JP2004113166A - ハロペルオキシダ−ゼ活性の安定化方法 - Google Patents

ハロペルオキシダ−ゼ活性の安定化方法 Download PDF

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和泉 好計
Takashi Oshiro
大城 隆
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Abstract

【課題】本発明はハロペルオキシダ−ゼの安定化を促進し、産業的応用に有用となる熱安定性の向上を目的とする。
【解決手段】ハロペルオキシダ−ゼ中に2価の金属カチオンおよびバナジウムをサブユニットあたり1分子づつ含有することを特徴とするハロペルオキシダ−ゼ、そのハロペルオキシダ−ゼを含有する調製物中に2価の金属カチオンを存在させることを特徴とするハロペルオキシダ−ゼの安定化方法。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハロペルオキシダ−ゼ活性の安定化に関するものである。さらに詳しく述べると、本発明は、蛋白質のヨ−ド化反応、ステロイドのハロゲン化反応、ハロヒドリンの合成反応などのハロペルオキシダ−ゼ活性の加熱処理などによる低下を抑制する方法に関するものである。さらに本発明は、これらの活性低下を抑制する安定化方法による安定化ハロペルオキシダ−ゼの調製方法に関するものであり、その調製法によるハロペルオキシダ−ゼの提供に関するものでる。
【0002】
【従来の技術】
自然界において、有機化合物にハロゲンを導入する反応の殆どは、ハロペルオキシダ−ゼを触媒として過酸化水素に依存していることが知られている。
【0003】
【化1】
2AH +  2X +  H → 2AX +  2H
(式中、AHは親核性化合物、Xは、Cl,Br,Iのいずれかのハライドイオンである。)
【0004】
1980年半ば、数種の微生物においても、クロラムフェニコ−ル、クロロテトラサイクリン、カルダリオマイシン、ピロ−ルニトリン等の有用な有機ハロゲン抗生物質の生産菌にハロペルオキシダ−ゼが検出され(大城ら、化学と生物、32(1)、35,1994、P.D.Shaw et al.,J.Biol.Chem.,236,1626(1961),K.−H.van Pee etal,FEMS Lett.,173,5,1984,K.−H.van Pee et al,J.Gen.Microbiol.,131,1911,1985,K.−H.van Pee et al,Biol.Chem.Hoppe−Seyer,368,1225,1987)、これらを含めた微生物由来のハロペルオキシダ−ゼの研究が盛んに行われている。
【0005】
ハロペルオキシダ−ゼは、このように微生物において抗生物質の生産を触媒する酵素であることが知られているが、さらには当該酵素を用いて合成物質を基質にして種々の合成化合物を合成する研究が進められている。例えば、蛋白質のヨ−ド化反応(Methods in Enzymology,107,445,1983)、ステロイド等のハロゲン化反応(Tetrahedron Letter,37,4057,1968,N.Itoh et al.,Eur.J.Biochem.,263,13725,1988)、ハロヒドリンの合成反応(J.Geigett et al.,Appl.Environ.Microbiol.,45,366,1983)等の触媒としての応用の範囲が広がりつつある。
【0006】
一方、近年海洋環境中にも数多くの有機ハロゲンが存在し、中でも海藻中に極めて多種類のハロゲン化合物が含まれ、多くの海藻がハロペルオキシダ−ゼを生産していることが明らかになった。(W.D.Hewson et al.,J.Phycol.,16,340,1980,H.Yamada et al.,Agric.Biol.Chem.,49,2961,1985,N.Itoh,Biochem.Int.,15,27,1987)
これらの生理的意義は、海洋生態学の観点からのみならず、応用的観点からも非常に興味深いものである。ハロゲン化合物は抗菌性が強いため自己防御物質あるいは忌避物質として、海藻の生存戦略としての重要な意義を持っていると考えられる。また、生産されたハロゲン化合物が他の生物に対する情報伝達物質として働いている可能性についての研究も報告されてきている。例えば、ブロモメタンがウニやアワビなどの海洋性植食動物幼生の着底、変態誘起をする現象が見出されている。(K. Taniguchi et al,Fisheries Sci.,60,795−796,1994)
【0007】
これら海藻由来のハロペルオキシダ−ゼについても、酵素科学的性質、遺伝子科学的情報、及び、蛋白質科学的性質が解明されてきており、遺伝子工学的なハロペルオキシダ−ゼの供給の可能性が報告されている。また、その酵素科学的性質の解析の中から、有機溶媒に対して安定性が高いという報告がなされている。(E.de Bore et al.,Biotechnol.  Bioeng.,30,607,1987)しかしながら、その他の安定性についての解析及びさらなる安定性の向上についての検討はなされていないのが現状である。(N.Itoh et al.,Biochem. Biophys. Research Comm.,131,428,1985,特開昭61−242577、N.Itoh et al.,Eur.J.Biochem.,263,13725,1988,M. Shimonishi et al.,FEBS Letters,428,105,1998,特開平10−248581、T.Ohshiro et al.,Phytochemistry,60,595,2002,D.J.Sheffield.  et al.,Phytochemistry,32,21,1993,Isupov M.N.et al.,J.  Mol. Biol.,299,1035,2000,J.N.Carter et al,J.Inorg. Biochem.,91,59,2002,PCT WO01/53494)
