JP7137782B2 - 記録方法、及び記録装置 - Google Patents

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本発明は、記録方法、及び記録装置に関する。
インクジェット記録方法は、比較的単純な装置で、高精細な画像の記録が可能であり、各方面で急速な発展を遂げている。その中で、より安定して高品質な記録物を得ることについて種々の検討がなされている。
例えば、特許文献1には、保存安定性及び吐出安定性に優れ、かつ、耐擦性に優れた記録物を得ることのできるインクジェットインク組成物を提供することを目的として、水と、溶剤と、コア-シェル構造を有する樹脂と、モノマー成分と、を含み、溶剤のSp値(A)と、モノマー成分のSp値(B)が、所定の関係にあり、モノマー成分の含有量が、インクジェットインク組成物の総量に対して、所定量以下である、インクジェットインク組成物が開示されている。
特開2017-14389号公報
ここで、特許文献1に開示されているようなインク組成物を用いた記録方法では、記録媒体を加熱した後に、インク組成物を記録用ヘッドから、該記録用ヘッドを当該記録媒体との相対的な位置を主走査方向に変化させつつ吐出して記録媒体に付着させる主走査を、複数回行うような場合、いわゆるシリアル記録方式やマルチパス記録方式を用いる場合に、同じ様に記録したにも拘らず色の違いが生じる色差が発生する場合があった。
そこで、本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、画質に優れ色差低減に優れる記録物が得られる記録方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、記録媒体を加熱する加熱工程と、有機溶剤と水とを含むインク組成物を、記録用ヘッドを記録媒体との相対的な位置を主走査方向に変化させつつ記録用ヘッドから吐出する主走査を複数回行うことにより、加熱工程で加熱された記録媒体に付着するインク組成物付着工程とを有し、インク組成物が、該インク組成物の表面張力と、該インク組成物を蒸発率0~40質量%までに亘り蒸発させたときのインク組成物の表面張力と、の差の絶対値が所定値以下であるインク組成物である、記録方法を用いることにより、画質に優れ色差低減に優れる記録物が得られることを見出して、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、記録媒体を加熱する加熱工程と、有機溶剤と水とを含むインク組成物を、記録用ヘッドを前記記録媒体との相対的な位置を主走査方向に変化させつつ前記記録用ヘッドから吐出する主走査を複数回行うことにより、加熱工程で加熱された前記記録媒体に付着するインク組成物付着工程と、を有し、前記インク組成物が、該インク組成物の表面張力と、該インク組成物を蒸発率0~40質量%までに亘り蒸発させたときのインク組成物の表面張力と、の差の絶対値が1mN/m以下であるインク組成物である、記録方法である。
このような記録方法が本発明の課題を解決できる要因は下記のように考えている。ただし、要因はこれに限定されない。すなわち、従来の記録方法は、それに用いるインク組成物を所定量蒸発させたときのインク組成物の表面張力が、蒸発させる前のインク組成物の表面張力に比べて変化が大きいインク組成物を用いていることに起因して、色差のない記録物を得ることができない。一方、本発明に係る記録方法は、記録媒体を加熱している場合においても、インク組成物を蒸発率0~40質量%までに亘り蒸発させたときのインク組成物の表面張力と、の差の絶対値が、1mN/m以下であることにより、色差の発生を抑制して優れた画像を得ることができる。
また、従来の記録方法において、所定量蒸発させる前後のインク組成物の表面張力の差が大きいことに起因して、ブリードが発生する条件をより詳細に、次のように推察する。ある主走査で記録媒体に付着したインク組成物が、次の主走査までに記録媒体上でインク組成物の成分が蒸発してインク組成物の表面張力が大きく変化した後、次の主走査で吐出されたインク組成物とある主走査で付着したインク組成物とが接触し、接触した部分でインク組成物の成分が互いに移動することにより、移動しない場合と比べて付着したインク組成物の状態が異なり、これが記録領域を全体的に見た場合に色の違い、つまり色差の原因となり記録物の品質が劣る。さらに、記録媒体の主走査方向の端と中央等の異なる位置では、ある主走査でインク組成物が付着してから次の主走査でインク組成物が付着するまでの時間が異なり、これにより、記録媒体のインク組成物が付着した位置間の色差が発生し易いと推測する。
また、本発明に係る記録方法は、さらに下記の構成を備えることが好ましい。
前記インク組成物の成分を凝集させる凝集剤を含有する処理液を前記記録媒体に付着させる処理液付着工程をさらに有すると好ましい。
前記インク組成物は、界面活性剤をさらに含み、
前記界面活性剤の含有量は、前記インク組成物の総量に対して、0.5質量%以上であると好ましい。
前記インク組成物は、色材として顔料と、樹脂粒子と、をさらに含むと好ましい。
前記インク組成物の蒸発前の表面張力は、28mN/m以下であると好ましい。
前記記録媒体が低吸収記録媒体又は非吸収性記録媒体であると好ましい。
1回の前記主走査あたりの前記インク組成物の付着量が、4.0mg/inch2以下であると好ましい。
前記インク組成物付着工程において、ある主走査で前記記録媒体に付着させた前記インク組成物に対して、次の主走査で前記記録媒体に吐出した前記インク組成物の少なくとも一部が接触すると好ましい。
前記インク組成物付着工程において、ある主走査で記録媒体に付着したインク組成物の、次の主走査で付着したインク組成物が接触するときの蒸発率が、60質量%以下であると好ましい。
前記インク組成物付着工程が、1回の主走査の時間が1秒以上である主走査により行われると好ましい。
前記インク組成物と前記処理液とを付着させる記録領域において、前記インク組成物の付着量に対する前記処理液の付着量の比が、40質量%以下である領域を有するとより好ましい。
前記インク組成物が、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性の何れか1種以上と、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤及びアセチレングリコール系界面活性剤の何れか1種以上と、をさらに含むと好ましい。
主走査方向の幅が50cm以上である記録媒体へ記録を行うと好ましい。
さらに本発明は、本発明に係る記録方法で記録を行う記録装置である。
本実施形態に用い得るインクジェット記録装置の一例の全体の概略を示す側面図である。 本実施形態に用い得るインクジェット記録装置の一例の全体の概略を示す斜視図である。 本実施形態に用い得るインクジェット記録装置のノズルを有する部材の一例の全体の概略を示す平面図である。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
〔記録方法〕
本実施形態の記録方法は、記録媒体を加熱する加熱工程と、有機溶剤と水とを含むインク組成物(以下、「本実施形態のインク組成物」ともいう。)を、記録用ヘッドを当該記録媒体との相対的な位置を主走査方向に変化させつつ当該記録用ヘッドから吐出する主走査を複数回行うことにより、加熱工程で加熱された当該記録媒体に付着するインク組成物付着工程と、を有する。また、本実施形態のインク組成物の表面張力と、該インク組成物を蒸発率0~40質量%までに亘り蒸発させたときのインク組成物の表面張力との差の絶対値が、1mN/m以下である。
本実施形態の記録方法は、インク組成物の成分を凝集させる凝集剤を含有する処理液を記録媒体に付着させる処理液付着工程をさらに有することができる。処理液付着工程をさらに有することにより、記録媒体に付着したインク組成物が早期に固定化されることで、加熱工程における温度を低く抑えることが可能であり、つまり記録媒体上で付着したインク組成物が蒸発する量を減少させることが可能であり、より優れた画質を得ることができる傾向にある。処理液を、インク組成物の成分を凝集させる機能を有する液の意味で処理液ともいう。
処理液付着工程及びインク組成物付着工程において、処理液付着工程の後にインク組成物付着工程を設けてもよく、インク組成物付着工程の後に処理液付着工程を設けてもよく、処理液付着工程及びインク組成物付着工程を同時に設けてもよい。また、加熱工程は、処理液付着工程及びインク組成物付着工程と同時、或いは前又は後に設けてもよい。
本実施形態の記録方法を用いることにより、画質に優れる記録物が得られる。また、本実施形態の記録方法によると、色差に加え、吐出安定性や耐擦性にも優れた記録物が得られる。このような記録方法を用いることにより、画質に優れる記録物が得られる要因は下記のように考えている。ただし、要因はこれに限定されない。すなわち、従来の記録方法は、それに用いるインク組成物を所定量蒸発させたときのインク組成物の表面張力が、蒸発させる前のインク組成物の表面張力に比べて変化が大きいインク組成物を用いていることに起因して、ブリードが発生して優れた画質を得ることができない。
特に1回の主走査の所要時間が長い場合に、次の主走査までに付着したインク組成物中の成分がより多量に蒸発してしまうことに起因して、色差が発生して優れた画質を得ることができない傾向がある。特に記録媒体が大きい、いわゆるラージフォーマットプリンタで、同様の原因により優れた画質を得ることができない傾向がある。
一方、本実施形態の記録方法は、記録媒体を加熱している場合においても、インク組成物の表面張力と、該インク組成物を蒸発率0~40質量%までに亘り蒸発させたときのインク組成物の表面張力との差の絶対値が、1mN/m以下であることにより、ブリードの発生を抑制して優れた画質を得ることができる。また、ブリードの発生を抑制することに起因して、色差及び耐擦性にも優れた記録物が得られる。さらに、本実施形態のインク組成物は、記録用ヘッドに固形成分が固着しにくいことに起因して、吐出安定性にも優れる。
〔インク組成物〕
本実施形態の記録方法で用いるインク組成物は、有機溶剤と水とを含む。以下、インク組成物に含まれ得る各成分について説明する。
本実施形態のインク組成物の表面張力と、該インク組成物を蒸発率0~40質量%までに亘り蒸発させたときに亘るインク組成物の表面張力と、の差の絶対値は、1mN/m以下である。ここで、上記の表面張力の差の絶対値は、インク組成物を蒸発率0~40質量%まで蒸発させたときに亘り何れの蒸発率においても1mN/m以下である。上記の表面張力の差の絶対値は、表面張力の差を正の値にしたものである。よって該絶対値は0以上の値である。
