JP2004106508A - プレートの接着部構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】微細溝(凹部)内に接着剤が流入しないようにプレートの表面に蓋部材を接着固定する。
【解決手段】プレート1の表面12に微細溝(凹部)3が形成されている。また、プレート1は、微細溝3を取り囲むように接着面4が形成され、この接着面4の周囲に接着面4よりも凹んだ接着逃げ部5が形成されている。そして、プレート1の表面12に蓋部材2が重ねられ、プレート1の接着面4と蓋部材2との間の微小隙間に毛細管現象で接着剤を浸透させ、プレート1の微細溝3が形成された表面12に蓋部材2が接着される。接着面4の外側に接着逃げ部を形成すれば、接着剤の使用量を節約することができる。
【選択図】    図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、インテグレーテッド・ケミストリと呼ばれる技術分野で使用されるマイクロチップ(例えば、キャピラリ電気泳動チップ)の作成等に広く適用することができるプレートの接着部構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ガラスやプラスチックのマイクロチップの内部に数10μmから200μm程度の微細溝を作り、その微細溝を液体の流路や反応槽,分離精製検出槽として使用して、マイクロチップに複雑な化学システムを集積するインテグレーテッド・ケミストリと呼ばれる技術が知られている。このインテグレーテッド・ケミストリによれば、様々な試験に使用される微細溝が形成されたマイクロチップ(Lab−on−chip)を分析化学に限定して使用する場合にはμ−TAS(Total Analytical System)と呼称し、また、マイクロチップを反応だけに限定して使用する場合にはマイクロリアクターと呼称するようになっている。このインテグレーテッド・ケミストリは、分析等の各種試験を行う場合、空間が小さいので拡散分子の輸送時間が短くてすみ、また、液相の熱容量が極めて小さい等の優れた利点を有しているため、ミクロ空間を分析や化学合成等に利用しようとする技術分野において注目を集めている。なお、ここでいう試験とは、分析,測定,合成,分解,混合,分子輸送,溶媒抽出,固相抽出,相分離,相合流,分子補捉,培養,加熱,冷却等の操作・手段を単一又は複合させて行うものである。
【0003】
このようなインテグレーテッド・ケミストリにおいて、例えば、生化学の分野における試験において使用されるキャピラリ電気泳動チップは、ガラスやプラスチックのチップの内部に10μm〜200μm程度の微細な溝又は円形の凹部等を形成し、この微細溝又は凹部を液体の流路や反応槽等として使用し、核酸やタンパク質等の生体物質やその他の低分子物質といった極微量物質を分離同定するために使用されるものであり、取り扱う物質の体積がナノリットルからピコリットルの微小なものであるから、微細溝を精度良く形成することが求められる。
【0004】
ここで、ガラスやプラスチックの内部に微細溝(中空部)を形成する方法として、ブロー成形やロストコア法があるが、これらの方法では、例えば、数十μm角の断面の微細溝を高精度に形成するのは困難である。従って、ガラス又はプラスチックプレートの表面に微細溝を形成し、この微細溝が形成されたプレートの表面に蓋部材(別のプレート)を接合する方法が採用される。この2枚のプレートを接合する方法としては、超音波溶着,振動溶着,レーザー溶着,インサート成形(特許文献1参照)及び接着(特許文献2及び3参照)が一般的に知られている。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−58467号公報(例えば、段落番号0005〜0006参照)
【特許文献2】
特開2000−246092号公報(例えば、段落番号0004〜0006,0046参照)
【特許文献3】
特開2000−288381号公報(例えば、段落番号0004〜0006,00047参照)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、超音波溶着及び振動溶着は、どちらも接合し合う材料を局所的ではあるが溶融させることになり、例えば、数十μm角程度の断面の中空部が変形する虞があり、しかも特殊な設備を必要としてコスト高になるため、採用することができない。
【0007】
また、レーザー溶着は、微細溝の形状が複雑な場合に溶着時間が長時間になると共に、特殊な設備が必要になり、生産コストの高騰を招くという問題を有している。
【0008】
また、特許文献1に開示されたインサート成形は、射出成形金型のキャビティ内に、微細溝が形成されたプラスチックプレートを予め収容しておき、そのプラスチックプレートの表面に微細溝を覆うフィルムを配置した後、キャビティ内に蓋部材となるプラスチックを射出し、キャピラリ電気泳動チップを形成するものであるが、金型形状が複雑化し、生産コストの高騰を招くという問題を有している。
【0009】
さらに、接着は、微細溝が形成されたプレートの表面に蓋部材を接着剤で固着するものであるが、単にプレートと蓋部材とを貼り合わせると、接着剤が微細溝内に押し出され、微細溝内に流入した接着剤が微細溝の断面積を変化させたり、微細溝を塞ぐという不具合を生じる虞がある。但し、このような不具合の発生を防止できれば、特殊な設備がいらず、低コストで効率的にキャピラリ電気泳動チップを形成することができる。
【0010】
そのため、特許文献2及び3に開示されたように、接着剤としてエネルギー線硬化性組成物を使用し、微細溝に対応する接着剤以外の接着剤にエネルギー線を照射して硬化させた後、微細溝内の接着剤のみを溶剤による洗浄等で取り除くようにした技術が開発された。しかし、このような技術は、生産性を考慮する実際の生産現場において簡単に実施することが困難であり、高価な設備も必要となるという問題を有していた。
【0011】
そこで、本発明は、微細溝内に接着剤が流入することがなく、微細溝が形成されたプレートに蓋部材を簡単に接着固定することができるプレートの接着部構造を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、プレートの表面に凹部が形成され、この凹部が形成されたプレートの表面に蓋部材が接着されるプレートの接着部構造に関するものである。このプレートの接着部構造において、前記プレートは、前記凹部を取り囲むように接着面が形成されると共に、この接着面の周囲に接着面よりも凹んだ接着逃げ部が形成されている。そして、前記接着面と前記蓋部材との間に毛細管現象で接着剤を浸透させるようになっている。なお、本発明における凹部とは、流路となる溝形状、貯蔵・反応等に使用される円形又は矩形の凹部などの他、試験をするのに必要となる所定の形状を有する凹部をいう。
【0013】
