JP2004108696A - 金属溶融精製装置,及び金属精製方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】電子ビームを用いて金属を溶融して精製するときに,溶融金属の攪拌を促進する技術を提供する。
【解決手段】本発明による金属溶融精製装置は,真空容器(1)と,真空容器(1)の内部に設けられ,溶融金属(4)を収容する坩堝(3)と,電子ビーム(6)を生成し,溶融金属(4)に照射する電子銃(5)とを備えている。電子銃(5)は,電子ビーム(6)が溶融金属(4)に照射される照射位置が溶融金属(4)の振動に同期して移動するように,電子ビーム(6)を走査する。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明による金属溶融精製装置は,真空容器(1)と,真空容器(1)の内部に設けられ,溶融金属(4)を収容する坩堝(3)と,電子ビーム(6)を生成し,溶融金属(4)に照射する電子銃(5)とを備えている。電子銃(5)は,電子ビーム(6)が溶融金属(4)に照射される照射位置が溶融金属(4)の振動に同期して移動するように,電子ビーム(6)を走査する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,金属溶融精製装置に関する。本発明は,特に,金属を電子ビームにによって加熱して溶融し,不純物を蒸発させて除去する金属溶融精製装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
シリコン,鉄などの金属の精製には,金属を電子ビームによって加熱して溶融し,不純物を蒸発させて除去する金属溶融精製装置がしばしば使用される。典型的な金属溶融精製装置は,溶融金属を収納する坩堝と電子銃とを含む。電子銃は,溶融金属の表面に電子ビームを照射して溶融金属の表面を加熱する。溶融金属の表面の近傍にある不純物は,加熱されて蒸発し,溶融金属が精製される。
【0003】
溶融金属をより高純度に精製するためには,溶融金属が充分に攪拌されることが重要である。電子ビームを用いた金属溶融精製装置では,不純物が除去されるのは,電子ビームが照射される溶融金属の表面の近傍であり,坩堝の底にある溶融金属は高純度化されない。溶融金属の高純度化のためには,溶融金属を攪拌し,溶融金属の全体を表面に曝す必要がある。
【0004】
特許文献1は,シリコンを精製するときに,坩堝に超音波を印加することによって,溶融シリコンを攪拌する技術を開示している。
【0005】
特許文献2は,真空機器用の材料を溶融して精製するときに,電子ビームの衝撃により該材料の溶融層を攪拌する技術を開示している。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−1821138号公報
【特許文献2】
特開平6−73465号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、電子ビームを用いて金属を溶融して精製するときに,溶融金属の攪拌を促進する技術を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
以下に、[発明の実施の形態]で使用される番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、[特許請求の範囲]の記載と[発明の実施の形態]の記載との対応関係を明らかにするために付加されている。但し、付加された番号・符号は、[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0009】
本発明による金属溶融精製装置は,真空容器(1)と,真空容器(1)の内部に設けられ,溶融金属(4)を収容する坩堝(3)と,電子ビーム(6)を生成し,溶融金属(4)に照射する電子銃(5)とを備えている。電子銃(5)は,電子ビーム(6)が溶融金属(4)に照射される照射位置が溶融金属(4)の振動に同期して移動するように,電子ビーム(6)を走査する。電子ビーム(6)の照射位置が溶融金属(4)の振動に同期して移動することにより,溶融金属(4)の振動が拡大され,溶融金属(4)の攪拌が促進される。