上記絶対値は、好ましくは0.9mN/m以下であり、より好ましくは0.8mN/m以下であり、さらに好ましくは0.7mN/m以下であり、よりさらに好ましくは0.6mN/m以下であり、さらにより好ましくは0.5mN/m以下である。上記絶対値が上記範囲内であることにより、優れた画質の記録物を得られる。ここでの表面張力は、具体的には後述の実施例の測定法により求められる。また、インク組成物を蒸発率XX質量%まで蒸発させたときの「蒸発率」は、インク組成物中の固形分及び溶媒を含めたインク組成物の蒸発前の総量(100質量%)に対する、蒸発して減った質量比率である。蒸発する成分は、主として水や有機溶剤等の沸点が低い成分であるが、特に限定されない。
本実施形態のインク組成物の表面張力と、該インク組成物を蒸発率0~40質量%までに亘り蒸発させたときのインク組成物の表面張力との差の絶対値は、0mN/m以上であり、限るものでは無いが、好ましくは0.2mN/m以上であり、より好ましくは0.4mN/m以上であり、さらに好ましくは0.5mN/m以下である。上記絶対値が上記範囲内であることにより、記録方法の設計の自由度が増すことや、耐擦性の優れた記録物を得られる点で好ましい。
また、本実施形態のインク組成物の表面張力と、該インク組成物を蒸発率20質量%まで蒸発させたときのインク組成物の表面張力との差の絶対値は、1mN/m以下であり、好ましくは0.7mN/m以下であり、より好ましくは0.5mN/m以下であり、さらに好ましくは0.3mN/m以下である。上記範囲内であることにより、画質により優れる点で好ましい。
インク組成物の表面張力は、特に限定されないが、好ましくは28mN/m以下である。下限は15mN/m以上である。さらには、好ましくは15~28mN/mであり、より好ましくは16~27mN/mであり、さらに好ましくは18~26mN/mである。インク組成物の表面張力が上記範囲内であることにより、より優れた画質の記録物を得られる傾向にある。
インク組成物の表面張力は、表面張力計を用いて、25℃の環境下で、白金プレートを用いたWilhelmy法で行う。測定は、初期値(蒸発前)と蒸発後とで行う。蒸発は、インク組成物を大気開放させ40℃で放置して、質量測定から所定の蒸発率の時のインク組成物の表面張力を測定する。
そして、所定の蒸発率の時のインク組成物の表面張力の、初期のインク組成物の表面張力からの差を算出し、これから絶対値を算出する。具体的には下記の測定法により求められ、より具体的には後述の実施例の測定法により求められる。
インク組成物の表面張力は、一般にインク組成物の蒸発率の僅かな違いによって極端に値が変動するものではない。よって、本実施形態においては、蒸発率0~40質量%までに亘り、所定の蒸発率毎にインク組成物の表面張力を測定する。これにより、蒸発前のインク組成物の表面張力と、該インク組成物を蒸発率0~40質量%までに亘り蒸発させたときのインク組成物の表面張力との差の絶対値が1mN/m以下であるかどうかを、確認することができる。
例えば、上記「所定の蒸発率毎にインク組成物の表面張力を測定する」こととして、蒸発率0~40質量%までに亘り、0質量%、5質量%、10質量%、15質量%、20質量%、25質量%、30質量%、35質量%、40質量%の順に、5質量%の間隔でインク組成物の表面張力を測定することが挙げられる。このようにして得られたインク組成物の表面張力の測定結果の中で、特に蒸発前のインク組成物の表面張力との差の絶対値が大きいものがあった場合、その測定結果に対応する蒸発率を決定し、さらに追加の測定を行ってもよい。例えば、決定した蒸発率の前後4質量%の範囲の蒸発率について、5質量%よりも小さい間隔で蒸発率が異なるインク組成物の表面張力をさらに測定してもよい。具体的には、決定した蒸発率30質量%についての前後4質量%の範囲として、蒸発率26~34質量%までに亘り、26質量%、27質量%、28質量%、29質量%、30質量%、31質量%、32質量%、33質量%、34質量%の順に、1質量%の間隔でインク組成物の表面張力を測定することを、さらに行ってもよい。
上述のようにして、蒸発前のインク組成物の表面張力と、インク組成物を蒸発率0~40質量%までに亘り蒸発させたときのインク組成物の表面張力との差の絶対値が1mN/m以下であるかどうかを、確認することができる。
<色材>
本実施形態のインク組成物は、色材をさらに含む着色インク組成物としてもよく、また、クリアインク組成物としてもよい。着色インク組成物は、記録媒体への着色に用いるインクである。クリアインク組成物は記録媒体への着色に用いるインクではなく、記録物の耐擦性や光沢性等の品質を改善するために用いるインクであり、色材のクリアインク組成物中の含有量は、好ましくは0.2質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下であり、さらに好ましくは0.05質量%以下であり、特に好ましくは0.01質量%以下であり、0質量%でもよい。
色材としては、顔料を用いることができる。顔料としては、特に限定されないが、例えば、以下のものが挙げられる。
ブラックインクに使用されるカーボンブラックとしては、特に限定されないが、例えば、No.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B等(以上、三菱化学社(Mitsubishi Chemical Corporation)製)、Raven 5750、Raven 5250、Raven 5000、Raven 3500、Raven 1255、Raven 700等(以上、コロンビアカーボン(Carbon Columbia)社製)、Rega1 400R、Rega1 330R、Rega1 660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400等(キャボット社(CABOT JAPAN K.K.)製)、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、Color B1ack S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、Special Black 4(以上、デグッサ(Degussa)社製)が挙げられる。
ホワイトインクに使用される顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントホワイト 6、18、21、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、白色の中空樹脂粒子及び高分子粒子が挙げられる。
イエローインクに使用される顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントイエロー 1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、167、172、180が挙げられる。
マゼンタインクに使用される顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントレッド 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48:2、48:5、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、又はC.I.ピグメントヴァイオレット 19、23、32、33、36、38、43、50が挙げられる。
シアンインクに使用される顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントブルー 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:34、15:4、16、18、22、25、60、65、66、C.I.バットブルー 4、60が挙げられる。
また、上記以外の顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントグリーン 7,10、C.I.ピグメントブラウン 3,5,25,26、C.I.ピグメントオレンジ 1,2,5,7,13,14,15,16,24,34,36,38,40,43,63が挙げられる。
色材は、自己分散型顔料及びポリマー分散型顔料からなる群より選択される1種又は2種以上の顔料を含むことが好ましい。これにより、色材が記録物中に均一に分散されることに起因して、光沢性により優れる傾向にある。
自己分散型顔料とは、その表面に親水基を有する顔料である。親水基としては、-OM、-COOM、-CO-、-SO3M、-SO2M、-SO2NH2、-RSO2M、-PO3HM、-PO32、-SO2NHCOR、-NH3、及び-NR3からなる群より選択される少なくとも1種の親水基であることが好ましい。
なお、これらの化学式中、Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、置換基を有していてもよいフェニル基、又は有機アンモニウムを表し、Rは、炭素原子数1~12のアルキル基又は置換基を有していてもよいナフチル基を表す。また、上記のM及びRは、それぞれ互いに独立して選択される。
自己分散型顔料は、具体的には、顔料に物理的処理及び/又は化学的処理を施すことで、上記親水基を顔料の表面に結合(グラフト)させて製造される。当該物理的処理として、具体的には、真空プラズマ処理等が挙げられる。また、当該化学的処理として、具体的には水中で酸化剤により酸化する湿式酸化法、p-アミノ安息香酸を顔料表面に結合させることによりフェニル基を介してカルボキシル基を結合させる方法等が挙げられる。
上記のポリマー分散型顔料とは、ポリマーによって液中に分散可能となった顔料である。顔料に対するポリマーの含有量は、顔料を被覆するポリマーの被覆率として表すことができる。ポリマーの被覆率は、1.0~50%が好ましく、1.0~10%がより好ましく、1.0~5.0%がさらに好ましい。この被覆率が1.0%以上であることで、分散性が良好なものとなる傾向にある。また、上記被覆率が50%以下であることで、発色性がさらに良好なものとなる傾向にあり、5.0%以下であることで、発色性がなおも一層良好なものとなる傾向にある。上記のような顔料を分散させるためのポリマーを分散剤樹脂ともいう。
上記ポリマーは、その構成成分のうち70質量%以上が(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド等のアクリル系モノマーを少なくとも構成成分とした共重合によるポリマーであるアクリル系樹脂が好ましい。アクリル系樹脂における、アクリル系モノマーの構成比は、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。アクリル系樹脂はアクリル系モノマーのモノマーを構成としてもよく、アクリル系モノマー以外のモノマーの構成比は、70質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
