JP2004107764A - 薄膜形成装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】均一な膜厚分布の有機薄膜を形成しうるとともに蒸発源からの熱の影響を防止しうる薄膜形成装置を提供する。
【解決手段】本発明の薄膜形成装置は、真空槽2と、真空槽2内に配設された有機材料用の蒸発源3と、基板5と蒸発源3との間の空間を仕切る仕切り部7とを有する。仕切り部7には、基板5の蒸着領域を制限するための細長形状のアパーチャー70が設けられている。アパーチャー70は、その中央部の幅が端部の幅より小さくなるように形成されている。
【選択図】 図2
【解決手段】本発明の薄膜形成装置は、真空槽2と、真空槽2内に配設された有機材料用の蒸発源3と、基板5と蒸発源3との間の空間を仕切る仕切り部7とを有する。仕切り部7には、基板5の蒸着領域を制限するための細長形状のアパーチャー70が設けられている。アパーチャー70は、その中央部の幅が端部の幅より小さくなるように形成されている。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、有機LED素子の発光層に用いられる有機薄膜を蒸着によって形成するための薄膜形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、フルカラーフラットパネルディスプレイ用の素子として、有機LED素子が注目されている。有機LED素子は、蛍光性有機化合物を電気的に励起して発光させる自発光型素子で、高輝度、高視野角、面発光、薄型で多色発光が可能であり、しかも数Vという低電圧の直流印加で発光する全固体素子で、かつ低温においてもその特性の変化が少ないという特徴を有している。
【0003】
図5は、従来の有機LED素子を作成するための真空蒸着装置の概略構成図である。
図5に示すように、この有機薄膜形成装置101にあっては、真空槽102の下部に蒸発源103が配設されるとともに、この蒸発源103の上方に成膜対象物である基板104が配置されている。そして、蒸発源104から蒸発される有機材料の蒸気を、マスク105を介して基板104に蒸着させることによって所定パターンの有機薄膜を形成するようになっている(例えば特開平11−124667号公報参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−124667号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年、マスクのピッチのファイン化に伴い、従来の技術では均一な膜厚分布を得ることが困難で、このため、画素の発光にむらが生ずるとともに、膜厚の薄い領域において電流が流れ過ぎることによって素子の劣化を引き起こし、これにより有機LED素子の寿命が制限されるという問題があった。
【0006】
また、従来の有機薄膜装置では、成膜の際、蒸発源からの熱によってマスクが変形し、蒸着領域のずれが生じてしまうという問題もあった。
【0007】
本発明は、このような従来の技術の課題を解決するためになされたもので、均一な膜厚分布の有機薄膜を形成しうるとともに蒸発源からの熱の影響を防止しうる薄膜形成装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するためになされた請求項1記載の発明は、所定の成膜対象物に対して薄膜を形成するための真空槽と、前記真空槽内に配設され、所定の蒸発材料を蒸発させるための蒸発源と、前記成膜対象物と前記蒸発源との間の空間を仕切る仕切り部とを有し、前記仕切り部に、前記成膜対象物の蒸着領域を制限するための細長形状のアパーチャーが設けられ、該アパーチャーは、その中央部の幅が端部の幅より小さくなるように形成されていることを特徴とする薄膜形成装置である。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記アパーチャーが、前記成膜対象物に対して相対的に移動するように構成されていることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記蒸発源が、前記アパーチャーとともに移動するように構成されていることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項記載の発明において、前記アパーチャーの前記成膜対象物に対する移動方向が、当該アパーチャーの幅方向であることを特徴とする。
【0009】
本発明の場合、成膜対象物と蒸発源との間の空間を仕切る仕切り部に成膜対象物の蒸着領域を制限するためのアパーチャーが設けられており、このアパーチャーから均一に流出する蒸着材料の蒸気が成膜対象物の表面に蒸着するようになるため、膜厚分布の均一化を図ることが可能になる。その結果、本発明によれば、画素の発光むらを防止することができるとともに、長寿命の有機LED素子を得ることができる。
