JP2004107692A - マグネシウム合金の陽極酸化処理方法 - Google Patents
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Abstract
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、マグネシウム合金材料の陽極酸化処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
マグネシウム合金は比較的新しい金属材料であり、リサイクル法の成立によってリサイクルしにくいプラスチック材料からの置き換えにより、或いはマグネシウム合金の持つ軽量性を利用した携帯電話やノート型パーソナルコンピューターなどの筐体部分の材質などとして利用範囲が広がりつつある材料である。
【0003】
マグネシウム合金の主成分であるマグネシウムは、アルカリ土類金属に属する反応性の高い金属である。従って、マグネシウム合金材料は、他の材料と比較して耐食性が著しく劣っている。
【0004】
そこで、マグネシウム合金材料の耐食性を向上させるために、化成処理を行った後、塗膜を形成して耐食性を付与している。しかし、塗装をした場合であっても、塗膜に傷が付くとその部分から腐食が広がる可能性がある。また、化成処理した表面は密着性が悪いため、プライマーを設けた後、トップコートを形成するツーコートツーベーク方式が採用されているが、工程が煩雑であり、また、塗膜も厚くなる傾向にある。塗膜が厚いと、外装品としてマグネシウム合金を用いる場合、金属の質感が充分に発揮されないという欠点がある。
【0005】
一方、電解液中で陽極酸化処理を行い皮膜を形成して耐食性を付与する方法が提案されているが(例えば、特許文献1参照)、従来提案されている陽極酸化処理方法(例えば、JIS H 8651 MX−11 タイプAの場合、20℃、60分間、2A/dm2、85V、交流電源)は、非常に多くの電力が消費されるので、マグネシウム合金の表面を化成処理した後、塗膜を形成しているのが現状である。
【0006】
【特許文献1】
特開平9−176894号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、電力消費量が少なく、耐食性に優れた皮膜を形成することができる陽極酸化方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、下記の各項に係る発明を提供するものである。
項1 マグネシウム合金を陽極酸化処理する方法であって、電解を、
(i) アルカリ金属の水酸化物、並びに
(ii) 下記の部分構造
【0009】
【化4】
【0010】
を含む化合物及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種
を含有する電解液組成物中で、
供給電源が直流電源であって電流密度0.1〜4.8A/dm2の定電流または0.5〜10Vの定電圧を用いて行うことを特徴とする方法。
項2 (i)水酸化アルカリが、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
(ii) 下記の部分構造
【0011】
【化5】
【0012】
を含む化合物及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種が、
オルトリン酸、鎖状又は環状ポリリン酸、ピロリン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、第1,第2又は第3リン酸アルカリ金属塩、第1,第2又は第3リン酸アルカリ土類金属塩、第1,第2又は第3リン酸アルミニウム及び第1,第2又は第3リン酸アンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種
であることを特徴とする項1に記載の方法。
項3 陽極酸化に用いる電解液が、
(i) 水酸化アルカリ0.1〜8mol/l、並びに
(ii) 下記の部分構造
【0013】
【化6】
【0014】
を含む化合物及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種0.01〜2mol/l
を含有する組成物であることを特徴とする項1に記載の方法。
項4 処理温度が20〜80℃であることを特徴とする項1に記載の方法。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明は、マグネシウム合金を陽極酸化処理する方法であって、電解を、特定の電解液中で、供給電源が直流電源であって電流密度0.1〜4.8A/dm2の定電流または0.5〜10Vの定電圧を用いる方法である。
【0017】
本発明の陽極酸化処理は、マグネシウム合金を、電解液に浸漬して上記の条件で電解を行えばよく、これによりマグネシウム合金の表面に陽極酸化皮膜を得ることができる。
【0018】
本発明において、陽極酸化処理の対象となるマグネシウム合金の種類としては、例えば、Mg−Al−Zn系合金、Mg−Zn−Zr系合金、Mg−Al系合金、Mg−希土類元素系合金などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0019】
Mg−Al−Zn系合金としては、AZ31A、AZ31B、AZ31C、AZ61A、AZ80Aなどが挙げられる。
【0020】
Mg−Zn−Zr系合金としては、ZK51A、ZK61A、ZK60、M6、M5、M4などが挙げられる。