アクリル系モノマー以外のモノマーとしては、例えばビニルモノマーが挙げられ、スチレン等が挙げられる。
これにより、インクの定着性及び光沢性に一層優れるものとなる傾向にある。また、炭素数1~24のアルキル(メタ)アクリレート及び炭素数3~24の環状アルキル(メタ)アクリレートのうち少なくとも一方が70質量%以上のモノマー成分から重合されたものであることがより好ましい。当該モノマー成分として、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート、及びベヘニル(メタ)アクリレートが挙げられる。また、その他の重合用モノマー成分として、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有するヒドロキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等も挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「メタクリレート」及び「アクリレート」の両方を含む概念である。
インク組成物において、色材の含有量は、インク組成物の総量(100質量%)に対して固形分量換算で、好ましくは0.1~25質量%であり、より好ましくは0.1~20質量%であり、さらに好ましくは0.1~18質量%である。さらには、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは6質量%以下であり、特に好ましくは5質量%以下である。色材の含有量が上記範囲内であることにより、発色性がより向上する傾向にある。
<樹脂粒子>
本実施形態の樹脂粒子(以下、「樹脂分散体」、「樹脂エマルジョン」、「バインダ樹脂」ともいう。)は、樹脂を含む粒子である。本実施形態の樹脂粒子は、水に安定に分散させるために必要な親水成分が導入された自己分散型の樹脂粒子(自己分散型樹脂粒子)であってもよいし、外部乳化剤の使用により水分散性となる樹脂粒子であってもよい。本実施形態のインク組成物は、色材として顔料と、樹脂粒子とをさらに含むことが好ましい。
樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂((メタ)アクリル系樹脂ともいう)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えばポリエチレン樹脂)、アクリル系樹脂の中でもスチレンアクリル系樹脂、フルオレン系樹脂、ロジン変性樹脂、テルペン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、及びエチレン酢酸ビニル系樹脂が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、及びスチレンアクリル系樹脂からなる群より選択される1種又は2種以上であることが好ましく、ウレタン系樹脂及びスチレンアクリル系樹脂からなる群より選択される1種又は2種以上であることがより好ましい。これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」は、「メタクリル」及び「アクリル」の両方を含む概念である。アクリル系という場合は、「メタクリル」及び「アクリル」の両方を含む意味とする。よってアクリル系樹脂は、アクリルモノマーまたはメタクリルモノマーの何れかを構成とする樹脂である。
ウレタン系樹脂としては、ウレタン結合以外に、主鎖にエーテル結合を含むポリエーテル型ウレタン樹脂、主鎖にエステル結合を含むポリエステル型ウレタン樹脂、主鎖にカーボネート結合を含むポリカーボネート型ウレタン樹脂が挙げられる。これらの中では、主鎖にエステル結合を含むポリエステル型ウレタン樹脂が好ましい。これらのウレタン樹脂は、1種を単独で又は複数種を組み合わせて使用することができる。
ウレタン系樹脂の市販品としては、UW-1501F、UW-5002(以上、宇部興産株式会社製商品名)、W-6061、W-6110(以上、三井化学株式会社製商品名)UX-150、UX-390、UX-200(以上、三洋化成工業株式会社製商品名)が挙げられる。
スチレンアクリル系樹脂としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、4-t-ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル単量体類と、上述した(メタ)アクリル系樹脂に用いられる単量体との共重合体が挙げられ、公知のものを適宜用いることも可能である。また、これらの中でも、後述する実施例に記載のスチレンアクリル系樹脂が好ましい。
インク組成物において、樹脂粒子の含有量は、インク組成物の総量(100質量%)に対して固形分換算で、好ましくは0.1~20質量%であり、より好ましくは1.0~15質量%であり、さらに好ましくは1~12質量%である。樹脂粒子の含有量が上記範囲内であることにより、耐擦性及び吐出安定性により優れる傾向にある。
<有機溶剤>
本実施形態のインク組成物は、有機溶剤を含む。これにより、記録媒体に着弾したインク組成物の乾燥性をより高い水準で得ることができることに起因して、優れた耐擦性及び画質が得られる傾向にある。
有機溶剤として、本実施形態で使用する樹脂粒子等の樹脂成分を、後述の加熱工程における加熱温度付近において膨潤及び/又は溶解させることが可能な溶剤(樹脂溶解性溶剤)を含むことが好ましい。インク組成物が樹脂溶解性溶剤を含む場合、インクの成分や記録媒体の表面を溶解して、インクの記録媒体への浸透を促進することでインクの記録媒体で固定し、画質や色差低減や耐擦性等が特に優れる点で好ましい。樹脂溶解性溶剤としては、例えば、下記に挙げる有機溶剤の中で、環状アミド類、非環状アミド類等、等のアミド系溶剤が挙げられる。
有機溶剤の種類としては、特に限定されないが、上記のものや他のものとして、例えば、環状窒素化合物、非プロトン性極性溶剤、モノアルコール、アルキルポリオール、グリコールエーテル等が挙げられる。
有機溶剤は、環状窒素化合物及び非プロトン性極性溶剤の少なくともいずれかを含有することが好ましい。インク組成物は環状窒素化合物又は非プロトン性極性溶剤を含有することにより、樹脂粒子の見かけのガラス転位温度を低温側に移行させることができ、本来よりもコアポリマー及びシェルポリマーを低い温度で軟化させることができることから、記録媒体へのインク組成物の定着性を向上させることができる傾向にある。これにより、特に、記録媒体がポリ塩化ビニルからなる場合に、記録媒体へのインク組成物の定着性を向上させることができる。
非プロトン性極性溶剤としては、特に限定されないが、例えば、環状ケトン化合物、鎖状ケトン化合物、及び鎖状窒素化合物が挙げられる。また、環状窒素化合物及び非プロトン性極性溶剤としては、ピロリドン系、イミダゾリジノン系、スルホキシド系、ラクトン系、アミドエーテル系の溶剤が代表例として挙げられる。具体的には、これらの中でも2-ピロリドン、N-アルキル-2-ピロリドン(例えばN-メチルピロリドン)、1-アルキル-2-ピロリドン、γ‐ブチロラクトン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、及び1,2-ジメチルイミダゾールが好ましい。
環状アミド類としては、上記のうち、ピロリドン類等の環状構造を有するアミドが挙げられる。
非環状アミド類としては、上記のうち、非環状構造を有するアミドが挙げられ、特に限定されないが、例えば、N、N-ジアルキルプロピオンアミド類が挙げられ、例えば3-ブトキシ-N、N-ジメチルプロピオンアミド、及び3-メトキシ-N、N-ジメチルプロピオンアミド)が挙げられる。
モノアルコールとしては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、iso-プロピルアルコール、n-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール、iso-ブタノール、n-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、及びtert-ペンタノールが挙げられる。
アルキルポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、ジプロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール(1,3-プロパンジオール)、イソブチレングリコール(2-メチル-1,2-プロパンジオール)、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール(1,3-ブチレングリコール)、1,4-ブタンジオール、2-ブテン-1,4-ジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、及び1,8-オクタンジオールが挙げられる。アルキルポリオールとしては炭素数2~8のものが好ましく、水酸基数は2~3が好ましい。インク組成物がアルキルポリオールを含む場合、吐出安定性や耐擦性や画質が特に優れ好ましい。
グリコールエーテルとしては、特に限定されないが、例えば、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-iso-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-iso-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-iso-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、及びジプロピレングリコールモノ-iso-プロピルエーテルが挙げられる。グリコールエーテルとしては炭素数3~10のものが好ましい。また、炭素数4以下のアルキル基のエーテルであることが好ましい。また、モノエーテルであることが好ましい。インク組成物がグリコールエーテルを含む場合、吐出安定性や画質が特に優れ好ましい。
有機溶剤の含有量は、インク組成物の総量(100質量%)に対し、好ましくは3.0~70質量%であり、より好ましくは5.0~50質量%であり、さらに好ましくは10~30質量%である。有機溶剤の含有量が70質量%以下であることにより、記録媒体に付着したインク組成物の乾燥性がより向上する傾向にある。また、有機溶剤の含有量が3.0質量%以上であることにより、インク組成物の吐出安定性を確保できる傾向にある。
