JP3717027B2 - ポジ型感光性組成物及びポジ型感光性平版印刷版 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、感光性平版印刷版、簡易校正印刷用プルーフ、配線板やグラビア用銅エッチングレジスト、フラットディスプレイ製造に用いられるカラーフィルター用レジスト、LSI製造用フォトレジスト等に使用される、主として近赤外線領域の光に対して高感度なポジ型感光性組成物及びポジ型感光性平版印刷版に関し、特に、半導体レーザーやYAGレーザー等による直接製版に好適なポジ型感光性組成物及びポジ型感光性平版印刷版に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ポジ型感光性組成物としては、例えば、光照射によりインデンカルボン酸を生じアルカリ可溶性となるo−キノンジアジド基含有化合物(例えば、米国特許第2766118号、同第2767092号、同2772972号各明細書等参照。)、o−ニトロカルビノールエステル基を有する有機高分子物質(例えば、特公昭56−2696号公報等参照。)、或いは、光により酸を発生する化合物(光酸発生剤)と酸により加水分解を生じアルカリ可溶性となる化合物との組成物(例えば、特開昭48−89003号、特開昭59−45439号、特開昭63−8610号、特開昭64−33546号各公報等参照。)等が知られている。
【0003】
一方、コンピュータ画像処理技術の進歩に伴い、デジタル画像情報から、銀塩マスクフィルムへの出力を行わずに、レーザー光或いはサーマルヘッド等により、直接レジスト画像を形成する感光又は感熱ダイレクト製版システムが注目されている。特に、高出力の半導体レーザーやYAGレーザー等を用いる、高解像度のレーザー感光ダイレクト製版システムは、小型化、製版作業時の環境光、及び版材コスト等の面から、その実現が強く望まれている。
【0004】
これに対し、従来より、レーザー感光又は感熱を利用した画像形成方法としては、昇華転写色素を利用し色材画像を形成する方法並びに平版印刷版を作製する方法等が知られており、後者においては、具体的に、例えば、ジアゾ化合物の架橋反応を利用し平版印刷版を作製する方法(例えば、特開昭50−15603号、特開昭52−151024号、特公昭60−12939号、特公昭61−21831号、特公平2−51732号、特公平3−34051号各公報、米国特許第3664737号明細書等参照。)、ニトロセルロースの分解反応を利用し平版印刷版を作製する方法(例えば、特開昭50−102401号、特開昭50−102403号各公報等参照。)等が知られている。
【0005】
近年、化学増幅型のフォトレジストに長波長光線吸収色素を組み合わせた技術が散見されるようになった。例えば、特開平6−43633号公報には、特定のスクアリリウム系色素に光酸発生剤及びバインダーを組み合わせた感光性材料が開示されており、又、これに類する技術として、特開平7−20629号公報には、赤外線吸収色素、潜伏性ブレンステッド酸、レゾール樹脂及びノボラック樹脂を含む感光性組成物層を半導体レーザー等により像状に露光し平版印刷版を作製する方法が、特開平7−271029号公報には、前記潜伏性ブレンステッド酸に代えs−トリアジン系化合物を用いる方法が、更に、特開平9−43847号公報には、赤外線の照射により加熱して感光材の結晶性を変化させるレジスト材及びそれを利用したパターン形成方法が、それぞれ開示されている。
【0006】
しかしながら、本発明者等の検討によれば、これら従来の技術は、感度が低く、現像液に対する露光部と非露光部の溶解性の差が小さく、その結果、非画像部が十分に除去されなかったり、画像部の残膜率が十分に保持されず、又、そのため、現像条件の幅が狭く、更に、画像部の耐スクラッチ性が劣り、又、平版印刷版としての耐刷力が必ずしも十分でない等の、実用上の欠点を有していた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前述の従来技術に鑑みてなされたものであって、従って、本発明は、高感度であって、画像部と非画像部とのコントラストに優れ、画像部の残膜率も十分に保持されると共に、耐スクラッチ性にも優れ、又、十分な耐刷力を有するポジ型感光性組成物及びポジ型感光性平版印刷版を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、バインダー樹脂とアシルオキシアルコキシ基含有化合物からなる組成物が前記目的を達成できることを見い出し本発明を完成したものであって、即ち、本発明は、下記の(A)成分、及び(B)成分を含有してなるポジ型感光性組成物、及び、支持体表面に該感光性組成物からなる層が形成されてなるポジ型感光性平版印刷版、を要旨とする。
(A)フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性有機高分子物質
(B)分子内に2個以上のアシルオキシアルコキシ基を有する化合物
