JP2004107259A - カルボン酸エステルの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】反応生成ガスから実質的にカルボン酸エステルを含有していない未反応オレフィンを効率よく回収しうるカルボン酸エステルの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明におけるカルボン酸エステルは、触媒と水の存在下、オレフィンとカルボン酸とを加圧下、気相で反応させて得た反応生成ガスを、加圧下で第1の吸収塔の下部に導入し、該吸収塔の塔底凝縮液の一部を冷却して該吸収塔の上部に戻し、前記反応生成ガスと向流接触させてカルボン酸エステル及びカルボン酸を吸収させ、第1の吸収塔の塔頂のガスを第2の吸収塔の下部に導入し、カルボン酸又は水含有カルボン酸を吸収溶媒として該吸収塔の上部に供給し、前記第1の吸収塔の塔頂ガスと向流接触させてカルボン酸エステルを吸収させ、第2の吸収塔の塔頂より回収した未反応オレフィンを反応系に循環する工程により製造される。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明におけるカルボン酸エステルは、触媒と水の存在下、オレフィンとカルボン酸とを加圧下、気相で反応させて得た反応生成ガスを、加圧下で第1の吸収塔の下部に導入し、該吸収塔の塔底凝縮液の一部を冷却して該吸収塔の上部に戻し、前記反応生成ガスと向流接触させてカルボン酸エステル及びカルボン酸を吸収させ、第1の吸収塔の塔頂のガスを第2の吸収塔の下部に導入し、カルボン酸又は水含有カルボン酸を吸収溶媒として該吸収塔の上部に供給し、前記第1の吸収塔の塔頂ガスと向流接触させてカルボン酸エステルを吸収させ、第2の吸収塔の塔頂より回収した未反応オレフィンを反応系に循環する工程により製造される。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、オレフィンとカルボン酸との気相反応によりカルボン酸エステルを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、固体酸触媒の存在下、エチレンと酢酸を気相で反応させて酢酸エチルを製造する方法が知られている。前記反応により得られる反応生成ガス中には、生成物である酢酸エチル以外に、未反応エチレン、未反応酢酸、及び触媒活性維持のために添加された水、さらにこの水との反応で副生した微量のエチルアルコールが含有されている。前記反応生成ガスから、酢酸エチル、酢酸、水、エチルアルコールを凝縮成分として除去し、未反応エチレンを回収する方法としては、例えば、反応生成ガスを多段階に冷却することにより凝縮成分とエチレンに分離する方法が知られている。
【0003】
上記の方法においては、反応生成ガスから凝縮により酢酸エチルを捕集する場合、蒸気分圧に相当する酢酸エチルを含むエチレンとして回収される。前記回収エチレンを反応系に循環使用すると、混入する酢酸エチルが触媒の活性への負担の原因となり、さらに反応生成物が原料に含有されることにより反応進行上不利となることが予想される。前記回収エチレン中の酢酸エチル濃度を下げる方法としては、凝縮温度を下げてエチレンを回収する方法が考えられるが、凝縮液中に多量のエチレンが溶け込むという問題がある。他の方法として、反応生成ガスを吸収塔に導入し、酢酸と向流接触させて酢酸エチルを酢酸に吸収させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この方法では、吸収溶媒として比較的多量の酢酸を使用するため、吸収後に酢酸と酢酸エチルを分離する際に多大なエネルギーが必要となる。また、吸収塔の塔頂のエチレンガス中の酢酸エチル濃度を極低濃度に抑える条件では、凝縮液中に無視できない量のエチレンが溶解する。特許文献1では、このエチレンを回収するため、該凝縮液を蒸留して酢酸と分離して得られたエチレン含有酢酸エチルを再度吸収塔に供給し、塔頂から未反応エチレンを回収する方法を提案しているが、エチレン存在下の蒸留操作は安定しにくい等の問題があった。
【0004】
【特許文献1】
特許第2946883号公報(第2頁、第1図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、反応生成ガスからカルボン酸エステルと未反応オレフィンを効率よく分離し、カルボン酸エステルを実質的に含有していないオレフィンを回収するカルボン酸エステルの製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、反応副生物としてのアルコールを有効に利用するカルボ酸エステルの製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、吸収溶媒として吸収塔の凝縮液を用いる工程と吸収溶媒としてカルボン酸を用いる工程を組み合わせることにより、反応生成ガス中のカルボン酸エステルを効率よく吸収できること、また、反応で副生したアルコールをカルボン酸と反応させることにより、該アルコールを有効に利用しうることを見いだし、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、触媒と水の存在下、オレフィンとカルボン酸とを加圧下、気相で反応させてカルボン酸エステルを製造する方法であって、反応生成ガスを加圧下で第1の吸収塔の下部に導入し、該第1の吸収塔の塔底凝縮液の一部を冷却して該第1の吸収塔の上部に戻し、前記反応生成ガスと向流接触させることにより、反応生成ガス中のカルボン酸エステル及びカルボン酸を吸収させるとともに、第1の吸収塔の塔頂ガスを第2の吸収塔の下部に導入し、カルボン酸又は水含有カルボン酸を吸収溶媒として該第2の吸収塔の上部に供給し、前記第1の吸収塔の塔頂ガスと向流接触させることにより、該塔頂ガス中のカルボン酸エステルを吸収させ、第2の吸収塔の塔頂よりカルボン酸エステルを実質的に含有していない未反応オレフィンを回収し、該未反応オレフィンを反応系に循環する工程を含むカルボン酸エステルの製造方法を提供する。