有機溶剤は、標準沸点が270℃以下の有機溶剤であることが好ましく、150~250℃の有機溶剤であることがより好ましく、180~230℃の有機溶剤であることが特に好ましい。有機溶剤の沸点が上記範囲である場合、吐出安定性、耐擦性、画質等がより優れる。また、標準沸点が上記の範囲である有機溶剤のインク中の含有量は、上記の有機溶剤の好ましい含有量の範囲とすることができ、好ましい。
標準沸点が上記範囲の有機溶剤は、上記に挙げる有機溶剤の中から、適宜選択することができる。
また本実施形態のインク組成物は、標準沸点が280℃以上のアルキルポリオールである有機溶剤の含有量が、該インク組成物の総量(100質量%)に対して、好ましくは5.0質量%以下であり、より好ましくは3.0質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以下であり、特に好ましくは、0.5質量%以下であり、一層好ましくは0.02質量%以下であり、下限は0質量%以上である。
また、標準沸点が280℃以上の有機溶剤の含有量が、該インク組成物の総量(100質量%)に対して、好ましくは5.0質量%以下であり、より好ましくは3.0質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以下であり、含有量の下限は0質量%以上である。標準沸点が280℃以上の有機溶剤は、下記に挙げる有機溶剤の中から、適宜選択することができる。標準沸点が280℃以上の有機溶剤、特にポリオールである有機溶剤の含有量が上記の範囲の場合、インクの画質や耐擦性が特に優れ好ましい。
また、樹脂溶解性溶剤の含有量が、該インク組成物の総量(100質量%)に対して、好ましくは5~35質量%以下であり、より好ましくは10~30質量%以下であり、さらに好ましくは15~25質量%以下である。
また、樹脂溶解性溶剤以外の有機溶剤の含有量が、該インク組成物の総量(100質量%)に対して、好ましくは3~30質量%以下であり、より好ましくは5~25質量%以下であり、さらに好ましくは10~20質量%以下である。各有機溶剤の含有量が上記範囲である場合、画質や吐出安定性や色差低減や耐擦性がより優れる点で好ましい。樹脂溶解性溶剤以外の有機溶剤のとしては、特に、アルキルポリオールまたはグリコールエーテルが挙げられる。
<界面活性剤>
インク組成物は、界面活性剤をさらに含むことが好ましい。界面活性剤を含むことにより、インク組成物の表面張力と、インク組成物を蒸発率0~40質量%までに亘り蒸発させたときのインク組成物の表面蒸発時のインクの表面張力との差の絶対値が1mN/m以下であるように制御することが容易となり、より優れた画質を得られる傾向にある。界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、及びシリコーン系界面活性剤等が挙げられる。この中でも、フッ素系界面活性剤、及びシリコーン系界面活性剤が好ましい。また、フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤の何れか1種以上と、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤及びアセチレングリコール系界面活性剤の何れか1種以上と、を含むことが、色差低減の点でより好ましい。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテルが挙げられ、市販品として、例えば、DW800(商品名、ビック・ケミー社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル基含有界面活性剤)が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール及び2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのアルキレンオキサイド付加物、並びに2,4-ジメチル-5-デシン-4-オール及び2,4-ジメチル-5-デシン-4-オールのアルキレンオキサイド付加物から選択される1種以上が好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、例えば、オルフィン104シリーズやオルフィンE1010等のEシリーズ(エアプロダクツ社(Air Products Japan, Inc.)製商品名)、サーフィノール104、465、61、DF110D(日信化学工業社(Nissin Chemical Industry CO.,Ltd.)製商品名)が挙げられる。アセチレングリコール系界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
フッ素系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルベタイン、及びパーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物が挙げられる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、例えば、MF410(商品名、DIC社製、パーフルオロアルキル基含有カルボン酸塩界面活性剤)、S-144、S-145(以上商品名、旭硝子株式会社製);FC-170C、FC-430、フロラード-FC4430(以上商品名、住友スリーエム株式会社製);FSO、FSO-100、FSN、FSN-100、FS-300(以上商品名、Dupont社製);FT-250、251(以上商品名、株式会社ネオス製)が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
シリコーン系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリシロキサン系化合物、及びポリエーテル変性オルガノシロキサンが挙げられる。シリコーン系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、具体的には、BYK-306、BYK-307、BYK-333、BYK-341、BYK-345、BYK-346、BYK-347、BYK-348、BYK-349(以上商品名、ビックケミー社製)、KF-351A、KF-352A、KF-353、KF-354L、KF-355A、KF-615A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、KF-6020、X-22-4515、KF-6011、KF-6012、KF-6015、KF-6017(以上商品名、信越化学社製)等が挙げられる。シリコーン系界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤の含有量は、インク組成物の総量(100質量%)に対して、好ましくは0.3~2.5質量%であり、より好ましくは0.5~1.8質量%であり、さらに好ましくは0.5~1.5質量%である。界面活性剤の含有量が上記範囲内であることにより、記録媒体に付着したインク組成物の濡れ性がより向上し、より優れた画質が得られ、吐出安定性により優れる傾向にある。
また、フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤の何れか1種以上の含有量が、インク組成物の総質量に対して、好ましくは0.2~2.5質量%であり、より好ましくは0.5~1.8質量%であり、さらに好ましくは0.5~1.5質量%である。
また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤及びアセチレングリコール系界面活性剤の何れか1種以上の含有量が、インク組成物の総質量に対して、好ましくは0.05~1質量%であり、より好ましくは0.1~0.8質量%であり、さらに好ましくは0.3~0.7質量%である。
<水>
本実施形態の水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、及び蒸留水等の純水、並びに超純水のような、イオン性不純物を極力除去したものが挙げられる。また、紫外線照射又は過酸化水素の添加等によって滅菌した水を用いると、処理液を長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止することができる。これにより貯蔵安定性がより向上する傾向にある。インク組成物中の水の含有量は、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。水の含有量の上限は限るものでは無いが95質量%以下が好ましい。
本実施形態のインク組成物は水系インク組成物であることが好ましい。水系とは、組成物に含む溶媒成分として少なくとも水を主要な成分とするものであり、水の組成物中の含有量が30質量%以上である。水系の組成物は、低公害性、低毒性、安全性が高い点で、好ましい。
インク組成物は、その他の成分として、溶解助剤、粘度調整剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、腐食防止剤、分散に影響を与える金属イオンを捕獲するためのキレート化剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム)等の、種々の添加剤を適宜含有することもできる。
〔処理液〕
本実施形態の記録方法は処理液を用いてもよい。処理液は、上述したインク組成物を凝集又は増粘させることが可能な凝集剤を含有する。本実施形態のインク組成物は、当該処理液と共に記録方法に用いられることで、優れた画質の記録物を得ることができる。処理液は、該処理液中の凝集剤がインク組成物と相互作用することにより、インク組成物に含まれる成分を凝集させインク組成物を増粘又は不溶化する。これにより、その後に付着させるインク組成物の着弾干渉、ブリードを抑制でき、ラインや微細像等を均質に描画することができる。記録方法が処理液を用いる場合、インクの成分を凝集させることにより記録媒体上でのインクの流動を止めることができ、インクの蒸発率が低くとも画質が優れる点で好ましい。また、インクの蒸発率が低くても画質が優れるため、インクの蒸発率を低くすることができ、色差低減が優れ好ましい。
<凝集剤>
処理液に含まれる凝集剤は、特に限定されないが、カチオン性樹脂、有機酸、多価金属塩、のいずれかを含むことが好ましい。これにより、ベタムラ及び滲みがより抑制される傾向にある。インク組成物に含まれる成分のうち、凝集剤により凝集する成分としては、上述の顔料、樹脂粒子に用いられる樹脂が挙げられる。
