JP2004108731A - ハイブリッド空調機 - Google Patents

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【課題】臭化リチウム水溶液を作動流体とする吸収式冷凍機を用いた空調機において、溶液濃度を上げることなく空調能力の増大が可能であるとともに、維持、管理が容易なハイブリッド空調機の提供にある。
【解決手段】吸収式冷凍機2の吸収熱交換器71における除熱を促進するため、圧縮式冷凍機3により冷媒を吸収熱交換器71に循環させて、吸収熱を大気に放出させる。このため、従来の水冷式ないし空冷式の除熱方法に伴う維持、管理の問題を回避でき、かつ、冷房能力を増大できる。また、圧縮式冷凍機3はコンパクトであるとともに多量に生産されているため低コストであり、設置スペースの有効利用が可能になる。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、吸収式冷凍機と圧縮ヒートポンプとを組み合わせたハイブリッド空調機に関する。
【0002】
【従来の技術】
臭化リチウムなどのリチウム塩溶液(吸収溶液)を使用する吸収式冷凍機は、再生器で吸収液を加熱して溶媒蒸気と濃縮吸収溶液とに分離し、冷凍ユニットに供給する。冷凍ユニットは、溶媒蒸気を液化させる凝縮器、液化溶媒を蒸発させながら空調流体を冷却する蒸発器、および蒸発した溶媒を吸収して液化溶媒の蒸発を持続させる吸収器を備えている。凝縮器および吸収器には、凝縮熱および溶媒蒸気の吸収時に生じる吸収熱を大気中に排出するため、水冷式冷却塔(クーリングタワー)に冷却水を循環させる冷却機構が付設されている。
【0003】
吸収式冷凍機の冷凍能力は、蒸発器での液化溶媒の蒸発量と比例しており、蒸発量は吸収器での吸収量に依存している。冷凍能力の向上または冷凍ユニットの小型化には、吸収器での溶媒蒸気の吸収効率を向上させることが重要である。吸収効率の向上は、吸収器での吸収液と溶媒蒸気との接触面積を増大させること、および発生した吸収熱を冷却水に迅速に伝達(熱引き)させることにより達成できる(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−61986公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
水冷式冷却塔は、水および水に溶けた溶質の除去のために維持、管理(メンテナンス)に手間がかかり、家庭用など小型の空調機では負担が大きく、実用性が低下する原因となっている。空冷式冷却塔を使用すれば維持、管理が容易であるが、水冷式冷却塔が冷却水により40℃付近まで吸収溶液を冷却できる(空調流体を5〜6℃まで下げられる)のに対し、空冷式冷却塔は空気により吸収溶液を50℃程度までしか冷却できない(空調流体は約10℃までしか下げられない)ため空冷式にて空調流体を5〜6℃まで下げるには、溶液濃度を5%程度上げる必要が生じる。溶液濃度を5%程度上げると、溶液の晶析、再生器の温度上昇、それにともなう材料の腐食、水素の発生などの問題が生ずる。
【0006】
この発明の目的は、溶液濃度を上げることなく空調能力の増大が可能であるとともに、維持、管理が容易なハイブリッド空調機の提供にある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明のハイブリッド空調機は、吸収溶液を加熱して溶媒と濃縮吸収溶液とに分離する再生器、分離された溶媒蒸気を凝縮する溶媒凝縮器、溶媒を蒸発させて蒸発熱により空調流体を冷却する溶媒蒸発器、蒸発した溶媒を濃縮吸収溶液に吸収させながら発生する吸収熱を吸熱する吸収器、溶媒を吸収して希釈された吸収溶液を再生器に還流させるポンプを有する吸収式冷凍機と、
空調流体が循環する空調熱交換器を備えた空調機と、
冷媒圧縮機、冷媒凝縮器、冷媒膨張弁および吸収器をこの順で冷媒を流す冷媒流路で直列に連結した圧縮式冷凍機とからなり、
冷媒に吸熱させた吸収熱を圧縮式冷凍機で大気に放出することを特徴とする。
【0008】
【発明の効果】
この発明では、圧縮式冷凍機により吸収器に冷媒を循環させて吸収熱を大気に放出させる。このため、メンテナンスが容易であるとともに、冷房能力が増大でき、かつ吸収式冷凍機の問題を回避できる。また、圧縮式冷凍機はコンパクトであるとともに多量に生産されているため低コストであり、設置スペースの有効利用が可能になる。
【0009】
【発明の実施の形態】