【0008】
上記方法において、第1の吸収塔及び第2の吸収塔として、両吸収塔が一体化した吸収塔を用いてもよい。上記方法は、さらに、第1及び第2の吸収塔の塔底凝縮液を常圧にし、該塔底凝縮液中に溶解しているオレフィンを気化させ、これを第1の吸収塔の反応生成ガス供給位置よりも上部で且つ第1の吸収塔の塔底凝縮液の供給位置よりも下部に供給して、前記オレフィン中に含まれるカルボン酸エステルを前記第1の吸収塔の塔底凝縮液に吸収させる工程を含んでいてもよい。
【0009】
また、本発明の方法は、オレフィンを気化させた後の第1及び第2の吸収塔の塔底凝縮液を蒸留塔に供給し、塔頂からカルボン酸エステル、反応で副生したアルコール、及び水を得、塔底から水含有カルボン酸を回収し、回収した水含有カルボン酸の一部を第2の吸収塔の吸収溶媒として用い、残余を反応系に循環する工程を含んでいてもよい。さらに、蒸留塔の塔頂から得られたアルコールを酸触媒存在下でカルボン酸と反応させてカルボン酸エステルとし、該カルボン酸エステルを含有する反応混合液を前記蒸留塔に供給する工程を含んでいてもよい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を、必要に応じて図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は本発明のカルボン酸エステルの製造方法の一例を示す概略工程図である。なお、図1中、番号を付した矢印は連結媒体(例えば導管や供給管など)による物質の移動を示しており、以下、「ライン1」等と称する場合がある。
【0011】
[反応]
この例では、ライン1によりカルボン酸と水とオレフィンガスを、またライン2によりリサイクルオレフィンガスをカルボン酸気化器Aに供給して生成した混合ガス(ライン4)を触媒を配した第1のエステル化反応器Bへ導入し、加圧下、気相で反応させて、カルボン酸エステルを生成させる。
【0012】
オレフィンとしては、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテンなどが挙げられ、特にエチレンが好ましく用いられる。カルボン酸としては、例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸などが挙げられ、特に酢酸が好ましく用いられる。反応系に供給するオレフィン及びカルボン酸としては、特に限定されず、市販のものを用いることができる。図1の例では、さらに製造工程から回収した未反応カルボン酸や未反応オレフィンを原料として再利用している。すなわち、第2の吸収塔C−2の塔頂より未反応オレフィンを回収し、ライン2により該未反応オレフィンを反応系に循環する工程(ライン2)、及び蒸留塔Eより未反応カルボン酸を回収し反応系に循環する工程(ライン3)を有している。このように原料物質をリサイクルすることによって、カルボン酸及びオレフィンガスの利用率を向上することができる。なお、本発明では、必ずしも未反応カルボン酸を回収し反応系に循環する工程を含まなくてもよい。触媒としては、エステル生成反応に慣用のものでよく、好ましくは固体酸触媒などが用いられる。触媒の活性を維持する目的で、水存在下で反応を行う。
【0013】
第1のエステル化反応器Bは流動床反応器、固定床反応器等の何れであってもよい。第1のエステル化反応器Bは、図1に例示のように1槽であってもよく、2槽以上を連続的に接続してもよい。反応圧力は、例えば300〜1500kPa、好ましくは400〜1200kPa程度、温度は、例えば100〜300℃、好ましくは150〜220℃程度である。
【0014】
上記反応により、生成物であるカルボン酸エステル、未反応カルボン酸、未反応オレフィン、水、副生したアルコールを主成分とする反応生成ガスが得られる。例えば、オレフィンにエチレン、カルボン酸に酢酸を用いて上記反応を行った場合には、生成物である酢酸エチル、未反応酢酸、未反応エチレン、水、副生したエタノールを主成分とする反応生成ガスが得られる。得られた反応生成ガスは、後述の工程に従って各成分ごとに分離回収される。
【0015】
[カルボン酸エステルの吸収]
図1の例では、第1のエステル化反応器Bからの反応生成ガスは、加圧下でライン5により第1の吸収塔C−1の下部に導入され、該第1の吸収塔C−1の塔底凝縮液の一部を冷却してライン6により該第1の吸収塔の上部に戻し、前記反応生成ガスと向流接触させることにより、反応生成ガス中のカルボン酸エステル及び未反応カルボン酸を吸収させる。また、第1の吸収塔C−1の塔頂のガスは第2の吸収塔C−2の下部に導入される。
【0016】
さらに、カルボン酸又は水含有カルボン酸を吸収溶媒としてライン7により該第2の吸収塔C−2の上部に供給し、前記1の吸収塔C−1の塔頂ガスと向流接触させることにより、該塔頂ガス中のカルボン酸エステルを吸収させ、第2の吸収塔C−2の塔頂よりカルボン酸エステルを実質的に含有していない未反応オレフィンを回収し、ライン2により該未反応オレフィンを反応系に循環する。
【0017】
なお、図1においては、第1の吸収塔C−1及び第2の吸収塔C−2として、両吸収塔が一体化した吸収塔を用いた例を示しているが、必ずしも一体化されたものに限られず、例えば2つの吸収塔をラインで連結したものを用いてもよい。一体化した吸収塔は、設備費を低減しうるため好ましく用いられる。前記第1の吸収塔C−1及び第2の吸収塔C−2は、例えば棚段塔、充填塔、スプレー塔等の何れであってもよい。
【0018】
第1のエステル化反応器Bからの反応生成ガスを第1の吸収塔C−1に導入する際の圧力は、例えば、反応圧力と同程度(例えば300〜1500kPa、好ましくは400〜1200kPa程度)であり、温度は、反応温度より低いのが好ましく、例えば50〜120℃程度である。
【0019】
