JP2004105351A - 光硬化性歯科用接着組成物 - Google Patents
光硬化性歯科用接着組成物 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004105351A JP2004105351A JP2002269957A JP2002269957A JP2004105351A JP 2004105351 A JP2004105351 A JP 2004105351A JP 2002269957 A JP2002269957 A JP 2002269957A JP 2002269957 A JP2002269957 A JP 2002269957A JP 2004105351 A JP2004105351 A JP 2004105351A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- adhesive composition
- weight
- dental adhesive
- polymerizable monomer
- radical polymerizable
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Classifications
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61K—PREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
- A61K6/00—Preparations for dentistry
- A61K6/30—Compositions for temporarily or permanently fixing teeth or palates, e.g. primers for dental adhesives
Landscapes
- Health & Medical Sciences (AREA)
- Oral & Maxillofacial Surgery (AREA)
- Epidemiology (AREA)
- Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
- Animal Behavior & Ethology (AREA)
- General Health & Medical Sciences (AREA)
- Public Health (AREA)
- Veterinary Medicine (AREA)
- Dental Preparations (AREA)
Abstract
【課題】粘度の低下が少なく長期間使用可能な光硬化性歯科用接着組成物を作る。
【解決手段】本発明の光硬化性歯科用接着組成物は、フッ素イオンを長期間にわたり徐々に放出するフッ素イオン徐放性モノマーと、光を照射することにより光重合により硬化し、部材間を接着するためのリン酸基を有する第1ラジカル重合性モノマーと、光を照射することにより光重合により硬化し、部材間を接着するための第2ラジカル重合性モノマーと、光重合を開始するための光増感剤と、光の照射により第1ラジカル重合性モノマー及び第2ラジカル重合性モノマーの硬化を促進させるための光重合促進剤と、物理的特性を改良するためのフィラーと、残部が水、及び分散剤とからなる。フィラーは、疎水性の二酸化ケイ素であり、一次粒子平均径が8〜13(nm)、比表面積が170±20m2/gであることが特徴である。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明の光硬化性歯科用接着組成物は、フッ素イオンを長期間にわたり徐々に放出するフッ素イオン徐放性モノマーと、光を照射することにより光重合により硬化し、部材間を接着するためのリン酸基を有する第1ラジカル重合性モノマーと、光を照射することにより光重合により硬化し、部材間を接着するための第2ラジカル重合性モノマーと、光重合を開始するための光増感剤と、光の照射により第1ラジカル重合性モノマー及び第2ラジカル重合性モノマーの硬化を促進させるための光重合促進剤と、物理的特性を改良するためのフィラーと、残部が水、及び分散剤とからなる。フィラーは、疎水性の二酸化ケイ素であり、一次粒子平均径が8〜13(nm)、比表面積が170±20m2/gであることが特徴である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、歯質と強固に接着する光硬化性歯科用接着組成物に関する。更に詳しくは、2液混合して使用するタイプの光硬化性歯科用接着組成物において、2液を配合した後も長期間の間粘度が低下しにくい光硬化性歯科用接着組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
フッ素イオンを長期間にわたり徐々に放出することが可能な歯科用レジン組成物を提案されている(特許文献1参照。)。これらを組成とする液状の歯科用接着組成物は、長期間放置されると粘度が増加して使用できないが使用に難い。また、本出願人は、同様にフッ素イオンを長期間にわたり徐々に放出することが可能な一液性の歯科用レジン組成物であって、湿潤した歯面に塗布することにより組成物の酸性度を増し、歯質に対する脱灰能を発揮することができるために、従来のように前処理を必要とせずにワンステップで歯面と被着物との接着性をえることが出来るものを提案した(特許文献2参照。)。
【0003】
特に、液状でフッ素イオンを長期間にわたり徐々に放出することが可能な歯科用接着組成物は、長期間放置されると粘度が増加して使用できなくなることがある。この結果、使用量が少ない歯科医院等では使いきらない段階で廃棄せざるを得ないこととなり、結果としてコスト高となりこれは資源の無駄でもある。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−101819号公報
【特許文献1】
特願2002−076787号
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述のような技術背景のもとになされたものであり、下記目的を達成する。本発明の目的は、粘度の低下が少なく長期間使用可能な光硬化性歯科用接着組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記目的を達成するため次の手段を採る。
本発明の光硬化性歯科用接着組成物の要旨は、
フッ素イオンを長期間にわたり徐々に放出するフッ素イオン徐放性モノマーと、光を照射することにより光重合により硬化し、部材間を接着するためのリン酸基を有する第1ラジカル重合性モノマーと、光を照射することにより光重合により硬化し、部材間を接着するための第2ラジカル重合性モノマーと、前記光重合を促進するための光増感剤と、前記光の照射により前記第1ラジカル重合性モノマー及び第2ラジカル重合性モノマーの硬化を開始させるための光重合促進剤と、物理的特性を改良するためのフィラーと、残部が水、及び分散剤とからなる光硬化性歯科用接着組成物において、
前記フィラーは、疎水性の二酸化ケイ素であり、一次粒子平均径が8〜13(nm)、比表面積が170±20m2/gであることを特徴とする。
【0007】
