JP2004115849A - 溶銑予備処理用等のインジェクションランス - Google Patents
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Abstract
【課題】溶銑処理用のインジェクションランスの耐久性を向上することにある。
【解決手段】パイプ状としたランスパイプ1の金属製管2の先端部にこの金属製管2よりも太径の補強パイプ4を配置し、この補強パイプ4の内面から先端、外周面に耐火物5を一体的に被覆したものである。補強パイプ4に開孔6を設けて耐火物5を一体的に配置するのが好ましい。また、パイプ状としたランスパイプの金属製管2の先端部の外側にこの金属製管2と同心円状に二重状に補強パイプ4を配設し、金属製管2と補強パイプ4との間およびこれらの先端部から外周面に耐火物5を一体的に配置することもできる。
【選択図】 図3
【解決手段】パイプ状としたランスパイプ1の金属製管2の先端部にこの金属製管2よりも太径の補強パイプ4を配置し、この補強パイプ4の内面から先端、外周面に耐火物5を一体的に被覆したものである。補強パイプ4に開孔6を設けて耐火物5を一体的に配置するのが好ましい。また、パイプ状としたランスパイプの金属製管2の先端部の外側にこの金属製管2と同心円状に二重状に補強パイプ4を配設し、金属製管2と補強パイプ4との間およびこれらの先端部から外周面に耐火物5を一体的に配置することもできる。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、冶金分野における溶銑予備処理等に用いられるインジェクションランスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
製鉄業においては、近年製品規格が厳しくなるなどの理由から、転炉に装入する溶銑を事前に脱燐、脱硫処理をする、いわゆる溶銑予備処理が一般的に実施されるようになってきた。溶銑の脱燐、脱硫は、一般的には脱燐剤、脱硫剤などをランスを通して窒素ガス等のキャリアガスとともに溶銑中へ吹き込み、脱燐剤、脱硫剤と溶銑とを接触させることで反応を進める。
【0003】
溶銑予備処理用のランス1は、金属製管の外面を耐火物で保護した構造を取るものが一般的である。たとえば、図1のように金属製管2の外面に流し込み材などの不定形耐火物3を施工する方法が一般的に採られている。予備処理作業中のランスの浮上、振動などによる構造、機械的な力に対しては、内側の金属製管2が担い、それを耐火物3が熱的、化学的に保護する構造となっている。
【0004】
一方、より多く脱燐、脱硫を進めようとすると、処理剤の量はそれに伴って増加する。処理剤量が増加すると、溶銑温度が低下し、次の転炉での操業に影響を及ぼす場含が発生する。こういった場合、キャリアガスに酸素を添加し、酸素と溶銑を反応させることで発熱させ、温度補償をする場合がある。
【0005】
しかし、キャリアガスに酸素を添加した場合、図2のようにランス先端部が損傷し、ランスの寿命が著しく低下する。この著しい寿命低下の対策をいくつか考えて実施してみたが、寿命の低下は回復しなかった。
【0006】
【先行関連文献】
この件について、発明者らは先行関連文献を調べた。その結果、実開平6−6447号公報、実公昭58−37941号公報、特公平2−25406号公報、実公平3−36517号公報、実公平4−14442号公報などが見つけられた。
【0007】
上記した実開平6−6447号公報は、インジェクションランスについて先端部を単管構造としてその全表面をカロライズ処理を施して外周を耐火物で被覆し、耐久性と安全性を向上させたものである。しかし、先端部のランスを簡単な構造として安価にするもので、1〜数回位の処理しか使えなくて耐久性がなく、ホルダー部に交換して使用するものであった。
【0008】
また、実公昭58−37941号公報、特公平2−25406号公報、実公平3−36517号公報のものは、外支管と内支管等で構成された二重構造のもので、構造が複雑で、ランス製作費用が高くなるものであった。
【0009】
