JP2004109654A - 電子写真用無端ベルトの製法 - Google Patents

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【課題】電気抵抗の均一化を図ることができ、これにより、高画質画像を得ることができる電子写真用無端ベルトの製法を提供する。
【解決手段】周方向に回転しうる円筒形基体1と、この円筒形基体1の外周面に近接する位置で上記円筒形基体1の軸方向に沿って移動しうるノズル2とを準備し、円筒形基体1を周方向に回転させ、その状態で、円筒形基体1の外周面に近接させたノズル2から上記外周面に向かって液体塗料3を吐出させ、同時に、ノズル2を円筒形基体1の軸方向に沿って移動させることにより、円筒形基体1の外周面に液体塗料3をらせん状に塗布し、このらせん状塗膜の連続による全体塗膜を形成し、この全体塗膜を乾燥させたのち円筒形基体1から抜き取り電子写真用無端ベルトを得ている。
【選択図】図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フルカラー複写機,フルカラープリンター等の電子写真技術を採用した電子写真機器等に用いられる電子写真用無端ベルトの製法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、フルカラー複写機,フルカラープリンター等の電子写真技術を採用した電子写真機器において、主に、感光体上のトナー像を写し取る中間転写体等に用いる無端ベルトは、例えば、つぎのようにして作製されている。すなわち、樹脂と導電剤とを混練したのち溶融押出しする方法、もしくは導電剤を分散した液状塗料を用い、これを金属製の基体に遠心成形もしくはディッピング等により製膜したのちそれを基体から脱離する方法等で作製されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような無端ベルトは、ベルト1本内の全周全ての部分で電気抵抗を均一にすることが重要な課題であり、電気抵抗が大きいと、濃度むらが発生して高画質画像が得られない。しかしながら、上記の押出し成形の方法では、材料の練り条件により導電剤の分散性が変わりやすく、電気抵抗を均一にすることが難しい。しかも、押出し時のP/L(パーティングライン)等の問題が発生する。また、遠心成形の方法では、遠心力により液状塗料中の導電剤が厚み方向の外側に偏在するため、電気抵抗の均一性に劣る。また、ディッピングの方法では、基体の外周面に付着した液状塗料中に導電剤が均一に分散しているが、液体塗料が下方に垂れて塗膜の厚みが下側ほど厚くなる。しかも、電気抵抗は、塗膜の乾燥条件(乾燥時間等)により変化しやすいため、特にディッピングのように、上下方向で乾燥速度が徐々に変化する場合には、上下方向の電気抵抗の傾きが発生する。そこで、現状では、ディッピング中に基体を上下にひっくり返して上下の厚みを同じにしようとしているが、作業が大変である。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、電気抵抗の均一化を図ることができ、これにより、高画質画像を得ることができる電子写真用無端ベルトの製法の提供をその目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の電子写真用無端ベルトの製法は、周方向に回転しうる円筒形基体と、この円筒形基体の外周面に近接する位置で上記円筒形基体の軸方向に沿って移動しうるノズルとを準備し、上記円筒形基体を周方向に回転させ、その状態で、上記円筒形基体の外周面に近接させたノズルから上記外周面に向かって液体塗料を吐出させ、同時に、上記ノズルを円筒形基体の軸方向に沿って移動させることにより、上記円筒形基体の外周面に液体塗料をらせん状に塗布して上記外周面に上記らせん状塗膜の連続による全体塗膜を形成し、この全体塗膜を乾燥させたのち、上記円筒形基体から抜き取り電子写真用無端ベルトを得るようにしたという構成をとる。
