JP2004113049A - 常温溶融塩中での生体触媒によるエステル交換反応方法 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、常温溶融塩中での生体触媒によるエステル交換反応方法に関する。本発明は、効率よくエステル化合物を製造し得るエステル交換反応方法を提供するものであり、生体触媒の再使用が可能であるという利点を有し、各種エステル化合物の製造方法として有用である他、ラセミ体アルコールの光学分割方法などとして応用可能である。
【0002】
【従来の技術】
従来、室温で液状の塩であり、蒸気圧がほぼ0であり、高温下においても蒸発しない常温溶融塩の物理的・化学的特徴に着目し、常温溶融塩中で生体触媒によるエステル交換反応を行う試みがなされており、例えば、(1)常温溶融塩として、一般式
【0003】
【化2】
【0004】
(式中、X1 は、PF6 、BF4 、CF3 COO、CF3 SO3 またはSbF6 を表す。)で示されるイミダゾリウム塩からなる常温溶融塩を用い、アシルドナーとして酢酸ビニルを用いる方法(非特許文献1参照)、(2)常温溶融塩として、一般式
【0005】
【化3】
【0006】
(式中、X2 は、PF6 またはBF4 を表す。)で示されるイミダゾリウム塩からなる常温溶融塩を用い、アシルドナーとしてブタン酸エチルを用いる方法(非特許文献2参照)などが知られている。
【0007】
【非特許文献1】
ケミストリー・レターズ(Chem.Lett.)、2001年、262頁、テーブル1
【非特許文献2】
オルガニック・レターズ(Org.Lett.)、2000年、2巻、4190頁、図2および表1
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記の方法(1)および(2)では、いずれも使用される常温溶融塩にハロゲン原子が含まれる。したがって、それらの常温溶融塩の製造には環境負荷が避けられない。
【0009】
本発明の目的は、ハロゲン原子を有しない常温溶融塩を用い、生体触媒の存在下に効率よくエステル交換反応を行うことができる方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、生体触媒を用いるエステル交換反応の反応媒体として常温溶融塩を用いる検討を行った結果、該反応に適用でき、しかもハロゲン原子を有しない常温溶融塩を見出し、本発明に至った。
【0011】
本発明は、エステル交換反応を触媒する生体触媒を用い、常温溶融塩中で、アルコールに対してアシルドナーによりエステル交換反応を行うに際し、常温溶融塩として一般式(I)
【0012】
【化4】
【0013】
(式中、R1 およびR2 はそれぞれ水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R3 は置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表す。)
で示されるイミダゾリウム塩[以下、これをイミダゾリウム塩(I)と称する]からなる常温溶融塩を用い、かつアシルドナーとしてカルボン酸エステルを用いることを特徴とするエステル交換反応方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
上記の一般式(I)において、R1 およびR2 がそれぞれ表すアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、n−ブチル基、イソブチル基などが挙げられる。これらのアルキル基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのアルコキシ基が挙げられる。R3 が表すアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。これらのアルキル基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、メチル基、エチル基などのアルキル基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのアルコキシ基が挙げられる。また、R3 が表すアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。これらのアリール基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、メチル基、エチル基などのアルキル基;フェニル基、ナフチル基などのアリール基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのアルコキシ基が挙げられる。
【0015】