本発明の光硬化性歯科用接着組成物は、表面が疎水化された特定の二酸化ケイ素を混合したのみで高い流動性を維持したまま、たれにくい性質(チキソトロピー性)を付与できる。また、フッ素イオンを長期間にわたり徐々に放出するフッ素イオン徐放性モノマーが含有されているので、長期間にわたってフッ素を徐放することにより、ウ触予防効果も発揮できる。
【0008】
[本発明の使用方法]
本発明の光硬化性歯科用接着組成物の典型的な使用方法は、前記光硬化性歯科用接着組成物は使用時に2液を混合して使用するものであって、前記2液の一方の主剤は、前記フッ素イオン徐放性モノマー、前記第1ラジカル重合性モノマー、前記光増感剤、及び前記光重合促進剤とからなり、他方の助剤は前記水、前記分散剤、前記第2ラジカル重合性モノマー、及び前記フィラーとからなる。特に、本発明者の知見によると、フィラーを前記助剤側に入れておくと高い流動性を維持したまま、たれにくい性質(チキソトロピー性を付与)することができる。ただし、本発明の光硬化性歯科用接着組成物は、2液タイプに限定されるものではなく、一液タイプのものであっても良いが、好ましくは2液性のものに適用したものがより効果的である。
【0009】
[フッ素徐放性のモノマー]
本発明で用いる前記フッ素徐放性のモノマーは、環状ホスファゼン化合物が好ましい。この環状ホスファゼン化合物は、前述した特開平7−101819号公報等で公知である。一般的には、次の化合式で示される。
【化1】
【0010】
本発明で用いる環式ホスファゼン化合物は、上記化学式で表わされる構成単位を有するものであればよく、例えば6員環化合物、8員環化合物等が挙げられる。なお、式中R1、R2は、形成された環式ホスファゼン化合物中において、少なくとも一つはFであり、残部は同一又は異なって重合性二重結合を有する基である。従ってR1、R2は絶対的な意味を有するものと限定解釈されてはならない。上記重合性二重結合を有する基は、好ましくは2−(メタ)アクリロイルオキシメトキシ基、2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ基、2−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ基、2−(メタ)アクリロイルオキシブトキシ基等の(メタ)アクリロイルオキシアルキル基であり、より好ましくは2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ基である。
【0011】
この様な環式ホスファゼン化合物の例として、好ましくはP3N3(F)n [O(CH2)2COO(CH3)C=CH2]6−n(nは、1から5のいずれかの整数)の6員環化合物又はP4N4(F)m[O(CH2)2COO(CH3)C=CH2]8−m(mは、1から7のいずれかの整数)の8員環化合物が挙げられる。
【0012】
これらの化合物は、例えばP3N3F6の6員環化合物又はP4N4F8の8員環化合物を、ヒドロキシエチルメタアクリレートと反応させることにより得られる。この反応方法は特に限定されず、既知の方法が用いられ、例えば、ベンゼン、トルエンの有機溶媒中で、脱フッ化水素剤としてピリジン、トリエチルアミン等の有機塩基を用い、上記反応物質と50℃前後で5〜60時間反応させることによって得られる。本発明のフッ素徐放性のモノマーは、これらを1種以上単独、又は混合して用いる。
【0013】
本発明で用いるフッ素イオン徐放性モノマーは、全重量を100重量%としたとき、光硬化性歯科用接着組成物中の0.1〜50.0重量%を用いる。好ましくは、1.0〜10.0重量%を使用すると良い。
【0014】
[リン酸基を有する第1ラジカル重合性モノマー]
本発明で用いるリン酸基を有する第1ラジカル重合性モノマーは、歯質に対する脱石灰能を発揮するための成分である。リン酸基を有する第1ラジカル重合性モノマーを含む本発明の光硬化性歯科用接着組成物を歯面に塗布すると、組成物中のこの成分が解離して酸度が上昇し、歯質に対する脱石灰能を発揮する。
【0015】
前記第1ラジカル重合性モノマーは、(メタ)アクリル酸のリン酸エステル、(メタ)アクリル酸のピロリン酸エステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸のリン酸エステルとしては、(メタ)アクリロキシメチルリン酸、(メタ)アクリロキシエチルリン酸、(メタ)アクリロキシプロピルリン酸、(メタ)アクリロキシブチルリン酸、(メタ)アクリロキシペンチルリン酸、(メタ)アクリロキシヘキシルリン酸等が挙げられる。
【0016】
(メタ)アクリル酸のピロリン酸エステルとしては、テトラ(メタ)アクリロキシエチルピロリン酸、ジ(メタ)アクリロキシエチルピロリン酸等が挙げられる。これらの中でもテトラメタクリロキシエチルピロリン酸が好ましい。本発明のリン酸基を有する第1ラジカル重合性モノマーは、これらを1種以上単独、又は混合して用いる。
【0017】
本発明で用いるリン酸基を有する第1ラジカル重合性モノマーは、全重量を100重量%としたとき、光硬化性歯科用接着組成物中の5.0〜80.0重量%を用いる。好ましくは、30.0〜80.0重量%を使用すると良い。
【0018】
[第2ラジカル重合性モノマー]
本発明で用いる前記第2ラジカル重合性モノマーは、接着剤として必須のものではないが、接着剤としての機能を高めるために、前記成分に加えて配合されるモノマーである。このようなラジカル重合性モノマーは、単官能性、又は他官能性の何れでもであっても良い。
【0019】
前記第2ラジカル重合性モノマーは、メチル(メタ)アクリレート;ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ )アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジ、又はトリ、又はテトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジ(メタクリロキシエチル)トリメチルヘキサメチレンジウレタン[一般に「UDMA」と略される。];2,2−ビス(4−メタクリロイルエトキシキシフェニル)プロパン(Bis−MEPP)等のフェニル基を有するジメタクリレート;酢酸ビニル、酪酸ビニル、ステアリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル;フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等のエチレン系不飽和ジカルボン酸等が挙げられる。これらの中でヒドロキシルメタアクリレートが好ましい。本発明の第2ラジカル重合性モノマーは、これらを1種以上単独、又は混合して用いる。
【0020】
本発明で用いる前記第2ラジカル重合性モノマーは、全重量を100重量%としたとき、光硬化性歯科用接着組成物中の5.0〜50.0重量%を用いる。好ましくは、5.0〜40.0重量%を使用すると良い。
【0021】
[光増感剤]
本発明で用いる光増感剤は、光重合を開始するためのものである。光増感剤は、光照射によりフリーラジカルを放出して光増感作用を有するものであり、α−ジケトンを用いることが好ましい。α−ジケトン類の種類は、特に限定されないが、好ましい例として可視光に対して光増感作用を有するカンファーキノン、ベンジル、ビアセチル、9,10−フェナントレンキノン、ナフトキノンなどが挙げられる。これらの中で好ましいのは、カンファーキノンである。