【0010】
電子銃(5)は,溶融金属(4)に定在波が発生するように電子ビーム(6)を走査することが好ましい。溶融金属(4)に定在波が発生することにより,溶融金属(4)の各点の振動は極大化され,溶融金属(4)の攪拌が促進される。
【0011】
本発明の金属溶融精製装置は,真空容器(1)と,真空容器(1)の内部に設けられ,溶融金属(4)を収容する坩堝(3’)と,電子ビーム(6)を生成し,溶融金属(4)に照射する電子銃(5)と,溶融金属(4)の表面(4a)にガス流(8)を吹き付けるノズル(7a)とを備えている。ガス流(8)が溶融金属(4)の表面(4a)に吹き付けられることにより,溶融金属(4)には力が印加され,溶融金属(4)は波立つ。これにより,溶融金属(4)の攪拌が促進される。
【0012】
ガス流(8)は,溶融金属(4)に含まれる不純物と反応する活性ガスを含むことが好ましい。このような構成は,溶融金属(4)の攪拌を促進するとともに,不純物との反応を利用した高純度化を実現し,一石二鳥である。
【0013】
溶融金属(4)の攪拌を一層に促進するためには,ガス流(8)は,断続的に表面(4a)に吹き付けられることが好適である。
【0014】
当該金属溶融精製装置が,更に,他のガス流(8)を溶融金属(4)の表面(4a)に吹き付ける他のノズル(7b)を備えている場合,他のノズル(7b)は,ノズル(7a)が吹き付けるガス流が溶融金属(4)に生じさせる流れと同一の方向の流れを溶融金属(4)に生じさせる方向に,ガス流を溶融金属(4)の表面(4a)に吹き付けることが好適である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しながら、本発明による金属溶融精製装置の実施の形態を説明する。
【0016】
(実施の第1形態)
図1は、本発明による金属溶融精製装置の実施の第1形態を示す。実施の第1形態では,真空容器1が,排気装置2とともに設けられている。排気装置2は,真空容器1を低圧力に,典型的には,10−4Paオーダーに排気する。
【0017】
坩堝3が,真空容器1の中に収容されている。坩堝3の中には,精製される対象である溶融金属4が入れられる。不純物の混入を防止するために,坩堝3は,熱伝導性が高い銅で形成される。高温になる坩堝3には,図示されない水冷系によって冷却水が供給され,坩堝3は,供給された冷却水によって水冷される。図2に示されているように,坩堝3の,溶融金属4を収容する開口は,鉛直方向から見て概ね正方形である。
【0018】
図1に示されているように,真空容器1には,電子銃5が設けられる。電子銃5は,電子ビーム6を発生して溶融金属4に照射する。電子ビーム6の照射により,溶融金属4の表面4aの近傍は加熱される。溶融金属4が加熱されると,表面4aの近傍にある不純物は蒸発し,溶融金属4が精製される。溶融金属4の全体を加熱するために,電子ビーム6は走査される。
【0019】
真空容器1には,真空容器1の内部に活性ガス8を導入するガス導入ノズル7が設けられている。溶融金属4に含まれる不純物との反応性が高いガスが,活性ガス8として使用される。典型的には,水素ガス(H2),又は酸素ガス(O2)を含むガスが活性ガス8として使用される。活性ガス8が微少に真空容器1の内部に導入されると,溶融金属4に含まれる不純物は,活性ガス8と化合して溶融金属4から離脱する。活性ガス8の真空容器1の内部への導入は,溶融金属4の精製を促進する。
【0020】
実施の第1形態では,溶融金属4の精製が以下の手順で行われる。真空容器1が充分に低圧に排気された後,電子銃5によって電子ビーム6が発生され,溶融金属4に照射される。溶融金属4は,電子ビーム6の照射によって加熱されて溶融される。加熱により,溶融金属4の表面4aの近傍の不純物は蒸発し,溶融金属4から取り除かれる。
