JP2004108518A - 流体バルブ装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】流体バルブ装置は、流体入口20と流体出口21とバルブ収容室22とをもつ基体1をもつ。バルブ収容室22に移動可能に収容された筒形バルブ4をもつ。筒形バルブ4は、外周流路47を形成する外周壁面40と、内周流路47を形成する内周壁面41と、第1弁流路55を基体1の第1弁受け部24とで形成する第1弁部51と、第2弁流路56を基体1の第2弁受け部25とで形成する第2弁部52とを有する。駆動部6により筒形バルブ4を移動させ、第1弁流路55の流路面積及び第2弁流路56の流路面積を変化させる。例えば燃料電池システムに適用可能である。
【選択図】図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は空気などの流体が流れる流体バルブ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
【0003】
【特許文献1】特開平11−218245号公報
【0004】
上記した特開平11−218245号公報には、圧油である流体が流入する流体入口と流体が吐出される流体出口とバルブ収容室とをもつ基体と、基体のバルブ収容室に移動可能に収容された筒形バルブと、筒形バルブをこれの軸長方向に移動させる駆動部とを備えた圧力調整弁装置が開示されている。筒形バルブの軸端部は、流体入口から流入する流体に臨むように配置されている。
【0005】
このものによれば、駆動部が駆動し、筒形バルブがこれの軸長方向に移動すると、弁流路の流路断面積が可変となり、弁流路を流れる流体の流量が可変とされ、ひいては圧力調整弁装置に繋がる機器における流体圧が調整される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この圧力調整弁装置によれば、筒形バルブの外周側に流体が流れる流路が形成されているが、圧力調整弁装置を流れる流体の流量は充分ではなかった。このため、圧力調整弁装置に繋がる機器が大きな流体流量の制御を要請している場合には、使用が制限される問題があった。
【0007】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、制御できる流体流量を増加させるのに有利な流体バルブ装置を提供することを課題とするにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る流体バルブ装置は、流体が流入する流体入口と、流体が吐出される流体出口と、流体入口及び流体出口の間に形成されたバルブ収容室とをもつ基体と、
基体のバルブ収容室に移動可能に収容された筒形バルブと、
筒形バルブの開度を調整する方向に筒形バルブを移動させる駆動部とを具備する流体バルブ装置において、
筒形バルブは、
流体入口から流体出口に流体が流れるように筒形バルブの外周流路を形成する外周壁面と、
流体入口から流体出口に向かう流体が流れるように筒形バルブの内周流路を形成する内周壁面と、
外周流路及び内周流路のうちの一方を流体が流れるように第1弁流路を基体の第1弁受け部とで形成する第1弁部と、
外周流路及び内周流路のうちの他方を流体が流れるように第2弁流路を基体の第2弁受け部とで形成する第2弁部とを有しており、
駆動部により筒形バルブを移動させて第1弁流路の流路面積及び第2弁流路の流路面積を変化させることにより、筒形バルブの外周流路を流れる流体の流量、内周流路を流れる流体の流量を可変とすることを特徴とするものである。
【0009】
本発明に係る流体バルブ装置によれば、前述したように、筒形バルブの外周壁面により外周流路が形成されると共に、筒形バルブの内周壁面により内周流路が形成される。このように流体が筒形バルブの外周流路及び内周流路の双方に流れるため、流体バルブ装置を流れる流体の流量が増大する。故に、流体の大きな流量の制御が要請される機器に繋がれる流体バルブ装置に用いるのに適する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明によれば、次の形態の少なくとも一つを採用できる。
【0011】
・基体は、流体が流入する流体入口と、流体が吐出される流体出口と、流体入口及び流体出口の間に形成されたバルブ収容室とをもつ。流体としては、気体でも良いし、液体でも良い。筒形バルブは、基体のバルブ収容室に移動可能に収容されている。駆動部は筒形バルブの開度を調整する方向に筒形バルブを移動させる。駆動部としては、回転運動を行うモータ装置、直進運動を行う流体圧シリンダ装置を例示できる。筒形バルブの材質としては特に限定されず、金属でも、樹脂でも、セラミックスでも良い。
【0012】
・筒形バルブは、これの軸長方向の軸端部が、流体入口から流体出口に向かう流体の流れに臨むように基体のバルブ収容室に配置されている形態を採用できる。この場合、流体が作用する筒形バルブの受圧面積が少なくなる。このため流体の流れに対して筒形バルブを駆動部により移動させるとき、駆動部に作用する負荷が低減され、駆動部の出力を小さくでき、駆動部の小型化及び省エネルギ化を図り得る。更に、筒形バルブの軸端部のうち一方に流体圧による付勢力が作用すると共に、軸端部のうち他方にも、流体圧による逆向きの付勢力が作用する場合には、双方の付勢力の全部、あるいは、双方の付勢力のかなりの割合が相殺される。この場合には、流体の流れに対して筒形バルブを駆動部により移動させるとき、駆動部に作用する負荷が低減され、駆動部の出力を小さくでき、駆動部の小型化及び省エネルギ化を図り得る。なお、筒形バルブとしては、これの内径サイズを相対表示で100としたとき、筒形バルブの軸長サイズは300以下、200以下、150以下とすることができ、30以上の形態を例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
・筒形バルブは、流体入口から流体出口に流体が流れる外周流路を形成する外周壁面と、流体入口から流体出口に向かう流体が流れる内周流路を形成する内周壁面と、外周流路及び内周流路のうちの一方を流体が流れるように第1弁流路を基体の第1弁受け部とで形成する第1弁部と、外周流路及び内周流路のうちの他方を流体が流れるように第2弁流路を基体の第2弁受け部とで形成する第2弁部とを有する形態を採用できる。この場合、駆動部により筒形バルブを移動させて第1弁流路の流路面積及び第2弁流路の流路面積を変化させることにより、筒形バルブの外周流路を流れる流体の流量、内周流路を流れる流体の流量を可変とする。
