JP2004107248A - α,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体およびその製造方法、キレート化剤、ビルダーおよび洗浄剤。 - Google Patents
α,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体およびその製造方法、キレート化剤、ビルダーおよび洗浄剤。 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】優れた生分解性と、優れた洗浄性能およびキレート性能とを併有する新規なα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体およびその製造方法、そのα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体を含有するキレート化剤、ビルダーおよび洗浄剤を提供すること。
【解決手段】フマル酸ジアルキルエステルを、有機溶媒中、ラジカル重合開始剤の存在下で重合後、ケン化することにより、下記一般式(18)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体を得る。
【化59】
(式中、R1は、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、フェニル基、2−シアノ−2−プロピル基、水素のいずれかを示し、Mは、同一または相異なって、金属塩を示し、n1は、1〜3の整数を示す。)
【解決手段】フマル酸ジアルキルエステルを、有機溶媒中、ラジカル重合開始剤の存在下で重合後、ケン化することにより、下記一般式(18)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体を得る。
【化59】
(式中、R1は、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、フェニル基、2−シアノ−2−プロピル基、水素のいずれかを示し、Mは、同一または相異なって、金属塩を示し、n1は、1〜3の整数を示す。)
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、キレート化剤、ビルダーおよび洗浄剤として有用な新規α,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体およびその製造方法、そのα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体を含有するキレート化剤、ビルダーおよび洗浄剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、界面活性作用が、水溶性イオンであるアルカリ土類金属類によって不活性化するのを防止するために、ビルダーとして、トリポリリン酸ナトリウムなどの縮合リン酸系化合物や、ベントナイト、ゼオライトなどの鉱物系化合物などが知られている。
【0003】
しかし、縮合リン酸系化合物は、富栄養化を招き、また、鉱物系化合物は、水の濁度を増大させるため、これらの代替として、ポリアクリル酸ナトリウムが、金属イオン捕捉性、分散性、凝集性、増粘性、吸湿性などに優れることから、広く用いられている。
【0004】
しかし、ポリアクリル酸ナトリウムは、生分解性に著しく劣ることが指摘されており、そのため、近年、アクリル酸とマレイン酸との共重合体を、ビルダーとして用いることが各種提案されている(例えば、特開2001−081133号公報や特開2000−143737号公報など)。
【0005】
また、エチレンジアミン4酢酸塩(EDTA)は、優れたキレート性能を有するため、例えば、写真処理液、無電解めっき、洗浄剤、スケール防止剤など幅広い分野で用いられている。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−081133号公報
【特許文献2】
特開2000−143737号公報
【発明が解決しようとする課題】
しかし、アクリル酸とマレイン酸との共重合体からなるビルダーもまた、生分解性が劣り、また、エチレンジアミン4酢酸塩(EDTA)は、分解が容易でなく、自然環境に戻すことが困難で、過度の使用が抑制されつつある。
【0007】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、その目的とするところは、優れた生分解性と、優れた洗浄性能およびキレート性能とを併有する新規なα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体およびその製造方法、そのα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体を含有するキレート化剤、ビルダーおよび洗浄剤を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体は、下記一般式(1)で示されることを特徴としている。
【0009】
一般式(1)
【0010】
【化8】
(式中、R1は、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、フェニル基、2−シアノ−2−プロピル基、水素のいずれかを示し、点線で示す炭素−炭素間結合は、炭素−炭素間二重結合または炭素−炭素間単結合を示し、点線で示す炭素−H間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−H間単結合を示し、点線で示す炭素−R2間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−R2間単結合を示し、R2は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、フェニル基、2−シアノ−2−プロピル基、水素のいずれかを示し、Xは、同一または相異なって、炭素数1〜4のアルキル基、金属塩、水素のいずれかを示し、nは、1〜5の整数を示す。)
また、本発明において、前記一般式(1)に示すα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体が、下記一般式(2)に示すα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体となる態様がある。
【0011】
一般式(2)
【0012】
【化9】
(式中、R1は、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、フェニル基、2−シアノ−2−プロピル基、水素のいずれかを示し、Xは、同一または相異なって、炭素数1〜4のアルキル基、金属塩、水素のいずれかを示し、n1は、1〜5の整数を示す。)
また、本発明において、前記一般式(1)に示すα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体が、下記一般式(3)に示すα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体となる態様がある。
【0013】
一般式(3)
【0014】
【化10】
(式中、R1およびR2は、同一または相異なって、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、フェニル基、2−シアノ−2−プロピル基、水素のいずれかを示し、Xは、同一または相異なって、炭素数1〜4のアルキル基、金属塩、水素のいずれかを示し、n2は、2〜6の整数を示す。)
また、本発明において、上記一般式(1)〜(3)の式中、Xが、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましい。
【0015】
また、本発明において、上記一般式(1)〜(3)の式中、Xが、金属塩であることが好ましい。
【0016】
また、本発明において、上記一般式(1)〜(3)の式中、R1が、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基または水素であることが好ましい。
【0017】
また、本発明において、上記一般式(1)〜(3)の式中、R2が、水素であることが好ましい。
【0018】
また、本発明のα,β−不飽和ジカルボキシ化合物の製造方法は、α,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルを、有機溶媒中、ラジカル重合開始剤の存在下で重合することにより、下記一般式(4)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体を製造することを特徴としている。
【0019】
一般式(4)
【0020】
【化11】
(式中、Raは、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、点線で示す炭素−炭素間結合は、炭素−炭素間二重結合または炭素−炭素間単結合を示し、点線で示す炭素−H間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−H間単結合を示し、点線で示す炭素−Rb間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−Rb間単結合を示し、Rbは、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、Rcは、同一または相異なって、炭素数1〜4のアルキル基を示し、nは、1〜5の整数を示す。)
本発明のα,β−不飽和ジカルボキシ化合物は、上記により得られるα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体をケン化することにより、下記一般式(5)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体を製造することを特徴としている。
【0021】
一般式(5)
【0022】
【化12】
(式中、Raは、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、点線で示す炭素−炭素間結合は、炭素−炭素間二重結合または炭素−炭素間単結合を示し、点線で示す炭素−H間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−H間単結合を示し、点線で示す炭素−Rb間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−Rb間単結合を示し、Rbは、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、Mは、同一または相異なって、金属塩を示し、nは、1〜5の整数を示す。)
また、本発明のα,β−不飽和ジカルボキシ化合物の製造方法において、α,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルが、フマル酸ジアルキルエステルであることが好ましい。
【0023】
また、本発明のα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体は、α,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルを、有機溶媒中、ラジカル重合開始剤の存在下で重合することにより得られる、下記一般式(4)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体であることを特徴としている。
【0024】
一般式(4)
【0025】
【化13】
(式中、Raは、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、点線で示す炭素−炭素間結合は、炭素−炭素間二重結合または炭素−炭素間単結合を示し、点線で示す炭素−H間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−H間単結合を示し、点線で示す炭素−Rb間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−Rb間単結合を示し、Rbは、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、Rcは、同一または相異なって、炭素数1〜4のアルキル基を示し、nは、1〜5の整数を示す。)
また、本発明のα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体は、α,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体をケン化することにより得られる、下記一般式(5)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体であることを特徴としている。
【0026】
一般式(5)
【0027】
【化14】
(式中、Raは、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、点線で示す炭素−炭素間結合は、炭素−炭素間二重結合または炭素−炭素間単結合を示し、点線で示す炭素−H間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−H間単結合を示し、点線で示す炭素−Rb間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−Rb間単結合を示し、Rbは、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、Mは、同一または相異なって、金属塩を示し、nは、1〜5の整数を示す。)
また、本発明のα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体は、上記したα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルが、フマル酸ジアルキルエステルであることが好ましい。
【0028】
また、本発明は、上記したα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体を含有するキレート化剤を含んでいる。
【0029】
また、本発明は、上記したα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体を含有するビルダーを含んでいる。
