JP2004115709A - インクジェット用インクセットとそれを用いた画像形成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各インクから構成されるカラーインクジェット用インクセットにおいて、少なくともイエロー、マゼンタ及びシアンの各インクが、それぞれ色材とポリマーからなる着色微粒子を含有し、イエローインクの主たる色材がキノフタロン構造の油溶性イエロー染料であり、マゼンタインクの主たる色材がアゾ構造の油溶性マゼンタ染料であり、シアンインクの主たる色材が銅フタロシアニン構造の油溶性シアン染料であることを特徴とするインクジェット用インクセット。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット用インクセット及びそれを用いた画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、プリンタ、印刷機、マーカー、筆記具等に用いられる記録材料、インキング材料にも脱溶剤化、水性化が求められてきている。特にインクジェット記録に用いられる水性の記録材料としては水溶性染料の水溶液を主体としたもの、顔料の微分散体を主体としたものが広く用いられている。
【0003】
水溶性染料を用いた水性インクとしては主として酸性染料、直接染料、一部の食品用染料等に分類される水溶性染料の水溶液に、保湿剤としてグリコール類、アルカノールアミン類、表面張力の調整のための界面活性剤、更に必要に応じて増粘剤等を添加したものが用いられている。これら水溶性染料を用いた水性インクは、筆先、あるいはプリンターでの目詰まりに対する高い信頼性から、最も一般的に用いられているが、記録紙上でにじみやすく、使用用途の限定、記録品位の低下を余儀なくされている。即ち、記録紙に単に浸透し、乾燥固着しているだけの水溶性染料は「染着」しているとはいい難く、耐光堅牢度は非常に低い。
【0004】
又、水溶性染料を用いた水性インクの耐水性、耐光堅牢性が低いという問題を解決するために油溶性染料ないし疎水性染料により水分散性樹脂を着色する提案が、例えば、特開昭55−139471号、同58−45272号、特開平3−250069号、同8−253720号、同8−92513号、同8−183920号、特開2001−11347等になされている。
【0005】
又、油溶性染料、疎水性染料により水分散性樹脂を着色するのみでなく、色材及びこれを被覆した樹脂からなる着色微粒子、又、着色材と樹脂からなる色材粒子を更に皮膜形成性樹脂で被覆した着色微粒子を用いる試みもなされている。
【0006】
しかしながら、これらの油溶性染料や疎水性染料による水分散性樹脂を着色した粒子やこれらの粒子を更に樹脂により被覆した着色微粒子を作製する場合、染料及び樹脂の有機溶剤に対する溶解性または親和性等が不十分なために高濃度の色材を含有する微粒子分散体を安定に製造できない場合が多く、溶解或いは分散しても染料が析出し易かったり、又、染料が粒子表面に存在する(樹脂で完全に被覆されない)等のために、着色微粒子そのものの分散安定性が損なわれ、インクジェット用インクに必要な分散安定性、吐出安定性等の諸性能を高めることが難しかったり、耐光性の向上等の効果が減じられたりという問題があった。
【0007】
色材と樹脂を混合し水に分散させ着色微粒子分散体を形成し、これをインクジェット用のインクとして用いる技術が幾つか提案されている。
【0008】
これらのうち、樹脂に特徴のあるものとして、特開2001−98194には、親水性重合連鎖部分と疎水性重合連鎖部分からなる共重合体樹脂をもちいるものが、特開2000−191968には、ビニルポリマー重合性不飽和酸モノマー、水酸基含有モノマー、スチレンマクロマー等を用いるものが、特開平9−157508号には、シクロヘキセンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂を用いるものが開示されている。
【0009】
しかしながら、前記の着色微粒子は、粒径が100nm前後で大きいことや、分散安定性、インク保存性、吐出安定性、又、プリント濃度が低い、透明性が低い、光沢性が低い、あるいは発色や耐光性等の面で充分でないなど性能面で未だ充分なものは得られていない。
【0010】
また、特開平9−157508号には、ポリエステル樹脂と油性染料とを溶解、乳化させた後、エチレン性不飽和単量体を更に重合させて得られた、コアシェル構造を有する複合着色微粒子の水分散体についても記載されている。
【0011】
しかしながら、上記記載のコアシェル構造を有する着色微粒子は、粒径が大きく、分散安定性に問題があり、実用的ではなかった。
【0012】
特開2002−47440、同2002−88294、同2002−97395等には50nm以下の小粒径着色微粒子が記載されているが分散安定性が十分でなく保存性が低く、プリントしたときに2次凝集したり、微粒子の効果が不十分である。特開2002−80746及び同2002−80772には高沸点の有機溶媒に溶解した油溶性染料を水性媒体中に分散した組成物が開示されているが、これらはゼラチンのような媒質がないと不安定でありインク吐出の安定性がない。
【0013】
一方、上述のような着色微粒子は、ポリマーと染料の相互作用により染料単独で用いた場合に対し、保存安定性の向上や上記のような各特性の改良が期待できる反面、ポリマーと染料との相互作用により染料の吸収スペクトルがブロード化(平坦化)し、色再現性の低下を起こしやすい。また、着色微粒子を用いることにより、耐光性の向上が期待できるが、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックインクを用いたフルカラーインクセットにおいては、ここのインク間での光に対する色材の劣化速度が異なることにより、退色した後のカラーバランスに崩れを生じる結果となる。
【0014】
上記課題に対し、耐久性、透明性、耐光性、樹脂との相溶性等を改良する目的で、様々な方法が提案されている。
【0015】
例えば、特定の構造を有する染料を用いた着色微粒子を含み、有機溶媒を除去した油溶性染料分散体が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、特定の構造を有する油溶性染料を、水溶性高分子に溶解させたのち、水系溶剤中に分散した染料インクが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。また、水への溶解度が1%以下で、かつトルエンへの溶解度が10%以上の油溶性染料及び樹脂分散体を含有するインクジェット用水性インクが提案されている(例えば、特許文献3参照。)。また、キノフタロン色素を用い、水、水不溶性染料及び樹脂でエマルジョンを構成しているインクが提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
【0016】
しかしながら、上記いずれの方法も、色材粒子の分散安定性、吐出安定性が不十分であり、形成された画像の透明性、光沢性、色再現性が未だ満足のいく品質ではなく、特にインクセットを構成した際の退色によるカラーバランスの変動が大きいため、更なる改良が求められているのが現状である。
【0017】
【特許文献1】
特開平11−131000号公報(特許請求の範囲)
【0018】
【特許文献2】
特開2000−26774号公報(特許請求の範囲)
【0019】
【特許文献3】
特開2000−297234号公報(特許請求の範囲)
【0020】
【特許文献4】
特開2001−131454号公報(特許請求の範囲)
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、着色微粒子の分散安定性、インクの吐出安定性に優れ、得られた画像の光沢性及び色再現性が良好で、かつ退色変化でのカラーバランスの崩れが少ないインクジェット用インクセット及びそれを用いた画像形成方法を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
【0023】
1.イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各インクから構成されるカラーインクジェット用インクセットにおいて、少なくともイエロー、マゼンタ及びシアンの各インクが、それぞれ色材とポリマーからなる着色微粒子を含有し、イエローインクの主たる色材がキノフタロン構造の油溶性イエロー染料であり、マゼンタインクの主たる色材がアゾ構造の油溶性マゼンタ染料であり、シアンインクの主たる色材が銅フタロシアニン構造の油溶性シアン染料であることを特徴とするインクジェット用インクセット。