【0014】
・駆動部は、基体に取り付けられた駆動モータと、駆動モータの回転運動を筒形バルブの直進運動に変換させる減速変換部とを有する形態を採用できる。減速変換部は、筒形バルブの軸長方向に移動可能な直動軸を有する形態を例示できる。このように回転運動を直進運動に変換するとき、減速できるため、筒形バルブの開弁・閉弁方向の移動を高精度に制御するのに有利である。
【0015】
・筒形バルブは、外周流路を形成する外周壁面を有すると共に内周流路を形成する内周壁面を有する外筒部と、外筒部の内周側に設けられ軸孔を有する内筒部と、外筒部とを内筒部とを連結する1個または複数の腕部とを有している形態を例示できる。そして、筒形バルブの内筒部の軸孔の内周面に形成された雌ねじ部と、直動軸の外周面に形成された雄ねじ部とを螺進退させることにより、直動軸に対する筒形バルブの軸長方向の初期位置を調整できる形態を採用できる。この場合には、上記した螺進退により、直動軸に対する筒形バルブの軸長方向に沿った初期位置を調整できるため、初期位置における第1弁流路及び第2弁流路の流路断面積を調整できる利点が得られる。
【0016】
・筒形バルブの軸長方向において筒形バルブの軸長方向の一端側から他端側に向けて付勢する付勢力を発生させる付勢力発生部が設けられている形態を採用できる。この場合、筒形バルブの軸長方向において筒形バルブの軸長方向の一端側から他端側に向けて付勢する付勢力を発生させるため、動力伝達機構における隙間(ねじ部間または歯部間のバックラッシ等)を低減でき、筒形バルブの開度の再現性を向上させることができる利点が得られる。
【0017】
・付勢力発生部は、筒形バルブのうち軸長方向の一端側の受圧面積を、筒形バルブのうち軸長方向の他端側の受圧面積よりも大きく設定することにより、筒形バルブの軸長方向の一端側から他端側に向けて付勢する付勢力を発生させる形態を採用できる。また付勢力発生部としては、筒形バルブの軸長方向において筒形バルブの軸長方向の一端側から他端側に向けて付勢する付勢力を発生させるバネ部材を用いることもできる。
【0018】
・流体に含まれている異物が駆動部に進入することを抑制するために、外周流路及び内周流路のうちの少なくとも一方を流れる流体を駆動部から遠ざける異物進入抑制部が設けられている形態を例示できる。異物進入抑制部は筒形バルブ及び基体のうちの一方または双方に設けることができる。
【0019】
・本発明に係る流体バルブ装置に繋がる機器としては、燃料電池のスタックを例示できる。この場合、本発明に係る流体バルブ装置は、燃料電池のスタックの下流または上流の流路に設けられている形態を採用できる。燃料電池としては車両に搭載される方式でも、定置形でも良い。燃料電池のスタックの上流の流路としては、発電前の酸化剤ガス(一般的には空気)が流れる流路、発電前の燃料ガスが流れる流路のうちの少なくとも一方を採用できる。燃料電池のスタックの下流の流路としては、発電後の酸化剤オフガス(一般的には発電後の空気)が流れる流路、発電後の燃料オフガスが流れる流路のうちの少なくとも一方を採用できる。
【0020】
【実施例】
以下、本発明の第1実施例について図1〜図5を参照して説明する。本実施例に係る流体バルブ装置は、図1に示すように、機器としてのスタック9の下流側に配置されており、スタック9の内部の流体圧力(空気圧力)を調整する調圧バルブ装置であり、スタック9の流体吐出口9aに供給管90を介して連結具92よりシール部材92pを介して接続された基体1を有する。スタック9は燃料電池の固体高分子膜形の燃料電池の集合体である。燃料電池のスタック9から吐出された流体(つまり発電後の空気)が供給管90を経て流体バルブ装置に流れる。一般的には、燃料電池のスタック9から吐出される流体(発電後の空気)は、発電反応により暖かく加熱されていると共に、水蒸気または水を多量に含む。燃料電池の発電反応は水を生成するためである。
【0021】
図1に示すように、基体1は、互いに連結された第1ボディ11と第2ボディ12と第3ボディ13とを有する。第1ボディ11は、第1ボディ11において上流側に配置され流体(空気)が流入する流体入口20と、第1ボディ11において下流側に配置され流体が外部に吐出される流体出口21と、流体入口20及び流体出口21の間に形成されたバルブ収容室22とをもつ。流体入口20は円形状をなしており、燃料電池で形成されたスタック9の下流に位置しており、供給管90に接続されている。流体出口21は円形状をなしており、排出管97を介して加湿器98に接続されている。なお図1に示すように、流体入口20と流体出口21の向きは異なる。即ち、流体入口20の孔芯A1と流体出口21の孔芯A2とは、横方向に沿っており、図1に示す断面図で視認すると、交差する向きに設定されている。
【0022】
図2に示すように、基体1の第1ボディ11は、バルブ収容室22に対面するように流体入口20側に形成された第1弁受け部24と、バルブ収容室22に対面するように流体出口21側に形成された第2弁受け部25とを有する。第1弁受け部24はリング形状をなしており、径内方向に突出しており、後述する筒形バルブ4の第1弁部51が第1弁受け部24に接近または着座可能とされている。第2弁受け部25は平坦面形状とされており、後述する筒形バルブ4の第2弁部52が第2弁受け部25に接近または着座可能とされている。
【0023】
図2に示すように、基体1のバルブ収容室22には、筒形バルブ4がこれの軸長方向(矢印P方向)に沿って移動可能に収容されている。筒形バルブ4の軸芯Paは流体入口20の孔芯A1に沿っており、筒形バルブ4は流体入口20の孔芯A1に沿って移動可能とされている。具体的には、筒形バルブ4は流体入口20に対面するように流体入口20に同軸的に配置されており、筒形バルブ4の軸芯Paは流体入口20の孔芯A1の延長線上に設定されている。なお筒形バルブ4の軸芯Paは横方向に沿っている。
【0024】