【0030】
また、本発明は、上記したα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体を含有する洗浄剤を含んでいる。
【0031】
【発明の実施の形態】
本発明のα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体は、α,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルを、有機溶媒中、ラジカル重合開始剤の存在下で重合することにより得られる、下記一般式(4)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体、
一般式(4)
【0032】
【化15】
(式中、Raは、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、点線で示す炭素−炭素間結合は、炭素−炭素間二重結合または炭素−炭素間単結合を示し、点線で示す炭素−H間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−H間単結合を示し、点線で示す炭素−Rb間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−Rb間単結合を示し、Rbは、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、Rcは、同一または相異なって、炭素数1〜4のアルキル基を示し、nは、1〜5の整数を示す。)
または、そのα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体をケン化することにより得られる、下記一般式(5)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体である。
【0033】
一般式(5)
【0034】
【化16】
(式中、Raは、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、点線で示す炭素−炭素間結合は、炭素−炭素間二重結合または炭素−炭素間単結合を示し、点線で示す炭素−H間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−H間単結合を示し、点線で示す炭素−Rb間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−Rb間単結合を示し、Rbは、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、Mは、同一または相異なって、金属塩を示し、nは、1〜5の整数を示す。)
本発明のα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体を製造するための出発原料であるα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルとしては、例えば、マレイン酸ジアルキルエステル、および/または、フマル酸ジアルキルエステルが挙げられる。
【0035】
これらのジアルキルエステルを形成するアルキルとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどの炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。これらのうち、エチルが好ましい。
【0036】
これらの出発原料は、より具体的には、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジ−n−プロピル、マレイン酸ジ−n−ブチル、マレイン酸ジ−t−ブチルなどのマレイン酸ジアルキルエステル、例えば、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジ−n−プロピル、フマル酸ジ−n−ブチル、フマル酸ジ−t−ブチルなどのフマル酸ジアルキルエステルなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用してもよい。
【0037】
また、これら出発原料のうちでは、好ましくは、フマル酸ジアルキルエステル、さらに好ましくは、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチルが挙げられる。
【0038】
そして、本発明のα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体を得るには、上記したα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルを、有機溶媒中、ラジカル重合開始剤の存在下で重合させる。
【0039】
有機溶媒としては、特に制限されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノールなどのアルコール系溶媒、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコール系溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性極性溶媒、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレンカーボネートなどのケトン系溶媒、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、γ−ブチロラクトンなどのエステル系溶媒、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ソルベントナフサなどの芳香族炭化水素系溶媒、例えば、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒などが挙げられる。これら有機溶媒は、単独使用または2種以上併用してもよい。
【0040】
また、これら有機溶媒のうちでは、好ましくは、アルコール系溶媒、グリコール系溶媒、非プロトン性極性溶媒が挙げられる。さらに好ましくは、アルコール系溶媒、とりわけ好ましくは、エタノールが挙げられる。
【0041】
また、ラジカル重合開始剤としては、特に制限されないが、例えば、過酸化ベンゾイル(BPO)、2,4−ジ−クロロベンゾイルパーオキサイド、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、サクシニックパーオキサイド、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(2−エチルヘキシルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、m−トルイルアンドベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロへキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−プチルパーオキシ)−シクロドデカン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(m−トルイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、α,α’ビス−(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、ジ−クミルパーオキサイド、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイドなどの有機化酸化物が挙げられる。また、このような有機過酸化物の他に、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)などのアゾ化合物なども挙げることができる。好ましくは、有機過酸化物として過酸化ベンゾイルが挙げられ、アゾ化合物としてアゾビスイソブチロニトリルが挙げられる。
【0042】
そして、α,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体を得るには、例えば、下記反応式(I)に示すように、α,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルおよびラジカル重合開始剤を、有機溶媒中に加えて、不活性ガス雰囲気下、50〜80℃で重合反応させる。
【0043】
反応式(I)
【0044】
【化17】
α,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルを、有機溶媒に加える割合は、特に制限されないが、例えば、極性溶媒100重量部に対して、α,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルが、2〜100重量部、好ましくは、5〜50重量部である。
【0045】
また、ラジカル重合開始剤を加える割合は、BPOの場合には、例えば、α,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル100重量部に対して、ラジカル重合開始剤が、0.1〜10重量部、好ましくは、0.2〜5重量部である。
【0046】
また、不活性ガスは、特に制限されず、窒素ガス、アルゴンガスなどが適宜用いられる。
【0047】
また、反応温度は、BPOの場合には、50〜80℃である。
【0048】
なお、反応圧力は常圧でよく、反応時間は反応温度から適宜決定される。
【0049】
この重合反応は、より具体的には、例えば、公知の方法により不活性ガスで置換された反応容器に、有機溶媒、α,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルおよびラジカル重合開始剤を仕込み、上記した反応温度で適宜の時間反応させることにより、実施することができる。
【0050】
また、重合反応終了後には、次にα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルをケン化するために濃縮するなど、適宜後処理を実施してもよい。
【0051】
このような反応条件により、後述する重合度2〜6、好ましくは、重合度2〜4、とりわけ、重合度3のα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルを選択的に得ることができる。
【0052】
そして、このようにして得られたα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体は、下記一般式(4)で示される。
【0053】
一般式(4)
【0054】
【化18】
(式中、Raは、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、点線で示す炭素−炭素間結合は、炭素−炭素間二重結合または炭素−炭素間単結合を示し、点線で示す炭素−H間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−H間単結合を示し、点線で示す炭素−Rb間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−Rb間単結合を示し、Rbは、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、Rcは、同一または相異なって、炭素数1〜4のアルキル基を示し、nは、1〜5の整数を示す。)
一般式(4)の式中、RaおよびRbで示される有機溶媒残基としては、上記した有機溶媒が重合反応中に開裂して結合した残基が挙げられる。より具体的には、有機溶媒として、例えば、上記したアルコール系溶媒が用いられる場合には、Raおよび/またはRbが、炭素数1〜4のヒドロキシアルキルとなる。
【0055】
また、RaおよびRbで示されるラジカル開始剤残基としては、上記したラジカル開始剤残基が重合反応中に開裂して結合した残基が挙げられる。より具体的には、ラジカル開始剤として、例えば、過酸化ベンゾイルが用いられる場合には、Raおよび/またはRbが、フェニルとなる。また、例えば、アゾビスイソブチロニトリルが用いられる場合には、Raおよび/またはRbが、2−シアノ−2−プロピルとなる。
【0056】
また、Rcで示される炭素数1〜4のアルキル基は、アルキルエステルのアルキル基であって、上記と同様の炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。
【0057】
また、nは、α,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体の重合度−1を示し、1〜5(すなわち、重合度2〜6)、好ましくは、1〜3(すなわち、重合度2〜4)、とりわけ、2(重合度3)であることが好ましい。
【0058】
また、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間二重結合である場合には、上記一般式(4)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体は、出発原料としてマレイン酸ジアルキルエステルが用いられている場合には、下記一般式(6)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体となる。
【0059】
一般式(6)
【0060】
【化19】
(式中、Raは、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、Rcは、同一または相異なって、炭素数1〜4のアルキル基を示し、n1は、1〜5の整数を示す。)
また、出発原料としてフマル酸ジアルキルエステルが用いられている場合には、下記一般式(7)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体となる。
【0061】
一般式(7)
【0062】
【化20】
(式中、Raは、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、Rcは、同一または相異なって、炭素数1〜4のアルキル基を示し、n1は、1〜5の整数を示す。)