【0024】
2.前記キノフタロン構造の油溶性イエロー染料が前記一般式(1)で表される化合物であり、前記アゾ構造の油溶性マゼンタ染料が前記一般式(2)で表される化合物であり、かつ銅フタロシアニン構造の油溶性シアン染料が前記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする前記1項記載のインクジェット用インクセット。
【0025】
3.前記イエローインク中のキノフタロン構造の油溶性イエロー染料の含有比率(質量%)をY、前記マゼンタインク中のアゾ構造の油溶性マゼンタ染料の含有比率(質量%)をM、前記シアンインク中の銅フタロシアニン構造の油溶性シアン染料の含有比率(質量%)をCとしたとき、下式(1)及び(2)で表される条件を満たすことを特徴とする前記1または2項に記載のインクジェット用インクセット。
【0026】
式(1)
0.7≦Y/C≦1.0
式(2)
0.6≦M/C≦1.0
4.前記ブラックのインクが、色材とポリマーからなる着色微粒子を含有し、該色材がアゾ構造の油溶性ブラック染料であることを特徴とする前記1〜3項のいずれか1項に記載のインクジェット用インクセット。
【0027】
5.前記ブラックのインクが、色材とポリマーからなる着色微粒子を含有し、該色材がイエロー、マゼンタ及びシアンの染料を混合したものであることを特徴とする前記1〜3項のいずれか1項に記載のインクジェット用インクセット。
【0028】
6.前記着色微粒子を構成するポリマーが、アクリル重合体またはスチレン−アクリル重合体を含有することを特徴とする前記1〜5項のいずれか1項に記載のインクジェット用インクセット。
【0029】
7.前記着色微粒子が、コアシェル構造であることを特徴とする前記1〜6項のいずれか1項に記載のインクジェット用インクセット。
【0030】
8.前記着色微粒子が解離性基を有することを特徴とする前記6または7項に記載のインクジェット用インクセット。
【0031】
9.前記着色微粒子が、コアポリマーと染料とを混合分散させた後、反応性乳化剤を用いてモノマーを共重合してシェル化されたことを特徴とする前記8項記載のインクジェット用インクセット。
【0032】
10.デジタル信号に基づき、インクジェットヘッドより前記1〜9項のいずれか1項に記載のインクジェット用インクセットを液滴として吐出させ、インクジェット記録媒体に付着させることを特徴とする画像形成方法。
【0033】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各インクから構成されるカラーインクジェット用インクセット(以下、単にインクセットともいう)において、少なくともイエロー、マゼンタ及びシアンの各インクが、それぞれ色材とポリマーからなる着色微粒子を含有し、イエローインクの主たる色材がキノフタロン構造の油溶性イエロー染料であり、マゼンタインクの主たる色材がアゾ構造の油溶性マゼンタ染料であり、シアンインクの主たる色材が銅フタロシアニン構造の油溶性シアン染料であるインクジェット用インクセットを用いることにより、着色微粒子の分散安定性、インクの吐出安定性に優れ、得られた画像の透明性、光沢性及び色再現性が良好で、かつ退色変化でのカラーバランスの崩れが少ないインクジェット用インクセットを実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0034】
上記構成に加えて、キノフタロン構造の油溶性イエロー染料、アゾ構造の油溶性マゼンタ染料、銅フタロシアニン構造の油溶性シアン染料として特定の構造を有する染料を用いること、各染料のインク中での含有量比を特定の条件とすること、ブラックインクとして特定の条件の色材を用いること、着色微粒子を構成するポリマーとして、アクリル重合体またはスチレン−アクリル重合体を用いること、着色微粒子としてコアシェル構造をとること、着色微粒子が解離性基を有すること、着色微粒子が、コアポリマーと染料とを混合分散させた後、反応性乳化剤を用いてモノマーを共重合してシェル化することにより、上記効果がより一層発揮されることを見出したものである。
【0035】
すなわち、数多くの既存の染料について、詳細に解析を進めた結果、特定の構造、疎水性、あるいはポリマーとの相溶性を有する染料を見出し、この染料はポリマーと共存しても、色材の吸収スペクトルのブロード化を起こしにくく、耐光性も極めて高いことが判明した。また、これらの特定の構造を有する染料の含浸量を調整して、最適化することにより、色再現性に優れ、光に晒された後でも光退色しにくく、かつ光退色バランスの崩れの少ないインクジェット用インクセットを得ることができたものである。特に、アクリル重合体、あるいはスチレン−アクリル重合体をポリマーとして用いてコア粒子を形成した場合には、分子分散性が良好となるため、色調あるいは耐光性が向上し、このコア粒子表面にシェルを被覆したコアシェル構造をとることにより、耐溶剤性が高くなり、加えて反応性乳化剤を使用することにより、分散安定性、表面親水性が高くなり、色再現性、耐光性あるいは光沢性がより一層向上するものである。
【0036】
以下、本発明の詳細について説明する。
《色材》
本発明においては、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各インクから構成されるカラーインクジェット用インクセットで用いる各色インクが、色材とポリマーからなる着色微粒子を含有し、イエローインクの主たる色材がキノフタロン構造の油溶性イエロー染料であり、マゼンタインクの主たる色材がアゾ構造の油溶性マゼンタ染料であり、シアンインクの主たる色材が銅フタロシアニン構造の油溶性シアン染料であることが特徴であり、好ましくは、キノフタロン構造の油溶性イエロー染料が前記一般式(1)で表される化合物であり、前記アゾ構造の油溶性マゼンタ染料が前記一般式(2)で表される化合物であり、かつ銅フタロシアニン構造の油溶性シアン染料が前記一般式(3)で表される化合物である。
【0037】
本発明に係る各油溶性染料は、当業者公知の方法に従って合成して得ることもでき、あるいは市販品を容易に入手することができる。
【0038】
イエローインクとしては、その主たる色材が、キノフタロン構造の油溶性イエロー染料であり、好ましくは、キノフタロン構造の油溶性イエロー染料が前記一般式(1)で表される化合物である。本発明でいう主たる色材とは、インクを構成する全色材量の50質量%以上が、本発明に係るキノフタロン構造の油溶性イエロー染料で占められていることであり、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、最も好ましくは色材の全てが本発明に係るキノフタロン構造の油溶性イエロー染料で占められていることである。
【0039】
はじめに、油溶性イエロー染料について説明する。
本発明のインクセットにおいては、イエロー染料としてキノフタロン構造の油溶性イエロー染料を用いることが一つの特徴であるが、その好ましい形態は、前記一般式(1)で表される化合物である。
【0040】
前記一般式(1)において、R1はハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子等)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、iso−ペンチル基、2−エチル−ヘキシル基、オクチル基、デシル基等)、またはアシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ブチリルアミノ基、ミリストイルアミノ基、ステアロイルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等の各基)を表し、好ましくはR1はアルキル基である。
【0041】
R2はハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子等)、アルキルカルバモイル基(例えば、メチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、ジブチルカルバモイル基、ピペリジルカルバモイル基、モルホリルカルバモイル基)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基等)、またはアシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ヘプチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、バレリルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)を表し、好ましくはアルキルカルバモイル基またはアルコキシカルボニル基である。