さらに、実公平4−14442号公報のものは、従来のように単管ランスのものであったが、砂鉄、石灰等を冷却剤として酸素ガスと混合して吹き込むことによりランス先端部の溶損を抑制するもので、冷却剤を使用する必要があった。
【0010】
このようにいろいろなランスが提案されているが、発明者らはキャリアガスに酸素を添加した場合、溶銑の酸化による高熱でランス先端耐火物の溶損が増加したものと考えて、高耐食性耐火物を使用しても、寿命は変化しなかった。また、金属製管の処理剤による内面摩耗が問題と考えて、耐摩耗性金属に材質変更してみたが、寿命の向上は見られなかった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、発明者らは、ランス寿命に与える酸素ガスの吹き込み条件等の操業条件の影響を調査し、寿命低下の原因を次のように特定した。
(1)ランス寿命の低下の主因は、金属製管の先端の熱による溶融である。
酸素ガスと溶銑が反応して、溶鉄が酸化し、高熱を発する。この熱によって、金属製管先端が溶融する。外部の耐火物は残存するものの、内側の金属が無くなると、ガス吹き込み時の振動等に耐えきれなくなり、耐火物も欠け落ちることで損傷が進行する。
【0012】
(2)酸素量が増加すれば、ランス寿命は低下する。溶銑中に吹き込んだ酸素ガスは直ちに溶鉄と反応し、ランス先端の温度がより高熱になるためである。
(3)一方、処理剤量が増加すれば、寿命は増加する。処理剤の顕熱量が増加するために、前述の発熱温度は小さくなり、パイプの溶融が減少するからである。
【0013】
(4)先端部でのガス流速を増加させると、ランス寿命は増加する。ランス先端部での金属とキャリアガス間での熱伝達係数が大きくなり、先端部での金属内面温度が上昇しにくくなり、金属内面の溶融が抑制されるためである。
【0014】
ランス寿命を増大させるための操業面でのアクションは、必要な予備処理にとって不都合が多かった。例えば、酸素量の低下は寿命向上にはつながるが、温度補償量が低下し不都合であった。また、処理剤の過度の増加は、原単位を引き上げ経済的に不利であると共に、溶銑温度の低下を引き起こした。このようにランス寿命を向上させるためには、いかに吹き込みランスパイプ先端を熱的に保護するのかが課題であることが判明した。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記のような点に鑑みたもので、上記の課題を解決するために、溶銑予備処理等に使用されるインジェクションランスであって、パイプ状としたランスパイプの金属製管の先端部にこの金属製管よりも太径の補強パイプを配設し、この補強パイプの内面から先端、外周面に耐火物を一体的に配置したことを特徴とする溶銑予備処理用等のインジェクションランスを提供するものである。
【0016】
また、パイプ状としたランスパイプの金属製管の先端部の外側にこの金属製管と同心円状に二重状に補強パイプを配設し、金属製管と補強パイプとの間およびこれらの先端部から外周面に耐火物を一体的に配置したことを特徴とする溶銑予備処理用等のインジェクションランスを提供するものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の溶銑予備処理用等のインジェクションランスは、溶銑予備処理等に使用されるインジェクションランスであって、パイプ状としたランスパイプの金属製管の先端部にこの金属製管よりも太径の補強パイプを配設し、この補強パイプの内面から先端、外周面に耐火物を一体的に配置したこと、およびパイプ状としたランスパイプの金属製管の先端部の外側にこの金属製管と同心円状に二重状に補強パイプを配設し、金属製管と補強パイプとの間およびこれらの先端部から外周面に耐火物を一体的に配置したことを特徴としている。
【0018】
インジェクションランス1は、図3のようにパイプ状とした所定径のランスパイプの金属製管2の先端部にその口径よりも太径の補強パイプ4を同心円状に接合し、この補強パイプ4の内面から先端、外周面に従来の耐火物3と同一またはより耐久性のある耐火物5を一体的に配置している。
【0019】