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明における(A)成分としての、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性有機高分子物質としては、例えば、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、フェノール性水酸基を有するアクリル酸誘導体の共重合体等が挙げられ、中で、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、又はポリビニルフェノール樹脂が好ましく、特に、ノボラック樹脂、又はポリビニルフェノール樹脂が好ましい。
【0010】
ノボラック樹脂は、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、プロピルフェノール、n−ブチルフェノール、tert−ブチルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、4,4’−ビフェニルジオール、ビスフェノール−A、ピロカテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、1,2,4−ベンゼントリオール、フロログルシノール等のフェノール類の少なくとも1種を、酸性触媒下、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド類(尚、ホルムアルデヒドに代えてパラホルムアルデヒドを、アセトアルデヒドに代えてパラアルデヒドを、用いてもよい。)、又は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、の少なくとも1種と重縮合させた樹脂であって、中で、本発明においては、フェノール類としてのフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、レゾルシノールと、アルデヒド類又はケトン類としてのホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドとの重縮合体が好ましく、特に、m−クレゾール:p−クレゾール:2,5−キシレノール:3,5−キシレノール:レゾルシノールの混合割合がモル比で40〜100:0〜50:0〜20:0〜20:0〜20の混合フェノール類、又は、フェノール:m−クレゾール:p−クレゾールの混合割合がモル比で1〜100:0〜70:0〜60の混合フェノール類と、ホルムアルデヒドとの重縮合体が好ましい。尚、本発明のポジ型感光性組成物は後述する溶剤抑止剤を含有することが好ましく、その場合は、m−クレゾール:p−クレゾール:2,5−キシレノール:3,5−キシレノール:レゾルシノールの混合割合がモル比で70〜100:0〜30:0〜20:0〜20:0〜20の混合フェノール類、又は、フェノール:m−クレゾール:p−クレゾールの混合割合がモル比で10〜100:0〜60:0〜40の混合フェノール類と、ホルムアルデヒドとの重縮合体が好ましい。
【0011】
前記ノボラック樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量(MW )が、好ましくは1,000〜15,000、特に好ましくは1,500〜10,000のものが用いられる。
【0012】
又、レゾール樹脂は、ノボラック樹脂の重縮合における酸触媒に代えてアルカリ触媒を用いる以外は同様にして重縮合させた樹脂であって、本発明においては、前記ノボラック樹脂におけると同様の、フェノール類及びその混合組成、及び、アルデヒド類又はケトン類が好ましく、又、同様の重量平均分子量(MW )のものが好ましい。
【0013】
又、ポリビニルフェノール樹脂は、例えば、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、ジヒドロキシスチレン、トリヒドロキシスチレン、テトラヒドロキシスチレン、ペンタヒドロキシスチレン、2−(o−ヒドロキシフェニル)プロピレン、2−(m−ヒドロキシフェニル)プロピレン、2−(p−ヒドロキシフェニル)プロピレン等のヒドロキシスチレン類(尚、これらは、ベンゼン環に塩素、臭素、沃素、弗素等のハロゲン原子、あるいは炭素数1〜4のアルキル基を置換基として有していてもよい。)の単独または2種以上を、ラジカル重合開始剤又はカチオン重合開始剤の存在下で重合させた樹脂であって、中で、本発明においては、ベンゼン環に炭素数1〜4のアルキル基を置換基として有していてもよいヒドロキシスチレン類の重合体が好ましく、特に、無置換のベンゼン環のヒドロキシスチレン類の重合体が好ましい。
【0014】
前記ポリビニルフェノール樹脂は、又、一部水素添加を行ったものでもよく、tert−ブトキシカルボニル基、ピラニル基、フリル基等で一部の水酸基を保護したものでもよい。
又、重量平均分子量(MW )が、好ましくは1,000〜100,000、特に好ましくは1,500〜50,000のものが用いられる。
【0015】
ノボラック樹脂、レゾール樹脂、及びポリビニルフェノール樹脂の分子量が、前記範囲よりよりも小さいとレジストとしての十分な塗膜が得られず、前記範囲よりも大きいとアルカリ現像液に対する溶解性が小さくなり、非画像部の抜けが不十分となってレジストのパターンが得られにくくなる傾向となる。
【0016】
本発明のポジ型感光性組成物における(A)成分としての前記アルカリ可溶性有機高分子物質の含有割合は、該組成物に含有を許容する後述の溶解抑止剤が有機高分子であるか否かにより幅があるが、20〜99.5重量%であるのが好ましく、40〜99.5重量%であるのが特に好ましく、50〜99重量%であるのが更に好ましい。