第1の吸収塔C−1の塔底凝縮液は、第1の吸収塔C−1の下部から連続的に抜き取られ、その一部は冷却されライン6により前記第1の吸収塔C−1の上部に戻され、反応生成ガス中に存在するカルボン酸エステル等を吸収する吸収溶媒として利用される。冷却温度は、前記反応生成ガスの導入温度より低いことが好ましく、例えば10〜50℃、好ましくは10〜40℃程度である。未凝縮物(ガス)中に含まれるカルボン酸エステル濃度を低くするため、冷却温度は低いほど好ましいが、10℃未満では凝縮液中に溶け込むオレフィンの量が多くなりやすい。前記凝縮液は、図1に例示のように吸収塔の上部1カ所(ライン6)へ供給してもよく、2カ所以上へ供給してもよい。残りの塔底凝縮液は、ライン15によりタンクDへ送られる。
【0020】
第2の吸収塔C−2では、カルボン酸又は水含有カルボン酸を吸収溶媒として用いる。吸収溶媒には、後述する蒸留塔Eにおける蒸留により分離される水含有カルボン酸の一部(ライン7)を利用できる。前記吸収溶媒の供給温度は、例えば0〜50℃程度である。特に、酢酸(水を含まない)を用いる場合には、酢酸の氷結を防ぐため、20℃以上(例えば20〜50℃程度)の温度で供給するのが好ましい。前記カルボン酸又は水含有カルボン酸は、図1に例示のように吸収塔C−2の上部1カ所へ供給してもよく、2カ所以上へ供給してもよい。
【0021】
前記吸収溶媒は、第2の吸収塔C−2の上部に導入し、前記第1の吸収塔C−1の塔頂ガスと向流接触させた後、第2の吸収塔C−2の下部より回収される。前記吸収溶媒は、第1の吸収塔の塔底凝縮液と同じ位置から回収することも可能であるが、塔底凝縮液との混合によりカルボン酸エステルの吸収効率が低下することを防ぐため、第1の吸収塔における塔底凝縮液の供給部分よりも上部で抜き取るのが好ましい。
【0022】
反応生成ガスと前記吸収溶媒が向流接触することによって、第1の吸収塔で吸収されなかった気体状態のカルボン酸エステルは凝縮液に吸収され、カルボン酸エステルが除去された高純度の未反応オレフィンガスを分離回収することができる。こうして得られたカルボン酸エステルを実質的に含有していない未反応オレフィンは、ライン2により反応系に循環される。「カルボン酸エステルを実質的に含有していないオレフィン」とは、原料として反応系にリサイクルした際に反応の進行に悪影響を及ぼさない程度にカルボン酸エステルの濃度が低いオレフィンを意味しており、具体的には、カルボン酸エステルの濃度が例えば0.1モル%以下、好ましくは0.08モル%以下程度である。カルボン酸エステル濃度が上記範囲である回収オレフィンは、原料として循環利用した際に混入カルボン酸エステルによって生じうる弊害、例えば触媒の活性への負担等の反応進行上の不利益を抑制することができ、カルボン酸エステルを高い効率で生成させることができる。
【0023】
本発明の特徴の一つは、カルボン酸エステルの吸収に第1の吸収塔C−1の塔底凝縮液の一部を用いる第1の吸収塔C−1と、カルボン酸を用いる第2の吸収塔C−2とを組み合わせることにある。反応生成ガスと前記凝縮液が向流接触することによって、気体状態のカルボン酸エステルは凝縮液に吸収され、反応生成ガス中のカルボン酸エステル濃度を減少することができ、こうして得られたガスをカルボン酸と向流接触させて再びカルボン酸エステルを吸収するため、カルボン酸の使用量を抑え、カルボン酸エステルの吸収効率を向上することができる。
【0024】
[凝縮液中のオレフィンの気化]
図1の例では、ライン8及び15を通じて回収された第1及び第2の吸収塔の塔底凝縮液をタンクDに導き、そこで圧力を減じることにより該塔底凝縮液中に溶解しているオレフィンを気化させ、これを第1の吸収塔C−1の反応生成ガス供給位置よりも上部で且つ第1の吸収塔C−1の塔底凝縮液の供給位置よりも下部に供給して(ライン9)、前記オレフィン中に含まれるカルボン酸エステルを前記第1の吸収塔C−1の塔底凝縮液に吸収させる。なお、本発明では、上記凝縮液中のオレフィンの気化に係る工程を必ずしも含まなくてもよい。
【0025】
塔底凝縮液中に溶解しているオレフィンの気化は、加圧下に導入された凝縮液を好ましくは常圧に放圧し、さらに必要に応じて、例えば20〜60℃程度に加熱することにより行われる。得られたオレフィンガスはカルボン酸エステルを混入しているため、例えば0〜30℃程度に冷却してカルボン酸エステルを凝縮により分離する。さらに微量に含まれるカルボン酸エステルを除去するため、ライン9により該オレフィンガスを加圧して第1の吸収塔に導入してカルボン酸エステルを吸収させる。前記オレフィンガスを第1の吸収塔C−1に戻す位置としては、反応生成ガス供給位置よりも上部で且つ凝縮液供給位置よりも下部であることが望ましい。反応生成ガス供給位置よりも下部又は同じ位置に前記オレフィンガスを戻すと、未精製の反応生成ガスと混合することにより前記オレフィンガス中に含まれるカルボン酸エステルの吸収効率が著しく低下してしまう。凝縮液供給位置よりも上部に前記オレフィンガスを戻すと、該凝集液との向流接触を行うことができない。
【0026】
こうして得られたオレフィン分離後の凝縮液は、オレフィンの濃度が凝縮液全体に対して例えば5モル%以下、好ましくは3モル%以下である。凝縮液のオレフィンの濃度が上記範囲にある場合には、次工程において蒸留塔Eの操作を安定に行うことができる。上記の方法によりオレフィンを気化した後の凝縮液は、ライン10により蒸留塔Eに供給され、各成分ごとに分離精製される。
【0027】
[分離精製]
図1の例では、オレフィンを気化させた後の第1及び第2の吸収塔の塔底凝縮液を蒸留塔Eに供給し、塔頂からカルボン酸エステル、反応で副生したアルコール、及び水を得(ライン11)、塔底から水含有カルボン酸を回収し(ライン16)、回収した水含有カルボン酸の一部を第2の吸収塔の吸収溶媒として用い(ライン7)、残余を反応系に循環する(ライン3)。
【0028】
塔頂から得られたカルボン酸エステル、水、アルコールの混合ガスは、ライン11により分離精製装置Fに導入され、慣用の分離精製方法により成分ごとに回収される。例えば、蒸留塔による蒸留を行うことにより、カルボン酸エステル、水、アルコールをそれぞれ分離して回収することができる。回収されたアルコールは、ライン12により第2のエステル化反応器Gへ供給され、カルボン酸と共にカルボン酸エステルを生成する反応の原料として好適に利用される。
【0029】
[アルコールの利用]