補強パイプ4としては、一般的にランスパイプの金属製管2と同じ金属パイプや後述するようにセラミックパイプが使用でき、また所要径の開孔6を適宜に開孔して耐火物5を強固に配置できるようにするのが好ましく、さらにアンカー7を内側や外側に取着して耐火物5を配置するのが好ましい。
【0020】
このように溶銑予備処理用等のインジェクションランス1の金属製管2の先端に補強パイプ4を設けてその内面に耐火物5を配設することで、金属製管2の酸素と溶鉄との反応で発生する熱による溶解を抑制することが可能となり、酸素を吹き込む条件下でもランス寿命を向上させることが可能となる。
【0021】
インジェクションランス1の上流側での構造は、変える必要はない。また、インジェクションランス1の先端部の耐火物5の内径は、その上流側の金属製管2の内径と同一状とするのが好ましく、内径より小さくなることは好ましくない。それは、管内を処理材が流れるため、摩耗増大の危険性が増すためである。
【0022】
インジェクションランス1の先端内面の耐火物5の長さaは、20mm〜300mmが好ましい。20mm以下では効果が少なく、300mm以上の長さに配設しても何ら問題はないが、経済的ではない。より好ましくは、50〜200mmである。
【0023】
インジェクションランス1の先端内面の耐火物5の厚さbは、0.5〜50mmが好ましい。0.5mm以下では熱遮蔽効果が十分ではなく、50mm以上あっても差し支えないが経済的でない。より好ましくは、1mm〜30mmである。
【0024】
また、インジェクションランス1の先端での耐火物5の厚さcは、5〜40mmが好ましい。5mmより少なければ十分に保護できなく、40mmより大きければ処理時の振動等の衝撃により脱落の危険性が増す。より好ましくは、10〜30mmである。
【0025】
ここに使用する耐火物5には、ある程度の耐熱性が要求される。少なくとも融点は、鉄より高くなくてはいけない。溶鉄用に使用されている耐火物ならば、ほとんどのものが利用できる。
【0026】
補強パイプ4には、耐火性セラミックや耐火物製のパイプを設置してもよい。これらの材質も特には限定するものではないが、アルミナ質、ムライト質、ジルコニア質、炭化珪素質、アルミナ・カーボン質、マグネシア・カーボン質等が利用できる。さらには、酸化物系の耐熱コーティング材や、サーマル・バリア・コートなどと称される溶射コーティングも利用できる。
【0027】
施工方法は、特には限定されないが、例えば次の方法などを採用できる。図3に示すように金属製管2の先端部に内径を必要長さ分だけ拡げた補強パイプ4を接続材等を介して溶接して取り付けることができる。そして、その部分に流し込み材が通過、供給できるだけの開孔6をいくつか開ける。こうすることで、インジェクションランス1の上部側と併せて耐火物3、5の一括流し込み施工が可能となる。なお、初めから孔の空いたパンチングメタルのような板を利用した補強パイプ4で形成することも可能である。
【0028】
さらに、インジェクションランス1の先端部の内部に発泡スチロール等で作った内型を入れ、管外部に流し込み材を施工をすると同時にパイプ先端内面に流し込み材を施工するなどという方法も採用できる。
【0029】
この際の先端部の補強パイプ4に開ける開孔径としては、使用する流し込み材の最大粒径の5倍以上であることが孔部での詰まりをなくすために好ましい。具体的には、例えば最大粒径3mmの流し込み材を用いる場合、15mm以上であることが望ましい。
【0030】
また、耐火物製あるいはセラミックス製のパイプを予め作っておき、それをランス先端内面にモルタルやセラミックス系接着剤で接着させる方法を採ることもできる。さらには、コーティング材や溶射の場合、補強パイプの先端内面に直接施工すればよい。
【0031】
他方、寿命を延長させるための基本的な考え方は同一で、別の手段を採用し得る。たとえば、図4のようにインジェクションランス1の先端部の外側にこの金属製管2と同心円状に二重状に補強パイプ4を配設し、金属製管2を補強パイプ4との間およびこれらの先端部から外周面に耐火物5を一体的に配置することもできる。
【0032】
