JP2004106036A - 雌ねじを備えるダイカスト品及び雌ねじ加工方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ダイカスト品の内部に鋳巣があっても、雌ねじ部において充分な強度を保有でき、雌ねじによる締結強度を高めることができるダイカスト品を提供する。
【解決手段】ダイカストにより、雌ねじ形成部位に予備の下孔30を形成し、ダイカスト後に、前記予備の下孔30についてタップ加工のための適正寸法に加工する下孔加工を施すとともに、加工後の下孔31の内周面の少なくとも一部内周部分3aに鋳肌を残しておき、この下孔31に対して前記鋳肌部分5を残したままのタップ加工を施し雌ねじ3を形成する。
【選択図】 図2
【解決手段】ダイカストにより、雌ねじ形成部位に予備の下孔30を形成し、ダイカスト後に、前記予備の下孔30についてタップ加工のための適正寸法に加工する下孔加工を施すとともに、加工後の下孔31の内周面の少なくとも一部内周部分3aに鋳肌を残しておき、この下孔31に対して前記鋳肌部分5を残したままのタップ加工を施し雌ねじ3を形成する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として防振ブッシュ等の防振関連部品その他に使用されるダイカスト品、特に雌ねじを備えるダイカスト品及び雌ねじ加工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、自動車のサスペンションにおいて使用される防振ブッシュ等の防振装置やその取付部品その他の防振関連部品において、軽量化や加工の容易性等の点から、金属部分をアルミニウムやその合金等の所謂アルミダイカスト品で構成することが多くなっている(例えば、下記の特許文献1〜5参照)。
【0003】
このダイカスト品においては、その用途や使用の必要性により、所定の個所に雌ねじ(ねじ孔)を設ける場合がある。この雌ねじを備えるダイカスト品の加工は、次のようにして行われる。
【0004】
先ず、図4(A)のように、アルミニウム合金等のダイカストにより、ダイカスト品101の所定の雌ねじ形成部位に脱型のためのテーパを付したやや径小の予備の下孔130を形成しておく。そして、ダイカスト後に、図4(B)のように、前記予備の下孔130についてタップ加工に適する所定の寸法のストレート孔に加工する切削加工等による下孔加工を行い、タップ加工用の下孔131を形成する。この後、図4(C)のように、前記タップ加工用の下孔131に対してタップ加工を施して雌ねじ形成する。103は雌ねじを示し、105は前記下孔130の鋳肌部分を示す。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−277868号公報
【0006】
【特許文献2】
特開平10−38001号公報
【0007】
【特許文献3】
特開平10−47432号公報
【0008】
【特許文献4】
特開平11−51117号公報
【0009】
【特許文献5】
特開2001−271861号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、アルミニウムやその合金等よりなる所謂アルミダイカスト品101は、その内部にアルミダイカスト特有の鋳巣(気泡による小孔、図示せず)が生じていることが多い。
【0011】
そのため、前記の雌ねじ加工の方法によると、タップ加工用の下孔131を形成する下孔加工の際の内周面の切削により、さらにはその後のタップ加工による切削により、鋳肌部分105が削除される結果、雌ねじ103の表面、特に螺旋の凸条部分等の表面に前記鋳巣が現出することになる。雌ねじ103の部分に前記鋳巣が存在していると、その強度を弱めることになり、充分な製品強度が得られず、特に、前記雌ねじによる締結強度が低下することになる。
【0012】
本発明は、上記に鑑みてなしたものであり、ダイカスト品の表面の鋳肌部分には鋳巣が存在していないことに着目して、鋳肌を残したままのタップ加工で雌ねじを形成することにより、ダイカスト品の内部に鋳巣があっても、充分な強度を保有でき、雌ねじによる締結強度を高めることができるダイカスト品を提供するものであり、同時に、このダイカスト品を得るための雌ねじ加工方法を提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段及び作用】