回収されたアルコールは、第2のエステル化反応器Gにおいて酸触媒存在下でカルボン酸(ライン13)と反応させてカルボン酸エステルとし、該カルボン酸エステルを含有する反応混合液をライン14により前記蒸留塔Eに供給する。
【0030】
オレフィンとカルボン酸との反応副生物として回収したアルコールを、カルボン酸と反応させることにより目的化合物であるカルボン酸エステルに変換できるため、カルボン酸エステルの製造法として極めて有利である。ここで、例えば酢酸とエタノールのエステル化反応は、反応平衡定数が4であり、エタノール当たりの転化率を向上させるためには酢酸を過剰量使用することが好ましい。前記エステル化反応後、過剰量のカルボン酸は、反応生成液と共にライン14により蒸留塔Eへ導くことによってカルボン酸エステルと共に回収されてオレフィンとの反応に再利用できるため有効に利用することができる。酸触媒としては、エステル化反応に慣用のものを用いることができるが、反応生成物との分離が容易な点からイオン交換樹脂などが好ましい。第2のエステル化反応器Gとしては、例えば攪拌機付き反応器、流動床反応器、固定床反応器等の何れであってもよい。
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、吸収溶媒として反応生成ガスの凝縮液を用いた吸収塔と吸収溶媒としてカルボン酸を用いた吸収塔とを組み合わせてカルボン酸エステルを吸収するため、実質的にカルボン酸エステルを含有していない未反応オレフィンを効率よく分離することができる。この際、カルボン酸の使用量を抑制しうるため、蒸留塔におけるカルボン酸エステルとカルボン酸との分離をエネルギー効率よく行うことができ、また、あらかじめ凝縮液に溶解するオレフィンを気化により除去しておくため、蒸留塔を安定に操作できる。さらに、反応副生物としてのアルコールを有効に利用するためカルボン酸エステルを効率よく製造することができる。
【0032】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、「部」とは「重量部」を、「%」とは「重量%」を示す。
実施例1
図1の工程図に従って酢酸エチルを製造した。なお、吸収塔としては、内径60mm、下段が20段(以下「吸収塔C−1」と称する)、上段が20段(以下「吸収塔C−2」と称する)の多孔板を有する二相に分離したもの(一体型の吸収塔)を利用した。表1に各ラインの組成(モル%)を示した。表1の( )内の数字はライン番号を示す。
[酢酸エチルの吸収]
表1のiの欄に示す組成を有する反応生成ガス100重量部を、温度60℃、圧力600kPa(約6気圧)の条件で、ライン5より吸収塔C−1の塔底へ導入し、吸収塔C−1の塔底凝縮液152.4重量部のうち122重量部を30℃に冷却してライン6より吸収塔C−1の塔底から20段目の多孔板上へ供給し、さらに、後述のタンクDからの未凝縮物(ガス)4重量部をライン9より吸収塔C−1の塔底から10段目に供給して、これらのガスと吸収塔C−1の凝縮液とを向流接触させた。吸収塔C−1の塔頂ガスは上昇移動し、上部の吸収塔C−2の下部へ導入された。吸収塔C−2の上部へ、後述の回収酢酸7.4重量部を20℃に冷却して吸収溶媒としてライン7より供給した。吸収塔C−2の塔頂より表1のvの欄に示す組成を有する精製エチレンを71重量部得た。該精製エチレンは酢酸エチルを0.06モル%含有していた。精製エチレンはライン2を通じて原料として循環使用した。
[凝縮液中のエチレンの気化]
前記吸収塔C−1の塔底凝縮液の残り30.4重量部、及び吸収塔C−2の塔底液9.8重量部(ライン8)を混合してライン15よりタンクDへ導入した。タンクD内の圧力を大気圧に戻し、50℃に加熱して、混合液中に溶解するエチレンを気化させた。得られたガスを20℃に冷却して未凝縮物と凝縮液とに分離した。これらの組成を表1のiii及びviの欄に示す。該タンクDから前記未凝縮物(ガス)は、上記のようにライン9より吸収塔C−1の塔底から10段目に供給し、未凝縮物中に含まれる酢酸エチルを回収した。
[分離精製]
前記タンクDにおける凝縮液をライン10より蒸留塔Eへ供給して蒸留することにより、該蒸留塔Eの塔底より表1のivの欄に示す組成を有する回収酢酸を得た。得られた回収酢酸は、一部を上記のようにライン7より吸収塔C−2の上部へ導入して吸収溶媒として用い、残りはライン3により酢酸気化器Aへ供給して反応系に循環使用した。蒸留塔Eの塔頂ガスをライン11より蒸留塔F(分離精製装置)へ導入し、該塔頂ガスを蒸留することにより目的物である酢酸エチルと副生エタノールを分離回収した。なお、副生したエタノールの量は、生成酢酸エチルの量に対して5モル%であった。
[エタノールの利用]
イオン交換樹脂(商品名「ダイヤイオンPK216H」、日本錬水社製)を充填した反応槽G(第2のエステル化反応器)へ、前記回収された副生エタノールをライン12より、酢酸をライン13より導入した。反応槽Gにおいて、エタノール1モル当たり20モルの酢酸を用い、温度65℃、滞留時間2時間の条件下でエステル化反応を行った。仕込みのエタノールの95.6%が酢酸エチルに変化した。前記エステル化反応の反応混合液をライン14より蒸留塔Eへ導入し、該蒸留塔Eの塔頂ガスをライン11より蒸留塔Fへ導入することにより、生成した酢酸エチルを精製した。蒸留塔Eの塔底より回収した未反応酢酸を、ライン3より酢酸気化器A(カルボン酸気化器)へ供給して反応系に循環使用した。
【0033】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のカルボン酸エステルの製造方法の一例を示す概略工程図である。
【符号の説明】
A カルボン酸気化器
B 第1のエステル化反応器
C−1 第1の吸収塔
C−2 第2の吸収塔
D タンク
E 蒸留塔(カルボン酸回収塔)
F 分離精製装置
G 第2のエステル化反応器
【発明の属する技術分野】