この場合にも、ランス先端の金属製管2は、従来のランスと同様に、酸素吹き込みによる発熱で溶融、損耗する。しかし、その外側に耐火物5が存在し、かつその耐火物5は二重状の補強パイプ4で保護されるため、それ以上に損傷は進まず、インジェクションランス1の寿命を向上することができる。
【0033】
施工の方法は、前述の方法に準じて行える。また、予備処理ランスの上部等に使用する耐火物は、特に限定されない。従来のアルミナ・シリカ系等のランス用として使用されている材料をそのまま利用することができる。
【0034】
【実施例】
管径50A、長さ4.4mの金属製管の周囲に、アルミナ・シリカ系耐火物を30mm厚さとして施工の工程使用している予備処理用のインジェクションランスを用い、それを比較例として、本発明の実施例のものと寿命を比較した。ランスの寿命は、いずれもほぼ同一条件で使用した各10本のランスの平均値をもって評価した。
【0035】
実施例1としては、図3に準じたもので、先端部の金属製管2の管径を90Aとし、内面側の耐火物5の長さaを100mm、先端での耐火物厚さcを20mmとし、外周部の耐火物5の厚さは従来と同一の30mmとした。先端部の金属管の補強パイプ4には、φ2Ommの開孔6を均一状に18個開けた。
【0036】
実施例2としては、図4に準じたもので、二重管状の補強パイプ4を100Aとし、実施例1と同様に内面の耐火物5の長さaを100mm、先端部での耐火物5の厚さcを20mmとし、外周部の耐火物5の厚さは従来と同一の30mmとした。
【0037】
その結果、比較例の平均ランス寿命は6.4回であった。それに対して実施例1では10.2回、実施例2では9.5回といずれも大幅に寿命が向上した。このように本発明の優位性は明らかである。
【0038】
【発明の効果】
以上のように本発明にあっては、パイプ状としたランスパイプの金属製管の先端部にこの金属製管よりも太径の補強パイプを配設し、この補強パイプの内面から先端、外周面に耐火物を一体的に配置したので、インジェクションランスの先端部分を溶銑等の損傷から有効に保護することができて大幅に寿命を向上させることができる。
【0039】
特に、補強パイプに開孔を設けて耐火物を一体的に配置するとともに、この内面側の耐火物をランスパイプの金属製管の内面と同一内径として配置することによって、インジェクションランスの先端部分に耐火物を強固に被覆できて耐久性をより向上でき、かつ管内に処理材を円滑に流通して溶銑処理をすることができる。
【0040】
また、パイプ状としたランスパイプの金属製管の先端部の外側にこの金属製管と同心円状に二重状に補強パイプを配設し、金属製管と補強パイプとの間およびこれらの先端部から外周面に耐火物を一体的に配置することによって、ランス先端の金属製管が従来のランスと同様に酸素吹き込みによる発熱で溶融、損耗しても、その外側に耐火物が存在しかつその耐火物を二重状の補強パイプで保護できるため、それ以上に損傷は進まず、インジェクションランスの寿命を大幅に向上することができる。
【0041】
また、上記補強パイプに開孔を設けて耐火物を一体的に配置することによって、上記したようにインジェクションランスの先端部分を溶銑等の損傷から有効に保護できて耐久性をより向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来例の一部省略した要部側断面図、
【図2】同上の溶損状況の説明用図、
【図3】本発明の一実施例の一部省略した要部側断面図、
【図4】同上の他の実施例の一部省略した要部側断面図。
【符号の説明】
1…インジェクションランス 2…金属製管 4…補強パイプ
5…耐火物 6…開孔
【発明が属する技術分野】
本発明は、冶金分野における溶銑予備処理等に用いられるインジェクションランスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
製鉄業においては、近年製品規格が厳しくなるなどの理由から、転炉に装入する溶銑を事前に脱燐、脱硫処理をする、いわゆる溶銑予備処理が一般的に実施されるようになってきた。溶銑の脱燐、脱硫は、一般的には脱燐剤、脱硫剤などをランスを通して窒素ガス等のキャリアガスとともに溶銑中へ吹き込み、脱燐剤、脱硫剤と溶銑とを接触させることで反応を進める。
