JP7137782B2 - 記録方法、及び記録装置 - Google Patents
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このような記録方法が本発明の課題を解決できる要因は下記のように考えている。ただし、要因はこれに限定されない。すなわち、従来の記録方法は、それに用いるインク組成物を所定量蒸発させたときのインク組成物の表面張力が、蒸発させる前のインク組成物の表面張力に比べて変化が大きいインク組成物を用いていることに起因して、色差のない記録物を得ることができない。一方、本発明に係る記録方法は、記録媒体を加熱している場合においても、インク組成物を蒸発率0~40質量%までに亘り蒸発させたときのインク組成物の表面張力と、の差の絶対値が、1mN/m以下であることにより、色差の発生を抑制して優れた画像を得ることができる。
前記インク組成物の成分を凝集させる凝集剤を含有する処理液を前記記録媒体に付着させる処理液付着工程をさらに有すると好ましい。
前記インク組成物は、界面活性剤をさらに含み、
前記界面活性剤の含有量は、前記インク組成物の総量に対して、0.5質量%以上であると好ましい。
前記インク組成物は、色材として顔料と、樹脂粒子と、をさらに含むと好ましい。
前記インク組成物の蒸発前の表面張力は、28mN/m以下であると好ましい。
前記記録媒体が低吸収記録媒体又は非吸収性記録媒体であると好ましい。
1回の前記主走査あたりの前記インク組成物の付着量が、4.0mg/inch2以下であると好ましい。
前記インク組成物付着工程において、ある主走査で前記記録媒体に付着させた前記インク組成物に対して、次の主走査で前記記録媒体に吐出した前記インク組成物の少なくとも一部が接触すると好ましい。
前記インク組成物付着工程において、ある主走査で記録媒体に付着したインク組成物の、次の主走査で付着したインク組成物が接触するときの蒸発率が、60質量%以下であると好ましい。
前記インク組成物付着工程が、1回の主走査の時間が1秒以上である主走査により行われると好ましい。
前記インク組成物と前記処理液とを付着させる記録領域において、前記インク組成物の付着量に対する前記処理液の付着量の比が、40質量%以下である領域を有するとより好ましい。
前記インク組成物が、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性の何れか1種以上と、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤及びアセチレングリコール系界面活性剤の何れか1種以上と、をさらに含むと好ましい。
主走査方向の幅が50cm以上である記録媒体へ記録を行うと好ましい。
本実施形態の記録方法は、記録媒体を加熱する加熱工程と、有機溶剤と水とを含むインク組成物(以下、「本実施形態のインク組成物」ともいう。)を、記録用ヘッドを当該記録媒体との相対的な位置を主走査方向に変化させつつ当該記録用ヘッドから吐出する主走査を複数回行うことにより、加熱工程で加熱された当該記録媒体に付着するインク組成物付着工程と、を有する。また、本実施形態のインク組成物の表面張力と、該インク組成物を蒸発率0~40質量%までに亘り蒸発させたときのインク組成物の表面張力との差の絶対値が、1mN/m以下である。
本実施形態の記録方法で用いるインク組成物は、有機溶剤と水とを含む。以下、インク組成物に含まれ得る各成分について説明する。
そして、所定の蒸発率の時のインク組成物の表面張力の、初期のインク組成物の表面張力からの差を算出し、これから絶対値を算出する。具体的には下記の測定法により求められ、より具体的には後述の実施例の測定法により求められる。