請求項2の発明は、プレートの表面に凹部が形成され、この凹部が形成されたプレートの表面に蓋部材が接着されるプレートの接着部構造に関するものである。このプレートの接着部構造において、前記プレートは、前記凹部を取り囲むように接着面が形成されると共に、この接着面の周囲に接着面よりも凹んだ接着逃げ部が形成されている。また、前記蓋部材は、前記プレートの接着逃げ部のうちの前記接着面近傍位置に開口する接着剤注入孔が形成されている。そして、前記接着面と前記蓋部材との間に毛細管現象で接着剤を浸透させるようになっている。
【0014】
請求項3の発明は、プレートの表面に凹部が形成され、この凹部が形成されたプレートの表面に蓋部材が接着されるプレートの接着部構造に関するものである。このプレートの接着部構造において、前記プレートは、前記凹部を取り囲むように接着面が形成されると共に、この接着面の周囲に接着面よりも凹んだ接着逃げ部が形成されている。また、前記蓋部材は、前記プレートの接着逃げ部に少なくとも一部が開口する接着剤注入孔が形成されている。そして、前記接着面と前記蓋部材との間に毛細管現象で接着剤を浸透させるようになっている。
【0015】
請求項4の発明は、プレートの表面に凹部が形成され、この凹部が形成されたプレートの表面に蓋部材が接着されるプレートの接着部構造に関するものである。このプレートの接着部構造において、前記プレートは、前記凹部を取り囲むように接着面が形成されると共に、この接着面の周囲に接着面よりも凹んだ接着逃げ部が形成されている。また、前記蓋部材は、前記プレートの凹部の端部側で且つ前記接着面に対応する位置に開口する接着剤注入孔が形成されている。そして、前記接着面と前記蓋部材との間に毛細管現象で接着剤を浸透させるようになっている。
【0016】
請求項5の発明は、上記請求項1〜4のいずれかの発明において、前記蓋部材は、前記プレートの接着逃げ部に少なくとも部分的に係合する突起が形成されたことを特徴としている。
【0017】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれかの発明に係るプレートの接着部構造において、前記プレートの前記接着面と前記蓋部材の少なくとも一方には、接着される相手部材に突き当てられることにより、前記プレートの前記接着面と前記蓋部材との間に前記接着剤を毛細管現象で浸透させることができる程度の隙間を生じさせるスペーサ突起が形成されていることを特徴としている。
【0018】
請求項7の発明は、請求項1〜5のいずれかの発明に係るプレートの接着部構造において、前記プレートの前記接着逃げ部と前記蓋部材の少なくとも一方には、接着される相手部材に突き当てられることにより、前記プレートの前記接着面と前記蓋部材との間に前記接着剤を毛細管現象で浸透させることができる程度の隙間を生じさせるスペーサ突起が形成されていることを特徴としている。
【0019】
請求項8の発明は、請求項1〜5のいずれかの発明に係るプレートの接着部構造において、前記プレートの前記接着面と前記蓋部材には、互いに突き合わされることにより、前記プレートの前記接着面と前記蓋部材との間に前記接着剤を毛細管現象で浸透させることができる程度の隙間を生じさせるスペーサ突起が形成されていることを特徴としている。
【0020】
請求項9の発明は、請求項6〜8のいずれかの発明に係るプレートの接着部構造において、前記スペーサ突起が、前記凹部に近い部位から遠い部位に向かうにしたがって、密から粗の形成密度で形成されていることを特徴としている。
【0021】
請求項10の発明は、請求項6〜9のいずれかの発明に係るプレートの接着部構造において、前記プレートの前記接着面と前記蓋部材の少なくとも一方には、前記隙間の寸法よりも小さな突出高さの凸部が相手部材に当接しないように形成されたことを特徴としている。
【0022】
請求項11の発明は、請求項1〜5のいずれかの発明に係るプレートの接着部構造において、前記プレートと前記蓋部材との間には、前記プレートの前記接着面と前記蓋部材との間に前記接着剤を毛細管現象で浸透させることができる程度の隙間を生じさせるスペーサが配置されていることを特徴としている。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳述する。尚、以下の各実施の形態は、キャピラリ電気泳動チップとして使用されるプレートを例示して説明する。
【0024】
[第1の実施の形態]
図1〜図4は、本発明の第1の実施の形態に係るプレート1の接着部構造を示すものである。ここで、図1は、プレート1の平面図であり、このプレート1に接着される蓋部材2側の構成を二点鎖線で示している。また、図2は、蓋部材2の平面図であり、図3は、図1のA1−A1線に沿って切断して示す断面図である。また、図4は、図3の一部拡大断面図である。
【0025】
これらの図に示すプレート1及び蓋部材2は、例えば、ポリカーボネート(PC),ポリメタクリル酸メチル(PMMA),紫外線硬化樹脂等で形成されており、同一の材料で形成されるのが好ましい。このように、プレート1と蓋部材2を同一の材料で形成することにより、プレート1と蓋部材2の表面電荷を同一にできるため、電気泳動の際の試料に対する電気浸透流を均一にすることができ、試料の流れを一定にできる。また、プレート1と蓋部材2を同一の材料で形成することにより、接着剤のプレート1及び蓋部材2に対するふるまいが同一になり、毛細管現象による接着剤の動きが円滑化する。
【0026】
プレート1は、プレート本体1aのほぼ中央部に細長い直線状の微細溝(凹部)3が形成されている。この微細溝3は、断面形状がほぼ正方形(一辺の長さが50〜100μmの正方形)であり、全長が数センチメートルの長さである。そして、この微細溝3の周囲には所定幅の接着面4が形成され、この接着面4の外側の周囲には接着面4よりも凹んだ接着逃げ部5が形成されている。この接着逃げ部5は、微細溝3の溝底面とほぼ同様の高さ位置まで凹んでおり、単に非接着面となるだけでなく、接着剤の溜まり部としてのダム機能をも有している。
【0027】
蓋部材2は、プレート1の平面形状とほぼ同様の大きさに形成されたプレート部材であり、接着剤注入孔6が微細溝3の一端部側の接着逃げ部5上に開口するように微細溝3を中心とした対象位置に一対形成されると共に、接着剤注入孔6が微細溝3の他端部側の接着逃げ部5上に開口するように微細溝3を中心とした対象位置に一対形成されている。この蓋部材2に形成される接着剤注入孔6は、接着面4から僅かに離間した位置に開口している。また、蓋部材2には、プレート1の微細溝3の両端部に対応する位置にそれぞれ開口する貫通孔7が形成されている。
【0028】
このようなプレート1と蓋部材2は、例えば、図1のプレート1の第1側面8aに図2の蓋部材2の第1側面8bを重ね、図1のプレートの第2側面10aに図2の蓋部材2の第2側面10bを重ねて、この重ね合わせた状態がずれないように図示しない把持手段で保持され、次いで接着剤注入孔6から接着剤が注入される。この接着剤は、後述する毛細管(毛管)現象の利用に適するように、粘度が小さいものがよい。また、接着剤の硬化に時間を要すると、接着面4に流入された接着剤が動いてしまう虞があるので、接着時間の短い接着剤が好ましい。例えば、スリーボンド社のUV硬化形接着剤3042(商品名)などが好適である。尚、プレート1の第1側面8a及び第2側面10aと、蓋部材2の第1側面8b及び第2側面10bは、プレート1と蓋部材2を重ね合わせて、これら両者(1,2)を固定する際の基準面となる。そして、第1側面8a,8bと第2側面10a,10bとが略直交するようになっている。
