JP2004106204A - インクジェット記録方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】インク層の乾燥性が良好で耐擦性に優れた顔料インクジェット画像を安定して出力できるインクジェット記録方法を提供すること。
【解決手段】本発明のインクジェット記録方法は、水性プレコート液をインクジェット方式により吐出させる前処理工程と、1又は複数の水性顔料インクを用いてインクジェット記録を行う記録工程とを備え、該水性プレコート液中の親水性高沸点有機溶媒の含有量を5〜30重量%とすると共に、該水性顔料インク中の親水性高沸点有機溶媒の含有量を5〜35重量%とし、且つ該水性プレコート液及び該水性顔料インクの単位面積当たりの吐出量を、上記両工程を通じての上記親水性高沸点有機溶媒の単位面積当たりの総吐出量が、該水性プレコート液の単位面積当たりの吐出量と該水性顔料インクの単位面積当たりの吐出量との合計の2〜15%となるように調整する。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明のインクジェット記録方法は、水性プレコート液をインクジェット方式により吐出させる前処理工程と、1又は複数の水性顔料インクを用いてインクジェット記録を行う記録工程とを備え、該水性プレコート液中の親水性高沸点有機溶媒の含有量を5〜30重量%とすると共に、該水性顔料インク中の親水性高沸点有機溶媒の含有量を5〜35重量%とし、且つ該水性プレコート液及び該水性顔料インクの単位面積当たりの吐出量を、上記両工程を通じての上記親水性高沸点有機溶媒の単位面積当たりの総吐出量が、該水性プレコート液の単位面積当たりの吐出量と該水性顔料インクの単位面積当たりの吐出量との合計の2〜15%となるように調整する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性顔料インクと顔料インク凝集能を有する水性プレコート液とを用い、高画質で耐擦性にも優れた画像を安定して出力し得るインクジェット記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方法は、記録ヘッドのノズルからインクの液滴を吐出させるインクジェット方式により、紙等の記録媒体にインクを付着させて画像を形成する印刷方式である。インクジェット記録用のインクとしては、染料や顔料等の色材を水を主溶媒とする水性媒体中に溶解又は分散させた水性インクが一般的であり、染料インクと顔料インクに大別される。これまで、色再現性や吐出安定性等に優れる染料インクが多用されてきたが、インクジェット記録技術のデジタル写真サービスや商業印刷等への用途拡大により、記録画像の長期保存性が重要視されるようになってきており、染料インクに比して耐水性や耐光性等に優れる顔料インクが使用されるようになってきている。
【0003】
顔料インクを用いたインクジェット記録に関しては、従来から、インクジェット記録に先立って、記録ヘッドより金属塩(反応剤)を含有する水性の反応液を吐出させて記録媒体に付着させることにより、発色性の向上、カラーブリード(カラー画像において、異色の境界部分で色が滲んだり不均一に混ざり合ったりする現象)や印刷ムラ(記録媒体表面の填料やサイズ剤等の不均一な分布に起因すると考えられる画像濃度の不均一性)の防止などを図る方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この方法は、記録媒体上で顔料インクと接触した反応剤が、インク成分の分散状態を破壊して凝集物を形成し、色材(顔料)が記録媒体中に浸透するのを抑制すると共に、未反応の反応液成分が、記録媒体上で皮膜を形成して色材の記録媒体への定着を促進することにより、高い色濃度で、カラーブリードや印刷ムラのない高品位のインクジェット画像を実現するものと考えられている。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−120956号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1に記載されている反応液のような記録媒体の前処理液、いわゆるプレコート液には、記録ヘッドのノズルからの安定した吐出(吐出安定性、目詰まり防止性)を確保するために、インクジェット記録用インクと同様に、通常、保湿剤あるいは湿潤剤としてグリセリンなどの高沸点有機溶媒が添加されている。この種の高沸点有機溶媒は常圧ではほとんど揮発せず、印刷終了後もしばらく記録媒体上に残留するため、高沸点有機溶媒の吐出量が多いと、記録媒体上にインクが付着することにより形成されるインク層の乾燥性が低下し、その結果、インク層の記録媒体に対する密着力が弱まって、記録画像の耐擦性が低下することになる。
【0006】
インクに加えてこれと同じような液組成のプレコート液を使用する上記インクジェット記録方法では、プレコート液を使用しない通常のインクジェット記録方法に比して、単位面積当たりに吐出される高沸点有機溶媒量が多いため、上記のようなインク層の乾燥性の低下に起因する耐擦性の低下が特に問題となっていた。インク及びプレコート液中の高沸点有機溶媒の含有量を少なくしてインク層の乾燥性を高めれば、この問題を解決できるが、実用上十分な耐擦性が得られるレベルまで高沸点有機溶媒の含有量を少なくすると、インク及びプレコート液の吐出安定性が低下してノズルの目詰まりを起こしてしまう。また、インクやプレコート液の吐出量を抑えることでインク層の乾燥性を高める方法も考えられるが、実用上十分な耐擦性が得られるレベルまで吐出量を減らすと、画質が低下して良好な画像を得ることが出来なくなる。
【0007】
また、印刷終了後(プレコート液及びインクを吐出させた後)、赤外線式や熱風式などの各種乾燥装置を用いて記録媒体を乾燥し、残留する高沸点有機溶媒を強制的に揮発させる方法も考えられるが、装置及び工程が複雑になってコストがかかるという問題の他、乾燥条件が過酷になると記録媒体や画像の変色を招くおそれがあるという問題もあり、しかも、高沸点有機溶媒の種類によっては、このような強制乾燥処理でも完全に除去できない場合もあるため、必ずしも好ましい方法とは言えない。
【0008】
本発明は、プレコート液及び顔料インクを用いたインクジェット記録方法における上記問題点を解決すべくなされたものであり、インク層の乾燥性が良好で耐擦性に優れたインクジェット画像を出力できるインクジェット記録方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のインクジェット記録方法は、記録媒体の被記録面に、顔料インク凝集能を有する金属塩及び親水性高沸点有機溶媒を含有する水性プレコート液をインクジェット方式により吐出させる前処理工程と、該前処理工程で該水性プレコート液が付着した該被記録面の該金属塩による顔料インク凝集反応が有効となる領域内に、親水性高沸点有機溶媒を含有する1又は複数の水性顔料インクをインクジェット方式により吐出させて記録を行う記録工程とを備えたインクジェット記録方法であって、上記水性プレコート液中の上記親水性高沸点有機溶媒の含有量を5〜30重量%とすると共に、上記水性顔料インク中の上記親水性高沸点有機溶媒の含有量を5〜35重量%とし、且つ上記水性プレコート液及び上記水性顔料インクの単位面積当たりの吐出量を、上記両工程を通じての上記親水性高沸点有機溶媒の単位面積当たりの総吐出量が、該水性プレコート液の単位面積当たりの吐出量と該水性顔料インクの単位面積当たりの吐出量との合計の2〜15%となるように調整することを特徴とする。
【0010】
上記本発明のように、水性プレコート液及び水性顔料インク中の高沸点有機溶媒の含有量を特定範囲に規定し、且つ前処理工程及び記録工程を通じて単位面積当たりに吐出される高沸点有機溶媒の総量を特定範囲に抑えるように、各液の単位面積当たりの吐出量を調整することにより、良好な吐出安定性及び画質を確保しつつ、記録画像の耐擦性を実用上十分なレベルまで改善することが可能になる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、先ず、本発明のインクジェット記録方法で使用する水性プレコート液、水性顔料インク及び記録媒体について説明する。
【0012】
〈水性プレコート液〉
水性プレコート液は、インクジェット記録(記録工程)に先立つ前処理工程において、記録媒体(被記録面)の前処理に用いられるもので、金属塩、高沸点有機溶媒及び水を必須成分として含有する。
【0013】
上記金属塩は、顔料インク凝集能を有している。この「顔料インク凝集能」には、いわゆる自己分散型顔料を使用した水性顔料インクに対して、該自己分散型顔料自体に直接作用してこれを凝集させる性質も含まれるし、また、自己分散型ではない通常の顔料を分散剤の作用により系中に分散させている水性顔料インクに対して、該分散剤を凝集させる結果として該顔料を凝集させる性質も含まれる。要は、水性顔料インクの種類や組成に拘わらず、これを速やかに凝集させることができれば、上記顔料インク凝集能を有していると言える。
【0014】
金属塩としては、金属イオンと、これに結合する陰イオンとから構成され、水に可溶なものが好ましく用いられる。
【0015】
上記金属イオンとしては、例えば、K+、Na+、Li+、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn2+、Ba2+、Fe2+、Zr2+、Al3+、Fe3+、Cr3+、Zr3+、Zr4+等が挙げられる。
また、上記陰イオンとしては、Cl−、NO3 −、I−、Br−、ClO3 −、CH3COO−、F−、SO4 2−、SO3 2−等が挙げられる。
【0016】
上記カルボン酸イオン(陰イオン)としては、炭素数1〜6の飽和脂肪族モノカルボン酸及び炭素数6〜10の炭素環式モノカルボン酸からなる群から選ばれる1種又は2種以上のカルボン酸から誘導されるものが好ましい。
炭素数1〜6の飽和脂肪族モノカルボン酸の好ましい例としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ビバル酸、ヘキサン酸等が挙げられる。特に蟻酸、酢酸が好ましい。この炭素数1〜6の飽和脂肪族モノカルボン酸の飽和脂肪族炭化水素基上の水素原子は、水酸基で置換されていてもよく、そのようなカルボン酸の好ましい例としては、乳酸が挙げられる。
また、炭素数6〜10の炭素環式モノカルボン酸の好ましい例としては、安息香酸、ナフトエ酸等が挙げられ、より好ましくは安息香酸である。
【0017】
金属塩として特に好ましいものとしては、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、臭化マグネシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムが挙げられる。これらは、単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。
【0018】
金属塩の含有量は、使用する金属塩の種類などを考慮して、所定の顔料インク凝集効果が得られるように適宜調整すればよく、特に限定されないが、水性プレコート液中、好ましくは1〜20重量%、更に好ましくは2〜8重量%である。
【0019】
一方、親水性高沸点有機溶媒は、吐出安定性(目詰まり防止性)の確保のため保湿剤あるいは湿潤剤として水性プレコート液に添加されるもので、常圧ではなかなか揮発しない低揮発性の有機溶媒である。ここで親水性高沸点有機溶媒とは、常圧で沸点が120℃以上の親水性有機溶媒をいう。
【0020】
本発明で用いられる親水性高沸点有機溶媒の具体例としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、ジエチルカルビトール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、グリセリン、トリエタノールアミン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキサイド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0021】