例えば、上記「所定の蒸発率毎にインク組成物の表面張力を測定する」こととして、蒸発率0~40質量%までに亘り、0質量%、5質量%、10質量%、15質量%、20質量%、25質量%、30質量%、35質量%、40質量%の順に、5質量%の間隔でインク組成物の表面張力を測定することが挙げられる。このようにして得られたインク組成物の表面張力の測定結果の中で、特に蒸発前のインク組成物の表面張力との差の絶対値が大きいものがあった場合、その測定結果に対応する蒸発率を決定し、さらに追加の測定を行ってもよい。例えば、決定した蒸発率の前後4質量%の範囲の蒸発率について、5質量%よりも小さい間隔で蒸発率が異なるインク組成物の表面張力をさらに測定してもよい。具体的には、決定した蒸発率30質量%についての前後4質量%の範囲として、蒸発率26~34質量%までに亘り、26質量%、27質量%、28質量%、29質量%、30質量%、31質量%、32質量%、33質量%、34質量%の順に、1質量%の間隔でインク組成物の表面張力を測定することを、さらに行ってもよい。
上述のようにして、蒸発前のインク組成物の表面張力と、インク組成物を蒸発率0~40質量%までに亘り蒸発させたときのインク組成物の表面張力との差の絶対値が1mN/m以下であるかどうかを、確認することができる。
本実施形態のインク組成物は、色材をさらに含む着色インク組成物としてもよく、また、クリアインク組成物としてもよい。着色インク組成物は、記録媒体への着色に用いるインクである。クリアインク組成物は記録媒体への着色に用いるインクではなく、記録物の耐擦性や光沢性等の品質を改善するために用いるインクであり、色材のクリアインク組成物中の含有量は、好ましくは0.2質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下であり、さらに好ましくは0.05質量%以下であり、特に好ましくは0.01質量%以下であり、0質量%でもよい。
本実施形態の樹脂粒子(以下、「樹脂分散体」、「樹脂エマルジョン」、「バインダ樹脂」ともいう。)は、樹脂を含む粒子である。本実施形態の樹脂粒子は、水に安定に分散させるために必要な親水成分が導入された自己分散型の樹脂粒子(自己分散型樹脂粒子)であってもよいし、外部乳化剤の使用により水分散性となる樹脂粒子であってもよい。本実施形態のインク組成物は、色材として顔料と、樹脂粒子とをさらに含むことが好ましい。
本実施形態のインク組成物は、有機溶剤を含む。これにより、記録媒体に着弾したインク組成物の乾燥性をより高い水準で得ることができることに起因して、優れた耐擦性及び画質が得られる傾向にある。
標準沸点が上記範囲の有機溶剤は、上記に挙げる有機溶剤の中から、適宜選択することができる。
インク組成物は、界面活性剤をさらに含むことが好ましい。界面活性剤を含むことにより、インク組成物の表面張力と、インク組成物を蒸発率0~40質量%までに亘り蒸発させたときのインク組成物の表面蒸発時のインクの表面張力との差の絶対値が1mN/m以下であるように制御することが容易となり、より優れた画質を得られる傾向にある。界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、及びシリコーン系界面活性剤等が挙げられる。この中でも、フッ素系界面活性剤、及びシリコーン系界面活性剤が好ましい。また、フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤の何れか1種以上と、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤及びアセチレングリコール系界面活性剤の何れか1種以上と、を含むことが、色差低減の点でより好ましい。
本実施形態の水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、及び蒸留水等の純水、並びに超純水のような、イオン性不純物を極力除去したものが挙げられる。また、紫外線照射又は過酸化水素の添加等によって滅菌した水を用いると、処理液を長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止することができる。これにより貯蔵安定性がより向上する傾向にある。インク組成物中の水の含有量は、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。水の含有量の上限は限るものでは無いが95質量%以下が好ましい。