筒形バルブ4は金属等(例えば、ステンレス鋼や炭素鋼等の鉄系、アルミニウム合金系、チタン合金系)の硬質材料で円筒形状に形成されており、軸長方向において貫通している。筒形バルブ4は、図5に示すように、円筒形状をなす外筒部42と、外筒部42の内周側に設けられ円筒形状をなす内筒部43と、外筒部42と内筒部43とを連結するように半径方向に延びる複数の腕部44とを備えている。内筒部43は、外筒部42と同軸的に配置されており、中央に筒形バルブ4の軸長方向に貫通する軸孔45をもつ。図2に示すように、筒形バルブ4の外筒部42は、外周壁面40と内周壁面41とを有する。外周壁面40は、流体入口20から流体出口21に向かう流体が流れる外周流路48を形成する。内周壁面41は、流体入口20から流体出口21に向かう流体が流れる内周流路47を、内筒部43とで形成する。なお、図4に示すように腕部44は、内周流路47の流路断面積を確保すべく細幅とされている。
【0025】
また図5に示すように、筒形バルブ4の外筒部42の軸長方向の一端部側(上流側)には、筒形バルブ4の軸芯Paの回りを1周するようにリング形状をなす第1弁部51が拡開状に形成されている。図5に示すように、第1弁部51は、外筒部42の中間部の壁よりも厚肉とされており、上流から下流に向かうにつれて外径が拡径するリング状をなす第1傾斜面51aと、第1傾斜面51aに連接され上流から下流に向かうにつれて外径が縮径するリング状をなす第2傾斜面51bとを有する。
【0026】
また図5に示すように、筒形バルブ4の軸長方向の他端部側(下流側)には、筒形バルブ4の軸芯Paの回りを1周するようにリング形状をなす第2弁部52が拡開状に形成されている。図5に示すように、筒形バルブ4の第2弁部52は、外筒部42の中間部の壁よりも厚肉とされており、上流から下流に向かうにつれて外径が拡径するリング状をなす第3傾斜面52aと、上流から下流に向かうにつれて内径が拡径するリング状をなす第4傾斜面52bとを有する。
【0027】
このように筒形バルブ4の第2弁部52は外筒部42の外径方向にリング形状に拡開しているため、流体を第2弁部52の第3傾斜面52a及び第4傾斜面52bに沿って案内しやすくなり、流体を第2ボディ12の主孔16の入口16iから遠ざけるのに有利となる。よって微小異物等の異物が流体に含まれている場合であっても、異物が主孔16の入口16iから駆動部6の側に進入することが抑制される利点が得られる。
【0028】
図1、図2に示すように、筒形バルブ4の第1弁部51と基体1の第1弁受け部24とで、第1弁流路55が形成されている。第1弁流路55は、筒形バルブ4の軸芯Paの回りを1周するようにリング形状をなす。第1弁流路55は外周流路48及び流体入口20に連通しており、筒形バルブ4の外周流路48を流れる流体(空気)が流れる。
【0029】
図1、図2に示すように、筒形バルブ4の第2弁部52と基体1の第2弁受け部25とで、第2弁流路56が形成されている。第2弁流路56は、筒形バルブ4の軸芯Paの回りを1周するようにリング形状をなす。第2弁流路56は内周流路47及び流体出口21に連通しており、筒形スリーブ4の内周流路47を流れる流体が流れる。
【0030】
なお本実施例によれば、筒形バルブ4としては、これの内径サイズを相対表示で100としたとき、軸長サイズは200以下とされている。図1に示すように、筒形バルブ4は直動軸67により片持ち支持されているため、筒形バルブ4の支持安定性を高めるため等である。
【0031】
図1に示すように、基体1には、筒形バルブ4の開度を調整する方向に筒形バルブ4をこれの軸長方向に沿って移動させるための駆動部6が設けられている。駆動部6は、基体1に固定され回転運動を行うモータ軸61をもつ駆動モータ62と、駆動モータ62のモータ軸61の回転運動を筒形バルブ4の直進運動に変換させる減速変換部63とを有する。駆動モータ62は、カバー62mで被覆されており、入力パルスの数に応じてモータ軸61が回転するステッピングモータで形成されている。
【0032】
減速変換部63は、駆動モータ62のモータ軸61に同軸的に保持されモータ軸61と一体回転する係合部64と、係合部64に同軸的に接続され係合部64と一体的に回転する回動ギヤ部材65と、回動ギヤ部材65に同軸的に接続された長尺状の直動軸67とで形成されている。
【0033】
図1に示すように、回動ギヤ部材65は第1ボディ11と第2ボディ12との間に軸受68aにより回転可能に保持されている。また回動ギヤ部材65は外歯66をもつと共に、第1座69a及び第2座69bにより保持されている。この結果、回動ギヤ部材65はこれの周方向に回転できるものの、回動ギヤ部材65の軸長方向つまり筒形バルブ4の軸長方向(矢印P方向)には移動できないようにされている。なお、筒形バルブ4の軸長方向(矢印P方向)は、直動軸67の軸芯に沿っている。
【0034】
図1に示すように、直動軸67は、回動ギヤ部材65に同軸的に接続されており、基体1の第1ボディ11の主孔16の摺動面16rに沿ってスライドするフランジ状のスライド部67xと、第2ボディ12から露出する軸部67cとを同軸的に有する。軸部67cの外周部には、筒形バルブ4を取り付けるための第2雄ねじ部67fが形成されている。スライド部67xが主孔16の摺動面16rをスライドするため、直動軸67は第1ボディ11の主孔16において軸長方向(矢印P方向)に沿って移動可能とされている。
【0035】
図1に示すように、回動ギヤ部材65の内周面には、第1雌ねじ部65kが形成されている。直動軸67の外周面に第1雄ねじ部67kが形成されている。第1雄ねじ部67kは、回動ギヤ部材65の第1雌ねじ部65kと螺進退可能に螺合する。従って、回動ギヤ部材65がその位置から前進後退することなく一方向へ回転すると、その回転運動が直動軸67の直進運動に変換されるため、直動軸67は軸長方向の一方向(矢印P1方向)に直動する。同様に、回動ギヤ部材65がその位置から前進後退することなく他方向へ回転すると、その運動が直動軸67の直進運動に変換され、直動軸67は軸長方向の他方向(矢印P2方向)に直動する。
【0036】
ここで駆動モータ62に入力されるパルスの数が相対表示で100としたとき、回動ギヤ部材65が1回転し、回動ギヤ部材65の内周面に形成されている第1雌ねじ部65kが1回転すると仮定すると、第1雌ねじ部65kの1ピッチ相当量、直動軸67が軸長方向に直動することになる。このため駆動モータ62に入力される1パルス当たり、筒形バルブ4の開弁・閉弁方向の移動を微少量づつ高精度に制御できる。
【0037】
図1に示すように、基体1の第2ボディ12には、駆動モータ62の回転を検出するセンサ7が取付ねじ7wにより取り付けられている。基体1の第1ボディ11と第2ボディ12とには、扇形状の第1中間ギヤ71が軸受68cを介して回動可能に保持されている。基体1の第1ボディ11と第2ボディ12とには、円形状の第2中間ギヤ72が軸受68dを介して回動可能に保持されている。