本発明の第1は、雌ねじを備えるダイカスト品であって、前記雌ねじは、少なくとも一部に鋳肌を残したままタップ加工されて形成されてなることを特徴とする。これにより、前記雌ねじが形成されたねじ孔の内周面において前記鋳肌が残っている部分では内部の鋳巣が現出せず、充分な強度を保有でき、従来品に比して締結強度を高めることができる。
【0014】
本発明の第2は、前記のダイカスト品を得るための雌ねじ加工方法であって、雌ねじを備えるダイカスト品の製造において、ダイカストにより雌ねじ形成部位に予備の下孔を形成し、ダイカスト後に、前記予備の下孔についてタップ加工のための寸法に加工する下孔加工を施すとともに、加工後の下孔の内周面の少なくとも一部に鋳肌を残しておき、この下孔に対して前記鋳肌を残したままのタップ加工を施して雌ねじを形成することを特徴とする。
【0015】
これにより、タップ加工のための下孔加工の際に残した内周面の鋳肌部分、すなわち鋳巣の存在しない鋳肌部分を、そのまま雌ねじに利用できることになる。そのため、前記のように所定の強度を保有し、かつ充分な締結強度を保持できる雌ねじを形成することができる。
【0016】
前記の雌ねじ加工方法において、前記のダイカストによる予備の下孔の開口端側の所要幅の内周部分を、下孔加工後の下孔の内径と略同径もしくは僅かに径大になるように形成しておき、前記内周部分の鋳肌を残すように下孔加工を施して、タップ加工のための下孔を形成するのがよい。これにより、前記下孔の開口端側に所要幅の鋳肌部分を確実に残すことができ、以て、ボルト等による締結上最も有効なねじ孔の開口端側において、前記鋳肌部分をそのまま雌ねじに利用できることになる。
【0017】
また、前記のタップ加工を転造方式のロールタップにより行うのがよく、これにより、前記鋳肌部分を切削することなく雌ねじを形成することができる。すなわち、ロールタップによる転造の効果で、雌ねじにおける凹条部分が凹設され、かつ凸条部分が盛り上げられることになるため、前記鋳肌がそのまま残り、その表面に鋳巣が現出することがない。これにより、雌ねじの強度を高めることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本発明の加工方法により得た雌ねじを備えるダイカスト品の雌ねじ加工部分の断面図である。図2(A)〜(C)は本発明の雌ねじ加工方法の工程順の断面説明図であり、同図(A)はダイカスト後の予備の下孔部分を示し、同図(B)はタップ加工のための下孔加工を施した状態を示し、同図(C)はタップ加工した状態を示している。図3はタップ加工後の雌ねじ部分の拡大断面図を示している。
【0020】
図において、1はアルミニウムやその合金等による所謂ダイカスト法により得られた製品としてのダイカスト品を示し、防振ブッシュ等の防振部品やその取付部品その他の使用形態に応じた所定の形状にダイカスト成形される。図のダイカスト品1はその外形を簡略化して示している。3は前記ダイカスト品1の用途や使用形態等に応じて必要とされる所定の個所の孔に形成された雌ねじを示しており、この雌ねじ3は、少なくとも一部に鋳肌を残したままタップ加工されて形成されている。5は雌ねじの鋳肌部分を示す。この雌ねじ加工の方法について、図2(A)〜(C)に基づいて説明する。
【0021】
先ず、図2(A)に示すように、アルミニウム合金等によるダイカストにより、前記雌ねじ部3の形成部位となる所定の個所に雌ねじ形成のための予備の下孔30を形成しておく。このダイカストによる予備の下孔30の内周面には、ダイカスト特有の鋳肌部分5が形成される。この鋳肌部分5の厚みは、通常0.3〜1.0mm程度のものであり、この部分には前記ダイカスト内部の鋳巣(図示せず)は現出しない。
【0022】
このダイカストによる予備の下孔30は、通常、後述するタップ加工のための下孔31の内径寸法等に応じて、主として内奥側で前記下孔31の内径より径小になるテーパ状に形成される。本発明の場合は、前記の予備の下孔30の内周面の一部、例えば製品表面になる開口端側の所要幅の内周部分、特に好ましくは図のように開口端から約5〜10mm程度の深さまでの内周部分3aは、その内径Daが、後工程での下孔加工後の下孔31の内径D1と略同程度か、もしくはごく僅かに径大になるように、例えば、0.03〜0.1mm程度径大になるように形成しておく。この内周部分3aは必ずしも図のようなストレート孔の形状に限らず、僅かにテーパを付したものであってもよい。
【0023】