本実施形態のインク組成物は水系インク組成物であることが好ましい。水系とは、組成物に含む溶媒成分として少なくとも水を主要な成分とするものであり、水の組成物中の含有量が30質量%以上である。水系の組成物は、低公害性、低毒性、安全性が高い点で、好ましい。
本実施形態の記録方法は処理液を用いてもよい。処理液は、上述したインク組成物を凝集又は増粘させることが可能な凝集剤を含有する。本実施形態のインク組成物は、当該処理液と共に記録方法に用いられることで、優れた画質の記録物を得ることができる。処理液は、該処理液中の凝集剤がインク組成物と相互作用することにより、インク組成物に含まれる成分を凝集させインク組成物を増粘又は不溶化する。これにより、その後に付着させるインク組成物の着弾干渉、ブリードを抑制でき、ラインや微細像等を均質に描画することができる。記録方法が処理液を用いる場合、インクの成分を凝集させることにより記録媒体上でのインクの流動を止めることができ、インクの蒸発率が低くとも画質が優れる点で好ましい。また、インクの蒸発率が低くても画質が優れるため、インクの蒸発率を低くすることができ、色差低減が優れ好ましい。
処理液に含まれる凝集剤は、特に限定されないが、カチオン性樹脂、有機酸、多価金属塩、のいずれかを含むことが好ましい。これにより、ベタムラ及び滲みがより抑制される傾向にある。インク組成物に含まれる成分のうち、凝集剤により凝集する成分としては、上述の顔料、樹脂粒子に用いられる樹脂が挙げられる。
本実施形態の記録方法は、記録媒体を加熱する工程を有する。加熱工程により、記録媒体に付着したインク組成物の蒸発を促進してブリードを抑制し画質に優れる記録方法とすることができる。加熱工程において加熱する手段は、記録媒体を加熱できるものであれば特に限定されないが、例えばヒーターによる加熱が挙げられる。加熱は、記録媒体に接触する記録媒体支持部等の部材から熱を記録媒体へ伝導させる伝導式、記録媒体へファン等により熱を有する風を送る送風式、IR等の熱を生成する放射線を記録媒体へ照射する放射式等の少なくとも何れかを用いることが好ましい。加熱工程により加熱され常温より高い温度になっている記録媒体へインク組成物付着工程が行われることが、画質等が優れる点で好ましい。加熱工程は、インク組成物付着工程の前や並行して行われることが好ましい。
〔後加熱工程〕
本実施形態の記録方法は、インク組成物付着工程後の記録媒体を加熱する後加熱工程を有してもよい。後加熱工程において加熱する手段としては上述の加熱工程で好ましく用いられるものを独立して別途用いることができる。後加熱工程は、記録物を使用することができるように、最終の加熱を行う工程としてもよい。後加熱工程は、例えば、後述する記録装置が備える第2乾燥部50によって実現できる。後加熱工程の記録媒体表面温度は、50~120℃が好ましく、60~100℃がより好ましく、70~90℃がさらに好ましい。
本実施形態の記録方法は、処理液付着工程を有してもよい。処理液付着工程は、処理液を記録媒体に対して付着させる工程である。処理液を付着させる手段としては、特に限定されないが、例えば、ローラー塗布、スプレー塗布、インクジェット方式を利用することができる。このなかでも、インクジェット方式により付着させることが好ましい。処理液をインクジェット方式により付着させることにより、メディアの面質変化の抑制や、耐擦性がより向上する傾向にある。
インク組成物付着工程は、インク組成物を記録媒体に対して付着させる工程であり、本実施形態のインク組成物を記録用ヘッドから、該記録用ヘッドを記録媒体との相対的な位置を主走査方向に変化させつつ吐出して記録媒体に付着させる主走査を、複数回行い、記録物を得る工程である。上述した処理液付着工程と同時に又は処理液付着工程の前後に設けることができるが、本発明による作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、処理液付着工程の後に設けることが好ましい。インク組成物を付着させる手段としては、特に限定されないが、例えば、ローラー塗布、スプレー塗布、インクジェット方式を利用することができる。このなかでも、インクジェット方式により付着させることが好ましい。インク組成物をインクジェット方式により付着させることにより、メディアの面質変化の抑制や、耐擦性がより向上する傾向にある。
