JP2004101546A - 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 - Google Patents
電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004101546A JP2004101546A JP2002258950A JP2002258950A JP2004101546A JP 2004101546 A JP2004101546 A JP 2004101546A JP 2002258950 A JP2002258950 A JP 2002258950A JP 2002258950 A JP2002258950 A JP 2002258950A JP 2004101546 A JP2004101546 A JP 2004101546A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- polymerizable functional
- group
- functional group
- substituent
- electrophotographic
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Withdrawn
Links
Images
Landscapes
- Photoreceptors In Electrophotography (AREA)
Abstract
【課題】長期にわたりその表面性が低下することのない高耐久、高安定な電子写真感光体の提供。
【解決手段】放射線を利用し、連鎖重合性官能基を有する化合物を感光層構成物質を起点としグラフト重合させることで、感光体の表面改質を行う。
【選択図】 図1
【解決手段】放射線を利用し、連鎖重合性官能基を有する化合物を感光層構成物質を起点としグラフト重合させることで、感光体の表面改質を行う。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真感光体、電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置に関し、詳しくは特定の化合物を放射線を利用しグラフト重合させた感光層を有する電子写真感光体、電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真感光体に用いられる光導電材料としては、セレン、硫化カドミウムおよび酸化亜鉛などの無機材料が知られていた。他方、有機材料であるポリビニルカルバゾール、フタロシアニン及びアゾ顔料などは高生産性や無公害性などの利点が注目され、無機材料と比較して光導電特性や耐久性などの点で劣る傾向にあるものの、広く用いられるようになってきた。これらの電子写真感光体は電気的および機械的特性の双方を満足するために電荷発生層と電荷輸送層を積層した機能分離型の感光体として利用される場合が多い。
【0003】
一方当然のことながら電子写真感光体には適用される電子写真プロセスに応じた感度、電気的特性、そして光学的特性を備えていることが要求される。また特に繰り返し使用される感光体にあっては、その感光体表面には帯電、画像露光、トナー現像、紙への転写、クリーニング処理といった電気的、機械的外力が直接加えられるため、それらに対する耐久性や安定性が要求される。具体的には、摺擦による表面の磨耗や傷の発生に対する耐久性、帯電時のオゾンや窒素酸化物に対する耐表面劣化性などが要求される。加えて、感光体へのトナー付着防止能や優れたクリーニング性、転写性を付与させるために、感光体表面の低エネルギー化が必要とされる。
【0004】
一般に有機感光体は光導電材料とベースとなるバインダー樹脂から構成されるが、先の表面特性はバインダー樹脂の特性によるところが大きい。近年では、表面性や耐削れ性/耐傷性などを総合的にある程度満足させる材料として、ポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂等が用いられている。これらはカーボネート結合やエステル結合などの極性基を有しており、その機械的強度は優れているものの逆に表面自由エネルギーは決して低くはない。すなわち滑り性や転写性等には不利な方向へはたらく。このような特性を改良するために、感光層に潤滑性を有する材料、例えばフッ素系、シリコーン系の化合物などの使用が考えられる。しかし、これらの化合物を単独で感光体の表層として用いるには成膜性や機械的強度、光導電材料との相溶性が十分ではない。また、感光層に潤滑材として添加する場合においても、これらの材料はそもそも感光層に用いられている樹脂等との相溶性が低いため、塗工性が非常に悪化したり、成膜時あるいは成膜後に層分離するなどの問題があった。またその高い表面移行性により感光体のごく表層のみに高濃度で存在する傾向にあり、初期は高潤滑性を示すものの、ある程度耐久により感光体が削れてくるとその潤滑性が低減するなどして、十分な効果が得られないなどの問題点がある。
【0005】
一方、表面自由エネルギーを低下させる方法として極性基を有しない樹脂、例えばポリオレフイン系樹脂やフッ素系樹脂等の使用が考えられるが、これらの樹脂はその強度という点において、十分なものが未だ得られておらず、また一般的な感光体製造方法である浸漬塗布法に対し要求される溶剤溶解性の点においても十分ではないため、実用化にはいたっていない。
【0006】
さらに近年では、感光体の長寿命化を目的とし、感光層上に保護層を設けたり、表面層に硬化/架橋性の樹脂を用いたりするなどの拭みがなされているが、これらについても先に述べた内容と同様の問題点が存在し、解決には至っていないのが現状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、繰り返し使用時にも安定して優れた電子写真特性を示し、長期間にわたりその表面性が低下することのない高耐久、高安定な電子写真感光体およびこの電子写真感光体の製造方法を提供することである。また該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ並びに電子写真装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、連鎖重合性官能基を有する化合物が放射線により感光層の構成成分を起点としグラフト重合したものを含むことを特徴とする。
【0009】
詳しくは、導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、該電子写真感光体が放射線照射後に、少なくとも1つ以上の連鎖重合性官能基を有する化合物と接触させたものであることを特徴とする電子写真感光体である。また導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、該電子写真感光体が少なくとも1つ以上の連鎖重合性官能基を有する化合物と接触と同時あるいは接触後に放射線照射させたことを特徴とする電子写真感光体である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は放射線グラフト重合を利用し、電子写真感光体を改質するものである。
【0011】
以下に本発明の詳細を説明する。
【0012】
まず、本発明における連鎖重合性官能基について説明する。本発明における連鎖重合とは、高分子物の生成反応を大きく連鎖重合と逐次重合に分けた場合の前者の重合反応形態を示し、詳しくは例えば技報堂出版三羽忠広著の「基礎合成樹脂の化学(新版)」1995年7月25日(1版8刷)P.24に説明されているように、その形態が主にラジカルあるいはイオンをなどの中間体を経由して反応が進行する不飽和重合、開環重合そして異性化重合などのことをいう。請求項に記載の連鎖重合性官能基とは、前述の反応形態が可能な官能基を意味するが、ここではその大半を占め応用範囲の広い不飽和重合性官能基の具体例を示す。
【0013】
不飽和重合とは、ラジカル、イオンなどによって不飽和基、例えばC=C、C≡C、C=O、C=N、C≡Nなどが重合する反応であるが、主にはC=Cによる場合が大部分である。不飽和重合性官能基の具体例を表1に示すがこれらに限定されるものではない。
【0014】
表中Rは置換基を有しても良いメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、置換基を有しても良いベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基および置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、アンスリル基等のアリール基または水素原子等を示す。
【0015】
上記で示したような本発明に関わる連鎖重合性官能基の中でも、下記一般式(1)で示される不飽和重合性官能基を有するものが反応性その他の点で好ましい。
【外6】
【0016】
(式中、Xは水素原子、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、置換基を有しても良いメチル基、エチル基。プロピル基、ブチル基等のアルキル基、置換基を有しても良いベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、フルフリル基、チエニル基等のアラルキル基、置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、ピレニル基、チオフェニル基、フリル基等のアリール基、CN基、ニトロ基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、−COOR1、CONR2R3を示す。
【0017】
Yは置換基を有しても良い2価のフェニレン、ナフチレン、アントラセニレン等のアリーレン基、置換基を有しても良いメチレン、エチレン、ブチレン等の2価のアルキレン基、−COO−、−CH2−、−O−、−OO−、−S−または−CONR4−で示される。
【0018】
R1〜R4は水素原子、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、置換基を有しても良いメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、置換基を有しても良いベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基及び置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、アンスリル基等のアリール基を示し、R2とR3は互いに同一であっても異なっても良い。