本発明で用いる前記光増感剤は、全重量を100重量%としたとき、光硬化性歯科用接着組成物中の0.1〜10.0重量%を用いる。好ましくは、0.1〜1.0重量%を使用すると良い。
【0022】
[光重合促進剤]
本発明で用いる光重合促進剤は、光照射によりラジカル重合性モノマー及びラジカル重合性モノマーの硬化を促進させるためのものである。本発明で用いる前記光重合促進剤は、全重量を100重量%としたとき、光硬化性歯科用接着組成物中の0.1〜10.0重量%を用いる。好ましくは、0.1〜1.0重量%を使用すると良い。
【0023】
前記光重合促進剤は、第三級アミン系還元剤から選択される1種以上からなると良い。具体的には、例えばN,N−ジメチルアミノ−P−トルイジン、ブチルエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、モルホリノエチルメタクリレート、エチル−P−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸、2−メタクリロキシエチル−P−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸、ジメチルアミノ安息香酸、及びこれらの各成分のエステル類が挙げられる。これらの光重合促進剤を1種以上単独、又は混合して用いる。
[水溶性有機溶媒及び水]
本発明で用いる水溶性有機溶媒と水は、フッ素徐放性のモノマー、リン酸基を有する第1ラジカル重合性モノマー、第2ラジカル重合性モノマー、光重合促進剤、及び光増感剤、及びフィラーを均一に溶解乃至分散させるものであり、歯面への塗布を容易にするものである。また、歯面表面と本発明の光硬化性歯科用接着組成物との接触・混合を容易にしてリン酸基のイオン化を進めて脱石灰機能を発揮する。更には、歯質表面上で重合反応が進んだ後に形成される接着剤層に適度な厚みを確保する役割を果たす。
【0024】
水溶性有機溶媒としては、例えばエタノール、1−プロパノール、イソプロピルアルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類が挙げられるが、生体へ用いるものであるために安全性の観点からエタノールが好ましい。水は、不純物が混入しないように精製水が好ましい。
本発明で用いる水溶性有機溶媒と水は、本発明の光硬化性歯科用接着組成物中の成分を溶解乃至分散できるものであれば、特に限定されないが、本発明の光硬化性歯科用接着組成物の全成分に対して大凡30〜90重量部の範囲が好ましい。
【0025】
[フィラー]
本発明で用いる前述したフィラーは、疎水性の二酸化ケイ素であり、一次粒子平均径が8〜13(nm)、比表面積が170±20m2/gのものが好ましい。本発明で使用する二酸化ケイ素は、球、楕円球、中空の球、中空の楕円球等の種々の形状を備えたものである。従って、比表面積の大きさは、一次粒子の平均径に数学的に比例しないが、大凡は前述した一次粒子平均径と比表面積がより好ましい。前記二酸化ケイ素の表面基は、(CH3)2)であると良い。
【0026】
本発明のフィラーは、本発明の光硬化性歯科用接着組成物に混合することにより、高い流動性を維持したまま、たれにくい性質(チキソトロピー性を付与)を長期間保持できる。本発明で用いる前記フィラーは、全重量を100重量%としたとき、光硬化性歯科用接着組成物中の0.5〜15.0重量%を用いる。好ましくは、1.0〜10.0重量%を使用すると良い。
【0027】
なお、本発明で用いられる前述した環式ホスファゼン化合物を予め重合させて硬化物を得た後、これを粉砕して、有機フィラーとして用いることも可能である。また、高い流動性の維持とたれにくい性質(チキソトロピー性を付与)を長期間の間失わない限り、例えば耐磨耗性を向上させるために前記フィラーに加えて、他の無機、又は有機のフィラーを加えても良い。
【0028】
[その他の成分]
本発明の光硬化性歯科用接着組成物には、接着性を阻害しない範囲で他の成分を添加しても良い。例えば、接着強度を向上させるためにポリマー成分としてポリアクリル酸等を添加したり、必要に応じて重合抑制剤、着色剤、紫外線吸収剤などを添加しても良く、これらを添加したものも本発明の範囲に含まれる。本発明の光硬化性歯科用接着組成物は、局部義歯床用レジン、そのリベース又はリライニング材、歯冠用硬質レジン、充填用レジン、ウ触予防用のシーラント、矯正用ブラケットの接着剤、合着用セメント等の歯科用接着剤として使用可能である。
【0029】
【発明の実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。表1は、本発明のフッ素徐放性歯科用接着材の実施例の組成を示すものである。このフッ素徐放性歯科用接着材は、2液を混合して使用する接着剤である。
【0030】
無水ケイ酸、即ち二酸化ケイ素は、疎水性の二酸化ケイ素であり、商品名「AEROSIL R974」(日本アエロジル株式会社製、本社所在地:日本国東京都新宿区)を用いた。主な仕様は、一次粒子平均径で約12(nm)、比表面積170±20(m2/g)、4%水分液中のpH値4.0〜5.5、炭素含有量約1%、見掛比重約50(g/l)、二酸化ケイ素の表面基は、(CH3)2である。本実施例で用いた疎水性の二酸化ケイ素は、この固体表面での化学反応によって疎水化されたものである。疎水性を示すメタノール濡れ性は、「>35」である。
【0031】
以下に示す実施例1〜7は、実験期間を短くするために加速テストとして、40℃の環境下で1ヶ月間の間で以下に示す実施例のものの粘度の変化を調べた。1ヶ月の期間を24ヶ月と見なしての加速テストであり、歯科用接着剤として使用可能な粘度を4000mPa・sを上限と定めて、1ヶ月の間にこの上限値内ものを実施例とした。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
[比較例]
次に示す比較例1及び2は、加速テストの結果、歯科用接着剤として使用可能な粘度を4000mPa・sを上限と定めて、1ヶ月の間にこの上限値を越えたものは実施不能と判定し比較例とした。無機フィラーとしては、日本アエロジル株式会社(本社所在地:日本国東京都新宿区)製の二酸化ケイ素、商品名「AEROSIL」を用いた。
【表3】
【0035】
比較例1の無機フィラー1〜19は、次の仕様のものを使用した。
【表4】
【0036】
【表5】
【0037】
【表6】
【0038】
【表7】
【0039】
比較例2で使用した無機フィラー22〜40は、次の仕様のものを使用した。
【表8】
【0040】
【表9】
【0041】
【表10】
【0042】
【表11】
【0043】
以上の比較例1及び2から、フッ素徐放性モノマーと実施例1〜7以外の無機フィラーを共存させると保存安定性が悪いことが判明した。
表12は、粘度の経過を月数示したものであり、前述した実施例1、比較例1のデータの例である。表面が疎水化された二酸化ケイ素「AEROSIL R974」を使用したフッ素徐放性歯科用接着材は、24ヶ月を経過してもなお使用可能な粘度を保っている。テスト方法は、実施例の加速テストと同様な方法で実施した。
【0044】
【表12】
【0045】
【発明の効果】