【0038】
駆動モータ62が回転すると、回動ギヤ部材65がこれの軸芯回りで回動し、回動ギヤ部材65の外歯66に噛合するギヤ部71mをもつ第1中間ギヤ部材71がこれの軸芯P8周りで回動する。更に、第1中間ギヤ部材71のギヤ部71nに噛合するギヤ部72nをもつ第2中間ギヤ72がこれの軸芯P9周りで回動する。なお、第1中間ギヤ71及び第2中間ギヤ72は、回転できるものの、これらの軸長方向へは移動できないようにされている。センサ7は第2中間ギヤ72の動作を検出するため、センサ7は駆動モータ62の回転不具合(ステッピングモータの脱調等)を検出できる。
【0039】
図2に示すように、直動軸67の外周面と基体1の第1ボディ11の主孔16との間には、異物進入抑制機能をもつリング状のシール部材17が介在している。シール部材17は、主孔16の内周面と第2軸部67bの外周面との間をシールする。これにより流体に含まれている異物が駆動部6側に進入することが一層抑制される。なお、流体がスタック9である燃料電池のスタックから排出された発電後の空気である場合には、スタック9の燃料電池の電極に担持されていたカーボン微粒子等の異物が含有されていることがある。
【0040】
図5に示すように、筒形バルブ4の内筒部43の軸孔45の内周面には、第2雄ねじ部67fに螺合可能な第2雌ねじ部43fが形成されている。筒形バルブ4の組付時には、図5に示すように、直動軸67の軸部67cの外周面に形成された第2雄ねじ部67fと筒形バルブ4の第2雌ねじ部43fとを螺進退させる。これにより直動軸67に対して筒形バルブ4を変位させることができ、ひいては直動軸67の軸長方向における筒形バルブ4の初期位置を調整できる。この場合、第2雄ねじ部67fと第2雌ねじ部43fとを適宜螺進退させれば、直動軸67に対する筒形バルブ4の軸長方向における初期位置を調整できるため、第1弁流路55の初期位置における流路幅t1、第2弁流路56の初期位置における流路幅t2を微調整できる。これにより、第1弁流路55の流路断面積、第2弁流路56の流路断面積を微調整できる利点が得られる。
【0041】
筒形バルブ4の組付時には、図5から理解できるように、リング形状のバネ部材69を直動軸67の露出部分に取付けた後に、筒形バルブ4の内筒部43の第2雌ねじ部43fを直動軸67の第2雄ねじ部67fに螺合させて、筒形バルブ4を直動軸67に被着し、直動軸67の軸長方向における筒形バルブ4の初期位置を設定し、その後、袋ナット部68(バルブ締結手段)の雌めじ部68fを直動軸67の第2雄ねじ部67fの先端部に螺着させる。この状態では筒形バルブは直動軸67に片持ち支持される。
【0042】
図5、図2に示すように、直動軸67には、軸長方向に沿ったバネ性を発揮できるリング形状をなす付勢手段として機能できるバネ部材69が設けられている。バネ部材69のバネ力により、筒形バルブ4の内筒部43が軸長方向(矢印P2方向)に沿って常時付勢されるため、筒形バルブ4のがたつきが確実に防止される。流体の円滑な流れを確保するために、袋ナット部68は、流体入口20に対面可能な三次元的な凸円弧形状面68wを有する。なお、図2に示すように袋ナット部68は筒形バルブ4の第1弁部51よりも下流側に退避している。
【0043】
使用時には、図1から理解出来るように、コンプレッサ94で圧縮された流体(発電前の空気)は、加湿器98で加湿された後に、流路95を経てスタック9の吸入口9bに供給され、スタック9の燃料電池内において発電反応に用いられる。スタック9には流路99から燃料含有ガス(水素含有ガス)も供給されている。更にスタック9から吐出された流体(発電後の空気)は、供給管90を経て流体バルブ装置の基体1の流体入口20に至る。
【0044】
制御装置600はスタック9の運転状況に応じて駆動モータ62を制御して筒形バルブ4の開度を増減する。スタック9の内部の流体圧力(空気圧力)を低下させるときには、スタック9に繋がれている筒形バルブ4の開度を制御装置600により増加させる。このように筒形バルブ4の開度を増加させるときには、筒形バルブ4が開度増加方向つまり矢印P2方向に移動するように、制御装置600により駆動モータ62は駆動される。駆動モータ62は入力パルスの数に応じて回動するステッピングモータであるため、筒形バルブ4の開弁・閉弁は高精度に制御される。
【0045】
前述したように、スタック9の内部の流体圧力(空気圧力)を低下させるときには、制御装置600により、上記したように筒形バルブ4を開度増加方向つまり矢印P2方向に移動させる。この場合、図2に示すように、筒形バルブ4の第1弁部51が矢印P2方向に移動して第1弁受け部24から離れ、第1弁流路55の流路幅t1(図2参照)が増加し、第1弁流路55の流路面積が増加する。同様に、筒形バルブ4の第2弁部52が矢印P2方向に移動して第2弁受け部25から離れ、第2弁流路56の流路幅t2(図2参照)が増加し、第2弁流路56の流路面積が増加する。この場合、基体1の流体入口20に供給された流体は、矢印K1方向(図2参照)に流れて筒形バルブ4の外周壁面40側の外周流路48を流れてバルブ収容室22に流入すると共に、矢印K2方向に流れて筒形バルブ4の内周壁面41側の内周流路47及び第2弁流路56を流れて、バルブ収容室22に流入する。バルブ収容室22に流入した流体は、流体出口21から加湿器98に向けて吐出される。
【0046】
上記したように本実施例によれば、筒形バルブ4の外周流路48及び内周流路47の双方が流路とされるため、流体バルブ装置で調整可能な流体の流量が確保される。故に、大きな流体の流量が要請されるスタック9に繋がれる流体バルブ装置に用いるのに適する。なお外周流路48を流れる流量と、内周流路47を流れる流量とは同じ程度にしても良いし、多少変えることにしても良い。
【0047】
スタック9の内部の流体圧力(空気圧力)を増加させるときには、筒形バルブ4が開度減少方向つまり矢印P1方向に移動するように、制御装置600により駆動モータ62は駆動される。この結果、筒形バルブ4の第1弁部51が開度減少方向つまり矢印P1方向に移動して第1弁受け部24に接近し、第1弁流路55の流路幅t1が減少し、第1弁流路55の流路面積が減少する。同様に、筒形バルブ4の第2弁部52が矢印P1方向に移動して第2弁受け部25に接近し、第2弁流路56の流路幅t2が減少し、第2弁流路56の流路面積が減少する。これにより第1弁流路55及び第2弁流路56が流れる流体の流量が減少する。このため、流体バルブ装置の上流に位置するスタック9の流体圧力(空気圧力)が増加するように調整される。
