JP2003144189A - 常温溶融塩中での生体触媒によるエステル交換反応方法 - Google Patents

常温溶融塩中での生体触媒によるエステル交換反応方法

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JP2003144189A
JP2003144189A JP2002112137A JP2002112137A JP2003144189A JP 2003144189 A JP2003144189 A JP 2003144189A JP 2002112137 A JP2002112137 A JP 2002112137A JP 2002112137 A JP2002112137 A JP 2002112137A JP 2003144189 A JP2003144189 A JP 2003144189A
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ester
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lipase
molten salt
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Toshiyuki Ito
敏幸 伊藤
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Kuraray Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 効率よくエステル化合物を製造することがで
き、しかも生体触媒の失活を伴うことなく、生体触媒の
再使用が可能なエステル交換反応方法を提供すること。 【解決手段】 エステル交換反応を触媒する生体触媒を
用い、常温溶融塩中で、アルコールに対して、アシルド
ナーによりエステル交換反応を行うに際し、アシルドナ
ーとしてカルボン酸エステル(但し、カルボン酸とビニ
ルアルコールのエステルは除く)を用い、副生するアル
コールを減圧留去しながら反応を行うことを特徴とする
エステル交換反応方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、常温溶融塩中での
生体触媒によるエステル交換反応方法に関する。本発明
は、生体触媒の失活を伴うことなく効率よくエステル化
合物を製造し得るエステル交換反応方法を提供するもの
であり、生体触媒の再使用が可能であるという利点を有
し、各種エステル化合物の製造方法として有用である
他、光学活性アルコールのラセミ混合物の光学分割方法
などとして応用可能である。
【0002】
【従来の技術】従来、生体触媒を用いたエステル交換反
応としては、(1)有機溶媒中で、アシルドナーとして
酢酸ビニルを用いる方法[テトラへドロン・レターズ
(Tetrahedron Letters)、28
巻、953頁、(1987年)参照]、(2)アシルド
ナーとしてβ−ケトエステルを用い、減圧下に反応を行
う方法[ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリ
ー(J.Org.Chem.)、66巻、1906頁、
(2001年)参照]が知られている。さらに、最近で
は、室温で液状の塩である常温溶融塩の物理的・化学的
特徴に着目し、常温溶融塩中で生体触媒によるエステル
交換反応を行う試みがなされており、例えば、(3)ア
シルドナーとして酢酸ビニルを用いる方法[ケミストリ
ー・レターズ(Chem.Lett.)、262頁、
(2001年)参照]、(4)アシルドナーとしてブタ
ン酸エチルを用いる方法[オルガニック・レターズ(O
rg.Lett.)、2巻、4189頁、(2000
年)参照]などが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記の方法(1)およ
び(3)は、副生するアセトアルデヒドがオリゴマ−化
した化合物が蓄積し、生体触媒が徐々に失活してしまう
という問題があった。上記の方法(2)は、溶媒を用い
ずに反応を行うために、アシルドナーに相溶性のある基
質しか使用できないという問題があった。また、上記の
方法(4)は、基質としてブタノールなどの単純な1級