【0042】
a、bは各々0〜3の整数を表すが、本発明においては(R1)aと(R2)bとの炭素数の総和が、6〜35であることが好ましい。
【0043】
次いで、油溶性マゼンタ染料について説明する。
本発明においては、マゼンタ染料としてアゾ構造の油溶性マゼンタ染料を用いることが一つの特徴であるが、その好ましい形態は、前記一般式(2)で表される化合物である。
【0044】
前記一般式(2)において、R3はアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、iso−ペンチル基、2−エチル−ヘキシル基、オクチル基、デシル基等)を表し、R4はアシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ブチリルアミノ基、ミリストイルアミノ基、ステアロイルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等の各基)またはジアルキルアミノ基(例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、メチルオクチルアミノ基等)を表す。
【0045】
cは0〜3の整数を表すが、R3と(R4)cとの炭素数の総和は、8〜40であることが好ましい。
【0046】
次いで、油溶性シアン染料について説明する。
本発明においては、シアン染料として銅フタロシアニン構造の油溶性シアン染料を用いることが一つの特徴であるが、その好ましい形態は、前記一般式(3)で表される化合物である。
【0047】
前記一般式(3)において、Xはアミノ基、アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基など)、またはジアルキルアミノ基(例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、メチルオクチルアミノ基等)を表す。Yは一価のカチオンを表し、例えば、アンモニウム、ナトリウム、カリウム等を挙げることができる。
【0048】
dは1〜8の整数を表し、eは0〜3の整数を表す。
本発明に係る銅フタロシアニン構造の油溶性シアン染料の具体例を以下に列挙するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
例えば、Valifast Blue 2606、Valifast Blue 2610(以上、オリエント化学工業(株)製)、Kayaset Blue K−FL、Kayaset Cyan K−8(以上、日本化薬(株)製)、FS Blue 1504(有本化学工業(株)製)等を挙げることができる。
【0050】
本発明のインクセットで用いるブラックインクとしては、特に制限はないが、好ましくは、色材とポリマーからなる着色微粒子を含有し、該色材がアゾ構造の油溶性ブラック染料を用いること、あるいは色材とポリマーからなる着色微粒子を含有し、該色材がイエロー、マゼンタ及びシアンの染料を混合したものである。
【0051】
本発明のインクジェット用インクセットにおいて、上記で説明した各油溶性染料を用いることにより、透明性、光沢性及び色再現性が良好で、かつ退色変化でのカラーバランスの崩れが少ないインクジェットカラー画像を得ることができる。
【0052】
また、本発明のインクジェット用インクセットにおいて、イエローインク中のキノフタロン構造の油溶性イエロー染料の含有比率(質量%)をY、マゼンタインク中のアゾ構造の油溶性マゼンタ染料の含有比率(質量%)をM、シアンインク中の銅フタロシアニン構造の油溶性シアン染料の含有比率(質量%)をCとしたとき、各々の染料濃度の比として、0.7≦Y/C≦1.0及び0.6≦M/C≦1.0を満足する条件とすることにより、色再現性が良好で、特に退色変化でのカラーバランスの崩れが少ないインクジェットカラー画像を得ることができ好ましい。
【0053】
本発明においては、上記説明した各油溶性染料を用いることが特徴であるが、本発明に係る染料を2種以上用いてもよく、あるいは本発明の効果を妨げない範囲、例えば、全色材質量の50質量%以下の範囲で、本発明外の公知の油溶性染料を用いることができる。
【0054】
《ポリマー》
本発明に係るポリマー(樹脂)について説明する。
【0055】
本発明に係るポリマーとしては、一般に知られているポリマーを使用可能であるが、好ましいポリマーは、重合性エチレン性不飽和二重結合を有するビニルモノマーのラジカル重合によって得られたポリマーが好ましく用いられる。
【0056】
本発明に好ましく用いられる重合性エチレン性不飽和二重結合を有するビニルモノマーのラジカル重合によって得られたポリマーとしては、アクリル重合体またはスチレン−アクリル重合体が好ましく、例えば、アクリル酸エステル、スチレン−アクリル酸エステル等の共重合体等が好ましい。
【0057】
上記のポリマーを与える、具体的なモノマーとしては、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル、2−フェノキシエチルアクリレート、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸フェニル、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル等、アセトアセトキシエチルメタクリレート、メタクリル酸グリシジルの大豆油脂肪酸変性品(ブレンマーG−FA:日本油脂社製)等が挙げられる。
【0058】
より好ましい組み合わせとしては、スチレン、またはメタクリル酸メチルを主成分としてアセトアセトキシエチルメタクリレート、メタクリル酸グリシジルの大豆油脂肪酸変性品(ブレンマーG−FA:日本油脂社製)、及びアクリル酸n−ブチル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸2−エチルヘキシル等の長鎖(メタ)アクリル酸エステルから選ばれるもの少なくとも一種を加え、更に物性改良のために必要に応じてアクリロニトリル、ジビニルベンゼン、ジエチレングリコールジメタクリレート等を加えて作られる共重合体を挙げることができる。
【0059】
上記のポリマーは、置換基を有していてもよく、その置換基は直鎖状、分岐、あるいは環状構造をとっていてもよい。また、上記の官能基を有するポリマーは、各種のものが市販されているが、常法によって合成することもできる。また、これらの共重合体は、例えば1つのポリマー分子中にエポキシ基を導入しておき、後に他のポリマーと縮重合させたり、光や放射線を用いてグラフト重合を行っても得られる。
【0060】
(樹脂の重量平均分子量)
本発明に係る樹脂の重量平均分子量は、2,000〜50,000の範囲に入っていることが好ましいが、より好ましくは、2,000〜30,000であり、更に好ましくは、2,000〜15,000である。
【0061】
本発明に係る樹脂の重量平均分子量測定方法は、THF(テトラヒドロフラン)を溶媒としたGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による測定により求められる。
【0062】
(樹脂のTg(ガラス転位点))
本発明に係るポリマーのTgとしては、各種用いることが可能であるが、用いるポリマーのうち、少なくとも1種以上はTgが10℃以上であるものを用いる方が好ましい。また、本発明に係る着色微粒子の分散安定性向上の観点からは、ポリマーのTgは、0℃〜100℃の範囲が好ましい。
【0063】
《着色微粒子》
本発明に係る着色微粒子について説明する。
【0064】
本発明に係る着色微粒子を含む水分散体は、上記のようなポリマー(複数用いてもよいが)と油溶性染料とを有機溶剤中に溶解し、水中で乳化した後、有機溶剤を除去する方法により形成することによって得られる。或いは、例えば、乳化重合により予め樹脂微粒子水分散体を形成し、この樹脂微粒子水分散体に、染料を溶解した有機溶媒溶液を混合し、あとから樹脂微粒子中に染料を含浸する等の方法等、種々の方法により得ることができる。
【0065】