【0017】
本発明における(B)成分としての、分子内に2個以上のアシルオキシアルコキシ基を有する化合物としては、2個以上のアシルオキシアルコキシ基を有する限り特に限定されるものではないが、下記一般式(i) 又は(ii)で表される化合物が好ましい。
【0018】
【化6】
【0019】
【化7】
【0020】
〔式(i) 及び(ii)中、Ra は多価アルコール又は多価フェノール残基、Rb は多価カルボン酸残基をそれぞれ示し、Rd は置換基を有していてもよいアルキレン基を示し、Re 、Rf 、及びRg は各々独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を示し、Rf とRg は両者がアルキル基のとき、相互に連結して環状構造を形成していてもよく、mは0〜10の整数、nは2〜6の整数をそれぞれ示す。〕
【0021】
ここで、式(i) 中のRa における多価アルコール又は多価フェノールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の脂肪族多価アルコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式多価アルコール、ピロカテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘキサフロロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)スルファイド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1−フェニル−1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)エタン、ピロガロール、フロログルシノール、1,1,1−トリス(4’−ヒドロキシフェニル)エタン等の多価フェノール、2,5−ジヒドロキシフラン、2,7−ジヒドロキシカルバゾール等の複素環式多価アルコール等が挙げられる。
【0022】
又、式(ii)中のRb における多価カルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の脂肪族多価カルボン酸、ヘキサビロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸等の脂環式多価カルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸等が挙げられる。
【0023】
式(i) 及び(ii)中のRd 、Re 、Rf 、及びRg の置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシ基、又はハロゲン原子等が挙げられ、Re は炭素数1〜5のアルキル基であるのが好ましく、Rf 及びRg は一方が水素原子、他方がメチル基であるのが好ましく、又、mは0〜3、nは2〜4であるのが好ましい。
【0024】
尚、前記一般式(i) で表される化合物は、一般的には、前記多価アルコール又は多価フェノールに、アセチレン又はハロゲン化アルキルビニルエーテルを反応させ、更に酢酸等の有機酸を付加反応させるか、或いは、予めハロゲン化アルキルビニルエーテルに酢酸等の有機酸を付加させたハロゲン化アルキルアシルオキシアルキルエーテルを反応させることにより、又、前記一般式(ii)で表される化合物は、前記多価カルボン酸に、アセチレン又はハロゲン化アルキルビニルエーテルを反応させ、更に酢酸等の有機酸を付加反応させるか、或いは、予めハロゲン化アルキルビニルエーテルに酢酸等の有機酸を付加させたハロゲン化アルキルアシルオキシアルキルエーテルを反応させることにより、それぞれ得られるものである。
【0025】
又、本発明における(B)成分としての、分子内に2個以上のアシルオキシアルコキシ基を有する化合物としては、下記一般式(iii) 、(iv)、又は(V) で表される化合物も好ましい。
【0026】
【化8】
【0027】
【化9】
【0028】
【化10】
【0029】
〔式(iii) 、(iv)、及び(V) 中、Rc は多価イソシアナート残基を示し、Rd 、Re 、Rf 、及びRg 、並びにnは、式(i) 及び(ii)におけると同様であり、mは1〜10の整数を示す。〕
【0030】
ここで、式(iii) 、(iv)、及び(V) 中のRc における多価イソシアナートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアナート、2,6−ジイソシアナートメチルカプロエート、ベンゼン−o−ジイソシアナート、ベンゼン−p−ジイソシアナート、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、1,4−ナフタレンジイソシアナート、1,5−ナフタレンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルジイソシアナート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアナート、3,3’−ジメトキシビフェニル−4,4’−ジイソシアナート、4,4’−ジフェニルヘキサフロロプロパンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルシクロペンチルジイソシアナート、4,4’−ジフェニルシクロヘキシルジイソシアナート、トリフェニルメタントリイソシアナート、2,4−トリレンジイソシアナートの2量体、ポリ(メチレンフェニルイソシアナート)、及び、これらの多価イソシアナートと多価アルコールとからなる末端NCOのウレタンプレポリマー等が挙げられる。