親水性高沸点有機溶媒は単独で使用しても、2種以上を併用することもできる。2種以上の親水性高沸点有機溶媒を併用する場合、それらを混合した状態で液状であれば本発明で使用することができる。即ち、少なくとも1種類の有機化合物が液状であり、もう1種類の有機化合物が室温20℃で固体であった場合でも混合された状態で液状である場合、更には各々が室温20℃で単独では固体であっても混合した状態で室温20℃で液状になるものも含まれる。
【0022】
親水性高沸点有機溶媒の含有量は、水性プレコート液中、5〜30重量%、好ましくは5〜20重量%である。親水性高沸点有機溶媒の含有量が5重量%未満では、吐出安定性が低下してノズルの目詰まりを起こすおそれがあり、30重量%超では、後述するように単位面積当たりの水性プレコート液の吐出量を抑えても、記録画像の画質及び耐擦性の両立を図ることが出来なくなる。
【0023】
また、水性プレコート液に含有される水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水又は超純水を用いることが好ましい。特に、紫外線照射又は過酸化水素添加等により滅菌処理された水は、カビやバクテリアの発生を防止して長期保存を可能とする点で好ましい。
【0024】
水性プレコート液には、記録媒体上での乾燥性を高める観点から、必要に応じ、親水性低沸点有機溶媒(常圧で沸点が120℃未満且つ室温20℃での飽和蒸気圧が10mmHg以上の親水性有機溶媒)を含有させることができる。親水性低沸点有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、iso−ブタノール、n−ペンタノール等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0025】
また、水性プレコート液には、必要に応じ、界面活性剤を含有させることもできる。界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼルスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド等の非イオン性界面活性剤;サーフィノール82、104、440、465、485(以上、エア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ社製)、オルフィンSTG、オルフィンE1010(以上、日信化学社製)等のアセチレングリコール系界面活性剤;カチオン性界面活性剤;両イオン性界面活性剤等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。界面活性剤の含有量は10重量%以下とすることが好ましい。
【0026】
さらに、水性プレコート液には、必要に応じ、紫外線吸収剤、光安定剤、消光剤、酸化防止剤、耐水化剤、防黴剤、防腐剤、増粘剤、流動性改良剤、pH調整剤、消泡剤、抑泡剤、レベリング剤、帯電防止剤等を適宜含有させることができる。
【0027】
水性プレコート液の組成については上述した通りであるが、物性値については、吐出安定性等の必要なインクジェット信頼性を確保する観点から、液温20℃における粘度2〜5mPa・s、表面張力20〜38mN/m、pH6.5〜10の範囲にあることが好ましい。各物性値の調整は、上述した各成分の含有量の調整等により行うことができる。
【0028】
〈水性顔料インク〉
本発明で用いられる水性顔料インクは、顔料系色材、親水性高沸点有機溶媒及び水を必須成分として含有する水性インクであり、インクジェット記録用の顔料インクとして一般的なものである。水としては、上記水性プレコート液に含有されるものと同様のものを用いることができる。
【0029】
顔料系色材としては、この種の水性顔料インクに色材(着色剤)として含有可能なものであれば良く、無機顔料や有機顔料を使用することができる。無機顔料としては、例えば、酸化チタン及び酸化鉄の他、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。また、有機顔料としては、例えば、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等を含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料等)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック等を使用することができる。
【0030】
上記顔料系色材をインク中で分散させる形態としては、上記顔料を分散剤を用いて分散させる形態でも良く、分散剤無し若しくはごく少量で水性媒体中に分散及び/又は溶解が可能ないわゆる自己分散型顔料を用いた自己分散型の形態でも良い。
【0031】
上記分散剤としては、例えば、高級脂肪酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩等のアニオン界面活性剤、脂肪族アミン塩、ホスフォニウム塩等のカチオン界面活性剤、ポリオキシエチレン化合物の脂肪酸エステル等のノニオン界面活性剤等の水溶性界面活性剤や、ゼラチン、カゼイン等のタンパク質、アラビアゴム等の天然ゴム、サボニン等のグルコキシド、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、リグニンスルホン酸塩、セラック等の天然高分子、ポリアクリル酸塩、スチレン−アクリル酸共重合物塩、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合物塩、スチレン−マレイン酸共重合物塩、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合物塩、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリリン酸等のアニオン性高分子、ポリビニルアルコ−ル、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコ−ル等のノニオン性高分子等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0032】
上記分散剤の重量平均分子量は、100〜50000の範囲にあることが好ましく、200〜40000の範囲にあることが更に好ましい。重量平均分子量が100未満では印字ムラが著しく、50000超ではインク粘度の増大が著しく吐出安定性に劣るおそれがある。
【0033】
上記分散剤の含有量は、水性顔料インク中、好ましくは0.01〜5重量%、更に好ましくは0.3〜2重量%である。含有量が0.01重量%未満では顔料の分散安定性に効果がなく、5重量%超ではインク粘度が増大して吐出安定性に劣るおそれがある。
【0034】
一方、上記自己分散型顔料(表面改質顔料などとも呼ばれる)としては、例えば、少なくとも1つの親水性基がイオン性基として上記の無機あるいは有機顔料の表面に直接、若しくは他の原子団(アルキル基、アルキルエーテル基、アリール基等)を介して結合しているものが用いられる。該親水性基としては、例えば、カルボキシル基、カルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン基、燐酸基、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。このような自己分散型顔料を用いることによって分散剤の添加量を削減でき、あるいは添加が不要となる。
【0035】
顔料系色材(自己分散型顔料を含む)の含有量は、発色性と吐出安定性とのバランスの観点から、水性顔料インク中、好ましくは0.5〜30重量%、更に好ましくは1〜10重量%である。
【0036】
また、水性顔料インク中に含有される親水性高沸点有機溶媒としては、上記水性プレコート液に含有されるものと同様のものを用いることができる。親水性高沸点有機溶媒の含有量は、水性顔料インク中、5〜35重量%、好ましくは5〜15重量%である。親水性高沸点有機溶媒の含有量が5重量%未満では、吐出安定性が低下してノズルの目詰まりを起こすおそれがあり、35重量%超では、後述するように単位面積当たりの水性顔料インクの吐出量を抑えても、記録画像の画質及び耐擦性の両立を図ることが出来なくなる。
【0037】
水性顔料インクには、保湿や浸透調整等の目的で、上記水性プレコート液と同様に、親水性低沸点有機溶媒、界面活性剤、pH調整剤、防黴剤、防腐剤等を必要に応じ適宜含有させることができる。また、水性顔料インクの各種物性値(液温20℃における粘度、表面張力、pHは、上記水性プレコート液と同様の範囲にあることが好ましい。
【0038】
カラー画像を形成する場合は、複数の水性顔料インクを用いる。インクの組み合わせとしては、イエロー、マゼンタ及びシアンの減法混色の3原色に、必要に応じ、ブラック、オレンジ、グリーン等のインクやライトシアン、ライトマゼンタ、フォトブラック(ミドルブラック、ライトブラック等)等のいわゆる淡インク等の1種以上を組み合わせた3色〜8色が一般的である。本発明では、特に制限無く任意にインクを組み合わせて用いることができる。
【0039】
〈記録媒体〉
本発明で用いられる記録媒体としては、特に限定されるものではなく、上質紙、再生紙、コピー用紙、ボンド紙、インクジェット記録用紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、樹脂被覆紙(レジンコート紙)、バライタ紙、板紙、和紙、不織布;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルム等が使用できる。
【0040】
上記インクジェット記録用紙は、一般に、紙や樹脂フィルム等の基材(上記記録媒体のうち、インクジェット記録用紙以外のものは、該基材として使用可能)上に、多孔性無機粒子を主成分とするインク受容層を設けた構成となっている。多孔性無機粒子としては、多孔性非晶質シリカ、多孔性炭酸マグネシウム、多孔性アルミナ等が好ましく用いられ、その含有量は、インク受容層中、固形分換算で40〜90重量%程度である。インク受容層には、通常、必要な塗膜強度の確保のため、ポリビニルアルコール等のバインダー樹脂も含有される。インクジェット記録用紙は、面質の違いにより、マット調、半光沢調、光沢調、高光沢調などに分類されるが、本発明では何れのインクジェット記録用紙でも好適に使用できる。
【0041】
本発明のインクジェット記録方法は、上述の水性プレコート液、水性顔料インク及び記録媒体を用いて実施されるもので、該記録媒体の被記録面に該水性プレコート液をインクジェット方式により吐出させる前処理工程と、該前処理工程で該水性プレコート液が付着した該被記録面の上記金属塩による顔料インク凝集反応が有効となる領域内に、1又は複数の上記水性顔料インクをインクジェット方式により吐出させて記録を行う記録工程とを備えている。
【0042】
そして本発明では、上記水性プレコート液及び上記水性顔料インクの単位面積当たりの吐出量を、上記両工程(前処理工程及び記録工程)を通じての上記親水性高沸点有機溶媒の単位面積当たりの総吐出量Aが、該水性プレコート液の単位面積当たりの吐出量と該水性顔料インクの単位面積当たりの吐出量との合計吐出量Bの2〜15%となるように調整する。上述したように、上記水性プレコート液及び1又は複数の上記水性顔料インクは、主として記録画像の耐擦性(乾燥性)と吐出安定性とのバランスを考慮して、親水性高沸点有機溶媒の含有量を上記特定範囲に規定したものではあるが、これらの液を無制限に記録媒体に吐出させると、記録媒体上の残留高沸点有機溶媒量が過多となって所望の耐擦性の改善効果が得られないことになる。一方、良好な耐擦性を得るべく上記各液の単位面積当たりの吐出量を抑制し過ぎると、ドット間の隙間に起因する白筋や印刷ムラなどが発生するおそれがあり、良好な画質が得られないことになる。そこで、本発明では、単位面積当たりの上記合計吐出量Bに対する親水性高沸点有機溶媒の上記総吐出量Aの割合Rに着目し、この割合が上記特定範囲になるように上記各液の単位面積当たりの吐出量を調整することにより、吐出安定性、耐擦性(乾燥性)及び画質の全てを実用上十分なレベルに到達させている。