【0003】
溶銑予備処理用のランス1は、金属製管の外面を耐火物で保護した構造を取るものが一般的である。たとえば、図1のように金属製管2の外面に流し込み材などの不定形耐火物3を施工する方法が一般的に採られている。予備処理作業中のランスの浮上、振動などによる構造、機械的な力に対しては、内側の金属製管2が担い、それを耐火物3が熱的、化学的に保護する構造となっている。
【0004】
一方、より多く脱燐、脱硫を進めようとすると、処理剤の量はそれに伴って増加する。処理剤量が増加すると、溶銑温度が低下し、次の転炉での操業に影響を及ぼす場含が発生する。こういった場合、キャリアガスに酸素を添加し、酸素と溶銑を反応させることで発熱させ、温度補償をする場合がある。
【0005】
しかし、キャリアガスに酸素を添加した場合、図2のようにランス先端部が損傷し、ランスの寿命が著しく低下する。この著しい寿命低下の対策をいくつか考えて実施してみたが、寿命の低下は回復しなかった。
【0006】
【先行関連文献】
この件について、発明者らは先行関連文献を調べた。その結果、実開平6−6447号公報、実公昭58−37941号公報、特公平2−25406号公報、実公平3−36517号公報、実公平4−14442号公報などが見つけられた。
【0007】
上記した実開平6−6447号公報は、インジェクションランスについて先端部を単管構造としてその全表面をカロライズ処理を施して外周を耐火物で被覆し、耐久性と安全性を向上させたものである。しかし、先端部のランスを簡単な構造として安価にするもので、1〜数回位の処理しか使えなくて耐久性がなく、ホルダー部に交換して使用するものであった。
【0008】
また、実公昭58−37941号公報、特公平2−25406号公報、実公平3−36517号公報のものは、外支管と内支管等で構成された二重構造のもので、構造が複雑で、ランス製作費用が高くなるものであった。
【0009】
さらに、実公平4−14442号公報のものは、従来のように単管ランスのものであったが、砂鉄、石灰等を冷却剤として酸素ガスと混合して吹き込むことによりランス先端部の溶損を抑制するもので、冷却剤を使用する必要があった。
【0010】
このようにいろいろなランスが提案されているが、発明者らはキャリアガスに酸素を添加した場合、溶銑の酸化による高熱でランス先端耐火物の溶損が増加したものと考えて、高耐食性耐火物を使用しても、寿命は変化しなかった。また、金属製管の処理剤による内面摩耗が問題と考えて、耐摩耗性金属に材質変更してみたが、寿命の向上は見られなかった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、発明者らは、ランス寿命に与える酸素ガスの吹き込み条件等の操業条件の影響を調査し、寿命低下の原因を次のように特定した。
(1)ランス寿命の低下の主因は、金属製管の先端の熱による溶融である。
酸素ガスと溶銑が反応して、溶鉄が酸化し、高熱を発する。この熱によって、金属製管先端が溶融する。外部の耐火物は残存するものの、内側の金属が無くなると、ガス吹き込み時の振動等に耐えきれなくなり、耐火物も欠け落ちることで損傷が進行する。
【0012】
(2)酸素量が増加すれば、ランス寿命は低下する。溶銑中に吹き込んだ酸素ガスは直ちに溶鉄と反応し、ランス先端の温度がより高熱になるためである。
(3)一方、処理剤量が増加すれば、寿命は増加する。処理剤の顕熱量が増加するために、前述の発熱温度は小さくなり、パイプの溶融が減少するからである。
【0013】
(4)先端部でのガス流速を増加させると、ランス寿命は増加する。ランス先端部での金属とキャリアガス間での熱伝達係数が大きくなり、先端部での金属内面温度が上昇しにくくなり、金属内面の溶融が抑制されるためである。
【0014】