【0031】
式(iii) 、(iv)、及び(V) 中のRd 、Re 、Rf 、及びRg の置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ヒドロキシ基、又はハロゲン原子等が挙げられ、Re は炭素数1〜5のアルキル基であるのが好ましく、Rf 及びRg は一方が水素原子、他方がメチル基であるのが好ましく、又、mは1〜3、nは2〜4であるのが好ましい。
【0032】
尚、前記一般式(iii) で表される化合物は、一般的には、前記多価イソシアネートとヒドロキシアルキルビニルエーテルとの反応物に酢酸等の有機酸を付加反応させることにより、又、前記一般式(iv)で表される化合物は、前記多価イソシアネートとカルボキシアルキルビニルエーテルとの反応物に酢酸等の有機酸を付加反応させることにより、又、前記一般式(V) で表される化合物は、前記多価イソシアネートとアミノアルキルビニルエーテルとの反応物に酢酸等の有機酸を付加反応させることにより、それぞれ得られるものである。
【0033】
以上、前記一般式(i) 、(ii)、(iii) 、(iv)、及び(V) で表されるビニルオキシ基含有化合物の各具体例を以下に示す。尚、各具体例における「−W」は、アセチル基、プロピオニル基、又はブチリル基を表す。
【0034】
【化11】
【0035】
【化12】
【0036】
【化13】
【0037】
【化14】
【0038】
【化15】
【0039】
本発明のポジ型感光性組成物における(B)成分としての前記アシルオキシアルコキシ基含有化合物の含有割合は、0.5〜80重量%であるのが好ましく、0.5〜60重量%であるのが特に好ましく、1〜50重量%であるのが更に好ましい。
【0040】
本発明のポジ型感光性組成物には、前記(A)成分のアルカリ可溶性有機高分子物質及び前記(B)成分のアシルオキシアルコキシ基含有化合物の他に、画像露光光源の光を吸収して熱に変換する光熱変換物質(C)成分を含有することが好ましく、その光熱変換物質としては、吸収した光を熱に変換し得る化合物であれば特に限定されないが、波長域650〜1300nmの近赤外線領域の一部又は全部に吸収帯を有する有機又は無機の顔料や染料、有機色素、金属、金属酸化物、金属炭化物、金属硼化物等が挙げられる中で、光吸収色素が特に有効である。これらの光吸収色素は、前記波長域の光を効率よく吸収する一方、紫外線領域の光は殆ど吸収しないか、吸収しても実質的に感応せず、白色灯に含まれるような弱い紫外線によっては感光性組成物を変成させる作用のない化合物である。
【0041】
これらの光吸収色素としては、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子等を含む複素環等がポリメチン(−CH=)n で結合された、広義の所謂シアニン系色素が代表的なものとして挙げられ、具体的には、例えば、キノリン系(所謂、シアニン系)、インドール系(所謂、インドシアニン系)、ベンゾチアゾール系(所謂、チオシアニン系)、イミノシクロヘキサジエン系(所謂、ポリメチン系)、ピリリウム系、チアピリリウム系、スクアリリウム系、クロコニウム系、アズレニウム系等が挙げられ、中で、キノリン系、インドール系、ベンゾチアゾール系、イミノシクロヘキサジエン系、ピリリウム系、又はチアピリリウム系が好ましい。
【0042】
本発明においては、前記シアニン系色素の中で、キノリン系色素としては、特に、下記一般式(Ia) 、(Ib)、又は(Ic)で表されるものが好ましい。
【0043】
【化16】
【0044】
〔式(Ia)、(Ib)、及び(Ic)中、R1 及びR2 は各々独立して、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を示し、L1 は置換基を有していてもよいトリ、ペンタ、又はヘプタメチン基を示し、該ペンタ又はヘプタメチン基上の2つの置換基が互いに連結して炭素数5〜7のシクロアルケン環を形成していてもよく、キノリン環は置換基を有していてもよく、その場合、隣接する2つの置換基が互いに連結して縮合ベンゼン環を形成していてもよい。X- は対アニオンを示す。〕
【0045】
ここで、式(Ia)、(Ib)、及び(Ic)中のR1 及びR2 における置換基としては、アルコキシ基、フェノキシ基、ヒドロキシ基、又はフェニル基等が挙げられ、L1 における置換基としては、アルキル基、アミノ基、又はハロゲン原子等が挙げられ、キノリン環における置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、又はハロゲン原子等が挙げられる。
【0046】
又、インドール系、及びベンゾチアゾール系色素としては、特に、下記一般式(II)で表されるものが好ましい。