カチオン性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、カチオン性ポリマーが挙げられる。本発明による効果をより有効かつ確実に奏する観点から、カチオン性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン及びポリアリルアミン等のポリアリルアミン樹脂、アルキルアミン重合物、特開昭59-20696号、同59-33176号、同59-33177号、同59-155088号、同60-11389号、同60-49990号、同60-83882号、同60-109894号、同62-198493号、同63-49478号、同63-115780号、同63-280681号、特開平1-40371号、同6-234268号、同7-125411号、同10-193776号公報等に記載された1~3級アミノ基、4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。同様の観点から、これらのカチオンポリマーの重量平均分子量は、5000以上が好ましく、更に5000~10万程度が好ましい。カチオンポリマーの重量平均分子量は、標準物質としてポリスチレンを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定される。
カチオン性樹脂のなかでも、カチオン性の、ポリアリルアミン樹脂、ポリアミン樹脂、ポリアミド樹脂等のアミン系樹脂が、画質が優れる点で好ましい。ポリアリルアミン樹脂、ポリアミン樹脂、ポリアミド樹脂は、それぞれポリマーの主骨格中に、ポリアリルアミン構造、ポリアミン構造、ポリアミド構造を有する樹脂である。
有機酸としては、特に限定されないが、カルボン酸であると好ましく、例えば、マレイン酸、酢酸、リン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、及びクエン酸が挙げられる。このなかでも、1価又は2価以上のカルボン酸が好ましい。このようなカルボン酸を含むことにより、ポリマー及びワックスの凝集効果がより向上し、ひいては発色性により優れる傾向にある。なお、有機酸は1種単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
多価金属塩としては、特に限定されないが、本発明による効果をより有効かつ確実に奏する観点から、無機酸の多価金属塩又は有機酸の多価金属塩が好ましい。このような多価金属塩としては、特に限定されないが、例えば、周期表の第2族のアルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム)、周期表の第3属の遷移金属(例えば、ランタン)、周期表の第13族からの土類金属(例えば、アルミニウム)、及びランタニド類(例えば、ネオジム)の塩が挙げられる。また、これら多価金属の塩としては、カルボン酸塩(例えば、蟻酸、酢酸、安息香酸塩)、硫酸塩、硝酸塩、塩化物、及びチオシアン酸塩が好適である。中でも、多価金属塩としては、カルボン酸(蟻酸、酢酸、安息香酸塩等)のカルシウム塩又はマグネシウム塩、硫酸のカルシウム塩又はマグネシウム塩、硝酸のカルシウム塩又はマグネシウム塩、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及びチオシアン酸のカルシウム塩又はマグネシウム塩からなる群より選択される1種又は2種以上が好ましい。なお、多価金属塩は、1種単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
凝集剤の含有量は、処理液の総量(100質量%)に対して固形分量換算で、0.1~25質量%が好ましく、1~25質量%がより好ましく、1~20質量%がさらに好ましく、1~10質量%が特に好ましく、1~7質量%が一層好ましい。凝集剤の含有量が上記範囲内であることにより、より画質に優れた記録物が得られる傾向にある。
本実施形態で用いる処理液は、上述したインク組成物に用いられるのと同様の界面活性剤、有機溶剤及び水を、インク組成物とは独立して含んでもよい。また、その処理液は、その他の成分として、溶解助剤、粘度調整剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、腐食防止剤、分散に影響を与える金属イオンを捕獲するためのキレート化剤等の、種々の添加剤を適宜添加することもできる。
〔加熱工程〕
本実施形態の記録方法は、記録媒体を加熱する工程を有する。加熱工程により、記録媒体に付着したインク組成物の蒸発を促進してブリードを抑制し画質に優れる記録方法とすることができる。加熱工程において加熱する手段は、記録媒体を加熱できるものであれば特に限定されないが、例えばヒーターによる加熱が挙げられる。加熱は、記録媒体に接触する記録媒体支持部等の部材から熱を記録媒体へ伝導させる伝導式、記録媒体へファン等により熱を有する風を送る送風式、IR等の熱を生成する放射線を記録媒体へ照射する放射式等の少なくとも何れかを用いることが好ましい。加熱工程により加熱され常温より高い温度になっている記録媒体へインク組成物付着工程が行われることが、画質等が優れる点で好ましい。加熱工程は、インク組成物付着工程の前や並行して行われることが好ましい。
加熱工程は、画質形成を高める観点から、下限を限定するものではないが、25℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、32℃以上がさらにより好ましく、35℃以上であることがさらに好ましい。また該温度は、吐出安定性が優れる点で、45℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましく、38℃以下がさらに好ましい。該温度は記録媒体の記録面のインクが付着される場所の表面温度である。
加熱工程は、例えば、後述する記録装置が備える第1乾燥部40によって実現できる。
〔後加熱工程〕
本実施形態の記録方法は、インク組成物付着工程後の記録媒体を加熱する後加熱工程を有してもよい。後加熱工程において加熱する手段としては上述の加熱工程で好ましく用いられるものを独立して別途用いることができる。後加熱工程は、記録物を使用することができるように、最終の加熱を行う工程としてもよい。後加熱工程は、例えば、後述する記録装置が備える第2乾燥部50によって実現できる。後加熱工程の記録媒体表面温度は、50~120℃が好ましく、60~100℃がより好ましく、70~90℃がさらに好ましい。
〔処理液付着工程〕
本実施形態の記録方法は、処理液付着工程を有してもよい。処理液付着工程は、処理液を記録媒体に対して付着させる工程である。処理液を付着させる手段としては、特に限定されないが、例えば、ローラー塗布、スプレー塗布、インクジェット方式を利用することができる。このなかでも、インクジェット方式により付着させることが好ましい。処理液をインクジェット方式により付着させることにより、メディアの面質変化の抑制や、耐擦性がより向上する傾向にある。
記録物の記録領域における処理液付着量は、好ましくは0.1~20mg/inch2であり、より好ましくは1.0~15mg/inch2であり、さらに好ましくは2.0~10mg/inch2である。処理液付着量が上記範囲内であることにより、より画質に優れた記録物が得られる傾向にある。ここで、「記録領域」とは、記録媒体表面上の画像が形成される領域をいう。
処理液付着工程の後にインク組成物付着工程を設ける場合、処理液付着工程の終了からインク組成物付着工程の開始までの時間間隔は、好ましくは30秒以下であり、より好ましくは0.01~20秒であり、さらに好ましくは0.01~15秒であり、特に好ましくは0.01~10秒である。処理液付着工程の終了からインク組成物付着工程の開始までの時間間隔が10秒以下であることにより、処理液とインク組成物との反応効率がより向上し、得られる記録物の画質がより向上する傾向にある。特に、インク組成物による被膜の膜厚が小さいときには、時間間隔が短いほうが好ましい。
なお、処理液の付着量はインク組成物の付着量と比べて比較的少ないものであり、また、処理液の付着からインク組成物の付着までの時間で処理液の蒸発が進むことから、インク組成物を記録媒体に付着する時点での、処理液に起因し記録媒体に残存する未蒸発成分のインク組成物への影響は少ないと推測する。
〔インク組成物付着工程〕
インク組成物付着工程は、インク組成物を記録媒体に対して付着させる工程であり、本実施形態のインク組成物を記録用ヘッドから、該記録用ヘッドを記録媒体との相対的な位置を主走査方向に変化させつつ吐出して記録媒体に付着させる主走査を、複数回行い、記録物を得る工程である。上述した処理液付着工程と同時に又は処理液付着工程の前後に設けることができるが、本発明による作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、処理液付着工程の後に設けることが好ましい。インク組成物を付着させる手段としては、特に限定されないが、例えば、ローラー塗布、スプレー塗布、インクジェット方式を利用することができる。このなかでも、インクジェット方式により付着させることが好ましい。インク組成物をインクジェット方式により付着させることにより、メディアの面質変化の抑制や、耐擦性がより向上する傾向にある。
インク組成物付着工程が、1回の主走査の時間が、1秒以上である主走査により行われることが好ましく、2秒以上である主走査により行われることがより好ましく、3秒以上である主走査により行われることがさらに好ましい。また、該時間が6秒以下である主走査により行われることが好ましく、4秒以下である主走査により行われることがより好ましく、3秒以下である主走査により行われることがさらに好ましい。
主走査は、記録すべき画像によっては記録媒体の主走査方向の一端から他端まで記録しない走査を有してもよい。また、記録方法において記録媒体の主走査方向の記録が可能な一端から他端まで記録した場合の主走査を有してもよく、この場合の主走査の時間を「1回の主走査の最大の時間」とする。1回の主走査の最大の時間が上記の範囲とすることも好ましい。1回の主走査の時間が上記範囲の場合、記録幅が大きく有用な記録物が記録可能な点や、記録物の色差低減や吐出安定性がより優れる点で好ましい。
記録物の記録領域におけるインク付着量は、好ましくは7~50mg/inch2である領域を有し、より好ましくは10~25mg/inch2である領域を有し、さらに好ましくは12~25mg/inch2である領域を有する。インク付着量が上記範囲内であることにより、得られる記録物の画質により優れる傾向にある。また、記録領域のうち、インク付着量が最大である領域のインク付着量が上記範囲であるとすることも好ましい。
本実施形態の記録方法が、処理液付着工程を有する場合における記録領域において、インク組成物の付着量(100質量%)に対する処理液の付着量の比率が、40質量%以下である領域を有することが好ましく、3~30質量%である領域を有することがより好ましく、5~20質量%である領域を有することがさらに好ましく、7~15質量%である領域を有することが特に好ましい。上記比率が上記範囲内であることにより、得られる記録物の画質により優れる傾向にある。また、記録方法において、記録領域のうちインク組成物の付着量が最大である領域において、インク組成物の付着量に対する処理液の付着量の比率が上記範囲であることも好ましい。また、記録方法において、記録領域が、インク組成物の付着量に対する処理液の付着量の比率の上限が上記範囲であることも好ましい。