本発明の光硬化性歯科用接着組成物は、表面が疎水化された特定の二酸化ケイ素を混合したのみで高い流動性を維持したまま、たれにくい性質(チキソトロピー性を付与)できた。
【発明の属する技術分野】
本発明は、歯質と強固に接着する光硬化性歯科用接着組成物に関する。更に詳しくは、2液混合して使用するタイプの光硬化性歯科用接着組成物において、2液を配合した後も長期間の間粘度が低下しにくい光硬化性歯科用接着組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
フッ素イオンを長期間にわたり徐々に放出することが可能な歯科用レジン組成物を提案されている(特許文献1参照。)。これらを組成とする液状の歯科用接着組成物は、長期間放置されると粘度が増加して使用できないが使用に難い。また、本出願人は、同様にフッ素イオンを長期間にわたり徐々に放出することが可能な一液性の歯科用レジン組成物であって、湿潤した歯面に塗布することにより組成物の酸性度を増し、歯質に対する脱灰能を発揮することができるために、従来のように前処理を必要とせずにワンステップで歯面と被着物との接着性をえることが出来るものを提案した(特許文献2参照。)。
【0003】
特に、液状でフッ素イオンを長期間にわたり徐々に放出することが可能な歯科用接着組成物は、長期間放置されると粘度が増加して使用できなくなることがある。この結果、使用量が少ない歯科医院等では使いきらない段階で廃棄せざるを得ないこととなり、結果としてコスト高となりこれは資源の無駄でもある。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−101819号公報
【特許文献1】
特願2002−076787号
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述のような技術背景のもとになされたものであり、下記目的を達成する。本発明の目的は、粘度の低下が少なく長期間使用可能な光硬化性歯科用接着組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記目的を達成するため次の手段を採る。
本発明の光硬化性歯科用接着組成物の要旨は、
フッ素イオンを長期間にわたり徐々に放出するフッ素イオン徐放性モノマーと、光を照射することにより光重合により硬化し、部材間を接着するためのリン酸基を有する第1ラジカル重合性モノマーと、光を照射することにより光重合により硬化し、部材間を接着するための第2ラジカル重合性モノマーと、前記光重合を促進するための光増感剤と、前記光の照射により前記第1ラジカル重合性モノマー及び第2ラジカル重合性モノマーの硬化を開始させるための光重合促進剤と、物理的特性を改良するためのフィラーと、残部が水、及び分散剤とからなる光硬化性歯科用接着組成物において、
前記フィラーは、疎水性の二酸化ケイ素であり、一次粒子平均径が8〜13(nm)、比表面積が170±20m2/gであることを特徴とする。
【0007】
本発明の光硬化性歯科用接着組成物は、表面が疎水化された特定の二酸化ケイ素を混合したのみで高い流動性を維持したまま、たれにくい性質(チキソトロピー性)を付与できる。また、フッ素イオンを長期間にわたり徐々に放出するフッ素イオン徐放性モノマーが含有されているので、長期間にわたってフッ素を徐放することにより、ウ触予防効果も発揮できる。
【0008】
[本発明の使用方法]
本発明の光硬化性歯科用接着組成物の典型的な使用方法は、前記光硬化性歯科用接着組成物は使用時に2液を混合して使用するものであって、前記2液の一方の主剤は、前記フッ素イオン徐放性モノマー、前記第1ラジカル重合性モノマー、前記光増感剤、及び前記光重合促進剤とからなり、他方の助剤は前記水、前記分散剤、前記第2ラジカル重合性モノマー、及び前記フィラーとからなる。特に、本発明者の知見によると、フィラーを前記助剤側に入れておくと高い流動性を維持したまま、たれにくい性質(チキソトロピー性を付与)することができる。ただし、本発明の光硬化性歯科用接着組成物は、2液タイプに限定されるものではなく、一液タイプのものであっても良いが、好ましくは2液性のものに適用したものがより効果的である。
【0009】
[フッ素徐放性のモノマー]
本発明で用いる前記フッ素徐放性のモノマーは、環状ホスファゼン化合物が好ましい。この環状ホスファゼン化合物は、前述した特開平7−101819号公報等で公知である。一般的には、次の化合式で示される。
【化1】
【0010】
本発明で用いる環式ホスファゼン化合物は、上記化学式で表わされる構成単位を有するものであればよく、例えば6員環化合物、8員環化合物等が挙げられる。なお、式中R1、R2は、形成された環式ホスファゼン化合物中において、少なくとも一つはFであり、残部は同一又は異なって重合性二重結合を有する基である。従ってR1、R2は絶対的な意味を有するものと限定解釈されてはならない。上記重合性二重結合を有する基は、好ましくは2−(メタ)アクリロイルオキシメトキシ基、2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ基、2−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ基、2−(メタ)アクリロイルオキシブトキシ基等の(メタ)アクリロイルオキシアルキル基であり、より好ましくは2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ基である。
【0011】
この様な環式ホスファゼン化合物の例として、好ましくはP3N3(F)n [O(CH2)2COO(CH3)C=CH2]6−n(nは、1から5のいずれかの整数)の6員環化合物又はP4N4(F)m[O(CH2)2COO(CH3)C=CH2]8−m(mは、1から7のいずれかの整数)の8員環化合物が挙げられる。
【0012】
これらの化合物は、例えばP3N3F6の6員環化合物又はP4N4F8の8員環化合物を、ヒドロキシエチルメタアクリレートと反応させることにより得られる。この反応方法は特に限定されず、既知の方法が用いられ、例えば、ベンゼン、トルエンの有機溶媒中で、脱フッ化水素剤としてピリジン、トリエチルアミン等の有機塩基を用い、上記反応物質と50℃前後で5〜60時間反応させることによって得られる。本発明のフッ素徐放性のモノマーは、これらを1種以上単独、又は混合して用いる。
【0013】
本発明で用いるフッ素イオン徐放性モノマーは、全重量を100重量%としたとき、光硬化性歯科用接着組成物中の0.1〜50.0重量%を用いる。好ましくは、1.0〜10.0重量%を使用すると良い。
【0014】
[リン酸基を有する第1ラジカル重合性モノマー]
本発明で用いるリン酸基を有する第1ラジカル重合性モノマーは、歯質に対する脱石灰能を発揮するための成分である。リン酸基を有する第1ラジカル重合性モノマーを含む本発明の光硬化性歯科用接着組成物を歯面に塗布すると、組成物中のこの成分が解離して酸度が上昇し、歯質に対する脱石灰能を発揮する。
【0015】
前記第1ラジカル重合性モノマーは、(メタ)アクリル酸のリン酸エステル、(メタ)アクリル酸のピロリン酸エステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸のリン酸エステルとしては、(メタ)アクリロキシメチルリン酸、(メタ)アクリロキシエチルリン酸、(メタ)アクリロキシプロピルリン酸、(メタ)アクリロキシブチルリン酸、(メタ)アクリロキシペンチルリン酸、(メタ)アクリロキシヘキシルリン酸等が挙げられる。