アルコールを用いているが、本発明者の知見によれば、
基質として2級アルコールを使用した場合にはエステル
交換反応が効率的には生じず(比較例2参照)、しかも
アルコールをカルボン酸エステルに対して過剰に用いる
ことから、光学活性アルコールのラセミ混合物を光学分
割する方法として適用することは非効率的である。
【0004】しかして、本発明の目的は、効率よくエス
テル化合物を製造することができ、しかも生体触媒の失
活を伴うことなく、生体触媒の再使用が可能なエステル
交換反応方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は、蒸気圧がほ
ぼ0であり、高温下においても蒸発しないという常温溶
融塩の特徴に着目して鋭意検討を行った結果、反応媒体
に常温溶融塩を、アシルドナーにカルボン酸エステル
(但し、カルボン酸とビニルアルコールのエステルは除
く)を用い、かつ、副生するアルコールを減圧留去しな
がらエステル交換反応を行うことにより、エステル交換
反応の平衡をエステル化の方向に傾け、効率よくエステ
ル化合物を製造することができ、さらにこの場合、生体
触媒の失活を伴わないために、生体触媒を再使用できる
ことを見出した。
【0006】すなわち、本発明は、エステル交換反応を
触媒する生体触媒を用い、常温溶融塩中で、アルコール
に対して、アシルドナーによりエステル交換反応を行う
に際し、アシルドナーとしてカルボン酸エステル(但
し、カルボン酸とビニルアルコールのエステルは除く)
を用い、副生するアルコールを減圧留去しながら反応を
行うことを特徴とするエステル交換反応方法である。
【0007】本発明の好適な実施形態において、上記の
方法により得られる反応混合物を有機溶媒で抽出し、生
体触媒を含む抽出残査をエステル交換反応に再使用す
る。
【0008】
【発明の実施の形態】
【0009】本発明において用いられる常温溶融塩とし
ては、反応条件下に留去されないようなものであれば特
に制限はなく、例えば一般式(1)
【0010】
【化1】
【0011】(式中、R およびR はそれぞれ独立
して水素原子または低級アルキル基を表し、XはBF
、PF 、CH CO 、CF CO
CFSO 、(CF SO または
(CF SO を表す。)で示されるイミ
ダゾリウム塩[以下、これをイミダゾリウム塩(I)と
略記することがある]などが挙げられる。上記一般式
中、R およびR がそれぞれ表す低級アルキル基と
しては、例えばメチル基、エチル基、n−ブチル基、イ
ソブチル基、メトキシエチル基、2,2,2−トリフル
オロエチル基などが挙げられる。イミダゾリウム塩
(I)としては、例えばイミダゾリウムカチオン、N−
メチルイミダゾリウムカチオン、N−エチルイミダゾリ
ウムカチオン、N−エチル−N’−メチルイミダゾリウ
ムカチオン、N−ブチル−N’−メチルイミダゾリウム
カチオンなどのイミダゾリウムカチオンと、BF
PF 、CHCO 、CF CO 、CF
SO 、(CF SO 、(CF
などのアニオンからなる塩が挙げら
れ、これらの中でも、生成物の反応混合物からの単離を
考慮すれば、水およびジエチルエーテルの双方に不溶で
あるN−ブチル−N’−メチルイミダゾリウムヘキサフ
ルオロホスフェートを使用するのが好ましい。常温溶融
塩の使用量は、特に制限されないが、反応の効率、操作
性、経済性などを考慮すれば、アルコールに対して1〜
50倍重量の範囲であるのが好ましい。
【0012】エステル交換反応を触媒する生体触媒とし
ては、例えばNovozym435(Novo Nor
disk Bioindustry社製)、リパーゼA
Y(天野エンザイム株式会社製)、リパーゼMY(名糖
産業株式会社製)などのキャンディダ(Candid
a)属に属する微生物が生産するリパーゼ;リパーゼQ
L(名糖産業株式会社製)などのアルカリジェネス(A
lcaligenes)属に属する微生物が生産するリ
パーゼ;リパーゼPS(天野エンザイム株式会社製)な
どのシュードモナス(Pseudomonas)属に属
する微生物が生産するリパーゼ;リパーゼA(天野エン
ザイム株式会社製)などのアスペルギルス(Asper
gillus)属に属する微生物が生産するリパーゼ;
リパーゼM(天野エンザイム株式会社製)などのムコー