【0008】
前述のように、ハロペルオキシダ−ゼは多くの有用なハロゲン化合物を製造する触媒として有用であるが、かかる目的を達成する為には、産業応用に耐え得る安定した酵素活性の発揮が期待される。
【0009】
【特許文献1】特開昭61−242577
【0010】
【特許文献2】特開平10−248581
【0011】
【特許文献3】PCT WO01/53494
【0012】
【非特許文献1】大城ら、化学と生物、32(1)、35,1994
【0013】
【非特許文献2】P.D.Shaw et al.,J.Biol.Chem.,236,1626(1961)
【0014】
【非特許文献3】K.−H.van Pee et al,FEMS Lett.,173,5,1984
【0015】
【非特許文献4】K.−H.van Pee et al,J.Gen.Microbiol.,131,1911,1985
【0016】
【非特許文献5】K.−H.van Pee et al,Biol.Chem.Hoppe−Seyer,368,1225,1987
【0017】
【非特許文献6】W.D.Hewson et al.,J.Phycol.,16,340,1980
【0018】
【非特許文献7】H.Yamada et al.,Agric.Biol.Chem.,49,2961,1985
【0019】
【非特許文献8】N.Itoh,Biochem.Int.,15,27,1987
【0020】
【非特許文献9】K. Taniguchi et al,Fisheries
Sci.,60,795−796,1994
【0021】
【非特許文献10】E.de Bore et al.,Biotechnol.  Bioeng.,30,607,1987
【0022】
【非特許文献11】N. Itoh et al.,Biochem. Biophys. Research Comm.,131,428,1985
【0023】
【非特許文献12】N. Itoh et al.,Eur.J.Biochem.,263,13725,1988
【0024】
【非特許文献13】M. Shimonishi et al.,FEBS Letters,428,105,1998
【0025】
【非特許文献14】T. Ohshiro et al.,Phytochemistry,60,595,2002
【0026】
【非特許文献15】D.J. Sheffield et al.,Phytochemistry,32,21,1993
【0027】
【非特許文献16】M.N. Isupov et al.,J.  Mol. Biol.,299,1035,2000
【0028】
【非特許文献17】J.N. Carter et al,J.Inorg. Biochem.,91,59,2002
【0029】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、産業上実用的な安定性を有するハロペルオキシダ−ゼ、及びそのようなハロペルオキシダ−ゼの安定化方法を提供することにある。
【0030】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく海藻由来のハロペルオキシダ−ゼを精製取得し諸性質を検討してきた。さらには、その遺伝子構造を明らかにし組換え酵素を調製し、天然の海藻からの精製酵素との諸性質を比較検討した。(Ohshiro T. et al.,Phytochemistry,60,595,2002)さらには、X線解析による本酵素の立体構造についても鋭意検討をした(大城ら、2002年度日本農芸化学会大会(3月27日))。
【0031】
検討の結果、至適pH、至適温度、過酸化水素、およびKBrに対する親和性、影響をうける阻害剤の種類は、ほぼ同一であったが、熱安定性については組換え酵素と自然界からの精製酵素が異なることを発見した。また、立体構造の解析の結果、酵素サブユニットあたり1分子のカルシウムが存在していることを明らかにした。(大城ら、2002年度日本農芸化学会大会(3月27日))すなわち、ハロペルオキシダ−ゼの熱安定性の向上には、カルシウムの分子内存在が関係していると考え、カルシウムを含む2価の金属カチオンを酵素分子内に存在させることにより酵素分子の構造が安定し酵素熱安定性が向上すると考えられた。そこで、カルシウムを含む2価の金属カチオンを酵素分子内に効率的に存在させる手段を講じることによって、ハロペルオキシダ−ゼの安定性を向上させうると考えた。
【0032】
これらの研究の成果により、カルシウムを含む2価の金属カチオンがハロペルオキシダ−ゼ酵素分子内に効率的に存在していること、及びカルシウムを含む2価の金属カチオンをハロペルオキシダ−ゼに存在させる方法を見出し、活性の安定化を向上させることに成功し、これにより、本発明を完成した。
【0033】
すなわち、上記目的は、自然界からの採取もしくは遺伝子工学的手法による組換え体調製物からの精製物に対して2価の金属カチオンからなる群より選ばれた少なくとも一種を添加混合すること、もしくは、遺伝子工学的手法による組換え体調製物を、2価の金属カチオンからなる群より選ばれた少なくとも一種を酵素分子内に1分子づつ含有できる程度に豊富な2価の金属カチオンを含有する培地中で培養することを特徴とするハロペルオキシダ−ゼの安定化方法によって達成される。
【0034】
本発明は以下のとおりである。
[1]   2価の金属カチオンおよびバナジウムをサブユニットあたり1分子づつ含有することを特徴とするハロペルオキシダ−ゼ。
[2]    該ハロペルオキシダ−ゼがノンヘム型のハロペルオキシダ−ゼである[1]記載のハロペルオキシダ−ゼ。
[3]   該ハロペルオキシダ−ゼがバナジウム依存型のハロペルオキシダ−ゼである[1]記載のハロペルオキシダ−ゼ。
[4]   該ハロペルオキシダ−ゼがバナジウム依存型のブロモペルオキシダ−ゼである[1]記載のハロペルオキシダ−ゼ。