イミダゾリウム塩(I)としては、例えば、イミダゾリウムカチオン、N−メチルイミダゾリウムカチオン、N−エチルイミダゾリウムカチオン、N−エチル−N’−メチルイミダゾリウムカチオン、N−ブチル−N’−メチルイミダゾリウムカチオンなどのイミダゾリウムカチオンと、メチルスルホナート、エチルスルホナート、プロピルスルホナート、ブチルスルホナート、ベンジルスルホナート、フェネチルスルホナート、メトキシメチルスルホナート、メトキシエチルスルホナート、エトキシメチルスルホナート、エトキシエチルスルホナート、ベンジルオキシメチルスルホナート、ベンジルオキシエチルスルホナートなどのアニオンからなる塩が挙げられる。これらの中でも、原料の入手性、製造の容易さを考慮すれば、N−ブチル−N’−メチルイミダゾリウムエトキシエチルスルホナート、N−ブチル−N’−メチルイミダゾリウムフェネチルスルホナートが好ましい。常温溶融塩の使用量は、特に制限されないが、反応の効率、操作性、経済性などを考慮すれば、アルコールに対して1〜50倍重量の範囲であるのが好ましい。
【0016】
エステル交換反応を触媒する生体触媒としては、例えばNovozym435(Novo Nordisk Bioindustry社製)、リパーゼAY(天野エンザイム株式会社製)、リパーゼMY(名糖産業株式会社製)などのキャンディダ(Candida)属に属する微生物が生産するリパーゼ;リパーゼQL(名糖産業株式会社製)などのアルカリジェネス(Alcaligenes)属に属する微生物が生産するリパーゼ;リパーゼPS(天野エンザイム株式会社製)などのシュードモナス(Pseudomonas)属に属する微生物が生産するリパーゼ;リパーゼA(天野エンザイム株式会社製)などのアスペルギルス(Aspergillus)属に属する微生物が生産するリパーゼ;リパーゼM(天野エンザイム株式会社製)などのムコール(Mucor)属に属する微生物が生産するリパーゼ;リパーゼN(天野エンザイム株式会社製)などのリゾプス(Rhizopus)属に属する微生物が生産するリパーゼ;リパーゼG(天野エンザイム株式会社製)、リパーゼR(天野エンザイム株式会社製)などのペニシリウム(Penicillium)属に属する微生物が生産するリパーゼ;トヨチーム(LIP社製)などのバチラス(Bacillus)属に属する微生物が生産するリパーゼ;豚肝臓由来のエステラーゼ(シグマ社製)などが挙げられる。これらの生体触媒は、精製したものでも、未精製のものでもよく、担体に固定化されたものでもよい。担体としては、例えば、Toyonite(東洋電化工業株式会社製)などのセラミック;シリカアルミナ、アルミナ、シリカゲル、チタニア、セライト、モレキュラーシーブ、活性炭などの無機多孔質体;ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ナイロンなど樹脂が挙げられる。また、エステル交換活性を有する微生物菌体をそのまま、あるいはホモジネートして使用することも可能である。生体触媒の使用量は、基質となるアルコールに対して0.01〜200重量%の範囲となるような量を選択するのが好ましく、0.1〜100重量%の範囲となるような量を選択するのがより好ましい。
【0017】
基質となるアルコールとしては、上記の常温溶融塩に可溶であり、かつ、上述の生体触媒の基質となるもので、反応条件下に留去されないようなものであれば特に制限はなく、例えば脂肪族または芳香族の1級または2級アルコールなどが使用できる。アルコールの使用量は特に制限されない。
【0018】
カルボン酸エステルとしては、カルボン酸アルキルエステルを用いるのが好ましく、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ビニル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、ヘキサン酸メチル、ヘキサン酸エチル、ヘプタン酸メチル、ヘプタン酸エチル、オクタン酸メチル、オクタン酸エチル、フェノキシ酢酸メチル、フェノキシ酢酸エチル、フェニルチオ酢酸メチル、フェニルチオ酢酸エチル、ナフトキシ酢酸メチル、ナフトキシ酢酸エチルなどが挙げられる。カルボン酸エステルの使用量は、基質となるアルコールに対して1〜10当量の範囲であるのが好ましく、1〜3当量の範囲であるのがより好ましい。
【0019】
反応温度は、用いる生体触媒の最適温度にもよるが、一般に25〜40℃の範囲で実施するのが好ましい。
【0020】
反応は、生体触媒を加えた常温溶融塩中に、アルコールおよびアシルドナーを加えて、所定温度および所定圧力下で撹拌しながら行うが、必要に応じて常圧下または減圧下に、副生するアルコールを留去しながら行うことによりエステル交換効率を高めることが可能である。
【0021】