【0021】
図2を参照して,電子ビーム6は,電子ビーム6が溶融金属4に照射される照射位置の軌跡が、実質的に円形であるように走査される。
【0022】
溶融金属4の攪拌を促進するために,電子ビーム6は,電子ビーム6の照射位置が溶融金属4の振動に同期して移動するように走査される。電子ビーム6の照射位置が溶融金属4の振動に同期して移動することにより,溶融金属4の波立ちが増幅され,溶融金属4は一層によく攪拌される。電子ビーム6の照射位置の移動を溶融金属4の振動に同期させることは,電子ビーム6を充分に遅く走査することによって達成可能である。溶融金属4が鉄であり,坩堝3の溶融金属4を収容する開口の大きさが20×20cmであり,電子ビーム6の照射位置の軌跡が,直径15cmの円である場合には,電子ビーム6の走査の周波数を5Hz以下にすることにより,電子ビーム6の照射位置の移動は溶融金属4の振動に同期する。
【0023】
電子ビーム6の照射位置の移動速度は,溶融金属4に定在波が発生するように選択されることが好適である。定在波の発生は,溶融金属4の振動を最大化し,溶融金属4の攪拌を促進する。
【0024】
(実施の第2形態)
実施の第2形態では,実施の第1形態と異なる手段によって溶融金属4の攪拌が促進される。図3に示されているように,実施の第2形態では,複数のガス導入ノズル7a,7bが,真空容器1に設けられる。活性ガス8は,ガス導入ノズル7a,7bを介して真空容器1に導入される。ガス導入ノズル7a,7bの先端は,溶融金属4の表面4aに近接され,ガス導入ノズル7a,7bは,活性ガス8を,溶融金属4の表面4aに対して斜めに吹き付ける。図4に示されているように,実施の第1形態では,溶融金属4を収容する坩堝3の開口は矩形であったのに対し,実施の第2形態では溶融金属4を収容する坩堝3’の開口は,鉛直方向から見て円形である。ガス導入ノズル7a,7bは,坩堝3’の開口の中心3aに対して回転対称に設けられ,活性ガス8は,ガス導入ノズル7a,7bから,坩堝3’の開口の中心3aに対して回転対称に吹き付けられる。
【0025】
実施の第2形態では,溶融金属4の精製が以下の手順で行われる。実施の第1形態と同様に,電子ビーム6が溶融金属4に照射され,溶融金属4が加熱される。溶融金属4の加熱により,溶融金属4の表面4aの近傍の不純物は蒸発し,溶融金属4から取り除かれる。
【0026】
電子ビーム6の照射の間,活性ガス8がガス導入ノズル7a,7bによって溶融金属4の表面4aに吹き付けられ,これにより溶融金属4の攪拌が促進される。溶融金属4の表面4aに吹き付けられた活性ガス8は,溶融金属4に力を印加する。この力によって溶融金属4の表面4aは波立ち,これにより,溶融金属4の攪拌が促進される。
【0027】
図4を参照して,活性ガス8が,ガス導入ノズル7a,7bによって坩堝3’の開口の中心3aに対して回転対称に吹き付けられることは,溶融金属4の攪拌を一層に促進する点で好適である。活性ガス8の回転対称的な吹き付けにより,ガス導入ノズル7aから吹き付けられる活性ガス8が溶融金属4に生じさせる流れと,ガス導入ノズル7bから吹き付けられる活性ガス8が溶融金属4に生じさせる流れの方向が同一化され,溶融金属4が中心3aの周りに回転する。溶融金属4の回転により,溶融金属4の攪拌は促進される。
【0028】
図3を参照して,活性ガス8が断続的に供給されることは,溶融金属4の攪拌を一層に促進する点で好適である。溶融金属4の波立ちの拡大は,多くの流量の活性ガス8を溶融金属4に吹き付けて大きな力を溶融金属4に作用することによって達成し得る。しかし,電子ビーム6を溶融金属4に照射するためには,真空容器1は,ある程度低圧に保たれる必要があるため,活性ガス8の流量を大きくすることには限界がある。ある一定の短時間だけ大きな流量の活性ガス8を吹き付けて溶融金属4を大きく変位させた後,活性ガス8の供給を停止することにより,真空容器1を必要なだけ低圧に保ったまま溶融金属4を大きく振動させ,溶融金属4の攪拌を促進できる。