また、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合には、上記一般式(4)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体は、出発原料としてマレイン酸ジアルキルエステルが用いられている場合、および、出発原料としてフマル酸ジアルキルエステルが用いられている場合のいずれも、下記一般式(8)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体となる。
【0063】
一般式(8)
【0064】
【化21】
(式中、RaおよびRbは、同一または相異なって、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、Rcは、同一または相異なって、炭素数1〜4のアルキル基を示し、n2は、2〜6の整数を示す。)
そして、このようにして得られるα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体は、α,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体を得るための中間体として有用であり、とりわけ、優れた生分解性と、優れた洗浄性能およびキレート性能とを併有するα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体を得るための中間体としては、下記一般式(9)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体が好ましい。
【0065】
一般式(9)
【0066】
【化22】
(式中、R1は、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、フェニル基、2−シアノ−2−プロピル基、水素のいずれかを示し、点線で示す炭素−炭素間結合は、炭素−炭素間二重結合または炭素−炭素間単結合を示し、点線で示す炭素−H間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−H間単結合を示し、点線で示す炭素−R2間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−R2間単結合を示し、R2は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、フェニル基、2−シアノ−2−プロピル基、水素のいずれかを示し、R3は、同一または相異なって、炭素数1〜4のアルキル基を示し、nは、1〜5の整数を示す。)
一般式(9)の式中、R1およびR2で示される炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基としては、例えば、1−ヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、1−ヒドロキシプロピル、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル、1−ヒドロキシブチルなどの炭素数1〜4のヒドロキシアルキルが挙げられる。R1および/またはR2が、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基となる場合は、上記反応式(I)において、有機溶媒として炭素数1〜4のアルコール系溶媒が用いられる場合である。また、R1および/またはR2が、フェニル基となる場合は、上記反応式(I)において、ラジカル重合開始剤として、過酸化ベンゾイルが用いられる場合である。また、R1および/またはR2が、2−シアノ−2−プロピル基となる場合は、上記反応式(I)において、ラジカル重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリルが用いられる場合である。
【0067】
また、R3で示される炭素数1〜4のアルキル基は、アルキルエステルのアルキル基であって、上記と同様の炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。
【0068】
また、nは、上記と同様に、α,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体の重合度−1を示し、1〜5(すなわち、重合度2〜6)、好ましくは、1〜3(すなわち、重合度2〜4)、とりわけ、2(重合度3)であることが好ましい。
【0069】
また、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間二重結合である場合には、上記一般式(9)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体は、出発原料としてマレイン酸ジアルキルエステルが用いられている場合には、下記一般式(10)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体となる。
【0070】
一般式(10)
【0071】
【化23】
(式中、R1は、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、フェニル基、2−シアノ−2−プロピル基、水素のいずれかを示し、R3は、同一または相異なって、炭素数1〜4のアルキル基を示し、n1は、1〜5の整数を示す。)
また、出発原料としてフマル酸ジアルキルエステルが用いられている場合には、下記一般式(11)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体となる。
【0072】
一般式(11)
【0073】
【化24】
(式中、R1は、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、フェニル基、2−シアノ−2−プロピル基、水素のいずれかを示し、R3は、同一または相異なって、炭素数1〜4のアルキル基を示し、n1は、1〜5の整数を示す。)
また、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合には、上記一般式(9)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体は、出発原料としてマレイン酸ジアルキルエステルが用いられている場合、および、出発原料としてフマル酸ジアルキルエステルが用いられている場合のいずれも、下記一般式(12)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体となる。
【0074】
一般式(12)
【0075】
【化25】
(式中、R1およびR2は、同一または相異なって、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、フェニル基、2−シアノ−2−プロピル基、水素のいずれかを示し、R3は、同一または相異なって、炭素数1〜4のアルキル基を示し、n2は、2〜6の整数を示す。)
これら一般式(10)、(11)および(12)で示すα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体のうち、一般式(11)および(12)で示すα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体、とりわけ、一般式(11)で示すα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体が、優れた生分解性と、優れた洗浄性能およびキレート性能とを併有するα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体を得るための中間体として好ましい。
【0076】
そして、このようにして得られるα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体を、下記反応式(II)に示すように、ケン化することによって、α,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体を得ることができる。
【0077】
反応式(II)
【0078】
【化26】
反応式(II)に示すケン化反応は、公知のケン化反応でよく、例えば、α,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体およびアルカリ金属水酸化物を、上記したエタノールなどのアルコール系溶媒中に加えて、不活性ガス雰囲気下、60〜90℃でケン化反応させる。
【0079】
α,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体を、アルコール系溶媒に加える割合は、特に制限されないが、例えば、アルコール系溶媒100重量部に対して、α,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体が、0.2〜10重量部である。
【0080】
また、アルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。好ましくは、水酸化ナトリウムが挙げられる。アルカリ金属水酸化物を加える割合は、例えば、α,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体100重量部に対して、アルカリ金属水酸化物が、50〜3000重量部、好ましくは、200〜2000重量部である。
【0081】
また、不活性ガスは、特に制限されず、窒素ガス、アルゴンガスなどが適宜用いられる。
【0082】
また、反応温度は、30〜80℃である。
【0083】
なお、反応圧力は常圧でよく、反応時間は反応温度から適宜決定される。
【0084】
このケン化反応は、より具体的には、例えば、公知の方法により不活性ガスで置換された反応容器に、アルコール系溶媒、α,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体(濃縮した場合には、濃縮物)およびアルカリ金属水酸化物を仕込み、上記した反応温度で適宜の時間反応させることにより、実施することができる。
【0085】
また、重合反応終了後には、濃縮および乾燥するなど、適宜後処理を実施してもよい。
【0086】
そして、このようなケン化反応によって、下記一般式(5)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体を得ることができる。
【0087】
一般式(5)
【0088】
【化27】
(式中、Raは、有機溶媒基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、点線で示す炭素−炭素間結合は、炭素−炭素間二重結合または炭素−炭素間単結合を示し、点線で示す炭素−H間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−H間単結合を示し、点線で示す炭素−Rb間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−Rb間単結合を示し、Rbは、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、Mは、同一または相異なって、金属塩を示し、nは、1〜5の整数を示す。)
一般式(5)の式中、RaおよびRbで示される有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基としては、上記と同様のものが挙げられる。
【0089】
Mで示される金属塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩が挙げられる。
【0090】
また、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間二重結合である場合には、上記一般式(5)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体は、出発原料としてマレイン酸ジアルキルエステルが用いられている場合には、下記一般式(13)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体となる。
【0091】
一般式(13)
【0092】
【化28】
(式中、Raは、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、Mは、同一または相異なって、金属塩を示し、n1は、1〜5の整数を示す。)
また、出発原料としてフマル酸ジアルキルエステルが用いられている場合には、下記一般式(14)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体となる。
【0093】
一般式(14)
【0094】
【化29】
(式中、Raは、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、Mは、同一または相異なって、金属塩を示し、n1は、1〜5の整数を示す。)
また、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合には、上記一般式(5)示されるα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体は、出発原料としてマレイン酸ジアルキルエステルが用いられている場合、および、出発原料としてフマル酸ジアルキルエステルが用いられている場合のいずれも、下記一般式(15)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体となる。
一般式(15)
【0095】
【化30】
(式中、RaおよびRbは、同一または相異なって、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、Mは、同一または相異なって、金属塩を示し、n2は、2〜6の整数を示す。)
そして、このようにして得られるα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体は、優れた生分解性と、優れた洗浄性能およびキレート性能とを併有し、とりわけ、上記した一般式(9)、(10)(11)および(12)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体をケン化することによって得られる、それらに対応する下記一般式(16)、(17)(18)および(19)が、優れた生分解性と、優れた洗浄性能およびキレート性能とを併有し、キレート化剤、ビルダーおよび洗浄剤の分野において有用である。
【0096】
一般式(16)
【0097】
【化31】