ランス寿命を増大させるための操業面でのアクションは、必要な予備処理にとって不都合が多かった。例えば、酸素量の低下は寿命向上にはつながるが、温度補償量が低下し不都合であった。また、処理剤の過度の増加は、原単位を引き上げ経済的に不利であると共に、溶銑温度の低下を引き起こした。このようにランス寿命を向上させるためには、いかに吹き込みランスパイプ先端を熱的に保護するのかが課題であることが判明した。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記のような点に鑑みたもので、上記の課題を解決するために、溶銑予備処理等に使用されるインジェクションランスであって、パイプ状としたランスパイプの金属製管の先端部にこの金属製管よりも太径の補強パイプを配設し、この補強パイプの内面から先端、外周面に耐火物を一体的に配置したことを特徴とする溶銑予備処理用等のインジェクションランスを提供するものである。
【0016】
また、パイプ状としたランスパイプの金属製管の先端部の外側にこの金属製管と同心円状に二重状に補強パイプを配設し、金属製管と補強パイプとの間およびこれらの先端部から外周面に耐火物を一体的に配置したことを特徴とする溶銑予備処理用等のインジェクションランスを提供するものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の溶銑予備処理用等のインジェクションランスは、溶銑予備処理等に使用されるインジェクションランスであって、パイプ状としたランスパイプの金属製管の先端部にこの金属製管よりも太径の補強パイプを配設し、この補強パイプの内面から先端、外周面に耐火物を一体的に配置したこと、およびパイプ状としたランスパイプの金属製管の先端部の外側にこの金属製管と同心円状に二重状に補強パイプを配設し、金属製管と補強パイプとの間およびこれらの先端部から外周面に耐火物を一体的に配置したことを特徴としている。
【0018】
インジェクションランス1は、図3のようにパイプ状とした所定径のランスパイプの金属製管2の先端部にその口径よりも太径の補強パイプ4を同心円状に接合し、この補強パイプ4の内面から先端、外周面に従来の耐火物3と同一またはより耐久性のある耐火物5を一体的に配置している。
【0019】
補強パイプ4としては、一般的にランスパイプの金属製管2と同じ金属パイプや後述するようにセラミックパイプが使用でき、また所要径の開孔6を適宜に開孔して耐火物5を強固に配置できるようにするのが好ましく、さらにアンカー7を内側や外側に取着して耐火物5を配置するのが好ましい。
【0020】
このように溶銑予備処理用等のインジェクションランス1の金属製管2の先端に補強パイプ4を設けてその内面に耐火物5を配設することで、金属製管2の酸素と溶鉄との反応で発生する熱による溶解を抑制することが可能となり、酸素を吹き込む条件下でもランス寿命を向上させることが可能となる。
【0021】
インジェクションランス1の上流側での構造は、変える必要はない。また、インジェクションランス1の先端部の耐火物5の内径は、その上流側の金属製管2の内径と同一状とするのが好ましく、内径より小さくなることは好ましくない。それは、管内を処理材が流れるため、摩耗増大の危険性が増すためである。
【0022】
インジェクションランス1の先端内面の耐火物5の長さaは、20mm〜300mmが好ましい。20mm以下では効果が少なく、300mm以上の長さに配設しても何ら問題はないが、経済的ではない。より好ましくは、50〜200mmである。
【0023】
インジェクションランス1の先端内面の耐火物5の厚さbは、0.5〜50mmが好ましい。0.5mm以下では熱遮蔽効果が十分ではなく、50mm以上あっても差し支えないが経済的でない。より好ましくは、1mm〜30mmである。
【0024】
また、インジェクションランス1の先端での耐火物5の厚さcは、5〜40mmが好ましい。5mmより少なければ十分に保護できなく、40mmより大きければ処理時の振動等の衝撃により脱落の危険性が増す。より好ましくは、10〜30mmである。
【0025】
ここに使用する耐火物5には、ある程度の耐熱性が要求される。少なくとも融点は、鉄より高くなくてはいけない。溶鉄用に使用されている耐火物ならば、ほとんどのものが利用できる。