[5]   該ハロペルオキシダ−ゼがバナジウム依存型のcorallina 属海藻由来のブロモペルオキシダ−ゼである[1]記載のハロペルオキシダ−ゼ。
[6]   該ハロペルオキシダ−ゼがバナジウム依存型のcorallina pilulifera海藻由来のブロモペルオキシダ−ゼである[1]記載のハロペルオキシダ−ゼ。
[7]   該2価金属カチオンが、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン、ラジウムイオンであるアルカリ土類金属イオンからなる群より選ばれた少なくとも1種である[1]記載のハロペルオキシダ−ゼ。
[8]   該2価金属カチオンが、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、マグネシウムイオンからなる群より選ばれた少なくとも1種である[7]記載のハロペルオキシダ−ゼ。
[9]   ハロペルオキシダ−ゼを含有する調製物中に2価の金属カチオンを存在させることを特徴とするハロペルオキシダ−ゼの安定化方法。
[10] ハロペルオキシダ−ゼを含有する調製物が、水性媒体中で2価の金属カチオンを存在させることを特徴とする[9]記載のハロペルオキシダ−ゼの安定化方法。
[11] 該ハロペルオキシダ−ゼがノンヘム型のハロペルオキシダ−ゼである[9]記載のハロペルオキシダ−ゼの安定化方法。
[12] 該ハロペルオキシダ−ゼがバナジウム依存型のハロペルオキシダ−ゼである[9]記載のハロペルオキシダ−ゼの安定化方法。
[13] 該ハロペルオキシダ−ゼがバナジウム依存型のブロモペルオキシダ−ゼである[9]記載のハロペルオキシダ−ゼの安定化方法。
[14] 該ハロペルオキシダ−ゼがバナジウム依存型のcorallina  属海藻由来のブロモペルオキシダ−ゼである[9]記載のハロペルオキシダ−ゼの安定化方法。
[15] 該ハロペルオキシダ−ゼがバナジウム依存型のcorallina pilulifera海藻由来のブロモペルオキシダ−ゼである[9]記載のハロペルオキシダ−ゼの安定化方法。
[16]   該2価金属カチオンが、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン、ラジウムイオンであるアルカリ土類金属イオンからなる群より選ばれた少なくとも1種である[9]記載のハロペルオキシダ−ゼの安定化方法。
[17]   該2価金属カチオンが、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、マグネシウムイオンからなる群より選ばれた少なくとも16種である[9]記載のハロペルオキシダ−ゼの安定化方法。
[18] 該2価金属カチオンの濃度が1mM以上である[9]記載の安定化方法。
【0036】
【発明実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のハロペルオキシダ−ゼ活性の安定化方法の一実施形態を以下の通りに説明する。
本発明におけるハロペルオキシダ−ゼとは、下記式(化1)式のような反応を触媒する酵素であり海藻、微生物及び動植物に含有されるいかなる酵素であっても良い。
【0038】
【化2】2AH +  2X +  H → 2AX +  2H
(式中、AHは親核性化合物、Xは、Cl,Br,Iのいずれかのハライドイオンである。)
【0039】
これらのハロペルオキシダ−ゼを含有する海藻や微生物としては、褐色藻類であるAscophylum nodosum,Fucus distichus,Laminaria saccharina,Macrocystis pyrifera,Ecklonia stolonifera,紅色藻類であるCorallina pilulifera,Corallina officinalis,Laurencia japonica,緑色藻類であるPenicillus capitatus,Ulvella lensなどやカビ類であるCaldariomyces fumago,Curvularia inaequalis,Curvularia vercullosa,Embellisia didymospora,細菌類であるPseudomonas aureofaciens,Pseudomonas pyrrocinia,放線菌であるStreptomyces sureofaciens,Streptomyces phaeochromogenesが代表的なものとして挙げられる。これらの中でも、活性発揮に寄与する補欠分子族としてバナジウムを配位するバナジウム依存型のハロペルオキシダ−ゼが好ましい。
【0040】
本発明におけるハロペルオキシダ−ゼを調製する方法は、自然界から海藻を採取しそれから酵素を単離精製しても、遺伝子工学的にハロペルオキシダ−ゼの構造遺伝子を有する組換え微生物を作成、培養し、培養菌体から酵素を単離精製しても良い。海藻類からの酵素の精製については、海藻を水で洗浄後、ミキサ−、ボ−ルミル、海砂などの機械的方法で破砕し、pH5〜8付近の適当な緩衝液でハロペルオキシダ−ゼを抽出する。ついで抽出液を濾過または遠心分離して、固形物を除去し、得られた粗酵素液を塩析、吸着クロマトグラフィ−、イオン交換クロマトグラフィ−、ゲル濾過などの公知の方法を適宜組み合わせることにより調製される。これについては、N.Itoh  et al.,Biochem. Biophys. Research Comm.,131,428,1985,特開昭61−242577中に例が述べられている。また、遺伝子工学的な組換え菌体の作成については、J.Sambrook,ら著、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.、Cold Spring Harbor Laboratory Press New York,1989年などの一般的な文献に記載されている方法に従い作成することが可能である。