この様な着色微粒子水分散体は、これを用いてインクジェットインクを形成することができるが、更に長期に亘って該着色微粒子分散体の凝集を防止し、微粒子のインクサスペンションとしての安定性を向上させ、メディアに印画したときの画像の色調や光沢、更に耐光性等、画像に堅牢性を付与するために、該着色微粒子をコアとして、更に有機ポリマーからなるシェルを形成するのが好ましい。
【0066】
シェルを形成する方法としては、有機溶剤に溶解したポリマーを徐々に滴下し、析出と同時に該着色微粒子コア表面に吸着させる方法などもあるが、本発明においては、色材と樹脂を含有したコアとなる着色微粒子を形成した後、重合性不飽和二重結合を有するモノマーを添加し活性剤の存在下、乳化重合を行い、重合と同時にコア表面に沈着させシェルを形成する方法が好ましい。この方法で形成した場合においても、例えば色材として染料を用いた場合等にみられるが、コア/シェル界面での幾分かの相の混合がありシェルにおける色材含有率は必ずしも零とはならないが、混合は少ない方が好ましく、シェルにおける色材含有率(濃度)は、コア/シェル化を行っていないコアにおける色材含有率(濃度)の0.8以下であることが好ましく、更に好ましくは0.5以下である。
【0067】
色材粒子をシェルとして被覆するポリマーを形成する重合性不飽和二重結合を有するモノマーとしては、エチレン、プロピレン、ブタジエン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸等、アクリルアミド類等から選ばれる化合物、特スチレンや(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル類等が好ましいが、他に解離性基を有しない場合、これらのモノマーに加えて、分子内にヒドロキシル基を含有する重合性不飽和モノマー、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の様なヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等のエステルをシェルを形成する原料モノマー全体の最大50%、その他のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーと混合して用いるのが好ましい。また、シェルの安定性を増す等の理由から、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボン酸を含有するモノマー或いはスルホン酸を含有するモノマー等、pKa値で3〜7の解離性基を含有するエチレン性不飽和モノマーを10%以下用いてもよい。これらのヒドロキシル基を有するモノマー成分(具体的には、アクリル酸やメタクリル酸等の水和層形成基を有するモノマー等である)をシェル形成に用いることによって、当該コア/シェル着色微粒子の水分散体の安定性は格段に向上する。
【0068】
本発明においては、着色微粒子、特に、粒子表面に解離基が存在していることが好ましく、この構成とすることにより着色微粒子分散体の良好な分散安定性を実現することができる。
【0069】
本発明において、着色微粒子に解離基を付与させる方法としては、例えば、着色微粒子の周りに、電気二重層等を形成できるような解離性の基を有する界面活性剤を、あるいは着色微粒子自身に解離性の基を結合させる方法、具体的には、コア粒子を被覆してコアシェル構造をとる際、pKa値で3〜7の範囲にあるようなカルボン酸等の基を有する重合性モノマー、例えば、エチレン性不飽和モノマーを用いてポリマー樹脂を形成し、電気二重層を形成させる方法を挙げることができる。
【0070】
(反応性乳化剤)
また、本発明においては、着色微粒子が、コアポリマーと染料とを混合分散させた後、反応性乳化剤を用いてモノマーを共重合してシェル化することが好ましく、この方法を用いることにより、より強固で、安定なシェル形成を行うことが出来る。
【0071】
本発明に用いられる反応性乳化剤としては、例えば、ノニオン系では、アクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50(以上、第一工業製薬(株)社製)、アデカリアソープNE−10、NE−20、NE−30(以上、旭電化(株)社製)等が挙げられ、アニオン系としては、アクアロンHS−10、HS−20、HS−1025、アクアロンKH−05、KH−10(以上、第一工業製薬(株)社製)、ラテムルS−180(花王(株)社製)、アデカリアソープSE−10N、SE−20N(旭電化(株)社製)等が挙げられる。
【0072】
(コアシェル化の評価)
実際にコアシェル化されているかを評価することは重要である。本発明においては、個々の粒子径が100nm以下と非常に微小であるため、分析手法は分解能の観点から限られる。このような目的に沿う分析手法としては、TEMやTOF−SIMSなどが適用できる。TEMによりコアシェル化した微粒子を観察する場合、カーボン支持膜上に分散液を塗布、乾燥させ観察することができる。TEMの観察像は、有機物であるポリマーの種類のみではコントラスト差が小さい場合があるため、コアシェル化されているかどうかを評価するために、微粒子を、4酸化オスミウム、4酸化ルテニウム、クロロスルホン酸/酢酸ウラニル、硫化銀等を用いて染色することが好ましい。コアだけの微粒子を染色しそのTEM観察を行い、シェルを設けたものと比較する。さらに、シェルを設けた微粒子と設けていない微粒子を混合後、染色し、染色度合いの異なる微粒子の割合がシェルの有無に一致しているかの確認を行う。
【0073】
TOF−SIMSような質量分析装置では、粒子表面にシェルを設けることで表面近傍の色材量がコアだけの時よりも減少していることを確認する。色材にコアシェルのポリマーに含有されていない元素がある場合、その元素をプローブとして色材含有量の少ないシェルが設けられたかを確認することができる。
【0074】
そのような元素がない場合、適当な染色剤を用いてシェル中の色材含有量をシェルを設けていないものと比較することができる。例えば、コアシェル粒子をエポキシ樹脂内に埋胞し、ミクロトームで超薄い切片を作製、染色を行うことでコアシェル化をより明瞭に観察できる。上記のように、ポリマーや、色材にプローブとなりうる元素がある場合、TOF−SIMSやTEMによってコアシェルの組成、色材のコアとシェルへの分布量を見積もることもできる。
【0075】
本発明に係る着色微粒子の分散体において、適切な粒子径を得るには、処方の最適化と、適当な乳化法の選定が重要である。処方とは用いる色材、ポリマーによって異なるが、水中のサスペンションであるので、コアを構成するポリマーよりシェルを構成するポリマーの方が一般的に親水性が高いことが必要である。また、シェルを構成するポリマーに含有される色材は、前記のようにコアを構成するポリマー中より少ないことが好ましく、色材もシェルを構成するポリマーよりも親水性の低いことが必要である。親水性、疎水性は、例えば前記の溶解性パラメーター(SP)を用いて見積もることができる。
【0076】
(着色微粒子の体積平均粒子径)
本発明のインクセットに用いられる着色微粒子、特にコアシェル型着色微粒子は、体積平均粒子径が5nm以下になると単位体積あたりの表面積が非常に大きくなるため、色材をコアシェルポリマー中に封入する効果が小さくなる。一方、200nmを越えるほど大きな粒子では、ヘッドに詰まりやすく、またインク中での沈降が起き易く、停滞安定性が劣化する。従って着色微粒子の体積平均粒子径は5nm〜100nmが好ましい。
【0077】
〈体積平均粒子径の測定方法〉
本発明に係る着色微粒子の体積平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)写真の投影面積(少なくとも100粒子以上に対して求める)の平均値から得られた円換算平均粒径を、球形換算して求められる。体積平均粒子径とその標準偏差を求め、標準偏差を体積平均粒子径で割ることで変動係数を求められる。或いは、動的光散乱法を利用して変動係数を求めることも出来る。例えば、大塚電子製レーザー粒径解析システムや、マルバーン(Malvern)社製ゼータサイザー(Zetasizer)1000HSを用いて求める事ができる。
【0078】
次いで、着色微粒子の変動係数について説明する。
粒子径の変動係数は、粒子径の標準偏差を粒子径で割った値であるが、この値が大きいほど粒子径の分布が広い事を意味する。体積平均粒子径の変動係数が80%以上であると、粒径分布が非常に広くなり、コアシェルの厚みが不均一となり易く、粒子間の表面物性にばらつきが生じ易くなる。表面物性のばらつきは粒子の凝集を招きやすく、インクジェットヘッドの詰まりを起こし易い。また、粒子の凝集はメディア上で、色材の光散乱を招き易く、画質の低下も招き易くする。変動係数は50%以下が好ましい。