【0010】
特に本発明においては、アパーチャーの中央部の幅が端部の幅より小さくなるように形成されていることから、アパーチャーの中央部分の膜厚が厚くならず、アパーチャーの長さ方向に関し膜厚分布を均一にすることができる。
【0011】
また、本発明においては、蒸発源とマスクの間の空間において、アパーチャー以外の部分は仕切り部によって仕切られているため、蒸発源からの熱がマスクに伝わりにくく、これによりマスクの変形に起因する蒸着領域のずれを防止することが可能になる。
【0012】
さらに、仕切り部のアパーチャーを成膜対象物に対して相対的に移動させることにより、大型の成膜対象物を用いて複数のパターンの成膜を行う場合や複数の成膜対象物に対して同時に成膜を行う場合であっても、成膜対象物の各部分について、また各成膜対象物に対して確実に膜厚分布の均一化を図ることが可能になる。
【0013】
特に、細長の開口形状のアパーチャーを用い、成膜対象物に対してアパーチャーを幅方向に移動させるようにすることにより、より大型の成膜対象物に対して均一な膜厚分布の蒸着を行うことが可能になる。
【0014】
さらにまた、蒸発源をアパーチャーとともに移動させることにより、蒸発源とアパーチャーとの相対的な位置関係を調整することができ、これにより成膜対象物に対して斜め方向から入射する蒸着成分をカットすることができるため、より膜厚分布の均一化を図ることが可能になる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る薄膜形成装置の好ましい実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係る薄膜形成装置の好ましい実施の形態の正面側断面図、図2(a)は、同薄膜形成装置の側面側断面図、図2(b)は、同実施の形態の仕切り部の平面図である。図3は、アパーチャーとマスクとの関係を示す説明図である。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態の薄膜形成装置1は、図示しない真空排気系に接続された真空槽2を有し、この真空槽2の下方には蒸発源3が配設されている。
【0017】
図2に示すように、本実施の形態の場合、蒸発源3は、長方体形状の容器30を有し、この容器30内に所定の有機蒸着材料(例えばAlq3)31が収容されている。そして、容器30の上方近傍に設けたヒータ31、32によって有機蒸着材料を加熱するように構成されている。
【0018】
一方、真空槽2の上部には、基板ホルダー4が設けられ、この基板ホルダー4に、蒸着膜を形成すべき基板(成膜対象物)5が固定されている。そして、基板5の下方近傍にはマスク6が設けられている。
【0019】
図3に示すように、本実施の形態の場合、マスク6には、基板5上に所定の薄膜を蒸着するための複数の素子パターン60が形成されている。
【0020】
さらに、本実施の形態においては、真空槽2内における基板5と蒸発源3との間の空間を仕切る仕切り部7が設けられている。
【0021】
ここで、仕切り部7は、例えばアルミニウム(Al)等の材料からなるもので、上述した蒸発源3の上側部分を覆うように、所定の大きさの例えば長方体箱型形状に形成されている。
【0022】
また、この仕切り部7は、図示しない冷却水等を循環させることによって冷却するように構成されている。
【0023】
そして、図1及び図2(a)(b)に示すように、蒸発源3の鉛直上方で、仕切り部7の上部の中央部分に、細長いスリット形状のアパーチャー70が設けられている。
【0024】
このアパーチャー70は、成膜対象となる基板5の幅より長くなるようにその長さが設定されている。
【0025】
一方、アパーチャー70の幅については、後述するように、その中央部の幅が端部の幅より小さくなるように形成されている。
【0026】
図1に示すように、仕切り部7は、例えば図示しないボールねじを用いて、蒸着源と共に同一方向に同期して移動するように構成されている。
【0027】
この場合、蒸発源3及び仕切り部7が移動する方向は、図3に示すように、アパーチャー70の幅方向である。
【0028】
また、蒸発源3及び仕切り部7の移動範囲は、図1の2点鎖線で示すホームポジションからアパーチャー70が基板5の全面を横切るまでの範囲であり、例えば、成膜時には、この範囲を蒸発源3及び仕切り部7を1回往復させるようにする。
【0029】
ここで、図1の矢印は、仕切り部7のアパーチャー70の中心軸線の移動範囲を示すものである。
【0030】
なお、真空槽2内の基板5の近傍には、成膜速度を測定するための膜厚モニター(図示せず)が設けられている。
【0031】