なお、1回の主走査のインク付着量が上記範囲である主走査を有して、複数回の主走査により記録領域にインクを付着させることで、前述の記録物の記録領域におけるインク付着量とさせてもよい。
記録媒体としては、例えば、吸収性、低吸収性、又は非吸収性記録媒体が挙げられる。このなかでも、記録媒体が、低吸収記録媒体又は非吸収性記録媒体であることが好ましい。低吸収記録媒体又は非吸収性記録媒体を用いた場合、その表面で処理液が弾かれて凝集剤が均一に塗布しにくいため、ベタムラやブリードがより生じやすい。ところが、本実施形態においては、インク組成物により処理液が弾かれることを防止できるため、特に有用である。また、低吸収記録媒体又は非吸収性記録媒体を用いた場合、凝集剤がその記録媒体に浸透せず記録媒体表面に残存しやすいため、記録面のべたつきや耐擦性が悪化する傾向がある。ところが、本実施形態においては、上述のインク組成物を用いることにより処理液の使用量を低減できるため、記録面のべたつきを改善することができ、特に有利である。
次に、本実施形態の記録方法で記録を行う本実施形態の記録装置について説明する。本実施形態の記録装置は、本実施形態の記録方法で記録することが可能な記録装置であれば特に限定されない。1は、本実施形態に用い得るインクジェット記録装置1の一例の全体の概略を示す側面図である。図1に示すように、インクジェット記録装置1は、記録媒体の給送部10と、搬送部20と、記録部30と、乾燥装置90と、排出部70とを備えている。
下記の記録物の作製において使用した処理液用及びインク組成物用の主な材料は、以下の通りである。
〔色材〕
C.I.ピグメントブルー15:3
カーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)
〔凝集剤〕
硫酸マグネシウム・六水和物(多価金属塩)
ポリアリルアミン塩酸塩
コハク酸(有機酸)
〔樹脂〕(樹脂分散体)
ポリエチレン樹脂
スチレン-アクリル樹脂
〔有機溶剤〕
1,2-ヘキサンジオール
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル
3-ブトキシ-N、N-ジメチルプロピオンアミド
3-メトキシ-N、N-ジメチルプロピオンアミド
2-ピロリドン
トリエチレングリコールモノブチルエーテル
〔界面活性剤〕
BYK348(商品名、ビック・ケミー社製)
MF410(商品名、DIC社製、パーフルオロアルキル基含有カルボン酸塩界面活性剤)
DW800(商品名、ビック・ケミー社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル基含有界面活性剤)
サーフィノール DF110D(商品名、日信化学工業社製、アセチレングリコール系)
〔水〕
純水
顔料と、表中に記載しないスチレンアクリル系の顔料分散剤樹脂を顔料1質量部に対して0.8質量部と、を水に混合してビーズミルで撹拌させて顔料分散液を調製した。該顔料分散液と、残りの各材料を下記の表1に示す組成で混合し、十分に撹拌し、処理液及びインク組成物を得た。なお、下記の表1中、数値の単位は質量%であり、合計は100.0質量%である。
下記のように、インク組成物の表面張力、及び各蒸発率まで蒸発させたときのインク組成物の表面張力を測定した。
初期値(表中「蒸発率(質量%) 0」):表面張力計CBVP-Z(商品名、協和界面科学株式会社製)を用いて、25℃の環境下で白金プレートをインク組成物で濡らしたときの表面張力を測定した。
蒸発後(表中「蒸発率(質量%) 20」、「蒸発率(質量%) 40」):インク組成物を40℃で放置し、初期の質量(100質量%)に対し20質量%、及び40質量%減少したときの表面張力を、上記同様に25℃で測定した。得られた結果を、初期値に対する蒸発後の表面張力の差(表中「差Δ 蒸発率(質量%) 20」、「差Δ 蒸発率(質量%) 40」)と共に表1に示す。この差Δを絶対値にしたものが、インク組成物を各蒸発率まで蒸発させたときの表面張力の差の絶対値である。
