JP2019167518A - インクセット及びインクジェット記録方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】固形分の含有量の多いインクと固形分の含有量の少ないインクを用いて加熱された記録媒体へ記録を行う場合に画像の位置ずれを抑制することができるインクセット及び記録方法を提供する。【解決手段】本実施形態に係るインクセットは、 第1インク組成物と第2インク組成物とを備え、前記第1インク組成物と前記第2インク組成物が色材を含む固形分と有機溶剤とを含有する水系インクジェットインク組成物であり、前記第1インク組成物が前記第2インク組成物よりも固形分の含有量が5質量%以上多く、前記第2インク組成物が前記第1インク組成物よりも有機溶剤の含有量が7質量%以上多く、加熱された記録媒体へインクを付着して行うインクジェット記録方法に用いるものである。【選択図】図1

Description

本発明は、インクセット及びインクジェット記録方法に関する。
インクジェット記録方法は、微細なノズルからインクの小滴を吐出して、記録媒体に付着させて記録を行う方法である。この方法は、比較的安価な装置で高解像度かつ高品位な画像を、高速で記録できるという特徴を有する。
近年、PETフィルムなどの軟包装フィルムに対して、インクジェット記録方法により、軟包装フィルムに商品のラベル等を直接記録(印刷)することが検討されている。また、軟包装フィルムは、食品等を包装する用途があり、そのような用途では、高い安全性が求められるため、上述の印刷には水系インクを用いることが望ましい。水系インクを用いた場合にはさらに、印刷後、加熱乾燥プロセスを行う場合がある。
また、軟包装フィルムの被記録面は、例えば、ポリオレフィン、ナイロン、ポリエステル等のプラスチック材料からなるため、透明であったり半透明であることが多い。そのため、インクジェット記録を行う際には、背景を隠蔽する下地層と呼ばれる白色系のインクで形成した層の上に、カラーインクによる所定の画像を形成することがある(例えば特許文献1参照)。白色インクとカラーインクとを用いる場合に、白色インクは、白色顔料を多く含有し、カラーインクは白よりは顔料の含有量が少ないことがある。
特開2012−193280号公報
固形分の含有量の多いインクと固形分の含有量の少ないインクを用いて加熱された記録媒体へ記録を行う場合に画像の位置ずれの課題が発生した。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、固形分の含有量の多いインクと固形分の含有量の少ないインクを用いて加熱された記録媒体へ記録を行う場合に画像の位置ずれを抑制することができるインクセット及び記録方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、固形分の含有量が少ない方のインク組成物(第2インク組成物)の有機溶剤の含有量を、固形分の含有量が多い方のインク組成物(第1インク組成物)の有機溶剤の含有量をよりも多くする組成にすることにより、2つのインク組成物による画像の位置ずれを抑制できることが見出された。
本発明の一態様は、以下の通りである。
[1]
第1インク組成物と第2インク組成物とを備え、
前記第1インク組成物と前記第2インク組成物が色材を含む固形分と有機溶剤とを含有する水系インクジェットインク組成物であり、
前記第1インク組成物が前記第2インク組成物よりも固形分の含有量が5質量%以上多く、
前記第2インク組成物が前記第1インク組成物よりも有機溶剤の含有量が7質量%以上多く、
加熱された記録媒体へインクを付着して行うインクジェット記録方法に用いるものである、インクセット。
[2]
前記水系インクジェットインク組成物の成分を凝集させる凝集剤を含む処理液と共に記録に用いられるものであり、
前記第1インク組成物が前記処理液よりも固形分の含有量が5質量%以上多く、
前記処理液が第1インク組成物よりも有機溶剤の含有量が7質量%以上多い、
[1]に記載のインクセット。
[3]
前記第1インク組成物と前記第2インク組成物の水の含有量の差が8質量%以内である、
[1]又は[2]に記載のインクセット。
[4]
前記第1インク組成物と前記第2インク組成物の20℃における粘度の差が1.5mPa・s以内である、
[1]〜[3]のいずれか一項に記載のインクセット。
[5]
前記第1インク組成物と前記第2インク組成物はそれぞれ水の含有量が50質量%以上である、
[1]〜[4]のいずれか一項に記載のインクセット。
[6]
前記第1インク組成物が前記第2インク組成物よりも固形分の含有量が5〜13質量%多く、前記第2インク組成物が前記第1インク組成物よりも有機溶剤の含有量が7〜17質量%多い、
[1]〜[5]のいずれか一項に記載のインクセット。
[7]
前記第1インク組成物が固形分を10〜22質量%及び有機溶剤を15〜27質量%含有し、前記第2インク組成物が固形分を5〜12質量%及び有機溶剤を23〜38質量%含有する、
[1]〜[6]のいずれか一項に記載のインクセット。
[8]
前記第1インク組成物が固形分として白色色材を含む白色インク組成物であり、第2インク組成物が固形分として非白色色材を含む非白色インク組成物である、
[1]〜[7]のいずれか一項に記載のインクセット。
[9]
前記第2インク組成物が前記第1インク組成物よりも有機溶剤の含有量が9質量%以上多い、
[1]〜[8]のいずれか一項に記載のインクセット。
[10]
[1]〜[9]の何れか一項に記載のインクセットを用いて行うものであって、
加熱された記録媒体に前記第1インク組成物と前記第2インク組成物を付着するインク付着工程を有する、インクジェット記録方法。
[11]
付着させる時の前記記録媒体の表面温度が30〜50℃である、
[10]記載のインクジェット記録方法。
[12]
前記水系インクジェットインク組成物の成分を凝集させる凝集剤を含む処理液を前記記録媒体へ付着させる工程を備える、
[10]又は[11]に記載のインクジェット記録方法。
[13]
前記インク付着工程を、前記インクセットを備えるインクジェットヘッドと前記記録媒体との相対位置を主走査方向へ変えながらインク組成物を吐出する主走査を複数回行うことにより行い、1回の主走査の最大時間が0.8秒以上である、
[10]〜[12]のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
本実施形態のインクジェット記録方法に用いるインクジェット装置の概略図である。 本実施形態のインクジェット記録方法に用いるインクジェット装置のブロック図である。 本実施形態のインクジェット記録方法に用いるインクジェット装置のキャリッジ周辺の概略図である。 本実施形態のインクジェット記録方法に用いるインクジェット装置のキャリッジに搭載されたヘッド(インクジェットヘッド)の配置の一例を示す図である。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右などの位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限定されない。
[インクセット]
本実施形態に係るインクセットは、第1インク組成物と、第2インク組成物と、を備える。第1インク組成物及び第2インク組成物は、それぞれ、色材を含む固形分と有機溶剤とを含有する水系インクジェットインク組成物である。第1インク組成物が第2インク組成物よりも固形分の含有量が5質量%以上多い。第2インク組成物が第1インク組成物よりも有機溶剤の含有量が7質量%以上多い。加熱された記録媒体へインクを付着して行うインクジェット記録方法に用いるものである。
水系とは水を組成物の主要な溶媒成分の1つとする組成物であり水の組成物における含有量は40質量%以上が好ましい。インクジェットインク組成物とはインクジェット法による記録方法に用いるインク組成物である。第1インク組成物と第2インク組成物は、その成分や特性を、それぞれ独立して後述するようなものにすることができる。以下、本実施形態に係る各インクに含まれる成分について詳細に説明する。なお、以下の説明において第1インク組成物と第2インク組成物とを区別する必要がない場合には、単にインク組成物と称する。なお、単に第1インク組成物(第1インクともいう)や第2インク組成物(第2インクともいう)と言う場合は、これらのインクを区別して言う程度の意味であり、これらのインクの成分や特徴などを限定する意味ではない。
第1インク組成物及び第2インク組成物は、色材を含む固形分と有機溶剤とを含有する。好ましくは第1インク組成物が固形分として白色色材を含む白色インク組成物であり、第2インク組成物が固形分として非白色色材を含む非白色インク組成物である。非白色色材とは、白色色材以外の色材のことを指す。
第1インク組成物及び第2インク組成物は、第1インク組成物が白色インク組成物であり第2インク組成物が非白色インク組成物であるもの以外のものであってもよい。例えば、第1インクがある色の記録ができる着色インクであり、第2インクがある色の記録ができる着色インクであってもよい。この場合も、第1インクにより記録する画像と第2インクにより記録する画像の位置ずれを抑制することができる。好ましくは、第1インクがある色の記録ができる着色インクであり第2インクが他のある色の記録ができる着色インクである。
これらの場合においても、第1インク組成物が第2インク組成物よりも固形分の含有量が5質量%以上多く、第2インク組成物が第1インク組成物よりも有機溶剤の含有量が7質量%以上多いことで、第1インクと第2インクは、それぞれ、固形分や有機溶剤の含有量が異なるものとすることができ、第1インクと第2インクをそれぞれの機能などに応じて組成の異なるものにすることができる。そして、このような第1インクと第2インクにおいて、第1インクにより記録する画像と第2インクにより記録する画像の位置ずれを抑制することができる。着色インク組成物とは記録媒体の着色に用いるインク組成物である。
中でも、第1インク組成物及び第2インク組成物は、第1インク組成物が白色インク組成物であり第2インク組成物が非白色インク組成物であることが好ましい。この場合、第1インクを白色度の優れる白色インクとすることができる点や、白色画像と非白色画像を重ねて記録する場合の画像の位置ずれ抑制ができる点で好ましい。