【0016】
(メタ)アクリル酸のピロリン酸エステルとしては、テトラ(メタ)アクリロキシエチルピロリン酸、ジ(メタ)アクリロキシエチルピロリン酸等が挙げられる。これらの中でもテトラメタクリロキシエチルピロリン酸が好ましい。本発明のリン酸基を有する第1ラジカル重合性モノマーは、これらを1種以上単独、又は混合して用いる。
【0017】
本発明で用いるリン酸基を有する第1ラジカル重合性モノマーは、全重量を100重量%としたとき、光硬化性歯科用接着組成物中の5.0〜80.0重量%を用いる。好ましくは、30.0〜80.0重量%を使用すると良い。
【0018】
[第2ラジカル重合性モノマー]
本発明で用いる前記第2ラジカル重合性モノマーは、接着剤として必須のものではないが、接着剤としての機能を高めるために、前記成分に加えて配合されるモノマーである。このようなラジカル重合性モノマーは、単官能性、又は他官能性の何れでもであっても良い。
【0019】
前記第2ラジカル重合性モノマーは、メチル(メタ)アクリレート;ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ )アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジ、又はトリ、又はテトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジ(メタクリロキシエチル)トリメチルヘキサメチレンジウレタン[一般に「UDMA」と略される。];2,2−ビス(4−メタクリロイルエトキシキシフェニル)プロパン(Bis−MEPP)等のフェニル基を有するジメタクリレート;酢酸ビニル、酪酸ビニル、ステアリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル;フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等のエチレン系不飽和ジカルボン酸等が挙げられる。これらの中でヒドロキシルメタアクリレートが好ましい。本発明の第2ラジカル重合性モノマーは、これらを1種以上単独、又は混合して用いる。
【0020】
本発明で用いる前記第2ラジカル重合性モノマーは、全重量を100重量%としたとき、光硬化性歯科用接着組成物中の5.0〜50.0重量%を用いる。好ましくは、5.0〜40.0重量%を使用すると良い。
【0021】
[光増感剤]
本発明で用いる光増感剤は、光重合を開始するためのものである。光増感剤は、光照射によりフリーラジカルを放出して光増感作用を有するものであり、α−ジケトンを用いることが好ましい。α−ジケトン類の種類は、特に限定されないが、好ましい例として可視光に対して光増感作用を有するカンファーキノン、ベンジル、ビアセチル、9,10−フェナントレンキノン、ナフトキノンなどが挙げられる。これらの中で好ましいのは、カンファーキノンである。
本発明で用いる前記光増感剤は、全重量を100重量%としたとき、光硬化性歯科用接着組成物中の0.1〜10.0重量%を用いる。好ましくは、0.1〜1.0重量%を使用すると良い。
【0022】
[光重合促進剤]
本発明で用いる光重合促進剤は、光照射によりラジカル重合性モノマー及びラジカル重合性モノマーの硬化を促進させるためのものである。本発明で用いる前記光重合促進剤は、全重量を100重量%としたとき、光硬化性歯科用接着組成物中の0.1〜10.0重量%を用いる。好ましくは、0.1〜1.0重量%を使用すると良い。
【0023】
前記光重合促進剤は、第三級アミン系還元剤から選択される1種以上からなると良い。具体的には、例えばN,N−ジメチルアミノ−P−トルイジン、ブチルエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、モルホリノエチルメタクリレート、エチル−P−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸、2−メタクリロキシエチル−P−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸、ジメチルアミノ安息香酸、及びこれらの各成分のエステル類が挙げられる。これらの光重合促進剤を1種以上単独、又は混合して用いる。
[水溶性有機溶媒及び水]
本発明で用いる水溶性有機溶媒と水は、フッ素徐放性のモノマー、リン酸基を有する第1ラジカル重合性モノマー、第2ラジカル重合性モノマー、光重合促進剤、及び光増感剤、及びフィラーを均一に溶解乃至分散させるものであり、歯面への塗布を容易にするものである。また、歯面表面と本発明の光硬化性歯科用接着組成物との接触・混合を容易にしてリン酸基のイオン化を進めて脱石灰機能を発揮する。更には、歯質表面上で重合反応が進んだ後に形成される接着剤層に適度な厚みを確保する役割を果たす。
【0024】
水溶性有機溶媒としては、例えばエタノール、1−プロパノール、イソプロピルアルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類が挙げられるが、生体へ用いるものであるために安全性の観点からエタノールが好ましい。水は、不純物が混入しないように精製水が好ましい。
本発明で用いる水溶性有機溶媒と水は、本発明の光硬化性歯科用接着組成物中の成分を溶解乃至分散できるものであれば、特に限定されないが、本発明の光硬化性歯科用接着組成物の全成分に対して大凡30〜90重量部の範囲が好ましい。
【0025】
[フィラー]
本発明で用いる前述したフィラーは、疎水性の二酸化ケイ素であり、一次粒子平均径が8〜13(nm)、比表面積が170±20m2/gのものが好ましい。本発明で使用する二酸化ケイ素は、球、楕円球、中空の球、中空の楕円球等の種々の形状を備えたものである。従って、比表面積の大きさは、一次粒子の平均径に数学的に比例しないが、大凡は前述した一次粒子平均径と比表面積がより好ましい。前記二酸化ケイ素の表面基は、(CH3)2)であると良い。
【0026】
本発明のフィラーは、本発明の光硬化性歯科用接着組成物に混合することにより、高い流動性を維持したまま、たれにくい性質(チキソトロピー性を付与)を長期間保持できる。本発明で用いる前記フィラーは、全重量を100重量%としたとき、光硬化性歯科用接着組成物中の0.5〜15.0重量%を用いる。好ましくは、1.0〜10.0重量%を使用すると良い。
【0027】
なお、本発明で用いられる前述した環式ホスファゼン化合物を予め重合させて硬化物を得た後、これを粉砕して、有機フィラーとして用いることも可能である。また、高い流動性の維持とたれにくい性質(チキソトロピー性を付与)を長期間の間失わない限り、例えば耐磨耗性を向上させるために前記フィラーに加えて、他の無機、又は有機のフィラーを加えても良い。
【0028】
[その他の成分]