【0047】
【化17】
【0048】
〔式(II)中、Y1 及びY2 は各々独立して、ジアルキルメチレン基又は硫黄原子を示し、R3 及びR4 は各々独立して、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を示し、L2 は置換基を有していてもよいトリ、ペンタ、又はヘプタメチン基を示し、該ペンタ又はヘプタメチン基上の2つの置換基が互いに連結して炭素数5〜7のシクロアルケン環を形成していてもよく、縮合ベンゼン環は置換基を有していてもよく、その場合、隣接する2つの置換基が互いに連結して縮合ベンゼン環を形成していてもよい。X- は対アニオンを示す。〕
【0049】
ここで、式(II)中のR3 及びR4 における置換基としては、アルコキシ基、フェノキシ基、ヒドロキシ基、又はフェニル基等が挙げられ、L2 における置換基としては、アルキル基、アミノ基、又はハロゲン原子等が挙げられ、ベンゼン環における置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、又はハロゲン原子等が挙げられる。
【0050】
又、イミノシクロヘキサジエン系色素としては、特に、下記一般式(III) で表されるものが好ましい。
【0051】
【化18】
【0052】
〔式(III) 中、R5 、R6 、R7 、及びR8 は各々独立して、アルキル基を示し、R9 及びR10は各々独立して、置換基を有していてもよいアリール基、フリル基、又はチエニル基を示し、L3 は置換基を有していてもよいモノ、トリ、又はペンタメチン基を示し、該トリ又はペンタメチン基上の2つの置換基が互いに連結して炭素数5〜7のシクロアルケン環を形成していてもよい。X- は対アニオンを示す。〕
【0053】
ここで、式(III) 中のR9 及びR10として具体的には、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−フリル基、3−フリル基、2−チエニル基、3−チエニル基等が挙げられ、それらの置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基、ヒドロキシ基、又はハロゲン原子等が挙げられ、L3 における置換基としては、アルキル基、アミノ基、又はハロゲン原子等が挙げられる。
【0054】
又、ピリリウム系、及びチアピリリウム系色素としては、特に、下記一般式(IVa) 、(IVb) 、又は(IVc) で表されるものが好ましい。
【0055】
【化19】
【0056】
〔式(IVa) 、(IVa) 、及び(IVc) 中、Y3 及びY4 は各々独立して、酸素原子又は硫黄原子を示し、R11、R12、R13、及びR14は各々独立して、水素原子又はアルキル基、又は、R11とR13、及びR12とR14が互いに連結して炭素数5又は6のシクロアルケン環を形成していてもよく、L4 は置換基を有していてもよいモノ、トリ、又はペンタメチン基を示し、該トリ又はペンタメチン基上の2つの置換基が互いに連結して炭素数5〜7のシクロアルケン環を形成していてもよく、ピリリウム環及びチアピリリウム環は置換基を有していてもよく、その場合、隣接する2つの置換基が互いに連結して縮合ベンゼン環を形成していてもよい。X- は対アニオンを示す。〕
【0057】
ここで、式(IVa) 、(IVa) 、及び(IVc) のL4 における置換基としては、アルキル基、アミノ基、又はハロゲン原子等が挙げられ、ピリリウム環及びチアピリリウム環における置換基としては、フェニル基、ナフチル基等のアリール基等が挙げられる。
【0058】
尚、前記一般式(Ia 〜c)、(II)、(III) 、及び(IVa〜c)における対アニオンX- としては、例えば、Cl- 、Br- 、I- 、ClO4 - 、PF6 - 、及び、BF4 - 、BCl4 - 等の無機硼酸等の無機酸アニオン、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、酢酸、及び、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、メトキシフェニル、ナフチル、ジフルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、チエニル、ピロリル等の有機基を有する有機硼酸等の有機酸アニオンを挙げることができる。これらの中で、硼酸アニオンを対イオンに有する色素は、塗布溶剤に対する溶解性に優れるので、低沸点の溶剤の使用が可能となること等から、好ましい。
【0059】
以上、前記一般式(Ia 〜c)で表されるキノリン系色素、前記一般式(II)で表されるインドール系又はベンゾチアゾール系色素、前記一般式(III) で表されるイミノシクロヘキサジエン系色素、及び前記一般式(IVa〜c)で表されるピリリウム系又はチアピリリウム系色素の各具体例を以下に示す。
【0060】
【化20】
【0061】
【化21】
【0062】
【化22】
【0063】
【化23】
【0064】
【化24】
【0065】
【化25】
【0066】
【化26】
【0067】
【化27】
【0068】
【化28】
【0069】
【化29】
【0070】
