JP2004101560A - ポジ型感光性組成物及びポジ型感光性平版印刷版 - Google Patents
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Abstract
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、平版印刷版、印刷校正用カラープルーフ、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ用カラーフィルターレジスト、半導体素子の集積回路用フォトレジスト、配線板やグラビア製版用銅エッチングレジスト等に使用される、近赤外線領域の光に対して高感度なポジ型感光性組成物及びポジ型感光性平版印刷版に関し、特に、半導体レーザーやYAGレーザー等による直接製版に好適なポジ型感光性組成物及びポジ型感光性平版印刷版に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポジ型感光性組成物としては、例えば、光照射によりインデンカルボン酸を生じてアルカリ可溶性となるo−キノンジアジド基含有化合物、o−ニトロカルビノールエステル基を有する有機高分子物質、或いは、光により酸を発生する化合物(光酸発生剤)と酸により加水分解を生じアルカリ可溶性となる化合物との組成物等が知られている。
【0003】
一方、コンピュータ画像処理技術の進歩に伴い、デジタル画像情報から、銀塩マスクフィルムへの出力を行わずに、レーザー光或いはサーマルヘッド等により、直接レジスト画像を形成する感光又は感熱ダイレクト製版システムが注目されている。特に、高出力の半導体レーザーやYAGレーザー等を用いる、高解像度のレーザー感光ダイレクト製版システムは、小型化、製版作業時の環境光、及び版材コスト等の面から、その実現が強く望まれている。
【0004】
従来、レーザー感光又は感熱を利用した画像形成方法としては、昇華転写色素を利用して色材画像を形成する方法並びに平版印刷版を作製する方法等が知られており、後者においては、例えば、ジアゾ化合物の架橋反応を利用して平版印刷版を作製する方法、ニトロセルロースの分解反応を利用して平版印刷版を作製する方法等が知られている。
【0005】
近年、このような画像形成において、化学増幅型のフォトレジストに長波長光線吸収色素を組み合わせた技術が散見されるようになった。例えば、特許文献1(特開平6−43633号公報)には、特定のスクアリリウム系色素に光酸発生剤及びバインダーを組み合わせた感光性材料が開示されており、又、これに類する技術として、特許文献2(特開平7−20629号公報)には、赤外線吸収色素、潜伏性ブレンステッド酸、レゾール樹脂及びノボラック樹脂を含む感光性組成物層を半導体レーザー等により像状に露光して平版印刷版を作製する方法が、特許文献3(特開平7−271029号公報)には、前記潜伏性ブレンステッド酸に代えてs−トリアジン系化合物を用いる方法が、更に、特許文献4(特開平9−43847号公報)には、赤外線の照射により加熱して感光材の結晶性を変化させるレジスト材及びそれを利用したパターン形成方法が、それぞれ開示されている。
【0006】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、これら従来の技術では、近赤外線領域の光に対して感度が低く、現像液に対する露光部と非露光部の溶解性の差が小さく、その結果、非画像部が十分に除去されなかったり、画像部の残膜率が十分に保持されず、また、そのために現像条件の幅が狭い等の、実用上の欠点を有していた。
【0007】
これに対して、本願出願人は、ポリメチン鎖を介して複素原子が結合された構造の近赤外線吸収色素からなる光熱変換物質とアルカリ可溶性樹脂という光化学的変化を期待し得ない単純な系で、前述の欠点を解消したポジ画像を形成できる感光性組成物が得られることを見出し、先に特許出願(特許文献5(特開平10−268512号公報)参照)し、引き続いて、更なる改良を検討中であった。
【0008】
また、特許文献6(特公表11−506550号公報)にも同様の色素が開示されているが、本発明者らの検討によると同様に更なる改良が必要であった。
【0009】
【特許文献1】
特開平6−43633号公報
【特許文献2】
特開平7−20629号公報
【特許文献3】
特開平7−271029号公報
【特許文献4】
特開平9−43847号公報
【特許文献5】
特開平10−268512号公報
【特許文献6】
特公表11−506550号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前述の従来技術に鑑みてなされたものであって、近赤外線領域の光に対して高感度であって、画像部と非画像部とのコントラストに優れ、よって、現像条件の幅の広いポジ型感光性組成物及びポジ型感光性平版印刷版を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明のポジ型感光性組成物は、画像露光光源の光を吸収して熱に変換する光熱変換物質とアルカリ可溶性樹脂とを含有するポジ型感光性組成物であって該光熱変換物質として下記一般式[I]で示される9,19−ジオキサジナフト−[3,2,1−de;3,2,1−OP]ペンタセン系誘導体を含有してなることを特徴とする。