本発明は、オレフィンとカルボン酸との気相反応によりカルボン酸エステルを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、固体酸触媒の存在下、エチレンと酢酸を気相で反応させて酢酸エチルを製造する方法が知られている。前記反応により得られる反応生成ガス中には、生成物である酢酸エチル以外に、未反応エチレン、未反応酢酸、及び触媒活性維持のために添加された水、さらにこの水との反応で副生した微量のエチルアルコールが含有されている。前記反応生成ガスから、酢酸エチル、酢酸、水、エチルアルコールを凝縮成分として除去し、未反応エチレンを回収する方法としては、例えば、反応生成ガスを多段階に冷却することにより凝縮成分とエチレンに分離する方法が知られている。
【0003】
上記の方法においては、反応生成ガスから凝縮により酢酸エチルを捕集する場合、蒸気分圧に相当する酢酸エチルを含むエチレンとして回収される。前記回収エチレンを反応系に循環使用すると、混入する酢酸エチルが触媒の活性への負担の原因となり、さらに反応生成物が原料に含有されることにより反応進行上不利となることが予想される。前記回収エチレン中の酢酸エチル濃度を下げる方法としては、凝縮温度を下げてエチレンを回収する方法が考えられるが、凝縮液中に多量のエチレンが溶け込むという問題がある。他の方法として、反応生成ガスを吸収塔に導入し、酢酸と向流接触させて酢酸エチルを酢酸に吸収させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この方法では、吸収溶媒として比較的多量の酢酸を使用するため、吸収後に酢酸と酢酸エチルを分離する際に多大なエネルギーが必要となる。また、吸収塔の塔頂のエチレンガス中の酢酸エチル濃度を極低濃度に抑える条件では、凝縮液中に無視できない量のエチレンが溶解する。特許文献1では、このエチレンを回収するため、該凝縮液を蒸留して酢酸と分離して得られたエチレン含有酢酸エチルを再度吸収塔に供給し、塔頂から未反応エチレンを回収する方法を提案しているが、エチレン存在下の蒸留操作は安定しにくい等の問題があった。
【0004】
【特許文献1】
特許第2946883号公報(第2頁、第1図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、反応生成ガスからカルボン酸エステルと未反応オレフィンを効率よく分離し、カルボン酸エステルを実質的に含有していないオレフィンを回収するカルボン酸エステルの製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、反応副生物としてのアルコールを有効に利用するカルボ酸エステルの製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、吸収溶媒として吸収塔の凝縮液を用いる工程と吸収溶媒としてカルボン酸を用いる工程を組み合わせることにより、反応生成ガス中のカルボン酸エステルを効率よく吸収できること、また、反応で副生したアルコールをカルボン酸と反応させることにより、該アルコールを有効に利用しうることを見いだし、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、触媒と水の存在下、オレフィンとカルボン酸とを加圧下、気相で反応させてカルボン酸エステルを製造する方法であって、反応生成ガスを加圧下で第1の吸収塔の下部に導入し、該第1の吸収塔の塔底凝縮液の一部を冷却して該第1の吸収塔の上部に戻し、前記反応生成ガスと向流接触させることにより、反応生成ガス中のカルボン酸エステル及びカルボン酸を吸収させるとともに、第1の吸収塔の塔頂ガスを第2の吸収塔の下部に導入し、カルボン酸又は水含有カルボン酸を吸収溶媒として該第2の吸収塔の上部に供給し、前記第1の吸収塔の塔頂ガスと向流接触させることにより、該塔頂ガス中のカルボン酸エステルを吸収させ、第2の吸収塔の塔頂よりカルボン酸エステルを実質的に含有していない未反応オレフィンを回収し、該未反応オレフィンを反応系に循環する工程を含むカルボン酸エステルの製造方法を提供する。
【0008】
上記方法において、第1の吸収塔及び第2の吸収塔として、両吸収塔が一体化した吸収塔を用いてもよい。上記方法は、さらに、第1及び第2の吸収塔の塔底凝縮液を常圧にし、該塔底凝縮液中に溶解しているオレフィンを気化させ、これを第1の吸収塔の反応生成ガス供給位置よりも上部で且つ第1の吸収塔の塔底凝縮液の供給位置よりも下部に供給して、前記オレフィン中に含まれるカルボン酸エステルを前記第1の吸収塔の塔底凝縮液に吸収させる工程を含んでいてもよい。
【0009】
また、本発明の方法は、オレフィンを気化させた後の第1及び第2の吸収塔の塔底凝縮液を蒸留塔に供給し、塔頂からカルボン酸エステル、反応で副生したアルコール、及び水を得、塔底から水含有カルボン酸を回収し、回収した水含有カルボン酸の一部を第2の吸収塔の吸収溶媒として用い、残余を反応系に循環する工程を含んでいてもよい。さらに、蒸留塔の塔頂から得られたアルコールを酸触媒存在下でカルボン酸と反応させてカルボン酸エステルとし、該カルボン酸エステルを含有する反応混合液を前記蒸留塔に供給する工程を含んでいてもよい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を、必要に応じて図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は本発明のカルボン酸エステルの製造方法の一例を示す概略工程図である。なお、図1中、番号を付した矢印は連結媒体(例えば導管や供給管など)による物質の移動を示しており、以下、「ライン1」等と称する場合がある。
【0011】
[反応]
この例では、ライン1によりカルボン酸と水とオレフィンガスを、またライン2によりリサイクルオレフィンガスをカルボン酸気化器Aに供給して生成した混合ガス(ライン4)を触媒を配した第1のエステル化反応器Bへ導入し、加圧下、気相で反応させて、カルボン酸エステルを生成させる。
【0012】