本発明のポジ型感光性組成物における(C)成分としての前記光熱変換物質の含有割合は、0〜70重量%であるのが好ましく、1〜60重量%であるのが特に好ましく、2〜50重量%であるのが更に好ましい。
【0071】
尚、本発明のポジ型感光性組成物には、前記(A)成分のアルカリ可溶性有機高分子物質、及び前記(B)成分のアシルオキシアルコキシ基含有化合物、或いは更に前記(C)成分の光熱変換物質の他に、露光部と非露光部のアルカリ現像液に対する溶解性の差を増大させる目的で、前記(A)成分のアルカリ可溶性有機高分子物質と水素結合を形成して該高分子物質の溶解性を低下させる機能を有し、かつ、近赤外領域の光を殆ど吸収せず、近赤外領域の光で分解されない溶解抑止剤(D)成分が含有されていてもよい。
【0072】
その溶解抑止剤としては、例えば、本願出願人による特願平9−205789号明細書に詳細に記載されているスルホン酸エステル、燐酸エステル、芳香族カルボン酸エステル、芳香族ジスルホン、カルボン酸無水物、芳香族ケトン、芳香族アルデヒド、芳香族アミン、芳香族エーテル等、同じく特願平9−291880号明細書に詳細に記載されている、ラクトン骨格、N,N−ジアリールアミド骨格、ジアリールメチルイミノ骨格を有する酸発色性色素、同じく特願平9−301915号明細書に詳細に記載されている、ラクトン骨格、チオラクトン骨格、スルホラクトン骨格を有する塩基発色性色素、同じく特願平9−331512号明細書に詳細に記載されている非イオン性界面活性剤等を挙げることができる。中で、ラクトン骨格を有する酸発色性色素が好ましい。
【0073】
本発明のポジ型感光性組成物における(D)成分としての前記溶解抑止剤の含有割合は、0〜50重量%であるのが好ましく、0〜30重量%であるのが特に好ましく、0〜20重量%であるのが更に好ましい。
【0074】
又、本発明のポジ型感光性組成物には、必要に応じて、例えば、ビクトリアピュアブルー(42595)、オーラミンO(41000)、カチロンブリリアントフラビン(ベーシック13)、ローダミン6GCP(45160)、ローダミンB(45170)、サフラニンOK70:100(50240)、エリオグラウシンX(42080)、ファーストブラックHB(26150)、No.120/リオノールイエロー(21090)、リオノールイエローGRO(21090)、シムラーファーストイエロー8GF(21105)、ベンジジンイエロー4T−564D(21095)、シムラーファーストレッド4015(12355)、リオノールレッドB4401(15850)、ファーストゲンブルーTGR−L(74160)、リオノールブルーSM(26150)等の顔料又は染料等の着色剤が含有されていてもよい。尚、ここで、前記の括弧内の数字はカラーインデックス(C.I.)を意味する。
本発明のポジ型感光性組成物における前記着色剤の含有割合は、0〜50重量%であるのが好ましく、2〜30重量%であるのが特に好ましい。
【0075】
本発明のポジ型感光性組成物には、前記成分以外に、例えば、塗布性改良剤、現像性改良剤、密着性改良剤、感度改良剤、感脂化剤等の通常用いられる各種の添加剤が更に10重量%以下、好ましくは0.1〜5重量%の範囲で含有されていてもよい。
【0076】
本発明の前記ポジ型感光性組成物は、通常、前記各成分を適当な溶媒に溶解した溶液として支持体表面に塗布した後、加熱、乾燥することにより、支持体表面に感光性組成物層が形成されたポジ型感光性平版印刷版とされる。
【0077】
ここで、その溶媒としては、使用成分に対して十分な溶解度を持ち、良好な塗膜性を与えるものであれば特に制限はないが、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のプロピレングリコール系溶媒、酢酸ブチル、酢酸アミル、酪酸エチル、酪酸ブチル、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル−2−ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル等のエステル系溶媒、ヘプタノール、ヘキサノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール等のアルコール系溶媒、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン等のケトン系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の高極性溶媒、あるいはこれらの混合溶媒、更にはこれらに芳香族炭化水素を添加したもの等が挙げられる。溶媒の使用割合は、感光性組成物の総量に対して、通常、重量比で1〜20倍程度の範囲である。
【0078】
又、その塗布方法としては、従来公知の方法、例えば、回転塗布、ワイヤーバー塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ロール塗布、ブレード塗布、及びカーテン塗布等を用いることができる。塗布量は用途により異なるが、乾燥膜厚として、通常、0.3〜7μm、好ましくは0.5〜5μm、特に好ましくは1〜3μmの範囲とする。尚、その際の乾燥温度としては、例えば、60〜170℃程度、好ましくは70〜150℃程度、乾燥時間としては、例えば、5秒〜10分間程度、好ましくは10秒〜5分間程度が採られる。