次に、本発明のアパーチャー70の幅について説明する。
図4(a)(b)に、本発明におけるアパーチャーの例を示すものである。
ここで、図4(a)に示す例は、アパーチャー70Aの側縁部の形状を円弧状にしたもので、その中央部の幅W1が端部の幅W0より小さくなるように形成されている。
【0032】
この場合、アパーチャー70Aの端部の幅W0は、膜厚の均一性確保の観点から、蒸発源3と基板5との間の距離より小さくすることが好ましく、より好ましくは、蒸発源3と基板5との間の距離の1/3以上2/3以下である。
【0033】
また、アパーチャー70の中央部の幅W1は、膜厚の均一性確保の観点から幅W0の1/5以上4/5以下とすることが好ましく、より好ましくは幅W0の1/3以上2/3以下である。
【0034】
一方、図4(b)に示す例は、アパーチャー70Bの側縁部を中央部分(L2で示す領域)のみ直線状にして幅狭に形成したものである。
【0035】
本例においても、アパーチャー70Bの端部の幅W0は、膜厚の均一性確保の観点から、蒸発源3と基板5との間の距離より小さくすることが好ましく、より好ましくは、蒸発源3と基板5との間の距離の1/3以上2/3以下である。
【0036】
また、アパーチャー70Bの中央部の幅W2は、膜厚の均一性確保の観点から1/5以上4/5以下とすることが好ましく、より好ましくは幅W0の1/3以上2/3以下である。
【0037】
さらに、アパーチャー70Bの中央部の長さL2は、膜厚の均一性確保の観点から全長L0の1/5以上4/5以下とすることが好ましく、より好ましくは全長L0の1/5以上4/5以下である。
【0038】
以上説明した本実施の形態によれば、基板と蒸発源3との間の空間を仕切る仕切り部7に基板5の蒸着領域を制限するためのアパーチャー70が設けられており、このアパーチャー70から均一に流出する蒸着材料の蒸気が基板5の表面に蒸着するようになるため、膜厚分布の均一化を図ることができる。
【0039】
その結果、本実施の形態によれば、画素の発光むらを防止することができるとともに、長寿命の有機LED素子を得ることができる。
【0040】
特に本実施の形態においては、アパーチャーの中央部の幅が端部の幅より小さくなるように形成されていることから、アパーチャーの長さ方向に関し膜厚分布を均一にすることができる。
【0041】
また、真空槽2内の蒸発源3とマスク6の間の空間において、アパーチャー70以外の部分は仕切り部7によって仕切られているため、蒸発源3からの熱がマスク6に伝わりにくく、これによりマスク6の変形に起因する蒸着領域のずれを防止することができる。
【0042】
さらに、本実施の形態においては、細長形状のアパーチャー70を幅方向に移動させることにより、大型の基板5を用いて複数のパターンの成膜を行う場合であっても、基板5の各蒸着領域について確実に膜厚分布の均一化を図ることができる。
【0043】
さらにまた、本実施の形態においては、蒸発源3をアパーチャー70とともに移動させることにより、蒸発源3とアパーチャー70との位置関係を固定して基板5に対し斜め方向から入射する蒸着成分をカットすることができるため、より膜厚分布の均一化を図ることができる。
【0044】
なお、本発明は上述の実施の形態に限られることなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、上述の実施の形態においては、仕切り部を移動させてアパーチャーを移動させるようにしたが、本発明はこれに限られず、基板側を移動させるようにすることも可能である。
【0045】
また、アパーチャーの形状については、細長形状であれば、適宜変更することが可能である。
【0046】
さらに、本発明は有機LED素子の有機薄膜を形成するための装置に限られず、種々の蒸着装置に適用することができる。ただし、本発明は有機材料を用いて有機LED素子の有機薄膜を形成する場合に特に有効なものである。
【0047】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、均一な膜厚分布の有機薄膜を形成しうるとともに、蒸発源からの熱の影響を防止しうる薄膜形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る薄膜形成装置の好ましい実施の形態の正面側断面図
【図2】(a):同薄膜形成装置の側面側断面図
(b):同実施の形態の仕切り部の平面図
【図3】アパーチャーとマスクとの関係を示す説明図
【図4】本発明におけるアパーチャーの例を示す説明図
【図5】従来の有機LED素子を作成するための真空蒸着装置の概略構成図
【符号の説明】
1…薄膜形成装置 2…真空槽2 3…蒸発源 5…基板(成膜対象物)
6…マスク 7…仕切り部 70…アパーチャー