【0079】
本発明においては、シェルに用いられるポリマー量が総ポリマー量の5質量%以上95質量%以下であることが好ましい。5質量%より少ないとシェルの厚みが不十分で、色材を多く含有するコアの一部が粒子表面に現れ易くなる。また、シェルのポリマーが多すぎると、コアの色材保護能低下を起こし易い。さらに好ましくは10質量%以上、50質量%以下である。
【0080】
色材の総量は、総ポリマー量に対して20質量%以上1,000質量%以下であることが好ましい。色材量がポリマーに比して少なすぎると、吐出後の画像濃度が上がらず、また、色材質量が多すぎるとポリマーの保護能が十分に得られない。
【0081】
次いで、上記で説明した以外のインクの構成要素について説明する。
本発明に係るインクは水を媒体とし、上記色材を封入したポリマーのサスペンジョンからなり、該サスペンションには従来公知の各種添加剤、例えば、多価アルコール類のような湿潤剤、無機塩、界面活性剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、シリコーン系等の消泡剤、粘度調整剤又はEDTA等のキレート剤、又、亜硫酸塩等の酸素吸収剤等を必要に応じて添加してもよい。
【0082】
本発明で用いることのできる湿潤剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、ジエチルカルビトール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコール及びそのエーテル、アセテート類、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、トリエタノールアミン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド等の含窒素化合物類、ジメチルサルフォキサイドの一種又は二種以上を使用することができる。これらの湿潤剤の配合量に特に制限はないが、上記水性インク中に好ましくは0.1〜50質量%配合することができ、更に好ましくは0.1〜30質量%配合することができる。
【0083】
又、インクの粘度を安定に保つため、発色をよくするために、インク中に無機塩を添加してもかまわない。無機塩としてはたとえば塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化マグネシウム、硫化マグネシウム等が挙げられる。本発明を実施する場合、これらに限定されるものではない。
【0084】
また、乳化剤、分散剤としては特に制限されるものではないが、そのHLB値が8〜18であることが、効果の発現の点からみて或いはサスペンションの粒子径の増大抑制効果がある点から好ましい。
【0085】
界面活性剤としては、陽イオン性、陰イオン性、両性、非イオン性のいずれも用いることが出来る。
【0086】
乳化剤或いは分散剤として、好ましくは陰イオン性界面活性剤又は高分子界面活性剤であり、陰イオン性界面活性剤が特によい。
【0087】
又、インクの表面張力調整用の活性剤としては好ましくはノニオン性界面活性剤である。
【0088】
陽イオン性界面活性剤としては、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。また、陰イオン性界面活性剤としては、脂肪酸石鹸、N−アシル−N−メチルグリシン塩、N−アシル−N−メチル−β−アラニン塩、N−アシルグルタミン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルメチルタウリン、硫酸化油、高級アルコール硫酸エステル塩、第2級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、第2級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、モノグリサルフェート、脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。また、両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。また、非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(例えば、エマルゲン911)、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(例えば、ニューポールPE−62)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキサイド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール等が挙げられる。その他に、界面活性剤としては、例えば、花王(株)製の分散剤デモールSNB、MS、N、SSL、ST、P(商品名)もあげられる。
【0089】
これらの界面活性剤を使用する場合、単独又は2種類以上を混合して用いることが出来、インク全量に対して、0.001〜1.0質量%の範囲で添加することにより、インクの表面張力を任意に調整することが出来る。本発明を実施する場合、これらに限定されるものではない。インクの長期保存安定性を保つため、防腐剤、防黴剤をインク中に添加してもかまわない。
【0090】
又、高分子界面活性剤として、以下の水溶性樹脂を必要に応じて用いることができる。水溶性樹脂として好ましく用いられるのは、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体等を挙げることができる。高分子界面活性剤の例として、その他に、アクリル−スチレン系樹脂であるジョンクリル等(ジョンソン社)が挙げられる。これらの高分子界面活性剤は、2種以上併用することも可能である。
【0091】
上記の各高分子界面活性剤の分散インク全量に対する添加量としては、0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.3〜5質量%である。配合量が0.01質量%に満たないとサスペンションの小粒径化が困難であり、10質量%を超えるとサスペンションの粒径が増大したりサスペンション安定性が低下し、ゲル化するおそれがある。
【0092】
防腐剤・防黴剤としては、芳香族ハロゲン化合物(例えば、Preventol CMK、クロロメチルフェノール等)、メチレンジチオシアナート、含ハロゲン窒素硫黄化合物、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(例えば、PROXEL GXL)などが挙げられるが、本発明を実施する場合、これらに限定されるものではない。
【0093】
インク中を安定に保つために、インク中にpH調整剤を添加してもかまわない。pH調整剤としては、塩酸や酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を水など薄めたりそのまま使用したりできる。
【0094】
また、上記消泡剤としては、特に制限なく、市販品を使用することができる。そのような市販品としては、例えば、信越シリコーン社製のKF96、66、69、KS68、604、607A、602、603、KM73、73A、73E、72、72A、72C、72F、82F、70、71、75、80、83A、85、89、90、68−1F、68−2F(商品名)等が挙げられる。これら化合物の配合量に特に制限はないが、本発明に係るインク中に、0.001〜2質量%配合されることが好ましい。該化合物の配合量が0.001質量%に満たないとインク調製時に泡が発生し易く、又、インク内での小泡の除去が難しく、2質量%を超えると泡の発生は抑えられるものの、印字の際、インク内でハジキが発生し印字品質の低下が起こる場合があるので、上記範囲内とすることが好ましい。
【0095】
次に、本発明のインクの製造において用いられる乳化方法について説明する。本発明のインクは、例えば、コアとなる色材粒子の製造において、各種の乳化法を用いることができる。それらの乳化法は、例えば、「機能性乳化剤・乳化技術の進歩と応用展開 シー エム シー」の86ページの記載にまとめられている。本発明においては、特に、染料コアの形成には超音波、高速回転せん断、高圧による乳化分散装置を使用することが好ましい。
【0096】