【0029】
接着剤注入孔6から注入された接着剤は、図4(a)に拡大して示すように、蓋部材2の下面11,接着逃げ部5の表面12,及び接着逃げ部5の側面13とで形成される空間14内に溜まり、プレート1の接着面4と蓋部材2の下面11との微小隙間15にまで達すると、毛細管現象によりプレート1の接着面4と蓋部材2の下面11との間の微小隙間15に急速に浸透する。この際、接着剤は、図4(b)に示すように、プレート1の接着面4と蓋部材2の下面11との間の微小隙間15に毛細管現象で浸透するようになっているため、プレート1と蓋部材2との隙間が急激に大きくなる微細溝3内には毛細管現象によって流入するようなことがなく、且つ微細溝3の側壁3aを上方に延長した部分まで接着剤が浸透する。尚、プレート1及び蓋部材2を射出成形により形成した場合には、プレート1及び蓋部材2の表面に射出成形金型の面性状が転写されることになり、プレート1の接着面4と蓋部材2との間に数ミクロンの微小隙間15ができ、この微小隙間15によって毛細管現象が生じるものと考えられている。
【0030】
このようにして、プレート1に蓋部材2が接着されることにより、キャピラリ電気泳動チップ(マイクロチップ)19が形成される。そして、このキャピラリ電気泳動チップ19は、蓋部材2の一方の貫通孔7から微細溝3内に電気泳動用緩衝液や分子ふるい用ポリマ等の分離用媒体を充填し、蓋部材2の他方の貫通孔7から微細溝3の一端に試料を導入した後、微細溝3の両端に高電圧を印加して、試料を微細溝3内で移動させ、その電荷や分子量の差などにより特定物質を分離し、これをUV吸収や蛍光などにより検出するために使用される。
【0031】
以上のように、本実施の形態によれば、プレート1に蓋部材2を接着固定する際に、接着剤が微細溝3内に流入するようなことがなく、微細溝3の断面形状が微細溝3内に流入した接着剤によって変形させられたり、また、微細溝3が流入した接着剤で塞がれるようなことがない。したがって、本実施の形態において、蓋部材2が所定位置に接着されたプレート1をキャピラリ電気泳動チップとして使用する場合、微細溝3内を電気泳動する試料の動きが接着剤によって妨げられるというような不具合を発生するようなことがない。
【0032】
しかも、本実施の形態によれば、プレート1の接着面4と蓋部材2との間に接着剤を毛細管現象で確実に浸透させ、プレート1と蓋部材2を確実に接着することができる。
【0033】
また、本実施の形態によれば、プレート1と蓋部材2との隙間が急激に大きくなる微細溝3内には毛細管現象によって接着剤が流入するようなことがなく、且つ微細溝3の側壁3aを上方に延長した部分まで接着剤が浸透するため、試料の流路の断面形状を設定どおりに均一に確保でき(試料の流路断面積のばらつきを防止でき)、試料の流れが安定化し、分析精度が向上する。
【0034】
さらに、本実施の形態によれば、接着面4の外側に接着逃げ部5が形成されているため、必要最小限の接着剤でプレート1に蓋部材2を接着することができ、接着剤の使用量を節約することができる。
【0035】
(第1の実施の形態の第1変形例)
図5〜図6は、第1の実施の形態の第1変形例に係るプレート1の接着部構造を示す図である。
【0036】
これらの図に示す本変形例は、接着剤注入孔6の位置が前記第1の実施の形態と相違しているが、他の構成が前記第1の実施の形態と同様である。すなわち、本変形例は、接着剤注入孔6がプレート1の接着面4と接着逃げ部5とに跨って開口している。
【0037】
このような構成の本変形例によれば、接着剤注入孔6から接着剤を滴下した場合、プレート1の接着面4と蓋部材2との微小隙間15に毛細管現象で浸透する接着剤を除き、他の余分な接着剤が接着剤注入孔6から接着逃げ部5側に流出する。その結果、接着剤注入孔6に必要量以上の接着剤が注入されたとしても、接着剤が注入圧で微細溝3内に押し込まれるようなことがない。したがって、本変形例は、上述の第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0038】
(第1の実施の形態の第2変形例)
図7〜図8は、第1の実施の形態の第2変形例に係るプレート1の接着部構造を示す図である。
【0039】
これらの図に示す本変形例は、微細溝3の両端部に開口する蓋部材2の貫通孔7が接着剤注入孔としても使用されるようになっている。この本変形例の場合は、接着剤を貫通孔7から滴下する際に、滴下する位置を微細溝3とは反対側の接着面4上であって、貫通孔7の壁面に沿う位置(図7の斜線部分16)を目標にすることが好ましい。このような位置に接着剤を滴下すれば、滴下した接着剤が接着面4と蓋部材2との微小隙間15から毛細管現象で浸透し、接着剤が微細溝3内に流入するのを防止することが可能になる。但し、本変形例の場合は、余分な接着剤を接着逃げ部5に逃がすことができないので、滴下する接着剤量を正確にコントロールする必要がある。
【0040】
(第1の実施の形態の第3変形例)
図9〜図10は、第1の実施の形態の第3変形例に係るプレート1の接着部構造を示す図である。
【0041】
これらの図に示すように、本変形例は、貫通孔7とは別に、プレート1の接着面4に開口する接着剤注入孔6を蓋部材2に形成し、この接着剤注入孔6から接着剤を滴下するようにしてもよい。この場合も接着剤注入孔6から滴下された接着剤は、接着面4と蓋部材2との間の微小隙間15に毛細管現象で浸透する。
【0042】
[第2の実施の形態]
図11〜図14は、本発明の第2の実施の形態に係るプレート21の接着部構造を示す図である。ここで、図11は、プレート21の平面図であり、このプレート21に接着される蓋部材22側の構成を二点鎖線で示している。また、図12は蓋部材22の平面図であり、図13は、図11のE1−E1線に沿って切断して示す断面図である。また、図14は、図13の一部拡大断面図である。尚、本実施の形態において、プレート21及び蓋部材22は、上述の第1の実施の形態と同様に、PC,PMMA等の材料で形成されている。
【0043】
これらの図に示す本実施の形態において、プレート21は、プレート本体21aに細長い微細溝(凹部)23が直線状に形成され、この微細溝23の両端部に円形の試料受け穴(凹部)24がそれぞれ形成されており、この試料受け穴24と微細溝23とが連通するようになっている(図11参照)。また、プレート21は、微細溝23及び試料受け穴24を所定の間隔をあけて取り囲むように接着逃げ部としての仕切溝25が形成され、この仕切溝25と微細溝23及び試料受け穴24との間に所定幅の接着面26が形成されている。そして、仕切溝25の外周側には、接着面26とほぼ同一の面高さの突き合わせ面(表面)27が形成されている。尚、本実施の形態において、微細溝23は、図13及び図14(b)に示すように、断面形状が正方形となるように形成されており、一辺の長さが0.3mmの大きさに形成されている。また、仕切溝は、図13及び図14(a)に示すように、断面形状が正方形となるように形成されており、一辺の長さが1mmの大きさに形成されている。