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、有機LED素子の発光層に用いられる有機薄膜を蒸着によって形成するための薄膜形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、フルカラーフラットパネルディスプレイ用の素子として、有機LED素子が注目されている。有機LED素子は、蛍光性有機化合物を電気的に励起して発光させる自発光型素子で、高輝度、高視野角、面発光、薄型で多色発光が可能であり、しかも数Vという低電圧の直流印加で発光する全固体素子で、かつ低温においてもその特性の変化が少ないという特徴を有している。
【0003】
図5は、従来の有機LED素子を作成するための真空蒸着装置の概略構成図である。
図5に示すように、この有機薄膜形成装置101にあっては、真空槽102の下部に蒸発源103が配設されるとともに、この蒸発源103の上方に成膜対象物である基板104が配置されている。そして、蒸発源104から蒸発される有機材料の蒸気を、マスク105を介して基板104に蒸着させることによって所定パターンの有機薄膜を形成するようになっている(例えば特開平11−124667号公報参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−124667号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年、マスクのピッチのファイン化に伴い、従来の技術では均一な膜厚分布を得ることが困難で、このため、画素の発光にむらが生ずるとともに、膜厚の薄い領域において電流が流れ過ぎることによって素子の劣化を引き起こし、これにより有機LED素子の寿命が制限されるという問題があった。
【0006】
また、従来の有機薄膜装置では、成膜の際、蒸発源からの熱によってマスクが変形し、蒸着領域のずれが生じてしまうという問題もあった。
【0007】
本発明は、このような従来の技術の課題を解決するためになされたもので、均一な膜厚分布の有機薄膜を形成しうるとともに蒸発源からの熱の影響を防止しうる薄膜形成装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するためになされた請求項1記載の発明は、所定の成膜対象物に対して薄膜を形成するための真空槽と、前記真空槽内に配設され、所定の蒸発材料を蒸発させるための蒸発源と、前記成膜対象物と前記蒸発源との間の空間を仕切る仕切り部とを有し、前記仕切り部に、前記成膜対象物の蒸着領域を制限するための細長形状のアパーチャーが設けられ、該アパーチャーは、その中央部の幅が端部の幅より小さくなるように形成されていることを特徴とする薄膜形成装置である。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記アパーチャーが、前記成膜対象物に対して相対的に移動するように構成されていることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記蒸発源が、前記アパーチャーとともに移動するように構成されていることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項記載の発明において、前記アパーチャーの前記成膜対象物に対する移動方向が、当該アパーチャーの幅方向であることを特徴とする。
【0009】
本発明の場合、成膜対象物と蒸発源との間の空間を仕切る仕切り部に成膜対象物の蒸着領域を制限するためのアパーチャーが設けられており、このアパーチャーから均一に流出する蒸着材料の蒸気が成膜対象物の表面に蒸着するようになるため、膜厚分布の均一化を図ることが可能になる。その結果、本発明によれば、画素の発光むらを防止することができるとともに、長寿命の有機LED素子を得ることができる。
【0010】
特に本発明においては、アパーチャーの中央部の幅が端部の幅より小さくなるように形成されていることから、アパーチャーの中央部分の膜厚が厚くならず、アパーチャーの長さ方向に関し膜厚分布を均一にすることができる。
【0011】
また、本発明においては、蒸発源とマスクの間の空間において、アパーチャー以外の部分は仕切り部によって仕切られているため、蒸発源からの熱がマスクに伝わりにくく、これによりマスクの変形に起因する蒸着領域のずれを防止することが可能になる。
【0012】
さらに、仕切り部のアパーチャーを成膜対象物に対して相対的に移動させることにより、大型の成膜対象物を用いて複数のパターンの成膜を行う場合や複数の成膜対象物に対して同時に成膜を行う場合であっても、成膜対象物の各部分について、また各成膜対象物に対して確実に膜厚分布の均一化を図ることが可能になる。
【0013】