【0019】
X及びY中で有してもよい置換基としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子またはニトロ基またはシアノ基または水酸基またはメチル基、エチル基。プロピル基、ブチル基等のアルキル基またはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基またはフェノキシ基、ナフトキシ基等のアリールオキシ基またはベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、フルフリル基、チエニル基等のアラルキル基またはフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、ピレニル基等のアリール基等が挙げられる。
【0020】
Zは置換基を有しても良い有機残基を示す。ここでいう有機残基Zの意味は、グラフト重合させて機能を発現しうるべき化合物と連鎖重合性官能基とを接続させるための化学結合基であり、合成方法その他により任意に選択される。具体的な例としては置換基を有しても良いフェニレン、ナフタレンなどの2価のアリーレン基、置換基を有しても良いメチレン、エチレン、ブチレン等の2価のアルキレン基、−COO−、−CH2−、一O−、−OO−、−S−または−CONR5−などである。R5は水素原子、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、置換基を有しても良いメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、置換基を有しても良いベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基及び置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、アンスリル基等のアリール基を示す。
【0021】
aおよびbはそれぞれ独立に0以上の整数を示す。またaおよびbが2以上の整数である場合のYおよびZはそれぞれが同一でも異なっていてもよい。)
さらに上記一般式(1)の中でも、さらに好ましい連鎖重合性官能基としては、下記一般式(2)が挙げられる。
【外7】
【0022】
(ただしVは水素原子またはメチル基、Wは置換基を有しても良い2価のアリーレン基または置換基を有しても良い2価のアルキレン基、−COO−、−O−を示す。cおよびdはそれぞれ独立に0以上の整数を示す。またcおよびdが2以上の整数である場合WおよびZはそれぞれが同一でも異なっていてもよい。)
また上記一般式(2)の中では、特に下記一般式(3)〜(8)で示されるものが好ましい。
【外8】
(ただしe〜jはそれぞれ独立に0以上の整数を示し、2以上の場合にZはそれぞれが同一でも互いに異なっていても良い。)
以上で述べたような連鎖重合性官能基は、後述するようなグラフト重合させて機能を発現させる化合物に対して少なくとも1つ以上結合しておりその結合位置は任意である。またこれら連鎖重合性官能基は2つ以上結合していても良く、それらの種類/組み合わせは任意である。
【0023】
さらに、連鎖重合性官能基を有する化合物を2種類以上使用することが出来る。
【0024】
次に放射線を利用したグラフト重合について説明する。
【0025】
一般にグラフト重合とは1つの線状ポリマーを幹としこれに異なったポリマーを枝として化学的に結合させることを言い、ポリマーの改質手段として広く研究されている。その中でも特に放射線を利用したグラフト重合とは、ベースとなる幹ポリマーへの放射線照射により生成したラジカルやイオンを開始点とし、枝とすべきモノマーを連鎖重合させることが特徴である。放射線グラフト重合では、幹ポリマーと枝とすべきモノマーを同時に放射線照射する方法(同時照射法)と、幹ポリマーを放射線照射下後にモノマーを接触させる方法(前照射法)の2通りがあり、その用途に応じて使い分けられている。本発明におけるグラフト化とは、広義の意味で、幹ポリマーとは線状ポリマーに限らず、3次元架橋系ポリマー、オリゴマー、低分子化合物など感光層に含有されている化合物すべてを開始点とする連鎖重合と定義する。また枝とすべきモノマーは、改質機能を有し、少なくとも1つ以上の連鎖重合性官能基を有する化合物を広義の意味とし、モノマーに限らずオリゴマーその他の化合物をすべて含む。具体的な連鎖重合性官能基を有する化合物例を表2に示すが、改質機能を有する化合物と連鎖重合性官能基の組み合わせ、結合位置、官能基数等はすべて任意であり、また改質機能を有する部位と連鎖重合性官能基との化学結合部はこのほかにも任意で選択出来る。
【0026】
電子写真感光体は数層の積層構成をとるのが一般的であるが、各層間における塗工性、接着性、電荷授受能はその界面状態に大きく左右されることより、各局間の表面改質として本発明のグラフト重合を利用出来うる。また主には最表面層の改質に利用することが出来る。
【0027】
次に電子写真感光体における放射線グラフト重合について詳細を説明する。
【0028】
放射線グラフト重合を電子写真感光体に応用する例としてまず挙げられるのはその最表面性改質である。先に述べたように感光体の表面自由エネルギーを低下させる手段として効率的に利用できる。具体的には最終層まで形成された電子写真感光体を放射線照射し、グラフト重合開始点となるラジカルを発生させる。その後少なくとも1つ以上の連鎖重合性官能基を有し表面自由エネルギーを低下させる化合物(表2の表面性改良)を接触させ連鎖重合反応を進行させる。あるいは先の化合物をまず電子写真感光体に接触させた後に放射線照射を行い連鎖重合を進行させることも可能である。
【0029】
また別の利用方法としては、例えば積層感光体における電荷発生層と電荷輸送層間の電荷授受能を高めるために用いられることが出来る。一般に十分な電子写真感度を得るために電荷発生材料と電荷輸送材料が十分に接触またはある至近距離内に存在する必要があるが、これは感光体を構成材料である電気的に不活性なバインダー樹脂によって阻害される。これを解決する手段として電荷発生層に最初から電荷輸送材料を少量添加するなどの手段が用いられる場合があるが、この場合電荷発生層において電荷輸送物質が析出したり、電荷発生層用塗工液における電荷発生物質の分散性の低下や液劣化などの問題点が避けられない。そこで本発明においては電荷発生層の成膜後に放射線を照射し、電荷輸送能を有し且つ連鎖重合性官能基を有する化合物(表2の電荷輸送能改良)を接触させた後に、電荷輸送層を形成することで先の問題点が解決出来る。
【0030】
さらに光導電層の下層に設けられる下引き層や中間層などの改質にも応用が可能である。
【0031】
本発明における放射線とはα.β.γ線、電子線、短波長紫外線などの電離作用を持つ電離性放射線をいうが、その中でも電子加速器を利用した電子線が反応性、生産性、安全性などの面から非常に有効である。
【0032】
本発明の感光体の構成は、導電性支持体上に感光層として電荷発生物質を含有する電荷発生層および電荷輸送物質を含有する電荷輸送層をこの順に積層した構成あるいは逆に積層した構成、また電荷発生物質と電荷輸送物質を同一層中に分散した単層からなる構成のいずれの構成をとることも可能である。前者の積層型においては電荷輸送層が二層以上の構成、また後者の単層型においては電荷発生物質と電荷輸送物質を同一に含有する感光層上にさらに電荷輸送層を構成してもよく、さらには電荷発生層あるいは電荷輸送層上に保護層の形成も可能である。また光導電層以外に、下引き層や中間層などの形成も可能である。ただし、電子写真感光体としての特性、特に残留電位などの電気的特性および耐久性の点より、電荷発生層/電荷輸送層をこの順に積層した機能分離型の感光体構成が好ましい。
【0033】
次に本発明による電子写真感光体の製造方法を具体的に示す。
【0034】
電子写真感光体の支持体としては導電性を有するものであればよく、例えばアルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛およびステンレスなどの金属や合金をドラムまたはシート状に成形したもの、アルミニウムおよび銅などの金属箔をプラスチックフィルムにラミネートしたもの、アルミニウム、酸化インジウムおよび酸化錫などをプラスチックフィルムに蒸着したもの、導電性物質を単独または結着樹脂とともに塗布して導電層を設けた金属、またプラスチックフィルムおよび紙などが挙げられる。
【0035】
本発明においては導電性支持体の上にはバリアー機能と接着機能をもつ下引き層を設けることができる。
【0036】
下引き層は感光層の接着性改良、塗工性改良、支持体の保護、支持体上の欠陥の被覆、支持体からの電荷注入性改良、また感光層の電気的破壊に対する保護などのために形成される。下引き層の材料としてはポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、カゼイン、ポリアミド、N−メトキシメチル化6ナイロン、共重合ナイロン、にかわおよびゼラチンなどがしられている。
【0037】
これらはそれぞれに適した溶剤に溶解されて支持体上に塗布される。
【0038】
その際の膜厚としては0.1〜2μmが好ましい。
【0039】
本発明の感光体が機能分離型の感光体である場合には電荷発生層および電荷輸送層を積層する。電荷発生層に用いる電荷発生物質としては、セレン−テルル、ピリリウム、チアピリリウム系染料、また各種の中心金属および結晶系、具体的には例えばα、β、γ、εおよびX型などの結晶型を有するフタロシアニン化合物、アントアントロン顔料、ジベンズビレンキノン顔料、ピラントロン顔料、トリスアゾ顔料、ジスアゾ顔料、モノアゾ顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料、非対称キノシアニン顔料、キノシアニンおよび特開昭54−143645号公報に記載のアモルファスシリコーンなどが挙げられる。
【0040】
機能分離型感光体の場合、電荷発生層は前記電荷発生物箕を0.3〜4倍量の結着樹脂および溶剤とともにホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライクーおよびロールミルなどの方法で良く分散し、分散液を塗布し、乾燥されて形成されるか、または前記電荷発生物質の蒸着膜など、単独組成の膜として形成される。その膜厚は5μm以下であることが好ましく、特に0.1〜2μmの範囲であることが好ましい。