白色インク組成物とは、社会通念上「白」と呼称される色を記録できるインク(インキ)であり、微量着色されているものも含む。また、インク(インキ)が「白(色)インク(インキ)、ホワイトインク(インキ)」などといった名称で呼称、販売されるインク(インキ)を含む。さらにまたは、例えば、インク(インキ)が、透明フィルム製の記録媒体の記録媒体表面が十分に被覆される量で記録された場合に、記録物の明度(L*)及び色度(a*、b*)が、CIELABに準拠した分光測光器を用いて計測した場合に、60≦L*≦100、−4.5≦a*≦2、−10≦b*≦2.5、の範囲を示すインク(インキ)を含む。透明フィルム製の記録媒体としては例えばLAGジェットE-1000ZC(リンテック社製)があげられる。分光光度計としては例えば分光測光器Spectrolino(商品名、GretagMacbeth社製)があげられ、測定条件をD50光源、観測視野を2°、濃度をDIN NB、白色基準をAbs、フィルターをNo、測定モードをReflectance、として設定して計測することがあげられる。
非白色インク組成物とは、白色インク組成物ではない着色インクであり、社会通念上「白」ではない色で呼称される色を記録できるインク(インキ)である。非白色インク組成物は好ましくは非白色色材を含む。
以下に色材の具体的な材料について説明する。
(色材)
色材として顔料又は染料を用いることができるが、好ましくは、顔料が用いられる。顔料としては、特に限定されないが、例えば、以下のものが挙げられる。
(白色色材)
白色色材としては白色染料、白色顔料(ホワイト顔料)があげられ、後者が好ましい。ホワイト顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントホワイト 6、18、21、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化アンチモン、酸化マグネシウム、及び酸化ジルコニウムなどの白色無機顔料が挙げられる。好ましくは金属化合物顔料であり、より好ましくは金属酸化物顔料である。当該白色無機顔料以外に、白色の中空樹脂粒子及び高分子粒子などの白色有機顔料を使用することもできる。
(非白色色材)
非白色色材は上記の白色色材以外のものがあげられる。非白色染料、非白色顔料があげられ後者が好ましい。下記の各色のものがあげられるがこれに限るものでは無い。有彩色の色材であるものがあげられる。
ブラック顔料としては、特に限定されないが、例えば、No.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B等(以上、三菱化学社(Mitsubishi Chemical Corporation)製)、Raven 5750、Raven 5250、Raven 5000、Raven 3500、Raven 1255、Raven 700等(以上、コロンビアカーボン(Carbon Columbia)社製)、Rega1 400R、Rega1 330R、Rega1 660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400等(キャボット社(CABOT JAPAN K.K.)製)、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、Color B1ack S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、Special Black 4(以上、デグッサ(Degussa)社製)が挙げられる。
イエローインクに使用される顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントイエロー 1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、167、172、180が挙げられる。
マゼンタ顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントレッド 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、又はC.I.ピグメントヴァイオレット 19、23、32、33、36、38、43、50が挙げられる。
シアン顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントブルー 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:34、15:4、16、18、22、25、60、65、66、C.I.バットブルー 4、60が挙げられる。
また、マゼンタ、シアン、及びイエロー以外のカラーインクに使用される顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメント グリーン 7,10、C.I.ピグメントブラウン 3,5,25,26、C.I.ピグメントオレンジ 1,2,5,7,13,14,15,16,24,34,36,38,40,43,63が挙げられる。
パール顔料としては、特に限定されないが、例えば、二酸化チタン被覆雲母、魚鱗箔、酸塩化ビスマス等の真珠光沢や干渉光沢を有する顔料が挙げられる。
メタリック顔料としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、銅などの単体又は合金からなる粒子が挙げられる。
顔料の含有量は、インク組成物100質量%に対して、好ましくは0.1〜20質量%であり、より好ましくは0.3〜15質量%であり、よりさらに好ましくは0.4〜12質量%であり、より好ましくは1〜8質量%であり、さらに好ましくは2〜5質量%である。
第1インクの色材の含有量は好ましくは2〜20質量%であり、より好ましくは4〜15質量%であり、さらに好ましくは7〜13質量%である。第2インクの色材の含有量は好ましくは0.1〜7質量%であり、より好ましくは0.5〜6質量%であり、さらに好ましくは1〜5質量%である。第1インクは第2インクよりも色材の含有量が、好ましくは多く、より好ましくは2〜15質量%多く、さらに好ましくは3〜12質量%多い。
(樹脂)
第1インク組成物及び第2インク組成物は、固形分として樹脂を含んでもよい。これにより、画像の定着性及び耐擦性を向上させることができる。より好ましくは樹脂粒子を含んでもよい。樹脂粒子は樹脂エマルジョンなどの形態で用いることができる。
樹脂の種類は、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、アクリロニトリル、シアノアクリレート、アクリルアミド(以上をアクリル系モノマーとする)、オレフィン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルアルコール、ビニルエーテル、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール、及び塩化ビニリデンの単独重合体又は共重合体、フッ素樹脂、天然樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。
樹脂を構成する成分(樹脂の重合に用いるモノマー成分)に少なくともアクリル系モノマーを用いたものをアクリル系樹脂とする。アクリル系樹脂はアクリル系モノマーとアクリル系モノマー以外のモノマーとの共重合体でも良い。アクリル系モノマーを少なくとも用いた単独重合体又は共重合体である。このなかでも、アクリル系モノマーとビニル系モノマーを用いたビニル−アクリル共重合体が好ましく、ビニル系モノマーの中でもスチレンを用いた、スチレン−アクリル共重合体がより好ましく、スチレンと(メタ)アクリル酸を少なくとも用いた共重合体樹脂がさらに好ましい。
樹脂の中でも、アクリル系樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂が好ましくアクリル系樹脂がより好ましい。
なお、上記の共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、及グ ラフト共重合体のうちいずれの形態であってもよい。
上記の樹脂は、特に限定されないが、例えば、以下に示す調製方法により得ることができ、必要に応じて複数の方法を組み合わせてもよい。当該調製方法としては、所望の樹脂を構成する成分の単量体中に重合触媒(重合開始剤)と分散剤とを混合して重合(乳化重合)する方法、親水性部分を持つ樹脂を水溶性有機溶剤に溶解させて得られる溶液を水中に混合した後に水溶性有機溶剤を蒸留等で除去する方法、及び樹脂を非水溶性有機溶剤に溶解させて得られる溶液を分散剤と共に水溶液中に混合する方法が挙げられる。
樹脂の含有量が、1質量%以上15質量%以下であることが好ましく、2質量%以上10質量%であることがより好ましく、3質量%以上7質量%以下であることがさらに好ましい。樹脂の含有量を上記の範囲内に設定することにより、耐擦性を向上させつつ、樹脂を安定して溶解でき、吐出安定性を向上できる。
(ワックス)
第1インク組成物及び第2インク組成物は、固形分として、ワックスを含んでもよい。記録用ヘッドが加熱された場合、水分の蒸発に伴い樹脂粒子が凝集固着し、記録用ヘッドのノズル目詰まりをひきおこして、安定した吐出が妨げられる可能性がある。これに対してワックスを併用すると、水分蒸発の際のポリマー粒子の凝集が抑制される。これにより、記録用ヘッドのノズルへの樹脂粒子の固着による、吐出不良、目詰まりを抑制することができ、ひいては記録安定性に優れるインク組成物となる。また、高温記録時において、ワックスは樹脂粒子による皮膜が脆くなりすぎることを抑制する。そのため、高温記録したとしても耐擦性が劣化しにくいインク組成物となる。
ワックスの融点は、70℃以上110℃未満であり、80℃以上110℃以下であることがより好ましい。融点が上記範囲であることにより、記録安定性により優れ、高温記録時においても耐擦性がより劣化しにくい記録物を得ることができる。なお、融点は、示差走査熱量計(DSC)により測定することができる。また、ワックスの融点は、例えば、そのワックスを構成する複数の構成単位の比率を調整することで制御することができる。