【0012】
【化2】
(式中、XはC(CN)2又はOを示し、R1,R2、R3,R4は各々独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、ハロメチル基、又はハロゲン原子を示し、R5、R6は各々独立に水素原子又はハロゲン原子を示す。)
【0013】
本発明のポジ型感光性平版印刷版は、支持体表面にこのような本発明のポジ型感光性組成物の層が形成されてなることを特徴とする。
【0014】
即ち、本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、上記一般式[I]で示される9,19−ジオキサジナフト−[3,2,1−de;3,2,1−OP]ペンタセン系誘導体を光熱変換物質としてアルカリ可溶性樹脂と共に用いた組成物が、前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
【0015】
上記一般式[I]で示される9,19−ジオキサジナフト−[3,2,1−de;3,2,1−OP]ペンタセン系誘導体を支持体上に感光性層として塗設した際には、アルカリ可溶性樹脂と十分な相互作用をし、現像液に対しての現像性を低下させるが、露光により生成する熱により樹脂との相互作用が弱まり、現像性を回復する、即ち、いわゆる溶解抑止効果を示すことにより、性能を向上させるものと考えられる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明のポジ型感光性組成物及びポジ型感光性平版印刷版の実施の形態を詳細に説明する。
【0017】
本発明のポジ型感光性組成物において、画像露光光源の光を吸収して熱に変換する光熱変換物質とは、吸収した光を熱に変換し得る化合物であって、本発明においては、その光熱変換物質として、前記一般式[I]で示される9,19−ジオキサジナフト−[3,2,1−de;3,2,1−OP]ペンタセン系誘導体を用いる。
【0018】
まず、前記一般式[I]で示される9,19−ジオキサジナフト−[3,2,1−de;3,2,1−OP]ペンタセン系誘導体について説明する。
【0019】
前記一般式[I]において、R1,R2,R3,R4で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、直鎖状又は分岐状のプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘプチル基、ヘキシル基、オクチル基等の炭素数1〜8のアルキル基が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、直鎖状又は分岐状のプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘプチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基等の炭素数1〜8のアルコキシ基が挙げられる。また、アルコキシアルコキシ基としては、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシプロポキシ基、ブトキシエトキシ基等が挙げられ、ハロメチル基としては、クロロメチル基、ブロモメチル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0020】
また、R5,R6で示されるハロゲン原子としては、フッ素原子、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0021】
前記一般式[I]で示される色素は、一般に700〜900nmの波長帯域で吸収を有し、しかも分子吸収係数が104〜106cm−1である。
【0022】
前記一般式[I]で示されるペンタセン系誘導体は、例えば、下記一般式[II]で表される化合物に、クロロホルム中、ピリジン、四塩化チタンの存在下、下記構造式[III]で表されるマロンニトリルを反応させることによって製造することができる。
【0023】
【化3】
(式中、R1,R2,R3,R4,R5,R6は前記定義に同じ。)
【0024】
【化4】
【0025】
前記一般式[I]で表される9,19−ジオキサジナフト−[3,2,1−de;3,2,1−OP]ペンタセン系誘導体としては、具体的には、下記構造式(1),(2)で表されるもの、後述の実施例で用いたもの、その他下記表1〜9に示されるものが挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
【0026】
【化5】
【0027】
【化6】