【0006】
すなわち、本発明の電子写真用無端ベルトの製法は、周方向に回転しうる円筒形基体と、この円筒形基体の外周面に近接する位置で上記円筒形基体の軸方向に沿って移動しうるノズルとを準備している。そして、上記円筒形基体を周方向に回転させ、その状態で、上記円筒形基体の外周面に近接させたノズルから上記外周面に向かって液体塗料を吐出させ、同時に、上記ノズルを円筒形基体の軸方向に沿って移動させることにより、上記円筒形基体の外周面に液体塗料をらせん状に塗布して上記外周面に上記らせん状塗膜の連続による全体塗膜を形成し、この全体塗膜を乾燥させたのち、上記円筒形基体から抜き取り電子写真用無端ベルトを得るようにしている。このように、本発明の電子写真用無端ベルトの製法では、円筒形基体の外周面に液体塗料をらせん状に塗布し、この連続する1本のらせん状の帯(塗膜)で全体塗膜を形成している。したがって、液体塗料が円筒形基体の外周面に徐々に塗布されていき、この塗布の際に、らせん状の帯のなかで液体塗料が垂れても、その垂れ幅は小さく、このため、乾燥速度が均一になり、その結果、電気抵抗が均一になる。また、らせん状の帯のなかで液体塗料が垂れても、その垂れ量が小さいため、らせん状の帯のなかでの導電剤の偏在が小さく、全体的にみれば導電剤の分散が均一になるうえ、膜厚も均一になる。このように、電気抵抗および膜厚を均一にすることができ、高画質画像が得られる。
【0007】
しかも、塗料の高濃度化が可能であるため、厚膜成形に有利であり、層構成の簡素化により生産性が向上するとともに、乾燥時間の短縮,溶剤使用量の削減を図ることができる。しかも、円筒形基体の必要部分にのみ液体塗料を塗布すればよく、ディッピングの方法に比べ、液体塗料のロスが減少する。
【0008】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態について説明する。
【0009】
本発明の電子写真用無端ベルトの製法は、周方向に回転しうる円筒形基体と、この円筒形基体の外周面に近接する位置で上記円筒形基体の軸方向に沿って移動しうるノズルと、このノズルから吐出される液体塗料とを用いて行われる。
【0010】
上記円筒形基体としては、金属(鉄,アルミニウム,ステンレス等)製の回転ドラム等が用いられる。また、上記円筒形基体の直径は30〜350mmであり、軸方向の長さは300〜600mmである。このような大きさであると、電子写真機器用の電子写真用無端ベルトを作製するのに、好適である。また、上記円筒形基体の回転数は50〜500rpmである。回転数が500rpmを上回ると、遠心力が強すぎて塗料が飛び散り、50rpmを下回ると、重力で塗料が下に落ちてしまうからである。
【0011】
上記ノズルとしては、ニードルノズル等が用いられる。また、上記ノズルの吐出部形状としては、丸形状,平形状,矩形状等のものを用いることができる。ノズルの円筒形基体の軸方向に沿って移動する速度、ノズルと円筒形基体との距離は、液体塗料の粘度,ノズル形状,吐出圧等に応じて適宜設定できるが、液体塗料の吐出量は0.15〜0.25g/secにすることが好ましく、その流量変動は2%以内にする必要がある。
【0012】
上記液体塗料としては、フッ素樹脂系,塩化ビニル系,ABS樹脂系,ポリメチルメタクリレート(PMMA)系,ポリカーボネート(PC)系,ポリエチレンテレフタレート(PET)系,アクリルゴム系,ポリウレタン系等の樹脂に、導電性金属酸化物,金属粉末,カーボンブラック,イオン性導電剤等の導電剤、アセトン,酢酸エチル,トルエン,メタノール等の溶剤を混合したものが用いられる。なお、液体塗料を形成する樹脂としては、円筒形基体との離型性の点からフッ素樹脂系のものが好ましい。また、液体塗料の粘度は100〜10000mPa・sに設定される。
【0013】