【0044】
蓋部材22は、プレート21の平面形状とほぼ同様の大きさに形成されたプレート部材であり、微細溝23の両端部側にそれぞれ接着剤注入孔28が一対づつ形成されている。この接着剤注入孔28は、プレート21の接着面26の外側に位置し、且つ一部が仕切溝25上に開口するようになっている。そして、微細溝23の一端部側の微細溝注入孔28及び他端部側の微細溝注入孔28は、微細溝23を中心とした対象位置に、それぞれ一対形成されている。また、この蓋部材22には、プレート21の試料受け穴24,24に対応する位置に貫通孔30,30が形成されている。
【0045】
このような構成の本実施の形態によれば、上述の第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、本実施の形態において、プレート21と蓋部材22は、例えば、図11,図12中の第1側面31a,31bと図11,図12中の第2側面32a,32bを基準面として重ね合わせられ、この重ね合わせた状態がずれないように図示しない把持手段で保持され、次いで接着剤注入孔28から接着剤が注入される。この接着剤は、後述する毛細管(毛管)現象の利用に適するように、粘度が小さいものがよい。また、接着剤の硬化に時間を要すると、接着面26に流入された接着剤が動いてしまう虞があるので、接着時間の短い接着剤が好ましい。例えば、スリーボンド社のUV硬化形接着剤3042(商品名)などが好適である。接着剤注入孔28から注入された接着剤は、図14(a)に拡大して示すように、仕切溝25内に溜まり、プレート21の接着面26と蓋部材22の下面33との微小隙間34にまで達すると、毛細管現象によりプレート21の接着面26と蓋部材22の下面33との間の微小隙間34に急速に浸透する。この際、接着剤は、図14(b)に示すように、プレート21の接着面26と蓋部材22の下面33との間の微小隙間34に毛細管現象で浸透するようになっているため、プレート21と蓋部材22との隙間が急激に大きくなる微細溝23内には毛細管現象によって流入するようなことがなく、且つ微細溝23の側壁23aを上方に延長した部分まで接着剤が浸透する。尚、プレート21及び蓋部材22を射出成形により形成した場合には、プレート21及び蓋部材22の表面に射出成形金型の面性状が転写されることになり、プレート21の接着面26と蓋部材22との間に数ミクロンの微小隙間34ができ、この微小隙間34によって毛細管現象が生じるものと考えられている。
【0046】
このようにして、プレート21に蓋部材22が接着されることにより、キャピラリ電気泳動チップ(マイクロチップ)29が形成される。そして、このキャピラリ電気泳動チップ29は、蓋部材22の一方の貫通孔30から微細溝23内に電気泳動用緩衝液や分子ふるい用ポリマ等の分離用媒体を充填し、蓋部材22の他方の貫通孔30から微細溝23の一端に試料を導入した後、微細溝23の両端に高電圧を印加して、試料を微細溝23内で移動させ、その電荷や分子量の差などにより特定物質を分離し、これをUV吸収や蛍光などにより検出するために使用される。
【0047】
以上のように、本実施の形態によれば、プレート21に蓋部材22を接着固定する際に、接着剤が微細溝23内に流入するようなことがなく、微細溝23の断面形状が微細溝23内に流入した接着剤によって変形させられたり、また、微細溝23が流入した接着剤で塞がれるようなことがない。したがって、本実施の形態において、蓋部材22が所定位置に接着されたプレート21をキャピラリ電気泳動チップとして使用する場合、微細溝23内を電気泳動する試料の動きが接着剤によって妨げられるというような不具合を発生するようなことがない。
【0048】
しかも、本実施の形態によれば、プレート21の接着面26と蓋部材22との間に接着剤を毛細管現象で確実に浸透させ、プレート21と蓋部材22を確実に接着することができる。
【0049】
また、本実施の形態によれば、プレート21と蓋部材22との隙間が急激に大きくなる微細溝23内には毛細管現象によって接着剤が流入するようなことがなく、且つ微細溝23の側壁23aを上方に延長した部分まで接着剤が浸透するため、試料の流路の断面形状を設定どおりに均一に確保でき(試料の流路断面積のばらつきを防止でき)、試料の流れが安定化し、分析精度が向上する。
【0050】
さらに、本実施の形態は、接着逃げ部となる仕切溝25が微細溝23の約3倍程度の大きさであるため、図1のように接着面4の外周側を全て接着逃げ部5とする実施態様に比較し、微細溝23を隣接して密に形成する場合に好都合である。
【0051】
(第2の実施の形態の第1変形例)
図15〜図16は、上述の第2の実施の形態の第1変形例に係るプレート21の接着部構造を示す図である。
【0052】
これらの図に示す本変形例は、接着剤注入孔28の位置のみが前記第1の実施の形態と相違しており、他の構成は前記第1の実施の形態と同様である。すなわち、本変形例は、接着剤注入孔28がプレート21の接着面26,仕切溝25及び突き合わせ面27に跨って開口するように形成されている。
【0053】
このような構成の本変形例によれば、接着剤注入孔28から接着剤を滴下した場合、接着面26上に滴下された接着剤がプレート21の接着面26と蓋部材22との微小隙間34に毛細管現象で浸透すると共に、その他の余分な接着剤が仕切溝25内に流出するか、又は、仕切溝25内に滴下された接着剤が仕切溝25内からプレート21の接着面26と蓋部材22との微小隙間34に毛細管現象で浸透する(図14(a)参照)。したがって、本変形例は、上述の第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0054】
(第2の実施の形態の第2変形例)
図17〜図18は、第2の実施の形態の第2変形例に係るプレート21の接着部構造を示す図である。
【0055】
これらの図に示す本変形例は、微細溝23の両端部に開口する蓋部材22の貫通孔35が接着剤注入孔としても使用されるようになっている。この本変形例の場合は、接着剤を貫通孔35から滴下する際に、滴下する位置を微細溝23とは反対側の接着面26上であって、貫通孔35の壁面に沿う位置(図18の斜線部分36)を目標にすることが好ましい。このような位置に接着剤を滴下すれば、滴下した接着剤が接着面26と蓋部材22との微小隙間34から毛細管現象で浸透し、接着剤が微細溝23内に流入するのを防止することが可能になる(図14(a)参照)。尚、蓋部材22の貫通孔35は、試料受け穴24の周囲に充分な接着面26が確保できるような大きさに形成されており、試料受け穴24よりも大径に形成されている。