【0043】
上記総吐出量A、即ち、上記両工程(前処理工程及び記録工程)を通じての上記親水性高沸点有機溶媒の単位面積当たりの総吐出量としては、0.01〜7.2mg/cm2が好ましく、0.05〜1.8mg/cm2が更に好ましい。
【0044】
また、上記金属塩による顔料インク凝集効果をより有効に発揮させて、発色性に優れカラーブリードや印刷ムラのない高画質・高品位の画像の出力を可能とする観点から、記録媒体の被記録面における水性プレコート液の付着量は、固形分換算で0.5〜3g/m2が好ましい。
【0045】
以下に、水性プレコート液(以下、プレ液という)及びイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の3色の水性顔料インクを使用した場合を例にとり、本発明のインクジェット記録方法について具体的に説明する。尚、プレ液及びY,M,Cインクの親水性高沸点有機溶媒の含有量は、それぞれ、10重量%、11重量%、20重量%、18重量%とする。
【0046】
また、上記インクジェット記録方法の実施に使用するインクジェット記録装置は、プリンタドライバに従って下記の印字条件(1)〜(3)で印字できるものであるとする。
(1)プレ液をベタ打ちし(前処理工程)、このベタ打ち部分にY,M,Cインクをそれぞれ単独でベタ印字する(記録工程)場合:プレ液の吐出量は0.9mg/cm2、Yインクの吐出量は1.0mg/cm2、M及びCインクの吐出量はそれぞれ1.2mg/cm2となるように印字。
(2)プレ液をベタ打ちし(前処理工程)、このベタ打ち部分に2色のインクを重ねて印字する(記録工程)場合:プレ液の吐出量は0.9mg/cm2とし、インクは単独の印字条件の60%(2次色duty120%)になるように印字。
(3)プレ液をベタ打ちし(前処理工程)、このベタ打ち部分に3色のインクを重ねて印字する(記録工程)場合:プレ液の吐出量は0.9mg/cm2とし、インクは単独の印字条件の50%(3次色duty150%)になるように印字。
以上の条件で単色ベタ、2色ベタ、3色ベタ印字したときの、前処理工程及び記録工程を通じての単位面積(1cm2)当たりの上記親水性高沸点有機溶媒の総吐出量Aを求めると以下のようになる。
【0047】
〈親水性高沸点有機溶媒の総吐出量A〉
(1)単色ベタ:
イ)Yの場合;0.9×(10/100)+1.0×(11/100)=0.2mg
ロ)Mの場合;0.9×(10/100)+1.2×(20/100)=0.33mg
ハ)Cの場合;0.9×(10/100)+1.2×(18/100)=0.306mg
(2)2色ベタ:
ニ)Y+Mの場合;0.9×(10/100)+1.0×(60/100)×(11/100)+1.2×(60/100)×(20/100)=0.3mg
ホ)M+Cの場合;0.9×(10/100)+1.2×(60/100)×(20/100)+1.2×(60/100)×(18/100)=0.3636mg
ヘ)C+Yの場合;0.9×(10/100)+1.2×(60/100)×(18/100)+1.0×(60/100)×(11/100)=0.2856mg
(3)3色ベタ:
ト)0.9×(10/100)+1.0×(50/100)×(11/100)+1.2×(50/100)×(20/100)+1.2×(50/100)×(18/100)=0.373mg
【0048】
また、上記(1)〜(3)におけるプレ液の単位面積当たりの吐出量と、C,M,Y各インクの単位面積当たりの吐出量との合計(合計吐出量B)は、それぞれ、以下のようになる。
【0049】
〈合計吐出量B〉
(1)単色ベタ:
イ)Yの場合;0.9+1.0=1.9mg/cm2
ロ)Mの場合;0.9+1.2=2.1mg/cm2
ハ)Cの場合;0.9+1.2=2.1mg/cm2
(2)2色ベタ:
ニ)Y+Mの場合;0.9+1.0×(60/100)+1.2×(60/100)=2.22mg
ホ)M+Cの場合;0.9+1.2×(60/100)+1.2×(60/100)=2.34mg
ヘ)C+Yの場合;0.9+1.2×(60/100)+1.0×(60/100)=2.22mg
(3)3色ベタ:
ト)0.9+1.0×(50/100)+1.2×(50/100)+1.2×(50/100)=2.6mg
【0050】
従って、合計吐出量Bに対する親水性高沸点有機溶媒の総吐出量Aの割合R〔=(A/B)×100〕は、それぞれ、次のようになる。
〈割合R〉
(1)単色ベタ:
イ)Yの場合;(0.2/1.9)×100=10.5%
ロ)Mの場合;(0.33/2.1)×100=15.7%
ハ)Cの場合;(0.306/2.1)×100=14.6%
(2)2色ベタ:
ニ)Y+Mの場合;(0.3/2.22)×100=13.5%
ホ)M+Cの場合;(0.3636/2.34)×100=15.5%
ヘ)C+Yの場合;(0.2856/2.22)×100=12.9%
(3)3色ベタ:
ト)(0.373/2.6)×100=14.3%
【0051】
以上の結果から、上記(1)〜(3)の各印字条件において、割合Rが本発明で規定する範囲(2〜15%)外となるのは、上記ロ)単色ベタのMインクを使用した場合(R=15.7%)と、上記ホ)2色ベタのMインクとCインクを使用した場合(R=15.5%)であることが判る。よって、上記インクジェット記録装置を用いて実際にインクジェット記録を行う場合、上記ロ)及びホ)の印字では、割合Rが15%となるようにプレ液及びインクの単位面積当たりの吐出量を調整する。具体的には例えば、Cインクの単位面積当たりの吐出量を1.2mg/cm2から0.9mg/cm2に変更し、且つ2次色dutyを60%から50%に変更することにより、割合Rは、それぞれ、ロ)で15%、ホ)で14.9%となる。このような吐出量の調整は、プリンタドライバを適宜設定することにより行うことができる。
【0052】
以上のような構成の本発明のインクジェット記録方法は、例えば、次のような記録システムを使用して実施することができる。
【0053】
図1は、本実施形態のインクジェット記録方法の実施に使用する記録システムの概略構成を示すブロック図である。この記録システムは、画像入力装置1と、ホストコンピュータ2と、インクジェットプリンタ3を備えている。また、ホストコンピュータ2は、キーボードやマウス等からなる入力部21と、ディスプレイ22を備えている。
【0054】
画像入力装置1は、取り込んだカラーのRGB画像データをパーソナルコンピュータ等に送信できる装置であり、例えば、スキャナ、デジタルカメラ、デジタルビデオ等が挙げられる。
【0055】
ホストコンピュータ2の内部には、図示しないCPU、RAM、ROM等が備えられており、所定のオペレーティングシステムの下で、アプリケーションプログラム23が動作している。このオペレーティングシステムには、ビデオドライバ24やプリンタドライバ25が組み込まれており、アプリケーションプログラム23からこれらのドライバを介して、画像データがインクジェットプリンタ3に出力されることになる。画像のレタッチなどを行うアプリケーションプログラム23は、画像入力装置1から画像を読み取り、これに対して所定の処理を行いつつビデオドライバ24を介してディスプレイ22に画像を表示する。
【0056】
プリンタドライバ25は、アプリケーションプログラム23が発行する印刷指令に従い、受信したRGB画像データを、二値化処理やγ補正などの種々の処理により、各液の吐出量が最適化された印字データに変換するもので、RGB画像データをドット単位のドットデータに変換するラスタライザ251と、このドットデータに対してインクジェットプリンタ3が使用するインク色及び発色の特性に応じた色補正を行う1次補正モジュール252と、色補正後のドットデータに対して所定の吐出制限規定に従って補正を行う2次補正モジュール253とを備えている。
【0057】
1次補正モジュール252は、図示しない色補正テーブルを参照してドットデータを補正し、プレコート液及び各色インクの吐出量が最適化されたドットデータを作成する。2次補正モジュール253は、上述したように、単位面積当たりの各液の合計吐出量Bに対する親水性高沸点有機溶媒の総吐出量Aの割合Rが上記特定範囲になるように各液の単位面積当たりの吐出量を調整するもので、1次補正モジュール252から転送されたドットデータを必要に応じて補正し、最終的な印字データを作成する。
【0058】
2次補正モジュール253を経て作成された印字データは、用紙の種別を示す用紙種別データその他の各種指示情報と共に、印刷情報として入出力部26を介してインクジェットプリンタ3へ転送される。
【0059】
ホストコンピュータ2から転送された印字データ等の印刷情報は、インクジェットプリンタ3の受信バッファ31に入力される。また、印刷情報が正しく転送されているかを確認するデータや、プリンタの動作状態を知らせるデータがインクジェットプリンタ3からホストコンピュータ2に返される。受信バッファ31の印刷情報は、CPU32の管理のもとで、RAM33に一時的に記憶される。メカコントロール部34は、CPU32からの指令により、紙送りモータ36やキャリッジモータ40(図2参照)等を駆動する。記録ヘッドコントロール部35は、CPU32からの指令により記録ヘッド50(図2参照)を制御するもので、ヘッド駆動波形を制御して各液の液滴の大きさを調整することにより、各液の単位面積当たりの吐出量を制御する。また、記録ヘッドコントロール部35は、記録ヘッド50の状態を示す各種情報等を検知し、これをCPU32に伝える。
【0060】
図2は、インクジェットプリンタ3の要部の斜視図である。インクジェットプリンタ3は、紙送りモータ36で駆動されるプラテンローラ37により記録媒体Mを矢標A方向に搬送し、キャリッジ38上に搭載された記録ヘッド50が、記録媒体Mの被記録面に、インクタンク60から供給される水性プレコート液及び各色水性顔料インクをそれぞれ吐出した後、これを搬出するようになしてある。キャリッジ38は、キャリッジベルト39を介してキャリッジモータ40に連結されており、ガイドレール41上を摺動して、矢標A方向と直交する矢標B1又はB2方向に往復走査するようになっている。
【0061】
図3は、記録ヘッド50のノズル開口面50aの概略正面図である。記録ヘッド50は、複数のインクジェットヘッドを主走査方向に並列に配置して一体化させたマルチヘッドである。図3中、51及び56は水性プレコート液を吐出するノズル列であり、52,53,54,55は、それぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の水性顔料インクを吐出するノズル列である。このように、主走査方向の両端のインクジェットヘッド(ノズル列)を水性プレコート液用とすることで、双方向(B1及びB2)印字が可能となり印字高速性が上がる。
【0062】
尚、インクジェットプリンタ3は、印字データに対応してインクを吐出させるオンデマンド方式のインクジェットプリンタであるが、ノズルから一定時間間隔でインクを吐出し続け、吐出されたインク液滴を偏向させることにより画像を形成するコンティニュアス方式のものでも良い。また、記録ヘッド50の吐出制御方式は、ピエゾ素子を用いて電圧により制御する方式であるが、発熱抵抗素子を用いて熱エネルギーにより制御する方式でもよい。
【0063】
このような構成のインクジェットプリンタ3において、記録ヘッド50は、矢標B1方向に走査される場合は、記録媒体Mの被記録面に対し、先ず、ノズル列51より水性プレコート液を所定の吐出量で吐出させて前処理領域を形成していき(前処理工程)、続いて、該水性プレコート液が付着した該被記録面の上記金属塩による顔料インク凝集反応が有効となる領域(前処理領域)内に、受信した印字データに基づき、ノズル列52,53,54,55よりY、M、C、Kの各色水性顔料インクを所定の吐出量で順次吐出させてインクジェット記録を行う(記録工程)。矢標B1方向に走査される場合は、ノズル列56は使用しない。
【0064】