ワックスは、ポリエチレンワックスを含むことが好ましい。70℃以上110℃未満の融点を有するポリエチレンワックスとしては、特に限定されないが、例えば、AQUACER515 ポリオレフィンワックス (BYK社製)、ノプコートPEM―17(サンノプコ社製)ポリロンL787、ポリロンL788(以上、中京油脂社製)ケミパールW4005(三井化学社製)が挙げられる。70℃以上110℃未満の融点を有するポリエチレンワックスは、常法により合成されたものであってもよい。
ワックスは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ワックスのインク組成物中への添加量としては、インク組成物の全質量を基準として、0.1〜5.0質量%が好ましく、0.3〜3.5質量%がより好ましく、1.0〜2.0質量%がさらにより好ましい。添加量が上記範囲内であることにより、記録安定性により優れ、高温記録時においても耐擦性がより劣化しにくいものとなる。
(有機溶剤)
第1インク組成物及び第2インク組成物は、有機溶剤を含み、好ましくは標準沸点180〜250℃の有機溶剤を含む。これにより、ヘッド内のインク組成物に含まれる有機溶剤の揮発を防止して、ノズルの目詰まりを防止できる。また、記録媒体上においてインク組成物と混合した際には速やかに有機溶剤を揮発させることができ、記録媒体において、十分な画質を得ることができる。
上記有機溶剤として、含窒素溶剤を含んでいてよい。これによりインク組成物中の樹脂を安定して溶解させることができる。また、含窒素溶剤はインク組成物に含まれる樹脂粒子の軟化を促進させる効果があり、加熱温度が低い場合でも密着性が向上する傾向にある。
含窒素溶剤としては、特に限定されないが、ピロリドン系、イミダゾリジノン系、アミドエーテル系、ピリジン系、ピラジン系、ピリドン系が挙げられる。好ましくはピロリドン系であり、例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンが挙げられる。含窒素溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。含窒素溶剤の中でもアミド系溶剤が好ましい。アミド系溶剤は、環状アミド類、非環状アミド類があげられる。環状アミド類としてはピロリドン系などがあげられる。非環状アミド類としては非環状の構造であるアミドエーテル系などがあげられる。
アミドエーテル系としては、アルコキシアルキルアミドとも言うものがあげられ、例えば、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、3−メトキシ−N,N−ジエチルプロピオンアミド、3−メトキシ−N,N−メチルエチルプロピオンアミド、3−エトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、3−エトキシ−N,N−ジエチルプロピオンアミド、3−エトキシ−N,N−メチルエチルプロピオンアミド、3−n−ブトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、3−n−ブトキシ−N,N−ジエチルプロピオンアミド、3−n−ブトキシ−N,N−メチルエチルプロピオンアミド、3−n−プロポキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、3−n−プロポキシ−N,N−ジエチルプロピオンアミド、3−n−プロポキシ−N,N−メチルエチルプロピオンアミド、3−iso−プロポキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、3−iso−プロポキシ−N,N−ジエチルプロピオンアミド、3−iso−プロポキシ−N,N−メチルエチルプロピオンアミド、3−tert−ブトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、3−tert−ブトキシ−N,N−ジエチルプロピオンアミドなどがあげられる。
上記有機溶剤として、含窒素溶剤以外のその他の有機溶剤をさらに含んでもよい。このような有機溶剤は、好ましくはポリオール化合物、アルカンジオール化合物、グリコールエーテル化合物が挙げられる。ポリオール化合物としては炭素数4以下のアルカンのポリオール、炭素数4以下のアルカンのポリオールの水酸基同士の分子間縮合物があげられる。該炭素数は3以下が好ましい。分子間縮合物の縮合した分子数は2〜4が好ましい。ポリオールの分子中の水酸基数は2以上であり2〜4が好ましい。
アルカンジオール化合物としては炭素数5以上のアルカンのジオール化物があげられる。該炭素数は5以上が好ましく10以下が好ましく7以下がより好ましい。
グリコールエーテル化合物としてはアルカンジオールの水酸基の1つまたは2つがエーテル化したものがあげられエーテルはアルキルエーテルまたアリールエーテエルがあげられ前者が好ましい。
上記の有機溶剤またはその他の有機溶剤の例としては、特に限定されないが、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、iso−ブタノール、n−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、及びtert−ペンタノール、2−メチル−1,3−プロパンジオール等のアルコール類又はグリコール類が挙げられる。その他の溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機溶剤の含有量は、インク組成物の総量に対して、好ましくは3.0質量%以上であり、より好ましくは5.0質量%以上37質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以上35質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以上30質量%以下である。これにより、記録媒体上において速やかに有機溶剤を揮発させることができ記録媒体において、十分な画質を得ることができる。
有機溶剤の中でも含窒素溶剤の含有量は、インク組成物の総量に対して、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5.0質量%以上27質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以上25質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以上20質量%以下である。これにより耐擦性などがより優れる点で好ましい。
インク組成物における標準沸点280℃超のポリオール化合物の有機溶剤の含有量は、インク組成物の全質量に対して、2質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましく、0.1質量%以下が特に好ましく、0.05質量%以下がますます好ましい。該含有量の下限は0質量%である。含有量が上記範囲であることにより、インク組成物を用いた記録物の耐擦性が、標準沸点280℃超の有機溶剤により低下することが抑制され、より耐擦性に優れた記録物を得ることができる。
さらに、第1インク組成物及び第2インク組成物は、標準沸点が280℃を超える有機溶剤(ポリオール化合物に限らない)の含有量が5質量%以下であることが好ましく、上記範囲であることがより好ましい。標準沸点が280℃を超える有機溶剤としては、例えばポリオール化合物であるが限られない。インク組成物が該有機溶剤の含有量が上記範囲であると、記録媒体上でのインクの乾燥性が大幅に低下することが無く、その結果、種々の記録媒体、特にインク非吸収性又は低吸収性の記録媒体において、画像の濃淡ムラが低減でき、インクの定着性が優れる。
(界面活性剤)
第1インク組成物及び第2インク組成物は、界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤が挙げられる。このなかでも、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤が好ましい。
界面活性剤の含有量は、インク組成物100質量%に対して、好ましくは0.1〜2.0質量%であり、より好ましくは0.1〜1.7質量%であり、さらに好ましくは0.1〜1.5質量%である。界面活性剤の含有量が2.0質量%以下であることにより、耐擦性がより向上する傾向にある。また、界面活性剤の含有量が0.1質量%以上であることにより、得られる記録物の埋まり性がより向上し、かつ、吐出安定性がより向上する傾向にある。
(水)
第1インク組成物及び第2インク組成物は、水を含む。水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、及び蒸留水等の純水、並びに超純水のような、イオン性不純物を極力除去したものが挙げられる。また、紫外線照射又は過酸化水素の添加などによって滅菌した水を用いると、顔料分散液及びこれを用いたインクを長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止することができる。
水の含有量は特に制限されないが、本発明は、有機溶剤よりも、水の含有量を多く含むことが好ましい。また、所謂「水系インク」と呼ばれるものであり、インクに含む溶媒成分として少なくとも水を主要な成分とするものである。水の含有量は、水系インク組成物100質量%に対して、好ましくは40〜95質量%であり、より好ましくは45〜90質量%であり、さらに好ましくは50〜80質量%であり、特に好ましくは52〜66質量%である。
(その他の成分)
本実施形態で用いるインクは、その保存安定性及びヘッドからの吐出安定性を良好に維持するため、目詰まり改善のため、又はインクの劣化を防止するため、溶解助剤、粘度調整剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、腐食防止剤、及び分散に影響を与える金属イオンを捕獲するためのキレート化剤などの、種々の添加剤を適宜添加することもできる。