超音波による乳化分散では、いわゆるバッチ式と連続式の2通りが使用可能である。バッチ式は、比較的少量のサンプル作製に適し、連続式は大量のサンプル作製に適する。連続式では、たとえば、UH−600SR(株式会社エスエムテー製)のような装置を用いることが可能である。このような連続式の場合、超音波の照射時間は、分散室容積/流速×循環回数で求めることができる。超音波照射装置が複数ある場合は、それぞれの照射時間の合計としてもとめられる。超音波の照射時間は実際上は10000秒以下である。また、10000秒以上必要であると、工程の負荷が大きく、実際上は乳化剤の再選択などにより乳化分散時間を短くする必要がある。そのため10000秒以上は必要でない。さらに好ましくは、10秒以上、2000秒以内である。
【0097】
高速回転せん断による乳化分散装置としては、「機能性乳化剤・乳化技術の進歩と応用展開 シー エム シー」の255〜256ページに記載されているような、ディスパーミキサーや、251ページに記載されているようなホモミキサー、256ページに記載されているようなウルトラミキサーなどが使用できる。これらの型式は、乳化分散時の液粘度によって使い分けることができる。これらの高速回転せん断による乳化分散機では、攪拌翼の回転数が重要である。ステーターを有する装置の場合、攪拌翼とステーターとのクリアランスは通常0.5mm程度で、極端に狭くはできないので、せん断力は主として攪拌翼の周速に依存する。周速が5m/S以上150m/S以内であれば本発明の乳化・分散に使用できる。周速が遅い場合、乳化時間を延ばしても小粒径化が達成できない場合が多く、150m/Sにするにはモーターの性能を極端に上げる必要があるからである。さらに好ましくは、20〜100m/Sである。
【0098】
高圧による乳化分散では、LAB2000(エスエムテー社製)などが使用できるが、その乳化・分散能力は、試料にかけられる圧力に依存する。圧力は104kPa〜5×105kPaの範囲が好ましい。また、必要に応じて数回乳化・分散を行い、目的の粒径を得ることができる。圧力が低すぎる場合、何度乳化分散を行っても目的の粒径は達成できない場合が多く、また、圧力を5×105kPaにするためには、装置に大きな負荷がかかり実用的ではない。さらに好ましくは5×104kPa〜2×105kPaの範囲である。
【0099】
これらの乳化・分散装置は単独で用いてもよいが、必要に応じて組み合わせて使用することが可能である。コロイドミルや、フロージェットミキサなども単独では本発明の目的を達成できないが、本発明の装置との組み合わせにより、短時間で乳化・分散を可能にするなど本発明の効果を高めることが可能である。
【0100】
本発明のインクセットを吐出して画像形成を行う際に、使用するインクジェットヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。又吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(R)型等)等など何れの吐出方式を用いてもよい。
【0101】
(画像形成方法)
本発明の画像形成方法について説明する。
【0102】
本発明の画像形成方法においては、本発明のインクセットを装填したプリンター等により、デジタル信号に基づきインクジェットヘッドよりインクを液滴として吐出させ、インクジェット記録媒体上に付着させることが好ましい。
【0103】
インクジェット記録媒体としては、例えば、普通紙、コート紙、キャストコート紙、光沢紙、光沢フィルム、OHPフィルムのいずれも使用することができ、中でも、例えば、支持体上に多孔質層が形成されている、いわゆる空隙層を有するインク吸収層を有する記録媒体が好ましい。上述した支持体の素材或いは形状に特に限定されるものではなく、例えば、シート状に形成されたもの以外に立体的な構造を有するものであってもよい。
【0104】
【実施例】
以下に、合成例、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0105】
実施例1
《ポリマーの合成》
(ポリマーP−1〜P−5の合成)
下記の方法に従って、アクリル重合体、スチレン−アクリル重合体であるポリマーP−1〜P−5を合成した。
【0106】
3リットルの四つ口フラスコに、滴下装置、温度計、窒素ガス導入管、撹拌装置及び還流冷却管を付し、酢酸エチル1000gを加熱して、温度を80℃に調整し、窒素ガスを導入しながら、これに下記に記載の組成割合からなるモノマーを総量が1000gとなるように秤量し、更にN,N′−アゾビスイソバレロニトリル20gを前記モノマーに加えた混合液を、2時間かけて滴下し、同温度にて5時間反応させた後、溶剤を減圧留去して固形分50%のポリマーP−1〜P−5の溶液を調製した。
【0107】
P−1のモノマー組成(質量%):スチレン/ステアリルメタクリレート/アセトアセトキシメタクリレート=50/20/30
P−2のモノマー組成(質量%):メチルメタクリレート/ステアリルメタクリレート/アセトアセトキシメタクリレート=50/20/30
P−3のモノマー組成(質量%):メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート=80/20
P−4のモノマー組成(質量%):スチレン/ステアリルメタクリレート/アセトアセトキシメタクリレート/ジメチルアミノエチルメタクリレート=50/15/30/5
P−5のモノマー組成(質量%):スチレン/ステアリルメタクリレート/アセトアセトキシメタクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート=50/15/30/5
(ポリマーP−6の合成)
特開2001−131454号公報の実施例1に記載の方法に従って、下記の組成からなるモノマーを用いて、ポリマーP−6を合成した。
【0108】
P−6のモノマー組成(質量%):ジメチルテレフタレート/5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルエステル/エチレングリコール/トリシクロデカンジメタノール=180/10/130/25
(ポリマーP−7)
ポリビニルピロリドンをポリマーP−7とした。
【0109】
(ポリマーP−8の合成)
特開平11−61017号公報の製造例1に記載の方法に従って、下記の組成からなるモノマーを用いて、ポリマーP−8を合成した。
【0110】
P−8のモノマー組成(質量%):t−ブチルメタクリレート/ポリエチレングリコールメタクリレート/アクリル酸/シリコンマクロマーFM−0711/マクロマーAN−6=55/15/15/10/5の中和物
《着色微粒子分散液の調製》
〔着色微粒子分散液CP−1の調製:本発明〕
クレアミックスCLM−0.8S(エムテクニク(株)社製)のポットに、12gの染料Y−1(A:染料)、固形分換算12gのポリマーP−1(B:ポリマー)及び120gの酢酸エチルを入れ、攪拌して染料Y1を完全溶解させて染料溶液を調製した。次いで、純水に6gの反応性乳化剤KH−05(第一工業製薬社製)(C:乳化剤)を加えて総量を400gとし、これを上記染料溶液に添加した後、回転型攪拌機を用いて回転数20000rpmで5分間乳化した。その後、減圧下で酢酸エチルを除去し、コア着色微粒子分散液を得た。
【0111】
このコア着色微粒子分散液を3頭のセパラブルフラスコに移し、フラスコ内を窒素ガスで置換した後、ヒーターを付して80℃に加温した。これに、5gのメタクリル酸メチル(D:シェルモノマー組成)及び0.4gのN,N′−アゾビスイソバレロニトリル(AIVN E:開始剤)の混合液を1時間かけて滴下し、反応性乳化剤と共重合反応させて、シェルを形成した。更に、6時間反応させて本発明に係るコアシェル型の着色微粒子分散液CP−1を得た。
【0112】
〔着色微粒子分散液CP−2〜CP−12の調製:本発明〕
上記着色微粒子分散液CP−1の調製において、A:染料、B:ポリマー、C:乳化剤、D:シェルモノマー組成、E:開始剤を表1に記載の組み合わせに変更した以外は同様にして、本発明に係るコアシェル型の着色微粒子分散液CP−2〜CP−12を調製した。
【0113】
〔着色微粒子分散液CP−13〜CP−20の調製:比較例〕
上記着色微粒子分散液CP−1の調製において、A:染料、B:ポリマー、C:乳化剤、D:シェルモノマー組成、E:開始剤を表1に記載の組み合わせに変更した以外は同様にして、比較品のコアシェル型の着色微粒子分散液CP−13〜CP−20を調製した。
【0114】
〔体積平均粒径の測定〕