【0041】
結着樹脂を用いる場合の例は、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、などのビニル化合物の重合体および共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、セルロース樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0042】
電荷輸送層は適当な電荷輸送物質、例えばポリ−N−ビニルカルバソール、ポリスチリルアントラセンなどの複素環や縮合多環芳香族を有する高分子化合物や、ピラゾリン、イミダゾール、オキサゾール、トリアゾール、カルバゾールなどの複素環化合物、トリフェニルメタンなどのトリアリールアルカン誘導体、トリフェニルアミンなどのトリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、N−フェニルカルバゾール誘導体、スチルベン誘導体、ヒドラゾン誘導体などの低分子化合物などを適当な結着樹脂(前述の電荷発生層用樹脂の中から選択できる)とともに溶剤に分散/溶解した溶液を後述の公知の方法によって塗布、乾燥して形成することができる。
【0043】
この場合の電荷輸送物質と結着樹脂の比率は、両者の全重量を100とした場合に電荷輸送物質の重量が20〜100が望ましく、好ましくは40〜100の範囲で適宜選択される。電荷輸送物質の量がそれ以下であると、電荷輸送能が低下し、感度低下および残留電位の上昇などの問題点が生ずる。一方電荷輸送材料の含有量が多すぎると塗膜の機械的強度が低下し耐久性が大幅にダウンするので、注意が必要である。電荷輸送層上にさらに保護層を設ける場合や硬化性の材料を用いて3次元架橋膜を構成した場合にはこの限りではない。電荷輸送層の膜厚は、が1〜50μmとなるように決定され、好ましくは5〜30μmの範囲で調整される。
【0044】
単層感光体の場合、感光層の膜厚は8〜40μmであることが好ましく、特には12〜30μmであることが好ましい。また、電荷発生物賞や電荷輸送物質などの光導電性物質の含有量は感光層の全重量に対し、20〜80重量%であることが好ましく、特には30〜70重量%であることが好ましい。
【0045】
これらの溶液を塗布する方法は、例えば浸漬コーティング法、スプレイコーティング法、カーテンコーティング法およびスピンコーティング法などが知られているが、効率性/生産性の点からは浸漬コーティング法が好ましい。また蒸着、プラズマその他の公知の製膜方法が適宜選択できる。
【0046】
本発明における感光層には、各種添加剤を添加することができる。
【0047】
該添加剤とは酸化防止剤および紫外線吸収剤などの劣化防止剤や、フッ素原子含有樹脂微粒子などの潤剤その他である。
【0048】
次に電子線照射について説明する。
【0049】
電子線照射をする場合、加速器としてはスキャニング型、エレクトロカーテン型、ブロードビーム型、パルス型およびラミナー型などいずれの形式も使用することが出来る。電子線を照射する場合に、本発明の感光体においては電気特性および耐久性能を発現させる上で照射条件が非常に重要である。本発明において、加速電圧は250KV以下が好ましく、最適には150KV以下である。また照射線量は好ましくは0.5Mradから100Mradの範囲、より好ましくは1Mradから50Mradの範囲である。加速電圧が上記を越えると感光体特性に対する電子線照射のダメージが増加する傾向にある。また、照射線量が上記範囲よりも少ない場合には連鎖重合の開始点となるラジカル生成量が少なく改質に至るまでのグラフト化が十分ではない。また線量が多い場合には感光体特性の劣化がおこりやすいので注意が必要である。
【0050】
図1に本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成を示す。図において、1はドラム上の本発明の電子写真感光体であり、軸2を中止に矢印方向に所定の周速度で回転駆動されるこ感光体1は、回転過程において、一次帯電手段3によりその周面に正または負の所定電位の均一帯電を受け、次いでスリット露光やレーザービーム走査露光などの像露光手段(不図示)からの画像露光光4を受ける。こうして感光体1の周面に静電潜像が順次形成されていく。形成された静電潜像は、次いで現像手段5によりトナー現像され、現像されたトナー現像像は、不図示の給紙部から感光体1と転写手段6との間に感光体1の回転と同期取り出されて給紙された転写材7に、転写手段6により順次転写されていく。像転写を受けた転写材7は、感光体面から分離されて像定着手段8へ導入されて像定着をうけることにより複写物(コピー)として装置外へプリントアウトされる。像転写後の感光体1の表面は、クリーニング手段9によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、さらに前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、一次帯電手段3が帯電ローラーなどのを用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。本発明においては、上述の電子写真感光体1、一次帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段9などの構成要素のうち、複数のものをプロセスカートリッジとして一体に結合して構成しこのプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンターなどの電子写真装置本体に対して着脱可能に構成してもよい。例えば、一次帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段9の少なくとも一つを感光体1とともに一体に支持してカートリッジ化して、装置本体のレール12などの案内手段を用いて装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジ11とすることができる。また、画像露光光4は、電子写真装置が複写機やプリンターである場合には、原稿からの反射光や透過光、あるいはセンサーで原稿を読みとり、信号化し、この信号に従って行われるレーザービームの走査、LEDアレイの駆動および液晶シャッターアレイの駆動などにより照射される光である。
【0051】
本発明の電子写真感光体は電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、液晶プリンターおよびレーザー製版などの電子写真応用分野にも広く用いることができる。
【0052】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
まず導電層用の塗料を以下の手順で調整した。10%の酸化アンチモンを含有する酸化スズで被覆した導電性酸化チタン粉体50部(重量部、以下同様)、フェノール樹脂25部、メチルセロソルブ20部、メタノール5部およびシリコーンオイル(ポリジメチルシロキサンポリオキシアルキレン共重合体、平均分子量3000)0.002部をφ1mmガラスビーズを用いたサンドミル装置で2時間分散して調整した。この塗料を30φのアルミニウムシリンダー上に浸漬塗布方法で塗布し、140℃で30分乾燥して、膜厚20μmの導電層を形成した。
【0053】
次に、N−メトキシメチル化ナイロン5部をメタノール95部中に溶解し、中間層用塗料を調整した。この塗料を前記の導電層上に浸漬コーティング法によって塗布し、100℃で20分間乾燥して、0.6μmの中間層を形成した。
【0054】
次に下記(9)のビスアゾ顔料5部、ポリビニルブチラール樹脂2部およびシクロヘキサノン60部を、φ1mmガラスビーズを用いたサンドミル装置で24時間分散し、さらにテトラヒドロフラン60部を加えて電荷発生層用塗料とした。この塗料を前記の中間層の上に浸漬コーティング法で塗布して、100℃で15分間乾燥して、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【外9】
【0055】
次いで、下記構造式(10)のスチリル化合物15部および下記構造式(11)の繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂15部をモノクロロベンゼン50部およびジクロロメタン20部の混合溶媒中に溶解して調整した電荷輸送層用塗料を用いて、前記電荷発生層上に塗布し、105℃、1時間乾燥させ電荷輸送層を形成した。このときの電荷輸送層の膜厚は15μmであった。
【外10】
【0056】
次にこの電子写真感光体を加速電圧150KV、10Mradの線量で電子線を照射した後に、下記構造式(12)で示されるフッ素系アクリルモノマー20部およびエタノール80部の混合溶液に接触させた後、120℃、30分の加熱処理を行った。
【外11】
【0057】
以上で作製した電子写真感光体について、電子写真特性、耐久性、水接触角、表面潤滑性および転写効率を評価した。電子写真特性、耐久性および転写効率は、この感光体をキヤノン(株)製LBP−SXに装着して評価した。初期の感光体特性[暗部電位Vd、光減衰感度(暗部電位−700V設定で−150Vに光減衰させるために必要な光量)および残留電位Vst(光減衰感度の光量の3倍の光量を照射したときの電位)]を測定し、さらに4000枚の通紙耐久試験を行い、感光体の削れ量および耐久後の前記感光体特性を測定し、各々の変化値ΔVd、ΔVl(初期にVlが−150Vとなる光量と同量の光量を耐久後に照射したときのVlの変化量)およびΔVslを求めた。水接触角については、滴下式の接触角計(協和界面化学(株)社製)により、前記電位写真感光体表面の純水に対する接触角を比較した。表面潤滑性については複写機用のウレタンゴム製のクリーニングブレードを用い、これを当接角30度で感光体表面に当接しその滑り抵抗をHEIDON−14型表面性試験機(新東化学(株)製)を用いて測定した。転写効率は転写材上の転写後現像剤と、感光体上の転写残現像剤をそれぞれ反射式マクベス濃度計にて反射濃度として測定し算出した。
【0058】
(実施例2)
実施例1において構造式(11)のポリカーボネート樹脂の代わりに下記構造式(3)の繰り返し単位で示されるポリメチルメタクリレート樹脂とした以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【外12】