以上、第1インク組成物及び第2インク組成物に含まれ得る成分について説明したが、本実施形態では、加熱された記録媒体へインクを付着して行うインクジェット記録方法において第1インク組成物及び第2インク組成物による画像の位置ずれを抑制するため、第1インク組成物及び第2インク組成物に含まれ得る成分を以下のように規定する。
本実施形態では、第1インク組成物が第2インク組成物よりも固形分の含有量が5質量%以上多く、好ましくは5〜20質量%多く、より好ましくは5〜13質量%多く、さらに好ましくは6〜10質量%多い。一方、5〜6.5質量%多いことも、インクの設計のし易さなどの点で好ましい。
第1インクの固形分の含有量は、インク組成物の総質量に対し、好ましくは7〜25質量%であり、より好ましくは10〜22質量%であり、さらに好ましくは10〜20質量%であり、さらにより好ましくは12〜18質量%であり、特に好ましくは14〜18質量%である。さらには、15〜18質量%が好ましい。
第2インクの固形分の含有量はインク組成物の総質量に対し、好ましくは1〜15質量%であり、より好ましくは2〜13質量%であり、さらに好ましくは2〜12質量%であり、よりさらに好ましくは5〜11質量%であり、特に好ましくは8〜11質量%である。さらには、9〜11質量%が好ましい。耐擦性や耐目詰り性などがより優れる点で上記の範囲が好ましい。
インク組成物における固形分の含有量とは、後乾燥工程としての二次乾燥工程で蒸発揮散しない成分の含有量である。このインク組成物の固形分としては少なくとも色材を含むが、さらに樹脂粒子・ワックス等を含んでもよい。
インク組成物における有機溶剤の含有量は、上述した含窒素溶剤などの有機溶剤の含有量であるが、界面活性剤の含有量を含めない。
また、第2インク組成物が第1インク組成物よりも有機溶剤の含有量が7質量%以上多く、好ましくは7〜20質量%多く、より好ましくは8〜17質量%多く、さらに好ましくは9〜14質量%多い。また、特に好ましくは、9質量%以上多く、より好ましくは10質量%以上多く、さらに好ましくは12質量%以上多く、よりさらに好ましくは12〜14質量%多い。
第1インクの有機溶剤の含有量は好ましくは5〜27質量%であり、より好ましくは5〜26質量%であり、さらに好ましくは12〜25質量%であり、さらにより好ましくは10〜24質量%であり、特に好ましくは15〜23質量%である。
第2インクの有機溶剤の含有量は好ましくは10〜40質量%であり、より好ましくは20〜38質量%であり、さらに好ましくは23〜35質量%であり、特に好ましくは25〜33質量%であり、より特に好ましくは28〜33質量%である。
このように、第2インク組成物の有機溶剤の含有量を第1インク組成物の有機溶剤の含有量をよりも多くする組成にして第1インク組成物と第2インク組成物の固形分量と有機溶剤量のバランスをとったところ、後述する実施例に示すように、画像間の位置ずれの発生を抑制できる。特に第1インク組成物の画像と第2インク組成物の画像間の位置ずれがパス中に増大することの抑制ができる。このような組成とすると、パス中にノズルでインクの乾燥が進んでも第1インク組成物の画像と第2インク組成物の画像の位置ずれの程度が揃うことが見出された。
原理としては、推測であるが、以下の様に推測する。ノズルでインクが乾燥して増粘し吐出速度や吐出タイミングが変わってしまいインク着弾位置がずれて画像の位置ズレが発生すると推測する。第1インクと第2インクの間で、インク中の固形分と有機溶剤の合計の含有量が近くなることで、ノズルでインクが乾燥したときの着弾位置ずれの程度が近くなると推測する。水系組成物の主要な成分のうち固形分と有機溶剤は水と比べて粘度が高いなど特性に共通点があり、これらの合計の含有量が近いためと推測する。また、インクの主要な成分が固形分と有機溶剤と水である場合、第1インクと第2インクで固形分と有機溶剤の合計の含有量をバランスとるようにすると、水の含有量が第1インクと第2インクとで差が比較的小さくなる。ノズルでインクが乾燥するときに水は早期に乾燥するが、有機溶剤や固形分は乾燥しないか比較的乾燥が遅い。そのためノズルでインクが乾燥する際に、水がほぼ乾燥した状態でインクの乾燥がいったん止まりインクの増粘もいったん止まる。第1インクと第2インクの間で水の含有量が近い場合、この状態におけるインクの乾燥率が近くなる。水の含有量だけ乾燥するからである。この状態で乾燥がいったん止まることで増粘の程度も近くなると推測される。ただし上記は推測でありこれに限るものでは無い。
第1インク組成物と第2インク組成物の水の含有量の差(多−少)は、8質量%以内であることが好ましく、さらに好ましくは5.5質量%以内であり、より好ましくは3質量%以内である。水の含有量の差の下限は0質量%以上である。一方、インクの設計のし易さなどの点で、差が2質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。
また限るものでは無いが、上記範囲で第1インクの方が第2インクより水の含有量が多いことが好ましい。このように水の含有量を揃えことで、インクの乾燥の程度を揃えることができ、ひいては乾燥による増粘の程度を揃えることができ、画像の位置ずれを抑制できる。
第1インク組成物と第2インク組成物の20℃における粘度の差(大−小)が、好ましくは2mPa・s以内であることが好ましく、より好ましくは1.5mPa・s以内であり、さらに好ましくは1mPa・s以内であり、特に好ましくは0.5mPa・s以内である。下限は0mPa・s以上である。また、上記粘度差の範囲内で、第1インク組成物の粘度が第2インク組成物の粘度よりも低いことも好ましい。このように、第1インク組成物と第2インク組成物の初期粘度差が小さいことにより、インクが乾燥し増粘したときの粘度差の開きも小さい傾向がある。なお、第1インク組成物と第2インク組成物の初期の粘度が揃ってない場合でも、ヘッドの駆動波形をインク組成物毎に変えたり、画像の記録開始位置を調整することで、初期の画像の位置を揃えることが可能である。よって初期粘度差が小さいことは必ずしも必要ではないが、上述するように第1インクと第2インクが、第1インク組成物が第2インク組成物よりも固形分の含有量が5質量%以上多く、第2インク組成物が第1インク組成物よりも有機溶剤の含有量が7質量%以上多いことで、パス中の画像間の位置ずれの増大を抑制できる。例えば、記録中にノズルでインクが乾燥して増粘し画像の位置ずれが次第に大きくなることが防止できる。インクの粘度は、回転式粘度計を用いることができる。例えばMCRレオメーター(アントンパール社製)などを用いることができる。インクの温度を20℃に保持することで測定できる。
第1インク組成物と第2インク組成物はそれぞれ水の含有量が50質量%以上であることが好ましい。本実施形態は、インク組成物中の水の含有量が50質量%以上と多い場合に特に効果がある。
第1インク組成物は、固形分を10〜22質量%及び有機溶剤を10〜27質量%含有することが好ましい。さらに固形分を12〜20質量%及び有機溶剤を12〜26質量%含有することがより好ましく、固形分を14〜20質量%及び有機溶剤を15〜24質量%含有することがさらに好ましい。
また、第2インク組成物が固形分を5〜15質量%及び有機溶剤を23〜38質量%含有することが好ましく、固形分を5〜11質量%及び有機溶剤を25〜37質量%含有することがより好ましく、固形分を8〜11質量%及び有機溶剤を25〜35質量%含有することがさらに好ましい。
このように、第1インク組成物の方が第2インク組成物よりも固形分が多い分、第2インク組成物の有機溶剤の含有量を第1インク組成物よりも多くして、第1インク組成物と第2インク組成物の固形分量と有機溶剤量のバランスをとることにより、インクジェット記録中における第1インク組成物の画像と第2インク組成物の画像の位置ずれを抑制することができる。
〔処理液〕
本実施形態に係るインクセットは、水系インクジェットインク組成物の成分を凝集させる凝集剤を含む処理液と共に記録に用いられるものであることが好ましい。処理液は、好ましくは、水を組成物の主要な溶媒成分の1つとする水系組成物であり、水の組成物における含有量は40質量%以上が好ましい。処理液はさらに有機溶剤を含有しても良い。処理液を用いることで、インク組成物の画質等を優れたものにすることができる。一方、画像の耐擦性が低下することがある。その原因としては処理液によりインクの成分が凝集してインク膜が平滑化しにくいためと推測する。処理液は、インク組成物を付着させる前に記録媒体に付着させることが好ましい。処理液を予め記録媒体に塗布しておくことにより、記録媒体に直接インク組成物を付着させる場合と比べて、画質を向上させることができる。処理液は、凝集剤以外の含んでも良い成分の含有や成分の含有量や特性や組成物の物性などを、前述のインク組成物に関するものと同様なものに、インク組成物とは独立したものとしてすることができる。特に第2インクのそれらと同様なものにすることができる。処理液は好ましくは記録媒体を着色するために用いるものではないものであり、この場合の処理液中の色材の含有量は好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以下であり、下限は0質量%以上である。以下に処理液中の成分について説明するが、上記のとおり以下に限るものでは無い。
(凝集剤)
凝集剤は、インク組成物に含まれるいずれかの成分、好ましくは色材と樹脂のいずれかと反応することで凝集させて増粘させ、インク組成物に含まれる樹脂や色材を記録媒体で早期に固定して流動を抑えるという機能を有する。これにより、着弾後にインク滴を固定しインク滴間の干渉を抑えることができ、濃度むらのない画像を形成できる。
凝集剤としては、多価金属塩、有機酸、カチオンポリマーの何れかが好ましく、多価金属塩、カチオンポリマーの何れかがより好ましく、前1つがさらに好ましい。処理液に含む凝集剤の含有量は0.5〜20質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましく、2〜10質量%がさらに好ましい。これにより、着色インク組成物の成分を凝集させて画質を向上させることができる。