この発明を図に示す実施例とともに説明する。図1は第1実施例にかかるハイブリッド空調機1を示す。ハイブリッド空調機1は、臭化リチウム水溶液などのリチウム塩溶液(以下、吸収溶液と称する)を作動流体とした吸収式冷凍機2と、フレオン、炭酸ガスなど圧縮性流体(以下、冷媒と称する)を作動流体とする圧縮式冷凍機3と、水などの空調流体(以下、空調水と称する)を作動流体とする空調機4とを組み合わせた構成を有する。
【0010】
吸収式冷凍機2は、高温再生器21と、その上方に配された分離器22と、負圧タンク5とを有し、それぞれが吸収溶液または溶媒の流路で連結されている。高温再生器21は、溶液ポンプ23が設けられた低濃度の吸収溶液(淡液と称する)の淡液流路24を経由して、負圧タンク5の底部から淡液が還流する溶液タンク25と、該溶液タンク25を加熱するための加熱源(バーナ)Bとを備えている。高温再生器21で加熱され沸騰した淡液は、分離器22で水(溶媒)蒸気と、濃縮した中濃度の吸収溶液(中液と称する)とに分離される。
【0011】
水蒸気と高温度の中液とは、それぞれ溶媒流路26および中液流路27を経て、負圧タンク5内の上部に設置された低温再生器51に、区分して供給される。この際に中液流路27を流れる高温度の中液と、淡液流路24を経て溶液タンク25に還流する淡液とは、熱効率の向上のために高温熱交換器11で熱交換される。低温再生器51内には、再生熱交換器52が備えられ、溶媒流路26内の水蒸気と中液との熱交換が行われ、水蒸気は凝縮して水となり、この際に生じる凝縮熱で中液は再沸騰して水蒸気と、高濃度の吸収溶液(濃液と称する)とが生成される。
【0012】
低温再生器51で生成した水蒸気は負圧タンク5内の上部に設置された溶媒凝縮器6に導かれて凝縮し水となり、低温再生器51で生成した水(溶媒)とともに水(溶媒)容器61に溜まる。この実施例では、溶媒凝縮器6内の水蒸気は、水蒸気流路62を通って後記する圧縮式冷凍機3の送風機33により強制冷却される外部熱交換器63に導かれ、凝縮して溶媒容器61に還流する。この際に発生する凝縮熱は、外部熱交換器63から大気に放出される。
【0013】
負圧タンク5の下部には、吸収熱交換器71を備えた吸収器7と、蒸発熱交換器81を備えた溶媒蒸発器8とが設けられている。吸収熱交換器71には、濃液流路64を経て供給される濃液が上から散布される。この際に、濃液は、淡液流路24を経て溶液タンク25に還流する淡液と低温熱交換器12内で熱交換される。蒸発熱交換器81には、溶媒容器61に溜まった水が溶媒流路65を通して上から散布される。
【0014】
蒸発熱交換器81に散布された水は、蒸発熱交換器81の表面で蒸発し、蒸発熱で蒸発熱交換器81内を流れる空調水を冷却する。蒸発した水は、吸収熱交換器71の表面で濃液に吸収され、この際に発生する吸収熱は、吸収熱交換器71内を流れる冷媒に吸収される。
【0015】
圧縮式冷凍機3は、冷媒流路30によって連結された冷媒圧縮機31と、該冷媒圧縮機31に冷媒流路30で連結され、圧縮され高温度となった冷媒を冷却する冷媒凝縮器32とを備えている。冷媒凝縮器32は空冷の熱交換器であり、付設された送風機33により凝縮熱を大気に放出する。凝縮された冷媒は膨張弁34で膨張して低温になり、冷媒流路30によって連結された吸収熱交換器71に供給される。低温になった冷媒は、吸収熱交換器71の表面で発生した吸収熱を吸収して吸収液を冷却する。すなわち、圧縮式冷凍機3は、吸収器7で発生する吸収熱を、迅速に大気に放出する作用を有し、ハイブリッド空調機1の冷房能力を増大させている。
【0016】
空調機4は、この実施例では空調流体が水である水冷式空調機であり、水ポンプ41を備えた冷水流路42によって、室内熱交換器などの負荷43と、冷熱源として溶媒蒸発器8の蒸発熱交換器81とが連結されている。
【0017】
ハイブリッド空調機1の作用を説明する。吸収式冷凍機2の運転により生成した濃液と水とを、それぞれ、吸収熱交換器71と蒸発熱交換器81とに散布し、吸収熱交換器71で生じた吸収熱を圧縮式冷凍機3の冷媒凝縮器32で大気に放出しながら、蒸発熱交換器81で空調水を冷却する。このハイブリッド空調機1では、メンテナンスが容易で、量産されている圧縮式冷凍機3を有効利用しているので、水冷式冷却塔を使用する吸収式空調装置に比較し、実用性が高い。また、圧縮式冷凍機3の送風機33を、水(溶媒)の凝縮に有効利用しているため、凝縮効率が高い。
【0018】
図2は、第2実施例のハイブリッド空調機1Aを示す。この発明では、溶媒凝縮器6は、内部熱交換器66Aを有し、送風機33により吸引誘導された外気が内部熱交換器66Aを流動し、溶媒(水)を凝縮するとともに凝縮熱を大気に放出する。この構成では、負圧タンク5内に設置した内部熱交換器66Aを採用しているので、外部熱交換器63の場合に比べて、設置性に優れる。
【0019】