【0026】
補強パイプ4には、耐火性セラミックや耐火物製のパイプを設置してもよい。これらの材質も特には限定するものではないが、アルミナ質、ムライト質、ジルコニア質、炭化珪素質、アルミナ・カーボン質、マグネシア・カーボン質等が利用できる。さらには、酸化物系の耐熱コーティング材や、サーマル・バリア・コートなどと称される溶射コーティングも利用できる。
【0027】
施工方法は、特には限定されないが、例えば次の方法などを採用できる。図3に示すように金属製管2の先端部に内径を必要長さ分だけ拡げた補強パイプ4を接続材等を介して溶接して取り付けることができる。そして、その部分に流し込み材が通過、供給できるだけの開孔6をいくつか開ける。こうすることで、インジェクションランス1の上部側と併せて耐火物3、5の一括流し込み施工が可能となる。なお、初めから孔の空いたパンチングメタルのような板を利用した補強パイプ4で形成することも可能である。
【0028】
さらに、インジェクションランス1の先端部の内部に発泡スチロール等で作った内型を入れ、管外部に流し込み材を施工をすると同時にパイプ先端内面に流し込み材を施工するなどという方法も採用できる。
【0029】
この際の先端部の補強パイプ4に開ける開孔径としては、使用する流し込み材の最大粒径の5倍以上であることが孔部での詰まりをなくすために好ましい。具体的には、例えば最大粒径3mmの流し込み材を用いる場合、15mm以上であることが望ましい。
【0030】
また、耐火物製あるいはセラミックス製のパイプを予め作っておき、それをランス先端内面にモルタルやセラミックス系接着剤で接着させる方法を採ることもできる。さらには、コーティング材や溶射の場合、補強パイプの先端内面に直接施工すればよい。
【0031】
他方、寿命を延長させるための基本的な考え方は同一で、別の手段を採用し得る。たとえば、図4のようにインジェクションランス1の先端部の外側にこの金属製管2と同心円状に二重状に補強パイプ4を配設し、金属製管2を補強パイプ4との間およびこれらの先端部から外周面に耐火物5を一体的に配置することもできる。
【0032】
この場合にも、ランス先端の金属製管2は、従来のランスと同様に、酸素吹き込みによる発熱で溶融、損耗する。しかし、その外側に耐火物5が存在し、かつその耐火物5は二重状の補強パイプ4で保護されるため、それ以上に損傷は進まず、インジェクションランス1の寿命を向上することができる。
【0033】
施工の方法は、前述の方法に準じて行える。また、予備処理ランスの上部等に使用する耐火物は、特に限定されない。従来のアルミナ・シリカ系等のランス用として使用されている材料をそのまま利用することができる。
【0034】
【実施例】
管径50A、長さ4.4mの金属製管の周囲に、アルミナ・シリカ系耐火物を30mm厚さとして施工の工程使用している予備処理用のインジェクションランスを用い、それを比較例として、本発明の実施例のものと寿命を比較した。ランスの寿命は、いずれもほぼ同一条件で使用した各10本のランスの平均値をもって評価した。
【0035】
実施例1としては、図3に準じたもので、先端部の金属製管2の管径を90Aとし、内面側の耐火物5の長さaを100mm、先端での耐火物厚さcを20mmとし、外周部の耐火物5の厚さは従来と同一の30mmとした。先端部の金属管の補強パイプ4には、φ2Ommの開孔6を均一状に18個開けた。
【0036】
実施例2としては、図4に準じたもので、二重管状の補強パイプ4を100Aとし、実施例1と同様に内面の耐火物5の長さaを100mm、先端部での耐火物5の厚さcを20mmとし、外周部の耐火物5の厚さは従来と同一の30mmとした。
【0037】
その結果、比較例の平均ランス寿命は6.4回であった。それに対して実施例1では10.2回、実施例2では9.5回といずれも大幅に寿命が向上した。このように本発明の優位性は明らかである。
【0038】
【発明の効果】
以上のように本発明にあっては、パイプ状としたランスパイプの金属製管の先端部にこの金属製管よりも太径の補強パイプを配設し、この補強パイプの内面から先端、外周面に耐火物を一体的に配置したので、インジェクションランスの先端部分を溶銑等の損傷から有効に保護することができて大幅に寿命を向上させることができる。