オレフィンとしては、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテンなどが挙げられ、特にエチレンが好ましく用いられる。カルボン酸としては、例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸などが挙げられ、特に酢酸が好ましく用いられる。反応系に供給するオレフィン及びカルボン酸としては、特に限定されず、市販のものを用いることができる。図1の例では、さらに製造工程から回収した未反応カルボン酸や未反応オレフィンを原料として再利用している。すなわち、第2の吸収塔C−2の塔頂より未反応オレフィンを回収し、ライン2により該未反応オレフィンを反応系に循環する工程(ライン2)、及び蒸留塔Eより未反応カルボン酸を回収し反応系に循環する工程(ライン3)を有している。このように原料物質をリサイクルすることによって、カルボン酸及びオレフィンガスの利用率を向上することができる。なお、本発明では、必ずしも未反応カルボン酸を回収し反応系に循環する工程を含まなくてもよい。触媒としては、エステル生成反応に慣用のものでよく、好ましくは固体酸触媒などが用いられる。触媒の活性を維持する目的で、水存在下で反応を行う。
【0013】
第1のエステル化反応器Bは流動床反応器、固定床反応器等の何れであってもよい。第1のエステル化反応器Bは、図1に例示のように1槽であってもよく、2槽以上を連続的に接続してもよい。反応圧力は、例えば300〜1500kPa、好ましくは400〜1200kPa程度、温度は、例えば100〜300℃、好ましくは150〜220℃程度である。
【0014】
上記反応により、生成物であるカルボン酸エステル、未反応カルボン酸、未反応オレフィン、水、副生したアルコールを主成分とする反応生成ガスが得られる。例えば、オレフィンにエチレン、カルボン酸に酢酸を用いて上記反応を行った場合には、生成物である酢酸エチル、未反応酢酸、未反応エチレン、水、副生したエタノールを主成分とする反応生成ガスが得られる。得られた反応生成ガスは、後述の工程に従って各成分ごとに分離回収される。
【0015】
[カルボン酸エステルの吸収]
図1の例では、第1のエステル化反応器Bからの反応生成ガスは、加圧下でライン5により第1の吸収塔C−1の下部に導入され、該第1の吸収塔C−1の塔底凝縮液の一部を冷却してライン6により該第1の吸収塔の上部に戻し、前記反応生成ガスと向流接触させることにより、反応生成ガス中のカルボン酸エステル及び未反応カルボン酸を吸収させる。また、第1の吸収塔C−1の塔頂のガスは第2の吸収塔C−2の下部に導入される。
【0016】
さらに、カルボン酸又は水含有カルボン酸を吸収溶媒としてライン7により該第2の吸収塔C−2の上部に供給し、前記1の吸収塔C−1の塔頂ガスと向流接触させることにより、該塔頂ガス中のカルボン酸エステルを吸収させ、第2の吸収塔C−2の塔頂よりカルボン酸エステルを実質的に含有していない未反応オレフィンを回収し、ライン2により該未反応オレフィンを反応系に循環する。
【0017】
なお、図1においては、第1の吸収塔C−1及び第2の吸収塔C−2として、両吸収塔が一体化した吸収塔を用いた例を示しているが、必ずしも一体化されたものに限られず、例えば2つの吸収塔をラインで連結したものを用いてもよい。一体化した吸収塔は、設備費を低減しうるため好ましく用いられる。前記第1の吸収塔C−1及び第2の吸収塔C−2は、例えば棚段塔、充填塔、スプレー塔等の何れであってもよい。
【0018】
第1のエステル化反応器Bからの反応生成ガスを第1の吸収塔C−1に導入する際の圧力は、例えば、反応圧力と同程度(例えば300〜1500kPa、好ましくは400〜1200kPa程度)であり、温度は、反応温度より低いのが好ましく、例えば50〜120℃程度である。
【0019】
第1の吸収塔C−1の塔底凝縮液は、第1の吸収塔C−1の下部から連続的に抜き取られ、その一部は冷却されライン6により前記第1の吸収塔C−1の上部に戻され、反応生成ガス中に存在するカルボン酸エステル等を吸収する吸収溶媒として利用される。冷却温度は、前記反応生成ガスの導入温度より低いことが好ましく、例えば10〜50℃、好ましくは10〜40℃程度である。未凝縮物(ガス)中に含まれるカルボン酸エステル濃度を低くするため、冷却温度は低いほど好ましいが、10℃未満では凝縮液中に溶け込むオレフィンの量が多くなりやすい。前記凝縮液は、図1に例示のように吸収塔の上部1カ所(ライン6)へ供給してもよく、2カ所以上へ供給してもよい。残りの塔底凝縮液は、ライン15によりタンクDへ送られる。
【0020】
第2の吸収塔C−2では、カルボン酸又は水含有カルボン酸を吸収溶媒として用いる。吸収溶媒には、後述する蒸留塔Eにおける蒸留により分離される水含有カルボン酸の一部(ライン7)を利用できる。前記吸収溶媒の供給温度は、例えば0〜50℃程度である。特に、酢酸(水を含まない)を用いる場合には、酢酸の氷結を防ぐため、20℃以上(例えば20〜50℃程度)の温度で供給するのが好ましい。前記カルボン酸又は水含有カルボン酸は、図1に例示のように吸収塔C−2の上部1カ所へ供給してもよく、2カ所以上へ供給してもよい。
【0021】
前記吸収溶媒は、第2の吸収塔C−2の上部に導入し、前記第1の吸収塔C−1の塔頂ガスと向流接触させた後、第2の吸収塔C−2の下部より回収される。前記吸収溶媒は、第1の吸収塔の塔底凝縮液と同じ位置から回収することも可能であるが、塔底凝縮液との混合によりカルボン酸エステルの吸収効率が低下することを防ぐため、第1の吸収塔における塔底凝縮液の供給部分よりも上部で抜き取るのが好ましい。
【0022】
反応生成ガスと前記吸収溶媒が向流接触することによって、第1の吸収塔で吸収されなかった気体状態のカルボン酸エステルは凝縮液に吸収され、カルボン酸エステルが除去された高純度の未反応オレフィンガスを分離回収することができる。こうして得られたカルボン酸エステルを実質的に含有していない未反応オレフィンは、ライン2により反応系に循環される。「カルボン酸エステルを実質的に含有していないオレフィン」とは、原料として反応系にリサイクルした際に反応の進行に悪影響を及ぼさない程度にカルボン酸エステルの濃度が低いオレフィンを意味しており、具体的には、カルボン酸エステルの濃度が例えば0.1モル%以下、好ましくは0.08モル%以下程度である。カルボン酸エステル濃度が上記範囲である回収オレフィンは、原料として循環利用した際に混入カルボン酸エステルによって生じうる弊害、例えば触媒の活性への負担等の反応進行上の不利益を抑制することができ、カルボン酸エステルを高い効率で生成させることができる。