上記調製した各着色微粒子分散液を1000倍に希釈した後、マルバーン社製ゼータサイザー1000を用いて、体積平均粒径(一次粒径)の測定を行い、得られた結果を表1に示す。
【0115】
表1より明らかなように、本発明に係る着色微粒子は、比較の着色微粒子に対し、非常に小粒径の粒子が得られていることを確認でき、粒子表面での光散乱が少なく、後述の方法でインクを調製し、公知の方法に従って形成画像の光沢性、透明性の評価を行った結果、いずれも特性にも優れていることを確認することができた。
【0116】
【化4】
【0117】
【化5】
【0118】
【化6】
【0119】
【表1】
【0120】
なお、上記表1に記載の略称及び各添加剤の詳細は、以下の通りである。
Y:イエロー
M:マゼンタ
C:シアン
Bk:ブラック
KH−05:アクアロンKH−5(第一工業製薬社製)
KH−10:アクアロンKH−10(第一工業製薬社製)
KH−20:アクアロンKH−20(第一工業製薬社製)
HS−10:アクアロンHS−10(第一工業製薬社製)
NE−10:リアソープNE−10(旭電化工業社製)
SE−10:リアソープSE−10(旭電化工業社製)
SDS:ラウリル硫酸ナトリウム
ST:スチレン
MMA:メタクリル酸メチル
HEMA:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル
AIVN:N,N′−アゾビスイソバレロニトリル
AIBN:α,α′−アゾビスイソブチロニトリル
KPS:過硫酸カリウム
〔着色微粒子分散液RCP−1〜RCP−5の調製:比較例〕
上記調製した本発明に係る着色微粒子分散液は、好ましくは樹脂の主要成分としてスチレン重合体、またはスチレン−アクリル重合体を使用したものであるが、上記の本発明に係る上記着色微粒子分散液の比較となる着色微粒子分散液RCP−1〜RCP−5を以下の方法で調製した。
【0121】
(着色微粒子分散液RCP−1の調製)
前記調製したポリマーP−6で表されるポリエステル樹脂を100g(F:ポリマー)、メチルエチルケトンを150g、テトラヒドロフランを150g、染料Y1を10g(A:染料)混合した後、水600gを添加し混合した。次いで、減圧下で各溶剤を留去した後、水を加えて固形分濃度20質量%のコア型着色微粒子分散液RCP−1を得た。
【0122】
(着色微粒子分散液RCP−2の調製)
上記着色微粒子分散液RCP−1の調製において、A:染料の種類を表2に記載のように変更した以外は同様にして、コア型着色微粒子分散液RCP−2を調製した。
【0123】
(着色微粒子分散液RCP−3の調製)
N,N−ジメチルホルムアミドの80gに、ポリマーP−7であるポリビニルピロリドンの20g(F:ポリマー)、染料Y1(A:染料)の2.7gを添加し、80℃で溶解させた。減圧下で溶剤を留去して着色樹脂を得た。この着色樹脂を粉末にした後10g採り、水500gの中に攪拌下で徐々に添加してコア型着色微粒子分散液RCP−3を得た。
【0124】
(着色微粒子分散液RCP−4の調製)
前記ポリマーP−8(F:ポリマー)の50gに、トルエンを250g及び染料としてオイルイエロー129(A:染料 アゾ系イエロー染料:オリエント化学社製)の50gを溶解させ、これにイオン交換水を3kg、エマールを10g(花王社製界面活性剤)加えてマイクロフルイタイザーで乳化し、減圧下で溶剤を除去した後、固形分濃度を10質量%にしてコア型着色微粒子分散液RCP−4を得た。
【0125】
(着色微粒子分散液RCP−5の調製)
ドデシル硫酸ナトリウムを2g、反応性界面活性剤ニューフロンティアS510(第一工業製薬社製)を4g、イオン交換水を200g、n−ブトキシメチルアクリルアミドを10g混合した後、n−ブトキシメチルアクリルアミドの90g、重合開始剤としてAIVNの0.5g、エチレングリコールジメタクリレートの1g、オラゾールレッドG(A:染料 含金アゾ染料:チバガイギー社製)20gを含む混合液を滴下し、コア着色微粒子分散液を得た。
【0126】
更に、これにヒドロキシエチルメタクリレートを5g及び重合開始剤としてAIVNを0.1g含む混合液を、60℃で8時間反応させてコアシェル型着色微粒子分散液RCP−5を得た。
【0127】
【表2】
【0128】
《インクの調製》
下記に示す方法に従って、インクI−1〜I−25を調製した。
【0129】
(インクI−1の調製)
上記調製した着色微粒子分散液CP−1を50質量%、エチレングリコールを25質量%、グリセリンを5質量%、オルフィンE1010(日信化学製)を0.5質量%、及び防腐剤Proxel GX(Avecia社製)を0.1質量%混合し、純水を加えて100質量%として、次いで、0.8μmのメンブレンフィルターによって濾過し、ゴミ及び粗大粒子を除去してインクジェット用インクであるインクI−1を調製した。
【0130】
(インクI−2〜I−25の調製)
上記インクI−1の調製において、着色微粒子分散液の種類及び添加量を表3に記載のように変更した以外は同様にして、インクI−2〜I−25を調製した。
【0131】
《インクの評価》
(インク保存性の評価)
上記調製した各インクについて、調製直後のインク(基準インク)と、ガラス瓶に入れ密封して60℃で1週間保管したインク(強制劣化インク)とを用意し、それぞれのインクを1000倍に希釈した後、ゼータサイザー1000(マルバーン社製)の散乱強度分布測定により5回測定し、測定値を算術平均し、各平均粒径を測定し、下式に従い粒径変動率(%)を求め、これをインク保存性の尺度とした。数値が100に近いほどインク保存性に優れていることを表す。
【0132】
粒径変動率=強制劣化インクの平均粒径/基準インクの平均粒径×100(%)
(濾過性の評価)
上記調製した各インクを、ガラス瓶に入れ密封して60℃で1週間保管した後に、10mlを採取し0.45μmのセルロースアセテートメンブランフィルター濾過を行い、全量濾過できたものを◎、半量以上濾過できたものを○(許容レベル)、それ以下のものを×(不可レベル)とした。
【0133】
《インク画像の形成及び評価》
(吐出安定性の評価)
各インクを純正カラーインクカートリッジに詰めてインクジェットプリンターCL−750(セイコーエプソン社製)で、A4大のページに1cm×10cmのウェッジチャートを間隔を空けて10個有する画像をプリンターで連続10枚プリントして状態を観察し、下記のようにランク評価した。
【0134】
◎:出射状態に変化が見られない(良好)
○:斜め出射が見られるが、インク欠がない(許容)
△:インク欠が概ね10%程度発生
×:インク欠が概ね数十%発生
本発明では、ランク◎、○が実用上可であると判断した。
【0135】
(彩度の評価)
各インクを純正カラーインクカートリッジに詰めて、インクジェットプリンターCL−750(セイコーエプソン社製)を用いて、インクジェットペーパー フォトライクQP(コニカ(株)製)に濃度を0%から100%までの10段階に変化させた画像サンプル(ウェッジ)をプリンタドライバーをオフにしてプリントして、画像の形成を行った。
【0136】
得られた各画像の最高濃度部分について、X−Rite900濃度計(日本平板機材製)を用いて、L*a*b*を測色し、以下の基準で彩度の評価を行った。
【0137】
〈イエローインク〉
b*として120以上が○、90以上、120未満が△、90未満が×
〈マゼンタインク〉
a*として75以上が○、70以上、75未満が△、70未満が×
〈シアンインク〉
a*、b*が共に−35未満が○、−30未満、−35以上が△、−30以上が×
〈ブラックインク〉
a*、b*が共に10未満が○、10以上、20未満が△、20以上が×
(耐光性の評価)
上記彩度の評価で作成した反射濃度が1.0付近の画像について、試験機として低温XeウェザーメータXL75(スガ試験機製)を用いて行い、照度70000Luxで7日間の光照射を行い、照射前後での反射濃度をX−Rite900濃度計(日本平板機材製)を用いて、反射濃度残存率(光照射後の反射濃度/光照射前の反射濃度×100)を測定し、下記の基準に則り耐光性の評価を行った。なお、反射濃度が1.0に満たない試料については、最高濃度部の反射濃度変化を測定した。
【0138】
◎:反射濃度残存率が85%以上
○:反射濃度残存率が70〜85%未満
△:反射濃度残存率が50〜70%未満
×:反射濃度残存率が50%未満
以上により得られた、各評価結果を表3に示す。
【0139】
【表3】
【0140】