また、これらハロペルオキシダ−ゼの発現微生物作成例として、Corallina pilulifera由来のハロペルオキシダ−ゼについては前記の文献に示されている。また、このように微生物発現系については、市販の原核細胞発現系や、真核細胞発現系を用いることも可能である。例としては、原核細胞発現系としてInvitrogen社のpBAD発現システムシリ−ズやpET DirectionalTOPOシステム(2001−2002 Invitrogen社カタログ)、STRATAGENE社のpET Expression System(2002−2003 TOYOBO社カタログ)が挙げられる。また、真核細胞発現系としては、酵母を用いたInvitrogen社のPichia pastoris System,Pichia metanolica Expression System,Saccharomyces cerevisiae Expression,SpECTRATM S.pombe Expression System(2001−2002 invitrogen社カタログ)や、TaKaRa社の酵母を用いたAureobasidinA耐性酵母形質転換システムや、糸状菌を用いたPyrithiamine耐性形質転換システム(2002−2003 TaKaRa社バイオ総合カタログ)などが挙げられる。
【0041】
そして、これら作成された組換え微生物からのハロペルオキシダ−ゼ酵素の調製は、微生物培養、培養菌体の回収、洗浄後、菌体破砕、得られた粗酵素液を塩析、吸着クロマトグラフィ−、イオン交換クロマトグラフィ−、ゲル濾過などの公知の方法を適宜組み合わせることにより調製される。
【0042】
このようにして調製された天然物から精製したハロペルオキシダ−ゼ酵素液については、0.01mMから1000mMのEDTAなどの金属キレ−ト剤、好ましくは0.1mMから100mMの濃度のを含んだEDTAなどの金属キレ−ト剤でpH2〜10、好ましくはpH3〜9の1〜1000mMのクエン酸−リン酸などの適当な緩衝液に対して24時間程度透析する。これにより酵素内部に存在する金属イオンを除去し、次ぎにpH2〜10、好ましくはpH3〜9の1〜1000mMのクエン酸−リン酸などの適当な緩衝液で24時間程度透析を行い、アポ酵素とする。このようにアポ化した酵素を0.001から1000mMのバナジン酸及び0.001から1000mMの様々な2価カチオン、好ましくは、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン、ラジウムイオンであるアルカリ土類金属イオン、より好ましくは、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオと共に0〜100℃好もしくは5から50℃で12時間程度充分に保温する。このようにして調製したハロペルオキシダ−ゼ酵素液を基質と反応させることにより安定化した酵素液を得る。
【0043】
本発明において、ハロペルオキシダ−ゼ反応によるハロゲン化、ハロヒドリン化に使用される基質としては、目的とされる生成物の種類によって異なるが、蛋白質、芳香族化合物、脂肪族化合物が使用される。詳しくは、芳香族化合物として、フェノ−ル、アニソ−ル、シトシン、ウラシル、チオフェン、ピラゾ−ル、脂肪族化合物としては、アルケン類、アルキン類、シクロアルカン類およびベ−タケト酸類等が上げられる。また、上記基質の添加濃度は、0.001から1000mMである。
【0044】
本発明におけるハロペルオキシダ−ゼ反応は、ハライドイオンを基質とし、そのハライドイオンは、Cl,Br,及びIのいずれかが使用される。また、上記基質の添加濃度は、0.001から1000mMである。また、本反応におけるハロゲン化反応及びハロヒドリン化反応における基質である過酸化水素は、過不足無く供給されれば如何なる方法により供給されても良い。また、上記基質の添加濃度は、0.001から1000mMである。
【0045】
また、本発明におけるハロペルオキシダ−ゼによる酸化反応は、基質及び生成する物質の性質に適したpHの範囲内で行われる。本発明において、上記pHの範囲は、3〜13好ましくは4〜11、より好ましくは5から8である。これから、本発明において使用できる酵素を懸濁するための液は、上記pHの範囲に入るものであれば使用できるが、代表例としては、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液及びトリス緩衝液が挙げられる。また、上記した緩衝液以外にも生理食塩水等の塩類溶液を使用してもよい。さらに、反応の間にpHが大きく変動しない場合、あるいはpHをコントロ−ルできる場合には、緩衝液を必ずしも使用する必要はない。
【0046】
本発明における酵素の安定性を比較するための活性測定は、モノクロロジメドンからモノクロロモノブロモジメドンへの変化を290nmの吸光度の減少を測定することにより求める。好ましくは、20μモルの臭化カリウム、2μmolの過酸化水素、60nmolのモノクロロジメドンを含む、0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)の0.98mlと酵素調製液0.02mlを混合し、30℃で反応させ、反応開始後、1分間の290nmにおける吸光度の減少を測定する。対照として酵素溶液もしくは、過酸化水素を含まない系を用いて上記と同様に操作し、得られた吸光度の減少の差を求める。1ユニットを、30℃、1分間、1μmolのモノクロロジメドンを消費する酵素量とする。
【0047】
本発明における酵素の安定性のうち熱安定性を比較測定するための酵素液の調製方法は、上記実施により調製した酵素調製液を、0℃〜100℃の間で、1分間から60分間、好ましくは5分間から30分間、より好ましくは10分間から20分間、水浴もしくはブロックヒ−タ−により加熱処理を行うことである。さらに、種々の2価カチオンの存在の有無、加熱処理の実施、未実施による条件のことなる酵素液についての酵素活性を測定することにより、それぞれの酵素液の活性を測定する。