本発明の光硬化性歯科用接着組成物には、接着性を阻害しない範囲で他の成分を添加しても良い。例えば、接着強度を向上させるためにポリマー成分としてポリアクリル酸等を添加したり、必要に応じて重合抑制剤、着色剤、紫外線吸収剤などを添加しても良く、これらを添加したものも本発明の範囲に含まれる。本発明の光硬化性歯科用接着組成物は、局部義歯床用レジン、そのリベース又はリライニング材、歯冠用硬質レジン、充填用レジン、ウ触予防用のシーラント、矯正用ブラケットの接着剤、合着用セメント等の歯科用接着剤として使用可能である。
【0029】
【発明の実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。表1は、本発明のフッ素徐放性歯科用接着材の実施例の組成を示すものである。このフッ素徐放性歯科用接着材は、2液を混合して使用する接着剤である。
【0030】
無水ケイ酸、即ち二酸化ケイ素は、疎水性の二酸化ケイ素であり、商品名「AEROSIL R974」(日本アエロジル株式会社製、本社所在地:日本国東京都新宿区)を用いた。主な仕様は、一次粒子平均径で約12(nm)、比表面積170±20(m2/g)、4%水分液中のpH値4.0〜5.5、炭素含有量約1%、見掛比重約50(g/l)、二酸化ケイ素の表面基は、(CH3)2である。本実施例で用いた疎水性の二酸化ケイ素は、この固体表面での化学反応によって疎水化されたものである。疎水性を示すメタノール濡れ性は、「>35」である。
【0031】
以下に示す実施例1〜7は、実験期間を短くするために加速テストとして、40℃の環境下で1ヶ月間の間で以下に示す実施例のものの粘度の変化を調べた。1ヶ月の期間を24ヶ月と見なしての加速テストであり、歯科用接着剤として使用可能な粘度を4000mPa・sを上限と定めて、1ヶ月の間にこの上限値内ものを実施例とした。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
[比較例]
次に示す比較例1及び2は、加速テストの結果、歯科用接着剤として使用可能な粘度を4000mPa・sを上限と定めて、1ヶ月の間にこの上限値を越えたものは実施不能と判定し比較例とした。無機フィラーとしては、日本アエロジル株式会社(本社所在地:日本国東京都新宿区)製の二酸化ケイ素、商品名「AEROSIL」を用いた。
【表3】
【0035】
比較例1の無機フィラー1〜19は、次の仕様のものを使用した。
【表4】
【0036】
【表5】
【0037】
【表6】
【0038】
【表7】
【0039】
比較例2で使用した無機フィラー22〜40は、次の仕様のものを使用した。
【表8】
【0040】
【表9】
【0041】
【表10】
【0042】
【表11】
【0043】
以上の比較例1及び2から、フッ素徐放性モノマーと実施例1〜7以外の無機フィラーを共存させると保存安定性が悪いことが判明した。
表12は、粘度の経過を月数示したものであり、前述した実施例1、比較例1のデータの例である。表面が疎水化された二酸化ケイ素「AEROSIL R974」を使用したフッ素徐放性歯科用接着材は、24ヶ月を経過してもなお使用可能な粘度を保っている。テスト方法は、実施例の加速テストと同様な方法で実施した。
【0044】
【表12】
【0045】
【発明の効果】
本発明の光硬化性歯科用接着組成物は、表面が疎水化された特定の二酸化ケイ素を混合したのみで高い流動性を維持したまま、たれにくい性質(チキソトロピー性を付与)できた。
Claims (6)
- フッ素イオンを長期間にわたり徐々に放出するフッ素イオン徐放性モノマーと、
光を照射することにより光重合により硬化し、部材間を接着するためのリン酸基を有する第1ラジカル重合性モノマーと、
光を照射することにより光重合により硬化し、部材間を接着するための第2ラジカル重合性モノマーと、
前記光重合を開始するための光増感剤と、
前記光の照射により前記第1ラジカル重合性モノマー及び第2ラジカル重合性モノマーの硬化を促進させるための光重合促進剤と、
物理的特性を改良するためのフィラーと、
残部が水、及び分散剤と
からなる光硬化性歯科用接着組成物において、
前記フィラーは、
疎水性の二酸化ケイ素であり、一次粒子平均径が8〜13(nm)、比表面積が170±20m2/gである
ことを特徴とする光硬化性歯科用接着組成物。 - 請求項1に記載の光硬化性歯科用接着組成物において、
前記光硬化性歯科用接着組成物は使用時に2液を混合して使用するものであって、前記2液の一方の主剤は、前記フッ素イオン徐放性モノマー、前記第1ラジカル重合性モノマー、前記光増感剤、及び前記光重合促進剤とからなり、他方の助剤は前記水、前記分散剤、前記第2ラジカル重合性モノマー、及び前記フィラー
であることを特徴とする光硬化性歯科用接着組成物。 - 請求項1又は2に記載の光硬化性歯科用接着組成物において、
前記フッ素徐放性のモノマーは、環状ホスファゼン化合物であり、
前記第1ラジカル重合性モノマーは、(メタ)アクリル酸のリン酸エステル、及び/又は(メタ)アクリル酸のピロリン酸エステルとからなり、
前記第2ラジカル重合性モノマーは、
メチル(メタ)アクリレート;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジ、又はトリ、又はテトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジ(メタクリロキシエチル)トリメチルヘキサメチレンジウレタン;フェニル基を有するジメタクリレート;カルボン酸ビニルエステル;エチレン系不飽和ジカルボン酸から選択される1種以上からなり、
前記光増感剤は、
カンファーキノン;ベンジル;ビアセチル;9,10−フェナントレンキノン;ナフトキノンから選択される1種以上からなり、
前記光重合促進剤は、
第三級アミン系還元剤から選択される1種以上からなる
ことを特徴とする光硬化性歯科用接着組成物。 - 請求項1又は2において、
前記二酸化ケイ素の表面基は、
(CH3)2である
ことを特徴とする光硬化性歯科用接着組成物。 - 請求項1又は2に記載の光硬化性歯科用接着組成物において、
前記光硬化性歯科用接着組成物の全重量を100重量%としたとき、前記各成分の配合量は、
前記フッ素イオン徐放性モノマーは、 0.1〜50.0重量%
前記第1ラジカル重合性モノマーは、 5.0〜80.0重量%
前記第2ラジカル重合性モノマーは、 5.0〜50.0重量%
前記光増感剤は、 0.1〜10.0重量%
前記光重合促進剤は、 0.1〜10.0重量%
前記フィラーは、 0.5〜15.0重量%
前記水及び前記分散材は、残部である
ことを特徴とする光硬化性歯科用接着組成物。 - 請求項1又は2に記載の光硬化性歯科用接着組成物において、
前記光硬化性歯科用接着組成物の全重量を100重量%としたとき、好ましい前記各成分の配合量は、
前記フッ素イオン徐放性モノマーは、 1.0〜10.0重量%
前記第1ラジカル重合性モノマーは、30.0〜80.0重量%
前記第2ラジカル重合性モノマーは、 5.0〜40.0重量%
前記光増感剤は、 0.1〜 1.0重量%
前記光重合促進剤は、 0.1〜 1.0重量%
前記フィラーは、 1.0〜10.0重量%
前記水及び前記分散材は、残部である
ことを特徴とする光硬化性歯科用接着組成物。
Priority Applications (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002269957A JP2004105351A (ja) | 2002-09-17 | 2002-09-17 | 光硬化性歯科用接着組成物 |