(式中、R1は、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、フェニル基、2−シアノ−2−プロピル基、水素のいずれかを示し、点線で示す炭素−炭素間結合は、炭素−炭素間二重結合または炭素−炭素間単結合を示し、点線で示す炭素−H間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−H間単結合を示し、点線で示す炭素−R2間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−R2間単結合を示し、R2は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、フェニル基、2−シアノ−2−プロピル基、水素のいずれかを示し、Mは、同一または相異なって、金属塩を示し、nは、1〜5の整数を示す。)
一般式(17)
【0098】
【化32】
(式中、R1は、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、フェニル基、2−シアノ−2−プロピル基、水素のいずれかを示し、Mは、同一または相異なって、金属塩を示し、n1は、1〜5の整数を示す。)
一般式(18)
【0099】
【化33】
(式中、R1は、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、フェニル基、2−シアノ−2−プロピル基、水素のいずれかを示し、Mは、同一または相異なって、金属塩を示し、n1は、1〜5の整数を示す。)
一般式(19)
【0100】
【化34】
(式中、R1およびR2は、同一または相異なって、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、フェニル基、2−シアノ−2−プロピル基、水素のいずれかを示し、Mは、同一または相異なって、金属塩を示し、n2は、2〜6の整数を示す。)
また、一般式(17)、(18)および(19)で示すα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体のうち、一般式(18)および(19)で示すα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体、とりわけ、一般式(18)で示すα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体が、優れた生分解性と、優れた洗浄性能およびキレート性能とを併有するため、特に好ましい。
【0101】
そして、このようなα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体は、キレート化剤、ビルダー、洗浄剤として用いることができる。
【0102】
キレート化剤として用いる場合には、例えば、上記で得られたα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体を、公知の方法により遊離体とすることによって、キレート化剤として調製することができる。
【0103】
また、ビルダーとして用いる場合には、例えば、上記で得られたα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体を、界面活性剤、賦形剤などに配合することによって、ビルダーとして調製することができる。
【0104】
また、洗浄剤として用いる場合には、例えば、上記で得られたα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体を、上記したキレート化剤と同様に調製することによって、洗浄剤として調製することができる。
【0105】
そして、このようなα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体は、工業的には、例えば、写真処理液、無電解めっき、洗浄剤、スケール防止剤、染色助剤、繊維処理助剤、石けん洗浄剤、化粧品添加剤、血液凝固防止剤、農薬、安定剤、酵素の活性賦与剤、合成ゴムの重合剤、塩化ビニル樹脂の熱安定剤、重金属の定量分析などに用いることができる。
【0106】
より具体的には、例えば、ゴムおよびビタミンCの酸化防止、ペプチドの加水分解の防止、植物油、乳化油、医薬などの金属不活性化、食品中のコン跡の金属による変質の防止、洗浄剤や金属清浄剤に配合して金属イオン封鎖作用により重金属イオンの沈殿の生成の防止、ボイラー清浄剤、硬水の軟化剤、酵素の精製や反応の解析のための応用、各種金属イオンのキレート滴定試薬、特に水の硬度測定、灰分、血液、調味料、セッカイ石、クカイ石などの中のカルシウム、マグネシウムの定量、比色分析用試薬、マスキング剤、ポーラログラフ分析法における錯形成支持電解質、イオン交換樹脂と併用して希土類金属イオンの分離などに用いることができる。
【0107】
【実施例】
以下に実施例を挙げ、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、何ら実施例に限定されるものではない。
【0108】
実施例1
攪拌子を付したねじ付き試験管に、フマル酸ジエチル200mg、過酸化ベンゾイル4mg、エタノール600μLを入れ、アルゴン雰囲気下、70℃で24時間攪拌することにより重合した。重合終了後、生成物をクロロホルム5mLに溶解し10mLバイアルにとり、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮後、真空ポンプで減圧しながら80℃で1日乾燥させ、ポリ(フマル酸ジエチル)を得た。得られたポリ(フマル酸ジエチル)は、MALDI−TOFMSにより、下記式(A)〜(F)を含む混合物であると同定された。なお、得られたMSスペクトルにおいて、強く観測されたピークのみ同定化合物の下に付記する。
【0109】
【化35】
[M+Li+]:523.3
【0110】
【化36】
[M+Li+]:567.3
【0111】
【化37】
【化38】
[M+Li+]:697.2
【0112】
【化39】
[M+Li+]:601.4
【0113】
【化40】
次いで、得られた濃縮物10mgを、攪拌子を付した100mLナス型すり付きフラスコに測り取り、5mLエタノールを加え溶解した。これに、4N水酸化ナトリウム水溶液を10mLを加え、窒素雰囲気下、65℃、12時間、攪拌して反応させた。反応終了後、pH試験紙を用いて1N塩酸で中和した。
【0114】
これを、ロータリーエバポレータを用いて、水およびエタノールを減圧留去した。得られた生成物に50mLの水を加え溶解させ、ガラス電極式水素イオン濃度計を用いて、pHが7となるように1N塩酸を用いて調整した。この溶液を、ろ紙を用いてろ過し、その後、透析用セルロースチューブにとり、5日間、蒸留水中で透析し、塩、モノマーおよび低分子量体を除去し、精製した。透析後の得られた溶液を、ロータリーエバポレータを用いて減圧濃縮し、さらに真空ポンプを用いて、減圧下60℃で乾燥させることにより、ポリ(フマル酸ナトリウム)6.5mg(収率70%)を得た。得られたポリ(フマル酸ナトリウム)は、NMRにより、下記式(A’)〜(F’)の混合物であると同定された。なお、得られたNMRスペクトルにおいて、強く観測されたピークのみ同定化合物の下に付記する。
【0115】
【化41】
H1NMR(D2O)a:δ=2.46〜3.46(2H,m)、b:δ=6.54(1H,S)
【0116】
【化42】
【化43】
【0117】
【化44】
H1NMR(D2O)a:δ=1.80〜3.75(br)、b:δ=7.20(br)
C13NMR(D2O)a:δ=51.25
【0118】
【化45】
【化46】
実施例2
ラジカル重合開始剤を、アゾビスイソブチロニトリルにした以外は、実施例1と同様の操作により、ポリ(フマル酸ジエチル)を得た。得られたポリ(フマル酸ジエチル)を、実施例1と同様にMALDI−TOFMS測定したところ、下記式(G)〜(L)の混合物であると同定された。
【0119】
【化47】
【0120】
【化48】
【化49】
【0121】
【化50】
【化51】
【0122】
【化52】
次いで、得られた濃縮物を、実施例1と同様の操作によってケン化することにより、ポリ(フマル酸ナトリウム)を得た。得られたポリ(フマル酸ナトリウム)は、NMRにより、下記式(G’)〜(L’)の混合物であると同定された。
【0123】
【化53】
【0124】
【化54】
【化55】
【0125】
【化56】
【化57】
【0126】
【化58】
評価
1)評価試料の調製
実施例1と同様の方法によって得られたポリ(フマル酸ナトリウム)の混合物から、一般式(A’)に相当する化合物を単離精製して、評価試料を調製した。以下、この試料を、フマル酸ナトリウム(A’)とする。
【0127】
2)生分解性の評価
BODの測定は、OECD化学品テストガイドライン310Cに従いBOD TESTERを用いて実施した。修正MITI法として、下水処理場から採取した活性汚泥を用いた。BOD値は、活性汚泥を含む植種希釈水中、25℃、攪拌条件下において、フマル酸ナトリウム(A’)のサンプル1gが分解されることで消費される系内の酸素量を酸素のmg数(mgO/g)で示した。また、サンプル1gが完全に炭酸ガスと水とに分解されたときに消費される理論酸素量を理論酸素要求量としてThOD値として算出した。これらの値より
生分解率[%]=BOD/ThOD×100
として生分解率を算出した。
【0128】
なお、この測定で用いた活性汚泥が生分解性を有していることを確認するため、アニリンの生分解性を測定した。アニリン5mgをBOD TESTER用フラン瓶に取り、さらに植種希釈水200mLを測り取った。これに、攪拌子を入れ、炭酸ガス吸収液0.7mLを入れた受け皿、専用ゴム栓およびマノメーターを取り付け、25℃の恒温槽中に浸し、マノメーターの目盛を2.0に合わせ測定を開始した。この後24時間ごとに、マノメーターの目盛を測定し生分解率を算出した。測定は28日間実施した。
【0129】
以上の結果を表1に示す。
【0130】
【表1】
3)金属イオン封鎖力の評価
フマル酸ナトリウム(A’)のサンプル10mgおよび試験水50mLをビ−カーにとり、これにイオン強度調整液1mLを加え、30℃の恒温槽中で攪拌子により攪拌し、イオン濃度計の校正を実施した。イオン濃度測定値ic(ppm)から、下記式により、サンプル100gによって封鎖されるカルシウムイオンのグラム数を計算し、これをカルシウムイオン封鎖力とした。その結果を表2に示す。
【0131】
なお、この評価では、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびトリポリリン酸五ナトリウム(STPP)も併せて評価した。
【0132】
金属イオン封鎖力=(40.1−ic)×(50×10−6×100/1.0×10−2)
【0133】
【表2】
4)ビルダー性能の評価(二酸化マンガン分散力の評価)
50mL目盛り付き共栓試験管(内径2.3cm、高さ17cm)に、フマル酸ナトリウム(A’)のサンプル25mgと二酸化マンガン1.0gを測り取り、蒸留水を加え50mLとした。この試験管を手で上下に30回激しく振とうした後、25℃の恒温槽に15分間静置した。次いで、さらに上下に100回激しく振とうし25℃にて4時間静置した。試験管の30mLの標線にピペットの先端を置き、分散液15mLを静かに吸引した。これを100mLの三角フラスコに取り、6N硫酸9mL、硫酸鉄(II)アンモニウム水溶液10mLを加えることにより二酸化マンガンを完全に溶解させ、N/10過マンガン酸カリウム標準液で滴定した。
【0134】
二酸化マンガンは、硫酸鉄(II)共存下で下記反応式に従って硫酸マンガンとして溶解する。このことから、硫酸鉄(II)を二酸化マンガンに加え、残存した硫酸鉄(II)を過マンガン酸カリウムを用いて滴定することによって、二酸化マンガンの存在量を求めた。
【0135】
MnO2+2FeSO4+2H2SO4→MnSO4+Fe2(SO4)3+2H2O
10FeSO4+2KMmO4+8H2SO4→K2SO4+2MnSO4+5Fe2(SO4)3+8H2O
二酸化マンガン分散力の計算は、ブランク滴定量B(mL)、サンプルの滴定量A(mL)の差から、下記式により、0.05%サンプル溶液100mL中に分散する二酸化マンガンのミリグラム数を計算し、これを二酸化マンガン分散力とした。
【0136】
分散力=((B−A)×f×86.94/10)×(100/15)×(1/2)
また、この評価では、トリポリリン酸五ナトリウム(STPP)も併せて評価した。以上の結果を表3に示す。なお、表3には、ブランクも併せて示す。
【0137】
【表3】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明のα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体は、優れた生分解性と、優れた洗浄性能およびキレート性能とを併有する。そのため、本発明のα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体を含有するキレート化剤、ビルダーおよび洗浄剤は、優れた洗浄性能およびキレート性能と発現しつつ、生分解性に優れ、環境負荷を低減することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、キレート化剤、ビルダーおよび洗浄剤として有用な新規α,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体およびその製造方法、そのα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体を含有するキレート化剤、ビルダーおよび洗浄剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、界面活性作用が、水溶性イオンであるアルカリ土類金属類によって不活性化するのを防止するために、ビルダーとして、トリポリリン酸ナトリウムなどの縮合リン酸系化合物や、ベントナイト、ゼオライトなどの鉱物系化合物などが知られている。
【0003】
しかし、縮合リン酸系化合物は、富栄養化を招き、また、鉱物系化合物は、水の濁度を増大させるため、これらの代替として、ポリアクリル酸ナトリウムが、金属イオン捕捉性、分散性、凝集性、増粘性、吸湿性などに優れることから、広く用いられている。
【0004】
しかし、ポリアクリル酸ナトリウムは、生分解性に著しく劣ることが指摘されており、そのため、近年、アクリル酸とマレイン酸との共重合体を、ビルダーとして用いることが各種提案されている(例えば、特開2001−081133号公報や特開2000−143737号公報など)。