このようにして得られたエステル化合物は、通常の有機化合物の単離・精製に用いられる方法により単離・精製することができる。例えば、反応混合物をジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類などの有機溶媒を用いて抽出し、得られた有機層を濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、再結晶、蒸留などにより単離・精製する。
【0022】
生体触媒を再使用する方法としては、上記の反応混合物から生成物であるエステル化合物を有機溶媒で抽出し、抽出されずに残った混合物(抽出残渣)から、少量含まれる抽出溶媒を減圧留去し、得られる残渣にアルコールおよびアシルドナーを加えて、所定温度および所定圧力で攪拌しながら反応を行うのが好ましい。上記の抽出残渣には生体触媒および常温溶融塩が含まれる。
【0023】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら制限されるものではない。
【0024】
参考例1
N−ブチル−N’−メチルイミダゾリウムエトキシエチルスルホナートの調整法
2−エトキシエタノール67.6g(0.75mol)とアミド硫酸72.8g(0.75mol)の混合物を135℃で2時間撹拌した後、放冷し、エトキシエトキシスルホン酸アミド134.0gを得た。収率95%。
【0025】
ブチルメチルイミダゾリウムクロリド70.0g(0.40mol)とエトキシエトキシスルホン酸アミド82.6g(0.44mol)の混合物にアセトン200mlを加えて溶解し、室温で24時間撹拌した後、生じた塩化アンモニウムを、セライトを敷いたグラスフィルターで濾過し、濾取した塩化アンモニウムをアセトンで洗浄し、次いでトルエンで洗浄した。濾液を中性アルミナカラムに通した後、濾液に活性炭1gを加え、加温して撹拌し、セライトを敷いたグラスフィルターで活性炭を除去した。濾液をエバポレータで減圧濃縮した後、さらに60℃、2torrで6時間減圧し、溶媒を完全に除去し、淡黄色油状物として、下記の物性値を有するN−ブチル−N’−メチルイミダゾリウムエトキシエチルスルホナート([bmim]EtOCH2 CH2 OSO3 )を118.8g得た。収率95%。
【0026】
1H−NMR(270MHz,CDCl3 ,TMS)δ:0.95(3H,t,J=7.3Hz),1.15(3H,t,J=6.9Hz),1.20−1.40(2H,m),1.80−1.89(2H,m),3.51(2H,q,J=7.3Hz),3.68(2H,dd,J1=4.9,J2=2.3Hz),4.00(3H,s),4.15(2H,t,J=4.0Hz),4.23(2H,t,J=7.3Hz),7.41(2H,d,J=26.7Hz),9.43(1H,s)
【0027】
実施例1
撹拌子を備えた内容量30mlの二口フラスコに、リパーゼ(商品名 Novozym435(Novo Nordisk Bioindustry社製))25mgおよびN−ブチル−N’−メチルイミダゾリウムエトキシエチルスルホナート([bmim]EtOCH2 CH2 OSO3 )1.5mlを入れ、さらにラセミ体3−ヒドロキシ−5−フェニル−1−ペンテン49.0mg(0.30mmol)および酢酸ビニル38.7mg(0.45mmol)を加えた後、35℃で24時間撹拌した。得られた反応混合物をジエチルエーテル3mlで抽出し、さらにヘキサン/酢酸エチル=2:1(3ml)で3回抽出した後、有機層をまとめて減圧濃縮し、濃縮液からシリカゲル薄層クロマトグラフィーにより、(S)−3−アセトキシ−5−フェニル−1−ペンテン14.0mg(収率23%、>99%ee)と未反応基質(R)−3−ヒドロキシ−5−フェニル−1−ペンテン31mg(収率62%、30%ee)をそれぞれ単離した。(R)−3−ヒドロキシ−5−フェニル−1−ペンテンおよび(S)−3−アセトキシ−5−フェニル−1−ペンテンのエナンチオマー過剰率はキラルカラムによるキャピラリーガスクロマトグラフィーで算出した。
【0028】
実施例2
実施例1において、常温溶融塩としてN−ブチル−N’−メチルイミダゾリウムフェネチルスルホナート([bmim]C6 H5 CH2 CH2 OSO3 )1.5mlを使用した以外は同様にして反応を行い、(S)−3−アセトキシ−5−フェニル−1−ペンテン14.3mg(収率23%、>99%ee)と未反応基質(R)−3−ヒドロキシ−5−フェニル−1−ペンテン31.2mg(収率62%、30%ee)をそれぞれ単離した。
【0029】
【発明の効果】
本発明により、ハロゲン原子を有しない常温溶融塩を用い、生体触媒の存在下に効率よくエステル交換反応を行うことができる。ハロゲン原子を有しない常温溶融塩を使用することにより、機器腐食の懸念がなく、環境に負荷を与えることがない。また、該常温溶融塩を製造する際にも、環境負荷を考慮する必要はない。さらに、本発明において、常温溶融塩は生体触媒などから反応系内に混入する水分により加水分解を受けることがなく、長期安定性に優れ、しかも生体触媒の再使用が可能となる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、常温溶融塩中での生体触媒によるエステル交換反応方法に関する。本発明は、効率よくエステル化合物を製造し得るエステル交換反応方法を提供するものであり、生体触媒の再使用が可能であるという利点を有し、各種エステル化合物の製造方法として有用である他、ラセミ体アルコールの光学分割方法などとして応用可能である。