【0021】
Mg−Al系合金としては、AM100Aなどが挙げられる。
【0022】
Mg−希土類元素系合金としては、EZ33A、ZE41A、QE22Aなどが挙げられる。
【0023】
好ましいマグネシウム合金は、Mg−Al−Zn系合金、Mg−Zn−Zr系合金であり、より好ましいマグネシウム合金はMg−Al−Zn系合金であり、さらに好ましいマグネシウム合金は、AZ31A、AZ31B、AZ31Cである。
【0024】
本発明において、マグネシウム合金は、通常、プレス加工などの塑性加工、ダイキャスト法、チクソモールド法などにより、用途に応じた所望の形状の成形体に加工した後に陽極酸化処理に供される。
【0025】
本発明の陽極酸化処理では、電流密度0.1〜4.8A/dm2程度、好ましくは0.3〜4.5A/dm2程度の定電流、または0.5〜10V程度、好ましくは0.8〜9V程度の定電圧であって、直流電源を用いて電解することを必須とする。
【0026】
上記したような条件であれば、耐食性に優れた皮膜を、従来よりも低い消費電力で行うことが可能である。
【0027】
その他の陽極酸化処理の条件は、陽極酸化皮膜の所望の膜厚、電解液組成物の種類等に応じて適宜設定することができる。本発明では、陽極酸化皮膜の膜厚としては、用途に応じた耐食性などが得られるようなものであれば特に限定されるものではないが、通常、1〜20μm程度、好ましくは3〜15μm程度、より好ましくは4〜12μm程度である。
【0028】
陽極酸化処理のその他の条件は、耐食性に優れた膜が得られる限り特に限定されるものでなく、電解液の種類に応じて適宜設定することができる。例えば、浴温は0〜80℃程度が好ましく、10〜80℃程度がより好ましく、20〜80℃程度がさらに好ましい。電解時間は、通常、1〜20分間程度であり、2〜15分間程度が好ましい。
【0029】
本発明の方法に好ましく用いられる電解液組成物は、(i)アルカリ金属の水酸化物、並びに(ii)前記部分構造を含む化合物及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する組成物である。
【0030】
アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等が挙げられる。
【0031】
アルカリ金属の水酸化物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
下記の部分構造
【0033】
【化7】
【0034】
を含む化合物としては、例えば下記式(1)で表される化合物、下記式(2)で表される繰返し単位を有する鎖状又は環状化合物が挙げられる。
【0035】
【化8】
【0036】
[式中、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、水素原子又は水酸基を示す(ただし、R1、R2及びR3が同時に水素原子である場合を除く)。];
【0037】
【化9】
【0038】
[式中、nは1以上の整数を示し、mは0又は1以上の整数を示す。]。
【0039】
式(1)で表される化合物としては、オルトリン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸などが挙げられる。
【0040】
式(2)において、nは、1以上の整数、好ましくは1〜10程度の整数、より好ましくは1〜8程度の整数を示す。mは、0又は1以上の整数、好ましくは0又は1〜10程度の整数、さらに好ましくは0又は1〜8程度の整数を示す。nとmの合計(n+m)は、好ましくは2〜20程度の整数、より好ましくは2〜10程度の整数を示す。
【0041】
式(2)で表される化合物としては、ピロリン酸、ポリリン酸が挙げられる。ポリリン酸としては、鎖状ポリリン酸(メタリン酸)又は環状ポリリン酸(ウルトラリン酸)のいずれであってもよい。ポリリン酸としては、例えば、ヘキサメタリン酸などが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
上記の部分構造を含む化合物の塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
【0043】
ここで、塩を形成するアルカリ金属としては、リチウム、カリウム、ナトリウム等が挙げられる。
【0044】
また、ここで塩を形成するアルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム等が挙げられる。
【0045】
塩としては、リン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、アンモニウム塩などが例示され、第1、第2又は第3リン酸アルカリ金属塩、第1、第2又は第3リン酸アルカリ土類金属塩、第1、第2又は第3リン酸アルミニウム塩、第1、第2又は第3リン酸アンモニウム塩が挙げられる。具体的には、第一リン酸ナトリウム、第一リン酸カリウム、第一リン酸マグネシウム、第一リン酸カルシウム、第一リン酸アルミニウム、第三リン酸カリウム、第三リン酸ナトリウムなどが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
前記の部分構造を含む化合物又はその塩としては、リン酸、ポリリン酸、ヘテロポリリン酸、ウルトラリン酸、第一リン酸ナトリウム、第一リン酸カリウム、第一リン酸マグネシウム、第一リン酸カルシウム、第一リン酸アルミニウム、第三リン酸カリウム又は第三リン酸ナトリウムが好ましく、リン酸、ポリリン酸、ヘテロポリリン酸、ウルトラリン酸、第一リン酸ナトリウム、第一リン酸カリウム、第一リン酸マグネシウム、第一リン酸カルシウム、第三リン酸カリウム又は第三リン酸ナトリウムがより好ましい。