電子写真用無端ベルトは、上記の円筒形基体,ノズル,液体塗料を用い、つぎのようにして作製される。すなわち、まず、上記円筒形基体を周方向に回転させる。その状態で、上記円筒形基体の外周面に近接させたノズルから上記外周面に向かって液体塗料を吐出させる。と同時に、上記ノズルを円筒形基体の軸方向に沿って一定速度で移動させる。これにより、上記円筒形基体の外周面に液体塗料を一定幅でらせん状に塗布して上記外周面に上記らせん状塗膜の連続による全体塗膜を形成する。なお、上記塗布の際に、円筒形基体の外周面に液体塗料を連続して塗布するだけではなく、円筒形基体の外周面に一周塗布する帯状の液体塗料と、そのつぎに一周塗布する帯状の液体塗料とが、円筒形基体の外周面の全ての部分で、円筒形基体の軸方向においても隙間なく繋がっているようにする。つぎに、この全体塗膜を乾燥させ、そののち、これを円筒形基体から抜き取ることを行う。これにより、電子写真用無端ベルトを得ることができる。
【0014】
上記製法により得られる電子写真用無端ベルトは、その厚みが50〜500μmであり、内周長が90〜1100mmであり、幅が100〜500mmである。
【0015】
上記電子写真用無端ベルトは、そのベルト全体における膜厚分布幅(この膜厚分布幅は、〔(最大値−最小値)/(最小値)〕×100で求められる)が10%以下であり、ベルトの軸方向に1〜20mmの等ピッチで、高さが0.01〜2μmのうねり形状を持っている。この軸方向のうねり形状は、目視で模様として見ることができる。また、上記電子写真用無端ベルトの層構成は、一層であってもよく、多層であってもよい。多層の場合には、一度塗り終えたのちにノズルを元の位置に戻してさらに重ね塗りし、もしくは別のノズルを用いて(塗り終えた部分を)重ね塗りすることを行う。また、多層の場合にも、各層ごとにみて、ベルト全体における膜厚分布幅が10%以下であるようにする。なお、多層の場合には、表層をディッピングしてもよい。
【0016】
また、上記電子写真用無端ベルトは、そのベルト全体における表側の表面抵抗率,裏側の表面抵抗率および体積抵抗率それぞれの分布幅が0.2桁以下で、ベルトの軸方向に等ピッチで0.1桁以下の微少なうねり波形の抵抗分布を持っている。
【0017】
なお、本発明の電子写真用無端ベルトは、主としてフルカラー複写機,フルカラープリンター等の中間転写体として用いられるが、フルカラーではない単色の電子写真複写機等の中間転写体として用いることもできる。
【0018】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0019】
まず、実施例および比較例に先立って、下記に示す液体塗料を準備した。
【0020】
【実施例】
Poly(VdF−TFE)(カイナーSL;アトフィナジャパン社製)とc−TiO2 (チタンブラック13M;三菱マテリアル社製)にアセトン(溶剤)を所定量混合し、ボールミルで混練、攪拌して液体塗料を作製した。この液体塗料の粘度を5000mPa・s(B型粘度計の測定値)に調整した。
【0021】
また、金型として、アルミニウム製の円筒形基体を準備し、ノズルとして、ディスペンサーを準備した。このノズルは、内径φ1mmのニードルノズルである。
【0022】
そして、図1に示すように、液体塗料3(図2参照)をエアー加圧タンク(図示せず)に収容し、円筒形基体1およびノズル2をセットした。このとき、円筒形基体1の外周面とノズル2とのクリアランスを1mmに設定した。つぎに、円筒形基体1を回転数200rpmで回転させながらノズル2を1mm/secの移動速度で軸方向に下降させ、同時に、エアー加圧タンクに0.4MPaの圧力をかけて液体塗料3をノズル2に圧送し、ノズル2から液体塗料3を吐出して円筒形基体1の外周面上にらせん状にコーティングし(図2参照)、円筒形基体1の外周面上にらせん状塗膜の連続による全体塗膜4を形成した(図3参照)。このとき、液体塗料3の吐出は、吐出量0.2g/sec,変動2%以内になるようにして行った。コーティング後に全体塗膜4を乾燥・溶剤除去し、つぎに、加熱処理(例えば、60〜150℃×60分)を行い、そののち、円筒形基体1を抜き取り、無端ベルト5(図4参照)を得た。
