入してからアンカー200を挿入する。この時、拡張部202のすり割り203に楔部材204の先端を軽く差し込んだ状態で挿入する。
【0019】
充填材4が投入された下穴2にアンカー200を拡張部202から挿入し、楔部材204が拡張穴3の底部に達したら、アンカー200を巧打して該楔部材204をすり割り203内に圧入して拡張部202を拡張する。これにより、アンカー200は、拡張部202の外側及び本体部分の異形鉄筋201の外側に形成された隙間に充填材4が充填された状態で定着される。
【0020】
第2実施例は、拡張部202の拡張を、アンカー200を下穴2に挿入してから行っているので拡張部202が拡張穴3内で拡張された時、拡張部202は当該拡張穴3内に機械的に固定され、第1実施例よりもアンカーの引抜き耐力が向上する。又、下穴2の径も第1実施例より小径にできるので、充填材の使用量が節約できることになる。
【0021】
第3実施例
図5,図6は第3実施例の実施形態を示している。図5において、アンカー300は異形鉄筋301と拡張部材302とからなり、両者は接合部303を摩擦圧接により一体に結合したものであるが、第1実施例の場合のように、当該接合部303を鍛造加工などにより一体成形してもよい。拡張部材302は、先端部の略半分程度を筒体部304に形成し、該筒体部304の外周に複数の溝条を形成した圧着面305とすると共に、筒体先端から軸方向に4本のすり割り306を設けたものである。又、筒体部304の先端からコーン栓体307を挿入し、アンカーを巧打して筒体部304を拡張するようにしている。
【0022】
図6は第3実施例のアンカーを施工した状態を示している。図において、1はコンクリート躯体、2は下穴、3は拡張穴であり、図はアンカー300を下穴2内に充填材4を介して施工したところである。施工手順は第1実施例の場合と同様に、コンクリート躯体1に下穴2をあけ、下穴2の奥部を拡張穴3に形成し、該下穴2に充填材4を投入してからアンカー300を挿入する。この時、コーン栓体307は筒体部304の開口に軽く差し込んだ状態で挿入し、コーン栓体307が拡張穴3の底部に達したらアンカー300を巧打する。
【0023】
第3実施例の場合も、第2実施例と同じように拡張部材302が拡張穴3内に機械的に固定されるので、第1実施例よりもアンカーの引張り耐力が向上すると共に、充填材の使用量が節約できることになる。
【0024】
【発明の効果】
本発明は、従来のあと施工アンカーよりも引張り耐力を向上させたものであるから、既設のコンクリート躯体に、梁等の増設工事をする時又は耐震補強工事をする時の鉄筋定着用として最適なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例によるアンカーを示しており、Aは正面図、Bは断面図。
【図2】第1実施例のアンカーを施工する作業手順を示す断面図。
【図3】第2実施例によるアンカーを示しており、Aは正面図、Bは断面図、Cは側面図、Dは楔部材の正面図。
【図4】第2実施例のアンカー施工した状態を示す断面図。
【図5】第3実施例によるアンカーを示しており、Aは正面図、Bは断面図、Cは側面図、Dはコーン栓体の正面図。
【図6】第3実施例のアンカー施工した状態を示す断面図。
【符号の説明】
1 コンクリート躯体
2 下穴
3 拡張穴
4 充填材
100 アンカー
101 異形鉄筋
102 拡張部材
103 接合部
200 アンカー
201 異形鉄筋
202 拡張部
203 すり割り
204 楔部材
300 アンカー
301 異形鉄筋
302 拡張部材
303 接合部
304 筒体部
305 圧着面
306 すり割り
307 コーン栓体

Claims (4)

  1. アンカー(100)が異形鉄筋(101)と拡張部材(102)とからなり、該拡張部材は先端に向って大径となるコーン形状に形成し、コンクリート躯体にあけた下穴(2)の奥部をアンダーカット型の拡張穴(3)に形成し、上記下穴内に接着剤又は無収縮モルタルによる充填材(4)を投入して当該下穴内に上記アンカーを上記拡張部材が上記拡張穴の底部に向けて挿入し、該下穴と上記アンカーの隙間に上記充填材を充填して当該アンカーを定着したことを特徴とするコンクリート構造物接合材。
  2. アンカー(200)が異形鉄筋(201)であって、該異形鉄筋の先端に軸方向のすり割りを設けた拡張部(202)を形成し、コンクリート躯体にあけた下穴(2)の奥部をアンダーカット型の拡張穴(3)に形成し、上記下穴内に接着剤又は無収縮モルタルによる充填材(4)を投入して当該下穴内に上記アンカーを上記すり割りに楔部材を差し込んで挿入し、該楔部材が上記下穴の底部に達した時に上記アンカーを巧打して当該楔部材により上記拡張部を拡張し、上記下穴と上記アンカーの隙間に上記充填材を充填して当該アンカーを定着したことを特徴とするコンクリート構造物接合材。
  3. アンカー(300)が異形鉄筋(301)と拡張部材(302)とからなり、該拡張部材は先端部を筒体部に形成すると共に先端から軸方向に複数のすり割りを形成し、コンクリート躯体にあけた下穴(2)の奥部をアンダーカット型の拡張穴(3)に形成し、上記下穴内に接着剤又は無収縮モルタルによる充填材(4)を投入して当該下穴内に上記アンカーの先端にコーン栓体を差し込んで挿入し、該コーン栓体が上記下穴の底部に達した時に上記アンカーを巧打して当該コーン栓体により上記拡張部材を拡張し、上記下穴と上記アンカーの隙間に上記充填材を充填して当該アンカーを定着したことを特徴とするコンクリート構造物接合材。
  4. 異形鉄筋(101,301)と拡張部材(102,302)の接合部(103,303)が摩擦圧接により一体に結合したことを特徴とする請求項1又は3に記載のコンクリート構造物接合材。
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