【0002】
【従来の技術】
従来、室温で液状の塩であり、蒸気圧がほぼ0であり、高温下においても蒸発しない常温溶融塩の物理的・化学的特徴に着目し、常温溶融塩中で生体触媒によるエステル交換反応を行う試みがなされており、例えば、(1)常温溶融塩として、一般式
【0003】
【化2】
【0004】
(式中、X1 は、PF6 、BF4 、CF3 COO、CF3 SO3 またはSbF6 を表す。)で示されるイミダゾリウム塩からなる常温溶融塩を用い、アシルドナーとして酢酸ビニルを用いる方法(非特許文献1参照)、(2)常温溶融塩として、一般式
【0005】
【化3】
【0006】
(式中、X2 は、PF6 またはBF4 を表す。)で示されるイミダゾリウム塩からなる常温溶融塩を用い、アシルドナーとしてブタン酸エチルを用いる方法(非特許文献2参照)などが知られている。
【0007】
【非特許文献1】
ケミストリー・レターズ(Chem.Lett.)、2001年、262頁、テーブル1
【非特許文献2】
オルガニック・レターズ(Org.Lett.)、2000年、2巻、4190頁、図2および表1
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記の方法(1)および(2)では、いずれも使用される常温溶融塩にハロゲン原子が含まれる。したがって、それらの常温溶融塩の製造には環境負荷が避けられない。
【0009】
本発明の目的は、ハロゲン原子を有しない常温溶融塩を用い、生体触媒の存在下に効率よくエステル交換反応を行うことができる方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、生体触媒を用いるエステル交換反応の反応媒体として常温溶融塩を用いる検討を行った結果、該反応に適用でき、しかもハロゲン原子を有しない常温溶融塩を見出し、本発明に至った。
【0011】
本発明は、エステル交換反応を触媒する生体触媒を用い、常温溶融塩中で、アルコールに対してアシルドナーによりエステル交換反応を行うに際し、常温溶融塩として一般式(I)
【0012】
【化4】
【0013】
(式中、R1 およびR2 はそれぞれ水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R3 は置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表す。)
で示されるイミダゾリウム塩[以下、これをイミダゾリウム塩(I)と称する]からなる常温溶融塩を用い、かつアシルドナーとしてカルボン酸エステルを用いることを特徴とするエステル交換反応方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
上記の一般式(I)において、R1 およびR2 がそれぞれ表すアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、n−ブチル基、イソブチル基などが挙げられる。これらのアルキル基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのアルコキシ基が挙げられる。R3 が表すアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。これらのアルキル基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、メチル基、エチル基などのアルキル基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのアルコキシ基が挙げられる。また、R3 が表すアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。これらのアリール基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、メチル基、エチル基などのアルキル基;フェニル基、ナフチル基などのアリール基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのアルコキシ基が挙げられる。
【0015】