【0056】
[第3の実施の形態]
図19〜図20は、本発明の第3の実施の形態に係るプレート21を示す図である。これらの図において、プレート21は、予め仕切溝25内に充分な量の接着剤37を注入しておき、表面張力によって接着剤37を仕切溝25から出っ張らせておき、蓋部材22をプレート21の上面38に重ね合わせると、接着剤37がプレート21の接着面26と蓋部材22との間に生じる微小隙間34に毛細管現象によって瞬時に浸透する。また、本実施の形態は、上述の各実施の形態と同様に、蓋部材22と微細溝23との間では毛細管現象が生じないため、接着剤37が微細溝23内に流入するようなことがない。
【0057】
[第4の実施の形態]
また、本実施の形態は、図21〜図22上述の第3の実施の形態の変形例に係るプレート21の接着部構造である。本実施の形態において、プレート21の仕切溝25内には、後述する突起40が仕切溝25内に挿入された際に、接着剤が表面張力で接着面26より盛り上がるような量に接着剤37が充填されている。一方、蓋部材22は、プレート21の上面38に重ね合わせると、突起40がプレート21の微細溝23に精度良く嵌合し、プレート21に対する蓋部材22の位置決め手段となり、蓋部材22とプレート21の位置決めが行われる。
【0058】
このような構成によれば、突起40によって仕切溝25から押し出された接着剤37が蓋部材22と接着面26との間に生じる微小隙間34に押し込まれると、蓋部材22とプレート21との間に生じる微小隙間34内を接着剤37が毛細管現象で浸透する。このような構成によれば、上述の第3の実施の形態と同様の作用効果が期待できる。
【0059】
[第5の実施の形態]
図23〜図26は、本発明の第5の実施の形態に係るプレート1の接着部構造を示すものである。これらの図に示すように、本実施の形態は、プレート1の接着面4及びこの接着面4に対向する蓋部材2の面(下面)11の少なくとも一方に、スペーサ突起51が適当な間隔で複数形成されている。
【0060】
例えば、図23は、プレート1の接着面4に適当な間隔で複数のスペーサ突起51が形成された状態を示すものである。そして、図25は、このスペーサ突起51が形成されたプレート1に蓋部材2を重ねて接着した状態を示すものである。この図25に示すように、プレート1の接着面4に形成されたスペーサ突起51を対向する蓋部材2に当接させることにより、プレート1の接着面4と蓋部材2との間に、接着剤37が毛細管現象で浸透できる程度の隙間を生じさせることができるようになっている。すなわち、プレート1の接着面4に形成されるスペーサ突起51の突起高さは、プレート1の接着面4と蓋部材2との間に、接着剤37が毛細管現象で浸透できる程度の隙間を生じさせることができる寸法になっている。
【0061】
図26は、プレート1の接着面4に形成されたスペーサ突起51の形状を示すものである。この図に示すように、スペーサ突起51は、図26(b)に示す円柱状又は図26(c)に示す略半球状に形成されることが製作上において好ましいが、これに限定されるものではなく、円錐台形状やその他の形状の突起でもよい。
【0062】
図24は、蓋部材2のうちのプレート1に接着される下面11に、図26で示したようなスペーサ突起51が適当な間隔で複数形成される態様を示すものである。また、図23に示すように、プレート1の接着面4にスペーサ突起51を形成し、且つ、蓋部材2のうちの接着される下面11にスペーサ突起51を形成して、それら各スペーサ突起51を対向する相手部材に突き当てて、プレート1の接着面4と蓋部材2との間に、接着剤37が毛細管現象で浸透できる程度の隙間を生じさせるようにしてもよい。
【0063】
(第1変形例)
図27及び図28は、本実施の形態の第1変形例を示すものである。先ず本変形例は、図27に示すように、プレート1の接着逃げ部5にスペーサ突起52が適当な間隔で接着面4を取り囲むように複数形成される態様を示すものである。このプレート1の接着逃げ部5は、既に第1の実施の形態において説明したように、接着面4の周囲に凹むように形成された部分である。したがって、このプレート1の接着逃げ部5に形成されるスペーサ突起52は、接着逃げ部5が接着面4よりも凹んだ寸法を加えた突起高さに形成される。その結果、プレート4の接着逃げ部5に形成されたスペーサ突起52を蓋部材2に突き当てるように、プレート1上に蓋部材2を重ねれば、プレート1の接着面4と蓋部材2との間に、接着剤が毛細管現象で浸透できる程度の隙間が生じる。
【0064】
また、図28に示すように、蓋部材2のうちのプレート1の接着逃げ部5に対応する面11に、スペーサ突起52が適当な間隔で複数形成される態様にしてもよい。この場合のスペーサ突起52の突起高さは、図27の場合と同様に、接着逃げ部5が接着面4よりも凹んだ寸法を加えた突起高さに形成される。その結果、蓋部材2に形成されたスペーサ突起52をプレート1の接着逃げ部5に突き当てるように、蓋部材2とプレート1とを重ねれば、プレート1の接着面4と蓋部材2との間に、接着剤が毛細管現象で浸透できる程度の隙間が生じる。尚、スペーサ突起52は、プレート1の接着逃げ部5及び蓋部材2の両方に形成するようにしてもよい。
【0065】
(第2変形例)
図29及び図30は、本実施の形態の第2変形例を示すものであり、第2の実施の形態に係るプレート21の接着面26と蓋部材22の少なくとも一方にスペーサ突起51を形成する態様を示すものである。
【0066】
先ず、図29は、スペーサ突起51がプレート21の接着面26に適当な間隔で複数形成される態様を示すものである。そして、このプレート21のスペーサ突起51が蓋部材22に突き当たるように、プレート21と蓋部材22を重ね合わせることにより、プレート21の接着面26と蓋部材22との間に、接着剤が毛細管現象で浸透できる程度の隙間が生じるようになっている。
【0067】
また、図30は、蓋部材22のうちのプレート21の接着面26に対向する下面33に、スペーサ突起51が適当な間隔で複数形成される態様を示すものである。そして、この蓋部材22のスペーサ突起51がプレート21の接着面26に突き当たるように、プレート21と蓋部材22を重ね合わせることにより、プレート21の接着面26と蓋部材22との間に、接着剤が毛細管現象で浸透できる程度の隙間が生じる。尚、スペーサ突起51は、プレート21の接着面26及び蓋部材22の両方に形成するようにしてもよい。
【0068】
(第3変形例)
図31及び図32は、本実施の形態の第3変形例を示すものであり、第2の実施の形態に係るプレート21の突き合わせ面27と蓋部材22の少なくとも一方にスペーサ突起53を形成する態様を示すものである。
【0069】
先ず、図31は、スペーサ突起53がプレート21の突き合わせ面27に適当な間隔で複数形成される態様を示すものである。そして、このプレート21のスペーサ突起53が蓋部材22に突き当たるように、プレート21と蓋部材22を重ね合わせることにより、プレート21の接着面26と蓋部材22との間に、接着剤が毛細管現象で浸透できる程度の隙間が生じるようになっている。