次に、図2(B)のように、前記ダイカスト品1の前記予備の下孔30について、切削加工等による下孔加工を施して、前記テーパ部をストレート状にするとともに、後述のタップ加工のための適正寸法の内径D1の下孔31を形成し、該下孔31の内周面の一部に前記鋳肌部分5を残しておく。
【0024】
すなわち、前記予備の下孔30の前記内周部分3aは、その内径Daが前記内径D1と同程度もしくはごく僅かに径大であるために、この部分は前記の切削による下孔加工によっては殆ど切削されず、そのため該内周部分3aの鋳肌部分5がそのまま残ることになる。
【0025】
例えば、前記下孔加工後の下孔31の内径D1を9.34mmにするとき、前記内周部分3aの内径Daを前記よりごく僅かに大きい9.41mmにダイカスト成形しておくと、該内周部分3aは下孔加工では殆ど切削されないため、該内周部分3aの鋳肌がそのまま残されることになる。
【0026】
この後、図2(C)のように、前記下孔31に対してその内周面に雌ねじを形成するタップ加工を施す。この際、特にその内周面の少なくとも一部に鋳肌部分5を残したままでタップ加工を施す。
【0027】
例えば、前記のタップ加工の手段として、雌ねじ形成用ロール等のタップ部材を下孔内に装入して内周面に押圧した状態で回動させることにより該内周面に雌ねじを形成する、所謂転造方式のロールタップを用いてタップ加工を行う。これにより、前記鋳肌部分5を切削することなく雌ねじを形成することができる。
【0028】
すなわち、前記ロールタップによる転造の効果で、前記下孔31の内周面において、雌ねじ3における凹条部分が凹設され、かつ凸条部分が盛り上げられることになるため、前記鋳肌がそのまま残ることになり、表面に鋳巣が現出することがない。また、転造方式のタップ加工によれば、前記内周部分3aの内径Daと下孔31の本来の内径D1との間に僅かな差があっても、前記転造の効果で整形されて所定径の雌ねじ3が形成されることになる。
【0029】
このようにして雌ねじ加工することにより、一部に鋳肌を残したままタップ加工された雌ねじ3を備えるダイカスト品1を得ることができる。このダイカスト品1は、前記鋳肌が残っている部分では内部の鋳巣が現出せず、充分な強度を保有でき、鋳肌を残さずに雌ねじを形成した従来品に比して、該雌ねじ部での締結強度を高めることができる。
【0030】
なお、図示する実施例は、非貫通孔の雌ねじ加工の場合について説明したが、貫通孔の雌ねじ加工においても、上記と同様に、下孔をダイカストにより形成するとともに、内周面の少なくとも一部に鋳肌部分を残して下孔加工を施した後、前記同様の転造方式のロールタップによるタップ加工により鋳肌部分を残して雌ねじを形成することができる。この場合も上記同様に雌ねじの強度を高めることができる。
【0031】
【発明の効果】
上記したように本発明によれば、鋳肌を残したままで雌ねじを形成することにより、ダイカスト品の内部に鋳巣があっても、雌ねじ部分において充分な強度を保有でき、該雌ねじによる締結強度を高めることができるダイカスト品を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の加工方法により得た雌ねじを備えるダイカスト品の雌ねじ加工部分の断面図である。
【図2】(A)〜(C)のそれぞれ本発明の雌ねじ加工方法を工程順に示す断面説明図である。
【図3】タップ加工後の雌ねじ部分の拡大断面図である。
【図4】(A)〜(C)のそれぞれ従来の雌ねじ加工方法を工程順に示す断面説明図である。
【符号の説明】
1 ダイカスト品
3 雌ねじ
3a 内周部分
30 ダイカストによる予備の下孔
31 タップ加工のための下孔
5 鋳肌部分
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として防振ブッシュ等の防振関連部品その他に使用されるダイカスト品、特に雌ねじを備えるダイカスト品及び雌ねじ加工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、自動車のサスペンションにおいて使用される防振ブッシュ等の防振装置やその取付部品その他の防振関連部品において、軽量化や加工の容易性等の点から、金属部分をアルミニウムやその合金等の所謂アルミダイカスト品で構成することが多くなっている(例えば、下記の特許文献1〜5参照)。
【0003】
このダイカスト品においては、その用途や使用の必要性により、所定の個所に雌ねじ(ねじ孔)を設ける場合がある。この雌ねじを備えるダイカスト品の加工は、次のようにして行われる。