【0029】
実施の第2形態において,溶融金属4の攪拌を促進するための目的であれば,活性ガス8の代わりに,Ar等の不活性ガスが使用され得る。但し,活性ガス8の使用は,活性ガス8と不純物との化合による溶融金属4の高純度化を実現できる点で好適である。
【0030】
また,実施の第2形態において,坩堝3’の開口の形状は,円形に限られない。但し,坩堝3’の開口の形状が円形であることは,中心3aの周りに溶融金属4が回転したときに溶融金属4が澱むことを防止し,溶融金属4の全体の攪拌を促進する点で好適である。
【0031】
【発明の効果】
本発明により、電子ビームを用いて金属を溶融して精製するときに,溶融金属の攪拌を促進する技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明による金属溶融精製装置の実施の第1形態を示す。
【図2】図2は、坩堝3の形状と,電子ビーム6の軌跡を示す。
【図3】図3は、本発明による金属溶融精製装置の実施の第2形態を示す。
【図4】図4は、活性ガス8がガス導入ノズル7a,7bによって吹き付けられる態様を示す。
【符号の説明】
1:真空容器
2:排気装置
3,3’:坩堝
4:溶融金属
4a:表面
5:電子銃
6:電子ビーム
7,7a,7b:ガス導入ノズル
8:活性ガス
【発明の属する技術分野】
本発明は,金属溶融精製装置に関する。本発明は,特に,金属を電子ビームにによって加熱して溶融し,不純物を蒸発させて除去する金属溶融精製装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
シリコン,鉄などの金属の精製には,金属を電子ビームによって加熱して溶融し,不純物を蒸発させて除去する金属溶融精製装置がしばしば使用される。典型的な金属溶融精製装置は,溶融金属を収納する坩堝と電子銃とを含む。電子銃は,溶融金属の表面に電子ビームを照射して溶融金属の表面を加熱する。溶融金属の表面の近傍にある不純物は,加熱されて蒸発し,溶融金属が精製される。
【0003】
溶融金属をより高純度に精製するためには,溶融金属が充分に攪拌されることが重要である。電子ビームを用いた金属溶融精製装置では,不純物が除去されるのは,電子ビームが照射される溶融金属の表面の近傍であり,坩堝の底にある溶融金属は高純度化されない。溶融金属の高純度化のためには,溶融金属を攪拌し,溶融金属の全体を表面に曝す必要がある。
【0004】
特許文献1は,シリコンを精製するときに,坩堝に超音波を印加することによって,溶融シリコンを攪拌する技術を開示している。
【0005】
特許文献2は,真空機器用の材料を溶融して精製するときに,電子ビームの衝撃により該材料の溶融層を攪拌する技術を開示している。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−1821138号公報
【特許文献2】
特開平6−73465号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、電子ビームを用いて金属を溶融して精製するときに,溶融金属の攪拌を促進する技術を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
以下に、[発明の実施の形態]で使用される番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、[特許請求の範囲]の記載と[発明の実施の形態]の記載との対応関係を明らかにするために付加されている。但し、付加された番号・符号は、[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0009】