【0048】
【実施例】
以下実施例をもって本発明をさらに具体的に説明する。本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。特に明記しない限り、以下の実施例において組換え微生物の作成については、Sambrook,J.ら著、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd エd.、Cold Spring Harbor Laboratory Press New York,1989年発行に記載の方法に従った。
【0049】
実施例1〜3
Corallina pilulifera  RNAは、Xingらの方法(Xing et al.,Anal.Biochem.,174,650,1988)により単離した。鳥取県の白兎海岸の浅瀬において海藻Corallina piluliferaを採取し、使用まで−80℃で保存した。凍結乾燥した海藻8.9gを液体窒素存在下でモ−タ−付き組織破壊装置にて破砕し40mlの2% SDS,1%2−メルカプトエタノ−ル、50mM EDTA、150mM Tris−HCl(pH7.5)で2分間懸濁する。グアニジン塩酸を0.8Mになるように添加し激しく混合後、フェノ−ル/クロロフォルム、クロロフォルム抽出を行う。水層に塩化リチウムが3Mになるように添加し、RNAを沈殿させ、遠心分離により回収する。この沈殿を、0.8mlの1% SDS,0.5%2−メルカプトエタノ−ル、25mM EDTA、150mM Tris−HCl(pH7.5)に懸濁し最終濃度が0.5Mになるように酢酸カリウムを添加する。この調製液を再度、フェノ−ル/クロロフォルム、クロロフォルム抽出を行う。水層に塩化リチウムが3Mになるように添加し、RNAを沈殿させ、遠心分離により回収する。この沈殿を、1.2mlの滅菌水に溶解することにより1.3mgの全RNAが調製できた。この全RNAを鋳型として、N末端側にNdeI制限酵素部位をもつプライマ−  BP−1(5‘−TACATATGGGTATTCCAGCTGACAACCTCC−3’)C末端側にNotI制限酵素部位をもつプライマ− BP−2(5‘−GTGCGGCCGCTTAGATCTGGATTGTAGTTC−3’)を用いて、TaKaRa社RT−PCRキットにより、Corallina pilulifera由来のハロペルオキシダ−ゼ構造遺伝子1.8kbを増幅した。次に、Sephaglas BandPrep Kit(Pharmacia社)を用いて、この増幅したハロペルオキシダ−ゼ構造遺伝子をアガロ−スゲルから切りだし精製した。pET21−a(STRATAGENE社)プラスミドベクタ−およびこの精製断片を、制限酵素NdeI及びNotIにより37℃で16時間処理した。そして、これらプラスミド及び精製断片をLigationHigh(東洋紡社)を用いて16℃で16時間反応させ連結した。この連結したプラスミドをE.coli BL21(DE3)(STRATAGENE社)に塩化ルビジウム法により形質転換し組換え微生物E.coli BL21(DE3)/pET21−a/bpoを作製した。
【0050】
得られた形質転換体を、アンピシリンを含むLB培地で培養後、その培養液1/100容量を加えて、37℃で振とう培養し、A600が0.5から1.0に上昇したときに、IPTG(isopropyl−1−thio−beta−D−galactoside)を最終濃度1mMになるように添加して、37℃で16時間2Lの三角フラスコ中で800mlのLB培地を含む2Lの三角フラスコ中、37℃16時間培養後、10、000gで20分間の遠心分離条件により集菌した。回収した培養菌体94g湿重量を1mMバナジン酸を含有するトリス緩衝液(50mM Tris−SO4、pH7.5)中に懸濁し超音波破砕した後、遠心上清を12,000g30分間の遠心分離条件で回収し粗酵素液とした。本粗酵素液を、50mlのトリス緩衝液(50mM Tris−SO4、pH7.5)に懸濁し、100倍容量の同緩衝液で4回以上充分に4℃で透析した。本透析液を、50mM Tris−SO4(pH7.5)で平衡化したDEAE−Sepharose Fast Flowカラム(樹脂量500ml、4.8x29.5cm)に流速150ml/hで負荷し0.2MNaClを含むトリス緩衝液(50mM Tris−SO4、pH7.5)で洗浄後、0.3MNaClを含むトリス緩衝液(50mM Tris−SO4、pH7.5)で溶出を行った。回収した活性を含む画分は遠心型簡易濃縮装置(Centriprep−10、Amicon)と遠心分離機(TOMY TA−6 ロ−タ−、3、000rpm、4℃)により濃縮した。この精製濃縮した溶出液についてハロペルオキシダ−ゼ活性を試験したところ、活性が認められた(参考、M.Shimonishi et al.,FEBS Letters,428,105,1998)。
【0051】
また、上記に調製したCorallina pilulifera  構造遺伝子断片を、N末端側にBamHI制限酵素部位をもつプライマ−  5‘BPOBam(5‘−GAGAGAGGATCCAATTATGGGTATTCCAGCTC−3’)C末端側にXbaI制限酵素部位をもつプライマ− 3‘BPOXba(5‘−GAGAGATCTAGAAATTTAGAAACCGTGTCCA−3’)を用いて、RocheDiagnostics社ExpandHighFidelityPCRsystem PCRキットにより、増幅した。次に、SephaglasBandPrep Kit(Pharmacia社)を用いて、この増幅したハロペルオキシダ−ゼ構造遺伝子をアガロ−スゲルから切りだし精製した。この精製断片を、制限酵素BamHI及びXbaIにより37℃で16時間処理した。そして、これから、1.1kbのBPO BamHI−BamHI断片と0.7kbのBPO BamHI−XbaI断片を作製した。