【0005】
また、エチレンジアミン4酢酸塩(EDTA)は、優れたキレート性能を有するため、例えば、写真処理液、無電解めっき、洗浄剤、スケール防止剤など幅広い分野で用いられている。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−081133号公報
【特許文献2】
特開2000−143737号公報
【発明が解決しようとする課題】
しかし、アクリル酸とマレイン酸との共重合体からなるビルダーもまた、生分解性が劣り、また、エチレンジアミン4酢酸塩(EDTA)は、分解が容易でなく、自然環境に戻すことが困難で、過度の使用が抑制されつつある。
【0007】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、その目的とするところは、優れた生分解性と、優れた洗浄性能およびキレート性能とを併有する新規なα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体およびその製造方法、そのα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体を含有するキレート化剤、ビルダーおよび洗浄剤を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体は、下記一般式(1)で示されることを特徴としている。
【0009】
一般式(1)
【0010】
【化8】
(式中、R1は、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、フェニル基、2−シアノ−2−プロピル基、水素のいずれかを示し、点線で示す炭素−炭素間結合は、炭素−炭素間二重結合または炭素−炭素間単結合を示し、点線で示す炭素−H間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−H間単結合を示し、点線で示す炭素−R2間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−R2間単結合を示し、R2は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、フェニル基、2−シアノ−2−プロピル基、水素のいずれかを示し、Xは、同一または相異なって、炭素数1〜4のアルキル基、金属塩、水素のいずれかを示し、nは、1〜5の整数を示す。)
また、本発明において、前記一般式(1)に示すα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体が、下記一般式(2)に示すα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体となる態様がある。
【0011】
一般式(2)
【0012】
【化9】
(式中、R1は、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、フェニル基、2−シアノ−2−プロピル基、水素のいずれかを示し、Xは、同一または相異なって、炭素数1〜4のアルキル基、金属塩、水素のいずれかを示し、n1は、1〜5の整数を示す。)
また、本発明において、前記一般式(1)に示すα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体が、下記一般式(3)に示すα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体となる態様がある。
【0013】
一般式(3)
【0014】
【化10】
(式中、R1およびR2は、同一または相異なって、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、フェニル基、2−シアノ−2−プロピル基、水素のいずれかを示し、Xは、同一または相異なって、炭素数1〜4のアルキル基、金属塩、水素のいずれかを示し、n2は、2〜6の整数を示す。)
また、本発明において、上記一般式(1)〜(3)の式中、Xが、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましい。
【0015】
また、本発明において、上記一般式(1)〜(3)の式中、Xが、金属塩であることが好ましい。
【0016】
また、本発明において、上記一般式(1)〜(3)の式中、R1が、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基または水素であることが好ましい。
【0017】
また、本発明において、上記一般式(1)〜(3)の式中、R2が、水素であることが好ましい。
【0018】
また、本発明のα,β−不飽和ジカルボキシ化合物の製造方法は、α,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルを、有機溶媒中、ラジカル重合開始剤の存在下で重合することにより、下記一般式(4)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体を製造することを特徴としている。
【0019】
一般式(4)
【0020】
【化11】
(式中、Raは、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、点線で示す炭素−炭素間結合は、炭素−炭素間二重結合または炭素−炭素間単結合を示し、点線で示す炭素−H間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−H間単結合を示し、点線で示す炭素−Rb間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−Rb間単結合を示し、Rbは、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、Rcは、同一または相異なって、炭素数1〜4のアルキル基を示し、nは、1〜5の整数を示す。)
本発明のα,β−不飽和ジカルボキシ化合物は、上記により得られるα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体をケン化することにより、下記一般式(5)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体を製造することを特徴としている。
【0021】
一般式(5)
【0022】
【化12】
(式中、Raは、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、点線で示す炭素−炭素間結合は、炭素−炭素間二重結合または炭素−炭素間単結合を示し、点線で示す炭素−H間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−H間単結合を示し、点線で示す炭素−Rb間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−Rb間単結合を示し、Rbは、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、Mは、同一または相異なって、金属塩を示し、nは、1〜5の整数を示す。)
また、本発明のα,β−不飽和ジカルボキシ化合物の製造方法において、α,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルが、フマル酸ジアルキルエステルであることが好ましい。
【0023】
また、本発明のα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体は、α,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルを、有機溶媒中、ラジカル重合開始剤の存在下で重合することにより得られる、下記一般式(4)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体であることを特徴としている。
【0024】
一般式(4)
【0025】
【化13】
(式中、Raは、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、点線で示す炭素−炭素間結合は、炭素−炭素間二重結合または炭素−炭素間単結合を示し、点線で示す炭素−H間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−H間単結合を示し、点線で示す炭素−Rb間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−Rb間単結合を示し、Rbは、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、Rcは、同一または相異なって、炭素数1〜4のアルキル基を示し、nは、1〜5の整数を示す。)
また、本発明のα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体は、α,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体をケン化することにより得られる、下記一般式(5)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体であることを特徴としている。
【0026】
一般式(5)
【0027】
【化14】
(式中、Raは、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、点線で示す炭素−炭素間結合は、炭素−炭素間二重結合または炭素−炭素間単結合を示し、点線で示す炭素−H間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−H間単結合を示し、点線で示す炭素−Rb間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−Rb間単結合を示し、Rbは、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、Mは、同一または相異なって、金属塩を示し、nは、1〜5の整数を示す。)
また、本発明のα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体は、上記したα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルが、フマル酸ジアルキルエステルであることが好ましい。
【0028】
また、本発明は、上記したα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体を含有するキレート化剤を含んでいる。
【0029】
また、本発明は、上記したα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体を含有するビルダーを含んでいる。
【0030】
また、本発明は、上記したα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体を含有する洗浄剤を含んでいる。
【0031】
【発明の実施の形態】
本発明のα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体は、α,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルを、有機溶媒中、ラジカル重合開始剤の存在下で重合することにより得られる、下記一般式(4)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体、
一般式(4)
【0032】
【化15】
(式中、Raは、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、点線で示す炭素−炭素間結合は、炭素−炭素間二重結合または炭素−炭素間単結合を示し、点線で示す炭素−H間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−H間単結合を示し、点線で示す炭素−Rb間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−Rb間単結合を示し、Rbは、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、Rcは、同一または相異なって、炭素数1〜4のアルキル基を示し、nは、1〜5の整数を示す。)
または、そのα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体をケン化することにより得られる、下記一般式(5)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体である。
【0033】
一般式(5)
【0034】
【化16】
(式中、Raは、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、点線で示す炭素−炭素間結合は、炭素−炭素間二重結合または炭素−炭素間単結合を示し、点線で示す炭素−H間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−H間単結合を示し、点線で示す炭素−Rb間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−Rb間単結合を示し、Rbは、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、Mは、同一または相異なって、金属塩を示し、nは、1〜5の整数を示す。)
本発明のα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体を製造するための出発原料であるα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルとしては、例えば、マレイン酸ジアルキルエステル、および/または、フマル酸ジアルキルエステルが挙げられる。
【0035】
これらのジアルキルエステルを形成するアルキルとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどの炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。これらのうち、エチルが好ましい。