尚、本発明の効果を一層確実ならしめるために、例えば、40〜120℃程度、好ましくは40〜70℃程度の温度で、5分〜100時間程度、好ましくは30分〜75時間程度の加熱処理を施すことが好ましい。
【0079】
又、その支持体としては、アルミニウム、亜鉛、銅、鋼等の金属板、アルミニウム、亜鉛、銅、鉄、クロム、ニッケル等をメッキ又は蒸着した金属板、紙、樹脂を塗布した紙、アルミニウム等の金属箔を貼着した紙、プラスチックフィルム、親水化処理したプラスチックフィルム、及びガラス板等が挙げられる。中で、好ましいのはアルミニウム板であり、塩酸又は硝酸溶液中での電解エッチング又はブラシ研磨による砂目立て処理、硫酸溶液中での陽極酸化処理、及び必要に応じて封孔処理等の表面処理が施されたアルミニウム板がより好ましい。又、支持体表面の粗さとしては、JIS B0601に規定される平均粗さRa で、通常、0.3〜1.0μm、好ましくは0.4〜0.8μm程度とする。
【0080】
本発明でのポジ型感光性組成物層を画像露光する光源としては、主として、HeNeレーザー、アルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、HeCdレーザー、半導体レーザー、ルビーレーザー等のレーザー光源が挙げられるが、特に、光を吸収して発生した熱により画像形成させる場合には、650〜1300nmの近赤外レーザー光線を発生する光源が好ましく、例えば、ルビーレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー、LED等の固体レーザーを挙げることができ、特に、小型で長寿命な半導体レーザーやYAGレーザーが好ましい。これらの光源により、通常、走査露光した後、現像液にて現像し画像が形成される。
【0081】
尚、レーザー光源は、通常、レンズにより集光された高強度の光線(ビーム)として感光性組成物層表面を走査するが、それに感応する本発明での感光性組成物層の感度特性(mJ/cm2 )は受光するレーザービームの光強度(mJ/s・cm2 )に依存することがある。ここで、レーザービームの光強度は、光パワーメーターにより測定したレーザービームの単位時間当たりのエネルギー量(mJ/s)を感光性組成物層表面におけるレーザービームの照射面積(cm2 )で除することにより求めることができる。レーザービームの照射面積は、通常、レーザーピーク強度の1/e2 強度を越える部分の面積で定義されるが、簡易的には相反則を示す感光性組成物を感光させて測定することもできる。
本発明において、光源の光強度としては、2.0×106 mJ/s・cm2 以上とすることが好ましく、1.0×107 mJ/s・cm2 以上とすることが特に好ましい。光強度が前記範囲であれば、本発明でのポジ型感光性組成物層の感度特性を向上させ得る、走査露光時間を短くすることができ実用的に大きな利点となる。
【0082】
本発明の前記ポジ型感光性平版印刷版を画像露光したポジ型感光体の現像に用いる現像液としては、例えば、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム、珪酸アンモニウム、メタ珪酸ナトリウム、メタ珪酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、第二燐酸ナトリウム、第三燐酸ナトリウム、第二燐酸アンモニウム、第三燐酸アンモニウム、硼酸ナトリウム、硼酸カリウム、硼酸アンモニウム等の無機アルカリ塩、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、モノブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン等の有機アミン化合物の0.1〜5重量%程度の水溶液からなるアルカリ現像液を用いる。中で、無機アルカリ塩である珪酸ナトリウム、珪酸カリウム等のアルカリ金属の珪酸塩が好ましい。
尚、現像液には、必要に応じて、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤や、アルコール等の有機溶媒を加えることができる。
【0083】
尚、現像は、浸漬現像、スプレー現像、ブラシ現像、超音波現像等により、通常、好ましくは10〜50℃程度、特に好ましくは15〜45℃程度の温度でなされる。
【0084】
【作用】
本発明の感光性組成物がポジ型画像形成性を高め得る理由の詳細は不明であるが、アシルオキシアルコキシ基含有化合物中の少なくとも一部のアシルオキシアルコキシ基が、フェノール性水酸基含有アルカリ可溶性有機高分子物質に水素結合或いは共有結合により架橋構造を形成せしめ、光照射によりその架橋構造が緩和又は解離することによって、露光部においてはアルカリ現像液に対する十分な抜け性が発現し、一方、非露光部においては十分な残膜率を保持し得ることになると共に、耐スクラッ性や耐刷性をも付与し得ているものと推定される。
【0085】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0086】
実施例1