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】
【0031】
【表4】
【0032】
【表5】
【0033】
【表6】
【0034】
【表7】
【0035】
【表8】
【0036】
【表9】
【0037】
本発明において、このような9,19−ジオキサジナフト−[3,2,1−de;3,2,1−OP]ペンタセン系誘導体を光熱変換物質として用いる場合、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0038】
本発明のポジ型感光性組成物において、光熱変換物質としての前記一般式[I]で示される9,19−ジオキサジナフト−[3,2,1−de;3,2,1−OP]ペンタセン系誘導体の含有割合は、0.5〜50重量%であることが好ましく、1〜40重量%であることが更に好ましく、2〜30重量%であることが特に好ましい。
【0039】
なお、光熱変換物質としては、前記一般式[I]で示される本発明に係るペンタセン系誘導体と、他の光熱変換物質、例えば特開平10−268512号公報等に記載の光熱変換物質を混合して用いることもでき、その場合、ポジ型感光性組成物中の光熱変換物質の合計添加量は、単独使用時の上記範囲内であれば良い。なお、本発明に係るペンタセン系誘導体と他の光熱変換物質とを併用する場合、光熱変換物質の合計添加量中の20重量%以上が本発明に係るペンタセン系誘導体であることが好ましく、ポジ型感光性組成物中の他の光熱変換物質の含有割合は、0〜20重量%であるのが好ましく、0.1〜15重量%であるのが更に好ましく、1〜10重量%であるのが特に好ましい。
【0040】
本発明のポジ型感光性組成物において、アルカリ可溶性樹脂としては、フェノール性水酸基を有する樹脂、具体的には、例えば、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、フェノール性水酸基を有するアクリル酸誘導体の共重合体等が挙げられ、中でも、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、又はポリビニルフェノール樹脂が好ましく、特に、ノボラック樹脂が好ましい。
【0041】
ノボラック樹脂は、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、プロピルフェノール、n−ブチルフェノール、tert−ブチルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、4,4’−ビフェニルジオール、ビスフェノール−A、ピロカテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、1,2,4−ベンゼントリオール、フロログリシノール等のフェノール類の少なくとも1種を、酸触媒の存在下、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド類(なお、ホルムアルデヒドに代えてパラホルムアルデヒドを、アセトアルデヒドに代えてパラアルデヒドを用いてもよい。)、又は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類の少なくとも1種と重縮合させた樹脂であって、中でも、本発明においては、フェノール類としてのフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、レゾルシノール、ピロガロールの少なくとも1種と、アルデヒド類又はケトン類としてのホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドの少なくとも1種との重縮合体が好ましく、特に、m−クレゾール:p−クレゾール:2,5−キシレノール:3,5−キシレノール:レゾルシノールの混合割合がモル比で40〜100:0〜50:0〜20:0〜20:0〜20の混合フェノール類、又は、フェノール:m−クレゾール:p−クレゾールの混合割合がモル比で1〜100:0〜70:0〜60の混合フェノール類と、ホルムアルデヒドとの重縮合体が好ましい。
【0042】
なお、本発明のポジ型感光性組成物は後述する溶剤抑止剤を含有していても良く、その場合は、m−クレゾール:p−クレゾール:2,5−キシレノール:3,5−キシレノール:レゾルシノールの混合割合がモル比で70〜100:0〜30:0〜20:0〜20:0〜20の混合フェノール類、又は、フェノール:m−クレゾール:p−クレゾールの混合割合がモル比で10〜100:0〜60:0〜40の混合フェノール類と、ホルムアルデヒドとの重縮合体が好ましい。
【0043】
前記ノボラック樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、好ましくは1,000〜15,000、更に好ましくは1,500〜10,000のものが用いられる。
【0044】