インク組成物付着工程において、1回の主走査のインク付着量が、好ましくは4.0mg/inch2以下であり、より好ましくは3.0mg/inch2以下であり、さらに好ましくは2.0mg/inch2以下であり、また、好ましくは0.3mg/inch2以上であり、より好ましくは0.7mg/inch2以上であり、さらに好ましくは1.0mg/inch2以上である。1回の主走査のインク付着量が上記範囲内であることにより、得られる記録物の画質により優れる傾向にある。
インク組成物付着工程が、1回の主走査のインク付着量が上記範囲である主走査を有することとすることも好ましい。また、インク組成物付着工程が、1回の主走査のインク付着量が最大である主走査が上記範囲であるとすることも好ましい。
なお、1回の主走査のインク付着量が上記範囲である主走査を有して、複数回の主走査により記録領域にインクを付着させることで、前述の記録物の記録領域におけるインク付着量とさせてもよい。
インク組成物付着工程において、ある主走査で記録媒体に付着させたインク組成物に対して、次の主走査で記録媒体に吐出したインク組成物の少なくとも一部が接触することが好ましい。ここで、「次の主走査」とは、ある主走査の次に行われる走査である。
また、ある主走査で付着させたインク組成物が、該主走査の次の主走査が行われるまでに蒸発する蒸発率は、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下であり、さらに好ましくは45質量%以下であり、よりさらに好ましくは40質量%以下である。また、好ましくは、10質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上であり、さらに好ましくは30質量%以上である。上記蒸発率は、記録媒体へ付着したインク組成物の、付着から1回の走査の時間の2倍の時間後の蒸発率とする。後述する実施例で測定する「走査間のインク蒸発率」である。記録媒体の一方の端から他方の端へ行うある主走査で一方の端にインクを付着してから、次の主走査で記録媒体の他方の端から一方の端まで主走査が行われ一方の端にインクが付着されるまでの時間として想定した。ある主走査で付着したインクに次の主走査で付着したインクが接触すると仮定した場合の最も長い時間を想定したものである。
該蒸発率は、記録方法の条件下で、主走査において記録媒体に付着させたインク組成物の、付着から1回の主走査の時間の2倍の時間後の質量の減少を測定することで確認することができる。質量はインク組成物全体の質量である。蒸発率を測定する際には、測定用の操作を行うこととし、処理液を使用せずに、記録方法と同じ条件で記録媒体にインク組成物を付着させ、付着後の経過時間と質量の測定から質量変化の検量線を得て、1走査の時間の2倍の時間後の質量変化を得る方法を用いてもよい。上記蒸発率が上記範囲内であることにより、得られる記録物の画質や色差低減により優れる傾向にある。
〔記録媒体〕
記録媒体としては、例えば、吸収性、低吸収性、又は非吸収性記録媒体が挙げられる。このなかでも、記録媒体が、低吸収記録媒体又は非吸収性記録媒体であることが好ましい。低吸収記録媒体又は非吸収性記録媒体を用いた場合、その表面で処理液が弾かれて凝集剤が均一に塗布しにくいため、ベタムラやブリードがより生じやすい。ところが、本実施形態においては、インク組成物により処理液が弾かれることを防止できるため、特に有用である。また、低吸収記録媒体又は非吸収性記録媒体を用いた場合、凝集剤がその記録媒体に浸透せず記録媒体表面に残存しやすいため、記録面のべたつきや耐擦性が悪化する傾向がある。ところが、本実施形態においては、上述のインク組成物を用いることにより処理液の使用量を低減できるため、記録面のべたつきを改善することができ、特に有利である。
ここで、「低吸収性記録媒体」又は「非吸収性記録媒体」は、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msecまでの水吸収量が10mL/m2以下である記録媒体をいう。このブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として最も普及している方法であり、日本紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)でも採用されている。試験方法の詳細は「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法2000年版」の規格No.51「紙及び板紙-液体吸収性試験方法-ブリストー法」に述べられている。
また、非吸収性記録媒体又は低吸収性記録媒体は、記録面の水に対する濡れ性によって分類することができる。具体的には、記録媒体の記録面に0.5μLの水滴を滴下し、接触角の低下率(着弾後0.5ミリ秒における接触角と5秒における接触角の比較)を測定することによって記録媒体を特徴付けることができる。より具体的には、記録媒体の性質として、「非吸収性記録媒体」の非吸収性は上記の低下率が1%未満のことを指し、「低吸収性記録媒体」の低吸収性は上記の低下率が1%以上5%未満のことを指す。また、吸収性とは上記の低下率が5%以上のことを指す。なお、接触角はポータブル接触角計 PCA-1(協和界面科学株式会社製)等を用いて測定することができる。
吸収性記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、インク組成物の浸透性が高い電子写真用紙等の普通紙、インクジェット用紙(シリカ粒子やアルミナ粒子から構成されたインク吸収層、あるいは、ポリビニルアルコール(PVA)やポリビニルピロリドン(PVP)等の親水性ポリマーから構成されたインク吸収層を備えたインクジェット専用紙)から、インク組成物の浸透性が比較的低い一般のオフセット印刷に用いられるアート紙、コート紙、キャスト紙が挙げられる。
低吸収性記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、表面に油性インクを受容するための塗工層が設けられた塗工紙が挙げられる。塗工紙としては、特に限定されないが、例えば、アート紙、コート紙、マット紙等の印刷本紙が挙げられる。
非吸収性記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、インク吸収層を有していないプラスチックフィルム、紙等の基材上にプラスチックがコーティングされているものやプラスチックフィルムが接着されているもの等が挙げられる。ここでいうプラスチックとしては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、及びポリプロピレンが挙げられる。
さらに上記の記録媒体以外にも、鉄、銀、銅、アルミニウム等の金属類のプレート、ガラス等のインク非吸収性又は低吸収性の記録媒体を用いることもできる。
特に、記録媒体は、ロール状であることが好ましい。ロール状の記録媒体は、記録する際、記録媒体に対して記録用ヘッドを相対的に一回走査し、巻取りローラーで巻き取るような態様で用いることができる。このような記録媒体を用いる場合、使用する着色インクの種類数が多い等の理由で1回の送給で全色記録できず何度も記録を行う場合において、複数回、記録媒体に対して記録用ヘッドを相対的に一回走査し、巻取りローラーで巻き取る操作を繰り返すことで記録物を得ることができる。しかしながら、ロール状であるがゆえに、記録物中のポリマーで形成されている層にクラックが生じやすい傾向にある。クラックが生じた場合には、クラックに処理液が浸透する等の理由により、得られる記録物の画質が低下する傾向にある。ところが、本実施形態の記録方法により得られるインク組成物による被膜は、クラックが生じにくいものである。そのため、このような形状を有する記録媒体を用いる場合、本発明が特に有用である。
記録媒体の主走査方向の幅(長さ)は、50cm以上が好ましく、100cm以上がより好ましく、150cm以上がさらに好ましい。また、該幅は300cm以下が好ましく、250cm以下がより好ましく、200cm以下がさらに好ましい。幅が上記範囲である場合、有用性の高い記録物の記録が可能な点や、画質や色差低減や吐出安定性が優れる点で好ましい。
〔記録装置〕
次に、本実施形態の記録方法で記録を行う本実施形態の記録装置について説明する。本実施形態の記録装置は、本実施形態の記録方法で記録することが可能な記録装置であれば特に限定されない。1は、本実施形態に用い得るインクジェット記録装置1の一例の全体の概略を示す側面図である。図1に示すように、インクジェット記録装置1は、記録媒体の給送部10と、搬送部20と、記録部30と、乾燥装置90と、排出部70とを備えている。
このうち、乾燥装置90は、処理液を乾燥させたり、インク組成物を1次乾燥させる第1乾燥部40と、本実施形態に係る記録方法により得られた記録物を乾燥する第2乾燥部50とを有する。
また、給送部10は、ロール状の記録媒体Fを搬送部20へ給送することができるように設けられている。具体的には、給送部10は、ロール媒体ホルダー11を有し、ロール媒体ホルダー11がロール状の記録媒体Fを保持している。そして、ロール状の記録媒体Fを回動させることにより、送り方向Y下流側の搬送部20へ記録媒体Fを給送することができるように構成されている。
さらに、搬送部20は、給送部10から送られた記録媒体Fを記録部30へ搬送することができるように設けられている。具体的には、搬送部20は、第1送りローラー21を有し、送られた記録媒体Fをさらに送り方向Y下流側の記録部30へ搬送することができるように構成されている。
また、記録部30は、搬送部20から送られた記録媒体Fに対して処理液を塗布し、インク組成物を吐出して記録することができるように設けられている。具体的には、記録部30は、処理液付着工程を行うヘッド31、32と、インク組成物付着工程を行う記録用ヘッド33と、媒体支持部としてのプラテン34と、を備える。ただし本実施形態ではヘッド31は使わないものとする。ヘッド32とヘッド33は図示しない同一のキャリッジに搭載されている。キャリッジは、図の手前-奥方向に移動しつつインク組成物や処理液をヘッドから吐出してヘッドが対向する記録媒体へ付着させる走査(主走査)を行う。走査と記録媒体の搬送(副走査)を交互に行うことで記録が行われる。つまり走査を複数回行うことで記録が行われるマルチパス記録方法を行う。