【0036】
これらの出発原料は、より具体的には、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジ−n−プロピル、マレイン酸ジ−n−ブチル、マレイン酸ジ−t−ブチルなどのマレイン酸ジアルキルエステル、例えば、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジ−n−プロピル、フマル酸ジ−n−ブチル、フマル酸ジ−t−ブチルなどのフマル酸ジアルキルエステルなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用してもよい。
【0037】
また、これら出発原料のうちでは、好ましくは、フマル酸ジアルキルエステル、さらに好ましくは、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチルが挙げられる。
【0038】
そして、本発明のα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体を得るには、上記したα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルを、有機溶媒中、ラジカル重合開始剤の存在下で重合させる。
【0039】
有機溶媒としては、特に制限されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノールなどのアルコール系溶媒、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコール系溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性極性溶媒、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレンカーボネートなどのケトン系溶媒、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、γ−ブチロラクトンなどのエステル系溶媒、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ソルベントナフサなどの芳香族炭化水素系溶媒、例えば、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒などが挙げられる。これら有機溶媒は、単独使用または2種以上併用してもよい。
【0040】
また、これら有機溶媒のうちでは、好ましくは、アルコール系溶媒、グリコール系溶媒、非プロトン性極性溶媒が挙げられる。さらに好ましくは、アルコール系溶媒、とりわけ好ましくは、エタノールが挙げられる。
【0041】
また、ラジカル重合開始剤としては、特に制限されないが、例えば、過酸化ベンゾイル(BPO)、2,4−ジ−クロロベンゾイルパーオキサイド、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、サクシニックパーオキサイド、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(2−エチルヘキシルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、m−トルイルアンドベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロへキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−プチルパーオキシ)−シクロドデカン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(m−トルイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、α,α’ビス−(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、ジ−クミルパーオキサイド、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイドなどの有機化酸化物が挙げられる。また、このような有機過酸化物の他に、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)などのアゾ化合物なども挙げることができる。好ましくは、有機過酸化物として過酸化ベンゾイルが挙げられ、アゾ化合物としてアゾビスイソブチロニトリルが挙げられる。
【0042】
そして、α,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体を得るには、例えば、下記反応式(I)に示すように、α,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルおよびラジカル重合開始剤を、有機溶媒中に加えて、不活性ガス雰囲気下、50〜80℃で重合反応させる。
【0043】
反応式(I)
【0044】
【化17】
α,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルを、有機溶媒に加える割合は、特に制限されないが、例えば、極性溶媒100重量部に対して、α,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルが、2〜100重量部、好ましくは、5〜50重量部である。
【0045】
また、ラジカル重合開始剤を加える割合は、BPOの場合には、例えば、α,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル100重量部に対して、ラジカル重合開始剤が、0.1〜10重量部、好ましくは、0.2〜5重量部である。
【0046】
また、不活性ガスは、特に制限されず、窒素ガス、アルゴンガスなどが適宜用いられる。
【0047】
また、反応温度は、BPOの場合には、50〜80℃である。
【0048】
なお、反応圧力は常圧でよく、反応時間は反応温度から適宜決定される。
【0049】
この重合反応は、より具体的には、例えば、公知の方法により不活性ガスで置換された反応容器に、有機溶媒、α,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルおよびラジカル重合開始剤を仕込み、上記した反応温度で適宜の時間反応させることにより、実施することができる。
【0050】
また、重合反応終了後には、次にα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルをケン化するために濃縮するなど、適宜後処理を実施してもよい。
【0051】
このような反応条件により、後述する重合度2〜6、好ましくは、重合度2〜4、とりわけ、重合度3のα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルを選択的に得ることができる。
【0052】
そして、このようにして得られたα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体は、下記一般式(4)で示される。
【0053】
一般式(4)
【0054】
【化18】
(式中、Raは、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、点線で示す炭素−炭素間結合は、炭素−炭素間二重結合または炭素−炭素間単結合を示し、点線で示す炭素−H間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−H間単結合を示し、点線で示す炭素−Rb間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−Rb間単結合を示し、Rbは、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、Rcは、同一または相異なって、炭素数1〜4のアルキル基を示し、nは、1〜5の整数を示す。)
一般式(4)の式中、RaおよびRbで示される有機溶媒残基としては、上記した有機溶媒が重合反応中に開裂して結合した残基が挙げられる。より具体的には、有機溶媒として、例えば、上記したアルコール系溶媒が用いられる場合には、Raおよび/またはRbが、炭素数1〜4のヒドロキシアルキルとなる。
【0055】
また、RaおよびRbで示されるラジカル開始剤残基としては、上記したラジカル開始剤残基が重合反応中に開裂して結合した残基が挙げられる。より具体的には、ラジカル開始剤として、例えば、過酸化ベンゾイルが用いられる場合には、Raおよび/またはRbが、フェニルとなる。また、例えば、アゾビスイソブチロニトリルが用いられる場合には、Raおよび/またはRbが、2−シアノ−2−プロピルとなる。
【0056】
また、Rcで示される炭素数1〜4のアルキル基は、アルキルエステルのアルキル基であって、上記と同様の炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。
【0057】
また、nは、α,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体の重合度−1を示し、1〜5(すなわち、重合度2〜6)、好ましくは、1〜3(すなわち、重合度2〜4)、とりわけ、2(重合度3)であることが好ましい。
【0058】
また、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間二重結合である場合には、上記一般式(4)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体は、出発原料としてマレイン酸ジアルキルエステルが用いられている場合には、下記一般式(6)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体となる。
【0059】
一般式(6)
【0060】
【化19】
(式中、Raは、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、Rcは、同一または相異なって、炭素数1〜4のアルキル基を示し、n1は、1〜5の整数を示す。)
また、出発原料としてフマル酸ジアルキルエステルが用いられている場合には、下記一般式(7)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体となる。
【0061】
一般式(7)
【0062】
【化20】
(式中、Raは、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、Rcは、同一または相異なって、炭素数1〜4のアルキル基を示し、n1は、1〜5の整数を示す。)
また、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合には、上記一般式(4)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体は、出発原料としてマレイン酸ジアルキルエステルが用いられている場合、および、出発原料としてフマル酸ジアルキルエステルが用いられている場合のいずれも、下記一般式(8)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体となる。
【0063】
一般式(8)
【0064】
【化21】
(式中、RaおよびRbは、同一または相異なって、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、Rcは、同一または相異なって、炭素数1〜4のアルキル基を示し、n2は、2〜6の整数を示す。)
そして、このようにして得られるα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体は、α,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体を得るための中間体として有用であり、とりわけ、優れた生分解性と、優れた洗浄性能およびキレート性能とを併有するα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体を得るための中間体としては、下記一般式(9)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体が好ましい。
【0065】
一般式(9)
【0066】
【化22】
(式中、R1は、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、フェニル基、2−シアノ−2−プロピル基、水素のいずれかを示し、点線で示す炭素−炭素間結合は、炭素−炭素間二重結合または炭素−炭素間単結合を示し、点線で示す炭素−H間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−H間単結合を示し、点線で示す炭素−R2間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−R2間単結合を示し、R2は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、フェニル基、2−シアノ−2−プロピル基、水素のいずれかを示し、R3は、同一または相異なって、炭素数1〜4のアルキル基を示し、nは、1〜5の整数を示す。)
一般式(9)の式中、R1およびR2で示される炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基としては、例えば、1−ヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、1−ヒドロキシプロピル、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル、1−ヒドロキシブチルなどの炭素数1〜4のヒドロキシアルキルが挙げられる。R1および/またはR2が、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基となる場合は、上記反応式(I)において、有機溶媒として炭素数1〜4のアルコール系溶媒が用いられる場合である。また、R1および/またはR2が、フェニル基となる場合は、上記反応式(I)において、ラジカル重合開始剤として、過酸化ベンゾイルが用いられる場合である。また、R1および/またはR2が、2−シアノ−2−プロピル基となる場合は、上記反応式(I)において、ラジカル重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリルが用いられる場合である。