【0004】
先ず、図4(A)のように、アルミニウム合金等のダイカストにより、ダイカスト品101の所定の雌ねじ形成部位に脱型のためのテーパを付したやや径小の予備の下孔130を形成しておく。そして、ダイカスト後に、図4(B)のように、前記予備の下孔130についてタップ加工に適する所定の寸法のストレート孔に加工する切削加工等による下孔加工を行い、タップ加工用の下孔131を形成する。この後、図4(C)のように、前記タップ加工用の下孔131に対してタップ加工を施して雌ねじ形成する。103は雌ねじを示し、105は前記下孔130の鋳肌部分を示す。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−277868号公報
【0006】
【特許文献2】
特開平10−38001号公報
【0007】
【特許文献3】
特開平10−47432号公報
【0008】
【特許文献4】
特開平11−51117号公報
【0009】
【特許文献5】
特開2001−271861号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、アルミニウムやその合金等よりなる所謂アルミダイカスト品101は、その内部にアルミダイカスト特有の鋳巣(気泡による小孔、図示せず)が生じていることが多い。
【0011】
そのため、前記の雌ねじ加工の方法によると、タップ加工用の下孔131を形成する下孔加工の際の内周面の切削により、さらにはその後のタップ加工による切削により、鋳肌部分105が削除される結果、雌ねじ103の表面、特に螺旋の凸条部分等の表面に前記鋳巣が現出することになる。雌ねじ103の部分に前記鋳巣が存在していると、その強度を弱めることになり、充分な製品強度が得られず、特に、前記雌ねじによる締結強度が低下することになる。
【0012】
本発明は、上記に鑑みてなしたものであり、ダイカスト品の表面の鋳肌部分には鋳巣が存在していないことに着目して、鋳肌を残したままのタップ加工で雌ねじを形成することにより、ダイカスト品の内部に鋳巣があっても、充分な強度を保有でき、雌ねじによる締結強度を高めることができるダイカスト品を提供するものであり、同時に、このダイカスト品を得るための雌ねじ加工方法を提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段及び作用】
本発明の第1は、雌ねじを備えるダイカスト品であって、前記雌ねじは、少なくとも一部に鋳肌を残したままタップ加工されて形成されてなることを特徴とする。これにより、前記雌ねじが形成されたねじ孔の内周面において前記鋳肌が残っている部分では内部の鋳巣が現出せず、充分な強度を保有でき、従来品に比して締結強度を高めることができる。
【0014】
本発明の第2は、前記のダイカスト品を得るための雌ねじ加工方法であって、雌ねじを備えるダイカスト品の製造において、ダイカストにより雌ねじ形成部位に予備の下孔を形成し、ダイカスト後に、前記予備の下孔についてタップ加工のための寸法に加工する下孔加工を施すとともに、加工後の下孔の内周面の少なくとも一部に鋳肌を残しておき、この下孔に対して前記鋳肌を残したままのタップ加工を施して雌ねじを形成することを特徴とする。
【0015】
これにより、タップ加工のための下孔加工の際に残した内周面の鋳肌部分、すなわち鋳巣の存在しない鋳肌部分を、そのまま雌ねじに利用できることになる。そのため、前記のように所定の強度を保有し、かつ充分な締結強度を保持できる雌ねじを形成することができる。
【0016】
前記の雌ねじ加工方法において、前記のダイカストによる予備の下孔の開口端側の所要幅の内周部分を、下孔加工後の下孔の内径と略同径もしくは僅かに径大になるように形成しておき、前記内周部分の鋳肌を残すように下孔加工を施して、タップ加工のための下孔を形成するのがよい。これにより、前記下孔の開口端側に所要幅の鋳肌部分を確実に残すことができ、以て、ボルト等による締結上最も有効なねじ孔の開口端側において、前記鋳肌部分をそのまま雌ねじに利用できることになる。
【0017】