多価金属化合物は、2価以上の多価金属イオンとアニオンから構成される化合物である。2価以上の多価金属イオンとしては、例えば、Ca2+、Mg2+、Cu2+、Ni2+、Zn2+、Ba2+等が挙げられる。アニオンとしては、例えば、Cl-、NO3 -、CH3COO-、I-、Br-、ClO3 -、SO4 -等が挙げられる。これらの中でも、上述の凝集効果が一層高まるという観点から、マグネシウム塩、カルシウム塩およびアルミニウム塩を好ましく用いることができる。
有機酸としては、以下に限定されないが、例えば、コハク酸、酢酸、プロピオン酸、及び乳酸が挙げられる。
カチオンポリマーとしては、以下に限定されないが、例えば、アミン系ポリマーなどがあげられ好ましい。アミン系ポリマーとしては、構造中にアミノ基を有するものであればよく、エピハロヒドリンとアミン化合物から生成される樹脂、ポリアリルアミン、ポリアリルアミンの四級塩、等があげられる。水に可溶であり且つ水中で正に荷電するカチオンポリマーが挙げられる。
処理液における凝集剤の含有量は、好ましくは、0.5〜15質量%である。より好ましくは1〜10質量%であり、さらに好ましくは2〜8質量%である。処理液における凝集剤の含有量は、モル濃度で換算すると、0.1〜1.5mol/kgが好ましい。処理液における凝集剤の含有量の下限は、より好ましくは0.2mol/kg以上である。処理液における凝集剤の含有量の上限は、より好ましくは1.0mol/kg以下であり、さらに好ましくは0.6mol/kg以下である。これにより、画質を向上させつつ、耐擦性等の他の特性とのバランスを図ることができる。
(有機溶剤)
処理液は、好ましくは有機溶剤を含み、さらに好ましくは標準沸点180〜250℃の有機溶剤を含む。これにより、ヘッド内の処理液に含まれる有機溶剤の揮発を防止して、ノズルの目詰まりを防止できる。また、記録媒体上においてインク組成物と混合した際には速やかに有機溶剤を揮発させることができ、記録媒体において、十分な画質を得ることができる。
上記有機溶剤として、含窒素溶剤を含んでいてよい。これによりインク組成物中の樹脂を安定して溶解させることができ、インク組成物と混じり合うことができる。また、含窒素溶剤はインク組成物に含まれる樹脂粒子の軟化を促進させる効果があり、加熱温度が低い場合でも密着性が向上する傾向にある。含窒素溶剤及びその他の有機溶剤としては、インク組成物で説明したものと同様のものを用いることができる。
有機溶剤の含有量は、処理液の総量に対して、好ましくは3.0質量%以上であり、より好ましくは5.0質量%以上35質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以上35質量%以下、さらに好ましくは15質量%以上30質量%以下である。これにより、インク組成物と処理液とが混合した際にインク組成物の成分の凝集の程度が適切なものとなる。また、記録媒体上においてインク組成物と混合した際には速やかに有機溶剤を揮発させることができ、インク非吸収性または低吸収性の記録媒体において、十分な画質を得ることができる。
処理液は、標準沸点が280℃を超える有機溶剤の含有量が2質量%以下であることが好ましい。標準沸点が280℃を超える有機溶剤としては、例えばポリオール化合物がある。処理液が該有機溶剤の含有量が上記範囲であると、記録媒体上での処理液の乾燥性が大幅に低下してしまうことが無く好ましい。その結果、種々の記録媒体、特にインク非吸収性又は低吸収性の記録媒体において、画像のブリード低減や耐擦性が優れる点で好ましい。
処理液における標準沸点280℃超の有機溶剤の含有量は、インク組成物の全質量に対して1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらにより好ましく、0.1質量%以下が特に好ましく、0.05質量%以下がますます好ましい。該含有量の下限は0質量%である。含有量が上記範囲であることにより、記録物の耐擦性が、標準沸点280℃超の有機溶剤により低下することが抑制され、より耐擦性に優れた記録物を得ることができる。
処理液は、その他、界面活性剤、樹脂、糊剤(例えば、デンプン物質、セルロース系物質、多糖類、タンパク質、水溶性高分子等)、pH調製剤、防腐剤・防かび剤等の成分を含有してもよい。
以上、処理液の成分について説明したが、本実施形態では、第1インク組成物と処理液との固形分及び有機溶剤の含有量の差を、上述した第1インク組成物と第2インク組成物との固形分及び有機溶剤の含有量の差と同様の範囲内に規定することが好ましい。具体的には、第1インク組成物が処理液よりも固形分の含有量が5質量%以上多く、処理液が第1インク組成物よりも有機溶剤の含有量が7質量%以上多いことが好ましい。これにより、第1インク組成物と第2インク組成物において述べたのと同様の理由により、処理液と第1インク組成物のような固形分の含有量の異なる液間において、インクジェット記録中の画像の位置ずれを抑制することができる。特に、第1インクにより形成した画像と処理液により形成した処理液層の位置ずれを抑制することができ、第1インクが処理液と充分に接触することができ、画質が向上する点で好ましい。
処理液における固形分の含有量とは、後乾燥工程としての二次乾燥工程で蒸発揮散しない成分の含有量であり、この処理液の固形分としては凝集剤が挙げられる。インク組成物に含む成分や含んでもよい成分で固形分であるものを処理液が含む場合はこれらも固形分とする。
その他、第1インク組成物と処理液との水の含有量の差及びまたは粘度の差を、上述した第1インク組成物と第2インク組成物で述べたのと同様の範囲内に規定することが好ましい。
〔記録装置〕
本実施形態に係る記録装置は、本実施形態の記録方法で記録を行う記録装置である。記録装置はインクジェット記録装置であってもよく、シリアル型のインクジェット記録装置やライン型のインクジェット記録装置であってもよい。
以下、本実施形態に係る記録装置の構成の一例を説明する。
図1に、本実施形態に係るインクジェット記録方法に用いられる記録装置(インクジェット装置)の一例の概略断面図を示す。図1に示すように、インクジェット装置100は、キャリッジ2と、インクジェットヘッド3と、プラテン4と、プラテンヒーター4aと、アフターヒーター5と、冷却ファン5aと、プレヒーター7と、IRヒーター8と、通気ファン8aとを備えている。なお、冷却ファン5aと、プレヒーター7と、IRヒーター8と、通気ファン8aは必要に応じて使用され、省略可能である。
インクジェットヘッド3は、キャリッジ2に搭載されており、インク組成物を吐出する複数のノズル列を備える。各ノズル列は、複数のノズル孔が配列されてなる。インクジェット記録装置1は、いわゆるシリアル型のインクジェット記録装置である。シリアル型のインクジェット記録装置は、所定の方向に移動するキャリッジ2にインクジェットヘッド3が搭載されており、キャリッジ2の主走査方向への移動に伴ってインクジェットヘッド3が移動することにより記録媒体上に液滴を吐出するもののことをいう。キャリッジ2は図の手前−奥方向である主走査方向へ移動しながらキャリッジ2に搭載するインクジェットヘッド3からインクを吐出して記録媒体へ付着させる主走査を行う。インクジェットヘッド3は、第1インク組成物を吐出するヘッドと、第1ヘッドの下流に配置され、第2インク組成物を吐出するヘッドとを備えてもよい。あるいは、インクジェットヘッド3は、第1インク組成物を吐出するノズル列と、第2インク組成物を吐出するノズル列を備えた一つのヘッドであってもよい。
また、インクジェットヘッド3は、処理液も吐出するように構成されていると好ましい。この場合には、インクジェットヘッド3は、第1インク組成物を吐出するヘッドの上流に、処理液を吐出するヘッドを備えていればよい。あるいは、インクジェットヘッド3は、第1インク組成物を吐出するノズル列の上流側に処理液を吐出するノズルを備えていてもよい。
プラテンヒーター4aは、インク組成物の付着工程において記録媒体を加熱する際に用いられる。プラテンヒーター4aを用いると、インクジェットヘッド3側と反対側から記録媒体を加熱することができる。これにより、インクジェットヘッド3が比較的加熱されにくくなる。
アフターヒーター5は、記録媒体1に記録されたインク組成物を2次乾燥及び固化させるものである。アフターヒーター5が、画像が記録された記録媒体1を加熱することにより、インク組成物中に含まれる水分などがより速やかに蒸発飛散して、インク組成物中に含まれるポリマー粒子によって皮膜が形成される。このようにして、記録媒体上においてインク乾燥物が強固に定着(接着)して、耐擦性に優れた高画質な画像を短時間で得ることができる。
冷却ファン5aは、アフターヒータ5による記録媒体の乾燥後、記録媒体上のインク組成物を冷却することにより、記録媒体上に密着性よく被膜を形成するために用いられる。
プレヒーター7は、記録媒体に対しインク組成物が吐出される前に、記録媒体を予め加熱する(プレ加熱する)ものである。
IRヒーター8は、必要に応じて使用され、インク組成物の付着工程においてインクジェットヘッド3側から記録媒体を加熱するために用いられる。これにより、インクジェットヘッド3も同時に加熱されやすいが、プラテンヒーター4aなど記録媒体の裏面から加熱される場合と比べて、記録媒体の厚みの影響を受けずに昇温することができる。通気ファン8aは、記録媒体1に付着したインク組成物をより効率的に乾燥させるために使用される。
図2は、インクジェット記録装置100の機能ブロック図である。
コントローラー10は、インクジェット記録装置100の制御を行うための制御ユニットである。インターフェース部11(I/F)は、コンピューター90とインクジェット記録装置100との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU12は、インクジェット記録装置100全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー13は、CPU12のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU12は、ユニット制御回路14により各ユニットを制御する。なお、インクジェット記録装置内の状況を検出器群60が監視し、その検出結果に基づいて、コントローラー10は各ユニットを制御する。