本発明による金属溶融精製装置は,真空容器(1)と,真空容器(1)の内部に設けられ,溶融金属(4)を収容する坩堝(3)と,電子ビーム(6)を生成し,溶融金属(4)に照射する電子銃(5)とを備えている。電子銃(5)は,電子ビーム(6)が溶融金属(4)に照射される照射位置が溶融金属(4)の振動に同期して移動するように,電子ビーム(6)を走査する。電子ビーム(6)の照射位置が溶融金属(4)の振動に同期して移動することにより,溶融金属(4)の振動が拡大され,溶融金属(4)の攪拌が促進される。
【0010】
電子銃(5)は,溶融金属(4)に定在波が発生するように電子ビーム(6)を走査することが好ましい。溶融金属(4)に定在波が発生することにより,溶融金属(4)の各点の振動は極大化され,溶融金属(4)の攪拌が促進される。
【0011】
本発明の金属溶融精製装置は,真空容器(1)と,真空容器(1)の内部に設けられ,溶融金属(4)を収容する坩堝(3’)と,電子ビーム(6)を生成し,溶融金属(4)に照射する電子銃(5)と,溶融金属(4)の表面(4a)にガス流(8)を吹き付けるノズル(7a)とを備えている。ガス流(8)が溶融金属(4)の表面(4a)に吹き付けられることにより,溶融金属(4)には力が印加され,溶融金属(4)は波立つ。これにより,溶融金属(4)の攪拌が促進される。
【0012】
ガス流(8)は,溶融金属(4)に含まれる不純物と反応する活性ガスを含むことが好ましい。このような構成は,溶融金属(4)の攪拌を促進するとともに,不純物との反応を利用した高純度化を実現し,一石二鳥である。
【0013】
溶融金属(4)の攪拌を一層に促進するためには,ガス流(8)は,断続的に表面(4a)に吹き付けられることが好適である。
【0014】
当該金属溶融精製装置が,更に,他のガス流(8)を溶融金属(4)の表面(4a)に吹き付ける他のノズル(7b)を備えている場合,他のノズル(7b)は,ノズル(7a)が吹き付けるガス流が溶融金属(4)に生じさせる流れと同一の方向の流れを溶融金属(4)に生じさせる方向に,ガス流を溶融金属(4)の表面(4a)に吹き付けることが好適である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しながら、本発明による金属溶融精製装置の実施の形態を説明する。
【0016】
(実施の第1形態)
図1は、本発明による金属溶融精製装置の実施の第1形態を示す。実施の第1形態では,真空容器1が,排気装置2とともに設けられている。排気装置2は,真空容器1を低圧力に,典型的には,10−4Paオーダーに排気する。
【0017】
坩堝3が,真空容器1の中に収容されている。坩堝3の中には,精製される対象である溶融金属4が入れられる。不純物の混入を防止するために,坩堝3は,熱伝導性が高い銅で形成される。高温になる坩堝3には,図示されない水冷系によって冷却水が供給され,坩堝3は,供給された冷却水によって水冷される。図2に示されているように,坩堝3の,溶融金属4を収容する開口は,鉛直方向から見て概ね正方形である。
【0018】
図1に示されているように,真空容器1には,電子銃5が設けられる。電子銃5は,電子ビーム6を発生して溶融金属4に照射する。電子ビーム6の照射により,溶融金属4の表面4aの近傍は加熱される。溶融金属4が加熱されると,表面4aの近傍にある不純物は蒸発し,溶融金属4が精製される。溶融金属4の全体を加熱するために,電子ビーム6は走査される。
【0019】
真空容器1には,真空容器1の内部に活性ガス8を導入するガス導入ノズル7が設けられている。溶融金属4に含まれる不純物との反応性が高いガスが,活性ガス8として使用される。典型的には,水素ガス(H2),又は酸素ガス(O2)を含むガスが活性ガス8として使用される。活性ガス8が微少に真空容器1の内部に導入されると,溶融金属4に含まれる不純物は,活性ガス8と化合して溶融金属4から離脱する。活性ガス8の真空容器1の内部への導入は,溶融金属4の精製を促進する。
【0020】