次に、糸状菌クロロペルオキシダ−ゼの発現ベクタ−であるpTNT14(J.Biol.Chem.,274,23820−23827,1999)を制限酵素BamHI及びXbaIにより37℃で16時間処理し、発現ベクタ−部分にBPO 0.7kbのBamHI−XbaI断片をLigationHigh(東洋紡社)を用いて16℃で16時間反応させ連結した。この連結したプラスミドをE.coli JM109(東洋紡社)に塩化ルビジウム法により形質転換し組換え微生物E.coli JM109/pTNT20を作製した。この組換え微生物E.coli JM109/pTNT20から、プラスミドの抽出を行い、制限酵素BamHIにより37℃で16時間処理した。発現ベクタ−部分にBPO 1.1kbのBPO BamHI−BamHI断片をLigationHigh(東洋紡社)を用いて16℃で16時間反応させ連結した。この連結したプラスミドをE.coli JM109(東洋紡社)に塩化ルビジウム法により形質転換し組換え微生物E.coli JM109/pTNT28を作製した。Saccaromyces cerevisiaeのCYC1タ−ミネ−タ−領域0.3kb断片をプラスミドpPICZa(Invitrogen社)から、N末端側にXbaI制限酵素部位をもつプライマ−  5‘PICXba(5‘−GAGAGATCTAGAGTCCCCCTTTTCCTTTGTCG−3’)C末端側にPstI制限酵素部位をもつプライマ− 3‘PICPst(5‘−GAGAGACTGCAGTCCAGCTTGCAAATTAAAGC−3’)を用いて、RocheDiagnostics社ExpandHighFidelityPCRsystem PCRキットにより、増幅した。
【0052】
この増幅断片を、Sephaglas BandPrep Kit(Pharmacia社)を用いて、アガロ−スゲルから切りだし精製した。この精製断片を、制限酵素XbaI及びPstIにより37℃で16時間処理した。組換え微生物E.coli JM109/pTNT28から調製したプラスミドpTNT28を制限酵素XbaI及びPstIにより37℃で16時間処理したのち、Sephaglas BandPrep Kit(Pharmacia社)を用いて、アガロ−スゲルから切りだし精製した。
【0053】
XbaI及びPstIで制限酵素消化した発現ベクタ−pTNT28にXbaI及びPstIで制限酵素消化したCYC1タ−ミネ−タ−領域0.3kb断片をLigationHigh(東洋紡社)を用いて16℃で16時間反応させ連結した。この連結したプラスミドをE.coli JM109(東洋紡社)に塩化ルビジウム法により形質転換し組換え微生物E.coli JM109/pTNT30を作製した。
【0054】
得られたプラスミドpTNT30をSaccaromyces cerevisiae BJ1991に定法により形質転換し酵母発現形質転換株Saccaromyces cerevisiae BJ1991/pTNT30を得た。(参考 T.Ohshiro et al.,Phytochemistry,60,595,2002)
【0055】
Corallina pilulifera由来のブロモペルオキシダ−ゼの遺伝子を組み込んだプラスミドpTNT30をSaccaromyces cerevisiae BJ1991(ATCC208275)に導入した酵母発現形質転換株Saccaromyces cerevisiae BJ1991/pTNT30を寒天2.0%を有する0.67%Yeast NITROGEN BASE w/oAMINO ACIDS,2% Glucose,50μg/ml L−Leu、40μg/ml L−Trpの培地組成を有する培地(以下YGLTと称する)20mlの平板培地に画線接種し、30℃で2日間静地培養した培養することにより種菌株を準備する。プレ−ト上の本Saccaromyces cerevisiae BJ1991/pTNT30を、300mlの三角フラスコに100mlのYGLT培地に白金耳接種し、2日間、30℃で振とう培養し前培養とする。さらに、2Lの坂口フラスコに最終濃度2.5%Yeast extract、2.5%Tryptoneの培地800mlに40%Galactose 100ml及び前培養液 100mlを接種し、30℃で2日間振とう培養し本培養として、増殖が定常期に入るように培養し、一定量の菌体を含む培養液を調製する。この様にして調製された培養液から遠心分離(10、000×g、20分)によって菌体を回収し、必要であれば、水、緩衝液または生理食塩水等で菌体を洗浄する。
【0056】
以下のようにハロペルオキシダ−ゼを精製調製する。精製手順は全て4℃以下で行った。このようにして回収した菌体365gを、トリス緩衝液(50mM Tris−SO4、pH7.4)中に懸濁し、800mlとした。そして、懸濁液を直径0.45〜0.5mmのガラスビ−ズ40〜1000ml、好ましくは200〜500mlを用いてDYNO−MILL(Willy A. Bachofen Manufacturing Engineers Basel 5/Switzerland、Type KDL−Special、容量600ml、3、000rpm、流速200ml/分、2℃)で処理した。菌体懸濁液がDYNO−MILL容器に入ってから完全に出終わるまで1回とし、破砕液上清の280nmの吸光度がほぼ一定になるまで処理を繰り返した。この菌体破砕液を4℃で遠心分離(10、000×g、5〜20分)し上清を無細胞抽出液とした。
【0057】
無細胞抽出液を氷冷しながら、固体硫酸アンモニウムを加えて30%飽和にし、これを4℃で2時間攪拌して、4℃で遠心分離(10、000×g、20分)した。この上清に固体硫酸アンモニウムをさらに加えて60%飽和にした。これを4℃で2時間攪拌して、4℃で遠心分離(10、000×g、20分)した。固体硫酸アンモニウム添加中は、14%アンモニア水溶液を添加しpHを7.0に保持する。個体硫酸アンモニウム60%飽和溶液を4℃で遠心分離(10、000×g、20分)した。そしてその沈殿物を50mlのトリス緩衝液(50mM Tris−SO4、pH7.4)に懸濁し、100倍容量の同緩衝液で4回以上充分に4℃で透析する。