記録ヘッド50は、記録領域の矢標B1方向の終端に到達し、記録媒体Mが前処理領域の幅に略等しい送り量でプラテンローラ37により矢標A方向に搬送された後、矢標B2方向に走査される。この場合、先ず、ノズル列56より水性プレコート液を所定の吐出量で吐出させて前処理領域を形成していき(前処理工程)、続いて、該水性プレコート液が付着した該被記録面の上記金属塩による顔料インク凝集反応が有効となる領域(前処理領域)内に、受信した印字データに基づき、ノズル列55,54,53,52よりK、C、M、Yの各色水性顔料インクを所定の吐出量で順次吐出させてインクジェット記録を行う(記録工程)。矢標B2方向に走査される場合は、ノズル列51は使用しない。このような記録ヘッド50の双方向(B1及びB2方向)走査、及び紙送り動作が繰り返されることにより、目的とするインクジェット記録物が得られる。
【0065】
尚、本発明のインクジェット記録方法は、上記前処理工程と上記記録工程とを備え、上記水性プレコート液中の上記親水性高沸点有機溶媒の含有量を5〜30重量%とすると共に、上記水性顔料インク中の上記親水性高沸点有機溶媒の含有量を5〜35重量%とし、且つ上記水性プレコート液及び上記水性顔料インクの単位面積当たりの吐出量を、上記両工程を通じての上記親水性高沸点有機溶媒の単位面積当たりの総吐出量が、該水性プレコート液の単位面積当たりの吐出量と該水性顔料インクの単位面積当たりの吐出量との合計の2〜15%となるように調整するものであればよく、使用する水性顔料インクの種類や数、水性プレコート液や水性顔料インクの吐出パターン、インクの吐出順序等は、上記実施形態に制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、本発明の実施形態は、図1に示す如き記録システムあるいはインクジェットプリンタを用いるものに限定されるものではない。
【0066】
【実施例】
以下に、本発明の実施例及び本発明の効果を示す試験例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、斯かる実施例により何等制限されるものではない。
【0067】
尚、プレコート液1の高沸点有機溶媒の含有量は(18.0+2.0=)20重量%である。
【0068】
また、下記組成のYMCK4色の水性顔料インク(インクセット1)を、それぞれ常法に従い調製した。即ち、顔料系色材を分散剤成分と共に水中で分散させた後、他の成分を添加して攪拌混合し、一定以上の大きさの不溶成分を濾過してインクを調製した。
【0069】
尚、イエローインク1の高沸点有機溶媒の含有量は(9.0+2.0=)11重量%である。
【0070】
尚、マゼンタインク1の高沸点有機溶媒の含有量は(9.0+2.0=)11重量%である。
【0071】
尚、シアンインク1の高沸点有機溶媒の含有量は(9.0+2.0=)11重量%である。
【0072】
尚、ブラックインク1の高沸点有機溶媒の含有量は(9.0+2.0=)11重量%である。
【0073】
記録媒体(「OKトップコートN」王子製紙製)の被記録面の全面に対して、インクジェットプリンタ(「EM930C」セイコーエプソン製)のシアンインクと上記プレコート液1とを入れ替えたものを用いて、シアン100%となるベタパターンでプレコート液1を打ち込んだ(前処理工程)。
次いで、プレコート液1が打ち込まれた上記被記録面に対し、顔料インクジェットプリンタ(「MC2000」セイコーエプソン製)を用いて、上記インクセット1により、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の単色ベタ印刷;レッド(R、Y+M)、グリーン(G、C+Y)、ブルー(B、C+M)の2色ベタ印刷;コンポジットブラック(Comp.K、Y+M+C)の3色ベタ印刷をそれぞれ行い、8色のカラーパッチを印刷した(記録工程)。
以上のようにして得られたインクジェット記録物を、実施例1のサンプルとした。
【0074】
上記した実施例1における各液の吐出量及び高沸点有機溶媒量を下記〔表1〕に示す。また、この実施例1における「高沸点有機溶媒の総吐出量A」及び「合計吐出量B」を、それぞれ前述した計算方法と同様にして求め、これらの値から「割合R」を求めた。これらの値を下記〔表2〕に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
〔比較例1〕
実施例1において、上記〔表1〕及び〔表2〕に示す条件に代えて下記〔表3〕及び〔表4〕に示す条件でインクジェット記録を行った以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録物を作製し、これを比較例1のサンプルとした。
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
〔比較例2〕
実施例1において、上記プレコート液1及びインクセット1に代えて下記組成のプレコート液2及びYMCKインク2からなるインクセット2を用い、且つ下記〔表5〕及び〔表6〕に示す条件でインクジェット記録を行った以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録物を作製し、これを比較例2のサンプルとした。
【0081】
尚、プレコート液2の高沸点有機溶媒の含有量は(20.0+2.0=)22重量%である。
【0082】
尚、イエローインク2の高沸点有機溶媒の含有量は(12.0+5.0+1.0=)18重量%である。
【0083】
尚、マゼンタインク2の高沸点有機溶媒の含有量は(12.0+5.0+1.0=)18重量%である。
【0084】
尚、シアンインク2の高沸点有機溶媒の含有量は(12.0+5.0+1.0=)18重量%である。
【0085】
尚、ブラックインク2の高沸点有機溶媒の含有量は(12.0+5.0+1.0=)18重量%である。
【0086】
【表5】
【0087】
【表6】
【0088】
〔比較例3〕
実施例1において、上記プレコート液1及びインクセット1に代えて下記組成のプレコート液3及びYMCKインク3からなるインクセット3を用い、且つ下記〔表7〕及び〔表8〕に示す条件でインクジェット記録を行った以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録物を作製し、これを比較例3のサンプルとした。
【0089】
尚、プレコート液3の高沸点有機溶媒の含有量は4重量%である。
【0090】
尚、イエローインク3の高沸点有機溶媒の含有量は(2.0+2.0=)4重量%である。
【0091】
尚、マゼンタインク3の高沸点有機溶媒の含有量は(2.0+2.0=)4重量%である。
【0092】
尚、シアンインク3の高沸点有機溶媒の含有量は(2.0+2.0=)4重量%である。
【0093】
尚、ブラックインク3の高沸点有機溶媒の含有量は(2.0+2.0=)4重量%である。
【0094】
【表7】
【0095】
【表8】
【0096】
〔比較例4〕
実施例1において、上記プレコート液1に代えて下記組成のプレコート液4を用い、且つ下記〔表9〕及び〔表10〕に示す条件でインクジェット記録を行った以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録物を作製し、これを比較例4のサンプルとした。
【0097】
尚、プレコート液4の高沸点有機溶媒の含有量は(27.0+5.0=)32重量%である。
【0098】
【表9】
【0099】
【表10】
【0100】
〔性能評価〕
実施例1及び比較例1〜4の各サンプル(インクジェット記録物)について、発色性、カラーブリード及び耐擦性を下記の方法でそれぞれ評価した。これらの結果を下記〔表11〕に示す。
【0101】
(発色性の評価方法)
インクジェット記録物のY、M、C、K、R、G、B、Comp.Kの8色のカラーパッチについて、グレタグマクベス社製のスペクトロリーノSPM−50を用い、視野角2度、光源D50、フィルター無しの条件で反射光学濃度(OD値)を測定し、下記評価基準により評価した。
評価基準
A:上記8色のOD値の合計が15を超える。発色性良好。
B:4色のOD値の合計が15〜12。実用上問題なし。
C:4色のOD値の合計が12未満(平均でOD値3未満)。実用に堪えない。
【0102】
(カラーブリードの評価方法)
インクジェット記録物について、イエロー領域とブラック領域とが隣接する部分(画質低下が最も判別し易い領域)をそれぞれ目視により観察し、それらの色境界での不均一な色混じりの程度を下記評価基準により評価した。
評価基準
A:色混じりの無い、良好な画像が得られた。
B:色混じりが僅かに生じた。実用上問題なし。
C:色の境界がはっきりしない程、色混じりが起こった。実用に堪えない。
【0103】
(耐擦性の評価方法)
インクジェット記録物の画像面上に、消しゴム(幅20mm)を傾斜度60度で固定し、1kgの荷重をかけた状態で10往復擦った後の該画像面の状態を目視で観察し、下記評価基準により評価した。
評価基準
A:画像面にキズ、ハガレがない。耐擦性良好。
B:画像面にキズが入るが、実用上問題なし。
C:画像面にハガレが発生する。実用に堪えない。
【0104】
【表11】
【0105】
また、上記プレコート液1〜4及びインクセット1〜3について、(プレコート液1,インクセット1)、(プレコート液2,インクセット2)、(プレコート液3,インクセット3)、(プレコート液4,インクセット3)の4つの組み合わせで下記の方法により吐出試験を行い、吐出安定性を評価した。その結果を下記〔表12〕に示す。この結果から、(プレコート液3,インクセット3)の組み合わせは、ノズル抜けや飛行曲がりを起こす可能性が高いことが判る。
【0106】
(吐出安定性の評価方法)
インクジェットプリンタ(「MC2000」セイコーエプソン製)に、プレコート液及びインクセット(Y,M,C,Kインク)を、図3に示すようなノズル配置となるようにセットした。そして、このプリンタを用いて、YMCKの4色を用いたコンポジットパターン上にプレコート液を打ち込む印字パターンで、OKトップコートNを1000枚印字し、これらの印字面を目視で観察して、下記評価基準により評価した。
評価基準
A:プレコート液のノズル抜けや飛行曲がりの発生が認められた箇所が5箇所以内であり、目詰まりを起こした際にクリーニング動作3回以内で復帰した。吐出安定性に優れる。
B:プレコート液のノズル抜けや飛行曲がりの発生が認められた箇所が10箇所以内であり、目詰まりを起こした際にクリーニング動作5回以内で復帰した。実用上問題なし。
C:プレコート液のノズル抜けや飛行曲がりの発生が認められた箇所が10箇所を超えており、目詰まりを起こた際にクリーニング動作5回超で復帰した。実用に堪えない。
【0107】
【表12】
【0108】
【発明の効果】
本発明によれば、印刷ムラやカラーブリードを防止し、画像濃度が高く、耐擦性にも優れた高画質、高品位且つ高保存性の顔料インクジェット画像を、ノズルの目詰まり等を起こさずに安定して出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインクジェット記録方法の実施に使用する記録システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1の記録システムにおけるインクジェットプリンタの要部の斜視図である。
【図3】図2に示すインクジェットプリンタにおける記録ヘッドのノズル開口面の概略正面図である。
【符号の説明】
3 インクジェットプリンタ
36 紙送りモータ
37 プラテンローラ
38 キャリッジ
39 キャリッジベルト
40 キャリッジモータ
41 ガイドロール
50 記録ヘッド
50a ノズル開口面
51〜56 ノズル
60 インクタンク
M 記録媒体