レゾール樹脂は、ノボラック樹脂の重縮合における酸触媒に代えてアルカリ触媒を用いる以外は同様にして重縮合させた樹脂であって、本発明においては、前記ノボラック樹脂におけると同様の、フェノール類及びその混合組成、及び、アルデヒド類又はケトン類が好ましく、また、同様の重量平均分子量(Mw)のものが好ましい。
【0045】
ポリビニルフェノール樹脂は、例えば、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、ジヒドロキシスチレン、トリヒドロキシスチレン、テトラヒドロキシスチレン、ペンタヒドロキシスチレン、2−(o−ヒドロキシフェニル)プロピレン、2−(m−ヒドロキシフェニル)プロピレン、2−(p−ヒドロキシフェニル)プロピレン等のヒドロキシスチレン類(なお、これらは、ベンゼン環に塩素、臭素、沃素、弗素等のハロゲン原子、或いは炭素数1〜4のアルキル基を置換基として有していても良い。)の単独又は2種以上を、ラジカル重合開始剤又はカチオン重合開始剤の存在下で重合させた樹脂であって、中でも、本発明においては、ベンゼン環に炭素数1〜4のアルキル基を置換基として有していても良いヒドロキシスチレン類の重合体が好ましく、特に、無置換のベンゼン環のヒドロキシスチレン類の重合体が好ましい。
【0046】
前記ポリビニルフェノール樹脂は、また、一部水素添加を行ったものでも良く、tert−ブトキシカルボニル基、ピラニル基、フリル基等で一部の水酸基を保護したものでも良い。また、重量平均分子量(Mw)が、好ましくは1,000〜100,000、特に好ましくは1,500〜50,000のものが用いられる。
【0047】
ノボラック樹脂、レゾール樹脂、及びポリビニルフェノール樹脂の分子量が、前記範囲よりよりも小さいとレジストとしての十分な塗膜が得られず、前記範囲よりも大きいとアルカリ現像液に対する溶解性が小さくなり、非画像部の抜けが不十分となってレジストのパターンが得られにくくなる傾向となる。
【0048】
本発明のポジ型感光性組成物において、前記アルカリ可溶性樹脂の含有割合は、1〜98重量%であることが好ましく、5〜95重量%であることが更に好ましく、20〜90重量%であることが特に好ましい。
【0049】
なお、本発明のポジ型感光性組成物には、前記光熱変換物質と前記アルカリ可溶性樹脂の他に、露光部と非露光部のアルカリ現像液に対する溶解性の差を増大させる目的で、前記アルカリ可溶性樹脂と水素結合を形成して該樹脂の溶解性を低下させる機能を有し、かつ、近赤外線領域の光を殆ど吸収せず、近赤外線領域の光で分解されない溶解抑止剤が含有されていても良い。
【0050】
その溶解抑止剤としては、例えば、本願出願人による特開平10−268512号公報に詳細に記載されているスルホン酸エステル、燐酸エステル、芳香族カルボン酸エステル、芳香族ジスルホン、カルボン酸無水物、芳香族ケトン、芳香族アルデヒド、芳香族アミン、芳香族エーテル等、同じく特開平11−190903号公報に詳細に記載されている、ラクトン骨格、N,N−ジアリールアミド骨格、ジアリールメチルイミノ骨格を有する酸発色性色素、同じく特開平11−143076号公報に詳細に記載されている、ラクトン骨格、チオラクトン骨格、スルホラクトン骨格を有する塩基発色性色素、同じく特開平10−341400号公報に詳細に記載されている非イオン性界面活性剤等を挙げることができる。中でも、ラクトン骨格を有する酸発色性色素が好ましい。
【0051】
本発明のポジ型感光性組成物にける上記溶解抑止剤の含有割合は、0〜50重量%であることが好ましく、0〜30重量%であることが更に好ましく、0〜20重量%であることが特に好ましい。
【0052】
また、本発明のポジ型感光性組成物には、必要に応じて、例えば、ビクトリアピュアブルー(42595)、クリスタルバイオレット(42555)、クリスタルバイオレットラクトン、オーラミンO(41000)、カチロンブリリアントフラビン(ベーシック13)、ローダミン6GCP(45160)、ローダミンB(45170)、サフラニンOK70:100(50240)、エリオグラウシンX(42080)、ファーストブラックHB(26150)、No.120/リオノールイエロー(21090)、リオノールイエローGRO(21090)、シムラーファーストイエロー8GF(21105)、ベンジジンイエロー4T−564D(21095)、シムラーファーストレッド4015(12355)、リオノールレッドB4401(15850)、ファーストゲンブルーTGR−L(74160)、リオノールブルーSM(26150)等の顔料又は染料等の着色剤が含有されていても良い。なお、ここで、前記の括弧内の数字はカラーインデックス(C.I.)を意味する。
【0053】
本発明のポジ型感光性組成物における上記着色剤の含有割合は、0〜50重量%であることが好ましく、1〜30重量%であることが更に好ましく、2〜20重量%であることが特に好ましい。
【0054】