イミダゾリウム塩(I)としては、例えば、イミダゾリウムカチオン、N−メチルイミダゾリウムカチオン、N−エチルイミダゾリウムカチオン、N−エチル−N’−メチルイミダゾリウムカチオン、N−ブチル−N’−メチルイミダゾリウムカチオンなどのイミダゾリウムカチオンと、メチルスルホナート、エチルスルホナート、プロピルスルホナート、ブチルスルホナート、ベンジルスルホナート、フェネチルスルホナート、メトキシメチルスルホナート、メトキシエチルスルホナート、エトキシメチルスルホナート、エトキシエチルスルホナート、ベンジルオキシメチルスルホナート、ベンジルオキシエチルスルホナートなどのアニオンからなる塩が挙げられる。これらの中でも、原料の入手性、製造の容易さを考慮すれば、N−ブチル−N’−メチルイミダゾリウムエトキシエチルスルホナート、N−ブチル−N’−メチルイミダゾリウムフェネチルスルホナートが好ましい。常温溶融塩の使用量は、特に制限されないが、反応の効率、操作性、経済性などを考慮すれば、アルコールに対して1〜50倍重量の範囲であるのが好ましい。
【0016】
エステル交換反応を触媒する生体触媒としては、例えばNovozym435(Novo Nordisk Bioindustry社製)、リパーゼAY(天野エンザイム株式会社製)、リパーゼMY(名糖産業株式会社製)などのキャンディダ(Candida)属に属する微生物が生産するリパーゼ;リパーゼQL(名糖産業株式会社製)などのアルカリジェネス(Alcaligenes)属に属する微生物が生産するリパーゼ;リパーゼPS(天野エンザイム株式会社製)などのシュードモナス(Pseudomonas)属に属する微生物が生産するリパーゼ;リパーゼA(天野エンザイム株式会社製)などのアスペルギルス(Aspergillus)属に属する微生物が生産するリパーゼ;リパーゼM(天野エンザイム株式会社製)などのムコール(Mucor)属に属する微生物が生産するリパーゼ;リパーゼN(天野エンザイム株式会社製)などのリゾプス(Rhizopus)属に属する微生物が生産するリパーゼ;リパーゼG(天野エンザイム株式会社製)、リパーゼR(天野エンザイム株式会社製)などのペニシリウム(Penicillium)属に属する微生物が生産するリパーゼ;トヨチーム(LIP社製)などのバチラス(Bacillus)属に属する微生物が生産するリパーゼ;豚肝臓由来のエステラーゼ(シグマ社製)などが挙げられる。これらの生体触媒は、精製したものでも、未精製のものでもよく、担体に固定化されたものでもよい。担体としては、例えば、Toyonite(東洋電化工業株式会社製)などのセラミック;シリカアルミナ、アルミナ、シリカゲル、チタニア、セライト、モレキュラーシーブ、活性炭などの無機多孔質体;ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ナイロンなど樹脂が挙げられる。また、エステル交換活性を有する微生物菌体をそのまま、あるいはホモジネートして使用することも可能である。生体触媒の使用量は、基質となるアルコールに対して0.01〜200重量%の範囲となるような量を選択するのが好ましく、0.1〜100重量%の範囲となるような量を選択するのがより好ましい。
【0017】
基質となるアルコールとしては、上記の常温溶融塩に可溶であり、かつ、上述の生体触媒の基質となるもので、反応条件下に留去されないようなものであれば特に制限はなく、例えば脂肪族または芳香族の1級または2級アルコールなどが使用できる。アルコールの使用量は特に制限されない。
【0018】
カルボン酸エステルとしては、カルボン酸アルキルエステルを用いるのが好ましく、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ビニル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、ヘキサン酸メチル、ヘキサン酸エチル、ヘプタン酸メチル、ヘプタン酸エチル、オクタン酸メチル、オクタン酸エチル、フェノキシ酢酸メチル、フェノキシ酢酸エチル、フェニルチオ酢酸メチル、フェニルチオ酢酸エチル、ナフトキシ酢酸メチル、ナフトキシ酢酸エチルなどが挙げられる。カルボン酸エステルの使用量は、基質となるアルコールに対して1〜10当量の範囲であるのが好ましく、1〜3当量の範囲であるのがより好ましい。
【0019】
反応温度は、用いる生体触媒の最適温度にもよるが、一般に25〜40℃の範囲で実施するのが好ましい。
【0020】
反応は、生体触媒を加えた常温溶融塩中に、アルコールおよびアシルドナーを加えて、所定温度および所定圧力下で撹拌しながら行うが、必要に応じて常圧下または減圧下に、副生するアルコールを留去しながら行うことによりエステル交換効率を高めることが可能である。
【0021】
このようにして得られたエステル化合物は、通常の有機化合物の単離・精製に用いられる方法により単離・精製することができる。例えば、反応混合物をジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類などの有機溶媒を用いて抽出し、得られた有機層を濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、再結晶、蒸留などにより単離・精製する。