実施の第1形態では,溶融金属4の精製が以下の手順で行われる。真空容器1が充分に低圧に排気された後,電子銃5によって電子ビーム6が発生され,溶融金属4に照射される。溶融金属4は,電子ビーム6の照射によって加熱されて溶融される。加熱により,溶融金属4の表面4aの近傍の不純物は蒸発し,溶融金属4から取り除かれる。
【0021】
図2を参照して,電子ビーム6は,電子ビーム6が溶融金属4に照射される照射位置の軌跡が、実質的に円形であるように走査される。
【0022】
溶融金属4の攪拌を促進するために,電子ビーム6は,電子ビーム6の照射位置が溶融金属4の振動に同期して移動するように走査される。電子ビーム6の照射位置が溶融金属4の振動に同期して移動することにより,溶融金属4の波立ちが増幅され,溶融金属4は一層によく攪拌される。電子ビーム6の照射位置の移動を溶融金属4の振動に同期させることは,電子ビーム6を充分に遅く走査することによって達成可能である。溶融金属4が鉄であり,坩堝3の溶融金属4を収容する開口の大きさが20×20cmであり,電子ビーム6の照射位置の軌跡が,直径15cmの円である場合には,電子ビーム6の走査の周波数を5Hz以下にすることにより,電子ビーム6の照射位置の移動は溶融金属4の振動に同期する。
【0023】
電子ビーム6の照射位置の移動速度は,溶融金属4に定在波が発生するように選択されることが好適である。定在波の発生は,溶融金属4の振動を最大化し,溶融金属4の攪拌を促進する。
【0024】
(実施の第2形態)
実施の第2形態では,実施の第1形態と異なる手段によって溶融金属4の攪拌が促進される。図3に示されているように,実施の第2形態では,複数のガス導入ノズル7a,7bが,真空容器1に設けられる。活性ガス8は,ガス導入ノズル7a,7bを介して真空容器1に導入される。ガス導入ノズル7a,7bの先端は,溶融金属4の表面4aに近接され,ガス導入ノズル7a,7bは,活性ガス8を,溶融金属4の表面4aに対して斜めに吹き付ける。図4に示されているように,実施の第1形態では,溶融金属4を収容する坩堝3の開口は矩形であったのに対し,実施の第2形態では溶融金属4を収容する坩堝3’の開口は,鉛直方向から見て円形である。ガス導入ノズル7a,7bは,坩堝3’の開口の中心3aに対して回転対称に設けられ,活性ガス8は,ガス導入ノズル7a,7bから,坩堝3’の開口の中心3aに対して回転対称に吹き付けられる。
【0025】
実施の第2形態では,溶融金属4の精製が以下の手順で行われる。実施の第1形態と同様に,電子ビーム6が溶融金属4に照射され,溶融金属4が加熱される。溶融金属4の加熱により,溶融金属4の表面4aの近傍の不純物は蒸発し,溶融金属4から取り除かれる。
【0026】
電子ビーム6の照射の間,活性ガス8がガス導入ノズル7a,7bによって溶融金属4の表面4aに吹き付けられ,これにより溶融金属4の攪拌が促進される。溶融金属4の表面4aに吹き付けられた活性ガス8は,溶融金属4に力を印加する。この力によって溶融金属4の表面4aは波立ち,これにより,溶融金属4の攪拌が促進される。
【0027】
図4を参照して,活性ガス8が,ガス導入ノズル7a,7bによって坩堝3’の開口の中心3aに対して回転対称に吹き付けられることは,溶融金属4の攪拌を一層に促進する点で好適である。活性ガス8の回転対称的な吹き付けにより,ガス導入ノズル7aから吹き付けられる活性ガス8が溶融金属4に生じさせる流れと,ガス導入ノズル7bから吹き付けられる活性ガス8が溶融金属4に生じさせる流れの方向が同一化され,溶融金属4が中心3aの周りに回転する。溶融金属4の回転により,溶融金属4の攪拌は促進される。
【0028】
図3を参照して,活性ガス8が断続的に供給されることは,溶融金属4の攪拌を一層に促進する点で好適である。溶融金属4の波立ちの拡大は,多くの流量の活性ガス8を溶融金属4に吹き付けて大きな力を溶融金属4に作用することによって達成し得る。しかし,電子ビーム6を溶融金属4に照射するためには,真空容器1は,ある程度低圧に保たれる必要があるため,活性ガス8の流量を大きくすることには限界がある。ある一定の短時間だけ大きな流量の活性ガス8を吹き付けて溶融金属4を大きく変位させた後,活性ガス8の供給を停止することにより,真空容器1を必要なだけ低圧に保ったまま溶融金属4を大きく振動させ,溶融金属4の攪拌を促進できる。