【0048】
筒形バルブ4を閉弁するときには、駆動モータ62により筒形バルブ4が開度減少方向つまり矢印P1方向に更に移動する。この結果、図3に示すように、筒形バルブ4の第1弁部51が矢印P1方向に移動して第1弁受け部24に接触または最接近して第1弁流路55を閉じると共に、第2弁部52が矢印P1方向に移動して第2弁受け部25に接触または最接近して第2弁流路56を閉じる。なお、コンプレッサ94が停止すれば、スタック9への空気供給は停止され、筒形バルブ4における流体の流れは基本的には停止される。
【0049】
本実施例によれば、図1に示すように、筒形バルブ4の軸長方向の軸端部が、流体入口20から流体出口21に向かう流体の流れに臨むように、筒形バルブ4が基体1のバルブ収容室22に配置されている。流体入口20からバルブ収容室22に流入する流体は、筒形バルブ4の軸端部に対向する。このため、流体が筒形バルブ4に作用する受圧面積を低減させることができる。よって、流体の流れに対抗して筒形バルブ4の開度を調整するとき、筒形バルブ4に作用する負荷を小さくできる。ひいては駆動モータ62の出力を小さくでき、駆動モータ62の小型化、コスト低廉化を図り得る。
【0050】
ところで、流体入口20から流体出口21に向かう流体が筒形バルブ4の第1弁部51に作用すると、流体の受圧に伴い、筒形バルブ4の軸長方向において筒形バルブ4の軸長方向の一端部4a側(上流側)から他端部4c側(下流側)に向けて付勢する付勢力F1(図2参照)が筒形バルブ4に作用する。また、内周流路47の流体が筒形バルブ4の第2弁部52に作用すると、筒形バルブ4の軸長方向において他端部4c側(下流側)から一端部4a側(上流側)に向けて付勢する付勢力F2(図2参照)が筒形バルブ4に作用するといえる。本実施例によれば、付勢力F1は付勢力F2よりもやや大きいものの、両者は近似した大きさであり(F1=F2+α)、向きは互いに逆であるため、付勢力F1、F2のうちα相当ぶんを除いた大部分の付勢力は実質的に相殺される。よって流体が流れているときにおいて、筒形バルブ4を開弁閉弁作動させるときの負荷抵抗を小さくすることができる利点が得られ、駆動モータ62の出力を小さくでき、駆動モータ62の小型化に一層有利となる。
【0051】
更に説明を加える。図3に示すように、筒形バルブ4の第1弁部51の最外径d1は、第2弁部52の最外径d2よりもΔd大きく設定されている。この結果、筒形バルブ4のうち軸長方向の一端部4a側の付勢力F1を発生させる受圧面積は、筒形バルブ4のうち軸長方向の他端部4c側の付勢力F2を発生させる受圧面積よりも大きく設定されており、これにより付勢力発生部が形成されている。この結果、筒形バルブ4の軸長方向において筒形バルブ4の軸長方向の一端部4a側から他端部4c側に向けて付勢する付勢力をF1とし、筒形バルブ4の軸長方向の他端部4c側から一端部4a側に向けて付勢する付勢力をF2とすると、付勢力F1は付勢力F2に対して近似した大きさであり、向きが逆であるため、両者は大部分が相殺されるものの、付勢力F1は付勢力F2よりもα相当、大きく設定されている(F1=F2+α)。
【0052】
このようにα相当ぶん、付勢力F1は付勢力F2よりも大きいため、流体が本実施例に係る流体バルブ装置を流れるとき、筒形バルブ4は一端部4a側(上流側)から他端部4c側(下流側)に向けて矢印P1方向に沿って付勢されることなる。この付勢の結果、回動ギヤ部材65の第1雌ねじ部65kと直動軸67の第1雄ねじ部67kと間の隙間(バックラッシ)、その他のがたを低減させることができる。この結果、長期にわたり筒形バルブ4の開度のばらつきを低減させるのに有利となり、使用期間が長くなったとしても、筒形バルブ4の開度の再現性を高精度に維持することができ、ひいてはスタック9の発電性能を長期にわたり良好に制御できる。
【0053】
なお、図2から理解できるように、筒形バルブ4の外周流路48を流れる流体は、筒形バルブ4の外筒部42の外周壁面40にも圧力F3(図2参照)として筒形バルブ4の外筒部42に求心方向に作用する。しかし筒形バルブ4は円筒形状をなし、外周流路48は外筒部42の全周に形成されているため、圧力F3の影響は実質的に相殺される。また筒形バルブ4の内周流路47を流れる流体は、筒形バルブ4の外筒部42の内周壁面41にも圧力F4(図2参照)として放射方向に作用する。しかし筒形バルブ4は円筒形状をなし、内周流路47は外筒部42の全周に形成されているため、圧力F4の影響は相殺される。
【0054】
以上説明したように本実施例によれば、基体1の流体入口20に供給された流体は、矢印K1方向に流れて筒形バルブ4の外周壁面40側の外周流路48を流れると共に、矢印K2方向に流れて筒形バルブ4の内周壁面41側の内周流路47を流れる。このように筒形バルブ4の外周流路48及び内周流路47の双方を流れるため、上記した特許文献1に係る技術とは異なり、流体バルブ装置で調整できる流体の流量が確保される。故に、大きな流体(空気)の流量の制御が要請されるスタック9に繋がれる流体バルブ装置に用いるのに適する。
【0055】
本実施例によれば、筒形バルブ4は、図5に示すように、円筒形状をなす外筒部42と、円筒形状をなす内筒部43と、外筒部42と内筒部43とを連結するように半径方向に延びる複数の腕部44とを備えているため、上記した特許文献1に係る技術に比較して、筒形バルブ4の内周側の内周流路74の流路面積を大きくするのに有利となる。
【0056】
更に本実施例によれば、図1、図2に示すように、筒形バルブ4はこれの軸長方向の軸端部が、流体入口20から流体出口21に向かう流体の流れに臨むように基体1のバルブ収容室22に配置されている。このため、筒形バルブ4に流体が付勢力として作用する受圧面を軸端部分にでき、付勢力として作用する受圧面積を小さくできる。よって、流体の流れに対抗して筒形バルブ4の開度を調整するとき、筒形バルブ4に作用する負荷を小さくでき、駆動モータ62の出力を小さくでき、駆動モータ62の小型化を図り得、重量の軽量化及び省エネルギの面において有利である。
【0057】