【0022】
生体触媒を再使用する方法としては、上記の反応混合物から生成物であるエステル化合物を有機溶媒で抽出し、抽出されずに残った混合物(抽出残渣)から、少量含まれる抽出溶媒を減圧留去し、得られる残渣にアルコールおよびアシルドナーを加えて、所定温度および所定圧力で攪拌しながら反応を行うのが好ましい。上記の抽出残渣には生体触媒および常温溶融塩が含まれる。
【0023】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら制限されるものではない。
【0024】
参考例1
N−ブチル−N’−メチルイミダゾリウムエトキシエチルスルホナートの調整法
2−エトキシエタノール67.6g(0.75mol)とアミド硫酸72.8g(0.75mol)の混合物を135℃で2時間撹拌した後、放冷し、エトキシエトキシスルホン酸アミド134.0gを得た。収率95%。
【0025】
ブチルメチルイミダゾリウムクロリド70.0g(0.40mol)とエトキシエトキシスルホン酸アミド82.6g(0.44mol)の混合物にアセトン200mlを加えて溶解し、室温で24時間撹拌した後、生じた塩化アンモニウムを、セライトを敷いたグラスフィルターで濾過し、濾取した塩化アンモニウムをアセトンで洗浄し、次いでトルエンで洗浄した。濾液を中性アルミナカラムに通した後、濾液に活性炭1gを加え、加温して撹拌し、セライトを敷いたグラスフィルターで活性炭を除去した。濾液をエバポレータで減圧濃縮した後、さらに60℃、2torrで6時間減圧し、溶媒を完全に除去し、淡黄色油状物として、下記の物性値を有するN−ブチル−N’−メチルイミダゾリウムエトキシエチルスルホナート([bmim]EtOCH2 CH2 OSO3 )を118.8g得た。収率95%。
【0026】
1H−NMR(270MHz,CDCl3 ,TMS)δ:0.95(3H,t,J=7.3Hz),1.15(3H,t,J=6.9Hz),1.20−1.40(2H,m),1.80−1.89(2H,m),3.51(2H,q,J=7.3Hz),3.68(2H,dd,J1=4.9,J2=2.3Hz),4.00(3H,s),4.15(2H,t,J=4.0Hz),4.23(2H,t,J=7.3Hz),7.41(2H,d,J=26.7Hz),9.43(1H,s)
【0027】
実施例1
撹拌子を備えた内容量30mlの二口フラスコに、リパーゼ(商品名 Novozym435(Novo Nordisk Bioindustry社製))25mgおよびN−ブチル−N’−メチルイミダゾリウムエトキシエチルスルホナート([bmim]EtOCH2 CH2 OSO3 )1.5mlを入れ、さらにラセミ体3−ヒドロキシ−5−フェニル−1−ペンテン49.0mg(0.30mmol)および酢酸ビニル38.7mg(0.45mmol)を加えた後、35℃で24時間撹拌した。得られた反応混合物をジエチルエーテル3mlで抽出し、さらにヘキサン/酢酸エチル=2:1(3ml)で3回抽出した後、有機層をまとめて減圧濃縮し、濃縮液からシリカゲル薄層クロマトグラフィーにより、(S)−3−アセトキシ−5−フェニル−1−ペンテン14.0mg(収率23%、>99%ee)と未反応基質(R)−3−ヒドロキシ−5−フェニル−1−ペンテン31mg(収率62%、30%ee)をそれぞれ単離した。(R)−3−ヒドロキシ−5−フェニル−1−ペンテンおよび(S)−3−アセトキシ−5−フェニル−1−ペンテンのエナンチオマー過剰率はキラルカラムによるキャピラリーガスクロマトグラフィーで算出した。
【0028】
実施例2
実施例1において、常温溶融塩としてN−ブチル−N’−メチルイミダゾリウムフェネチルスルホナート([bmim]C6 H5 CH2 CH2 OSO3 )1.5mlを使用した以外は同様にして反応を行い、(S)−3−アセトキシ−5−フェニル−1−ペンテン14.3mg(収率23%、>99%ee)と未反応基質(R)−3−ヒドロキシ−5−フェニル−1−ペンテン31.2mg(収率62%、30%ee)をそれぞれ単離した。
【0029】
【発明の効果】
本発明により、ハロゲン原子を有しない常温溶融塩を用い、生体触媒の存在下に効率よくエステル交換反応を行うことができる。ハロゲン原子を有しない常温溶融塩を使用することにより、機器腐食の懸念がなく、環境に負荷を与えることがない。また、該常温溶融塩を製造する際にも、環境負荷を考慮する必要はない。さらに、本発明において、常温溶融塩は生体触媒などから反応系内に混入する水分により加水分解を受けることがなく、長期安定性に優れ、しかも生体触媒の再使用が可能となる。
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