ル(Mucor)属に属する微生物が生産するリパー
ゼ;リパーゼN(天野エンザイム株式会社製)などのリ
ゾプス(Rhizopus)属に属する微生物が生産す
るリパーゼ;リパーゼG(天野エンザイム株式会社
製)、リパーゼR(天野エンザイム株式会社製)などの
ペニシリウム(Penicillium)属に属する微
生物が生産するリパーゼ;トヨチーム(LIP社製)な
どのバチラス(Bacillus)属に属する微生物が
生産するリパーゼ;豚肝臓由来のエステラーゼ(シグマ
社製)などが挙げられる。これらの生体触媒は、精製し
たものでも、未精製のものでもよく、担体に固定化され
たものでもよい。担体としては、例えば、Toyoni
te(東洋電化工業株式会社製)などのセラミック;シ
リカアルミナ、アルミナ、シリカゲル、チタニア、セラ
イト、モレキュラーシーブ、活性炭などの無機多孔質
体;ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリビニルア
ルコール、ポリアクリル酸、ナイロンなど樹脂が挙げら
れる。また、エステル交換活性を有する微生物菌体をそ
のまま、あるいはホモジネートして使用することも可能
である。生体触媒の使用量は、基質となるアルコールに
対して0.01〜200重量%の範囲となるような量を
選択するのが好ましく、0.1〜100重量%の範囲と
なるような量を選択するのがより好ましい。
【0013】基質となるアルコールとしては、上記の常
温溶融塩に可溶であり、かつ、上述の生体触媒の基質と
なるもので、反応条件下に留去されないようなものであ
れば特に制限はなく、例えば脂肪族または芳香族の1級
または2級アルコールなどが使用できる。アルコールの
使用量は特に制限されない。
【0014】カルボン酸エステルとしては、カルボン酸
アルキルエステルを用いるのが好ましく、例えば酪酸メ
チル、酪酸エチル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、ヘキ
サン酸メチル、ヘキサン酸エチル、ヘプタン酸メチル、
ヘプタン酸エチル、オクタン酸メチル、オクタン酸エチ
ル、クロロ酢酸メチル、クロロ酢酸エチル、トリクロロ
酢酸メチル、トリクロロ酢酸エチル、フェノキシ酢酸メ
チル、フェノキシ酢酸エチル、フェニルチオ酢酸メチ
ル、フェニルチオ酢酸エチル、ナフトキシ酢酸メチル、
ナフトキシ酢酸エチルなどが挙げられる。カルボン酸と
ビニルアルコールのエステルを、アシルドナーとして用
いた場合、副生するアセトアルデヒドのオリゴマー化物
の蓄積により、生体触媒が徐々に失活し、生体触媒の再
使用時に反応速度が低下するなどの問題が生じる。カル
ボン酸エステルの使用量は、基質となるアルコールに対
して1〜10当量の範囲であるのが好ましく、1〜3当
量の範囲であるのがより好ましい。
【0015】反応温度は、用いる生体触媒の最適温度に
もよるが、一般に25〜40℃の範囲で実施するのが好
ましい。減圧度は、副生するアルコールの沸点にもよる
が、10〜200mmHgの範囲であるのが好ましい。
【0016】反応は、生体触媒を加えた常温溶融塩中
に、アルコールおよびアシルドナーを加えて、所定温度
および所定圧力で撹拌し、副生するアルコールを留去し
ながら行う。
【0017】このようにして得られたエステル化合物
は、通常の有機化合物の単離・精製に用いられる方法に
より単離・精製することができる。例えば、反応混合物
をジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエ
ーテル類;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類な
どの有機溶媒を用いて抽出し、得られた有機層を濃縮し
た後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、再結晶、
蒸留などにより単離・精製する。
【0018】生体触媒を再使用する方法としては、上記
の反応混合物から生成物であるエステル化合物を有機溶
媒で抽出し、抽出されずに残った混合物(抽出残査)か
ら、少量含まれる抽出溶媒を減圧留去し、得られる残査
にアルコールおよびアシルドナーを加えて、所定温度お
よび所定圧力で攪拌し、副生するアルコールを留去しな