【0023】
【比較例】
上記液体塗料を収容した収容槽を準備し、この収容槽中にアルミニウム製の円筒形基体を浸漬し、円筒形基体の外周面に液体塗料を付着させたのち、引き上げた。つぎに、乾燥・溶剤除去後、加熱処理(例えば、60〜150℃×60分)を行い、そののち、円筒形基体を抜き取り、無端ベルトを得た。
【0024】
このようにして得られた実施例品および比較例品を用い、下記の測定条件で、電気抵抗値およびうねり形状を測定した。
【0025】
〔電気抵抗値〕
測定器として、ハイレスタ(三菱化学社製)を用い、測定条件(HRSプローブ使用,500V・10sec印加)で、実施例品および比較例品の電気抵抗値(無端ベルト4裏面側の表面抵抗率)を測定した。測定位置は、無端ベルト4の幅方向で3点(一端部,中央部,他端部)とした。その測定結果を、下記の表1に示す。
【0026】
【表1】
Figure 2004109654
【0027】
〔うねり形状〕
測定器として、サーフコム(東京精密社製)を用い、下記の表2に示す測定条件で、実施例品および比較例品の断面形状および表面形状を測定した。その測定結果を、図5に示す。
【0028】
【表2】
Figure 2004109654
【0029】
上記測定結果から明らかなように、電気抵抗値も全体の膜厚分布幅も、実施例品のほうが比較例品より小さいことが判る。
【0030】
【発明の効果】
以上のように、本発明の電子写真用無端ベルトの製法によれば、円筒形基体の外周面に液体塗料をらせん状に塗布し、この連続する1本のらせん状の帯(塗膜)で全体塗膜を形成している。したがって、円筒形基体の外周面に液体塗料を徐々に塗布することができ、しかも、1本のらせん状の帯のなかで液体塗料が垂れても、その垂れ幅が小さいため、1本のらせん状の帯の全ての部分(各部分)で乾燥速度が均一になり、その結果、電気抵抗が均一になる。また、1本のらせん状の帯のなかで液体塗料が垂れても、その垂れ量が小さいため、1本のらせん状の帯のなかでの導電剤の偏在が小さく、全体的にみれば導電剤の分散が均一になっている。しかも、上記したように、液体塗料のタレ量が小さいため、膜厚も均一になる。このように、電気抵抗および膜厚を均一にすることができ、高画質画像が得られる。
【0031】
しかも、塗料の高濃度化が可能であるため、厚膜成形に有利であり、層構成の簡素化により生産性が向上するとともに、乾燥時間の短縮,溶剤使用量の削減を図ることができる。しかも、円筒形基体の必要部分にのみ液体塗料を塗布すればよく、ディッピングの方法に比べ、液体塗料のロスが減少する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真用無端ベルトの製法の実施例に用いる円筒形基体およびノズルの説明図である。
【図2】上記円筒形基体およびノズルの作用を示す説明図である。
【図3】上記円筒形基体およびノズルの作用を示す説明図である。
【図4】無端ベルトの説明図である。
【図5】測定結果を示す図である。
【符号の説明】
1 円筒形基体
2 ノズル
3 液体塗料

Claims (1)

  1. 周方向に回転しうる円筒形基体と、この円筒形基体の外周面に近接する位置で上記円筒形基体の軸方向に沿って移動しうるノズルとを準備し、上記円筒形基体を周方向に回転させ、その状態で、上記円筒形基体の外周面に近接させたノズルから上記外周面に向かって液体塗料を吐出させ、同時に、上記ノズルを円筒形基体の軸方向に沿って移動させることにより、上記円筒形基体の外周面に液体塗料をらせん状に塗布して上記外周面に上記らせん状塗膜の連続による全体塗膜を形成し、この全体塗膜を乾燥させたのち、上記円筒形基体から抜き取り電子写真用無端ベルトを得るようにしたことを特徴とする電子写真用無端ベルトの製法。
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