【0039】
特に、補強パイプに開孔を設けて耐火物を一体的に配置するとともに、この内面側の耐火物をランスパイプの金属製管の内面と同一内径として配置することによって、インジェクションランスの先端部分に耐火物を強固に被覆できて耐久性をより向上でき、かつ管内に処理材を円滑に流通して溶銑処理をすることができる。
【0040】
また、パイプ状としたランスパイプの金属製管の先端部の外側にこの金属製管と同心円状に二重状に補強パイプを配設し、金属製管と補強パイプとの間およびこれらの先端部から外周面に耐火物を一体的に配置することによって、ランス先端の金属製管が従来のランスと同様に酸素吹き込みによる発熱で溶融、損耗しても、その外側に耐火物が存在しかつその耐火物を二重状の補強パイプで保護できるため、それ以上に損傷は進まず、インジェクションランスの寿命を大幅に向上することができる。
【0041】
また、上記補強パイプに開孔を設けて耐火物を一体的に配置することによって、上記したようにインジェクションランスの先端部分を溶銑等の損傷から有効に保護できて耐久性をより向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来例の一部省略した要部側断面図、
【図2】同上の溶損状況の説明用図、
【図3】本発明の一実施例の一部省略した要部側断面図、
【図4】同上の他の実施例の一部省略した要部側断面図。
【符号の説明】
1…インジェクションランス 2…金属製管 4…補強パイプ
5…耐火物 6…開孔
Claims (4)
- 溶銑予備処理等に使用されるインジェクションランスであって、パイプ状としたランスパイプの金属製管の先端部にこの金属製管よりも太径の補強パイプを配設し、この補強パイプの内面から先端、外周面に耐火物を一体的に配置したことを特徴とする溶銑予備処理用等のインジェクションランス。
- 補強パイプに開孔を設けて耐火物を一体的に配置するとともに、この内面側の耐火物をランスパイプの金属製管の内面と同一内径として配置した請求項1に記載の溶銑予備処理用等のインジェクションランス。
- 溶銑予備処理等に使用されるインジェクションランスであって、パイプ状としたランスパイプの金属製管の先端部の外側にこの金属製管と同心円状に二重状に補強パイプを配設し、金属製管と補強パイプとの間およびこれらの先端部から外周面に耐火物を一体的に配置したことを特徴とする溶銑予備処理用等のインジェクションランス。
- 補強パイプに開孔を設けて耐火物を一体的に配置した請求項3に記載の溶銑予備処理用等のインジェクションランス。
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---|---|---|---|
JP2002279007A JP2004115849A (ja) | 2002-09-25 | 2002-09-25 | 溶銑予備処理用等のインジェクションランス |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2006103709A1 (en) * | 2005-03-29 | 2006-10-05 | Eugen Dan Cristea | Fuel delivering terminal for a combustion lance of lime regenerating ovens, combustion lance equipped with such terminal, system and process for controlling the fuel supply flow through such lance |
-
2002
- 2002-09-25 JP JP2002279007A patent/JP2004115849A/ja active Pending
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