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性顔料インクと顔料インク凝集能を有する水性プレコート液とを用い、高画質で耐擦性にも優れた画像を安定して出力し得るインクジェット記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方法は、記録ヘッドのノズルからインクの液滴を吐出させるインクジェット方式により、紙等の記録媒体にインクを付着させて画像を形成する印刷方式である。インクジェット記録用のインクとしては、染料や顔料等の色材を水を主溶媒とする水性媒体中に溶解又は分散させた水性インクが一般的であり、染料インクと顔料インクに大別される。これまで、色再現性や吐出安定性等に優れる染料インクが多用されてきたが、インクジェット記録技術のデジタル写真サービスや商業印刷等への用途拡大により、記録画像の長期保存性が重要視されるようになってきており、染料インクに比して耐水性や耐光性等に優れる顔料インクが使用されるようになってきている。
【0003】
顔料インクを用いたインクジェット記録に関しては、従来から、インクジェット記録に先立って、記録ヘッドより金属塩(反応剤)を含有する水性の反応液を吐出させて記録媒体に付着させることにより、発色性の向上、カラーブリード(カラー画像において、異色の境界部分で色が滲んだり不均一に混ざり合ったりする現象)や印刷ムラ(記録媒体表面の填料やサイズ剤等の不均一な分布に起因すると考えられる画像濃度の不均一性)の防止などを図る方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この方法は、記録媒体上で顔料インクと接触した反応剤が、インク成分の分散状態を破壊して凝集物を形成し、色材(顔料)が記録媒体中に浸透するのを抑制すると共に、未反応の反応液成分が、記録媒体上で皮膜を形成して色材の記録媒体への定着を促進することにより、高い色濃度で、カラーブリードや印刷ムラのない高品位のインクジェット画像を実現するものと考えられている。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−120956号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1に記載されている反応液のような記録媒体の前処理液、いわゆるプレコート液には、記録ヘッドのノズルからの安定した吐出(吐出安定性、目詰まり防止性)を確保するために、インクジェット記録用インクと同様に、通常、保湿剤あるいは湿潤剤としてグリセリンなどの高沸点有機溶媒が添加されている。この種の高沸点有機溶媒は常圧ではほとんど揮発せず、印刷終了後もしばらく記録媒体上に残留するため、高沸点有機溶媒の吐出量が多いと、記録媒体上にインクが付着することにより形成されるインク層の乾燥性が低下し、その結果、インク層の記録媒体に対する密着力が弱まって、記録画像の耐擦性が低下することになる。
【0006】
インクに加えてこれと同じような液組成のプレコート液を使用する上記インクジェット記録方法では、プレコート液を使用しない通常のインクジェット記録方法に比して、単位面積当たりに吐出される高沸点有機溶媒量が多いため、上記のようなインク層の乾燥性の低下に起因する耐擦性の低下が特に問題となっていた。インク及びプレコート液中の高沸点有機溶媒の含有量を少なくしてインク層の乾燥性を高めれば、この問題を解決できるが、実用上十分な耐擦性が得られるレベルまで高沸点有機溶媒の含有量を少なくすると、インク及びプレコート液の吐出安定性が低下してノズルの目詰まりを起こしてしまう。また、インクやプレコート液の吐出量を抑えることでインク層の乾燥性を高める方法も考えられるが、実用上十分な耐擦性が得られるレベルまで吐出量を減らすと、画質が低下して良好な画像を得ることが出来なくなる。
【0007】
また、印刷終了後(プレコート液及びインクを吐出させた後)、赤外線式や熱風式などの各種乾燥装置を用いて記録媒体を乾燥し、残留する高沸点有機溶媒を強制的に揮発させる方法も考えられるが、装置及び工程が複雑になってコストがかかるという問題の他、乾燥条件が過酷になると記録媒体や画像の変色を招くおそれがあるという問題もあり、しかも、高沸点有機溶媒の種類によっては、このような強制乾燥処理でも完全に除去できない場合もあるため、必ずしも好ましい方法とは言えない。
【0008】
本発明は、プレコート液及び顔料インクを用いたインクジェット記録方法における上記問題点を解決すべくなされたものであり、インク層の乾燥性が良好で耐擦性に優れたインクジェット画像を出力できるインクジェット記録方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のインクジェット記録方法は、記録媒体の被記録面に、顔料インク凝集能を有する金属塩及び親水性高沸点有機溶媒を含有する水性プレコート液をインクジェット方式により吐出させる前処理工程と、該前処理工程で該水性プレコート液が付着した該被記録面の該金属塩による顔料インク凝集反応が有効となる領域内に、親水性高沸点有機溶媒を含有する1又は複数の水性顔料インクをインクジェット方式により吐出させて記録を行う記録工程とを備えたインクジェット記録方法であって、上記水性プレコート液中の上記親水性高沸点有機溶媒の含有量を5〜30重量%とすると共に、上記水性顔料インク中の上記親水性高沸点有機溶媒の含有量を5〜35重量%とし、且つ上記水性プレコート液及び上記水性顔料インクの単位面積当たりの吐出量を、上記両工程を通じての上記親水性高沸点有機溶媒の単位面積当たりの総吐出量が、該水性プレコート液の単位面積当たりの吐出量と該水性顔料インクの単位面積当たりの吐出量との合計の2〜15%となるように調整することを特徴とする。
【0010】
上記本発明のように、水性プレコート液及び水性顔料インク中の高沸点有機溶媒の含有量を特定範囲に規定し、且つ前処理工程及び記録工程を通じて単位面積当たりに吐出される高沸点有機溶媒の総量を特定範囲に抑えるように、各液の単位面積当たりの吐出量を調整することにより、良好な吐出安定性及び画質を確保しつつ、記録画像の耐擦性を実用上十分なレベルまで改善することが可能になる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、先ず、本発明のインクジェット記録方法で使用する水性プレコート液、水性顔料インク及び記録媒体について説明する。
【0012】
〈水性プレコート液〉
水性プレコート液は、インクジェット記録(記録工程)に先立つ前処理工程において、記録媒体(被記録面)の前処理に用いられるもので、金属塩、高沸点有機溶媒及び水を必須成分として含有する。
【0013】
上記金属塩は、顔料インク凝集能を有している。この「顔料インク凝集能」には、いわゆる自己分散型顔料を使用した水性顔料インクに対して、該自己分散型顔料自体に直接作用してこれを凝集させる性質も含まれるし、また、自己分散型ではない通常の顔料を分散剤の作用により系中に分散させている水性顔料インクに対して、該分散剤を凝集させる結果として該顔料を凝集させる性質も含まれる。要は、水性顔料インクの種類や組成に拘わらず、これを速やかに凝集させることができれば、上記顔料インク凝集能を有していると言える。
【0014】
金属塩としては、金属イオンと、これに結合する陰イオンとから構成され、水に可溶なものが好ましく用いられる。
【0015】
上記金属イオンとしては、例えば、K+、Na+、Li+、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn2+、Ba2+、Fe2+、Zr2+、Al3+、Fe3+、Cr3+、Zr3+、Zr4+等が挙げられる。
また、上記陰イオンとしては、Cl−、NO3 −、I−、Br−、ClO3 −、CH3COO−、F−、SO4 2−、SO3 2−等が挙げられる。
【0016】
上記カルボン酸イオン(陰イオン)としては、炭素数1〜6の飽和脂肪族モノカルボン酸及び炭素数6〜10の炭素環式モノカルボン酸からなる群から選ばれる1種又は2種以上のカルボン酸から誘導されるものが好ましい。
炭素数1〜6の飽和脂肪族モノカルボン酸の好ましい例としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ビバル酸、ヘキサン酸等が挙げられる。特に蟻酸、酢酸が好ましい。この炭素数1〜6の飽和脂肪族モノカルボン酸の飽和脂肪族炭化水素基上の水素原子は、水酸基で置換されていてもよく、そのようなカルボン酸の好ましい例としては、乳酸が挙げられる。
また、炭素数6〜10の炭素環式モノカルボン酸の好ましい例としては、安息香酸、ナフトエ酸等が挙げられ、より好ましくは安息香酸である。
【0017】
金属塩として特に好ましいものとしては、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、臭化マグネシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムが挙げられる。これらは、単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。
【0018】
金属塩の含有量は、使用する金属塩の種類などを考慮して、所定の顔料インク凝集効果が得られるように適宜調整すればよく、特に限定されないが、水性プレコート液中、好ましくは1〜20重量%、更に好ましくは2〜8重量%である。
【0019】
一方、親水性高沸点有機溶媒は、吐出安定性(目詰まり防止性)の確保のため保湿剤あるいは湿潤剤として水性プレコート液に添加されるもので、常圧ではなかなか揮発しない低揮発性の有機溶媒である。ここで親水性高沸点有機溶媒とは、常圧で沸点が120℃以上の親水性有機溶媒をいう。
【0020】
本発明で用いられる親水性高沸点有機溶媒の具体例としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、ジエチルカルビトール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、グリセリン、トリエタノールアミン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキサイド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0021】
親水性高沸点有機溶媒は単独で使用しても、2種以上を併用することもできる。2種以上の親水性高沸点有機溶媒を併用する場合、それらを混合した状態で液状であれば本発明で使用することができる。即ち、少なくとも1種類の有機化合物が液状であり、もう1種類の有機化合物が室温20℃で固体であった場合でも混合された状態で液状である場合、更には各々が室温20℃で単独では固体であっても混合した状態で室温20℃で液状になるものも含まれる。
【0022】
親水性高沸点有機溶媒の含有量は、水性プレコート液中、5〜30重量%、好ましくは5〜20重量%である。親水性高沸点有機溶媒の含有量が5重量%未満では、吐出安定性が低下してノズルの目詰まりを起こすおそれがあり、30重量%超では、後述するように単位面積当たりの水性プレコート液の吐出量を抑えても、記録画像の画質及び耐擦性の両立を図ることが出来なくなる。
【0023】
また、水性プレコート液に含有される水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水又は超純水を用いることが好ましい。特に、紫外線照射又は過酸化水素添加等により滅菌処理された水は、カビやバクテリアの発生を防止して長期保存を可能とする点で好ましい。
【0024】
水性プレコート液には、記録媒体上での乾燥性を高める観点から、必要に応じ、親水性低沸点有機溶媒(常圧で沸点が120℃未満且つ室温20℃での飽和蒸気圧が10mmHg以上の親水性有機溶媒)を含有させることができる。親水性低沸点有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、iso−ブタノール、n−ペンタノール等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0025】