このうち、プラテン34は、記録媒体Fを裏面から支持することができるように設けられている。また、プラテン34には、記録媒体Fに付着した処理液、並びに記録媒体Fに付着したインク組成物を乾燥させる第1乾燥部40(上述した加熱工程における加熱手段に相当する。)が設けられている。さらに、プラテン34より送り方向Y下流側には、第2送りローラー43が設けられている。そして、第2送りローラー43は、記録された記録媒体Fを送り方向Y下流側である第2乾燥部50へ送ることができるように構成されている。
また、第2乾燥部50は、記録媒体Fに付着した処理液、並びに記録媒体Fに付着したインク組成物をさらに乾燥させることができるように構成されている。第2乾燥部50は、図示しないが、記録媒体Fと面で接し記録媒体Fが該面に沿って搬送される支持部を加熱して支持部から記録媒体に伝熱する伝熱機構を備える。さらに、第2乾燥部50の出口64近傍には、第3送りローラー65が設けられている。第3送りローラー65は、記録媒体Fの裏面と接触するように配設され、送り方向Y下流側である排出部70へ記録媒体Fを送ることができるように構成されている。
さらに、排出部70は、第2乾燥部50から送られた記録媒体Fをさらに送り方向Y下流側へ送り、インクジェット記録装置1の外部へ排出することができるように設けられている。具体的には、排出部70は、第4送りローラー71と、第5送りローラー72と、第6送りローラー73と、第7送りローラー74と、巻き取りローラー75とを有している。このうち、第4送りローラー71及び第5送りローラー72は、記録媒体Fの表面と接触するように配設されている。また、第6送りローラー73及び第7送りローラー74はローラー対を成すように配設されている。そして、第6送りローラー73及び第7送りローラー74によって排出された記録媒体Fは、巻き取りローラー75によって巻き取られるように設けられている。
図2は、本実施形態の記録方法で記録を行う本実施形態のインクジェット記録装置の構成の一例を示す斜視図である。図2に示すインクジェット記録装置1は、ヘッド3と、インクを吐出するノズルを含む部材2と、インク収容体(不図示)と、インク収容体からヘッド3にインクを供給するインク供給管等のインク供給路(不図示)と、を有する。インク収容体はキャリジ4以外の場所に設けても良いし、キャリジ上に設けても良い。
また、インクジェットヘッド3を搭載するキャリッジ4と、キャリッジ4の下方に配設され記録媒体Pが搬送されるプラテン5と、キャリッジ4を記録媒体Pに対して相対的に移動させるキャリッジ移動機構7と、記録媒体Pを媒体送り方向に搬送する媒体送り機構8と、記録装置10全体の動作を制御する制御部CONTと、を有してもよい。
インクジェット記録装置1は、ヘッド3を記録媒体Pとの相対的な位置を主走査方向に変化させつつインクを吐出して非記録媒体Pへ付着させる主走査(走査)を複数回行い、記録を行う。主走査と主走査の合間には、記録媒体Pを副走査方向へ搬送する副走査を行い、主走査と副走査を交互に行う。こうして非記録媒体Pに順次インクの付着を行う。このような記録方法をマルチパス記録方法やシリアル記録方法ともいう。
図3は、図2のインクジェット記録装置のインクを吐出するノズルを含む部材2の一例を、図2における部材2の下方から上方へ見た図である。図3において、左右方向が主走査方向であり、上下方向の下方向が副走査方向(用紙搬送方向)である。図3においてノズルを含む部材100は、ノズルが複数個、列状に並んだノズル群(ノズル列)を左から8個備える(ノズル群6A~6H)。部材100はノズルが形成されたノズルプレートとしてもよい。1つのノズル群の各ノズルから1種類のインクを吐出し、別のノズル群からは異なる種類のインクを吐出するように構成してもよい。インクの種類は例えばインクの色等である。複数のノズル群は、図3のように主走査方向に並んで配置してもよいし、図1のように副走査方向の上流側と下流側といった異なる位置に配置してもよい。
記録方法において、1回の副走査で記録媒体を搬送する距離は、1つのノズル群の副走査方向の長さAの距離としてもよいが、1つのノズル群の副走査方向の長さA未満の距離とする場合、記録媒体の副走査方向における同一の位置に複数回の主走査でインクを付着させることが可能となることや、及びまたは記録物の副走査方向や主走査方向の記録解像度をより高くすることができる。これらにより画質が優れる点で好ましい。こうすることで、インク組成物付着工程において、ある主走査で記録媒体に付着させたインク組成物に対して、他の主走査で記録媒体に吐出した該インク組成物の少なくとも一部を接触させることができる。
以下、本発明を、実施例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
[処理液用及びインク組成物用の材料]
下記の記録物の作製において使用した処理液用及びインク組成物用の主な材料は、以下の通りである。
〔色材〕
C.I.ピグメントブルー15:3
カーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)
〔凝集剤〕
硫酸マグネシウム・六水和物(多価金属塩)
ポリアリルアミン塩酸塩
コハク酸(有機酸)
〔樹脂〕(樹脂分散体)
ポリエチレン樹脂
スチレン-アクリル樹脂
〔有機溶剤〕
1,2-ヘキサンジオール
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル
3-ブトキシ-N、N-ジメチルプロピオンアミド
3-メトキシ-N、N-ジメチルプロピオンアミド
2-ピロリドン
トリエチレングリコールモノブチルエーテル
〔界面活性剤〕
BYK348(商品名、ビック・ケミー社製)
MF410(商品名、DIC社製、パーフルオロアルキル基含有カルボン酸塩界面活性剤)
DW800(商品名、ビック・ケミー社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル基含有界面活性剤)
サーフィノール DF110D(商品名、日信化学工業社製、アセチレングリコール系)
〔水〕
純水
[処理液及びインク組成物の調製]
顔料と、表中に記載しないスチレンアクリル系の顔料分散剤樹脂を顔料1質量部に対して0.8質量部と、を水に混合してビーズミルで撹拌させて顔料分散液を調製した。該顔料分散液と、残りの各材料を下記の表1に示す組成で混合し、十分に撹拌し、処理液及びインク組成物を得た。なお、下記の表1中、数値の単位は質量%であり、合計は100.0質量%である。
〔表面張力〕
下記のように、インク組成物の表面張力、及び各蒸発率まで蒸発させたときのインク組成物の表面張力を測定した。
初期値(表中「蒸発率(質量%) 0」):表面張力計CBVP-Z(商品名、協和界面科学株式会社製)を用いて、25℃の環境下で白金プレートをインク組成物で濡らしたときの表面張力を測定した。
蒸発後(表中「蒸発率(質量%) 20」、「蒸発率(質量%) 40」):インク組成物を40℃で放置し、初期の質量(100質量%)に対し20質量%、及び40質量%減少したときの表面張力を、上記同様に25℃で測定した。得られた結果を、初期値に対する蒸発後の表面張力の差(表中「差Δ 蒸発率(質量%) 20」、「差Δ 蒸発率(質量%) 40」)と共に表1に示す。この差Δを絶対値にしたものが、インク組成物を各蒸発率まで蒸発させたときの表面張力の差の絶対値である。
上記表面張力を測定した方法を具体的に次に示す。蒸発率0~40質量%までに亘り、0質量%、5質量%、10質量%、15質量%、20質量%、25質量%、30質量%、35質量%、40質量%の順に、5質量%の間隔でインク組成物の表面張力を測定した。このようにして得られたインク組成物の表面張力の測定結果の中で、蒸発率0~20質量%までに亘り蒸発させた中で最も蒸発前のインク組成物の表面張力との差の絶対値が大きいものが蒸発率20質量%であった。また蒸発率0~40質量%までに亘り蒸発させた中で最も蒸発前のインク組成物の表面張力との差の絶対値が大きいものが蒸発率20質量%または蒸発率40質量%の測定結果であった。
次に、上記で測定した試料とは別の試料のインク組成物を用いて、蒸発率16~24質量%及び36~40質量%までに亘り、16質量%、17質量%、18質量%、19質量%、20質量%、21質量%、22質量%、23質量%、24質量%、36質量%、37質量%、38質量%、39質量%、40質量%の順に、1質量%の間隔でインク組成物の表面張力を測定した。
以上の結果、インク組成物を蒸発率0~20質量%までに亘り蒸発させた中で最も蒸発前のインク組成物の表面張力との差の絶対値が大きいものが蒸発率20質量%であり、インク組成物を蒸発率0~40質量%までに亘り蒸発させた中で最も蒸発前のインク組成物の表面張力との差の絶対値が大きいものが蒸発率20質量%または40質量%の測定結果であったため、これらの蒸発率の、表面張力の値と表面張力の差の絶対値を表中に記載した。
Figure 0007137782000001
〔記録物の作製〕
加熱工程としてプラテンに伝熱手段(プラテンヒーター)を設け、プラテンの幅をより長く、大きな幅の記録媒体への記録を可能とし、乾燥工程としてプラテンの記録媒体の搬送方向下流に伝熱手段(ホットプレートヒーター)を設けたSC-S80650(セイコーエプソン社製の商品名)の改造機であるインクジェット方式のプリンタを準備した。次に、プラテンヒーターを表1に記載の1次加熱温度となるよう設定し(ただし、25℃の場合は加熱せずに室温)、プリンタに記録媒体(ポリ塩化ビニルシート(住友スリーエム株式会社製の商品名「IJ-40」)と同じ材質で、その幅を適宜変更したもの)を移送した。キャリッジに搭載した記録用ヘッドの、上流側の記録用ヘッドのノズル列に処理液を充填し、下流側の記録用ヘッドのノズル列にインク組成物を充填し、処理液とインク組成物とをこの順で連続的に記録した。
ここで、インク組成物の付着量は、12mg/inch2とした。1走査(主走査)のインク組成物の付着量が表1に記載のとおりとなるよう、マルチパスの回数及び1走査の吐出量を調整した。例えば、1走査のインク組成物の付着量が1.5mg/inch2の場合は、8パス記録とした。
処理液は、表中の処理液付着量で付着させた。記録パターンは、3×3cmの正方形の記録パターンで記録媒体の一端から他端まで並べて記録した。
後乾燥工程として設けたホットプレートヒーターでは、記録媒体を80℃で約1分間加熱した。また、記録媒体の幅を変更したものをそれぞれ用意して、1走査の時間(秒)を表1の記載に合わせて変えた。例えば、1走査時間が2秒の場合は記録媒体の幅が130cmであり、1走査時間が3秒の場合は記録媒体の幅が180cmであり、1走査時間が1秒である場合は記録媒体の幅が90cmであった。
〔走査間のインク蒸発率〕