【0023】
本発明の特徴の一つは、カルボン酸エステルの吸収に第1の吸収塔C−1の塔底凝縮液の一部を用いる第1の吸収塔C−1と、カルボン酸を用いる第2の吸収塔C−2とを組み合わせることにある。反応生成ガスと前記凝縮液が向流接触することによって、気体状態のカルボン酸エステルは凝縮液に吸収され、反応生成ガス中のカルボン酸エステル濃度を減少することができ、こうして得られたガスをカルボン酸と向流接触させて再びカルボン酸エステルを吸収するため、カルボン酸の使用量を抑え、カルボン酸エステルの吸収効率を向上することができる。
【0024】
[凝縮液中のオレフィンの気化]
図1の例では、ライン8及び15を通じて回収された第1及び第2の吸収塔の塔底凝縮液をタンクDに導き、そこで圧力を減じることにより該塔底凝縮液中に溶解しているオレフィンを気化させ、これを第1の吸収塔C−1の反応生成ガス供給位置よりも上部で且つ第1の吸収塔C−1の塔底凝縮液の供給位置よりも下部に供給して(ライン9)、前記オレフィン中に含まれるカルボン酸エステルを前記第1の吸収塔C−1の塔底凝縮液に吸収させる。なお、本発明では、上記凝縮液中のオレフィンの気化に係る工程を必ずしも含まなくてもよい。
【0025】
塔底凝縮液中に溶解しているオレフィンの気化は、加圧下に導入された凝縮液を好ましくは常圧に放圧し、さらに必要に応じて、例えば20〜60℃程度に加熱することにより行われる。得られたオレフィンガスはカルボン酸エステルを混入しているため、例えば0〜30℃程度に冷却してカルボン酸エステルを凝縮により分離する。さらに微量に含まれるカルボン酸エステルを除去するため、ライン9により該オレフィンガスを加圧して第1の吸収塔に導入してカルボン酸エステルを吸収させる。前記オレフィンガスを第1の吸収塔C−1に戻す位置としては、反応生成ガス供給位置よりも上部で且つ凝縮液供給位置よりも下部であることが望ましい。反応生成ガス供給位置よりも下部又は同じ位置に前記オレフィンガスを戻すと、未精製の反応生成ガスと混合することにより前記オレフィンガス中に含まれるカルボン酸エステルの吸収効率が著しく低下してしまう。凝縮液供給位置よりも上部に前記オレフィンガスを戻すと、該凝集液との向流接触を行うことができない。
【0026】
こうして得られたオレフィン分離後の凝縮液は、オレフィンの濃度が凝縮液全体に対して例えば5モル%以下、好ましくは3モル%以下である。凝縮液のオレフィンの濃度が上記範囲にある場合には、次工程において蒸留塔Eの操作を安定に行うことができる。上記の方法によりオレフィンを気化した後の凝縮液は、ライン10により蒸留塔Eに供給され、各成分ごとに分離精製される。
【0027】
[分離精製]
図1の例では、オレフィンを気化させた後の第1及び第2の吸収塔の塔底凝縮液を蒸留塔Eに供給し、塔頂からカルボン酸エステル、反応で副生したアルコール、及び水を得(ライン11)、塔底から水含有カルボン酸を回収し(ライン16)、回収した水含有カルボン酸の一部を第2の吸収塔の吸収溶媒として用い(ライン7)、残余を反応系に循環する(ライン3)。
【0028】
塔頂から得られたカルボン酸エステル、水、アルコールの混合ガスは、ライン11により分離精製装置Fに導入され、慣用の分離精製方法により成分ごとに回収される。例えば、蒸留塔による蒸留を行うことにより、カルボン酸エステル、水、アルコールをそれぞれ分離して回収することができる。回収されたアルコールは、ライン12により第2のエステル化反応器Gへ供給され、カルボン酸と共にカルボン酸エステルを生成する反応の原料として好適に利用される。
【0029】
[アルコールの利用]
回収されたアルコールは、第2のエステル化反応器Gにおいて酸触媒存在下でカルボン酸(ライン13)と反応させてカルボン酸エステルとし、該カルボン酸エステルを含有する反応混合液をライン14により前記蒸留塔Eに供給する。
【0030】
オレフィンとカルボン酸との反応副生物として回収したアルコールを、カルボン酸と反応させることにより目的化合物であるカルボン酸エステルに変換できるため、カルボン酸エステルの製造法として極めて有利である。ここで、例えば酢酸とエタノールのエステル化反応は、反応平衡定数が4であり、エタノール当たりの転化率を向上させるためには酢酸を過剰量使用することが好ましい。前記エステル化反応後、過剰量のカルボン酸は、反応生成液と共にライン14により蒸留塔Eへ導くことによってカルボン酸エステルと共に回収されてオレフィンとの反応に再利用できるため有効に利用することができる。酸触媒としては、エステル化反応に慣用のものを用いることができるが、反応生成物との分離が容易な点からイオン交換樹脂などが好ましい。第2のエステル化反応器Gとしては、例えば攪拌機付き反応器、流動床反応器、固定床反応器等の何れであってもよい。
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、吸収溶媒として反応生成ガスの凝縮液を用いた吸収塔と吸収溶媒としてカルボン酸を用いた吸収塔とを組み合わせてカルボン酸エステルを吸収するため、実質的にカルボン酸エステルを含有していない未反応オレフィンを効率よく分離することができる。この際、カルボン酸の使用量を抑制しうるため、蒸留塔におけるカルボン酸エステルとカルボン酸との分離をエネルギー効率よく行うことができ、また、あらかじめ凝縮液に溶解するオレフィンを気化により除去しておくため、蒸留塔を安定に操作できる。さらに、反応副生物としてのアルコールを有効に利用するためカルボン酸エステルを効率よく製造することができる。
【0032】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、「部」とは「重量部」を、「%」とは「重量%」を示す。
実施例1