搬送ユニット20は、インクジェット記録の副走査(搬送)を制御するものであり、具体的には、記録媒体1の搬送方向及び搬送速度を制御する。具体的には、モーターによって駆動される搬送ローラーの回転方向及び回転速度を制御することによって記録媒体1の搬送方向及び搬送速度を制御する。
キャリッジユニット30は、インクジェット記録の主走査(パス)を制御するものであり、具体的には、インクジェットヘッド3を主走査方向に往復移動させるものである。キャリッジユニット30は、インクジェットヘッド3を搭載するキャリッジ2と、キャリッジを往復移動させるためのキャリッジ移動機構とを備える。
ヘッドユニット40は、インクジェットヘッドのノズルからの処理液又はインク組成物の吐出量を制御するものである。例えば、インクジェットヘッドのノズルが圧電素子により駆動されるものである場合、各ノズルにおける圧電素子の動作を制御する。ヘッドユニット40により処理液付着後のインク付着までの時間、処理液ドットサイズが制御される。また、キャリッジユニット30及びヘッドユニット40の制御の組合せにより、1走査あたりの処理液付着量が制御される。
乾燥ユニット50は、IRヒーター、プレヒーター、プラテンヒーター、アフターヒーター等の各種ヒーターの温度を制御するものである。
上記のインクジェット記録装置100は、インクジェットヘッド3を搭載するキャリッジ2を主走査方向に移動させる動作と、搬送動作(副走査)とを交互に繰り返す。このとき、コントローラー10は、各パスを行う際に、キャリッジユニット30を制御して、インクジェットヘッド3を主走査方向に移動させるとともに、ヘッドユニット40を制御して、インクジェットヘッド3の所定のノズル孔から処理液又はインク組成物の液滴を吐出させ、記録媒体1にインク組成物の液滴を付着させる。また、コントローラー10は、搬送ユニット50を制御して、搬送動作の際に所定の搬送量にて記録媒体1を搬送方向に搬送させる。
パス(主走査)と搬送動作(副走査)が交互に繰り返されることによって、複数の液滴(ドット)を付着させた記録領域が徐々に搬送される。そして、アフターヒーター5により、記録媒体に付着させた液滴を乾燥させて、画像が完成する。その後、完成した記録物は、巻き取り機構(図示なし)によりロール状に巻き取られたり、フラットベット機構(図示なし)で搬送されたりしてもよい。主走査をパスともいう。シリアル型の記録方法である。主走査を副走査と区別して走査ともいう。
図3は、図1の記録装置のキャリッジ周辺の構成の一例を示す斜視図である。シリアル型のインクジェット記録装置の構成の一例の一部である。キャリッジ周辺の構成100aは、キャリッジ2と、キャリッジ2に搭載されたインクジェットヘッド3と、インクジェットヘッド3の一部でありインクを吐出するノズルを含む部材3aと、インク収容体(不図示)と、インク収容体からインクジェットヘッド3にインクを供給するインク供給管等のインク供給路(不図示)と、を有する。インク収容体はキャリジ4以外の場所に設けても良いしキャリッジに設けても良い。また、キャリッジ2の下方に配設され記録媒体Pが搬送されるプラテン4と、キャリッジ2を記録媒体Pに対して相対的に移動させるキャリッジ移動機構2aと、記録媒体Pを副走査方向(搬送方向)に搬送するローラーである搬送手段20aと、キャリッジ2等の動作を制御する制御部CONTと、を備える。S1−S2の方向が主走査方向であり、T1→T2の方向が副走査方向である。なお1回の主走査で主走査方向(装置の左右方向)の何れか一方の方向に主走査が行われる。
図4はシリアル型の記録装置のキャリッジに搭載されたヘッド(インクジェットヘッド)の配置の一例を示す図である。キャリッジには第1ヘッド、第2ヘッド、第3ヘッドがこの順で、記録媒体の搬送方向である副走査方向の上流側から下流側の順番で配置している。ヘッドはキャリッジによって主走査方向へ移動しつつインクを吐出して記録媒体へ付着させる主走査を行う。1回の主走査で図の左右方向の何れか一方に主走査が行われる。主走査と副走査を交互に繰り返し行うことで記録媒体が少しずつ搬送され記録が進んでいく。主走査により第1ヘッドのノズル列に充填された組成物が吐出され記録媒体に付着する。主走査と副走査が交互に繰り返し行われて記録が進むにつれて、次に第2のノズル列に充填された組成物が記録媒体に付着し、次に第3のノズル列に充填された組成物が記録媒体に付着する。
1回の主走査でヘッドが記録媒体と対向しつつ移動する領域を該主走査の記録領域という。1回の主走査の記録領域は、副走査方向の長さがヘッドのノズル列の副走査方向の長さであって、主走査方向へ伸びる帯状の領域である。例えば第1ヘッドの1つのノズル列からある組成物を吐出して記録を行う場合、該組成物の1回の主走査の記録領域は、第1ヘッドの該1ノズル列の副走査方向の長さで主走査方向に伸びる帯状の領域である。
1つのヘッドには5つのノズル列を備えており、ノズル列毎に異なる組成物を充填し吐出させることもできる。この場合、1つのヘッドから吐出する複数の組成物は同一の主走査で該主走査の記録領域に付着させることができる。ヘッドの数やヘッドに備えるノズル列の数は図のものに限られない。
一方、記録装置としてライン型のインクジェット記録装置を用いてもよい。例えば図1の記録装置において、インクジェットヘッド3が記録媒体の幅方向(図1の奥−手前方向)に延びており、インクジェットヘッドの幅方向の長さが記録媒体の幅方向の記録領域の長さ以上の長さになっているラインヘッドとして構成する。ラインヘッドは記録中に位置が固定されている。記録媒体を搬送しつつラインヘッドからインクを吐出して記録媒体へ付着させる走査(主走査)を1回行うことにより記録を行う。ライン型の記録方法である。ラインヘッドを記録媒体の搬送方向の上流側から下流側に複数個配置して、ラインヘッド毎に別の組成物を吐出させることで複数種の組成物を用いて記録を行うこともできる。記録装置をライン型のインクジェット記録装置とする場合は、インクジェットヘッドの構成や記録の方法以外の記録装置の構成としては、図1のものと同様にすることができる。
〔記録媒体〕
本実施形態では、記録媒体1としては、非吸収性又は低吸収性の記録媒体を用いることが好ましい。非吸収性記録媒体又は低吸収性記録媒体は、低吸収、さらには非吸収であるほど水系インク組成物のはじきによる埋まり性が低下しやすい。そこで、そのような記録媒体に対して、本実施形態に係るインクジェット記録方法を用いることが有利となる。非吸収性記録媒体又は低吸収性記録媒体は、記録媒体自身の耐水性や耐久性があり記録物を様々な用途に利用でき有用である。
ここで、「低吸収性記録媒体」又は「非吸収性記録媒体」は、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msecまでの水吸収量が10mL/m2以下である記録媒体をいう。このブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として最も普及している方法であり、日本紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)でも採用されている。試験方法の詳細は「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法2000年版」の規格No.51「紙及び板紙−液体吸収性試験方法−ブリストー法」に述べられている。
また、非吸収性記録媒体又は低吸収性記録媒体は、記録面の水に対する濡れ性によっても分類することができる。例えば、記録媒体の記録面に0.5μLの水滴を滴下し、接触角の低下率(着弾後0.5ミリ秒における接触角と5秒における接触角の比較)を測定することによって記録媒体を特徴付けることができる。より具体的には、記録媒体の性質として、「非吸収性記録媒体」の非吸収性は上記の低下率が1%未満のことを指し、「低吸収性記録媒体」の低吸収性は上記の低下率が1%以上5%未満のことを指す。また、吸収性とは上記の低下率が5%以上のことを指す。なお、接触角はポータブル接触角計 PCA−1(協和界面科学株式会社製)等を用いて測定することができる。
低吸収性記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、表面に油性インクを受容するための塗工層が設けられた塗工紙が挙げられる。塗工紙としては、特に限定されないが、例えば、アート紙、コート紙、マット紙等の記録本紙が挙げられる。
非吸収性記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、インク吸収層を有していないプラスチックフィルム、紙等の基材上にプラスチックがコーティングされているものやプラスチックフィルムが接着されているもの等が挙げられる。ここでいうプラスチックとしては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
さらに上記の記録媒体以外にも、鉄、銀、銅、アルミニウム等の金属類のプレート、ガラスなどのインク非吸収性又は低吸収性の記録媒体を用いることもできる。
記録媒体の主走査方向の幅は、50cm以上が好ましく、70cm以上がより好ましく、80cm以上がさらに好ましく、100cm以上がさらにより好ましく、130cm以上が特に好ましい。また記録媒体の主走査方向の幅は、好ましくは500cm以下であり、より好ましくは400cm以下であり、さらにより好ましくは300cm以下であり、特に好ましくは200cm以下である。記録媒体の主走査方向の幅が上記範囲の場合、表示用等の有用な記録物の記録が可能であり、一方、走査中の乾燥が生じやすいものの本実施形態によればインクの位置ずれの低減が可能となる点で好ましい。また1走査の最大時間を後述するものにし易く好ましい。
〔インクジェット記録方法〕
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、上述したインクセットを用い、インクセットの第1インク組成物と第2インク組成物を加熱された記録媒体に付着するインク付着工程を有するものである。以下、記録方法について手順を追って説明する。シリアル型記録方法もライン型記録方法も用いることができる。