【0070】
また、図32は、蓋部材22のうちのプレート21の突き合わせ面27に対向する下面33に、スペーサ突起53が適当な間隔で複数形成される態様を示すものである。そして、この蓋部材22のスペーサ突起53がプレート21の突き合わせ面27に突き当たるように、プレート21と蓋部材22を重ね合わせることにより、プレート21の接着面26と蓋部材22との間に、接着剤が毛細管現象で浸透できる程度の隙間が生じる。尚、スペーサ突起53は、プレート21の突き合わせ面27及びこれに対向する蓋部材22の下面33の両面に形成するようにしてもよい。
【0071】
(本実施の形態の効果)
このような構成の本実施の形態によれば、プレート1,21と蓋部材2,22の少なくとも一方に形成されたスペーサ突起51,52,53により、プレート1,21の接着面4,26と蓋部材2,22との間に、接着剤が毛細管現象で浸透できる程度の隙間を形成することができるため、仮にプレート1,21や蓋部材2,22に反り等の変形が生じていても、その反り等の変形を矯正するようにプレート2,21と蓋部材2,22とを押さえ合わせて、接着剤をプレート1,21の接着面4,26と蓋部材2,22との隙間に毛細管現象で浸透させることができ、プレート1,21と蓋部材2,22とを確実に接着固定することができる。
【0072】
[第6の実施の形態]
図33は、本発明の第6の実施の形態を示すものであり、第1の実施の形態のプレート1と蓋部材2との間にスペーサ56を介在させる態様を示すものである。
【0073】
この図33において、プレート1の接着逃げ部5には、接着面4を囲むようなスペーサ収容溝57が形成され、このスペーサ収容溝57には、球状,円柱等の柱状又は円筒等の筒状等のスペーサ56が複数収容されるようになっている。そして、スペーサ56が収容されたプレート1上に蓋部材(図示せず)を重ね合わせることにより、プレート1の接着面4と蓋部材との間に、接着剤が毛細管現象で浸透できる程度の隙間が形成される。
【0074】
また、図34は、本実施の形態の変形例を示すものであり、第2の実施の形態のプレート21と蓋部材22との間にスペーサ56を介在させる態様を示すものである。
【0075】
この図34において、プレート21の突き当て面27には、接着面26を囲むようなスペーサ収容溝58が形成され、このスペーサ収容溝58には、球状,円柱等の柱状又は円筒等の筒状等のスペーサ56が複数収容されるようになっている。そして、スペーサ56が収容されたプレート21上に蓋部材(図示せず)を重ね合わせることにより、プレート21の接着面26と蓋部材との間に、接着剤が毛細管現象で浸透できる程度の隙間が形成される。
【0076】
以上のような本実施の形態は、プレート1,21と蓋部材(2,22)との間に収容されたスペーサ56により、プレート1,21の接着面4,26と蓋部材(2,22)との間に、接着剤が毛細管現象で浸透できる程度の隙間を形成することができるため、仮にプレート1,21や蓋部材(2,22)に反り等の変形が生じていても、その反り等の変形を矯正するようにプレート1,21と蓋部材(2,22)とを押さえ合わせて、接着剤をプレート1,21の接着面4,26と蓋部材(2,22)との隙間に毛細管現象で浸透させることができ、プレート1,21と蓋部材(2,22)とを確実に接着固定することができる。
【0077】
また、本実施の形態によれば、スペーサ56をスペーサ収容溝57,58内に収容するようになっている。これにより、スペーサ56が間違って微細溝3,23内に侵入するようなことがなく、スペーサ56によって微細溝3,23が詰まるような不都合を生じることがない。また、スペーサ56がプレート1,21から脱落する虞もない。
【0078】
尚、図33及び図34は、プレート1,21側にスペーサ収容溝57,58を形成する態様を例示したが、蓋部材(2,22)側、又は、プレート1,21及び蓋部材(2,22)の両側にスペーサ収容溝57,58を形成し、そのスペーサ収容溝57,58内に複数のスペーサ56を収容することにより、プレート1,21と蓋部材(2,22)との間にスペーサ56を介在させ、プレート1,21の接着面4,26と蓋部材(2,22)との間に、接着剤が毛細管現象で浸透できる程度の隙間を形成するようにしてもよい。また、スペーサ収容溝57,58を接着面4,26に形成し、そのスペーサ収容溝57,58内に複数のスペーサ56を収容するようにしてもよい。また、図34において、仕切溝25内にスペーサ56を収容するようにして、スペーサ収容溝58を省略するようにしてもよい。すなわち、図11に示す仕切溝25内にスペーサ56を収容するようにしてもよい。
【0079】
また、本実施の形態において、スペーサ収容溝57,58は微細溝3,23を全周にわたり囲む態様を例示したが、本発明は、これに限られるものでなく、所定長さを有する溝を所定の間隔で複数設けるようにしてもよい。また、スペーサ56の外形にあわせた凹部をスペーサ56の配置位置にあわせて形成するものであってもよい。
【0080】
[第7の実施の形態]
図35は、本発明の第7の実施の形態を示すものであり、プレート1と蓋部材2の接着強度を高めるための態様を例示するものである。
【0081】
先ず、図35(a)は、プレート1の接着面4とこれに対向する蓋部材2の下面11に、それぞれスペーサ突起51の突起高さよりも低い凸部60a,60bを形成し、プレート1のスペーサ突起51と凸部60a又はプレート1の凸部60aと凸部60aの間に、蓋部材2の凸部60bを挿入するように、プレート1と蓋部材2とを重ね合わせる態様を示している。このような態様によれば、スペーサ突起51と凸部60b、又は凸部60aと凸部60bの間に接着剤が浸透する隙間が形成され、上述の第5の実施の形態におけるプレートの接着部構造のものに比べて、プレート1及び蓋部材2と接着剤とが接する表面積が大きくなることにより、接着面積が増加し、プレート1と蓋部材2との接着強度が大きくなる。
【0082】
次に、図35(b)は、プレート1のスペーサ突起51a,51a間に蓋部材2のスペーサ突起51bを挿入するように、プレート1と蓋部材2とを重ね合わせる態様を示している。この図に示す態様によれば、各スペーサ突起51a,51b間に接着剤が毛細管現象で浸透する程度の隙間が形成され、接着面積が増加し、プレート1と蓋部材2との接着強度が大きくなる。
【0083】
次に、図35(c)は、プレート1の図示しないスペーサ突起間に形成した凸部61aと蓋部材2に形成した凸部61bとを突き合わせるように、プレート1と蓋部材2とを重ね合わせる態様を示している。この図の態様によれば、隣り合う凸部61a,61b間には、接着剤が毛細管現象で浸透できる程度の隙間が形成され、接着面積が増大し、プレート1と蓋部材2との接着強度が大きくなる。尚、この図に示す凸部61a,61bをスペーサ突起としてもよい。
【0084】