【0059】
(実施例3〜1)
実施例1において電子線の加速電圧と線量を表3に示したように変えた以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0060】
(実施例12)
実施例1において電荷輸送層を形成後に、構造式(12)で示されるフッ素系アクリルモノマー20部およびエタノール80部の混合溶液と接触させた後に電子線照射を行い、さらに加熱処理を行った以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0061】
(実施例13〜28)
実施例1において構造式(12)で示されるフッ素系アクリルモノマーの代わりに表4に示した化合物および照射条件で処理を行った以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0062】
以上の結果により、実施例に示した電子写真感光体は電子写真特性が初期/耐久後も良好であり、かつ水接触角/表面潤滑性/転写効率が耐久前後で大幅に悪化することなく、低自由エネルギー表面が保持されていることを示している。
【0063】
(比較例1)
実施例1において電荷輸送層を形成した後に何も行わなかったものを実施例1と同様に評価した。結果、実施例に対して、水接触角は初期より低い値を示し耐久後は大幅に低下した。表面潤滑性も初期より悪く、耐久後にはさらに悪化した。転写効率も初期より悪い値を示した。
【0064】
(比較例2)
実施例2において電荷輸送層を形成した後に何も行わなかったものを実施例2と同様に評価した。結果、実施例に対して、水接触角は初期より低い値を示し耐久後は大幅に低下した。表面潤滑性も初期より悪く、耐久後にはさらに悪化した。転写効率も初期より悪い値を示した。
【0065】
(比較例3)
実施例1において電荷輸送層用塗工液に構造式(12)で示されるフッ素系化合物3重量部を加えたものを使用し、電荷輸送層を形成した後に何も行わなかった以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0066】
(比較例4)
実施例1において電荷輸送層用塗工液に下記構造式(14)で示されるブタジエン系化合物3重量部を加えたものを使用し、電荷輸送層を形成した後に何も行わなかった以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【外13】
【0067】
(比較例5)
実施例1において電荷輸送層用塗工液に下記構造式(15)で示されるフッ素系化合物3重量部を加えたものを使用し、電荷輸送層を形成した後に何も行わなかった以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【外14】
【0068】
(比較例6)
実施例1において電荷輸送層用塗工液に下記構造式(16)で示される珪素系化合物3重量部を加えたものを使用し、電荷輸送層を形成した後に何も行わなかった以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【外15】
【0069】
結果、比較例3〜6に示されるように単純に表面撥水性材料を添加しただけの電子写真感光体は、実施例に対して、水棲触角/表面潤滑性/転写効率のいずれも初期は同等の数値を示しており良好であったが、耐久後にはいずれも悪化傾向にあり、低自由エネルギー表面が保持出来なかったことを示している。
【0070】
【表1】
【0071】
表中、Rは置換基を有してもよいメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、置換基を有してもよいベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基、アンスリル基等のアリール基または水素原子を示す。
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
【0075】
【表5】
【0076】
【表6】
【0077】
【表7】
【0078】
【表8】
【0079】
【表9】
【0080】
【発明の効果】
本発明の電子写真感光体は、繰り返し使用時にも安定して優れた電子写真特性を示し、さらには長期間にわたりその表面性が低下することのない高安定な電子写真感光体を提供できる。
【0081】
また電子写真感光体の効果は電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置においても当然に発揮され、長期間安定した性能が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成の例を示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真感光体、電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置に関し、詳しくは特定の化合物を放射線を利用しグラフト重合させた感光層を有する電子写真感光体、電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真感光体に用いられる光導電材料としては、セレン、硫化カドミウムおよび酸化亜鉛などの無機材料が知られていた。他方、有機材料であるポリビニルカルバゾール、フタロシアニン及びアゾ顔料などは高生産性や無公害性などの利点が注目され、無機材料と比較して光導電特性や耐久性などの点で劣る傾向にあるものの、広く用いられるようになってきた。これらの電子写真感光体は電気的および機械的特性の双方を満足するために電荷発生層と電荷輸送層を積層した機能分離型の感光体として利用される場合が多い。
【0003】
一方当然のことながら電子写真感光体には適用される電子写真プロセスに応じた感度、電気的特性、そして光学的特性を備えていることが要求される。また特に繰り返し使用される感光体にあっては、その感光体表面には帯電、画像露光、トナー現像、紙への転写、クリーニング処理といった電気的、機械的外力が直接加えられるため、それらに対する耐久性や安定性が要求される。具体的には、摺擦による表面の磨耗や傷の発生に対する耐久性、帯電時のオゾンや窒素酸化物に対する耐表面劣化性などが要求される。加えて、感光体へのトナー付着防止能や優れたクリーニング性、転写性を付与させるために、感光体表面の低エネルギー化が必要とされる。
【0004】
一般に有機感光体は光導電材料とベースとなるバインダー樹脂から構成されるが、先の表面特性はバインダー樹脂の特性によるところが大きい。近年では、表面性や耐削れ性/耐傷性などを総合的にある程度満足させる材料として、ポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂等が用いられている。これらはカーボネート結合やエステル結合などの極性基を有しており、その機械的強度は優れているものの逆に表面自由エネルギーは決して低くはない。すなわち滑り性や転写性等には不利な方向へはたらく。このような特性を改良するために、感光層に潤滑性を有する材料、例えばフッ素系、シリコーン系の化合物などの使用が考えられる。しかし、これらの化合物を単独で感光体の表層として用いるには成膜性や機械的強度、光導電材料との相溶性が十分ではない。また、感光層に潤滑材として添加する場合においても、これらの材料はそもそも感光層に用いられている樹脂等との相溶性が低いため、塗工性が非常に悪化したり、成膜時あるいは成膜後に層分離するなどの問題があった。またその高い表面移行性により感光体のごく表層のみに高濃度で存在する傾向にあり、初期は高潤滑性を示すものの、ある程度耐久により感光体が削れてくるとその潤滑性が低減するなどして、十分な効果が得られないなどの問題点がある。
【0005】
一方、表面自由エネルギーを低下させる方法として極性基を有しない樹脂、例えばポリオレフイン系樹脂やフッ素系樹脂等の使用が考えられるが、これらの樹脂はその強度という点において、十分なものが未だ得られておらず、また一般的な感光体製造方法である浸漬塗布法に対し要求される溶剤溶解性の点においても十分ではないため、実用化にはいたっていない。
【0006】
さらに近年では、感光体の長寿命化を目的とし、感光層上に保護層を設けたり、表面層に硬化/架橋性の樹脂を用いたりするなどの拭みがなされているが、これらについても先に述べた内容と同様の問題点が存在し、解決には至っていないのが現状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、繰り返し使用時にも安定して優れた電子写真特性を示し、長期間にわたりその表面性が低下することのない高耐久、高安定な電子写真感光体およびこの電子写真感光体の製造方法を提供することである。また該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ並びに電子写真装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、連鎖重合性官能基を有する化合物が放射線により感光層の構成成分を起点としグラフト重合したものを含むことを特徴とする。
【0009】
詳しくは、導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、該電子写真感光体が放射線照射後に、少なくとも1つ以上の連鎖重合性官能基を有する化合物と接触させたものであることを特徴とする電子写真感光体である。また導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、該電子写真感光体が少なくとも1つ以上の連鎖重合性官能基を有する化合物と接触と同時あるいは接触後に放射線照射させたことを特徴とする電子写真感光体である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は放射線グラフト重合を利用し、電子写真感光体を改質するものである。
【0011】
以下に本発明の詳細を説明する。
【0012】
まず、本発明における連鎖重合性官能基について説明する。本発明における連鎖重合とは、高分子物の生成反応を大きく連鎖重合と逐次重合に分けた場合の前者の重合反応形態を示し、詳しくは例えば技報堂出版三羽忠広著の「基礎合成樹脂の化学(新版)」1995年7月25日(1版8刷)P.24に説明されているように、その形態が主にラジカルあるいはイオンをなどの中間体を経由して反応が進行する不飽和重合、開環重合そして異性化重合などのことをいう。請求項に記載の連鎖重合性官能基とは、前述の反応形態が可能な官能基を意味するが、ここではその大半を占め応用範囲の広い不飽和重合性官能基の具体例を示す。