図1の工程図に従って酢酸エチルを製造した。なお、吸収塔としては、内径60mm、下段が20段(以下「吸収塔C−1」と称する)、上段が20段(以下「吸収塔C−2」と称する)の多孔板を有する二相に分離したもの(一体型の吸収塔)を利用した。表1に各ラインの組成(モル%)を示した。表1の( )内の数字はライン番号を示す。
[酢酸エチルの吸収]
表1のiの欄に示す組成を有する反応生成ガス100重量部を、温度60℃、圧力600kPa(約6気圧)の条件で、ライン5より吸収塔C−1の塔底へ導入し、吸収塔C−1の塔底凝縮液152.4重量部のうち122重量部を30℃に冷却してライン6より吸収塔C−1の塔底から20段目の多孔板上へ供給し、さらに、後述のタンクDからの未凝縮物(ガス)4重量部をライン9より吸収塔C−1の塔底から10段目に供給して、これらのガスと吸収塔C−1の凝縮液とを向流接触させた。吸収塔C−1の塔頂ガスは上昇移動し、上部の吸収塔C−2の下部へ導入された。吸収塔C−2の上部へ、後述の回収酢酸7.4重量部を20℃に冷却して吸収溶媒としてライン7より供給した。吸収塔C−2の塔頂より表1のvの欄に示す組成を有する精製エチレンを71重量部得た。該精製エチレンは酢酸エチルを0.06モル%含有していた。精製エチレンはライン2を通じて原料として循環使用した。
[凝縮液中のエチレンの気化]
前記吸収塔C−1の塔底凝縮液の残り30.4重量部、及び吸収塔C−2の塔底液9.8重量部(ライン8)を混合してライン15よりタンクDへ導入した。タンクD内の圧力を大気圧に戻し、50℃に加熱して、混合液中に溶解するエチレンを気化させた。得られたガスを20℃に冷却して未凝縮物と凝縮液とに分離した。これらの組成を表1のiii及びviの欄に示す。該タンクDから前記未凝縮物(ガス)は、上記のようにライン9より吸収塔C−1の塔底から10段目に供給し、未凝縮物中に含まれる酢酸エチルを回収した。
[分離精製]
前記タンクDにおける凝縮液をライン10より蒸留塔Eへ供給して蒸留することにより、該蒸留塔Eの塔底より表1のivの欄に示す組成を有する回収酢酸を得た。得られた回収酢酸は、一部を上記のようにライン7より吸収塔C−2の上部へ導入して吸収溶媒として用い、残りはライン3により酢酸気化器Aへ供給して反応系に循環使用した。蒸留塔Eの塔頂ガスをライン11より蒸留塔F(分離精製装置)へ導入し、該塔頂ガスを蒸留することにより目的物である酢酸エチルと副生エタノールを分離回収した。なお、副生したエタノールの量は、生成酢酸エチルの量に対して5モル%であった。
[エタノールの利用]
イオン交換樹脂(商品名「ダイヤイオンPK216H」、日本錬水社製)を充填した反応槽G(第2のエステル化反応器)へ、前記回収された副生エタノールをライン12より、酢酸をライン13より導入した。反応槽Gにおいて、エタノール1モル当たり20モルの酢酸を用い、温度65℃、滞留時間2時間の条件下でエステル化反応を行った。仕込みのエタノールの95.6%が酢酸エチルに変化した。前記エステル化反応の反応混合液をライン14より蒸留塔Eへ導入し、該蒸留塔Eの塔頂ガスをライン11より蒸留塔Fへ導入することにより、生成した酢酸エチルを精製した。蒸留塔Eの塔底より回収した未反応酢酸を、ライン3より酢酸気化器A(カルボン酸気化器)へ供給して反応系に循環使用した。
【0033】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のカルボン酸エステルの製造方法の一例を示す概略工程図である。
【符号の説明】
A カルボン酸気化器
B 第1のエステル化反応器
C−1 第1の吸収塔
C−2 第2の吸収塔
D タンク
E 蒸留塔(カルボン酸回収塔)
F 分離精製装置
G 第2のエステル化反応器
Claims (5)
- 触媒と水の存在下、オレフィンとカルボン酸とを加圧下、気相で反応させてカルボン酸エステルを製造する方法であって、反応生成ガスを加圧下で第1の吸収塔の下部に導入し、該第1の吸収塔の塔底凝縮液の一部を冷却して該第1の吸収塔の上部に戻し、前記反応生成ガスと向流接触させることにより、反応生成ガス中のカルボン酸エステル及びカルボン酸を吸収させるとともに、第1の吸収塔の塔頂ガスを第2の吸収塔の下部に導入し、カルボン酸又は水含有カルボン酸を吸収溶媒として該第2の吸収塔の上部に供給し、前記第1の吸収塔の塔頂ガスと向流接触させることにより、該塔頂ガス中のカルボン酸エステルを吸収させ、第2の吸収塔の塔頂よりカルボン酸エステルを実質的に含有していない未反応オレフィンを回収し、該未反応オレフィンを反応系に循環する工程を含むカルボン酸エステルの製造方法。
- 第1の吸収塔及び第2の吸収塔として、両吸収塔が一体化した吸収塔を用いる請求項1記載のカルボン酸エステルの製造方法。
- 第1及び第2の吸収塔の塔底凝縮液を常圧にし、該塔底凝縮液中に溶解しているオレフィンを気化させ、これを第1の吸収塔の反応生成ガス供給位置よりも上部で且つ第1の吸収塔の塔底凝縮液の供給位置よりも下部に供給して、前記オレフィン中に含まれるカルボン酸エステルを前記第1の吸収塔の塔底凝縮液に吸収させる工程を含む請求項1又は2記載のカルボン酸エステルの製造方法。
- オレフィンを気化させた後の第1及び第2の吸収塔の塔底凝縮液を蒸留塔に供給し、塔頂からカルボン酸エステル、反応で副生したアルコール、及び水を得、塔底から水含有カルボン酸を回収し、回収した水含有カルボン酸の一部を第2の吸収塔の吸収溶媒として用い、残余を反応系に循環する工程を含む請求項3記載のカルボン酸エステルの製造方法。
- 蒸留塔の塔頂から得られたアルコールを酸触媒存在下でカルボン酸と反応させてカルボン酸エステルとし、該カルボン酸エステルを含有する反応混合液を前記蒸留塔に供給する工程を含む請求項4記載のカルボン酸エステルの製造方法。
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2002
- 2002-09-18 JP JP2002272112A patent/JP2004107259A/ja not_active Withdrawn
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