(処理液付着工程)
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、処理液を記録媒体に付着させる工程を備える。処理液付着工程は、インク組成物を凝集させる凝集剤を含む処理液を記録媒体に付着させる工程である。凝集剤は、インク組成物に含まれる顔料や、インク組成物に含まれ得る顔料分散樹脂などと反応して、顔料を凝集させるという機能を有する。これにより、インク組成物を用いて記録される画像のブリード等の発生を抑制することができ、優れた画質の画像が得られる。処理液の付着の方法は限るものではなく、インクジェット法、ロールコート法、スプレー法などが利用できる。このうちインクジェット法が好ましい。
本実施形態では、処理液の付着を、主走査でインク組成物を付着させた記録領域に対して、該主走査より前に行なうか該主走査で行うことが好ましく前者がより好ましい。なお処理液の付着の時期は上記の形態に限るものでは無い。
(インク組成物付着工程)
インク組成物付着工程は、第1インク組成物と、第2インク組成物と、を含むインクセットを、インクジェットヘッドから吐出して、低吸収性または非吸収性の記録媒体1へ付着する工程である。第1インク組成物及び第2インク組成物を吐出する順序に限定はない。
本実施形態における、シリアル型記録方法の例として、インク付着工程を、インクジェットヘッド3と記録媒体1との相対位置を主走査方向へ変えながらインク組成物を吐出する主走査と、主走査方向に交差する副走査方向にキャリッジ2と記録媒体1の相対位置を変える副走査と、により行う。そして、記録媒体上において第1インク組成物の画像と、第2インク組成物の画像が重なるように記録する。これにより、ラインヘッドのような大型のヘッドを用いなくとも横幅の広い記録媒体へ記録を行うことができる。
好ましくは、インク組成物付着工程を、インクセットを備えるインクジェットヘッドと記録媒体との相対位置を主走査方向へ変えながらインク組成物を吐出する主走査を複数回行うことにより行う。
例えば図4のヘッド(インクジェットヘッド)の構成を用いたシリアル型の記録方法とすることができる。例えば図4のキャリジに搭載する第1ヘッドの1ノズル列に処理液を充填し、第2ヘッドの1ノズル列に第1を充填し、第3ヘッドの1ノズル列に第2インクを充填すればよい。この場合、記録媒体に処理液を付着し、記録が進むにつれ、処理液を付着した記録領域に第1インクを付着し、第1インクを付着した領域に第2インクを付着する。このような場合、同一のキャリッジに第1インクを吐出するインクジェットヘッドと第2インクを吐出するインクジェットヘッドを搭載している。この場合、第1ヘッドと第2ヘッドを別々のキャリッジに搭載する場合と比べて記録装置の構成を簡単なものにでき好ましい。反面、同一のキャリッジの移動により第1インクの付着と第2インクの付着が行われるため、第1インクの画像と第2インクの画像の位置合わせに留意が必要となり、本発明が特に有用である。このような例において、第1インクと第2インクは同一のキャリッジに搭載されているヘッドから吐出されればよく、上記のヘッドの配置に限らない。
好ましくは、1回の主走査の最大時間が0.8秒以上である。「1回の走査の最大時間」とは、1回の走査において、記録媒体の走査方向の端から端まで仮に記録した場合に、インクジェットヘッドの一点が記録媒体と対向している時間をいう。なお記録方法を行う際には記録すべき画像に応じて上記の1回の走査の最大時間より短い時間の走査も行われてもよい。1回の走査の最大時間は、より好ましくは0.8〜5秒以下であり、より好ましくは0.8秒以上4秒以下であり、さらに好ましくは1秒以上3秒以下であり、特に好ましくは1.5〜2.5秒である。
1回の走査の最大時間が上記範囲以下であることにより、画像の位置ずれの低減がより優れる点で好ましい。また、1回の走査の最大時間が上記範囲以上であることにより、記録媒体の幅が広い表示用などに有用な記録物の作成が可能となり好ましい。反面、走査の最大時間が長ければ走査中のノズルのインクの乾燥が生じやすく、画像の位置ずれが生じやすくなるが、本実施形態によればインクの位置ずれの低減が可能となる点で好ましい。なお、走査における平均走査速度は、好ましくは60〜100cm/秒である。
本実施形態において、ライン型記録方法としてインク付着工程を行うこともできる。ライン型記録方法を行う場合は、例えば前述のライン型記録装置を用いて記録を行えばよい。この場合、記録速度を速めることができ好ましい。この場合も、第1インクの画像と第2インクの画像が走査中に位置ずれが増大することを低減でき好ましい。
(加熱工程)
インク組成物付着工程において、加熱手段を用いて記録媒体1を加熱し、加熱された記録媒体1へインク付着工程を行うことが好ましい。インク付着工程の際の記録媒体を加熱する手段はプラテンヒーターに限られず、記録媒体に対して熱を有する空気を送る送風手段や記録媒体へ熱を発生する放射線を照射する手段でもよい。
インク組成物付着工程において、記録媒体の表面温度は27〜50℃が好ましく、28〜45℃がより好ましく、29〜40℃がさらに好ましく、30〜38℃がよりさらに好ましく、32〜38℃が特に好ましい。該温度は付着工程における記録媒体の記録面のインクの付着を受ける部分の表面温度であり、記録を長時間行う場合は記録中の平均温度である。加熱工程を行う場合の記録媒体の表面温度は30℃以上が好ましい。
加熱工程を備えることで画質が優れ、さらに耐擦性や目詰まり低減や高光沢の点でより優れ好ましい。一方、走査中、熱の影響を受けてインクジェットヘッドのノズルのインクが乾燥が生じやすく、インクの吐出速度が変動したりインク滴がノズルから離れるタイミングが変動するため画像の位置ずれの発生が生じると推測する。しかし本実施形態によればインクの位置ずれの低減が可能となる。
本実施形態に係るインクジェット記録方法によれば、加熱された記録媒体へインクを付着して行うインクジェット記録方法において、第1インク組成物の画像と第2インク組成物の画像の位置ずれを抑制できる。
また、インク組成物付着工程において、記録媒体に対して空気を送る送風手段により空気を送る送風工程を備えることが好ましい。送付工程は上記の加熱工程として行うものでも良いし、熱を有さない常温の風を送るものでもよい。送風工程により記録媒体に付着したインクの乾燥をより速めることができ画質がより優れ好ましい。
(インク組成物後乾燥工程)
インク組成物が付着された後にアフターヒーター5により、インク組成物が付着した記録媒体を乾燥させる。これにより、記録媒体上のインク組成物に含まれる樹脂が、溶融し、埋まり性の良い記録物を形成することができる。その際、アフターヒーター5による記録媒体の加熱温度は、好ましくは50〜150℃であり、より好ましくは70℃以上120℃以下であり、さらに好ましくは80℃以上110℃以下である。乾燥温度が上記範囲内であることにより、耐擦性がより向上する傾向にある。
(実施例)
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
(処理液及びインク組成物の調製)
各材料を下記の表1に示す組成(質量%)で混合し、十分に撹拌し、種々の処理液、第1インク組成物及び第2インク組成物を準備した。顔料、樹脂、ワックスはそれぞれの固形分のインク等における含有量である。実施例では、第1インク組成物として白色インク組成物を準備し、第2インク組成物として非白色インク組成物、具体的にはシアンインク組成物を準備した。顔料は事前に分散剤樹脂(スチレンアクリル系の水溶性樹脂)と顔料:分散剤樹脂が5:1の質量比で水に混合しビーズミルで撹拌して顔料分散液を調製し、これをインクの調製に用いた。顔料の固形分は顔料と分散剤樹脂の合計の固形分である。凝集剤として多価金属塩の水和物を用いる場合は、固形分は水和物の水を除いた固形分としている。
表1に示すインク材料は以下の通りである。
凝集剤A:多価金属塩「硫酸マグネシウム・7水和物」
凝集剤B:カチオンポリマー「カチオマスタ―PD−7」
顔料(白色インク):Pigment White 6(二酸化チタン顔料)
顔料(非白色インク):Pigment Blue15:3
樹脂:スチレンアクリル系「ジョンクリル62」樹脂エマルジョン
ワックス:ポリエチレン系「AQ515」 ワックスエマルジョン
界面活性剤:シリコン系「BYK348」

表1に示すインクの粘度は、MCR300レオメーター(アントンパール社製)を用いて、インクの温度を20℃に保持して測定した値である。
表2〜4に示すように、インクジェット記録方法に用いる処理液及びインク組成物の組合せ並びに各種条件を変化させて記録し、各種の評価を行った。以下に、記録方法の条件及び各評価試験の詳細について説明する。
(記録試験)
エプソン製SC−S40650改造機を作製した。ヘッドは図4のように記録媒体の搬送方向の上流側とその下流側さらにその下流側に3個配置した。上流から第1ヘッド、第2ヘッド、第3ヘッドとする。第1ヘッドの1ノズル列に処理液、第2ヘッドの1ノズル列に白色インク(第1インク組成物)、第3ヘッドの1ノズル列に非白色インク(第2インク組成物)を充填した。記録媒体に処理液、白色インク、非白色インクインクの順番で記録媒体に付着が可能とした。3つのヘッドと対向する共通プラテンにはプラテンヒータを設けた。プラテンヒーターを作動させ付着工程時の記録媒体表面温度を表中の値とした。ただし25℃の例はプラテンヒーターを停止して加熱を行わなかった。ヘッドより下流のアフターヒータで二次乾燥をおこなった。二次乾燥は85℃で約30秒行った。
(記録媒体)
記録媒体としてLAGジェットE−1000ZC(リンテック社製、透明フィルム)を使用した。これを切断又は張り付けて記録媒体幅を各例毎に表中の値とした。記録媒体幅のため1走査時間は表中の値となった。
画像位置ずれ評価以外の評価用パターンは次のような記録条件とした。処理液及びインクごとに最高で1440×1400dpiの解像度とし付着量が下記の値になるようにドットのインク量やドット密度を調整した。
インク:インクごと12mg/inch2の付着量
処理液:用いたインクの合計の付着量に対し10質量%の付着量
記録した後の記録媒体に形成された記録パターンを評価した。以下に、各評価試験の内容を示す。