また、水性プレコート液には、必要に応じ、界面活性剤を含有させることもできる。界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼルスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド等の非イオン性界面活性剤;サーフィノール82、104、440、465、485(以上、エア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ社製)、オルフィンSTG、オルフィンE1010(以上、日信化学社製)等のアセチレングリコール系界面活性剤;カチオン性界面活性剤;両イオン性界面活性剤等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。界面活性剤の含有量は10重量%以下とすることが好ましい。
【0026】
さらに、水性プレコート液には、必要に応じ、紫外線吸収剤、光安定剤、消光剤、酸化防止剤、耐水化剤、防黴剤、防腐剤、増粘剤、流動性改良剤、pH調整剤、消泡剤、抑泡剤、レベリング剤、帯電防止剤等を適宜含有させることができる。
【0027】
水性プレコート液の組成については上述した通りであるが、物性値については、吐出安定性等の必要なインクジェット信頼性を確保する観点から、液温20℃における粘度2〜5mPa・s、表面張力20〜38mN/m、pH6.5〜10の範囲にあることが好ましい。各物性値の調整は、上述した各成分の含有量の調整等により行うことができる。
【0028】
〈水性顔料インク〉
本発明で用いられる水性顔料インクは、顔料系色材、親水性高沸点有機溶媒及び水を必須成分として含有する水性インクであり、インクジェット記録用の顔料インクとして一般的なものである。水としては、上記水性プレコート液に含有されるものと同様のものを用いることができる。
【0029】
顔料系色材としては、この種の水性顔料インクに色材(着色剤)として含有可能なものであれば良く、無機顔料や有機顔料を使用することができる。無機顔料としては、例えば、酸化チタン及び酸化鉄の他、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。また、有機顔料としては、例えば、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等を含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料等)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック等を使用することができる。
【0030】
上記顔料系色材をインク中で分散させる形態としては、上記顔料を分散剤を用いて分散させる形態でも良く、分散剤無し若しくはごく少量で水性媒体中に分散及び/又は溶解が可能ないわゆる自己分散型顔料を用いた自己分散型の形態でも良い。
【0031】
上記分散剤としては、例えば、高級脂肪酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩等のアニオン界面活性剤、脂肪族アミン塩、ホスフォニウム塩等のカチオン界面活性剤、ポリオキシエチレン化合物の脂肪酸エステル等のノニオン界面活性剤等の水溶性界面活性剤や、ゼラチン、カゼイン等のタンパク質、アラビアゴム等の天然ゴム、サボニン等のグルコキシド、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、リグニンスルホン酸塩、セラック等の天然高分子、ポリアクリル酸塩、スチレン−アクリル酸共重合物塩、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合物塩、スチレン−マレイン酸共重合物塩、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合物塩、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリリン酸等のアニオン性高分子、ポリビニルアルコ−ル、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコ−ル等のノニオン性高分子等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0032】
上記分散剤の重量平均分子量は、100〜50000の範囲にあることが好ましく、200〜40000の範囲にあることが更に好ましい。重量平均分子量が100未満では印字ムラが著しく、50000超ではインク粘度の増大が著しく吐出安定性に劣るおそれがある。
【0033】
上記分散剤の含有量は、水性顔料インク中、好ましくは0.01〜5重量%、更に好ましくは0.3〜2重量%である。含有量が0.01重量%未満では顔料の分散安定性に効果がなく、5重量%超ではインク粘度が増大して吐出安定性に劣るおそれがある。
【0034】
一方、上記自己分散型顔料(表面改質顔料などとも呼ばれる)としては、例えば、少なくとも1つの親水性基がイオン性基として上記の無機あるいは有機顔料の表面に直接、若しくは他の原子団(アルキル基、アルキルエーテル基、アリール基等)を介して結合しているものが用いられる。該親水性基としては、例えば、カルボキシル基、カルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン基、燐酸基、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。このような自己分散型顔料を用いることによって分散剤の添加量を削減でき、あるいは添加が不要となる。
【0035】
顔料系色材(自己分散型顔料を含む)の含有量は、発色性と吐出安定性とのバランスの観点から、水性顔料インク中、好ましくは0.5〜30重量%、更に好ましくは1〜10重量%である。
【0036】
また、水性顔料インク中に含有される親水性高沸点有機溶媒としては、上記水性プレコート液に含有されるものと同様のものを用いることができる。親水性高沸点有機溶媒の含有量は、水性顔料インク中、5〜35重量%、好ましくは5〜15重量%である。親水性高沸点有機溶媒の含有量が5重量%未満では、吐出安定性が低下してノズルの目詰まりを起こすおそれがあり、35重量%超では、後述するように単位面積当たりの水性顔料インクの吐出量を抑えても、記録画像の画質及び耐擦性の両立を図ることが出来なくなる。
【0037】
水性顔料インクには、保湿や浸透調整等の目的で、上記水性プレコート液と同様に、親水性低沸点有機溶媒、界面活性剤、pH調整剤、防黴剤、防腐剤等を必要に応じ適宜含有させることができる。また、水性顔料インクの各種物性値(液温20℃における粘度、表面張力、pHは、上記水性プレコート液と同様の範囲にあることが好ましい。
【0038】
カラー画像を形成する場合は、複数の水性顔料インクを用いる。インクの組み合わせとしては、イエロー、マゼンタ及びシアンの減法混色の3原色に、必要に応じ、ブラック、オレンジ、グリーン等のインクやライトシアン、ライトマゼンタ、フォトブラック(ミドルブラック、ライトブラック等)等のいわゆる淡インク等の1種以上を組み合わせた3色〜8色が一般的である。本発明では、特に制限無く任意にインクを組み合わせて用いることができる。
【0039】
〈記録媒体〉
本発明で用いられる記録媒体としては、特に限定されるものではなく、上質紙、再生紙、コピー用紙、ボンド紙、インクジェット記録用紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、樹脂被覆紙(レジンコート紙)、バライタ紙、板紙、和紙、不織布;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルム等が使用できる。
【0040】
上記インクジェット記録用紙は、一般に、紙や樹脂フィルム等の基材(上記記録媒体のうち、インクジェット記録用紙以外のものは、該基材として使用可能)上に、多孔性無機粒子を主成分とするインク受容層を設けた構成となっている。多孔性無機粒子としては、多孔性非晶質シリカ、多孔性炭酸マグネシウム、多孔性アルミナ等が好ましく用いられ、その含有量は、インク受容層中、固形分換算で40〜90重量%程度である。インク受容層には、通常、必要な塗膜強度の確保のため、ポリビニルアルコール等のバインダー樹脂も含有される。インクジェット記録用紙は、面質の違いにより、マット調、半光沢調、光沢調、高光沢調などに分類されるが、本発明では何れのインクジェット記録用紙でも好適に使用できる。
【0041】
本発明のインクジェット記録方法は、上述の水性プレコート液、水性顔料インク及び記録媒体を用いて実施されるもので、該記録媒体の被記録面に該水性プレコート液をインクジェット方式により吐出させる前処理工程と、該前処理工程で該水性プレコート液が付着した該被記録面の上記金属塩による顔料インク凝集反応が有効となる領域内に、1又は複数の上記水性顔料インクをインクジェット方式により吐出させて記録を行う記録工程とを備えている。
【0042】
そして本発明では、上記水性プレコート液及び上記水性顔料インクの単位面積当たりの吐出量を、上記両工程(前処理工程及び記録工程)を通じての上記親水性高沸点有機溶媒の単位面積当たりの総吐出量Aが、該水性プレコート液の単位面積当たりの吐出量と該水性顔料インクの単位面積当たりの吐出量との合計吐出量Bの2〜15%となるように調整する。上述したように、上記水性プレコート液及び1又は複数の上記水性顔料インクは、主として記録画像の耐擦性(乾燥性)と吐出安定性とのバランスを考慮して、親水性高沸点有機溶媒の含有量を上記特定範囲に規定したものではあるが、これらの液を無制限に記録媒体に吐出させると、記録媒体上の残留高沸点有機溶媒量が過多となって所望の耐擦性の改善効果が得られないことになる。一方、良好な耐擦性を得るべく上記各液の単位面積当たりの吐出量を抑制し過ぎると、ドット間の隙間に起因する白筋や印刷ムラなどが発生するおそれがあり、良好な画質が得られないことになる。そこで、本発明では、単位面積当たりの上記合計吐出量Bに対する親水性高沸点有機溶媒の上記総吐出量Aの割合Rに着目し、この割合が上記特定範囲になるように上記各液の単位面積当たりの吐出量を調整することにより、吐出安定性、耐擦性(乾燥性)及び画質の全てを実用上十分なレベルに到達させている。
【0043】
上記総吐出量A、即ち、上記両工程(前処理工程及び記録工程)を通じての上記親水性高沸点有機溶媒の単位面積当たりの総吐出量としては、0.01〜7.2mg/cm2が好ましく、0.05〜1.8mg/cm2が更に好ましい。
【0044】
また、上記金属塩による顔料インク凝集効果をより有効に発揮させて、発色性に優れカラーブリードや印刷ムラのない高画質・高品位の画像の出力を可能とする観点から、記録媒体の被記録面における水性プレコート液の付着量は、固形分換算で0.5〜3g/m2が好ましい。
【0045】
以下に、水性プレコート液(以下、プレ液という)及びイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の3色の水性顔料インクを使用した場合を例にとり、本発明のインクジェット記録方法について具体的に説明する。尚、プレ液及びY,M,Cインクの親水性高沸点有機溶媒の含有量は、それぞれ、10重量%、11重量%、20重量%、18重量%とする。
【0046】
また、上記インクジェット記録方法の実施に使用するインクジェット記録装置は、プリンタドライバに従って下記の印字条件(1)〜(3)で印字できるものであるとする。
(1)プレ液をベタ打ちし(前処理工程)、このベタ打ち部分にY,M,Cインクをそれぞれ単独でベタ印字する(記録工程)場合:プレ液の吐出量は0.9mg/cm2、Yインクの吐出量は1.0mg/cm2、M及びCインクの吐出量はそれぞれ1.2mg/cm2となるように印字。
(2)プレ液をベタ打ちし(前処理工程)、このベタ打ち部分に2色のインクを重ねて印字する(記録工程)場合:プレ液の吐出量は0.9mg/cm2とし、インクは単独の印字条件の60%(2次色duty120%)になるように印字。
(3)プレ液をベタ打ちし(前処理工程)、このベタ打ち部分に3色のインクを重ねて印字する(記録工程)場合:プレ液の吐出量は0.9mg/cm2とし、インクは単独の印字条件の50%(3次色duty150%)になるように印字。