次に、図35(d)は、プレート1のスペーサ突起51,51間に、スペーサ突起51の高さの半分以下の高さ寸法の凸部62aを形成し、この凸部62a,とほぼ同様の凸部62bを蓋部材2にも形成する態様を示している。この図の態様によれば、スペーサ突起51,51間の隙間に凸部62a,62bが位置しているため、接着面積が増大し、プレート1と蓋部材2との接着強度が大きくなる。
【0085】
[第8の実施の形態]
図36は、本発明の第8の実施の形態を示すものであり、スペーサ突起51の形成例を示すものである。
【0086】
先ず、図36(a)は、接着面4に隣接する複数のスペーサ突起51の間隔をほぼ均等に形成する態様を例示している。また、図36(b)は、接着面4に形成するスペーサ突起51の間隔が、微細溝3から離れるに従って密から粗に変化する態様を例示している。この図36(b)の構成によれば、微細溝3から離れた位置では接着剤の流動抵抗が小さく、微細溝3の近傍では接着剤の流動抵抗が大きくなる。その結果、図36(b)の構成によれば、接着剤が微細溝3に流れ込むのをより一層効果的に防止できる。
【0087】
ここで、図36(a),(b)に示すように、微細溝3に最も近いスペーサ突起51は、微細溝3から所定間隔だけ離れた位置に形成されるようになっている。このように構成することにより、プレートの接着面と蓋部材との間を毛細管現象で浸透してきた接着剤が、微細溝3側に出っ張るような不具合を未然に防止することができる。
【0088】
[その他の実施の形態]
尚、微細溝3,23の断面形状は、上記各実施の形態の形状に限られず、半円形,U字形,略三角形やその他の形状でもよい。
【0089】
また、仕切溝25の断面形状は、上記実施の形態の形状に限られず、半円形,U字形,略三角形やその他の形状でも良い。
【0090】
また、第4の実施の形態において、突起40は、断面形状が矩形形状のものを例示したが、これに限られず、断面三角形状や半円形状等の適宜形状にすることができる。加えて、突起40は、仕切溝25の全周に嵌合するように形成してもよく、また、仕切溝25に所定の間隔をおいて部分的に嵌合するようにしてもよい。
【0091】
また、本発明における上記各実施の形態の微細溝3,23の平面形状は、直線形状(図1及び図11参照)に限定されず、十字形状,Y字形状,湾曲形状やその他の複雑な形状の微細溝を有するプレートの接着部構造に適用することができる。また、本発明は、溝幅や溝深さが一定の微細溝を有するプレートの接着部構造に適用されることはもちろんであるが、溝幅や溝深さが可変である微細溝を有するプレートの接着部構造に適用することができる。
【0092】
また、上述の各実施の形態は、説明の便宜上、生化学の分野の試験に供せられるキャピラリ電気泳動チップ19,29を例示して説明したが、本発明は、これに限られず、合成化学,物理化学,分析化学等の生化学以外の化学的な試験に供される凹部が形成されたプレートの接着部に広く適用することができる。
【0093】
【発明の効果】
以上のように本発明は、接着剤をプレートと蓋部材との微小隙間に毛細管現象で浸透させるようになっているため、接着剤が微細溝内に流入するような不具合を生じることがなく、簡単にプレートに蓋部材を接着固定することができる。
【0094】
また、本発明は、接着面の外側に接着逃げ部が形成されているため、接着剤の使用量を節約することができる。
【0095】
また、本発明は、プレートと蓋部材の少なくとも一方に形成されたスペーサ突起により、プレートの接着面と蓋部材との間に、接着剤が毛細管現象で浸透できる程度の隙間を形成することができるため、仮にプレートや蓋部材に反り等の変形が生じていても、その反り等の変形を矯正するようにプレートと蓋部材とを押さえ合わせて、接着剤をプレートの接着面と蓋部材との隙間に毛細管現象で浸透させることができ、プレートと蓋部材とを確実に接着固定することができる。
【0096】
また、本発明は、プレートと蓋部材の間にスペーサを介在させることにより、プレートの接着面と蓋部材との間に、接着剤が毛細管現象で浸透できる程度の隙間を形成することができるため、仮にプレートや蓋部材に反り等の変形が生じていても、その反り等の変形を矯正するようにプレートと蓋部材とを押さえ合わせて、接着剤をプレートの接着面と蓋部材との隙間に毛細管現象で浸透させることができ、プレートと蓋部材とを確実に接着固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るプレートの平面図であり、このプレートに接着される蓋部材側の構成を二点鎖線で示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る蓋部材の平面図である。
【図3】図1のA1−A1線に沿って切断して示す断面図である。
【図4】図4(a)は図3の一部を拡大して示す断面図であり、図4(b)は図1のA2−A2線に沿って切断して示す断面図(接着状態を模式的に示す図)である。
【図5】第1の実施の形態の第1変形例に係るプレートの平面図であり、このプレートに接着される蓋部材側の構成を二点鎖線で示す図である。
【図6】図5のB−B線に沿って切断して示す断面図である。
【図7】第1の実施の形態の第2変形例に係るプレートの平面図であり、このプレートに接着される蓋部材側の構成を二点鎖線で示す図である。
【図8】図7のC−C線に沿って切断して示す断面図である。
【図9】第1の実施の形態の第3変形例に係るプレートの平面図であり、このプレートに接着される蓋部材側の構成を二点鎖線で示す図である。
【図10】図9のD−D線に沿って切断して示す断面図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係るプレートの平面図であり、このプレートに接着される蓋部材側の構成を二点鎖線で示す図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態に係る蓋部材の平面図である。
【図13】図11のE1−E1線に沿って切断して示す断面図である。
【図14】図14(a)は図13の一部を拡大して示す断面図であり、図14(b)は図11のE2−E2線に沿って切断して示す断面図(接着状態を模式的に示す図)である。
【図15】第2の実施の形態の第1変形例に係るプレートの平面図であり、このプレートに接着される蓋部材側の構成を二点鎖線で示す図である。
【図16】図15のF−F線に沿って切断して示す断面図である。
【図17】第2の実施の形態の第2変形例に係るプレートの平面図であり、このプレートに接着される蓋部材側の構成を二点鎖線で示す図である。
【図18】図17のプレートの表面に蓋部材を接着する状態を示す平面図である。
【図19】本発明の第3の実施の形態に係るプレートの接着部構造を示す図であり、プレートと蓋部材との接着前段階の状態を示す接着部拡大断面図である。
【図20】本発明の第3の実施の形態に係るプレートの接着部構造を示す図であり、プレートと蓋部材との接着段階の状態を示す接着部拡大断面図である。
【図21】本発明の第4の実施の形態に係るプレートの接着部構造を示す図であり、プレートと蓋部材との接着前段階の状態を示す接着部拡大断面図である。