次に、上記で測定した試料とは別の試料のインク組成物を用いて、蒸発率16~24質量%及び36~40質量%までに亘り、16質量%、17質量%、18質量%、19質量%、20質量%、21質量%、22質量%、23質量%、24質量%、36質量%、37質量%、38質量%、39質量%、40質量%の順に、1質量%の間隔でインク組成物の表面張力を測定した。
以上の結果、インク組成物を蒸発率0~20質量%までに亘り蒸発させた中で最も蒸発前のインク組成物の表面張力との差の絶対値が大きいものが蒸発率20質量%であり、インク組成物を蒸発率0~40質量%までに亘り蒸発させた中で最も蒸発前のインク組成物の表面張力との差の絶対値が大きいものが蒸発率20質量%または40質量%の測定結果であったため、これらの蒸発率の、表面張力の値と表面張力の差の絶対値を表中に記載した。
加熱工程としてプラテンに伝熱手段(プラテンヒーター)を設け、プラテンの幅をより長く、大きな幅の記録媒体への記録を可能とし、乾燥工程としてプラテンの記録媒体の搬送方向下流に伝熱手段(ホットプレートヒーター)を設けたSC-S80650(セイコーエプソン社製の商品名)の改造機であるインクジェット方式のプリンタを準備した。次に、プラテンヒーターを表1に記載の1次加熱温度となるよう設定し(ただし、25℃の場合は加熱せずに室温)、プリンタに記録媒体(ポリ塩化ビニルシート(住友スリーエム株式会社製の商品名「IJ-40」)と同じ材質で、その幅を適宜変更したもの)を移送した。キャリッジに搭載した記録用ヘッドの、上流側の記録用ヘッドのノズル列に処理液を充填し、下流側の記録用ヘッドのノズル列にインク組成物を充填し、処理液とインク組成物とをこの順で連続的に記録した。
処理液は、表中の処理液付着量で付着させた。記録パターンは、3×3cmの正方形の記録パターンで記録媒体の一端から他端まで並べて記録した。
後乾燥工程として設けたホットプレートヒーターでは、記録媒体を80℃で約1分間加熱した。また、記録媒体の幅を変更したものをそれぞれ用意して、1走査の時間(秒)を表1の記載に合わせて変えた。例えば、1走査時間が2秒の場合は記録媒体の幅が130cmであり、1走査時間が3秒の場合は記録媒体の幅が180cmであり、1走査時間が1秒である場合は記録媒体の幅が90cmであった。
表2中の加熱工程の温度で、記録媒体に付着したインク組成物の、表2中の1走査時間の2倍の時間後の蒸発率を測定した。測定は、記録媒体に付着させた初期のインク組成物の質量(100質量%)に対する放置した後のインク組成物の質量の減少率を質量測定により測定した。得られた結果を表2に示す。なお、ここでいうインク蒸発率は、本明細書において、ある主走査で付着したインクに次の主走査で吐出したインク組成物が接触したときのインク組成物の最大の蒸発率として想定したものに相当する。
上記〔記録物の作製〕で得られた各記録物について記録パターンを目視で観察し、下記評価基準により画質(ブリード)を評価した。得られた結果を表2に示す。
(評価基準)
A:パターン内部のむら及びパターン淵のインクのにじみが認められなかった。
B:パターン内部のむらは認められないが、パターン淵のインクのにじみが若干認められた。
C:パターン内部のむらが若干認められた。
D:パターン内部のむらが目立った。
E:パターン内部のむらが目立ち、さらにパターン淵のインクのにじみも目立った。
上記〔記録物の作製〕で得られた各記録物について、記録物の幅方向に並ぶ一端から他端までの記録パターンごとに測色器で測色し、記録パターン間の最大ΔEを求めて、下記評価基準により色差を評価した。得られた結果を表2に示す。測色は、CIELABに定めるL*a*b*の値を、グレタグマクベス社製の測色計「Spectrolino」を用いて測定し、その値の差(ΔE)として求めた。
(評価基準)
A:ΔEが0.5以下
B:ΔEが0.5超1以下
C:ΔEが1超1.5以下
D:ΔEが1.5超
上記〔記録物の作製〕の記録を2時間連続で行った後、インク組成物を充填したノズル列のノズルの吐出状態を目視で検査し、下記評価基準により吐出安定性を評価した。得られた結果を表2に示す。なお、記録中、1パスごとにプラテンの側方に設けたフラッシングボックスでフラッシングをおこなった。
(評価基準)