【0029】
実施の第2形態において,溶融金属4の攪拌を促進するための目的であれば,活性ガス8の代わりに,Ar等の不活性ガスが使用され得る。但し,活性ガス8の使用は,活性ガス8と不純物との化合による溶融金属4の高純度化を実現できる点で好適である。
【0030】
また,実施の第2形態において,坩堝3’の開口の形状は,円形に限られない。但し,坩堝3’の開口の形状が円形であることは,中心3aの周りに溶融金属4が回転したときに溶融金属4が澱むことを防止し,溶融金属4の全体の攪拌を促進する点で好適である。
【0031】
【発明の効果】
本発明により、電子ビームを用いて金属を溶融して精製するときに,溶融金属の攪拌を促進する技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明による金属溶融精製装置の実施の第1形態を示す。
【図2】図2は、坩堝3の形状と,電子ビーム6の軌跡を示す。
【図3】図3は、本発明による金属溶融精製装置の実施の第2形態を示す。
【図4】図4は、活性ガス8がガス導入ノズル7a,7bによって吹き付けられる態様を示す。
【符号の説明】
1:真空容器
2:排気装置
3,3’:坩堝
4:溶融金属
4a:表面
5:電子銃
6:電子ビーム
7,7a,7b:ガス導入ノズル
8:活性ガス
Claims (10)
- 真空容器と,
前記真空容器の内部に設けられ,溶融金属を収容する坩堝と,
電子ビームを生成し,前記溶融金属に照射する電子銃
とを備え,
前記電子銃は,前記電子ビームが前記溶融金属に照射される照射位置が前記溶融金属の振動に同期して移動するように,前記電子ビームを走査する
金属溶融精製装置。 - 請求項1に記載の金属溶融精製装置において,
前記電子銃は,前記溶融金属に定在波が発生するように前記電子ビームを走査する
金属溶融精製装置。 - 真空容器と,
前記真空容器の内部に設けられ,溶融金属を収容する坩堝と,
電子ビームを生成し,前記溶融金属に照射する電子銃
とを備え,
前記電子銃は,前記溶融金属に定在波が発生するように前記電子ビームを走査する
金属溶融精製装置。 - 真空容器と,
前記真空容器の内部に設けられ,溶融金属を収容する坩堝と,
電子ビームを生成し,前記溶融金属に照射する電子銃と
前記溶融金属の表面にガス流を吹き付けるノズル
とを備えた
金属溶融精製装置。 - 請求項4に記載の金属溶融精製装置において,
前記ガス流は,前記溶融金属に含まれる不純物と反応する活性ガスを含む
金属溶融精製装置。 - 請求項4に記載の金属溶融精製装置において,
前記ガス流は,断続的に前記表面に吹き付けられる
金属溶融精製装置。 - 請求項4に記載の金属溶融精製装置において,
更に,他のガス流を前記表面に吹き付ける他のノズルを備え,
前記他のノズルは,前記ガス流が前記溶融金属に生じさせる流れと同一の方向の流れを前記溶融金属に生じさせる方向に,前記他のガス流を前記表面に吹き付ける
金属溶融精製装置。 - 電子ビームを生成して溶融金属に照射するステップと,
前記電子ビームが前記溶融金属に照射される照射位置が前記溶融金属の振動に同期して移動するように,前記電子ビームを走査するステップ
とを備えた,
金属精製方法。 - 電子ビームを生成して溶融金属に照射するステップと,
前記溶融金属に定在波が発生するように前記電子ビームを走査するステップ
とを備えた
金属精製方法。 - 電子ビームを生成して溶融金属に照射するステップと,
前記溶融金属の表面にガス流を吹き付けて前記溶融金属を波立たせるステップとを備えた
金属精製方法。
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