【図22】本発明の第4の実施の形態に係るプレートの接着部構造を示す図であり、プレートと蓋部材との接着段階の状態を示す接着部拡大断面図である。
【図23】本発明の第5の実施の形態に係るプレートの平面図である。
【図24】本発明の第5の実施の形態に係る蓋部材の下面図である。
【図25】本発明の第5の実施の形態に係るプレートの接着部構造を示す断面図であり、微細溝に対して直角に断面した図である。
【図26】本発明の第5の実施の形態に係るスペーサ突起を示す図である。図26(a)はスペーサ突起と微細溝との関係を示す平面図である。また、図26(b)はスペーサ突起の一例を示す斜視図であり、図26(c)はスペーサ突起の他の一例を示す斜視図である。
【図27】本発明の第5の実施の形態に係るプレートの第1変形例を示す平面図である。
【図28】本発明の第5の実施の形態に係る蓋部材の第1変形例を示す下面図である。
【図29】本発明の第5の実施の形態に係るプレートの第2変形例を示す平面図である。
【図30】本発明の第5の実施の形態に係る蓋部材の第2変形例を示す下面図である。
【図31】本発明の第5の実施の形態に係るプレートの第3変形例を示す平面図である。
【図32】本発明の第5の実施の形態に係る蓋部材の第3変形例を示す下面図である。
【図33】本発明の第6の実施の形態に係るプレートの平面図である。
【図34】本発明の第6の実施の形態に係るプレートの変形例を示す平面図である。
【図35】本発明の第7の実施の形態に係るプレートの接着部構造を示す断面図である。図35(a)は第1例を示す断面図、図35(b)は第2例を示す断面図、図35(c)は第3例を示す断面図、図35(d)は第4例を示す断面図である。
【図36】本発明の第8の実施の形態に係るプレートの一部拡大平面図である。図36(a)がスペーサ突起をほぼ均等の間隔で形成する態様を示す図であり、図36(b)がスペーサ突起の形成密度を変化させる態様を示す図である。
【符号の説明】
1,21……プレート、1a,21a……プレート本体、2,22……蓋部材、3,23……微細溝(凹部)、4,26……接着面、5……接着逃げ部、6,28……接着剤注入孔、12……表面、25……仕切溝(接着逃げ部)、27……突き合わせ面(表面)、40……突起、51,52,53……スペーサ突起、60a,60b,61a,61b,62a,62b……凸部

Claims (11)

  1. プレートの表面に凹部が形成され、この凹部が形成されたプレートの表面に蓋部材が接着されるプレートの接着部構造であって、
    前記プレートは、前記凹部を取り囲むように接着面が形成されると共に、この接着面の周囲に接着面よりも凹んだ接着逃げ部が形成され、
    前記接着面と前記蓋部材との間に毛細管現象で接着剤を浸透させることを特徴とするプレートの接着部構造。
  2. プレートの表面に凹部が形成され、この凹部が形成されたプレートの表面に蓋部材が接着されるプレートの接着部構造であって、
    前記プレートは、前記凹部を取り囲むように接着面が形成されると共に、この接着面の周囲に接着面よりも凹んだ接着逃げ部が形成され、
    前記蓋部材は、前記プレートの接着逃げ部のうちの前記接着面近傍位置に開口する接着剤注入孔が形成され、
    前記接着面と前記蓋部材との間に毛細管現象で接着剤を浸透させることを特徴とするプレートの接着部構造。
  3. プレートの表面に凹部が形成され、この凹部が形成されたプレートの表面に蓋部材が接着されるプレートの接着部構造であって、
    前記プレートは、前記凹部を取り囲むように接着面が形成されると共に、この接着面の周囲に接着面よりも凹んだ接着逃げ部が形成され、
    前記蓋部材は、前記プレートの接着逃げ部に少なくとも一部が開口する接着剤注入孔が形成され、
    前記接着面と前記蓋部材との間に毛細管現象で接着剤を浸透させることを特徴とするプレートの接着部構造。
  4. プレートの表面に凹部が形成され、この凹部が形成されたプレートの表面に蓋部材が接着されるプレートの接着部構造であって、
    前記プレートは、前記凹部を取り囲むように接着面が形成されると共に、この接着面の周囲に接着面よりも凹んだ接着逃げ部が形成され、
    前記蓋部材は、前記プレートの凹部の端部側で且つ前記接着面に対応する位置に開口する接着剤注入孔が形成され、
    前記接着面と前記蓋部材との間に毛細管現象で接着剤を浸透させることを特徴とするプレートの接着部構造。
  5. 前記蓋部材は、前記プレートの接着逃げ部に少なくとも部分的に係合する突起が形成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載されたプレートの接着部構造。
  6. 前記プレートの前記接着面と前記蓋部材の少なくとも一方には、接着される相手部材に突き当てられることにより、前記プレートの前記接着面と前記蓋部材との間に前記接着剤を毛細管現象で浸透させることができる程度の隙間を生じさせるスペーサ突起が形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のプレートの接着部構造。
  7. 前記プレートの前記接着逃げ部と前記蓋部材の少なくとも一方には、接着される相手部材に突き当てられることにより、前記プレートの前記接着面と前記蓋部材との間に前記接着剤を毛細管現象で浸透させることができる程度の隙間を生じさせるスペーサ突起が形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のプレートの接着部構造。
  8. 前記プレートの前記接着面と前記蓋部材には、互いに突き合わされることにより、前記プレートの前記接着面と前記蓋部材との間に前記接着剤を毛細管現象で浸透させることができる程度の隙間を生じさせるスペーサ突起が形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のプレートの接着部構造。
  9. 前記スペーサ突起が、前記凹部に近い部位から遠い部位に向かうにしたがって、密から粗の形成密度で形成されていることを特徴としている請求項6〜8のいずれか1項に記載のプレートの接着部構造。
  10. 前記プレートの前記接着面と前記蓋部材の少なくとも一方には、前記隙間の寸法よりも小さな突出高さの凸部が相手部材に当接しないように形成されたことを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載のプレートの接着部構造。
  11. 前記プレートと前記蓋部材との間には、前記プレートの前記接着面と前記蓋部材との間に前記接着剤を毛細管現象で浸透させることができる程度の隙間を生じさせるスペーサが配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のプレートの接着部構造。
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