【0067】
また、R3で示される炭素数1〜4のアルキル基は、アルキルエステルのアルキル基であって、上記と同様の炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。
【0068】
また、nは、上記と同様に、α,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体の重合度−1を示し、1〜5(すなわち、重合度2〜6)、好ましくは、1〜3(すなわち、重合度2〜4)、とりわけ、2(重合度3)であることが好ましい。
【0069】
また、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間二重結合である場合には、上記一般式(9)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体は、出発原料としてマレイン酸ジアルキルエステルが用いられている場合には、下記一般式(10)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体となる。
【0070】
一般式(10)
【0071】
【化23】
(式中、R1は、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、フェニル基、2−シアノ−2−プロピル基、水素のいずれかを示し、R3は、同一または相異なって、炭素数1〜4のアルキル基を示し、n1は、1〜5の整数を示す。)
また、出発原料としてフマル酸ジアルキルエステルが用いられている場合には、下記一般式(11)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体となる。
【0072】
一般式(11)
【0073】
【化24】
(式中、R1は、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、フェニル基、2−シアノ−2−プロピル基、水素のいずれかを示し、R3は、同一または相異なって、炭素数1〜4のアルキル基を示し、n1は、1〜5の整数を示す。)
また、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合には、上記一般式(9)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体は、出発原料としてマレイン酸ジアルキルエステルが用いられている場合、および、出発原料としてフマル酸ジアルキルエステルが用いられている場合のいずれも、下記一般式(12)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体となる。
【0074】
一般式(12)
【0075】
【化25】
(式中、R1およびR2は、同一または相異なって、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、フェニル基、2−シアノ−2−プロピル基、水素のいずれかを示し、R3は、同一または相異なって、炭素数1〜4のアルキル基を示し、n2は、2〜6の整数を示す。)
これら一般式(10)、(11)および(12)で示すα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体のうち、一般式(11)および(12)で示すα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体、とりわけ、一般式(11)で示すα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体が、優れた生分解性と、優れた洗浄性能およびキレート性能とを併有するα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体を得るための中間体として好ましい。
【0076】
そして、このようにして得られるα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体を、下記反応式(II)に示すように、ケン化することによって、α,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体を得ることができる。
【0077】
反応式(II)
【0078】
【化26】
反応式(II)に示すケン化反応は、公知のケン化反応でよく、例えば、α,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体およびアルカリ金属水酸化物を、上記したエタノールなどのアルコール系溶媒中に加えて、不活性ガス雰囲気下、60〜90℃でケン化反応させる。
【0079】
α,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体を、アルコール系溶媒に加える割合は、特に制限されないが、例えば、アルコール系溶媒100重量部に対して、α,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体が、0.2〜10重量部である。
【0080】
また、アルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。好ましくは、水酸化ナトリウムが挙げられる。アルカリ金属水酸化物を加える割合は、例えば、α,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体100重量部に対して、アルカリ金属水酸化物が、50〜3000重量部、好ましくは、200〜2000重量部である。
【0081】
また、不活性ガスは、特に制限されず、窒素ガス、アルゴンガスなどが適宜用いられる。
【0082】
また、反応温度は、30〜80℃である。
【0083】
なお、反応圧力は常圧でよく、反応時間は反応温度から適宜決定される。
【0084】
このケン化反応は、より具体的には、例えば、公知の方法により不活性ガスで置換された反応容器に、アルコール系溶媒、α,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体(濃縮した場合には、濃縮物)およびアルカリ金属水酸化物を仕込み、上記した反応温度で適宜の時間反応させることにより、実施することができる。
【0085】
また、重合反応終了後には、濃縮および乾燥するなど、適宜後処理を実施してもよい。
【0086】
そして、このようなケン化反応によって、下記一般式(5)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体を得ることができる。
【0087】
一般式(5)
【0088】
【化27】
(式中、Raは、有機溶媒基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、点線で示す炭素−炭素間結合は、炭素−炭素間二重結合または炭素−炭素間単結合を示し、点線で示す炭素−H間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−H間単結合を示し、点線で示す炭素−Rb間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−Rb間単結合を示し、Rbは、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、Mは、同一または相異なって、金属塩を示し、nは、1〜5の整数を示す。)
一般式(5)の式中、RaおよびRbで示される有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基としては、上記と同様のものが挙げられる。
【0089】
Mで示される金属塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩が挙げられる。
【0090】
また、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間二重結合である場合には、上記一般式(5)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体は、出発原料としてマレイン酸ジアルキルエステルが用いられている場合には、下記一般式(13)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体となる。
【0091】
一般式(13)
【0092】
【化28】
(式中、Raは、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、Mは、同一または相異なって、金属塩を示し、n1は、1〜5の整数を示す。)
また、出発原料としてフマル酸ジアルキルエステルが用いられている場合には、下記一般式(14)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体となる。
【0093】
一般式(14)
【0094】
【化29】
(式中、Raは、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、Mは、同一または相異なって、金属塩を示し、n1は、1〜5の整数を示す。)
また、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合には、上記一般式(5)示されるα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体は、出発原料としてマレイン酸ジアルキルエステルが用いられている場合、および、出発原料としてフマル酸ジアルキルエステルが用いられている場合のいずれも、下記一般式(15)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体となる。
一般式(15)
【0095】
【化30】
(式中、RaおよびRbは、同一または相異なって、有機溶媒残基、ラジカル開始剤残基、水素のいずれかを示し、Mは、同一または相異なって、金属塩を示し、n2は、2〜6の整数を示す。)
そして、このようにして得られるα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体は、優れた生分解性と、優れた洗浄性能およびキレート性能とを併有し、とりわけ、上記した一般式(9)、(10)(11)および(12)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体をケン化することによって得られる、それらに対応する下記一般式(16)、(17)(18)および(19)が、優れた生分解性と、優れた洗浄性能およびキレート性能とを併有し、キレート化剤、ビルダーおよび洗浄剤の分野において有用である。
【0096】
一般式(16)
【0097】
【化31】
(式中、R1は、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、フェニル基、2−シアノ−2−プロピル基、水素のいずれかを示し、点線で示す炭素−炭素間結合は、炭素−炭素間二重結合または炭素−炭素間単結合を示し、点線で示す炭素−H間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−H間単結合を示し、点線で示す炭素−R2間結合は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素−R2間単結合を示し、R2は、点線で示す炭素−炭素間結合が炭素−炭素間単結合である場合に、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、フェニル基、2−シアノ−2−プロピル基、水素のいずれかを示し、Mは、同一または相異なって、金属塩を示し、nは、1〜5の整数を示す。)
一般式(17)
【0098】
【化32】
(式中、R1は、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、フェニル基、2−シアノ−2−プロピル基、水素のいずれかを示し、Mは、同一または相異なって、金属塩を示し、n1は、1〜5の整数を示す。)
一般式(18)
【0099】
【化33】
(式中、R1は、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、フェニル基、2−シアノ−2−プロピル基、水素のいずれかを示し、Mは、同一または相異なって、金属塩を示し、n1は、1〜5の整数を示す。)
一般式(19)
【0100】
【化34】
(式中、R1およびR2は、同一または相異なって、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、フェニル基、2−シアノ−2−プロピル基、水素のいずれかを示し、Mは、同一または相異なって、金属塩を示し、n2は、2〜6の整数を示す。)
また、一般式(17)、(18)および(19)で示すα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体のうち、一般式(18)および(19)で示すα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体、とりわけ、一般式(18)で示すα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体が、優れた生分解性と、優れた洗浄性能およびキレート性能とを併有するため、特に好ましい。
【0101】
そして、このようなα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体は、キレート化剤、ビルダー、洗浄剤として用いることができる。
【0102】
キレート化剤として用いる場合には、例えば、上記で得られたα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体を、公知の方法により遊離体とすることによって、キレート化剤として調製することができる。
【0103】
また、ビルダーとして用いる場合には、例えば、上記で得られたα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体を、界面活性剤、賦形剤などに配合することによって、ビルダーとして調製することができる。
【0104】