A:不吐出ノズル数が1%以下
B:不吐出ノズル数が1%超3%以下
C:不吐出ノズル数が3%超
上記〔記録物の作製〕で得られた各記録物について、学振型摩擦堅牢度試験機AB-301(テスター産業社製の商品名)に白綿布(JIS L 0803準拠)を取り付けた摩擦子で、荷重250gをかけて35往復擦った。その後、記録物の剥がれを目視で観察し、下記評価基準により耐擦性を評価した。
(評価基準)
A:記録パターンの傷及び剥がれ、並びに白綿布へのインクの移りが認められなかった。
B:記録パターンの目立つ傷及び剥がれは認められなかったが、白綿布へのインクの移りが認められた。
C:記録パターンに目立つ傷又は剥がれが認められた。
実施例は、何れも、インク組成物の表面張力と、インク組成物を蒸発率0~40質量%までに亘り蒸発させたときのインク組成物の表面張力との絶対値の差が1mN/m以下であるインク組成物を用い、加熱工程を備えることにより、色差低減に優れていた。
これに対し、そうではない比較例は何れも、色差低減に劣っていた(色差がD又は色差がE)。
詳細には、実施例3、4から、インク組成物がシリコーン系界面活性剤又はフッ素系界面活性剤を含む場合、画質や色差低減により優れ、シリコーン系界面活性剤を含む場合、特に優れていた。
実施例16と実施例3の比較から、インク組成物が、シリコーン系界面活性剤又はフッ素系界面活性剤と、ポリアルキレンオキシドアルキルエーテル系界面活性剤又はアセチレングリコール系界面活性剤とを含む場合、色差低減により優れていた。
実施例17と実施例3の比較から、インク組成物が、樹脂溶解性溶剤を含むことで、耐擦性が優れ、画質や色差低減にもより優れていた。また、実施例5と実施例3の比較から、樹脂溶解性溶剤として、非環状アミド溶剤を含む場合、耐擦性が特に優れ、また、環状アミド溶剤を含む場合、吐出安定性が特に優れていた。
実施例6、7と実施例4との比較から、処理液付着量が比較的少ない場合、色差低減や耐擦性がより優れていた。また、処理液付着量が比較的多い場合、画質がより優れていた。
実施例8、9と実施例4との比較から、処理液が凝集剤として多価金属塩を含む場合、画質が特に優れ、処理液が凝集剤としてカチオン性樹脂や有機酸を含む場合、色差低減が特に優れ、カチオン性樹脂を含む場合、耐擦性がより優れていた。
実施例10、11と実施例4の比較から、加熱工程の温度が高い場合、画質がより優れていた。一方、加熱工程の温度が低い場合、色差低減、吐出安定性がより優れていた。
実施例12、13と実施例4との比較から、走査時間が短い場合、画質や色差低減や吐出安定性が特に優れていた。一方、走査時間が長い場合、画質や色差低減が低下した。このことから、1走査時間が長く、幅の広い記録物を得る場合でも画質や色差低限に優れる点で、本実施形態が有用であることが判った。
実施例14、15と実施例4の比較から、1走査のインク付着量が少ないほうが、画質及び色差により優れていた。
実施例18、19から、記録方法が処理液付着工程を有さない場合、画質がやや低い傾向があり、加熱工程の温度を高めれば画質は向上する反面、色差低減が悪化する傾向があり、さらに吐出安定性も低下した。このことから、加熱温度を高くせずとも画質の優れる記録方法とできる点で処理液を用いることが好ましいことが判った。
比較例1~3は、インク組成物を蒸発率0~40質量%までに亘り蒸発させたときのインク組成物の表面張力との絶対値の差が1mN/m以下であるインク組成物を用いておらず、色差低減に劣り、画質やや劣った。
なお、表中には記載しなかったが、プランヒーターをオフにして加熱工程を行わなかったこと以外は実施例4と同様にして評価を行ったところ、記録媒体表面温度は25℃であり、走査間のインク蒸発率はほぼ0質量%であった。画質評価はEに悪化したが、色差はAであった。このことから、本願発明は、加熱工程を用いて優れた画質を得られる反面、色差低減が悪化するような場合であっても、優れた色差低減の効果が得られる点で、必要であり有用なものであることがわかった。
Claims (15)
- 記録媒体を加熱する加熱工程と、