【0013】
不飽和重合とは、ラジカル、イオンなどによって不飽和基、例えばC=C、C≡C、C=O、C=N、C≡Nなどが重合する反応であるが、主にはC=Cによる場合が大部分である。不飽和重合性官能基の具体例を表1に示すがこれらに限定されるものではない。
【0014】
表中Rは置換基を有しても良いメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、置換基を有しても良いベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基および置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、アンスリル基等のアリール基または水素原子等を示す。
【0015】
上記で示したような本発明に関わる連鎖重合性官能基の中でも、下記一般式(1)で示される不飽和重合性官能基を有するものが反応性その他の点で好ましい。
【外6】
【0016】
(式中、Xは水素原子、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、置換基を有しても良いメチル基、エチル基。プロピル基、ブチル基等のアルキル基、置換基を有しても良いベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、フルフリル基、チエニル基等のアラルキル基、置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、ピレニル基、チオフェニル基、フリル基等のアリール基、CN基、ニトロ基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、−COOR1、CONR2R3を示す。
【0017】
Yは置換基を有しても良い2価のフェニレン、ナフチレン、アントラセニレン等のアリーレン基、置換基を有しても良いメチレン、エチレン、ブチレン等の2価のアルキレン基、−COO−、−CH2−、−O−、−OO−、−S−または−CONR4−で示される。
【0018】
R1〜R4は水素原子、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、置換基を有しても良いメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、置換基を有しても良いベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基及び置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、アンスリル基等のアリール基を示し、R2とR3は互いに同一であっても異なっても良い。
【0019】
X及びY中で有してもよい置換基としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子またはニトロ基またはシアノ基または水酸基またはメチル基、エチル基。プロピル基、ブチル基等のアルキル基またはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基またはフェノキシ基、ナフトキシ基等のアリールオキシ基またはベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、フルフリル基、チエニル基等のアラルキル基またはフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、ピレニル基等のアリール基等が挙げられる。
【0020】
Zは置換基を有しても良い有機残基を示す。ここでいう有機残基Zの意味は、グラフト重合させて機能を発現しうるべき化合物と連鎖重合性官能基とを接続させるための化学結合基であり、合成方法その他により任意に選択される。具体的な例としては置換基を有しても良いフェニレン、ナフタレンなどの2価のアリーレン基、置換基を有しても良いメチレン、エチレン、ブチレン等の2価のアルキレン基、−COO−、−CH2−、一O−、−OO−、−S−または−CONR5−などである。R5は水素原子、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、置換基を有しても良いメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、置換基を有しても良いベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基及び置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、アンスリル基等のアリール基を示す。
【0021】
aおよびbはそれぞれ独立に0以上の整数を示す。またaおよびbが2以上の整数である場合のYおよびZはそれぞれが同一でも異なっていてもよい。)
さらに上記一般式(1)の中でも、さらに好ましい連鎖重合性官能基としては、下記一般式(2)が挙げられる。
【外7】
【0022】
(ただしVは水素原子またはメチル基、Wは置換基を有しても良い2価のアリーレン基または置換基を有しても良い2価のアルキレン基、−COO−、−O−を示す。cおよびdはそれぞれ独立に0以上の整数を示す。またcおよびdが2以上の整数である場合WおよびZはそれぞれが同一でも異なっていてもよい。)
また上記一般式(2)の中では、特に下記一般式(3)〜(8)で示されるものが好ましい。
【外8】
(ただしe〜jはそれぞれ独立に0以上の整数を示し、2以上の場合にZはそれぞれが同一でも互いに異なっていても良い。)
以上で述べたような連鎖重合性官能基は、後述するようなグラフト重合させて機能を発現させる化合物に対して少なくとも1つ以上結合しておりその結合位置は任意である。またこれら連鎖重合性官能基は2つ以上結合していても良く、それらの種類/組み合わせは任意である。
【0023】
さらに、連鎖重合性官能基を有する化合物を2種類以上使用することが出来る。
【0024】
次に放射線を利用したグラフト重合について説明する。
【0025】
一般にグラフト重合とは1つの線状ポリマーを幹としこれに異なったポリマーを枝として化学的に結合させることを言い、ポリマーの改質手段として広く研究されている。その中でも特に放射線を利用したグラフト重合とは、ベースとなる幹ポリマーへの放射線照射により生成したラジカルやイオンを開始点とし、枝とすべきモノマーを連鎖重合させることが特徴である。放射線グラフト重合では、幹ポリマーと枝とすべきモノマーを同時に放射線照射する方法(同時照射法)と、幹ポリマーを放射線照射下後にモノマーを接触させる方法(前照射法)の2通りがあり、その用途に応じて使い分けられている。本発明におけるグラフト化とは、広義の意味で、幹ポリマーとは線状ポリマーに限らず、3次元架橋系ポリマー、オリゴマー、低分子化合物など感光層に含有されている化合物すべてを開始点とする連鎖重合と定義する。また枝とすべきモノマーは、改質機能を有し、少なくとも1つ以上の連鎖重合性官能基を有する化合物を広義の意味とし、モノマーに限らずオリゴマーその他の化合物をすべて含む。具体的な連鎖重合性官能基を有する化合物例を表2に示すが、改質機能を有する化合物と連鎖重合性官能基の組み合わせ、結合位置、官能基数等はすべて任意であり、また改質機能を有する部位と連鎖重合性官能基との化学結合部はこのほかにも任意で選択出来る。
【0026】
電子写真感光体は数層の積層構成をとるのが一般的であるが、各層間における塗工性、接着性、電荷授受能はその界面状態に大きく左右されることより、各局間の表面改質として本発明のグラフト重合を利用出来うる。また主には最表面層の改質に利用することが出来る。
【0027】
次に電子写真感光体における放射線グラフト重合について詳細を説明する。
【0028】
放射線グラフト重合を電子写真感光体に応用する例としてまず挙げられるのはその最表面性改質である。先に述べたように感光体の表面自由エネルギーを低下させる手段として効率的に利用できる。具体的には最終層まで形成された電子写真感光体を放射線照射し、グラフト重合開始点となるラジカルを発生させる。その後少なくとも1つ以上の連鎖重合性官能基を有し表面自由エネルギーを低下させる化合物(表2の表面性改良)を接触させ連鎖重合反応を進行させる。あるいは先の化合物をまず電子写真感光体に接触させた後に放射線照射を行い連鎖重合を進行させることも可能である。
【0029】
また別の利用方法としては、例えば積層感光体における電荷発生層と電荷輸送層間の電荷授受能を高めるために用いられることが出来る。一般に十分な電子写真感度を得るために電荷発生材料と電荷輸送材料が十分に接触またはある至近距離内に存在する必要があるが、これは感光体を構成材料である電気的に不活性なバインダー樹脂によって阻害される。これを解決する手段として電荷発生層に最初から電荷輸送材料を少量添加するなどの手段が用いられる場合があるが、この場合電荷発生層において電荷輸送物質が析出したり、電荷発生層用塗工液における電荷発生物質の分散性の低下や液劣化などの問題点が避けられない。そこで本発明においては電荷発生層の成膜後に放射線を照射し、電荷輸送能を有し且つ連鎖重合性官能基を有する化合物(表2の電荷輸送能改良)を接触させた後に、電荷輸送層を形成することで先の問題点が解決出来る。
【0030】
さらに光導電層の下層に設けられる下引き層や中間層などの改質にも応用が可能である。
【0031】
本発明における放射線とはα.β.γ線、電子線、短波長紫外線などの電離作用を持つ電離性放射線をいうが、その中でも電子加速器を利用した電子線が反応性、生産性、安全性などの面から非常に有効である。
【0032】
本発明の感光体の構成は、導電性支持体上に感光層として電荷発生物質を含有する電荷発生層および電荷輸送物質を含有する電荷輸送層をこの順に積層した構成あるいは逆に積層した構成、また電荷発生物質と電荷輸送物質を同一層中に分散した単層からなる構成のいずれの構成をとることも可能である。前者の積層型においては電荷輸送層が二層以上の構成、また後者の単層型においては電荷発生物質と電荷輸送物質を同一に含有する感光層上にさらに電荷輸送層を構成してもよく、さらには電荷発生層あるいは電荷輸送層上に保護層の形成も可能である。また光導電層以外に、下引き層や中間層などの形成も可能である。ただし、電子写真感光体としての特性、特に残留電位などの電気的特性および耐久性の点より、電荷発生層/電荷輸送層をこの順に積層した機能分離型の感光体構成が好ましい。