がら反応を行うのが好ましい。上記の抽出残査には生体
触媒および常温溶融塩が含まれる。
【0019】
【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに具体的に
説明するが、本発明はこれら実施例により何ら制限され
るものではない。
【0020】実施例1 撹拌子を備えた内容量30mlの二口フラスコに、リパ
ーゼ(商品名 Novozym435(Novo No
rdisk Bioindustry社製))25mg
およびN−ブチル−N’−メチルイミダゾリウムヘキサ
フルオロホスフェート([bmim]PF)1.5m
lを入れ、さらにラセミ体5−フェニル−1−ペンテン
−3−オール49.0mg(0.30mmol)および
フェニルチオ酢酸メチル82.0mg(0.45mmo
l)を加えた後、40℃、20mmHgで生成するメタ
ノールを留去しながら13時間撹拌した。反応系を常圧
に戻した後、得られた反応混合物をジエチルエーテル3
mlで抽出し、さらにヘキサン/酢酸エチル=1:1
(3ml)で2回抽出した後、有機層をまとめて減圧濃
縮し、濃縮液からシリカゲル薄層クロマトグラフィーに
より、(S)−フェニルチオアセテート29.1mg
(収率30%、>99%ee)と未反応基質(R)−5
−フェニル−1−ペンテン−3−オール19.3mg
(収率40%、86%ee)をそれぞれ単離した。
(R)−5−フェニル−1−ペンテン−3−オールのエ
ナンチオマー過剰率はキラルカラムによるキャピラリー
ガスクロマトグラフィーで算出した。また、(S)−フ
ェニルチオアセテートのエナンチオマー過剰率は、
(S)−フェニルチオアセテートを加水分解した後、ア
セテートに変換し、キラルカラムによるキャピラリーガ
スクロマトグラフィーで算出した。
【0021】上記の後処理工程で得られた、反応混合物
を有機溶媒で抽出した後の液を、室温下、2mmHgで
15分間減圧し、抽出溶媒を留去した。残渣に、ラセミ
体5−フェニル−1−ペンテン−3−オール49.0m
g(0.30mmol)およびフェニルチオ酢酸メチル
82.0mg(0.45mmol)を加えた後、40
℃、20mmHgで生成するメタノールを留去しながら
13時間撹拌した。次いで上記と同様の後処理を行い、
(S)−フェニルチオアセテート(34.0mg、収率
35%、>99%ee)と未反応基質(R)−5−フェ
ニル−1−ペンテン−3−オール(20.3mg、収率
42%、80%ee)をそれぞれ単離した。
【0022】さらに、同様にしてリパーゼを再使用する
ことにより、(S)−フェニルチオアセテート(34.
0mg、収率35%、>99%ee)と未反応基質
(R)−5−フェニル−1−ペンテン−3−オール(1
9.3mg、収率40%、88%ee)をそれぞれ単離
した。
【0023】表1にリパーゼの再使用実験の結果を示
す。エステル交換反応で生じたメタノールが減圧下で留
去されながらアシル化が進むために反応速度の低下はほ
とんど認められなかった。
【0024】
【表1】
【0025】比較例1 撹拌子を備えた内容量30mlの二口フラスコに、リパ
ーゼ(商品名 Novozym435(Novo No
rdisk Bioindustry社製))25mg
およびN−ブチル−N’−メチルイミダゾリウムヘキサ
フルオロホスフェート([bmim]PF)1.5m
lを入れ、さらにラセミ体5−フェニル−1−ペンテン
−3−オール49.0mg(0.30mmol)および
酢酸ビニル39.0mg(0.45mmol)を加えた
後、25℃で3時間撹拌した。得られた反応混合物をジ
エチルエーテル3mlで抽出し、さらにヘキサン/酢酸
エチル=1:1(3ml)で2回抽出した後、有機層を
まとめて減圧濃縮し、濃縮液からシリカゲル薄層クロマ
トグラフィーにより、(S)−フェニルチオアセテート
(45.5mg、収率47%、>99%ee)と未反応
基質(R)−5−フェニル−1−ペンテン−3−オール
(21.3mg、収率44%、86%ee)をそれぞれ
単離した。(R)−5−フェニル−1−ペンテン−3−
オールのエナンチオマー過剰率はキラルカラムによるキ
ャピラリーガスクロマトグラフィーで算出した。また、
(S)−フェニルチオアセテートのエナンチオマー過剰
率は、(S)−フェニルチオアセテートを加水分解した