【0047】
本発明で用いる電解液組成物において、各成分の配合量は、所望の皮膜が得られるようなものであれば特に限定されず各成分の種類に応じて適宜設定することができる。通常、水1Lに対して、(i)アルカリ金属の水酸化物が好ましくは0.1〜10mol程度、より好ましくは0.5〜8mol程度;(ii) リン酸化合物及びリン酸塩化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種が、好ましくは0.01〜5mol程度、より好ましくは0.05〜3mol程度である。
【0048】
本発明の方法では、フッ化カリウム、クロム酸、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム、過マンガン酸カリウムなどを含まない電解液組成物を用いるのが好ましい。
【0049】
また、本発明の方法で用いる電解液組成物には、ケイ酸化合物及び表面調整剤を同時に含む組成物を用いるのは好ましくない。このようなケイ酸化合物としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸リチウムなどのケイ酸塩が挙げられる。表面調整剤としては、アルコール基、エーテル基などを有する極性物質が挙げられ、例えば、アルコールなどのプロトン性溶媒が挙げられる。アルコールとしては、具体的には、エチレングリコール、エチルグリコール、エチルジグリコール、エチルトリグリコール、ブチルグリコール、ブチルジグリコールなどのグリコール化合物が好ましく例示できる。
【0050】
本発明の組成物は、水に所定量の成分を溶解させることにより調製することができる。
【0051】
このようなにして得られた陽極酸化皮膜は、耐食性に優れている。従って、かかる陽極酸化皮膜を有するマグネシウム合金乃至マグネシウム合金の成形体は、種々の最終的な製品の製造に用いることがでる。最終的な製品としては、例えば、携帯電話、PHS、PDA(Personal Digital Assistance)などの移動情報端末;ノート型パソコン;デジタルビデオ、デジタルカメラなどの映像機器;産業ロボット、エンターテインメントロボットなどのロボット;CDプレイヤー、MDプレイヤー、ポータブルカセットディスク、ポータブルDVDなどの情報記録及び/又は再生装置;ゲーム機器の筐体部分、内部機構部品(例えば、ゲーム機器の内部ピックアップ)などの用途に用いることができる。また、該成形体は、自動車部品、航空宇宙産業用部品(人工衛星の筐体、太陽電池用パドルの支え、宇宙ステーションの構造材)などにも用いることができる。
【0052】
【発明の効果】
本発明の陽極酸化処方法によれば、従来の方法と比べて電力消費量を抑制することが可能である。また、本発明の方法により形成された陽極酸化皮膜によれば、マグネシウム合金に対して優れた耐食性を付与することができる。従って、化成処理を行った場合のように耐食性を付与するための塗装が不要となる。また、従来は塗装に傷が生じたり、はがれが生じるとその場所から腐食が広がる可能性があったが、本発明の方法により形成された皮膜にはそのようなおそれがない。さらに、本発明の陽極酸化皮膜は、従来の方法により得られる陽極酸化皮膜より薄くても充分な耐食性が得られるため、マグネシウム合金の質感が充分発揮される。本発明方法により得られたマグネシウム合金の表面は密着性に優れているため、外装品として用いるために塗膜を形成する場合、トップコートの下にプライマーを設ける必要がない。従って塗膜が従来より薄くなり、金属の質感が充分に発揮される。
【0053】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0054】
後述の試験例において、膜厚測定は下記の装置を用いて行い、塩水噴霧試験は下記のようにして行った。
膜厚測定:株式会社フィッシャーインスツルメンツ製:イソスコープMP30型
塩水噴霧試験(SST試験)条件:JIS Z 2371 連続48時間 レイティングナンバー法で評価;SST試験装置としては、スガ試験機株式会社製CASS90型を使用。
【0055】
試験例1
下記に示すマグネシウム合金(AZ31B)の試験片を脱脂し、エッチングした後、下記表1に示す条件及び組成物を用いて陽極酸化を行った。結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
試験例2
マグネシウム合金(AZ31B)の試験片を脱脂し、エッチングした後、下記表2に示す条件及び組成物を用いて陽極酸化を行った。結果を表2に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
試験例3
下記に示すマグネシウム合金(AZ31B)の試験片を脱脂し、エッチングした後、下記に示すJIS H 8651 MX−11 タイプAの電解条件にて陽極酸化を行い、得られた試験片について膜厚及びSST試験を行った(比較例1)。また、脱脂のみを行った場合についてもSST試験を行った(比較例2)。結果を表3に示す。
【0060】
【表3】
Claims (4)
- 処理温度が20〜80℃であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
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