更に本実施例によれば、図2に示すように、筒形バルブ4の軸端部のうち一方に流体圧による付勢力F1(上流から下流に向かう付勢力)が作用すると共に、筒形バルブ4の軸端部のうち他方にも流体圧による逆向きの付勢力F2(下流から上流に向かう付勢力)が作用する。前記したように付勢力F1、F2の大きさは近似しているため、互いに逆向きの付勢力F1、F2のかなりの割合が相殺される。この場合には、流体の流れに対して筒形バルブ4を駆動部6により移動させるとき、駆動モータ62に作用する負荷を小さくでき、駆動モータ62の出力を小さくでき、駆動モータ62の小型化及び省エネルギ化を一層図り得る。
【0058】
本実施例によれば、筒形バルブ4の第1弁部51は第1傾斜面51aを有する。筒形バルブ4に向けて流れる流体は、筒形バルブ4のリング形状をなす第1弁部51の第1傾斜面51aに当たると、筒形バルブ4の向芯方向に向かう力F5(図3参照)を発生させる。第1弁部51の第2傾斜面51bは筒形バルブ4の周方向に沿って1周するように形成されているため、筒形バルブ4の軸芯がずれることが抑制される調芯作用が得られる。なお、上記した調芯作用は筒形バルブ4の開弁時にも閉弁時にも期待できる。
【0059】
また、筒形バルブ4の他端部4cに形成されている第2弁部52も第3傾斜面52a、第4傾斜面52bを有する。流体は筒形バルブ4のリング形状をなす第2弁部52の第4傾斜面52bに筒形バルブ4の放射方向に向かう力F6(図3参照)を第2弁部52の全周にわたり発生させ、筒形バルブ4の調芯作用が得られる。
【0060】
本実施例によれば、図3に示すように、筒形バルブ4の第1弁部51の外径はd1は第2弁部52の外径d2よりもΔd大きく設定されている(d1=d2+Δd)。この結果、筒形バルブ4の軸長方向において筒形バルブ4の軸長方向の一端部4a側から他端部4c側に向けて付勢する付勢力F1は、筒形バルブ4の軸長方向の他端部4c側から一端部4a側に向けて付勢する付勢力F2よりも大きくされる。このため回動ギヤ部材65の第1雌ねじ部65kと直動軸67の第1雄ねじ部67kと間の隙間(バックラッシ)、その他のがたを低減させることができる。この結果、長期にわたり筒形バルブ4の開度のばらつきを低減させるのに有利となり、筒形バルブ4の開度の再現性を高精度に維持することができる。
【0061】
本実施例によれば、図2に示すように、筒形バルブ4の第1弁部51の第2傾斜面51bと第1弁受け部24の傾斜面24xは、筒形バルブ4の軸芯Pa(バルブ収容室22の軸芯)に対して角度θ1傾斜している。第1弁流路55の流路幅はt1で規定される。ここで、筒形バルブ4がこれの軸長方向である矢印P1、P2方向に沿って移動するとき、筒形バルブ4の軸長方向(矢印P1、P2方向)における変化量をM1とすると、第1弁流路55の流路幅t1の変化量は角度θ1の影響を受け、M1よりも小さくなり、N1となる(M1>N1)。なお、N1=M1・sinθ1である。このため、ステッピングモータで形成された駆動モータ62の駆動において、第1弁流路55の流路幅t1を調整する分解能を高めることができ、第1弁流路55の流路幅t1の開度を高精度で調整できる利点が得られる。
【0062】
即ち、ステッピングモータで形成された駆動モータ62に1パルスが入力されるとき、筒形バルブ4が矢印P1、P2方向に移動する距離をM1と仮定する。この場合、角度θ1の影響を受け、第1弁流路55の流路幅t1の変化量はM1よりも小さくなり、N1となる(M1>N1)。結果として、第1弁流路55の流路幅t1を調整できる分解能をステッピングモータの1パルス相当ぶんよりも小さくすることができ、第1弁流路55の流路幅t1を高精度に調整できる利点が得られる。故に、1パルスあたりのステッピングモータの回動角度が微小な高価なステッピングモータを用いずとも良い。この意味においてもステッピングモータで形成された駆動モータ62の価格の低廉化に有利である。
【0063】
(第2実施例)
図6は第2実施例を示す。第2実施例は第1実施例と基本的には同様の構成であり、共通する部位には共通の符号を付する。第2実施例は基本的には同様の作用効果を奏する。以下、第1実施例と異なる部分を中心として説明する。本実施例においては、筒形バルブ4の第2弁部52Bは直円筒形状とされており、軸芯Paに沿っている。
【0064】
(第3実施例)
図7は第3実施例を示す。第3実施例は第1実施例と基本的には同様の構成であり、共通する部位には共通の符号を付する。第3実施例は基本的には同様の作用効果を奏する。以下、第1実施例と異なる部分を中心として説明する。本実施例においても、筒形バルブ4は、図7に示すように、外周流路48を形成する外周壁面40を有すると共に内周流路47を形成する内周壁面41を有する外筒部42と、外筒部42の内周側に設けられ軸孔45を有する内筒部43と、外筒部42と内筒部43とを連結するように半径方向に延びる複数の腕部44とを備えている。筒形バルブ4の外筒部42は、流体入口20から流体出口21に流体に向かう流体が流れる外周流路48を形成する外周壁面40と、流体入口20から流体出口21流体に向かう流体が流れる内周流路47を形成する内周壁面41とを有する。また筒形バルブ4の外筒部42は、筒形バルブ4の軸長方向の一端部側(上流側)に拡開状に形成された第1弁部51と、筒形バルブ4の軸長方向の他端部側(下流側)に拡開状に形成された第2弁部52とを有する。
【0065】
図7に示すように、筒形バルブ4の第1弁部51は外筒部42の外径方向に筒形状に拡開しており、他の部位よりも厚肉化されている。同様に、筒形バルブ4の第2弁部52の第3傾斜面52a及び第4傾斜面52bは、外筒部42の外径方向に筒形状に拡開している。このように第2弁部52の第3傾斜面52a及び第4傾斜面52bは外筒部42の外径方向に筒形状に拡開しているため、微小異物等の異物が流体に含まれている場合であっても、流体を主孔16の入口16iから遠ざけることができ、流体に含まれているカーボン微粒等の異物が主孔16の入口16iから駆動部6側に進入することを抑制できる。
【0066】
図7に示すように、本実施例によれば、流体に含まれている異物が駆動部6の側に進入することを抑制するために、異物進入抑制部80が用いられている。異物進入抑制部80は、基体1の第1ボディ11の主孔16の入口16iに対面するように直動軸67に筒形バルブ4と共に配置されており、駆動モータ62に向かうにつれて外径方向に拡開する外径をもつ円錐面状の拡開傾斜面81と、直動軸67に嵌合可能な取付孔82とを有する。拡開傾斜面81は周方向に沿って連設されている。このように拡開傾斜面81を有する異物進入抑制部80が主孔16の入口16iに対面するように設けられているため、流体を主孔16の入口16iから遠ざけることができ、従って、流体に含まれている異物が駆動部6の側に進入することを抑制することができる。