また、前記のタップ加工を転造方式のロールタップにより行うのがよく、これにより、前記鋳肌部分を切削することなく雌ねじを形成することができる。すなわち、ロールタップによる転造の効果で、雌ねじにおける凹条部分が凹設され、かつ凸条部分が盛り上げられることになるため、前記鋳肌がそのまま残り、その表面に鋳巣が現出することがない。これにより、雌ねじの強度を高めることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本発明の加工方法により得た雌ねじを備えるダイカスト品の雌ねじ加工部分の断面図である。図2(A)〜(C)は本発明の雌ねじ加工方法の工程順の断面説明図であり、同図(A)はダイカスト後の予備の下孔部分を示し、同図(B)はタップ加工のための下孔加工を施した状態を示し、同図(C)はタップ加工した状態を示している。図3はタップ加工後の雌ねじ部分の拡大断面図を示している。
【0020】
図において、1はアルミニウムやその合金等による所謂ダイカスト法により得られた製品としてのダイカスト品を示し、防振ブッシュ等の防振部品やその取付部品その他の使用形態に応じた所定の形状にダイカスト成形される。図のダイカスト品1はその外形を簡略化して示している。3は前記ダイカスト品1の用途や使用形態等に応じて必要とされる所定の個所の孔に形成された雌ねじを示しており、この雌ねじ3は、少なくとも一部に鋳肌を残したままタップ加工されて形成されている。5は雌ねじの鋳肌部分を示す。この雌ねじ加工の方法について、図2(A)〜(C)に基づいて説明する。
【0021】
先ず、図2(A)に示すように、アルミニウム合金等によるダイカストにより、前記雌ねじ部3の形成部位となる所定の個所に雌ねじ形成のための予備の下孔30を形成しておく。このダイカストによる予備の下孔30の内周面には、ダイカスト特有の鋳肌部分5が形成される。この鋳肌部分5の厚みは、通常0.3〜1.0mm程度のものであり、この部分には前記ダイカスト内部の鋳巣(図示せず)は現出しない。
【0022】
このダイカストによる予備の下孔30は、通常、後述するタップ加工のための下孔31の内径寸法等に応じて、主として内奥側で前記下孔31の内径より径小になるテーパ状に形成される。本発明の場合は、前記の予備の下孔30の内周面の一部、例えば製品表面になる開口端側の所要幅の内周部分、特に好ましくは図のように開口端から約5〜10mm程度の深さまでの内周部分3aは、その内径Daが、後工程での下孔加工後の下孔31の内径D1と略同程度か、もしくはごく僅かに径大になるように、例えば、0.03〜0.1mm程度径大になるように形成しておく。この内周部分3aは必ずしも図のようなストレート孔の形状に限らず、僅かにテーパを付したものであってもよい。
【0023】
次に、図2(B)のように、前記ダイカスト品1の前記予備の下孔30について、切削加工等による下孔加工を施して、前記テーパ部をストレート状にするとともに、後述のタップ加工のための適正寸法の内径D1の下孔31を形成し、該下孔31の内周面の一部に前記鋳肌部分5を残しておく。
【0024】
すなわち、前記予備の下孔30の前記内周部分3aは、その内径Daが前記内径D1と同程度もしくはごく僅かに径大であるために、この部分は前記の切削による下孔加工によっては殆ど切削されず、そのため該内周部分3aの鋳肌部分5がそのまま残ることになる。
【0025】
例えば、前記下孔加工後の下孔31の内径D1を9.34mmにするとき、前記内周部分3aの内径Daを前記よりごく僅かに大きい9.41mmにダイカスト成形しておくと、該内周部分3aは下孔加工では殆ど切削されないため、該内周部分3aの鋳肌がそのまま残されることになる。
【0026】
この後、図2(C)のように、前記下孔31に対してその内周面に雌ねじを形成するタップ加工を施す。この際、特にその内周面の少なくとも一部に鋳肌部分5を残したままでタップ加工を施す。
【0027】
例えば、前記のタップ加工の手段として、雌ねじ形成用ロール等のタップ部材を下孔内に装入して内周面に押圧した状態で回動させることにより該内周面に雌ねじを形成する、所謂転造方式のロールタップを用いてタップ加工を行う。これにより、前記鋳肌部分5を切削することなく雌ねじを形成することができる。
【0028】
すなわち、前記ロールタップによる転造の効果で、前記下孔31の内周面において、雌ねじ3における凹条部分が凹設され、かつ凸条部分が盛り上げられることになるため、前記鋳肌がそのまま残ることになり、表面に鋳巣が現出することがない。また、転造方式のタップ加工によれば、前記内周部分3aの内径Daと下孔31の本来の内径D1との間に僅かな差があっても、前記転造の効果で整形されて所定径の雌ねじ3が形成されることになる。
【0029】