【0033】
次に本発明による電子写真感光体の製造方法を具体的に示す。
【0034】
電子写真感光体の支持体としては導電性を有するものであればよく、例えばアルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛およびステンレスなどの金属や合金をドラムまたはシート状に成形したもの、アルミニウムおよび銅などの金属箔をプラスチックフィルムにラミネートしたもの、アルミニウム、酸化インジウムおよび酸化錫などをプラスチックフィルムに蒸着したもの、導電性物質を単独または結着樹脂とともに塗布して導電層を設けた金属、またプラスチックフィルムおよび紙などが挙げられる。
【0035】
本発明においては導電性支持体の上にはバリアー機能と接着機能をもつ下引き層を設けることができる。
【0036】
下引き層は感光層の接着性改良、塗工性改良、支持体の保護、支持体上の欠陥の被覆、支持体からの電荷注入性改良、また感光層の電気的破壊に対する保護などのために形成される。下引き層の材料としてはポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、カゼイン、ポリアミド、N−メトキシメチル化6ナイロン、共重合ナイロン、にかわおよびゼラチンなどがしられている。
【0037】
これらはそれぞれに適した溶剤に溶解されて支持体上に塗布される。
【0038】
その際の膜厚としては0.1〜2μmが好ましい。
【0039】
本発明の感光体が機能分離型の感光体である場合には電荷発生層および電荷輸送層を積層する。電荷発生層に用いる電荷発生物質としては、セレン−テルル、ピリリウム、チアピリリウム系染料、また各種の中心金属および結晶系、具体的には例えばα、β、γ、εおよびX型などの結晶型を有するフタロシアニン化合物、アントアントロン顔料、ジベンズビレンキノン顔料、ピラントロン顔料、トリスアゾ顔料、ジスアゾ顔料、モノアゾ顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料、非対称キノシアニン顔料、キノシアニンおよび特開昭54−143645号公報に記載のアモルファスシリコーンなどが挙げられる。
【0040】
機能分離型感光体の場合、電荷発生層は前記電荷発生物箕を0.3〜4倍量の結着樹脂および溶剤とともにホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライクーおよびロールミルなどの方法で良く分散し、分散液を塗布し、乾燥されて形成されるか、または前記電荷発生物質の蒸着膜など、単独組成の膜として形成される。その膜厚は5μm以下であることが好ましく、特に0.1〜2μmの範囲であることが好ましい。
【0041】
結着樹脂を用いる場合の例は、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、などのビニル化合物の重合体および共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、セルロース樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0042】
電荷輸送層は適当な電荷輸送物質、例えばポリ−N−ビニルカルバソール、ポリスチリルアントラセンなどの複素環や縮合多環芳香族を有する高分子化合物や、ピラゾリン、イミダゾール、オキサゾール、トリアゾール、カルバゾールなどの複素環化合物、トリフェニルメタンなどのトリアリールアルカン誘導体、トリフェニルアミンなどのトリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、N−フェニルカルバゾール誘導体、スチルベン誘導体、ヒドラゾン誘導体などの低分子化合物などを適当な結着樹脂(前述の電荷発生層用樹脂の中から選択できる)とともに溶剤に分散/溶解した溶液を後述の公知の方法によって塗布、乾燥して形成することができる。
【0043】
この場合の電荷輸送物質と結着樹脂の比率は、両者の全重量を100とした場合に電荷輸送物質の重量が20〜100が望ましく、好ましくは40〜100の範囲で適宜選択される。電荷輸送物質の量がそれ以下であると、電荷輸送能が低下し、感度低下および残留電位の上昇などの問題点が生ずる。一方電荷輸送材料の含有量が多すぎると塗膜の機械的強度が低下し耐久性が大幅にダウンするので、注意が必要である。電荷輸送層上にさらに保護層を設ける場合や硬化性の材料を用いて3次元架橋膜を構成した場合にはこの限りではない。電荷輸送層の膜厚は、が1〜50μmとなるように決定され、好ましくは5〜30μmの範囲で調整される。
【0044】
単層感光体の場合、感光層の膜厚は8〜40μmであることが好ましく、特には12〜30μmであることが好ましい。また、電荷発生物賞や電荷輸送物質などの光導電性物質の含有量は感光層の全重量に対し、20〜80重量%であることが好ましく、特には30〜70重量%であることが好ましい。
【0045】
これらの溶液を塗布する方法は、例えば浸漬コーティング法、スプレイコーティング法、カーテンコーティング法およびスピンコーティング法などが知られているが、効率性/生産性の点からは浸漬コーティング法が好ましい。また蒸着、プラズマその他の公知の製膜方法が適宜選択できる。
【0046】
本発明における感光層には、各種添加剤を添加することができる。
【0047】
該添加剤とは酸化防止剤および紫外線吸収剤などの劣化防止剤や、フッ素原子含有樹脂微粒子などの潤剤その他である。
【0048】
次に電子線照射について説明する。
【0049】
電子線照射をする場合、加速器としてはスキャニング型、エレクトロカーテン型、ブロードビーム型、パルス型およびラミナー型などいずれの形式も使用することが出来る。電子線を照射する場合に、本発明の感光体においては電気特性および耐久性能を発現させる上で照射条件が非常に重要である。本発明において、加速電圧は250KV以下が好ましく、最適には150KV以下である。また照射線量は好ましくは0.5Mradから100Mradの範囲、より好ましくは1Mradから50Mradの範囲である。加速電圧が上記を越えると感光体特性に対する電子線照射のダメージが増加する傾向にある。また、照射線量が上記範囲よりも少ない場合には連鎖重合の開始点となるラジカル生成量が少なく改質に至るまでのグラフト化が十分ではない。また線量が多い場合には感光体特性の劣化がおこりやすいので注意が必要である。
【0050】
図1に本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成を示す。図において、1はドラム上の本発明の電子写真感光体であり、軸2を中止に矢印方向に所定の周速度で回転駆動されるこ感光体1は、回転過程において、一次帯電手段3によりその周面に正または負の所定電位の均一帯電を受け、次いでスリット露光やレーザービーム走査露光などの像露光手段(不図示)からの画像露光光4を受ける。こうして感光体1の周面に静電潜像が順次形成されていく。形成された静電潜像は、次いで現像手段5によりトナー現像され、現像されたトナー現像像は、不図示の給紙部から感光体1と転写手段6との間に感光体1の回転と同期取り出されて給紙された転写材7に、転写手段6により順次転写されていく。像転写を受けた転写材7は、感光体面から分離されて像定着手段8へ導入されて像定着をうけることにより複写物(コピー)として装置外へプリントアウトされる。像転写後の感光体1の表面は、クリーニング手段9によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、さらに前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、一次帯電手段3が帯電ローラーなどのを用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。本発明においては、上述の電子写真感光体1、一次帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段9などの構成要素のうち、複数のものをプロセスカートリッジとして一体に結合して構成しこのプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンターなどの電子写真装置本体に対して着脱可能に構成してもよい。例えば、一次帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段9の少なくとも一つを感光体1とともに一体に支持してカートリッジ化して、装置本体のレール12などの案内手段を用いて装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジ11とすることができる。また、画像露光光4は、電子写真装置が複写機やプリンターである場合には、原稿からの反射光や透過光、あるいはセンサーで原稿を読みとり、信号化し、この信号に従って行われるレーザービームの走査、LEDアレイの駆動および液晶シャッターアレイの駆動などにより照射される光である。
【0051】
本発明の電子写真感光体は電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、液晶プリンターおよびレーザー製版などの電子写真応用分野にも広く用いることができる。
【0052】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
まず導電層用の塗料を以下の手順で調整した。10%の酸化アンチモンを含有する酸化スズで被覆した導電性酸化チタン粉体50部(重量部、以下同様)、フェノール樹脂25部、メチルセロソルブ20部、メタノール5部およびシリコーンオイル(ポリジメチルシロキサンポリオキシアルキレン共重合体、平均分子量3000)0.002部をφ1mmガラスビーズを用いたサンドミル装置で2時間分散して調整した。この塗料を30φのアルミニウムシリンダー上に浸漬塗布方法で塗布し、140℃で30分乾燥して、膜厚20μmの導電層を形成した。
【0053】
次に、N−メトキシメチル化ナイロン5部をメタノール95部中に溶解し、中間層用塗料を調整した。この塗料を前記の導電層上に浸漬コーティング法によって塗布し、100℃で20分間乾燥して、0.6μmの中間層を形成した。