アルミニウム板(厚さ0.24mm)を、5重量%の水酸化ナトリウム水溶液中で60℃で1分間脱脂処理を行った後、0.5モル/リットルの濃度の塩酸水溶液中で、温度28℃、電流密度60A/dm2 、処理時間40秒の条件で電解エッチング処理を行った。次いで4重量%水酸化ナトリウム水溶液中で60℃、12秒間のデスマット処理を施した後、20重量%硫酸溶液中で、温度20℃、電流密度3.5A/dm2 、処理時間1分の条件で陽極酸化処理を行った。更に、80℃の熱水で20秒間熱水封孔処理を行い、平版印刷版支持体用のアルミニウム板を作製した。表面粗度計(小坂研究所社製、「SE−3DH」)によるこの板の平均粗さRaの値は0.60μmであった。
【0087】
得られたアルミニウム板支持体表面に、(A)成分として、フェノール:m−クレゾール:p−クレゾールの混合割合がモル比で20:50:30の混合フェノール類と、ホルムアルデヒドとの重縮合体からなるノボラック樹脂(MW 4000)100重量部、(B)成分として前記具体例(i-2) で示したアシルオキシアルコキシ基含有化合物5重量部、(C)成分として前記具体例(II-9)で示したインドール系色素4重量部、(D)成分としてクリスタルバイオレットラクトン7重量部を、シクロヘキサノン900重量部に溶解した塗布液をワイヤーバーを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥させた後、55℃で16時間、加熱処理することにより、塗膜量2.5g/m2 のポジ型感光性組成物層を有するポジ型感光性平版印刷版を作製した。
【0088】
得られたポジ型感光性平版印刷版につき、830nmの半導体レーザーを光源とする露光装置(クレオ社製、「Trend Setter 3244T」)を用いて各種の露光エネルギーで175線、3〜97%の網点画像を画像露光し、次いで、珪酸ナトリウム1重量%と両性界面活性剤(花王社製、「アンヒトール24B」)0.01重量%とを含有させたアルカリ現像液に28℃で40秒間浸漬した後、スポンジで5回擦り現像を行った。
そのときの感度、及び、得られた平版印刷版の残膜率、耐スクラッチ性、及び耐刷性を以下の方法で評価し、結果を表1に示した。
【0089】
感度
3%の網点画像が再現する露光量(mJ/cm2 )を求めた。
残膜率
前記感度の露光量で画像露光し、28℃で60秒間浸漬した後、スポンジで5回擦り現像を行ったときの、画像部における1m2 当たりの塗膜量の残存率を求め、以下の基準で残膜率を評価した。
A:残存率95%以上。
B:残存率90%以上、95%未満。
C:残存率70%以上、90%未満。
D:残存率70%未満。
【0090】
耐スクラッチ性
前記感度の露光量で画像露光し、28℃で60秒間浸漬した後、スポンジで5回擦り現像を行ったときの、25cm2 の画像部表面を目視観察し、線状の擦り傷の有無を以下の基準で評価した。
A:擦り傷全くなし。
B:擦り傷5本未満。
C:擦り傷5本以上20本未満。
D:擦り傷20本以上。
【0091】
耐刷性
前記感度の露光量で画像露光し現像した平版印刷版について、印刷機として三菱重工業社製「ダイヤ 1F−2」)、湿し水として日研化学社製「アストロNo.1 マーク2」の1重量%水溶液(pH5.0、10℃)、インキとして東洋インキ社製「ハイエコー紅」、印刷紙として王子製紙社製「OK特アート」をそれぞれ用いて、5000枚印刷した後、印刷版上のインキをプレートクリーナーで除去し、表面にコニカ社製ガム「SGW」を塗布し、12時間放置した後、再度、45000枚まで印刷するときの印刷可能な枚数から以下の基準で耐刷性を評価した。
A:40000枚以上。
B:30000枚以上40000枚未満。
C:10000枚以上30000枚未満。
D:10000枚未満。
【0092】
実施例2〜7、比較例1〜2
感光性組成物層における(B)成分及び(D)成分として表1に示す化合物を用い或いは用いなかった外は、実施例1と同様にして、ポジ型感光性平版印刷版を作製し現像して、感度、残膜率、耐スクラッチ性、及び耐刷性を評価し、結果を表1に示した。
【0093】
【表1】
【0094】
【発明の効果】
本発明によれば、高感度であって、画像部と非画像部とのコントラストに優れ、画像部の残膜率も十分に保持されると共に、耐スクラッチ性にも優れ、又、十分な耐刷力を有するポジ型感光性組成物及びポジ型感光性平版印刷版を提供することができる。
Claims (6)
- 下記の(A)成分、及び(B)成分を含有してなることを特徴とするポジ型感光性組成物。
(A)フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性有機高分子物質
(B)分子内に2個以上のアシルオキシアルコキシ基を有する化合物であって、下記一般式 (i) 、 (iii) 、 (iv) 又は (v) で表される化合物
- 更に、画像露光光源の光を吸収して熱に変換する光熱変換物質(C)成分を含有する請求項1記載のポジ型感光性組成物。
- (C)成分が近赤外線吸収能を有するシアニン系色素である請求項2記載のポジ型感光性組成物。
- (A)成分がノボラック樹脂である請求項1乃至3のいずれかに記載のポジ型感光性組成物。
- 更に、溶解抑止剤(D)成分を含有する請求項1乃至4のいずれかに記載のポジ型感光性組成物。
- 支持体表面に、請求項1乃至5のいずれかに記載のポジ型感光性組成物からなる層が形成されてなることを特徴とするポジ型感光性平版印刷版。
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