図3は、第3実施例のハイブリッド空調機1Bを示す。この発明では、溶媒凝縮器6は、圧縮式冷凍機3の冷媒が流れる内部熱交換器66Bを有している。内部熱交換器66Bは、吸収熱交換器71の下流に位置し、冷媒流路30で冷媒圧縮機31に連結されている。この構成では、低温度の冷媒で溶媒蒸気を凝縮できるので、凝縮能力が高くでき、外気が高温度の状態でも冷房能力の低下を有効に防止できる。
【0020】
図4は、第4実施例のハイブリッド空調機1Cを示す。この発明では、水ポンプ41を備えた冷水流路42によって、暖房用の室内熱交換器としての負荷43、吸収器7の吸収熱交換器71および溶媒凝縮器6の内部熱交換器66Cが直列に連結されている。圧縮式冷凍機3は大気から負圧タンク5内に熱を吸収させるヒートポンプとして使用され、暖房空調機として使用されている。冷媒圧縮機31から吐出された高温度の冷媒は、溶媒の蒸発を迅速に促進する。この蒸発で溶媒に伝達された蒸発熱は、吸収熱として吸収器7の吸収熱交換器71内を流れる空調流体を加熱する。さらに高温再生器21の加熱源Bにより与えられた熱が凝縮熱として凝縮器6の内部熱交換器66Cで空調流体を加熱し、暖房用の室内熱交換器などの負荷43に循環する。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例のハイブリッド空調機の概略図である。
【図2】第2実施例のハイブリッド空調機の概略図である。
【図3】第3実施例のハイブリッド空調機の概略図である。
【図4】第4実施例のハイブリッド空調機の概略図である。
【符号の説明】
1、1A、1B、1C ハイブリッド空調機
2  吸収式冷凍機
21 高温再生器
23 溶液ポンプ
3  圧縮式冷凍機
30 冷媒流路
31 冷媒圧縮機
32 冷媒凝縮器
33 送風機
34 膨張弁(冷媒膨張弁)
43 負荷
5  負圧タンク
51 低温再生器
6  溶媒凝縮器
63 外部熱交換器
66A、66B、66C 内部熱交換器
7  吸収器
8  溶媒蒸発器
B  加熱源

Claims (6)

  1. 吸収溶液を加熱して溶媒と濃縮吸収溶液とに分離する再生器、分離された溶媒蒸気を凝縮する溶媒凝縮器、前記溶媒を蒸発させて蒸発熱により空調流体を冷却する溶媒蒸発器、蒸発した溶媒を前記濃縮吸収溶液に吸収させながら発生する吸収熱を吸熱する吸収器、溶媒を吸収して希釈された吸収溶液を前記再生器に還流させるポンプを有する吸収式冷凍機と、
    前記空調流体が循環する空調熱交換器を備えた空調機と、
    冷媒圧縮機、冷媒凝縮器、冷媒膨張弁および前記吸収器をこの順で冷媒を流す冷媒流路で直列に連結した圧縮式冷凍機とからなり、
    冷媒に吸熱させた吸収熱を圧縮式冷凍機で大気に放出することを特徴とするハイブリッド空調機。
  2. 請求項1において、前記再生器は、加熱源で低濃度リチウム塩溶液を加熱して溶媒を蒸発させるとともに中濃度リチウム塩溶液を生成する高温再生器と、前記溶媒蒸気の凝縮熱で前記中濃度リチウム塩溶液を再加熱し、溶媒を蒸発させるとともに高濃度リチウム塩溶液を生成する低温再生器からなることを特徴とするハイブリッド空調機。
  3. 請求項1または2において、前記溶媒凝縮器は、前記冷媒凝縮器に付設した送風機の送風域に設置され、溶媒蒸気が循環する外部熱交換器を備えることを特徴とするハイブリッド空調機。
  4. 請求項1または2において、前記溶媒凝縮器は、前記溶媒凝縮器内に設置され、前記冷媒凝縮器に付設した送風機により外気が流通する内部熱交換器を備えることを特徴とするハイブリッド空調機。
  5. 請求項1または2において、前記溶媒凝縮器は、前記冷媒圧縮機と前記吸収器の間の冷媒流路に設置され、かつ、前記溶媒凝縮器内に設置された内部熱交換器を備え、前記吸収器の吸収熱とともに前記溶媒凝縮器の凝縮熱を圧縮式冷凍機で大気に放出することを特徴とするハイブリッド空調機。
  6. 吸収溶液を加熱して溶媒と濃縮吸収溶液とに分離する再生器、分離された溶媒蒸気を凝縮して空調流体を加熱する溶媒凝縮器、前記溶媒を蒸発させる溶媒蒸発器、蒸発した溶媒を前記濃縮吸収溶液に吸収させながら吸収熱で前記空調流体を加熱する吸収器、溶媒を吸収して希釈された吸収溶液を前記再生器に還流させるポンプを有する吸収式冷凍機と、
    前記空調流体が循環する空調熱交換器を備えた空調機と、
    冷媒圧縮機、前記溶媒蒸発器、冷媒膨張弁および冷媒蒸発器をこの順で冷媒を流す冷媒流路で直列に連結した圧縮式冷凍機とからなり、
    圧縮式冷凍機で大気熱を吸収し前記溶媒蒸発器で溶媒の蒸発熱として放出することを特徴とするハイブリッド空調機。
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