EP20030019441 EP1402872A1 (en) | 2002-09-17 | 2003-08-28 | Light-curable dental adhesive composition |
US10/652,040 US20040054028A1 (en) | 2002-09-17 | 2003-09-02 | Light-curable dental adhesive composition |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002269957A JP2004105351A (ja) | 2002-09-17 | 2002-09-17 | 光硬化性歯科用接着組成物 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004105351A true JP2004105351A (ja) | 2004-04-08 |
Family
ID=31973198
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002269957A Pending JP2004105351A (ja) | 2002-09-17 | 2002-09-17 | 光硬化性歯科用接着組成物 |
Country Status (3)
Country | Link |
---|---|
US (1) | US20040054028A1 (ja) |
EP (1) | EP1402872A1 (ja) |
JP (1) | JP2004105351A (ja) |
Families Citing this family (10)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
ATE362747T1 (de) * | 2002-03-19 | 2007-06-15 | Dentsply Sankin K K | Dentalbindemasse in einer einzigen flasche |
JP5570091B2 (ja) | 2003-05-13 | 2014-08-13 | デンツプライ インターナショナル インコーポレーテッド | 歯科用接着剤組成物および方法 |
DE602005014253D1 (de) | 2004-10-14 | 2009-06-10 | Dentsply Int Inc | Aus nur einer komponente bestehendes selbstätzendes haftmittel |
US7854610B2 (en) | 2005-05-05 | 2010-12-21 | Dellinger Eugene L | Orthodontic tooth retention system |
US8147244B2 (en) * | 2005-05-05 | 2012-04-03 | Dellinger Eugene L | Orthodontic tooth retention system |
US20070190476A1 (en) * | 2005-05-05 | 2007-08-16 | Dellinger Eugene L | Orthodontic tooth retention system |
WO2010008077A1 (ja) * | 2008-07-17 | 2010-01-21 | クラレメディカル株式会社 | Led光源に好適な重合性組成物 |
WO2013039169A1 (ja) * | 2011-09-15 | 2013-03-21 | 株式会社トクヤマデンタル | 有機無機複合フィラー、及びその製造方法 |
CN103610599A (zh) * | 2013-10-21 | 2014-03-05 | 北京化工大学 | 一种具有x-射线阻射性齿科修复树脂及其制备方法 |
RU2765459C1 (ru) * | 2021-03-16 | 2022-01-31 | Федеральное государственное бюджетное образовательное учреждение высшего образования "Российский химико-технологический университет имени Д.И. Менделеева" (РХТУ им. Д.И. Менделеева) | Стоматологическая полимерная композиция с пролонгированным противомикробным действием |
Citations (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS6212706A (ja) * | 1985-03-18 | 1987-01-21 | Kuraray Co Ltd | フツ素イオン徐放性歯科用組成物 |
JPH05255033A (ja) * | 1992-02-06 | 1993-10-05 | Dentsply Internatl Inc | 歯組成物および方法 |
JPH07101819A (ja) * | 1993-10-01 | 1995-04-18 | Sankin Kogyo Kk | フッ素イオン徐放性歯科用レジン組成物 |
JPH09194674A (ja) * | 1996-01-25 | 1997-07-29 | San Medical Kk | 歯科用充填組成物 |
JP2001511189A (ja) * | 1997-10-03 | 2001-08-07 | デンツプライ インターナショナル インコーポレーテッド | ナノスケールの充填剤を含む歯科材料 |
JP2001520176A (ja) * | 1997-10-22 | 2001-10-30 | デンツプライ インターナショナル インコーポレーテッド | ぞうげ質用保護上塗り剤 |
JP2002029909A (ja) * | 2000-07-19 | 2002-01-29 | Kuraray Co Ltd | 歯科用組成物 |
Family Cites Families (10)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US6126922A (en) * | 1995-11-17 | 2000-10-03 | 3M Innovative Properties Company | Fluorid-releasing compositions and compositions with improved rheology |
DE19638068A1 (de) * | 1996-09-18 | 1998-03-19 | Ernst Muehlbauer | Zusammensetzung und Methode zur Zahnrestaurierung |
US5846075A (en) * | 1997-02-28 | 1998-12-08 | Bisco, Inc. | One package, shelf-stable photo-curable band cement |