<画像位置ずれ>
第1インクのノズル列を用いて、1回の主走査で記録媒体の主走査方向の記録可能な範囲の一方の端から他方の端へ主走査を行い一方の端と他方の端にそれぞれ線を記録した。各線は副走査方向に延びる線であり、線の副走査方向の長さを1cmとした。次に副走査を行い、キャリッジをリターンさせた。次に第2インクのノズル列を用いて、第1インクで記録した線に重なる様に一方の端から他方の端に主走査を行い、一方の端と他方の端に線を記録した。第2インクの線も副走査方向の長さを1cmとした。第1インクの線と第2インクの線は主走査方向の位置が理論上重なる位置となる様に同じ位置でインクを吐出するようにした。このとき第1インクで記録媒体の副走査方向の次の領域へ同様に線を記録した。副走査とキャリッジリターンを行い、前の主走査で記録した第1インクの線に次の主走査で第2インクの線を重ねて記録する。これを30分連続して行った。なお、キャリッジが移動する毎に、記録媒体の両外側に設けたフラッシングボックスへノズルでフラッシングをした。記録後、主走査方向の他方の端に記録した線について、第1インクの線と第2インクの線の主走査方向の位置ずれを線ごとに確認し最大のずれ量を確認した。なお主走査方向の一方の端に記録した線は何れの例においても位置ずれは発生しなかった。
A:ずれ量が0.1mm以下。
B:ずれ量が0.1mm超0.3mm以下。
C:ずれ量が0.3mm超0.6mm以下。
D:ずれ量が0.6mm超。
<画像端滲み>
評価用テストパターンは1パターンを3×3cmの大きさとしパターン間に1cmの隙間を空けて記録媒体の主走査方向の記録可能領域全体に並べて記録した。パターンは処理液、白色インクの各パターンが理論上重なる位置となる様に同じ位置で吐出するようにした。副走査方向にもパターン間に1cmの間隔を空けてパターンを並べて記録した。非白インクは使用しなかった。主走査ごとにノズルのフラッシングを行った。
記録試験を30分連続で行い、各パターンについて、白色パターンの内部に比べて主走査方向の端部に白が濃淡ムラになっている状態が観察されるか否かを目視で観察した。
A:パターン内部と比べて端部の濃淡ムラが見える状態がない。
B:パターン内部と比べて端部の濃淡ムラが見える状態が若干ある。
C:パターン内部と比べて端部の濃淡ムラが見える状態が目立つ。
<耐目詰まり性(白)>
画像端滲み試験の条件で記録を2時間連続で行い、記録後、白ノズル列の吐出検査を行った。
A:不吐出ノズルなし
B:不吐出ノズル2%以下
C:不吐出ノズル2%超4%以下
D:不吐出ノズル4%超
<耐擦性(白)>
処理液と白色インクだけ用いパターンを記録した。学振耐擦試験で、布で荷重500gで10回擦って評価した。
A:パターン部の剥がれも綿布への色移りもない。
B:パターン部の剥がれないが、綿布への色移り若干ある。
C:パターン部の剥がれがある。
<白色度>
処理液と白色インクだけ用いパターンを記録した。画像の白色度(L*)を、分光測色計Gretag Macbeth Spectrolino(製品名、X−RITE社製)によって測定した。測定時にはOD値2.1の黒色台紙を下地として用いた。
A:L*値75以上。
B:L*値70以上75未満。
C:L*値70未満。
<画質(白)>
処理液と白色インクだけ用いパターンを記録した。パターンを目視で評価した。
A:パターン内に濃淡のムラがない。
B:パターン内に濃淡のムラが若干見える。
C:パターン内に濃淡のムラが目立つ。
実施例及び比較例の結果から下記に示す知見が得られた。
第1インクが第2インクよりも固形分の含有量が5質量%以上多く第2インクが第1インクよりも有機溶剤の含有量が7質量%以上多く加熱工程を備える実施例はいずれも画像位置ずれ抑制が優れていた。一方そのような条件を満たさない比較例は何れも画像位置ずれ抑制が劣っていた。以下詳細を記す。
実施例1と6、7の比較、実施例16と9の比較から、インク付着工程における記録温度が低いほうが画像位置ずれ抑制がより優れており、耐目詰まり性も優れていた。記録温度が高い場合、ノズルの乾燥が進み耐目詰まりや画像位置ずれに影響したと推測する。また、画像位置ずれ評価において主走査方向の一方の端に記録した線は画像位置ずれが発生しなかったことから、主走査中にノズルの乾燥が進み画像位置ずれが発生したと推測する。また、インク付着工程における記録温度が高いほうが画質がより優れたことから、加熱工程を行い優れた画質を得る場合に画像位置ずれ抑制ができる点で本発明が有用であることがわかった。
実施例1と11,12の比較、実施例17と3の比較から、インク付着工程におけるパス時間が短いほうが、画像位置ずれ、画像端滲みの試験において、より優れていた。一方、パス時間が長いほうが表示用に有用な記録物の記録が可能となることから、パス時間が長い記録においても画像の位置ずれ等が抑制できる点で本発明が特に有用であることがわかった。
第1インクが処理液よりも固形分の含有量が5質量%以上多く、処理液が第1インクよりも有機溶剤の含有量が7質量%以上多い実施例1〜13、16、17は、そのような条件を満たさない比較例1〜3及び実施例14,15と比べて、画像端滲みが抑制できており、これらの実施例は、第1インクと処理液間の画像位置ずれを抑制できたことがわかる。
第一インクと第二インクの水の含有量の差が5.5質量%以内である実施例1〜4は、水の含有量の差が多い実施例9と比べて、画像位置ずれをより抑制できた。
第一インクと第二インクの20℃における粘度の差が1mPa・s以内である実施例1〜4は、該粘度の差が1mPa・s超である実施例8−10と比べて、画像位置ずれをより抑制できた。
実施例18から処理液を用いない場合でも画像位置ずれ抑制の効果が得られた。
参考例1、2から、第1インクが第2インクよりも固形分の含有量が5質量%以上多く第2インクが第1インクよりも有機溶剤の含有量が7質量%以上多いというものではない第1インクと第二インクを用いたにも拘らず、加熱工程を用いない場合画像位置ずれ抑制が悪くなかったが画質が劣っていた。このことから加熱工程を行い優れた画質を得る場合に画像位置ずれ抑制が優れる点で本発明が必要であることがわかった。
1…記録媒体、2…キャリッジ、3…インクジェットヘッド、4…プラテン、4a…プラテンヒーター、5…アフターヒーター、5a…冷却ファン、7…プレヒーター、8…IRヒーター、8a…通気ファン、10…コントローラー、11…インターフェース部、12…CPU、13…メモリー、14…ユニット制御回路、20…搬送ユニット、30…キャリッジユニット、40…ヘッドユニット、50…乾燥ユニット、60…検出器群、90…コンピューター、100…インクジェット装置。

Claims (13)

  1. 第1インク組成物と第2インク組成物とを備え、
    前記第1インク組成物と前記第2インク組成物が色材を含む固形分と有機溶剤とを含有する水系インクジェットインク組成物であり、
    前記第1インク組成物が前記第2インク組成物よりも固形分の含有量が5質量%以上多く、
    前記第2インク組成物が前記第1インク組成物よりも有機溶剤の含有量が7質量%以上多く、
    加熱された記録媒体へインクを付着して行うインクジェット記録方法に用いるものである、インクセット。
  2. 前記水系インクジェットインク組成物の成分を凝集させる凝集剤を含む処理液と共に記録に用いられるものであり、
    前記第1インク組成物が前記処理液よりも固形分の含有量が5質量%以上多く、
    前記処理液が第1インク組成物よりも有機溶剤の含有量が7質量%以上多い、
    請求項1に記載のインクセット。
  3. 前記第1インク組成物と前記第2インク組成物の水の含有量の差が8質量%以内である、
    請求項1又は2に記載のインクセット。
  4. 前記第1インク組成物と前記第2インク組成物の20℃における粘度の差が1.5mPa・s以内である、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクセット。
  5. 前記第1インク組成物と前記第2インク組成物はそれぞれ水の含有量が50質量%以上である、
    請求項1〜4のいずれか一項に記載のインクセット。
  6. 前記第1インク組成物が前記第2インク組成物よりも固形分の含有量が5〜13質量%多く、前記第2インク組成物が前記第1インク組成物よりも有機溶剤の含有量が7〜17質量%多い、
    請求項1〜5のいずれか一項に記載のインクセット。
  7. 前記第1インク組成物が固形分を10〜22質量%及び有機溶剤を15〜27質量%含有し、前記第2インク組成物が固形分を5〜12質量%及び有機溶剤を23〜38質量%含有する、
    請求項1〜6のいずれか一項に記載のインクセット。
  8. 前記第1インク組成物が固形分として白色色材を含む白色インク組成物であり、第2インク組成物が固形分として非白色色材を含む非白色インク組成物である、
    請求項1〜7のいずれか一項に記載のインクセット。
  9. 前記第2インク組成物が前記第1インク組成物よりも有機溶剤の含有量が9質量%以上多い、
    請求項1〜8のいずれか一項に記載のインクセット。
  10. 請求項1〜9の何れか一項に記載のインクセットを用いて行うものであって、
    加熱された記録媒体に前記第1インク組成物と前記第2インク組成物を付着するインク付着工程を有する、インクジェット記録方法。
  11. 付着させる時の前記記録媒体の表面温度が30〜50℃である、
    請求項10記載のインクジェット記録方法。
  12. 前記水系インクジェットインク組成物の成分を凝集させる凝集剤を含む処理液を前記記録媒体へ付着させる工程を備える、
    請求項10又は11に記載のインクジェット記録方法。
  13. 前記インク付着工程を、前記インクセットを備えるインクジェットヘッドと前記記録媒体との相対位置を主走査方向へ変えながらインク組成物を吐出する主走査を複数回行うことにより行い、1回の主走査の最大時間が0.8秒以上である、
    請求項10〜12のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
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