後、アセテートに変換し、キラルカラムによるキャピラ
リーガスクロマトグラフィーで算出した。
【0026】上記の後処理工程で得られた、反応混合物
を有機溶媒で抽出した後の液を、室温下、2mmHgで
15分間減圧し、抽出溶媒を留去した。残渣に、ラセミ
体5−フェニル−1−ペンテン−3−オール49.0m
g(0.30mmol)および酢酸ビニル39.0mg
(0.45mmol)を加えた後、25℃で3時間撹拌
した。上記と同様の後処理を行い、(S)−フェニルチ
オアセテート(29.1mg、収率30%、>99%e
e)と未反応基質(R)−5−フェニル−1−ペンテン
−3−オール(30.4mg、収率63%、60%e
e)をそれぞれ単離した。
【0027】さらに、同様にしてリパーゼの再使用を繰
り返し行った。このリパーゼの再使用実験の結果を表2
に示す。アシルドナー由来のアセトアルデヒドオリゴマ
ーの蓄積により酵素が徐々に失活し、反応速度の低下が
認められた。
【0028】
【表2】
【0029】実施例2 撹拌子を備えた内容量30mlの二口フラスコに、リパ
ーゼ(商品名 Novozym435(Novo No
rdisk Bioindustry社製))25mg
およびN−ブチル−N’−メチルイミダゾリウムヘキサ
フルオロホスフェート([bmim]PF)1.5m
lを入れ、さらにラセミ体5−フェニル−1−ペンテン
−3−オール49.0mg(0.30mmol)および
酪酸メチル45.9mg(0.45mmol)を加えた
後、27℃、100mmHgで生成するメタノールを留
去しながら48時間撹拌した。反応系を常圧に戻した
後、得られた反応混合物をジエチルエーテル3mlで抽
出し、さらにヘキサン/酢酸エチル=1:1(3ml)
で2回抽出した後、有機層をまとめて減圧濃縮し、濃縮
液からシリカゲル薄層クロマトグラフィーにより、
(S)−フェニルチオアセテート(9.6mg、収率1
3%、>99%ee)と未反応基質(R)−5−フェニ
ル−1−ペンテン−3−オール(37.2mg、収率7
7%、17%ee)をそれぞれ単離した。(R)−5−
フェニル−1−ペンテン−3−オールのエナンチオマー
過剰率はキラルカラムによるキャピラリーガスクロマト
グラフィーで算出した。また、(S)−フェニルチオア
セテートのエナンチオマー過剰率は、(S)−フェニル
チオアセテートを加水分解した後、アセテートに変換
し、キラルカラムによるキャピラリーガスクロマトグラ
フィーでを算出した。
【0030】さらに、実施例1と同様の操作により、リ
パーゼの再使用実験を行ったが、反応速度の低下は認め
られなかった。
【0031】実施例3 0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.2)10ml
にリパーゼPS(天野エンザイム株式会社製)3.75
gを加え、35℃で6時間振盪し、次いで、3000r
pmで5分間、遠心分離した。得られた上澄みに酵素固
定化用担体(商品名 Toyonite、東洋電化工業
株式会社製)0.31gを加え、35℃で16時間振盪
した後、グラスフィルターで吸引濾過して固形分を濾取
し、室温、減圧下(2mmHg)で2時間乾燥すること
により、灰褐色粉末としてToyonite固定リパー
ゼ0.30gを得た。
【0032】撹拌子を備えた内容量30mlの二口フラ
スコに、Toyonite固定リパーゼ25mgおよび
N−ブチル−N’−メチルイミダゾリウムヘキサフルオ
ロホスフェート([bmim]PF)1.5mlを入
れ、さらにラセミ体マンデル酸メチル50.0mg
(0.30mmol)およびノナン酸メチル77.4m
g(0.45mmol)を加えた後、35℃、60mm
Hgで生成するメタノールを留去しながら48時間撹拌
した。反応系を常圧に戻した後、得られた反応混合物を
ジエチルエーテル3mlで抽出し、さらにヘキサン/酢
酸エチル=1:1(3ml)で2回抽出した後、有機層
をまとめて減圧濃縮し、濃縮液からシリカゲル薄層クロ
マトグラフィーにより(S)−ノナネート(21mg、
収率23%、>99%ee)と未反応基質(R)−マン
デル酸メチル(35mg、収率70%、31%ee)を
それぞれ単離した。(R)−マンデル酸メチルのエナン
チオマー過剰率はキラルカラムによるキャピラリーガス
クロマトグラフィーで算出した。また、(S)−ノナネ