【0058】
固体硫酸アンモニウム60%飽和溶液の遠心分離沈殿物のトリス緩衝液(50mM Tris−SO4、pH7.4)懸濁物の透析処理後液を、50mM Tris−SO4(pH7.4)で平衡化したDEAE−Sepharoseカラム(樹脂量490ml、5x25cm)に流速100ml/hで負荷し0.2MKCl次いで0.3MKClを含むトリス緩衝液(50mM Tris−SO4、pH7.4)で洗浄後、0.4MKClを含むトリス緩衝液(50mM Tris−SO4、pH7.4)でステップワイズ溶出を行った。回収した活性を含む画分は限外濾過装置(MODEL8200、Amicon)と限外濾過膜(YM−10、Amicon)により濃縮後、この濃縮液を100倍容量の同緩衝液で4回以上充分に4℃で透析した。
【0059】
DEAE−Sepharoseカラム後透析処理を行ったハロペルオキシダ−ゼ溶液を、50mM Tris−SO4(pH7.4)で平衡化したQ−Sepharose Fast Flowカラム(樹脂量25ml、1.5x14cm)に流速10ml/hで負荷し0.2MKCl次いで0.3MKClを含むトリス緩衝液(50mM Tris−SO4、pH7.4)で洗浄後、0.4MKClを含むトリス緩衝液(50mM Tris−SO4、pH7.4)でステップワイズ溶出を行った。回収した活性を含む画分は遠心型簡易濃縮装置(Centriprep−10、Amicon)と遠心分離機(TOMY TA−6 ロ−タ−、3、000rpm、4℃)により濃縮した。
【0060】
また、海藻の酵素は、採取後、冷水にて洗浄し、紙タオルなどの間に挟み余分な水分を除去する。その後、500mgの海藻あたり40メッシュの海砂を加えて冷却化で破砕して、4mlの50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.5)で抽出した。その後の操作は、塩析、吸着クロマトグラフィ−、イオン交換クロマトグラフィ−、ゲル濾過などの公知の方法を適宜組み合わせ組換え微生物からの調製と同様に調製した。
【0061】
このようにして調製した天然の海藻由来のハロペルオキシダ−ゼ酵素液及び組換え微生物由来のハロペルオキシダ−ゼ酵素液を10mM EDTAを含んだpH3.8の100mMクエン酸−リン酸緩衝液に対して24時間透析する。これにより酵素内部に存在する金属イオンを除去する。次にトリス緩衝液(50mMTris−SO4、pH7.4)で24時間透析を行い、アポ酵素とした。このようにアポ化した天然の海藻由来のハロペルオキシダ−ゼ酵素及び組換え微生物由来のハロペルオキシダ−ゼ酵素を1mMのバナジン酸のみ、もしくは、1mMのバナジン酸及び1mMのカルシウムと共に30℃で12時間保温しホロ酵素とした。そして、30、40、50、55、60、65、70、75、80、85、90℃で、20分間、湯浴により加熱処理を行った。このような加熱処理を施した酵素液のハロペルオキシダ−ゼ活性をモノクロロジメドンを基質としてモノクロロモノブロモジメドンを生産物として測定した結果を、図1に示す(実施例1)。図1よりカルシウムを含有することにより熱安定性が向上することが示された。
【0062】
次に、アポ化した組換え微生物から調製した酵素液を、1mMバナジン酸およびそれぞれ1mMのカルシウム、ストロンチウム、マグネシウム、アルミニウム、銀の各金属と共に保温することによりホロ化した後、30、40、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100℃で、20分間、湯浴により加熱処理を行った。このような加熱処理を施した酵素液のハロペルオキシダ−ゼ活性をモノクロロジメドンを基質としてモノクロロモノブロモジメドンを生産物として測定した結果を、図2に示す(実施例2)。図2よりカルシウム、ストロンチウム、マグネシウムの添加が熱安定性を向上させることが示された。
【0063】
組換え微生物から調製したハロペルオキシダ−ゼ酵素液を1mMバナジン酸と保温した酵素と天然の海藻から調製したハロペルオキシダ−ゼ酵素について熱安定性を測定した結果を図3に示す。本図3における海藻から調製したハロペルオキシダ−ゼの熱安定性のグラフと図1の1mMのバナジン酸のみでホロ化した天然の海藻由来のハロペルオキシダ−ゼの熱安定性のグラフを比較すると同等であることが示された。これにより、天然の海藻から調製されたハロペルオキシダ−ゼは、熱安定性測定に十分なバナジウムイオンを含有していると考えられた。また、図3に示される1mMバナジン酸と保温した組換え微生物から調製したハロペルオキシダ−ゼ酵素液の熱安定性のグラフと図1の天然の海藻および組換え微生物それぞれから調製し1mMバナジン酸および1mMのカルシウムと保温することによりホロ化したハロペルオキシダ−ゼ酵素液の熱安定性のグラフを比較すると同等であることが示された。これにより、図3に示される組換え微生物から調製し1mMバナジン酸によりホロ化したハロペルオキシダ−ゼ酵素液には、その結晶構造の解析から予想されるように充分なカルシウムイオンが含まれていることが示された(実施例3)。つまり、2価の金属カチオンを含有する適当な天然培地などを用いて組換え微生物などを培養することによりハロペルオキシダ−ゼを調製するかもしくは、天然の海藻からもしくは組換え微生物から調製したハロペルオキシダ−ゼに2価の金属カチオンを存在させることによりハロペルオキシダ−ゼの熱安定性が向上されることが示された。
【0064】