本発明のポジ型感光性組成物には、前記成分以外に、例えば、塗布性改良剤、現像性改良剤、密着性改良剤、感度改良剤、感脂化剤等の通常用いられる各種の添加剤が更に10重量%以下、好ましくは0.1〜5重量%の範囲で含有されていても良い。
【0055】
本発明の前記ポジ型感光性組成物は、通常、前記各成分を適当な溶媒に溶解した溶液として支持体表面に塗布した後、加熱、乾燥することにより、支持体表面に感光性組成物層が形成されたポジ型感光性平版印刷版とされる。
【0056】
ここで、その溶媒としては、使用成分に対して十分な溶解度を持ち、良好な塗膜性を与えるものであれば特に制限はないが、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のプロピレングリコール系溶媒、酢酸ブチル、酢酸アミル、酪酸エチル、酪酸ブチル、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル−2−ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル等のエステル系溶媒、ヘプタノール、ヘキサノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール等のアルコール系溶媒、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン等のケトン系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の高極性溶媒、酢酸、或いはこれらの混合溶媒、更にはこれらに芳香族炭化水素を添加したもの等が挙げられる。
【0057】
溶媒の使用割合は、感光性組成物の総量に対して、通常、重量比で1〜20倍程度の範囲である。
【0058】
塗布溶液の塗布方法としては、従来公知の方法、例えば、回転塗布、ワイヤーバー塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ロール塗布、ブレード塗布、及びカーテン塗布等を用いることができる。
【0059】
塗布量は用途により異なるが、乾燥膜厚として、通常0.3〜7μm、好ましくは0.5〜5μm、特に好ましくは1〜3μmの範囲とする。なお、その際の乾燥温度としては、例えば60〜170℃程度、好ましくは70〜150℃程度、乾燥時間としては、例えば5秒〜10分間程度、好ましくは10秒〜5分間程度が採られる。
【0060】
ポジ型感光性平版印刷版の支持体としては、アルミニウム、亜鉛、銅、鋼等の金属板、アルミニウム、亜鉛、銅、鉄、クロム、ニッケル等をメッキ又は蒸着した金属板、紙、樹脂を塗布した紙、アルミニウム等の金属箔を貼着した紙、プラスチックフィルム、親水化処理したプラスチックフィルム、及びガラス板等が挙げられる。中でも、好ましいのはアルミニウム板であり、塩酸又は硝酸溶液中での電解エッチング又はブラシ研磨による砂目立て処理、硫酸溶液中での陽極酸化処理、及び必要に応じて封孔処理等の表面処理が施されたアルミニウム板がより好ましい。支持体表面の粗さとしては、JIS B0601に規定される平均粗さRaで、通常0.3〜1.0μm、好ましくは0.4〜0.8μm程度である。
【0061】
本発明に係るポジ型感光性組成物層を画像露光する光源としては、主として、HeNeレーザー、アルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、HeCdレーザー、半導体レーザー、ルビーレーザー等のレーザー光源が挙げられるが、特に、光を吸収して発生した熱により画像形成させる場合には、波長700〜1300nmの近赤外レーザー光線を発生する光源が好ましく、例えば、ルビーレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー、LED等の固体レーザーを挙げることができ、特に、小型で長寿命な半導体レーザーやYAGレーザーが好ましい。これらの光源により、通常、走査露光した後、現像液にて現像し画像が形成される。
【0062】
なお、レーザー光源は、通常、レンズにより集光された高強度の光線(ビーム)として感光性組成物層表面を走査するが、それに感応する本発明での感光性組成物層の感度特性(mJ/cm2)は受光するレーザービームの光強度(mJ/s・cm2)に依存することがある。ここで、レーザービームの光強度は、光パワーメーターにより測定したレーザービームの単位時間当たりのエネルギー量(mJ/s)を感光性組成物層表面におけるレーザービームの照射面積(cm2)で除することにより求めることができる。レーザービームの照射面積は、通常、レーザーピーク強度の1/e2強度を越える部分の面積で定義されるが、簡易的には相反則を示す感光性組成物を感光させて測定することもできる。
【0063】
本発明において、光源の光強度としては、2.0×106mJ/s・cm2以上とすることが好ましく、1.0×107mJ/s・cm2以上とすることが更に好ましい。光強度が前記範囲であれば、本発明でのポジ型感光性組成物層の感度特性を向上させ得て、走査露光時間を短くすることができ、実用的に大きな利点となる。