US5922786A (en) * | 1997-04-11 | 1999-07-13 | Minnesota Mining And Manufacturing Company | Dental primer composition |
US5859089A (en) * | 1997-07-01 | 1999-01-12 | The Kerr Corporation | Dental restorative compositions |
AU6050799A (en) * | 1999-05-13 | 2000-12-05 | 3M Innovative Properties Company | Fluoride releasing orthodontic adhesive |
JP4636656B2 (ja) * | 1999-07-08 | 2011-02-23 | 株式会社松風 | 歯科用接着剤組成物 |
US6730715B2 (en) * | 2001-07-06 | 2004-05-04 | Pentron Clinical Technologies, Llc | Dental restorative composition, dental restoration, and a method of use thereof |
ATE362747T1 (de) * | 2002-03-19 | 2007-06-15 | Dentsply Sankin K K | Dentalbindemasse in einer einzigen flasche |
JP5570091B2 (ja) * | 2003-05-13 | 2014-08-13 | デンツプライ インターナショナル インコーポレーテッド | 歯科用接着剤組成物および方法 |
-
2002
- 2002-09-17 JP JP2002269957A patent/JP2004105351A/ja active Pending
-
2003
- 2003-08-28 EP EP20030019441 patent/EP1402872A1/en not_active Withdrawn
- 2003-09-02 US US10/652,040 patent/US20040054028A1/en not_active Abandoned
Patent Citations (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS6212706A (ja) * | 1985-03-18 | 1987-01-21 | Kuraray Co Ltd | フツ素イオン徐放性歯科用組成物 |
JPH05255033A (ja) * | 1992-02-06 | 1993-10-05 | Dentsply Internatl Inc | 歯組成物および方法 |
JPH07101819A (ja) * | 1993-10-01 | 1995-04-18 | Sankin Kogyo Kk | フッ素イオン徐放性歯科用レジン組成物 |
JPH09194674A (ja) * | 1996-01-25 | 1997-07-29 | San Medical Kk | 歯科用充填組成物 |
JP2001511189A (ja) * | 1997-10-03 | 2001-08-07 | デンツプライ インターナショナル インコーポレーテッド | ナノスケールの充填剤を含む歯科材料 |
JP2001520176A (ja) * | 1997-10-22 | 2001-10-30 | デンツプライ インターナショナル インコーポレーテッド | ぞうげ質用保護上塗り剤 |
JP2002029909A (ja) * | 2000-07-19 | 2002-01-29 | Kuraray Co Ltd | 歯科用組成物 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
US20040054028A1 (en) | 2004-03-18 |
EP1402872A1 (en) | 2004-03-31 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Moszner et al. | Benzoyl germanium derivatives as novel visible light photoinitiators for dental materials | |
JP3399573B2 (ja) | 歯面処理キット | |
JP5615720B2 (ja) | 歯科用充填修復キット | |
US7129281B2 (en) | One-bottle dental bonding composition | |
JP2004105351A (ja) | 光硬化性歯科用接着組成物 | |
JP2813825B2 (ja) | 二官能のアクリル酸エステル類あるいはメタクリル酸エステル類を含む歯科用組成物 | |
JP5207751B2 (ja) | 歯科用接着性組成物 | |
JP6035134B2 (ja) | 歯科用接着性組成物 | |
JP3449378B2 (ja) | 歯科用充填修復材料及び義歯床用樹脂組成物 | |
JP5238302B2 (ja) | 歯科用充填修復キット | |
JP6602163B2 (ja) | 接着性ポリアリールエーテルケトン樹脂材料の製造方法、及び接着方法 | |
JP3452613B2 (ja) | フッ素イオン徐放性歯科用レジン組成物 | |
JP2015168672A (ja) | 歯科用組成物 | |
KR102237491B1 (ko) | 치과용 코팅 조성물 및 그를 포함하는 치과재료 | |
JP2016027041A (ja) | ポリアリールエーテルケトン樹脂材料用接着材 | |
JPH09249514A (ja) | 歯科用レジン強化型セメント用前処理剤 | |
JP2016183324A (ja) | ポリアリールエーテルケトン樹脂材料用接着性組成物 | |
JP6828862B2 (ja) | 接着性ポリアリールエーテルケトン樹脂材料の製造方法、及びポリアリールエーテルケトン樹脂材料と被着体との接着方法 | |
JP2016053158A (ja) | 接着方法、歯科補綴物材料及び歯科補綴物材料の製造方法 | |
JP2009091268A (ja) | 歯科用充填修復キット | |
JPH02252775A (ja) | 光重合型接着剤組成物 | |
JP5968124B2 (ja) | 歯科用接着性組成物 | |
JP2003342112A (ja) | 歯科用一液型接着剤組成物 | |
JP2013100242A (ja) | 歯科用硬化性組成物 | |
WO2022270601A1 (ja) | 歯科用接着キット |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20050818 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20080417 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20080616 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20080710 |