このようにして雌ねじ加工することにより、一部に鋳肌を残したままタップ加工された雌ねじ3を備えるダイカスト品1を得ることができる。このダイカスト品1は、前記鋳肌が残っている部分では内部の鋳巣が現出せず、充分な強度を保有でき、鋳肌を残さずに雌ねじを形成した従来品に比して、該雌ねじ部での締結強度を高めることができる。
【0030】
なお、図示する実施例は、非貫通孔の雌ねじ加工の場合について説明したが、貫通孔の雌ねじ加工においても、上記と同様に、下孔をダイカストにより形成するとともに、内周面の少なくとも一部に鋳肌部分を残して下孔加工を施した後、前記同様の転造方式のロールタップによるタップ加工により鋳肌部分を残して雌ねじを形成することができる。この場合も上記同様に雌ねじの強度を高めることができる。
【0031】
【発明の効果】
上記したように本発明によれば、鋳肌を残したままで雌ねじを形成することにより、ダイカスト品の内部に鋳巣があっても、雌ねじ部分において充分な強度を保有でき、該雌ねじによる締結強度を高めることができるダイカスト品を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の加工方法により得た雌ねじを備えるダイカスト品の雌ねじ加工部分の断面図である。
【図2】(A)〜(C)のそれぞれ本発明の雌ねじ加工方法を工程順に示す断面説明図である。
【図3】タップ加工後の雌ねじ部分の拡大断面図である。
【図4】(A)〜(C)のそれぞれ従来の雌ねじ加工方法を工程順に示す断面説明図である。
【符号の説明】
1 ダイカスト品
3 雌ねじ
3a 内周部分
30 ダイカストによる予備の下孔
31 タップ加工のための下孔
5 鋳肌部分
Claims (4)
- 雌ねじを備えるダイカスト品であって、前記雌ねじは、少なくとも一部に鋳肌を残したままタップ加工されて形成されてなることを特徴とするダイカスト品。
- 雌ねじを備えるダイカスト品の製造において、ダイカストにより雌ねじ形成部位に予備の下孔を形成し、ダイカスト後に、前記予備の下孔についてタップ加工のための寸法に加工する下孔加工を施すとともに、加工後の下孔の内周面の少なくとも一部に鋳肌を残しておき、この下孔に対して前記鋳肌を残したままのタップ加工を施して雌ねじを形成することを特徴とするダイカスト品の雌ねじ加工方法。
- ダイカストによる予備の下孔の開口端側の所要幅の内周部分を、下孔加工後の下孔の内径と略同径もしくは僅かに径大になるように形成しておき、前記内周部分の鋳肌を残すように下孔加工を施して、タップ加工のための下孔を形成する請求項2に記載のダイカスト品の雌ねじ加工方法。
- タップ加工を転造方式のロールタップにより行う請求項2または3に記載のダイカスト品の雌ねじ加工方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002274130A JP2004106036A (ja) | 2002-09-19 | 2002-09-19 | 雌ねじを備えるダイカスト品及び雌ねじ加工方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002274130A JP2004106036A (ja) | 2002-09-19 | 2002-09-19 | 雌ねじを備えるダイカスト品及び雌ねじ加工方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004106036A true JP2004106036A (ja) | 2004-04-08 |
Family
ID=32270692
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002274130A Withdrawn JP2004106036A (ja) | 2002-09-19 | 2002-09-19 | 雌ねじを備えるダイカスト品及び雌ねじ加工方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2004106036A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2005348636A (ja) * | 2004-06-09 | 2005-12-22 | Shimano Inc | スピニングリールのマスターギア |
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