【0064】
本発明の前記ポジ型感光性平版印刷版を画像露光したポジ型感光体の現像に用いる現像液としては、例えば、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム、珪酸アンモニウム、メタ珪酸ナトリウム、メタ珪酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、第二燐酸ナトリウム、第三燐酸ナトリウム、第二燐酸アンモニウム、第三燐酸アンモニウム、硼酸ナトリウム、硼酸カリウム、硼酸アンモニウム等の無機アルカリ塩、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、モノブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン等の有機アミン化合物の0.1〜5重量%程度の水溶液からなるアルカリ現像液を用いる。中でも、無機アルカリ塩である珪酸ナトリウム、珪酸カリウム等のアルカリ金属の珪酸塩の水溶液が好ましい。この現像液には、必要に応じて、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤や、アルコール等の有機溶媒を加えることができる。
【0065】
なお、現像は、浸漬現像、スプレー現像、ブラシ現像、超音波現像等により、通常、好ましくは10〜50℃程度、特に好ましくは15〜45℃程度の温度で行われる。
【0066】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0067】
実施例1
アルミニウム板(厚さ0.24mm)に、5重量%の水酸化ナトリウム水溶液中で60℃で1分間脱脂処理を施した後、0.5モル/リットルの濃度の塩酸水溶液中で、温度28℃、電流密度60A/dm2、処理時間40秒の条件で電解エッチング処理を行った。次いで4重量%水酸化ナトリウム水溶液中で60℃、12秒間のデスマット処理を施した後、20重量%硫酸溶液中で、温度20℃、電流密度3.5A/dm2、処理時間1分の条件で陽極酸化処理を行った。更に、80℃の熱水で20秒間熱水封孔処理を行い、平版印刷版支持体用のアルミニウム板を作製した。表面粗度計(小坂研究所社製、「SE−3DH」)によるこの板の平均粗さRaの値は0.60μmであった。
【0068】
得られたアルミニウム板支持体表面に、アルカリ可溶性樹脂としてフェノール:m−クレゾール:p−クレゾールの混合割合がモル比で50:30:20の混合フェノール類と、ホルムアルデヒドとの重縮合体からなるノボラック樹脂(Mw7000)100重量部、1,2−シクロヘキセンジカルボン酸5重量部、GO4(ニッコウケミカルズ社製、テトラオレイン酸ソルビットのポリオキエチレンオキサイド付加物)4重量部、クリスタルバイオレットラクトン、光熱変換物質として下記構造式(3)で表される9,19−ジオキサジナフト−[3,2,1−de;3,2,1−OP]ペンタセン系誘導体(λmax789nm)6重量部を、メチルセロソルブ900重量部に室温で10分間攪拌混合して調液した塗布液を、ワイヤーバーを用いて塗布し、85℃で3分乾燥させた後、温度59℃、湿度60%で24時間加熱処理して、塗膜量2g/m2、乾燥膜厚3μmのポジ型感光性組成物層を有するポジ型感光性平版印刷版を作製した。
【0069】
【化7】
【0070】
得られたポジ型感光性平版印刷版につき、波長830nmの半導体レーザーを光源とする露光装置(クレオ社製「Trendsetter3244T」)を用いて各種の露光エネルギーで200線、1〜99%の網点画像を画像露光し、次いでアルカリ現像液(富士写真フィルム社製「DP−4」の8倍希釈液)を用いて28℃で現像処理を行い、1〜99%の網点画像を再現させた印刷版を作製した。そのときの感度を、3%の網点画像が再現する露光量として求めたところ、70mJ/cm2であった。
【0071】
比較例1
感光性組成物層における光熱変換物質を下記化合物に変えたこと以外は、実施例1と同様にしてポジ型感光性組成物を作製し、同様にポジ型感光性平版印刷版の露光実験を行ったが、300mJ/cm2の露光量で画像露光しても画像形成されなかった。
【0072】
【化8】
【0073】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明によれば、近赤外線領域の光に対して高感度であって、画像部と非画像部とのコントラストに優れ、このため、現像条件の幅の広いポジ型感光性組成物及びポジ型感光性平版印刷版を提供することができる。
Claims (3)
- 該アルカリ可溶性樹脂がノボラック樹脂である請求項1記載のポジ型感光性組成物。
- 支持体表面に請求項1又は2のポジ型感光性組成物の層が形成されてなることを特徴とするポジ型感光性平版印刷版。
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