表3から明らかなように、本発明のインクセットに用いられる染料と本発明に好ましいポリマーを用いて調製したコアシェル構造の着色微粒子を含むインクI−1〜I−12はインク保存性、濾過性に優れ、かつ形成された画像の彩度、耐光性にも優れたバランスのよいインクであることが分かる。
【0141】
この結果は、本発明に係る着色微粒子の色材とコアポリマーの相溶性の良さ、シェルポリマーによる被覆の完成度が高いこと、及びコアシェル構造に由来する耐溶剤性が高いことに由来するものと推測される。
【0142】
一方、比較の染料を用いたインクI−13〜20ではコアシェル構造であっても相溶性が低いために、インク保存性が劣るか、あるいは彩度、耐光性のバランスが劣る結果であった。また、シェル化をしていない着色微粒子、あるいは染料存在下でモノマーを重合して調製した着色微粒子を用いたインクI−21〜I−25では、インク溶剤耐性が不十分で、インク保存性、吐出安定性や彩度、耐光性が劣るインクであった。
【0143】
実施例2
《インクセットの作製》
実施例1で調製した各インクより、表4に記載の組み合わせで、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク及びブラックインクからなるインクセットIS−1〜IS−3を作製し、色再現性、耐光性(色差)及び光沢性の評価を行った。なお、表4に記載の染料濃度比は、それぞれシアンインクの染料濃度を1.00とし、それに対する比で表示した。
【0144】
(色再現性の評価)
上記各インクセットを純正インクカートリッジに詰め替えて、セイコーエプソン社製インクジェットプリンター(型番CL−750C)に装填し、コニカフォトジェットペーパー Photolike QP 光沢紙(コニカ株式会社製)に純色色再現チャートをプリントし、色再現性の評価を行った。同時に、CL−750Cの純正インク(染料インク)を用いて同一の画像をプリントした。
【0145】
得られた純色色再現チャート画像を、X−Rite900濃度計(日本平板機材製)で測色し、明度40におけるイエロー、レッド、マゼンタ、ブルー、シアン、グリーンの最大彩度を示す部分のプロットを面積換算し、比較であるCL700純正インクにより得られた画像の値を100とした時の面積比%で表し、これを色再現性の尺度とした。
【0146】
(耐光性の評価)
上記色再現性の評価で作成したY、M、C、Kの各色のプリントを、一週間、7万luxのキセノンフェードメーターで光照射した後、色の劣化を色差ΔE(光照射前のL*a*b*と光照射後のL*a*b*との色差)として求めた。表4には、Y、M、C、Kの各色差ΔEの平均値(ΔE1)と、最大ΔEと最小ΔEとの差(ΔE2)を記載した。
【0147】
(光沢性の評価)
各インクセットを純正インクカートリッジに詰め替えて、インクジェットプリンターMC−2000(セイコーエプソン社製)に装填し、インクジェットペーパー フォトライクQP(コニカ(株)製)にプリンタドライバーをオフにしてプリントした。光沢性評価用のプリント画像は、3cm×3cmの大きさで濃度80%の各単色パッチを使用した。
【0148】
上記作成した各単色パッチを用いて、一般の20人の被験者により目視評価を行い、以下の基準により点数をつけた後、全色の平均を計算した。
【0149】
1:正面からみても、斜めから見ても十分な光沢感があると判断した人が10人以上(良好)
2:正面から見たときのみ十分な光沢感があると判断した人が10人以上(許容)
3:十分な光沢感がないと判断した人が10人以上
以上により得られた結果を表4に示す。
【0150】
【表4】
【0151】
表4より明らかなように、本発明のインクセットIS−1、IS−2は染料インク以上の色再現域を示したが、最適な組み合わせでないIS−3では各色間の色再現域が小さくなっていることが分かる。
【0152】
また、耐光性の評価において、本発明のインクセットIS−1、IS−2では平均ΔE(ΔE1)から判断しても、全体的に色変動が小さく、色間の差が少ないことがわかるが、最適な組み合わせでないIS−3では各色間の色変動が大きいことが分かる。
【0153】
また、光沢性の評価においては、本発明のインクセットIS−1、IS−2では比較のIS−3に比べて光沢が高いことが分かる。これは、本発明に係る着色微粒子が光沢に優れていることを表しており、本発明の着色微粒子が非常に小粒径で、かつ分散安定である性質を反映したものと考えられる。
【0154】
【発明の効果】
本発明により、着色微粒子の分散安定性、インクの吐出安定性に優れ、得られた画像の光沢性及び色再現性が良好で、かつ退色変化でのカラーバランスの崩れが少ないインクジェット用インクセット及びそれを用いた画像形成方法を提供することができた。
Claims (10)
- イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各インクから構成されるカラーインクジェット用インクセットにおいて、少なくともイエロー、マゼンタ及びシアンの各インクが、それぞれ色材とポリマーからなる着色微粒子を含有し、イエローインクの主たる色材がキノフタロン構造の油溶性イエロー染料であり、マゼンタインクの主たる色材がアゾ構造の油溶性マゼンタ染料であり、シアンインクの主たる色材が銅フタロシアニン構造の油溶性シアン染料であることを特徴とするインクジェット用インクセット。
- 前記キノフタロン構造の油溶性イエロー染料が下記一般式(1)で表される化合物であり、前記アゾ構造の油溶性マゼンタ染料が下記一般式(2)で表される化合物であり、かつ銅フタロシアニン構造の油溶性シアン染料が下記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする請求項1記載のインクジェット用インクセット。
- 前記イエローインク中のキノフタロン構造の油溶性イエロー染料の含有比率(質量%)をY、前記マゼンタインク中のアゾ構造の油溶性マゼンタ染料の含有比率(質量%)をM、前記シアンインク中の銅フタロシアニン構造の油溶性シアン染料の含有比率(質量%)をCとしたとき、下式(1)及び(2)で表される条件を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット用インクセット。
式(1)
0.7≦Y/C≦1.0
式(2)
0.6≦M/C≦1.0 - 前記ブラックのインクが、色材とポリマーからなる着色微粒子を含有し、該色材がアゾ構造の油溶性ブラック染料であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット用インクセット。
- 前記ブラックのインクが、色材とポリマーからなる着色微粒子を含有し、該色材がイエロー、マゼンタ及びシアンの染料を混合したものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット用インクセット。
- 前記着色微粒子を構成するポリマーが、アクリル重合体またはスチレン−アクリル重合体を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット用インクセット。
- 前記着色微粒子が、コアシェル構造であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット用インクセット。
- 前記着色微粒子が解離性基を有することを特徴とする請求項6または7に記載のインクジェット用インクセット。
- 前記着色微粒子が、コアポリマーと染料とを混合分散させた後、反応性乳化剤を用いてモノマーを共重合してシェル化されたことを特徴とする請求項8記載のインクジェット用インクセット。
- デジタル信号に基づき、インクジェットヘッドより請求項1〜9のいずれか1項に記載のインクジェット用インクセットを液滴として吐出させ、インクジェット記録媒体に付着させることを特徴とする画像形成方法。
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JP2002283068A JP2004115709A (ja) | 2002-09-27 | 2002-09-27 | インクジェット用インクセットとそれを用いた画像形成方法 |
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JP2013023529A (ja) * | 2011-07-19 | 2013-02-04 | Canon Inc | マイクロカプセル化顔料分散液の製造方法、及びインクジェット用インクの製造方法 |
-
2002
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