【0054】
次に下記(9)のビスアゾ顔料5部、ポリビニルブチラール樹脂2部およびシクロヘキサノン60部を、φ1mmガラスビーズを用いたサンドミル装置で24時間分散し、さらにテトラヒドロフラン60部を加えて電荷発生層用塗料とした。この塗料を前記の中間層の上に浸漬コーティング法で塗布して、100℃で15分間乾燥して、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【外9】
【0055】
次いで、下記構造式(10)のスチリル化合物15部および下記構造式(11)の繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂15部をモノクロロベンゼン50部およびジクロロメタン20部の混合溶媒中に溶解して調整した電荷輸送層用塗料を用いて、前記電荷発生層上に塗布し、105℃、1時間乾燥させ電荷輸送層を形成した。このときの電荷輸送層の膜厚は15μmであった。
【外10】
【0056】
次にこの電子写真感光体を加速電圧150KV、10Mradの線量で電子線を照射した後に、下記構造式(12)で示されるフッ素系アクリルモノマー20部およびエタノール80部の混合溶液に接触させた後、120℃、30分の加熱処理を行った。
【外11】
【0057】
以上で作製した電子写真感光体について、電子写真特性、耐久性、水接触角、表面潤滑性および転写効率を評価した。電子写真特性、耐久性および転写効率は、この感光体をキヤノン(株)製LBP−SXに装着して評価した。初期の感光体特性[暗部電位Vd、光減衰感度(暗部電位−700V設定で−150Vに光減衰させるために必要な光量)および残留電位Vst(光減衰感度の光量の3倍の光量を照射したときの電位)]を測定し、さらに4000枚の通紙耐久試験を行い、感光体の削れ量および耐久後の前記感光体特性を測定し、各々の変化値ΔVd、ΔVl(初期にVlが−150Vとなる光量と同量の光量を耐久後に照射したときのVlの変化量)およびΔVslを求めた。水接触角については、滴下式の接触角計(協和界面化学(株)社製)により、前記電位写真感光体表面の純水に対する接触角を比較した。表面潤滑性については複写機用のウレタンゴム製のクリーニングブレードを用い、これを当接角30度で感光体表面に当接しその滑り抵抗をHEIDON−14型表面性試験機(新東化学(株)製)を用いて測定した。転写効率は転写材上の転写後現像剤と、感光体上の転写残現像剤をそれぞれ反射式マクベス濃度計にて反射濃度として測定し算出した。
【0058】
(実施例2)
実施例1において構造式(11)のポリカーボネート樹脂の代わりに下記構造式(3)の繰り返し単位で示されるポリメチルメタクリレート樹脂とした以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【外12】
【0059】
(実施例3〜1)
実施例1において電子線の加速電圧と線量を表3に示したように変えた以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0060】
(実施例12)
実施例1において電荷輸送層を形成後に、構造式(12)で示されるフッ素系アクリルモノマー20部およびエタノール80部の混合溶液と接触させた後に電子線照射を行い、さらに加熱処理を行った以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0061】
(実施例13〜28)
実施例1において構造式(12)で示されるフッ素系アクリルモノマーの代わりに表4に示した化合物および照射条件で処理を行った以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0062】
以上の結果により、実施例に示した電子写真感光体は電子写真特性が初期/耐久後も良好であり、かつ水接触角/表面潤滑性/転写効率が耐久前後で大幅に悪化することなく、低自由エネルギー表面が保持されていることを示している。
【0063】
(比較例1)
実施例1において電荷輸送層を形成した後に何も行わなかったものを実施例1と同様に評価した。結果、実施例に対して、水接触角は初期より低い値を示し耐久後は大幅に低下した。表面潤滑性も初期より悪く、耐久後にはさらに悪化した。転写効率も初期より悪い値を示した。
【0064】
(比較例2)
実施例2において電荷輸送層を形成した後に何も行わなかったものを実施例2と同様に評価した。結果、実施例に対して、水接触角は初期より低い値を示し耐久後は大幅に低下した。表面潤滑性も初期より悪く、耐久後にはさらに悪化した。転写効率も初期より悪い値を示した。
【0065】
(比較例3)
実施例1において電荷輸送層用塗工液に構造式(12)で示されるフッ素系化合物3重量部を加えたものを使用し、電荷輸送層を形成した後に何も行わなかった以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0066】
(比較例4)
実施例1において電荷輸送層用塗工液に下記構造式(14)で示されるブタジエン系化合物3重量部を加えたものを使用し、電荷輸送層を形成した後に何も行わなかった以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【外13】
【0067】
(比較例5)
実施例1において電荷輸送層用塗工液に下記構造式(15)で示されるフッ素系化合物3重量部を加えたものを使用し、電荷輸送層を形成した後に何も行わなかった以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【外14】
【0068】
(比較例6)
実施例1において電荷輸送層用塗工液に下記構造式(16)で示される珪素系化合物3重量部を加えたものを使用し、電荷輸送層を形成した後に何も行わなかった以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【外15】
【0069】
結果、比較例3〜6に示されるように単純に表面撥水性材料を添加しただけの電子写真感光体は、実施例に対して、水棲触角/表面潤滑性/転写効率のいずれも初期は同等の数値を示しており良好であったが、耐久後にはいずれも悪化傾向にあり、低自由エネルギー表面が保持出来なかったことを示している。
【0070】
【表1】
【0071】
表中、Rは置換基を有してもよいメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、置換基を有してもよいベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基、アンスリル基等のアリール基または水素原子を示す。
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
【0075】
【表5】
【0076】
【表6】
【0077】
【表7】
【0078】
【表8】
【0079】
【表9】
【0080】
【発明の効果】
本発明の電子写真感光体は、繰り返し使用時にも安定して優れた電子写真特性を示し、さらには長期間にわたりその表面性が低下することのない高安定な電子写真感光体を提供できる。
【0081】
また電子写真感光体の効果は電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置においても当然に発揮され、長期間安定した性能が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成の例を示す図である。
Claims (21)
- 導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、連鎖重合性官能基を有する化合物が放射線により感光層構成成分を起点としグラフト重合したものを含むことを特徴とする電子写真感光体。
- 導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、該電子写真感光体が放射線照射後に、少なくとも1つ以上の連鎖重合性官能基を有する化合物と接触させたものであることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
- 導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、該電子写真感光体が少なくとも1つ以上の連鎖重合性官能基を有する化合物と接触と同時あるいは接触後に放射線照射させたことを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
- 前記連鎖重合性官能基を有する化合物が下記一般式(1)で示される不飽和重合性官能基を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真感光体。
【外1】
(Xは水素原子、ハロゲン原子、置換基を有しても良いアルキル基および置換基を有しても良いアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR1(R1は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いアラルキル基および置換基を有しても良いアリール基)、CONR2R3(R2、R3は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いアラルキル基および置換基を有しても良いアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい)を示し、Yは置換基を有しても良い2価のアリール基または置換基を有しても良い2価のアルキレン基、−COO−、−C−、−O−、−OO−、−S−、−CONR4−(R4は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いアラルキル基または置換基を有しても良いアリール基)を示す。Zは置換基を有しても良い有機残基を示す。aおよびbはそれぞれ独立に0以上の整数を示す。またaおよびbが2以上の整数である場合YおよびZはそれぞれが同一でも異なっていてもよい。) - 前記連鎖重合性官能基を有する化合物がフッ素原子を含有することを特徴とする請求項1〜8に記載の電子写真感光体。
- 前記連鎖重合性官能基を有する化合物が珪素原子を含有することを特徴とする請求項1〜8に記載の電子写真感光体。