表2中の加熱工程の温度で、記録媒体に付着したインク組成物の、表2中の1走査時間の2倍の時間後の蒸発率を測定した。測定は、記録媒体に付着させた初期のインク組成物の質量(100質量%)に対する放置した後のインク組成物の質量の減少率を質量測定により測定した。得られた結果を表2に示す。なお、ここでいうインク蒸発率は、本明細書において、ある主走査で付着したインクに次の主走査で吐出したインク組成物が接触したときのインク組成物の最大の蒸発率として想定したものに相当する。
〔画質(ブリード)〕
上記〔記録物の作製〕で得られた各記録物について記録パターンを目視で観察し、下記評価基準により画質(ブリード)を評価した。得られた結果を表2に示す。
(評価基準)
A:パターン内部のむら及びパターン淵のインクのにじみが認められなかった。
B:パターン内部のむらは認められないが、パターン淵のインクのにじみが若干認められた。
C:パターン内部のむらが若干認められた。
D:パターン内部のむらが目立った。
E:パターン内部のむらが目立ち、さらにパターン淵のインクのにじみも目立った。
〔色差〕
上記〔記録物の作製〕で得られた各記録物について、記録物の幅方向に並ぶ一端から他端までの記録パターンごとに測色器で測色し、記録パターン間の最大ΔEを求めて、下記評価基準により色差を評価した。得られた結果を表2に示す。測色は、CIELABに定めるL*a*b*の値を、グレタグマクベス社製の測色計「Spectrolino」を用いて測定し、その値の差(ΔE)として求めた。
(評価基準)
A:ΔEが0.5以下
B:ΔEが0.5超1以下
C:ΔEが1超1.5以下
D:ΔEが1.5超
〔吐出安定性〕
上記〔記録物の作製〕の記録を2時間連続で行った後、インク組成物を充填したノズル列のノズルの吐出状態を目視で検査し、下記評価基準により吐出安定性を評価した。得られた結果を表2に示す。なお、記録中、1パスごとにプラテンの側方に設けたフラッシングボックスでフラッシングをおこなった。
(評価基準)
A:不吐出ノズル数が1%以下
B:不吐出ノズル数が1%超3%以下
C:不吐出ノズル数が3%超
〔耐擦性〕
上記〔記録物の作製〕で得られた各記録物について、学振型摩擦堅牢度試験機AB-301(テスター産業社製の商品名)に白綿布(JIS L 0803準拠)を取り付けた摩擦子で、荷重250gをかけて35往復擦った。その後、記録物の剥がれを目視で観察し、下記評価基準により耐擦性を評価した。
(評価基準)
A:記録パターンの傷及び剥がれ、並びに白綿布へのインクの移りが認められなかった。
B:記録パターンの目立つ傷及び剥がれは認められなかったが、白綿布へのインクの移りが認められた。
C:記録パターンに目立つ傷又は剥がれが認められた。
Figure 0007137782000002
上記評価の結果、下記のことが確認された。
実施例は、何れも、インク組成物の表面張力と、インク組成物を蒸発率0~40質量%までに亘り蒸発させたときのインク組成物の表面張力との絶対値の差が1mN/m以下であるインク組成物を用い、加熱工程を備えることにより、色差低減に優れていた。
これに対し、そうではない比較例は何れも、色差低減に劣っていた(色差がD又は色差がE)。
詳細には、実施例3、4から、インク組成物がシリコーン系界面活性剤又はフッ素系界面活性剤を含む場合、画質や色差低減により優れ、シリコーン系界面活性剤を含む場合、特に優れていた。
実施例16と実施例3の比較から、インク組成物が、シリコーン系界面活性剤又はフッ素系界面活性剤と、ポリアルキレンオキシドアルキルエーテル系界面活性剤又はアセチレングリコール系界面活性剤とを含む場合、色差低減により優れていた。
実施例17と実施例3の比較から、インク組成物が、樹脂溶解性溶剤を含むことで、耐擦性が優れ、画質や色差低減にもより優れていた。また、実施例5と実施例3の比較から、樹脂溶解性溶剤として、非環状アミド溶剤を含む場合、耐擦性が特に優れ、また、環状アミド溶剤を含む場合、吐出安定性が特に優れていた。
実施例6、7と実施例4との比較から、処理液付着量が比較的少ない場合、色差低減や耐擦性がより優れていた。また、処理液付着量が比較的多い場合、画質がより優れていた。
実施例8、9と実施例4との比較から、処理液が凝集剤として多価金属塩を含む場合、画質が特に優れ、処理液が凝集剤としてカチオン性樹脂や有機酸を含む場合、色差低減が特に優れ、カチオン性樹脂を含む場合、耐擦性がより優れていた。
実施例10、11と実施例4の比較から、加熱工程の温度が高い場合、画質がより優れていた。一方、加熱工程の温度が低い場合、色差低減、吐出安定性がより優れていた。
実施例12、13と実施例4との比較から、走査時間が短い場合、画質や色差低減や吐出安定性が特に優れていた。一方、走査時間が長い場合、画質や色差低減が低下した。このことから、1走査時間が長く、幅の広い記録物を得る場合でも画質や色差低限に優れる点で、本実施形態が有用であることが判った。
実施例14、15と実施例4の比較から、1走査のインク付着量が少ないほうが、画質及び色差により優れていた。
実施例18、19から、記録方法が処理液付着工程を有さない場合、画質がやや低い傾向があり、加熱工程の温度を高めれば画質は向上する反面、色差低減が悪化する傾向があり、さらに吐出安定性も低下した。このことから、加熱温度を高くせずとも画質の優れる記録方法とできる点で処理液を用いることが好ましいことが判った。
比較例1~3は、インク組成物を蒸発率0~40質量%までに亘り蒸発させたときのインク組成物の表面張力との絶対値の差が1mN/m以下であるインク組成物を用いておらず、色差低減に劣り、画質やや劣った。
なお、表中には記載しなかったが、プランヒーターをオフにして加熱工程を行わなかったこと以外は実施例4と同様にして評価を行ったところ、記録媒体表面温度は25℃であり、走査間のインク蒸発率はほぼ0質量%であった。画質評価はEに悪化したが、色差はAであった。このことから、本願発明は、加熱工程を用いて優れた画質を得られる反面、色差低減が悪化するような場合であっても、優れた色差低減の効果が得られる点で、必要であり有用なものであることがわかった。
1…インクジェット記録装置、2、100…部材、3、32…ヘッド、4…キャリジ、5…プラテン、6A~6H…ノズル群、7…キャリッジ移動機構、8…媒体送り機構、10…給送部、11…ロール媒体ホルダー、20…搬送部、21…第1送りローラー、30…記録部、31…ヘッド、32…ヘッド、33…記録用ヘッド、34…プラテン、40…第1乾燥部、43…第2送りローラー、50…第2乾燥部、64…出口、65…第3送りローラー、70…排出部、71…第4送りローラー、72…第5送りローラー、73…第6送りローラー、74…第7送りローラー、75…巻き取りローラー、90…乾燥装置、F、P…記録媒体、Y…送り方向、CONT…制御部。

Claims (15)

  1. 記録媒体を加熱する加熱工程と、
    有機溶剤と水とを含むインク組成物を、記録用ヘッドを前記記録媒体との相対的な位置を主走査方向に変化させつつ前記記録用ヘッドから吐出する主走査を複数回行うことにより、加熱工程で加熱された前記記録媒体に付着するインク組成物付着工程と、を有し、
    前記インク組成物が、該インク組成物の表面張力と、該インク組成物を蒸発率0~40質量%までに亘り蒸発させたときのインク組成物の表面張力と、の差の絶対値が1mN/m以下であるインク組成物であ
    前記加熱工程の加熱による、前記インク組成物が付着される前記記録媒体の表面温度が38℃以下であり、
    前記インク組成物付着工程において、ある主走査で記録媒体に付着したインク組成物の、次の主走査で付着したインク組成物が接触するときの蒸発率が、40質量%以下であり、
    前記インク組成物が、フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤の何れか1種以上を、前記インク組成物の総質量に対し0.2~2.5質量%含有する、
    記録方法。
  2. 前記インク組成物の成分を凝集させる凝集剤を含有する処理液を前記記録媒体に付着させる処理液付着工程をさらに有する、
    請求項1に記載の記録方法。
  3. 前記インク組成物は、界面活性剤をさらに含み、
    前記界面活性剤の含有量は、前記インク組成物の総量に対して、0.5質量%以上である、
    請求項1又は2に記載の記録方法。
  4. 前記インク組成物は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤及びアセチレングリコール系界面活性剤の何れか1種以上を、前記インク組成物の総質量に対し0.05~1質量%含有する、
    請求項1~3のいずれか一項に記載の記録方法。
  5. 前記インク組成物は、色材として顔料と、樹脂粒子と、をさらに含む、
    請求項1~のいずれか一項に記載の記録方法。
  6. 前記インク組成物の蒸発前の表面張力は、28mN/m以下である、
    請求項1~のいずれか一項に記載の記録方法。
  7. 前記記録媒体が低吸収記録媒体又は非吸収性記録媒体である、
    請求項1~のいずれか一項に記載の記録方法。
  8. 1回の前記主走査あたりの前記インク組成物の付着量が、4.0mg/inch2以下である、
    請求項1~のいずれか一項に記載の記録方法。
  9. 前記インク組成物付着工程において、ある主走査で前記記録媒体に付着させた前記インク組成物に対して、次の主走査で前記記録媒体に吐出した前記インク組成物の少なくとも一部が接触する、
    請求項1~のいずれか一項に記載の記録方法。
  10. 前記インク組成物付着工程において、ある主走査で記録媒体に付着したインク組成物の、次の主走査で付着したインク組成物が接触するときの蒸発率が、10~40質量%以下である、
    請求項1~のいずれか一項に記載の記録方法。
  11. 前記インク組成物付着工程が、1回の主走査の時間が1秒以上である主走査により行われる、
    請求項1~10のいずれか一項に記載の記録方法。
  12. 前記インク組成物と前記処理液とを付着させる記録領域において、前記インク組成物の付着量に対する前記処理液の付着量の比が、40質量%以下である領域を有する、請求項1に記載の記録方法。
  13. 前記インク組成物が、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性の何れか1種以上と、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤及びアセチレングリコール系界面活性剤の何れか1種以上と、をさらに含む、
    請求項1~1のいずれか一項に記載の記録方法。
  14. 主走査方向の幅が50cm以上である記録媒体へ記録を行う、
    請求項1~1のいずれか一項に記載の記録方法。
  15. 請求項1~1のいずれか一項に記載の記録方法で記録を行う記録装置。
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