有機溶剤と水とを含むインク組成物を、記録用ヘッドを前記記録媒体との相対的な位置を主走査方向に変化させつつ前記記録用ヘッドから吐出する主走査を複数回行うことにより、加熱工程で加熱された前記記録媒体に付着するインク組成物付着工程と、を有し、
前記インク組成物が、該インク組成物の表面張力と、該インク組成物を蒸発率0~40質量%までに亘り蒸発させたときのインク組成物の表面張力と、の差の絶対値が1mN/m以下であるインク組成物であり、
前記加熱工程の加熱による、前記インク組成物が付着される前記記録媒体の表面温度が38℃以下であり、
前記インク組成物付着工程において、ある主走査で記録媒体に付着したインク組成物の、次の主走査で付着したインク組成物が接触するときの蒸発率が、40質量%以下であり、
前記インク組成物が、フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤の何れか1種以上を、前記インク組成物の総質量に対し0.2~2.5質量%含有する、
記録方法。 - 前記インク組成物の成分を凝集させる凝集剤を含有する処理液を前記記録媒体に付着させる処理液付着工程をさらに有する、
請求項1に記載の記録方法。 - 前記インク組成物は、界面活性剤をさらに含み、
前記界面活性剤の含有量は、前記インク組成物の総量に対して、0.5質量%以上である、
請求項1又は2に記載の記録方法。 - 前記インク組成物は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤及びアセチレングリコール系界面活性剤の何れか1種以上を、前記インク組成物の総質量に対し0.05~1質量%含有する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の記録方法。 - 前記インク組成物は、色材として顔料と、樹脂粒子と、をさらに含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の記録方法。 - 前記インク組成物の蒸発前の表面張力は、28mN/m以下である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の記録方法。 - 前記記録媒体が低吸収記録媒体又は非吸収性記録媒体である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の記録方法。 - 1回の前記主走査あたりの前記インク組成物の付着量が、4.0mg/inch2以下である、
請求項1~7のいずれか一項に記載の記録方法。 - 前記インク組成物付着工程において、ある主走査で前記記録媒体に付着させた前記インク組成物に対して、次の主走査で前記記録媒体に吐出した前記インク組成物の少なくとも一部が接触する、
請求項1~8のいずれか一項に記載の記録方法。 - 前記インク組成物付着工程において、ある主走査で記録媒体に付着したインク組成物の、次の主走査で付着したインク組成物が接触するときの蒸発率が、10~40質量%以下である、
請求項1~9のいずれか一項に記載の記録方法。 - 前記インク組成物付着工程が、1回の主走査の時間が1秒以上である主走査により行われる、
請求項1~10のいずれか一項に記載の記録方法。 - 前記インク組成物と前記処理液とを付着させる記録領域において、前記インク組成物の付着量に対する前記処理液の付着量の比が、40質量%以下である領域を有する、請求項11に記載の記録方法。
- 前記インク組成物が、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性の何れか1種以上と、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤及びアセチレングリコール系界面活性剤の何れか1種以上と、をさらに含む、
請求項1~12のいずれか一項に記載の記録方法。 - 主走査方向の幅が50cm以上である記録媒体へ記録を行う、
請求項1~13のいずれか一項に記載の記録方法。 - 請求項1~14のいずれか一項に記載の記録方法で記録を行う記録装置。
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