- 前記連鎖重合性官能基を有する化合物において一般式(1)で示される連鎖重合性官能基以外の構成元素が炭素、水素、酸素、フッ素、珪素から選ばれる少なくとも2つ以上のみからなることを特徴とする請求項1〜8に記載の電子写真感光体。
- 前記連鎖重合性官能基を有する化合物において一般式(1)で示される連鎖重合性官能基以外の構成元素が炭素、水素、酸素、フッ素から選ばれる少なくとも2つ以上のみからなることを特徴とする計求項1〜8記載の電子写真感光体。
- 前記連鎖重合性官能基を有する化合物において一般式(1)で示される連鎖重合性官能基以外の構成元素が炭素および水素のみからなることを特徴とする請求項1〜8記載の電子写真感光体。
- 前記連鎖重合性官能基を有する化合物において一般式(1)で示される連鎖重合性官能基以外の構成元素が炭素、水素およびフッ素のみからなることを特徴とする請求項1〜8記載の電子写真感光体。
- 前記連鎖重合性官能基を有する化合物において一般式(1)で示される連鎖重合性官能基以外の構成元素が炭素およびフッ素のみからなることを特徴とする請求項1〜8記載の電子写真感光体。
- 前記連鎖重合性官能基を有する化合物が一般式(1)で示される連鎖重合性官能基以外に炭素−炭素二重結合を含有しないことを特徴とする請求項1〜15記載の電子写真感光体。
- 前記放射線が、γ線あるいは電子線であることを特徴とする請求項1〜16記載の電子写真感光体。
- 前記放射線が電子線であり、該電子線の加速電圧が300KV以下であることを特徴とする請求項1〜17記載の電子写真感光体。
- 前記電子線の線量が0.5〜100Mradである請求項1〜18記載の電子写真感光体。
- 請求項1〜19のいずれかに記載の電子写真感光体、帯電手段、現像手段、およびクリーニング手段からなる群より選ばれた少なくとも一つの手段を一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
- 請求項1〜19のいずれかに記載の電子写真感光体、帯電手段、像露光手段、現像手段、および転写手段を有することを特徴とする電子写真装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002258950A JP2004101546A (ja) | 2002-09-04 | 2002-09-04 | 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002258950A JP2004101546A (ja) | 2002-09-04 | 2002-09-04 | 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004101546A true JP2004101546A (ja) | 2004-04-02 |
Family
ID=32260127
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002258950A Withdrawn JP2004101546A (ja) | 2002-09-04 | 2002-09-04 | 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004101546A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007011005A (ja) * | 2005-06-30 | 2007-01-18 | Canon Inc | 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 |
JP2008225043A (ja) * | 2007-03-13 | 2008-09-25 | Ricoh Co Ltd | 電子写真感光体、その製造方法、それを用いた画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジ |
KR101569248B1 (ko) | 2013-06-19 | 2015-11-13 | 주식회사 엘지화학 | 고분자 화합물의 제조 방법, 그를 포함하는 그래프트 공중합체의 제조 방법 및 그에 의해 제조된 그래프트 공중합체 |
-
2002
- 2002-09-04 JP JP2002258950A patent/JP2004101546A/ja not_active Withdrawn
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007011005A (ja) * | 2005-06-30 | 2007-01-18 | Canon Inc | 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 |
JP4585930B2 (ja) * | 2005-06-30 | 2010-11-24 | キヤノン株式会社 | 電子写真感光体の製造方法 |
JP2008225043A (ja) * | 2007-03-13 | 2008-09-25 | Ricoh Co Ltd | 電子写真感光体、その製造方法、それを用いた画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジ |
KR101569248B1 (ko) | 2013-06-19 | 2015-11-13 | 주식회사 엘지화학 | 고분자 화합물의 제조 방법, 그를 포함하는 그래프트 공중합체의 제조 방법 및 그에 의해 제조된 그래프트 공중합체 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP4630806B2 (ja) | 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 | |
US6436597B2 (en) | Electrophotographic photosensitve member, process for producing electrophotographic photosensitive member, and process cartridge and electrophotographic apparatus which have the electrophotographic photosensitive member | |
JP2000066425A (ja) | 電子写真感光体、プロセスカ―トリッジ、電子写真装置及び該電子写真感光体の製造方法 | |
JP2007011006A (ja) | 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 | |
JP2010160460A (ja) | 電子写真感光体とその製造方法及び画像形成装置 | |
JP2001166510A (ja) | 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 | |
EP2469341B1 (en) | Image bearing member and image forming method, image forming apparatus, and process cartridge | |
JP3897522B2 (ja) | 電子写真感光体、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置 | |
JP2002040686A (ja) | 電子写真感光体、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置 | |
JP2005062301A (ja) | 電子写真感光体 | |
JP2005062300A (ja) | 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 | |
JP2004212959A (ja) | 電子写真感光体、電子写真装置及びプロセスカートリッジ | |
JP2007192905A (ja) | 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置 | |
JP4289859B2 (ja) | 電子写真感光体、それを有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置 | |
JP4143497B2 (ja) | 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 | |
JP2007156081A (ja) | 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 | |
JP2006064954A (ja) | 電子写真感光体、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置 | |
JP4229352B2 (ja) | 電子写真感光体、該電子写真感光体の製造方法、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置 | |
JP2004240305A (ja) | 電子写真感光体、プロセスカートリッジ、電子写真装置及び電子写真感光体の製造方法 | |
JP4143200B2 (ja) | 電子写真感光体、該電子写真感光体の製造方法、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置 | |
JP2004101546A (ja) | 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 | |
JP4115057B2 (ja) | 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 | |
JP2004093802A (ja) | 電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置 | |
JP2006010816A (ja) | 電子写真感光体、電子写真装置及び電子写真感光体の製造方法 | |
JP4115058B2 (ja) | 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20060110 |