以上の条件で単色ベタ、2色ベタ、3色ベタ印字したときの、前処理工程及び記録工程を通じての単位面積(1cm2)当たりの上記親水性高沸点有機溶媒の総吐出量Aを求めると以下のようになる。
【0047】
〈親水性高沸点有機溶媒の総吐出量A〉
(1)単色ベタ:
イ)Yの場合;0.9×(10/100)+1.0×(11/100)=0.2mg
ロ)Mの場合;0.9×(10/100)+1.2×(20/100)=0.33mg
ハ)Cの場合;0.9×(10/100)+1.2×(18/100)=0.306mg
(2)2色ベタ:
ニ)Y+Mの場合;0.9×(10/100)+1.0×(60/100)×(11/100)+1.2×(60/100)×(20/100)=0.3mg
ホ)M+Cの場合;0.9×(10/100)+1.2×(60/100)×(20/100)+1.2×(60/100)×(18/100)=0.3636mg
ヘ)C+Yの場合;0.9×(10/100)+1.2×(60/100)×(18/100)+1.0×(60/100)×(11/100)=0.2856mg
(3)3色ベタ:
ト)0.9×(10/100)+1.0×(50/100)×(11/100)+1.2×(50/100)×(20/100)+1.2×(50/100)×(18/100)=0.373mg
【0048】
また、上記(1)〜(3)におけるプレ液の単位面積当たりの吐出量と、C,M,Y各インクの単位面積当たりの吐出量との合計(合計吐出量B)は、それぞれ、以下のようになる。
【0049】
〈合計吐出量B〉
(1)単色ベタ:
イ)Yの場合;0.9+1.0=1.9mg/cm2
ロ)Mの場合;0.9+1.2=2.1mg/cm2
ハ)Cの場合;0.9+1.2=2.1mg/cm2
(2)2色ベタ:
ニ)Y+Mの場合;0.9+1.0×(60/100)+1.2×(60/100)=2.22mg
ホ)M+Cの場合;0.9+1.2×(60/100)+1.2×(60/100)=2.34mg
ヘ)C+Yの場合;0.9+1.2×(60/100)+1.0×(60/100)=2.22mg
(3)3色ベタ:
ト)0.9+1.0×(50/100)+1.2×(50/100)+1.2×(50/100)=2.6mg
【0050】
従って、合計吐出量Bに対する親水性高沸点有機溶媒の総吐出量Aの割合R〔=(A/B)×100〕は、それぞれ、次のようになる。
〈割合R〉
(1)単色ベタ:
イ)Yの場合;(0.2/1.9)×100=10.5%
ロ)Mの場合;(0.33/2.1)×100=15.7%
ハ)Cの場合;(0.306/2.1)×100=14.6%
(2)2色ベタ:
ニ)Y+Mの場合;(0.3/2.22)×100=13.5%
ホ)M+Cの場合;(0.3636/2.34)×100=15.5%
ヘ)C+Yの場合;(0.2856/2.22)×100=12.9%
(3)3色ベタ:
ト)(0.373/2.6)×100=14.3%
【0051】
以上の結果から、上記(1)〜(3)の各印字条件において、割合Rが本発明で規定する範囲(2〜15%)外となるのは、上記ロ)単色ベタのMインクを使用した場合(R=15.7%)と、上記ホ)2色ベタのMインクとCインクを使用した場合(R=15.5%)であることが判る。よって、上記インクジェット記録装置を用いて実際にインクジェット記録を行う場合、上記ロ)及びホ)の印字では、割合Rが15%となるようにプレ液及びインクの単位面積当たりの吐出量を調整する。具体的には例えば、Cインクの単位面積当たりの吐出量を1.2mg/cm2から0.9mg/cm2に変更し、且つ2次色dutyを60%から50%に変更することにより、割合Rは、それぞれ、ロ)で15%、ホ)で14.9%となる。このような吐出量の調整は、プリンタドライバを適宜設定することにより行うことができる。
【0052】
以上のような構成の本発明のインクジェット記録方法は、例えば、次のような記録システムを使用して実施することができる。
【0053】
図1は、本実施形態のインクジェット記録方法の実施に使用する記録システムの概略構成を示すブロック図である。この記録システムは、画像入力装置1と、ホストコンピュータ2と、インクジェットプリンタ3を備えている。また、ホストコンピュータ2は、キーボードやマウス等からなる入力部21と、ディスプレイ22を備えている。
【0054】
画像入力装置1は、取り込んだカラーのRGB画像データをパーソナルコンピュータ等に送信できる装置であり、例えば、スキャナ、デジタルカメラ、デジタルビデオ等が挙げられる。
【0055】
ホストコンピュータ2の内部には、図示しないCPU、RAM、ROM等が備えられており、所定のオペレーティングシステムの下で、アプリケーションプログラム23が動作している。このオペレーティングシステムには、ビデオドライバ24やプリンタドライバ25が組み込まれており、アプリケーションプログラム23からこれらのドライバを介して、画像データがインクジェットプリンタ3に出力されることになる。画像のレタッチなどを行うアプリケーションプログラム23は、画像入力装置1から画像を読み取り、これに対して所定の処理を行いつつビデオドライバ24を介してディスプレイ22に画像を表示する。
【0056】
プリンタドライバ25は、アプリケーションプログラム23が発行する印刷指令に従い、受信したRGB画像データを、二値化処理やγ補正などの種々の処理により、各液の吐出量が最適化された印字データに変換するもので、RGB画像データをドット単位のドットデータに変換するラスタライザ251と、このドットデータに対してインクジェットプリンタ3が使用するインク色及び発色の特性に応じた色補正を行う1次補正モジュール252と、色補正後のドットデータに対して所定の吐出制限規定に従って補正を行う2次補正モジュール253とを備えている。
【0057】
1次補正モジュール252は、図示しない色補正テーブルを参照してドットデータを補正し、プレコート液及び各色インクの吐出量が最適化されたドットデータを作成する。2次補正モジュール253は、上述したように、単位面積当たりの各液の合計吐出量Bに対する親水性高沸点有機溶媒の総吐出量Aの割合Rが上記特定範囲になるように各液の単位面積当たりの吐出量を調整するもので、1次補正モジュール252から転送されたドットデータを必要に応じて補正し、最終的な印字データを作成する。
【0058】
2次補正モジュール253を経て作成された印字データは、用紙の種別を示す用紙種別データその他の各種指示情報と共に、印刷情報として入出力部26を介してインクジェットプリンタ3へ転送される。
【0059】
ホストコンピュータ2から転送された印字データ等の印刷情報は、インクジェットプリンタ3の受信バッファ31に入力される。また、印刷情報が正しく転送されているかを確認するデータや、プリンタの動作状態を知らせるデータがインクジェットプリンタ3からホストコンピュータ2に返される。受信バッファ31の印刷情報は、CPU32の管理のもとで、RAM33に一時的に記憶される。メカコントロール部34は、CPU32からの指令により、紙送りモータ36やキャリッジモータ40(図2参照)等を駆動する。記録ヘッドコントロール部35は、CPU32からの指令により記録ヘッド50(図2参照)を制御するもので、ヘッド駆動波形を制御して各液の液滴の大きさを調整することにより、各液の単位面積当たりの吐出量を制御する。また、記録ヘッドコントロール部35は、記録ヘッド50の状態を示す各種情報等を検知し、これをCPU32に伝える。
【0060】
図2は、インクジェットプリンタ3の要部の斜視図である。インクジェットプリンタ3は、紙送りモータ36で駆動されるプラテンローラ37により記録媒体Mを矢標A方向に搬送し、キャリッジ38上に搭載された記録ヘッド50が、記録媒体Mの被記録面に、インクタンク60から供給される水性プレコート液及び各色水性顔料インクをそれぞれ吐出した後、これを搬出するようになしてある。キャリッジ38は、キャリッジベルト39を介してキャリッジモータ40に連結されており、ガイドレール41上を摺動して、矢標A方向と直交する矢標B1又はB2方向に往復走査するようになっている。
【0061】
図3は、記録ヘッド50のノズル開口面50aの概略正面図である。記録ヘッド50は、複数のインクジェットヘッドを主走査方向に並列に配置して一体化させたマルチヘッドである。図3中、51及び56は水性プレコート液を吐出するノズル列であり、52,53,54,55は、それぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の水性顔料インクを吐出するノズル列である。このように、主走査方向の両端のインクジェットヘッド(ノズル列)を水性プレコート液用とすることで、双方向(B1及びB2)印字が可能となり印字高速性が上がる。
【0062】
尚、インクジェットプリンタ3は、印字データに対応してインクを吐出させるオンデマンド方式のインクジェットプリンタであるが、ノズルから一定時間間隔でインクを吐出し続け、吐出されたインク液滴を偏向させることにより画像を形成するコンティニュアス方式のものでも良い。また、記録ヘッド50の吐出制御方式は、ピエゾ素子を用いて電圧により制御する方式であるが、発熱抵抗素子を用いて熱エネルギーにより制御する方式でもよい。
【0063】
このような構成のインクジェットプリンタ3において、記録ヘッド50は、矢標B1方向に走査される場合は、記録媒体Mの被記録面に対し、先ず、ノズル列51より水性プレコート液を所定の吐出量で吐出させて前処理領域を形成していき(前処理工程)、続いて、該水性プレコート液が付着した該被記録面の上記金属塩による顔料インク凝集反応が有効となる領域(前処理領域)内に、受信した印字データに基づき、ノズル列52,53,54,55よりY、M、C、Kの各色水性顔料インクを所定の吐出量で順次吐出させてインクジェット記録を行う(記録工程)。矢標B1方向に走査される場合は、ノズル列56は使用しない。
【0064】
記録ヘッド50は、記録領域の矢標B1方向の終端に到達し、記録媒体Mが前処理領域の幅に略等しい送り量でプラテンローラ37により矢標A方向に搬送された後、矢標B2方向に走査される。この場合、先ず、ノズル列56より水性プレコート液を所定の吐出量で吐出させて前処理領域を形成していき(前処理工程)、続いて、該水性プレコート液が付着した該被記録面の上記金属塩による顔料インク凝集反応が有効となる領域(前処理領域)内に、受信した印字データに基づき、ノズル列55,54,53,52よりK、C、M、Yの各色水性顔料インクを所定の吐出量で順次吐出させてインクジェット記録を行う(記録工程)。矢標B2方向に走査される場合は、ノズル列51は使用しない。このような記録ヘッド50の双方向(B1及びB2方向)走査、及び紙送り動作が繰り返されることにより、目的とするインクジェット記録物が得られる。
【0065】
尚、本発明のインクジェット記録方法は、上記前処理工程と上記記録工程とを備え、上記水性プレコート液中の上記親水性高沸点有機溶媒の含有量を5〜30重量%とすると共に、上記水性顔料インク中の上記親水性高沸点有機溶媒の含有量を5〜35重量%とし、且つ上記水性プレコート液及び上記水性顔料インクの単位面積当たりの吐出量を、上記両工程を通じての上記親水性高沸点有機溶媒の単位面積当たりの総吐出量が、該水性プレコート液の単位面積当たりの吐出量と該水性顔料インクの単位面積当たりの吐出量との合計の2〜15%となるように調整するものであればよく、使用する水性顔料インクの種類や数、水性プレコート液や水性顔料インクの吐出パターン、インクの吐出順序等は、上記実施形態に制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、本発明の実施形態は、図1に示す如き記録システムあるいはインクジェットプリンタを用いるものに限定されるものではない。
【0066】
【実施例】
以下に、本発明の実施例及び本発明の効果を示す試験例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、斯かる実施例により何等制限されるものではない。
【0067】
尚、プレコート液1の高沸点有機溶媒の含有量は(18.0+2.0=)20重量%である。