【0067】
(第4実施例)
図8は第4実施例を示す。第4実施例は第1実施例と基本的には同様の構成であり、基本的には同様の作用効果を奏する。共通する部位には共通の符号を付する。以下、第1実施例と異なる部分を中心として説明する。本実施例においても、第1実施例と同様に、筒形バルブ4の第1弁部51の第2傾斜面51bと第1弁受け部24の傾斜面24xとは、筒形バルブ4の軸芯Paに対して角度θ1傾斜している。第1弁流路55の流路幅はt1で規定される。ここで、筒形バルブ4がこれの軸長方向である矢印P1、P2方向に沿って移動するとき、前述したように、筒形バルブ4の軸長方向(矢印P1、P2方向)における変化量をM1と仮定すると、角度θ1の影響を受けるため、第1弁流路55の流路幅t1の変化量はM1よりも小さくなり、N1となる(M1>N1)。このため、第1弁流路55の流路幅t1を調整できる分解能をステッピングモータの1パルス相当ぶんよりも微細にすることができ、第1弁流路55の流路幅t1を高精度に調整できる利点が得られる。
【0068】
更に本実施例によれば、図8に示すように、第2弁受け部25Bは膨出リング状に形成されている。筒形バルブ4の第2弁部52の第4傾斜面52bと第2弁受け部25の傾斜面25xは、筒形バルブ4の軸芯Paに対して角度θ2傾斜している。第2弁流路56の流路幅はt2で規定される。
【0069】
ここで、筒形バルブ4がこれの軸長方向である矢印P1、P2方向に沿って移動するとき、筒形バルブ4の軸長方向(矢印P1、P2方向)における変化量をM2(図9参照)とすると、角度θ2の影響を受けるため、第2弁流路56の流路幅t2の変化量はM2よりも小さくなり、N2(図9参照)となる(M2>N2)。このため、第2弁流路56の流路幅t2を調整する分解能をステッピングモータの1パルス相当ぶんよりも微細にすることができ、第2弁流路56の流路幅t2を高精度で調整できる利点が得られる。
【0070】
(第5実施例)
図10は第5実施例を示す。第5実施例は第1実施例と基本的には同様の構成であり、基本的には同様の作用効果を奏する。共通する部位には共通の符号を付する。以下、第1実施例と異なる部分を中心として説明する。本実施例では、筒形バルブ4の第2弁部52には軟質部材52tが装備されており、閉弁時のシール性が高められている。なお軟質部材52tは筒形バルブ4の第1弁部51及び第2弁部52のうちの少なくとも一方に装備できる。場合によっては、第1弁受け部24及び第2弁受け部25のうちの少なくとも一方に装備しても良い。
【0071】
(第6実施例)
図11は第6実施例を示す。第6実施例は第1実施例と基本的には同様の構成であり、基本的には同様の作用効果を奏する。共通する部位には共通の符号を付する。以下、第1実施例と異なる部分を中心として説明する。本実施例では、基体1の第1ボディ11には、供給管90を連結させる連結具92Bが流体入口20近傍において設けられている。連結具92Bは筒形バルブ4を案内する案内部として機能するものであり、基体1の第1ボディ11に取付具11xにより固定される本体部920と、筒形バルブ4の一端部4a側に延設され軸長方向にのびるリング状のスライド部922と、本体部920及びスライド部922を連結する複数の腕部924とをもつ。スライド部922は、筒形バルブ4の軸長方向の一端部4aの側をスライド可能に保持している。スライド部922は、筒形バルブ4の軸長方向(矢印P1、P2方向)に延びるスライド面923をもつ。スライド面923は、筒形バルブ4の軸長方向の一端部4aに対面すると共に、一端部4aのスライド性を高めるように固体潤滑性を有する。筒形バルブ4の軸長方向の一端部4aはスライド部922で支持されると共に、筒形バルブ4の軸長方向の他端部4cの側は直動軸67で支持されている。即ち、筒形バルブ4は両持ち支持とされている。
【0072】
(その他)
上記した実施例によれば、駆動モータ62はステッピングモータとされているが、これに限らず、DCモータ等の他のモータでも良い。駆動モータ62によっては、センサ7を廃止することもでき、センサ7での検出のために使用される第1中間ギヤ部材71、第2中間ギヤ72を廃止することもできる。上記した実施例によれば、流体バルブ装置はスタック9の下流側に配置されているが、スタック9の上流側に配置されていても良い。上記した実施例によれば、筒形バルブ4の軸芯Pa、流体入口20の孔芯A1、流体出口21の孔芯A2は、横方向に沿っているが、これに限らず、このうちの少なくとも一つが縦方向に沿っていても良い。
【0073】
上記した実施例によれば、駆動モータ62の回転運動を筒形バルブ4の直進運動に変換する減速変換部63は、係合部64と、係合部64に同軸的に接続され係合部64と一体的に回転する回動ギヤ部材65と、直動軸67とで形成されているが、これに限られるものではない。筒形バルブ4を駆動させる駆動モータとしては、場合によっては、直動するリニアモータとし、筒形バルブ4を直接的に直動させることもできる。筒形バルブ4は円筒形状をなしているが、場合によっては角筒形状とすることもできる。
【0074】
上記した実施例によれば、流体バルブ装置は車載用の燃料電池システムに適用されているが、これに限らず、定置用の燃料電池システムに適用しても良く、他の燃料電池システムに適用しても良い。あるいは、燃料電池システム以外の燃焼装置等に空気を送給する用途に適用することもできる。その他、本発明装置は上記した各実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できるものである。
【0075】
上記した記載から次の技術的思想も把握できる。
(付記項1)燃料電池システムで使用される流体が流入する流体入口と、流体が吐出される流体出口と、前記流体入口及び前記流体出口の間に形成されたバルブ収容室とをもつ基体と、
前記基体のバルブ収容室に移動可能に収容された筒形バルブと、
前記筒形バルブの開度を調整する方向に前記筒形バルブを移動させる駆動部とを具備する流体バルブ装置において、
前記筒形バルブは、前記流体入口から前記流体出口に流体に向かう流体が流れる外周流路を形成する外周壁面と、前記外周流路を流体が流れるように前記筒形バルブの第1弁流路を前記基体の第1弁受け部とで形成する第1弁部とを有しており、