また、洗浄剤として用いる場合には、例えば、上記で得られたα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体を、上記したキレート化剤と同様に調製することによって、洗浄剤として調製することができる。
【0105】
そして、このようなα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体は、工業的には、例えば、写真処理液、無電解めっき、洗浄剤、スケール防止剤、染色助剤、繊維処理助剤、石けん洗浄剤、化粧品添加剤、血液凝固防止剤、農薬、安定剤、酵素の活性賦与剤、合成ゴムの重合剤、塩化ビニル樹脂の熱安定剤、重金属の定量分析などに用いることができる。
【0106】
より具体的には、例えば、ゴムおよびビタミンCの酸化防止、ペプチドの加水分解の防止、植物油、乳化油、医薬などの金属不活性化、食品中のコン跡の金属による変質の防止、洗浄剤や金属清浄剤に配合して金属イオン封鎖作用により重金属イオンの沈殿の生成の防止、ボイラー清浄剤、硬水の軟化剤、酵素の精製や反応の解析のための応用、各種金属イオンのキレート滴定試薬、特に水の硬度測定、灰分、血液、調味料、セッカイ石、クカイ石などの中のカルシウム、マグネシウムの定量、比色分析用試薬、マスキング剤、ポーラログラフ分析法における錯形成支持電解質、イオン交換樹脂と併用して希土類金属イオンの分離などに用いることができる。
【0107】
【実施例】
以下に実施例を挙げ、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、何ら実施例に限定されるものではない。
【0108】
実施例1
攪拌子を付したねじ付き試験管に、フマル酸ジエチル200mg、過酸化ベンゾイル4mg、エタノール600μLを入れ、アルゴン雰囲気下、70℃で24時間攪拌することにより重合した。重合終了後、生成物をクロロホルム5mLに溶解し10mLバイアルにとり、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮後、真空ポンプで減圧しながら80℃で1日乾燥させ、ポリ(フマル酸ジエチル)を得た。得られたポリ(フマル酸ジエチル)は、MALDI−TOFMSにより、下記式(A)〜(F)を含む混合物であると同定された。なお、得られたMSスペクトルにおいて、強く観測されたピークのみ同定化合物の下に付記する。
【0109】
【化35】
[M+Li+]:523.3
【0110】
【化36】
[M+Li+]:567.3
【0111】
【化37】
【化38】
[M+Li+]:697.2
【0112】
【化39】
[M+Li+]:601.4
【0113】
【化40】
次いで、得られた濃縮物10mgを、攪拌子を付した100mLナス型すり付きフラスコに測り取り、5mLエタノールを加え溶解した。これに、4N水酸化ナトリウム水溶液を10mLを加え、窒素雰囲気下、65℃、12時間、攪拌して反応させた。反応終了後、pH試験紙を用いて1N塩酸で中和した。
【0114】
これを、ロータリーエバポレータを用いて、水およびエタノールを減圧留去した。得られた生成物に50mLの水を加え溶解させ、ガラス電極式水素イオン濃度計を用いて、pHが7となるように1N塩酸を用いて調整した。この溶液を、ろ紙を用いてろ過し、その後、透析用セルロースチューブにとり、5日間、蒸留水中で透析し、塩、モノマーおよび低分子量体を除去し、精製した。透析後の得られた溶液を、ロータリーエバポレータを用いて減圧濃縮し、さらに真空ポンプを用いて、減圧下60℃で乾燥させることにより、ポリ(フマル酸ナトリウム)6.5mg(収率70%)を得た。得られたポリ(フマル酸ナトリウム)は、NMRにより、下記式(A’)〜(F’)の混合物であると同定された。なお、得られたNMRスペクトルにおいて、強く観測されたピークのみ同定化合物の下に付記する。
【0115】
【化41】
H1NMR(D2O)a:δ=2.46〜3.46(2H,m)、b:δ=6.54(1H,S)
【0116】
【化42】
【化43】
【0117】
【化44】
H1NMR(D2O)a:δ=1.80〜3.75(br)、b:δ=7.20(br)
C13NMR(D2O)a:δ=51.25
【0118】
【化45】
【化46】
実施例2
ラジカル重合開始剤を、アゾビスイソブチロニトリルにした以外は、実施例1と同様の操作により、ポリ(フマル酸ジエチル)を得た。得られたポリ(フマル酸ジエチル)を、実施例1と同様にMALDI−TOFMS測定したところ、下記式(G)〜(L)の混合物であると同定された。
【0119】
【化47】
【0120】
【化48】
【化49】
【0121】
【化50】
【化51】
【0122】
【化52】
次いで、得られた濃縮物を、実施例1と同様の操作によってケン化することにより、ポリ(フマル酸ナトリウム)を得た。得られたポリ(フマル酸ナトリウム)は、NMRにより、下記式(G’)〜(L’)の混合物であると同定された。
【0123】
【化53】
【0124】
【化54】
【化55】
【0125】
【化56】
【化57】
【0126】
【化58】
評価
1)評価試料の調製
実施例1と同様の方法によって得られたポリ(フマル酸ナトリウム)の混合物から、一般式(A’)に相当する化合物を単離精製して、評価試料を調製した。以下、この試料を、フマル酸ナトリウム(A’)とする。
【0127】
2)生分解性の評価
BODの測定は、OECD化学品テストガイドライン310Cに従いBOD TESTERを用いて実施した。修正MITI法として、下水処理場から採取した活性汚泥を用いた。BOD値は、活性汚泥を含む植種希釈水中、25℃、攪拌条件下において、フマル酸ナトリウム(A’)のサンプル1gが分解されることで消費される系内の酸素量を酸素のmg数(mgO/g)で示した。また、サンプル1gが完全に炭酸ガスと水とに分解されたときに消費される理論酸素量を理論酸素要求量としてThOD値として算出した。これらの値より
生分解率[%]=BOD/ThOD×100
として生分解率を算出した。
【0128】
なお、この測定で用いた活性汚泥が生分解性を有していることを確認するため、アニリンの生分解性を測定した。アニリン5mgをBOD TESTER用フラン瓶に取り、さらに植種希釈水200mLを測り取った。これに、攪拌子を入れ、炭酸ガス吸収液0.7mLを入れた受け皿、専用ゴム栓およびマノメーターを取り付け、25℃の恒温槽中に浸し、マノメーターの目盛を2.0に合わせ測定を開始した。この後24時間ごとに、マノメーターの目盛を測定し生分解率を算出した。測定は28日間実施した。
【0129】
以上の結果を表1に示す。
【0130】
【表1】
3)金属イオン封鎖力の評価
フマル酸ナトリウム(A’)のサンプル10mgおよび試験水50mLをビ−カーにとり、これにイオン強度調整液1mLを加え、30℃の恒温槽中で攪拌子により攪拌し、イオン濃度計の校正を実施した。イオン濃度測定値ic(ppm)から、下記式により、サンプル100gによって封鎖されるカルシウムイオンのグラム数を計算し、これをカルシウムイオン封鎖力とした。その結果を表2に示す。
【0131】
なお、この評価では、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびトリポリリン酸五ナトリウム(STPP)も併せて評価した。
【0132】
金属イオン封鎖力=(40.1−ic)×(50×10−6×100/1.0×10−2)
【0133】
【表2】
4)ビルダー性能の評価(二酸化マンガン分散力の評価)
50mL目盛り付き共栓試験管(内径2.3cm、高さ17cm)に、フマル酸ナトリウム(A’)のサンプル25mgと二酸化マンガン1.0gを測り取り、蒸留水を加え50mLとした。この試験管を手で上下に30回激しく振とうした後、25℃の恒温槽に15分間静置した。次いで、さらに上下に100回激しく振とうし25℃にて4時間静置した。試験管の30mLの標線にピペットの先端を置き、分散液15mLを静かに吸引した。これを100mLの三角フラスコに取り、6N硫酸9mL、硫酸鉄(II)アンモニウム水溶液10mLを加えることにより二酸化マンガンを完全に溶解させ、N/10過マンガン酸カリウム標準液で滴定した。
【0134】
二酸化マンガンは、硫酸鉄(II)共存下で下記反応式に従って硫酸マンガンとして溶解する。このことから、硫酸鉄(II)を二酸化マンガンに加え、残存した硫酸鉄(II)を過マンガン酸カリウムを用いて滴定することによって、二酸化マンガンの存在量を求めた。
【0135】
MnO2+2FeSO4+2H2SO4→MnSO4+Fe2(SO4)3+2H2O
10FeSO4+2KMmO4+8H2SO4→K2SO4+2MnSO4+5Fe2(SO4)3+8H2O
二酸化マンガン分散力の計算は、ブランク滴定量B(mL)、サンプルの滴定量A(mL)の差から、下記式により、0.05%サンプル溶液100mL中に分散する二酸化マンガンのミリグラム数を計算し、これを二酸化マンガン分散力とした。
【0136】
分散力=((B−A)×f×86.94/10)×(100/15)×(1/2)
また、この評価では、トリポリリン酸五ナトリウム(STPP)も併せて評価した。以上の結果を表3に示す。なお、表3には、ブランクも併せて示す。
【0137】
【表3】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明のα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体は、優れた生分解性と、優れた洗浄性能およびキレート性能とを併有する。そのため、本発明のα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体を含有するキレート化剤、ビルダーおよび洗浄剤は、優れた洗浄性能およびキレート性能と発現しつつ、生分解性に優れ、環境負荷を低減することができる。
Claims (16)
- 下記一般式(1)で示されることを特徴とする、α,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体。
一般式(1)
- 一般式(1)〜(3)の式中、Xが、炭素数1〜4のアルキル基であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体。
- 一般式(1)〜(3)の式中、Xが、金属塩であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体。
- 一般式(1)〜(3)の式中、R1が、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基または水素であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体。
- 一般式(1)〜(3)の式中、R2が、水素であることを特徴とする、請求項1、3〜6のいずれかに記載のα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体。
- α,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルを、有機溶媒中、ラジカル重合開始剤の存在下で重合することにより、下記一般式(4)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体を製造することを特徴とする、α,β−不飽和ジカルボキシ化合物の製造方法。
一般式(4)
- 請求項8に記載のα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体をケン化することにより、下記一般式(5)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体を製造することを特徴とする、α,β−不飽和ジカルボキシ化合物の製造方法。
一般式(5)
- α,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルが、フマル酸ジアルキルエステルであることを特徴とする、請求項8または9に記載のα,β−不飽和ジカルボキシ化合物の製造方法。
- α,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルを、有機溶媒中、ラジカル重合開始剤の存在下で重合することにより得られる、下記一般式(4)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体であることを特徴とする、α,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体。
一般式(4)
- 請求項11に記載のα,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル重合体をケン化することにより得られる、下記一般式(5)で示されるα,β−不飽和ジカルボン酸金属塩重合体であることを特徴とする、α,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体。
一般式(5)
- α,β−不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルが、フマル酸ジアルキルエステルであることを特徴とする、請求項11または12に記載のα,β−不飽和ジカルボキシ化合物。
- 請求項1〜7、11〜13のいずれかに記載のα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体を含有することを特徴とする、キレート化剤。
- 請求項1〜7、11〜13のいずれかに記載のα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体を含有することを特徴とする、ビルダー。
- 請求項1〜7、11〜13のいずれかに記載のα,β−不飽和ジカルボキシ化合物重合体を含有することを特徴とする、洗浄剤。
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US20210371988A1 (en) * | 2020-05-28 | 2021-12-02 | Ecolab Usa Inc. | Closed loop cooling water corrosion inhibition employing polymaleates and non-borate buffers |
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2002
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