特に、細長の開口形状のアパーチャーを用い、成膜対象物に対してアパーチャーを幅方向に移動させるようにすることにより、より大型の成膜対象物に対して均一な膜厚分布の蒸着を行うことが可能になる。
【0014】
さらにまた、蒸発源をアパーチャーとともに移動させることにより、蒸発源とアパーチャーとの相対的な位置関係を調整することができ、これにより成膜対象物に対して斜め方向から入射する蒸着成分をカットすることができるため、より膜厚分布の均一化を図ることが可能になる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る薄膜形成装置の好ましい実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係る薄膜形成装置の好ましい実施の形態の正面側断面図、図2(a)は、同薄膜形成装置の側面側断面図、図2(b)は、同実施の形態の仕切り部の平面図である。図3は、アパーチャーとマスクとの関係を示す説明図である。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態の薄膜形成装置1は、図示しない真空排気系に接続された真空槽2を有し、この真空槽2の下方には蒸発源3が配設されている。
【0017】
図2に示すように、本実施の形態の場合、蒸発源3は、長方体形状の容器30を有し、この容器30内に所定の有機蒸着材料(例えばAlq3)31が収容されている。そして、容器30の上方近傍に設けたヒータ31、32によって有機蒸着材料を加熱するように構成されている。
【0018】
一方、真空槽2の上部には、基板ホルダー4が設けられ、この基板ホルダー4に、蒸着膜を形成すべき基板(成膜対象物)5が固定されている。そして、基板5の下方近傍にはマスク6が設けられている。
【0019】
図3に示すように、本実施の形態の場合、マスク6には、基板5上に所定の薄膜を蒸着するための複数の素子パターン60が形成されている。
【0020】
さらに、本実施の形態においては、真空槽2内における基板5と蒸発源3との間の空間を仕切る仕切り部7が設けられている。
【0021】
ここで、仕切り部7は、例えばアルミニウム(Al)等の材料からなるもので、上述した蒸発源3の上側部分を覆うように、所定の大きさの例えば長方体箱型形状に形成されている。
【0022】
また、この仕切り部7は、図示しない冷却水等を循環させることによって冷却するように構成されている。
【0023】
そして、図1及び図2(a)(b)に示すように、蒸発源3の鉛直上方で、仕切り部7の上部の中央部分に、細長いスリット形状のアパーチャー70が設けられている。
【0024】
このアパーチャー70は、成膜対象となる基板5の幅より長くなるようにその長さが設定されている。
【0025】
一方、アパーチャー70の幅については、後述するように、その中央部の幅が端部の幅より小さくなるように形成されている。
【0026】
図1に示すように、仕切り部7は、例えば図示しないボールねじを用いて、蒸着源と共に同一方向に同期して移動するように構成されている。
【0027】
この場合、蒸発源3及び仕切り部7が移動する方向は、図3に示すように、アパーチャー70の幅方向である。
【0028】
また、蒸発源3及び仕切り部7の移動範囲は、図1の2点鎖線で示すホームポジションからアパーチャー70が基板5の全面を横切るまでの範囲であり、例えば、成膜時には、この範囲を蒸発源3及び仕切り部7を1回往復させるようにする。
【0029】
ここで、図1の矢印は、仕切り部7のアパーチャー70の中心軸線の移動範囲を示すものである。
【0030】
なお、真空槽2内の基板5の近傍には、成膜速度を測定するための膜厚モニター(図示せず)が設けられている。
【0031】
次に、本発明のアパーチャー70の幅について説明する。
図4(a)(b)に、本発明におけるアパーチャーの例を示すものである。
ここで、図4(a)に示す例は、アパーチャー70Aの側縁部の形状を円弧状にしたもので、その中央部の幅W1が端部の幅W0より小さくなるように形成されている。
【0032】
この場合、アパーチャー70Aの端部の幅W0は、膜厚の均一性確保の観点から、蒸発源3と基板5との間の距離より小さくすることが好ましく、より好ましくは、蒸発源3と基板5との間の距離の1/3以上2/3以下である。
【0033】
また、アパーチャー70の中央部の幅W1は、膜厚の均一性確保の観点から幅W0の1/5以上4/5以下とすることが好ましく、より好ましくは幅W0の1/3以上2/3以下である。
【0034】
一方、図4(b)に示す例は、アパーチャー70Bの側縁部を中央部分(L2で示す領域)のみ直線状にして幅狭に形成したものである。
【0035】
本例においても、アパーチャー70Bの端部の幅W0は、膜厚の均一性確保の観点から、蒸発源3と基板5との間の距離より小さくすることが好ましく、より好ましくは、蒸発源3と基板5との間の距離の1/3以上2/3以下である。