前記駆動部により前記筒形バルブを移動させて前記第1弁流路の流路面積を変化させることにより、前記筒形バルブの外周流路を流れる流体の流量を可変とし、前記筒形バルブは、これの軸長方向の軸端部が、前記流体入口から前記流体出口に向かう流体の流れに臨むように前記基体のバルブ収容室に配置されていることを特徴とする燃料電池システム用の流体バルブ装置。
【0076】
筒形バルブの軸長方向の軸端部が、流体入口から流体出口に向かう流体の流れに臨むように基体のバルブ収容室に筒形バルブが配置されているため、流体が筒形バルブに作用する受圧面積を低減させることができる。よって、流体の流れに対抗して筒形バルブの開度を調整するとき、筒形バルブに作用する負荷を小さくでき、筒形バルブを駆動させる駆動部の出力を小さくでき、駆動部の小型化を図り得、重量の軽量化及び省エネルギの面において有利であり、小型化が要請される車載用または定置用の燃料電池システムに使用するのに適する。
【0077】
【発明の効果】
本発明に係る流体バルブ装置によれば、前述したように、筒形バルブの外周壁面により外周流路が形成されると共に、筒形バルブの内周壁面により内周流路が形成される。このため流体バルブ装置を流れる流体の流量が増大する。故に、大きな流体の流量が要請される機器に繋がれる流体バルブ装置に用いるのに適する。大きな流体の流量が要請される機器としては、燃料電池のスタック、特に車載用の燃料電池のスタックが例示される。
【図面の簡単な説明】
【図1】筒形バルブが開弁している状態の流体バルブ装置の水平方向に沿った全体の断面図である。
【図2】筒形バルブが開弁している状態の流体バルブ装置の要部の断面図である。
【図3】筒形バルブが閉弁している状態の流体バルブ装置の要部の断面図である。
【図4】筒形バルブの軸端を示す端面図である。
【図5】直動軸に筒形バルブを取り付ける前の状態を示す要部の断面図である。
【図6】第2実施例に係り、流体バルブ装置の要部の断面図である。
【図7】第3実施例に係り、流体バルブ装置の要部の断面図である。
【図8】第4実施例に係り、流体バルブ装置の要部の断面図である。
【図9】第4実施例に係り、筒形バルブの第2弁部の流路幅の変化状況を説明する説明図である。
【図10】第5実施例に係り、流体バルブ装置の要部の断面図である。
【図11】第6実施例に係り、流体バルブ装置の要部の断面図である。
【符号の説明】
図中、1は基体、11は第1ボディ、20は流体入口、21は流体出口、22はバルブ収容室、24は第1弁受け部、25は第2弁受け部、44は筒形バルブ、40は外周壁面、41は内周壁面、42は外筒部、43は内筒部、44は腕部、47は内周流路、48は外周流路、51は第1弁部、52は第2弁部、55は第1弁流路、56は第2弁流路、6は駆動部、62は駆動モータ、63は減速変換部、65は回動ギヤ部材、67は直動軸、7はセンサ、9はスタックを示す。
Claims (7)
- 流体が流入する流体入口と、流体が吐出される流体出口と、前記流体入口及び前記流体出口の間に形成されたバルブ収容室とをもつ基体と、
前記基体のバルブ収容室に移動可能に収容された筒形バルブと、
前記筒形バルブの開度を調整する方向に前記筒形バルブを移動させる駆動部とを具備する流体バルブ装置において、
前記筒形バルブは、
前記流体入口から前記流体出口に向かう流体が流れるように前記筒形バルブの外周流路を形成する外周壁面と、
流体入口から流体出口に向かう流体が流れるように前記筒形バルブの内周流路を形成する内周壁面と、
前記外周流路及び前記内周流路のうちの一方を流体が流れるように第1弁流路を前記基体の第1弁受け部とで形成する第1弁部と、
前記外周流路及び前記内周流路のうちの他方を流体が流れるように第2弁流路を前記基体の第2弁受け部とで形成する第2弁部とを有しており、
前記駆動部により前記筒形バルブを移動させて前記第1弁流路の流路面積及び前記第2弁流路の流路面積を変化させることにより、前記筒形バルブの外周流路を流れる流体の流量、前記内周流路を流れる流体の流量を可変とすることを特徴とする流体バルブ装置。 - 請求項1において、前記筒形バルブは、これの軸長方向の軸端部が、前記流体入口から前記流体出口に向かう流体の流れに臨むように前記基体のバルブ収容室に配置されていることを特徴とする流体バルブ装置。
- 請求項1または請求項2において、前記駆動部は、前記基体に取り付けられた駆動モータと、前記駆動モータの回転運動を前記筒形バルブの直進運動に変換させる減速変換部とを有することを特徴とする流体バルブ装置。
- 請求項3において、前記減速変換部は、前記駆動モータの回転駆動に伴い前記筒形バルブの軸長方向に移動可能な直動軸を有し、
前記筒形バルブは、前記外周流路を形成する前記外周壁面を有すると共に前記内周流路を形成する前記内周壁面を有する外筒部と、前記外筒部の内周側に設けられ軸孔を有する内筒部と、前記外筒部とを前記内筒部とを連結する腕部とを有しており、
前記筒形バルブの前記内筒部の軸孔の内周面に形成された雌ねじ部と、前記直動軸の外周面に形成された雄ねじ部とを螺進退させることにより、前記直動軸に対する前記筒形バルブの軸長方向の初期位置を調整できることを特徴とする流体バルブ装置。 - 請求項1〜請求項4のうちのいずれか一項において、前記筒形バルブの軸長方向において前記筒形バルブの軸長方向の一端部側から他端部側に向けて付勢する付勢力を発生させる付勢力発生部が設けられており、
前記付勢力発生部は、前記筒形バルブのうち軸長方向の一端部側の受圧面積を、前記筒形バルブのうち軸長方向の他端部側の受圧面積よりも大きく設定することにより、前記筒形バルブの軸長方向の一端側から他端側に向けて付勢する付勢力を発生させることを特徴とする流体バルブ装置。 - 請求項1〜請求項5のうちのいずれか一項において、流体に含まれている異物が前記駆動部に進入することを抑制するために、前記筒形バルブの前記外周流路及び前記内周流路のうちの少なくとも一方を流れる流体を前記駆動部から遠ざける異物進入抑制部が前記筒形バルブ及び前記基体のうちの少なくとも一方に設けられていることを特徴とする流体バルブ装置。
- 請求項1〜請求項6のうちのいずれか一項において、燃料電池システムの下流または上流の流路に設けられていることを特徴とする流体バルブ装置。
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