酵素の活性測定は、モノクロロジメドンからモノクロロモノブロモジメドンへの変化を290nmの吸光度の減少を測定することにより求める。20μmolの臭化カリウム、2μmolの過酸化水素、60nmolのモノクロロジメドンを含む、0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)の0.98mlと酵素調製液0.02mlを混合し、30℃で反応させ、反応開始後、1分間の290nmにおける吸光度の減少を測定した。対照として酵素溶液もしくは、過酸化水素を含まない系を用いて上記と同様に操作し、得られた吸光度の減少の差を求めた。1ユニットを、30℃、1分間、1μmolのモノクロロジメドンを消費する酵素量とした。
【0065】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明は、ハロペルオキシダ−ゼ中に2価の金属カチオンおよびバナジウムをサブユニットあたり1分子づつ含有することを特徴とするハロペルオキシダ−ゼ、そのハロペルオキシダ−ゼを含有する調製物中に2価の金属カチオンを存在させることを特徴とするハロペルオキシダ−ゼの安定化方法、及びハロペルオキシダ−ゼを含有する調製物が、水性媒体中で2価の金属カチオンを存在させることを特徴とするハロペルオキシダ−ゼの安定化方法を提供する。これによりハロペルオキシダ−ゼを用いる物質変換反応において、ハロペルオキシダ−ゼの安定化を促進し、産業的応用に有用となる熱安定性の向上ができるようになるものである。
【0066】
また、本発明のハロペルオキシダ−ゼ及びその安定化方法は、ハロペルオキシダ−ゼを含有する調製物中に2価金属カチオンであるカルシウムイオン、マグネシウムイオン、ストロンチウムイオンからなる群より選ばれた少なくとも一種を用いることにより簡便に行われる方法である。
【図面の簡単な説明】
【図1】天然の海藻及び組換え微生物から調製したハロペルオキシダ−ゼにカルシウムイオンを存在させたハロペルオキシダ−ゼの熱安定性を示す図である。
【図2】2価の金属カチオンを存在させたハロペルオキシダ−ゼの熱安定性を示す図である。図中、Vはバナジン酸を、Ag、Al、Sr、Mg、Caはそれぞれ金属カチオンの添加を示す。
【図3】天然の海藻から調製したハロペルオキシダ−ゼ及びバナジン酸と保温した組換え微生物から調製したハロペルオキシダ−ゼの熱安定性を示す図である。図中、Wildは天然の海藻から調製したハロペルオキシダ−ゼを、Recombinantは組換え微生物から調製したハロペルオキシダ−ゼを示し、Vhaバナジン酸添加、Caはカルシウム添加を示す。

Claims (18)

  1. 2価の金属カチオンおよびバナジウムをサブユニットあたり1分子づつ含有することを特徴とするハロペルオキシダ−ゼ。
  2. 該ハロペルオキシダ−ゼがノンヘム型のハロペルオキシダ−ゼである請求項1記載のハロペルオキシダ−ゼ。
  3. 該ハロペルオキシダ−ゼがバナジウム依存型のハロペルオキシダ−ゼである請求項1記載のハロペルオキシダ−ゼ。
  4. 該ハロペルオキシダ−ゼがバナジウム依存型のブロモペルオキシダ−ゼである請求項1記載のハロペルオキシダ−ゼ。
  5. 該ハロペルオキシダ−ゼがバナジウム依存型のcorallina 属海藻由来のブロモペルオキシダ−ゼである請求項1記載のハロペルオキシダ−ゼ。
  6. 該ハロペルオキシダ−ゼがバナジウム依存型のcorallina pilulifera海藻由来のブロモペルオキシダ−ゼである請求項1記載のハロペルオキシダ−ゼ。
  7. 該2価金属カチオンが、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン、ラジウムイオンであるアルカリ土類金属イオンからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1記載のハロペルオキシダ−ゼ。
  8. 該2価金属カチオンが、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、マグネシウムイオンからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項7記載のハロペルオキシダ−ゼ。
  9. ハロペルオキシダ−ゼを含有する調製物中に2価の金属カチオンを存在させることを特徴とするハロペルオキシダ−ゼの安定化方法。
  10. ハロペルオキシダ−ゼを含有する調製物が、水性媒体中で2価の金属カチオンを存在させることを特徴とする請求項9記載のハロペルオキシダ−ゼの安定化方法。
  11. 該ハロペルオキシダ−ゼがノンヘム型のハロペルオキシダ−ゼである請求項9記載のハロペルオキシダ−ゼの安定化方法。
  12. 該ハロペルオキシダ−ゼがバナジウム依存型のハロペルオキシダ−ゼである請求項9記載のハロペルオキシダ−ゼの安定化方法。
  13. 該ハロペルオキシダ−ゼがバナジウム依存型のブロモペルオキシダ−ゼである請求項9記載のハロペルオキシダ−ゼの安定化方法。
  14. 該ハロペルオキシダ−ゼがバナジウム依存型のcorallina  属海藻由来のブロモペルオキシダ−ゼである請求項9記載のハロペルオキシダ−ゼの安定化方法。
  15. 該ハロペルオキシダ−ゼがバナジウム依存型のcorallina pilulifera海藻由来のブロモペルオキシダ−ゼである請求項9記載のハロペルオキシダ−ゼの安定化方法。
  16. 該2価金属カチオンが、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン、ラジウムイオンであるアルカリ土類金属イオンからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項9記載のハロペルオキシダ−ゼの安定化方法。
  17. 該2価金属カチオンが、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、マグネシウムイオンからなる群より選ばれた少なくとも16種である請求項9記載のハロペルオキシダ−ゼの安定化方法。
  18. 該2価金属カチオンの濃度が1mM以上である請求項9記載の安定化方法。
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