ートのエナンチオマー過剰率は、(S)−ノナネートを
加水分解した後、アセテートに変換し、キラルカラムに
よるキャピラリーガスクロマトグラフィーで算出した。
【0033】さらに、実施例1と同様の操作により、リ
パーゼの再使用実験を行ったが、反応速度の低下は認め
られなかった。
【0034】実施例4 撹拌子を備えた内容量30mlの二口フラスコに、リパ
ーゼ(商品名 Novozym435(Novo No
rdisk Bioindustry社製))25mg
およびN−ブチル−N’−メチルイミダゾリウムヘキサ
フルオロホスフェート([bmim]PF)1.5m
lを入れ、さらにラセミ体5−フェニル−1−ペンテン
−3−オール49.0mg(0.30mmol)および
フェノキシ酢酸メチル74.7mg(0.45mmo
l)を加えた後、30℃、100mmHgで生成するメ
タノールを留去しながら9時間撹拌した。反応系を常圧
に戻した後、得られた反応混合物をジエチルエーテル3
mlで抽出し、さらにヘキサン/酢酸エチル=1:1
(3ml)で2回抽出した後、有機層をまとめて減圧濃
縮し、濃縮液からシリカゲル薄層クロマトグラフィーに
より、(S)−フェノキシアセテート(31.1mg、
収率35%、>99%ee)と未反応基質(R)−5−
フェニル−1−ペンテン−3−オール(30.9mg、
収率64%、72%ee)をそれぞれ単離した。(R)
−5−フェニル−1−ペンテン−3−オールのエナンチ
オマー過剰率はキラルカラムによるキャピラリーガスク
ロマトグラフィーで算出した。また、(S)−フェノキ
シアセテートのエナンチオマー過剰率は、(S)−フェ
ノキシアセテートを加水分解した後、アセテートに変換
し、キラルカラムによるキャピラリーガスクロマトグラ
フィーでを算出した。
【0035】さらに、実施例1と同様の操作により、リ
パーゼの再使用実験を行ったが、反応速度の低下は認め
られなかった。
【0036】比較例2 撹拌子を備えた内容量30mlの二口フラスコに、リパ
ーゼ(商品名 Novozym435(Novo No
rdisk Bioindustry社製))100m
gおよびN−ブチル−N’−メチルイミダゾリウムヘキ
サフルオロホスフェート([bmim]PF)3.0
mlを入れ、さらにラセミ体5−フェニル−1−ペンテ
ン−3−オール100mg(0.616mmol)およ
び酢酸エチル11mg(0.12mmol)を加えた
後、35℃で24時間撹拌した。24時間以降、アセテ
ート量の増加は認められなかった。得られた反応混合物
をジエチルエーテル6mlで抽出し、さらにヘキサン/
酢酸エチル=1:1(6ml)で2回抽出した後、有機
層をまとめて減圧濃縮し、濃縮液からシリカゲル薄層ク
ロマトグラフィーにより、(S)−アセテート(8.0
mg、収率33%(酢酸エチルに対して)、>99%e
e)を単離するとともに、未反応基質5−フェニル−1
−ペンテン−3−オール77mg(0.474mmo
l)を回収した。(S)−アセテートのエナンチオマー
過剰率は、キラルカラムによるキャピラリーガスクロマ
トグラフィーで算出した。
【0037】
【発明の効果】効率よくエステル化合物を製造すること
ができ、しかも生体触媒の失活を伴うことなく、生体触
媒の再使用が可能なエステル交換反応方法が提供され
る。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エステル交換反応を触媒する生体触媒を
    用い、常温溶融塩中で、アルコールに対して、アシルド
    ナーによりエステル交換反応を行うに際し、アシルドナ
    ーとしてカルボン酸エステル(但し、カルボン酸とビニ
    ルアルコールのエステルは除く)を用い、副生するアル
    コールを減圧留去しながら反応を行うことを特徴とする
    エステル交換反応方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の方法により得られる反応
    混合物を有機溶媒で抽出し、生体触媒を含む抽出残査を
    エステル交換反応に再使用することを特徴とする請求項
    1記載のエステル交換反応方法。
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