【0068】
また、下記組成のYMCK4色の水性顔料インク(インクセット1)を、それぞれ常法に従い調製した。即ち、顔料系色材を分散剤成分と共に水中で分散させた後、他の成分を添加して攪拌混合し、一定以上の大きさの不溶成分を濾過してインクを調製した。
【0069】
尚、イエローインク1の高沸点有機溶媒の含有量は(9.0+2.0=)11重量%である。
【0070】
尚、マゼンタインク1の高沸点有機溶媒の含有量は(9.0+2.0=)11重量%である。
【0071】
尚、シアンインク1の高沸点有機溶媒の含有量は(9.0+2.0=)11重量%である。
【0072】
尚、ブラックインク1の高沸点有機溶媒の含有量は(9.0+2.0=)11重量%である。
【0073】
記録媒体(「OKトップコートN」王子製紙製)の被記録面の全面に対して、インクジェットプリンタ(「EM930C」セイコーエプソン製)のシアンインクと上記プレコート液1とを入れ替えたものを用いて、シアン100%となるベタパターンでプレコート液1を打ち込んだ(前処理工程)。
次いで、プレコート液1が打ち込まれた上記被記録面に対し、顔料インクジェットプリンタ(「MC2000」セイコーエプソン製)を用いて、上記インクセット1により、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の単色ベタ印刷;レッド(R、Y+M)、グリーン(G、C+Y)、ブルー(B、C+M)の2色ベタ印刷;コンポジットブラック(Comp.K、Y+M+C)の3色ベタ印刷をそれぞれ行い、8色のカラーパッチを印刷した(記録工程)。
以上のようにして得られたインクジェット記録物を、実施例1のサンプルとした。
【0074】
上記した実施例1における各液の吐出量及び高沸点有機溶媒量を下記〔表1〕に示す。また、この実施例1における「高沸点有機溶媒の総吐出量A」及び「合計吐出量B」を、それぞれ前述した計算方法と同様にして求め、これらの値から「割合R」を求めた。これらの値を下記〔表2〕に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
〔比較例1〕
実施例1において、上記〔表1〕及び〔表2〕に示す条件に代えて下記〔表3〕及び〔表4〕に示す条件でインクジェット記録を行った以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録物を作製し、これを比較例1のサンプルとした。
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
〔比較例2〕
実施例1において、上記プレコート液1及びインクセット1に代えて下記組成のプレコート液2及びYMCKインク2からなるインクセット2を用い、且つ下記〔表5〕及び〔表6〕に示す条件でインクジェット記録を行った以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録物を作製し、これを比較例2のサンプルとした。
【0081】
尚、プレコート液2の高沸点有機溶媒の含有量は(20.0+2.0=)22重量%である。
【0082】
尚、イエローインク2の高沸点有機溶媒の含有量は(12.0+5.0+1.0=)18重量%である。
【0083】
尚、マゼンタインク2の高沸点有機溶媒の含有量は(12.0+5.0+1.0=)18重量%である。
【0084】
尚、シアンインク2の高沸点有機溶媒の含有量は(12.0+5.0+1.0=)18重量%である。
【0085】
尚、ブラックインク2の高沸点有機溶媒の含有量は(12.0+5.0+1.0=)18重量%である。
【0086】
【表5】
【0087】
【表6】
【0088】
〔比較例3〕
実施例1において、上記プレコート液1及びインクセット1に代えて下記組成のプレコート液3及びYMCKインク3からなるインクセット3を用い、且つ下記〔表7〕及び〔表8〕に示す条件でインクジェット記録を行った以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録物を作製し、これを比較例3のサンプルとした。
【0089】
尚、プレコート液3の高沸点有機溶媒の含有量は4重量%である。
【0090】
尚、イエローインク3の高沸点有機溶媒の含有量は(2.0+2.0=)4重量%である。
【0091】
尚、マゼンタインク3の高沸点有機溶媒の含有量は(2.0+2.0=)4重量%である。
【0092】
尚、シアンインク3の高沸点有機溶媒の含有量は(2.0+2.0=)4重量%である。
【0093】
尚、ブラックインク3の高沸点有機溶媒の含有量は(2.0+2.0=)4重量%である。
【0094】
【表7】
【0095】
【表8】
【0096】
〔比較例4〕
実施例1において、上記プレコート液1に代えて下記組成のプレコート液4を用い、且つ下記〔表9〕及び〔表10〕に示す条件でインクジェット記録を行った以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録物を作製し、これを比較例4のサンプルとした。
【0097】
尚、プレコート液4の高沸点有機溶媒の含有量は(27.0+5.0=)32重量%である。
【0098】
【表9】
【0099】
【表10】
【0100】
〔性能評価〕
実施例1及び比較例1〜4の各サンプル(インクジェット記録物)について、発色性、カラーブリード及び耐擦性を下記の方法でそれぞれ評価した。これらの結果を下記〔表11〕に示す。
【0101】
(発色性の評価方法)
インクジェット記録物のY、M、C、K、R、G、B、Comp.Kの8色のカラーパッチについて、グレタグマクベス社製のスペクトロリーノSPM−50を用い、視野角2度、光源D50、フィルター無しの条件で反射光学濃度(OD値)を測定し、下記評価基準により評価した。
評価基準
A:上記8色のOD値の合計が15を超える。発色性良好。
B:4色のOD値の合計が15〜12。実用上問題なし。
C:4色のOD値の合計が12未満(平均でOD値3未満)。実用に堪えない。
【0102】
(カラーブリードの評価方法)
インクジェット記録物について、イエロー領域とブラック領域とが隣接する部分(画質低下が最も判別し易い領域)をそれぞれ目視により観察し、それらの色境界での不均一な色混じりの程度を下記評価基準により評価した。
評価基準
A:色混じりの無い、良好な画像が得られた。
B:色混じりが僅かに生じた。実用上問題なし。
C:色の境界がはっきりしない程、色混じりが起こった。実用に堪えない。
【0103】
(耐擦性の評価方法)
インクジェット記録物の画像面上に、消しゴム(幅20mm)を傾斜度60度で固定し、1kgの荷重をかけた状態で10往復擦った後の該画像面の状態を目視で観察し、下記評価基準により評価した。
評価基準
A:画像面にキズ、ハガレがない。耐擦性良好。
B:画像面にキズが入るが、実用上問題なし。
C:画像面にハガレが発生する。実用に堪えない。
【0104】
【表11】
【0105】
また、上記プレコート液1〜4及びインクセット1〜3について、(プレコート液1,インクセット1)、(プレコート液2,インクセット2)、(プレコート液3,インクセット3)、(プレコート液4,インクセット3)の4つの組み合わせで下記の方法により吐出試験を行い、吐出安定性を評価した。その結果を下記〔表12〕に示す。この結果から、(プレコート液3,インクセット3)の組み合わせは、ノズル抜けや飛行曲がりを起こす可能性が高いことが判る。
【0106】
(吐出安定性の評価方法)
インクジェットプリンタ(「MC2000」セイコーエプソン製)に、プレコート液及びインクセット(Y,M,C,Kインク)を、図3に示すようなノズル配置となるようにセットした。そして、このプリンタを用いて、YMCKの4色を用いたコンポジットパターン上にプレコート液を打ち込む印字パターンで、OKトップコートNを1000枚印字し、これらの印字面を目視で観察して、下記評価基準により評価した。
評価基準
A:プレコート液のノズル抜けや飛行曲がりの発生が認められた箇所が5箇所以内であり、目詰まりを起こした際にクリーニング動作3回以内で復帰した。吐出安定性に優れる。
B:プレコート液のノズル抜けや飛行曲がりの発生が認められた箇所が10箇所以内であり、目詰まりを起こした際にクリーニング動作5回以内で復帰した。実用上問題なし。
C:プレコート液のノズル抜けや飛行曲がりの発生が認められた箇所が10箇所を超えており、目詰まりを起こた際にクリーニング動作5回超で復帰した。実用に堪えない。
【0107】
【表12】
【0108】
【発明の効果】
本発明によれば、印刷ムラやカラーブリードを防止し、画像濃度が高く、耐擦性にも優れた高画質、高品位且つ高保存性の顔料インクジェット画像を、ノズルの目詰まり等を起こさずに安定して出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインクジェット記録方法の実施に使用する記録システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1の記録システムにおけるインクジェットプリンタの要部の斜視図である。
【図3】図2に示すインクジェットプリンタにおける記録ヘッドのノズル開口面の概略正面図である。
【符号の説明】
3 インクジェットプリンタ
36 紙送りモータ
37 プラテンローラ
38 キャリッジ
39 キャリッジベルト
40 キャリッジモータ
41 ガイドロール
50 記録ヘッド
50a ノズル開口面
51〜56 ノズル
60 インクタンク
M 記録媒体
Claims (6)
- 記録媒体の被記録面に、顔料インク凝集能を有する金属塩及び親水性高沸点有機溶媒を含有する水性プレコート液をインクジェット方式により吐出させる前処理工程と、該前処理工程で該水性プレコート液が付着した該被記録面の該金属塩による顔料インク凝集反応が有効となる領域内に、親水性高沸点有機溶媒を含有する1又は複数の水性顔料インクをインクジェット方式により吐出させて記録を行う記録工程とを備えたインクジェット記録方法であって、
上記水性プレコート液中の上記親水性高沸点有機溶媒の含有量を5〜30重量%とすると共に、上記水性顔料インク中の上記親水性高沸点有機溶媒の含有量を5〜35重量%とし、且つ
上記水性プレコート液及び上記水性顔料インクの単位面積当たりの吐出量を、上記両工程を通じての上記親水性高沸点有機溶媒の単位面積当たりの総吐出量が、該水性プレコート液の単位面積当たりの吐出量と該水性顔料インクの単位面積当たりの吐出量との合計の2〜15%となるように調整することを特徴とするインクジェット記録方法。 - 上記両工程を通じての上記親水性高沸点有機溶媒の単位面積当たりの総吐出量を0.05〜1.8mg/cm2とすることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録方法。
- 上記水性プレコート液の付着量が固形分換算で0.5〜3g/m2であることを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録方法。
- 上記親水性高沸点有機溶媒の常圧での沸点が120℃以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のインクジェット記録方法。
- 上記水性プレコート液が、上記金属塩を1〜20重量%含有する請求項1〜4の何れかに記載のインクジェット記録方法。
- 上記金属塩が、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、臭化マグネシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、塩化アルミニウム及び硝酸アルミニウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のインクジェット記録方法。
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-
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