【0036】
また、アパーチャー70Bの中央部の幅W2は、膜厚の均一性確保の観点から1/5以上4/5以下とすることが好ましく、より好ましくは幅W0の1/3以上2/3以下である。
【0037】
さらに、アパーチャー70Bの中央部の長さL2は、膜厚の均一性確保の観点から全長L0の1/5以上4/5以下とすることが好ましく、より好ましくは全長L0の1/5以上4/5以下である。
【0038】
以上説明した本実施の形態によれば、基板と蒸発源3との間の空間を仕切る仕切り部7に基板5の蒸着領域を制限するためのアパーチャー70が設けられており、このアパーチャー70から均一に流出する蒸着材料の蒸気が基板5の表面に蒸着するようになるため、膜厚分布の均一化を図ることができる。
【0039】
その結果、本実施の形態によれば、画素の発光むらを防止することができるとともに、長寿命の有機LED素子を得ることができる。
【0040】
特に本実施の形態においては、アパーチャーの中央部の幅が端部の幅より小さくなるように形成されていることから、アパーチャーの長さ方向に関し膜厚分布を均一にすることができる。
【0041】
また、真空槽2内の蒸発源3とマスク6の間の空間において、アパーチャー70以外の部分は仕切り部7によって仕切られているため、蒸発源3からの熱がマスク6に伝わりにくく、これによりマスク6の変形に起因する蒸着領域のずれを防止することができる。
【0042】
さらに、本実施の形態においては、細長形状のアパーチャー70を幅方向に移動させることにより、大型の基板5を用いて複数のパターンの成膜を行う場合であっても、基板5の各蒸着領域について確実に膜厚分布の均一化を図ることができる。
【0043】
さらにまた、本実施の形態においては、蒸発源3をアパーチャー70とともに移動させることにより、蒸発源3とアパーチャー70との位置関係を固定して基板5に対し斜め方向から入射する蒸着成分をカットすることができるため、より膜厚分布の均一化を図ることができる。
【0044】
なお、本発明は上述の実施の形態に限られることなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、上述の実施の形態においては、仕切り部を移動させてアパーチャーを移動させるようにしたが、本発明はこれに限られず、基板側を移動させるようにすることも可能である。
【0045】
また、アパーチャーの形状については、細長形状であれば、適宜変更することが可能である。
【0046】
さらに、本発明は有機LED素子の有機薄膜を形成するための装置に限られず、種々の蒸着装置に適用することができる。ただし、本発明は有機材料を用いて有機LED素子の有機薄膜を形成する場合に特に有効なものである。
【0047】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、均一な膜厚分布の有機薄膜を形成しうるとともに、蒸発源からの熱の影響を防止しうる薄膜形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る薄膜形成装置の好ましい実施の形態の正面側断面図
【図2】(a):同薄膜形成装置の側面側断面図
(b):同実施の形態の仕切り部の平面図
【図3】アパーチャーとマスクとの関係を示す説明図
【図4】本発明におけるアパーチャーの例を示す説明図
【図5】従来の有機LED素子を作成するための真空蒸着装置の概略構成図
【符号の説明】
1…薄膜形成装置 2…真空槽2 3…蒸発源 5…基板(成膜対象物)
6…マスク 7…仕切り部 70…アパーチャー
Claims (4)
- 所定の成膜対象物に対して薄膜を形成するための真空槽と、
前記真空槽内に配設され、所定の蒸発材料を蒸発させるための蒸発源と、
前記成膜対象物と前記蒸発源との間の空間を仕切る仕切り部とを有し、
前記仕切り部に、前記成膜対象物の蒸着領域を制限するための細長形状のアパーチャーが設けられ、
該アパーチャーは、その中央部の幅が端部の幅より小さくなるように形成されていることを特徴とする薄膜形成装置。 - 前記アパーチャーが、前記成膜対象物に対して相対的に移動するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の薄膜形成装置。
- 前記蒸発源が、前記アパーチャーとともに移動するように構成されていることを特徴とする請求項2記載の薄膜形成装置。
- 前記アパーチャーの前記成膜対象物に対する移動方向が、当該アパーチャーの幅方向であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の薄膜形成装置。
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