JP2004100855A - 流体封入式防振装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】受圧室と平衡室をオリフィス通路で連通せしめて、振動入力時にオリフィス通路を流動せしめられる流体の共振作用等の流動作用に基づく防振効果を得るようにした流体封入式防振装置において、特別な配設スペースを必要とするような新たな部材の組付けを必要とすることなく、動的特性の周波数依存性を軽減乃至は回避することの出来る、新規な構造の流体封入式防振装置を提供すること。
【解決手段】第一のオリフィス通路52の壁部の一部を、弾性的に変形変位可能な弾性可動壁56で構成すると共に、振動入力時に第一のオリフィス通路52の連通状態下で弾性可動壁56の両面に圧力差が及ぼされるようにして、振動入力時に弾性可動壁56が弾性的に変形変位せしめられるようにした。
【選択図】 図1
【解決手段】第一のオリフィス通路52の壁部の一部を、弾性的に変形変位可能な弾性可動壁56で構成すると共に、振動入力時に第一のオリフィス通路52の連通状態下で弾性可動壁56の両面に圧力差が及ぼされるようにして、振動入力時に弾性可動壁56が弾性的に変形変位せしめられるようにした。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【技術分野】
本発明は、内部に封入された水等の非圧縮性流体の流動作用や圧力変動作用を利用して防振効果を得るようにした流体封入式防振装置に係り、特に動的特性の振幅依存性が低減乃至は回避されることにより、振幅依存性に起因する悪影響をを抑えて安定した防振性能を得ることの出来る、新規な構造の流体封入式防振装置に関するものである。
【0002】
【背景技術】
従来から、振動伝達系を構成する部材間に装着される防振装置の一種として、互いに離隔位置せしめた第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結すると共に、該本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成された受圧室と、壁部の一部が可撓性膜で構成された平衡室を形成し、それら受圧室と平衡室に水等の非圧縮性流体を封入すると共に、それら受圧室と平衡室を相互に連通する第一のオリフィス通路を設けた流体封入式防振装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
そして、このような流体封入式防振装置においては、振動入力時に、本体ゴム弾性体の弾性変形に伴って圧力変動が生ぜしめられる受圧室と、可撓性膜の変形に基づいて容積変化が容易に許容される平衡室との間に惹起される相対的な圧力変動に基づいて、第一のオリフィス通路を通じての流体流動が生ぜしめられることとなり、流動せしめられる流体の共振的な流動作用等に基づいて、本体ゴム弾性体のみでは得られ難い防振効果を得ることが出来ることから、例えば高度な防振性能が要求される自動車用のエンジンマウント等への適用が検討されている。
【0004】
ところで、かかる流体封入式防振装置において流体の流動作用に基づいて発揮される動的特性は、流体流路である第一のオリフィス通路の形状や寸法,或いは流体流路を流動せしめられる非圧縮性流体の密度などといった流体封入式防振装置自体の基本性能によって異なることは勿論であるが、それだけでなく、外部から入力される加振力にも依存し、特に振幅に大きく依存する傾向がある。具体的には、図10に例示的に示すように、振動入力に際して第一のオリフィス通路を流動せしめられる流体の流動作用に基づいて発揮される損失係数:lのピークが、防振すべき振動の周波数域において発揮されるように第一のオリフィス通路をチューニングした場合を考えると、(i)→(ii)→(iii)と入力振動の振幅が小さくなるに従って、発揮される損失係数のピークが次第に大きくなる傾向にある。また、それに併せて、流体の流動作用に基づいて発揮される動的ばね定数:Kdの変化量が次第に大きくなり、損失係数のピークを超えた周波数域での動的ばね定数の跳ね上がりが顕著となる傾向にある。
【0005】
そして、このような流体封入式防振装置における動的特性の周波数依存性が、要求される防振特性によっては問題となる場合がある。具体的には、例えば自動車用エンジンマウントにおいては、10〜20Hz程度のエンジンシェイク等に相当する低周波数域で高減衰効果が要求される一方、20〜30Hz程度のアイドリング振動等に相当する高周波数域で低動ばね効果が要求されることとなるが、一般にエンジンシェイクの振幅が±1.5mm程度なのに対してアイドリング振動の振幅が±0.1mm程度と小さいために、エンジンシェイク等の低周波大振幅振動の入力時に流体の流動作用に基づいて有効な減衰効果が発揮されるように第一のオリフィス通路をチューニングすると、アイドリング振動等の高周波小振幅振動の入力時には、不必要に大きな減衰効果が発揮されることに加えて、動的ばね定数が大きくなってしまって防振性能が著しく低下してしまう場合があったのである。
【0006】
なお、このような問題に対処するために、従来では、(1)受圧室と平衡室を接続する第二のオリフィス通路を設け、該第二のオリフィス通路を流動せしめられる流体の流動作用に基づいて高周波数域での低動ばね効果が発揮されるようにチューニングして、第一のオリフィス通路と第二のオリフィス通路を選択的に利用するようにしたり(例えば、特許文献2参照。)、(2)受圧室と平衡室の間に跨がって延びる大径の透孔を形成すると共に、該透孔を仕切るようにして可動部材を微小変位可能に配設し、該可動部材の一方の面を受圧室に露呈させると共に他方の面を平衡室に露呈させることにより、第一のオリフィス通路のチューニング周波数よりも高周波数域の振動入力時における受圧室の圧力変動を、可動部材の微小変位で軽減せしめて動的ばね定数の増大を抑えるようにした構造(例えば、特許文献3参照)が、提案されている。
【0007】
しかしながら、前者(1)のように二つのオリフィス通路を設けてそれらを選択的に利用しようとすると、二つのオリフィス通路を切り換えるためのバルブ手段や、該バルブ手段を駆動するための駆動手段等が必要となって構造が複雑となり、製造コストも高くなることが避けられないという問題がある。一方、後者(2)のように受圧室と平衡室をつなぐ大径の透孔を設けてそこに可動部材を配設しようとすると、透孔や可動部材の形成スペースを充分に確保し難く、第一のオリフィス通路の形成スペースさえも制限されてしまって第一のオリフィス通路によって発揮される防振効果を充分に得ることさえ難しくなる場合があることに加えて、新たに設けた透孔を通じての実質的な流体流動作用に基づいて、より高周波数域での高動ばね化が惹起されて防振性能が低下してしまうおそれもある。
【0008】
【特許文献1】特開昭59−089844号公報
【特許文献2】特公平02−029896号公報
【特許文献3】特公平04−017291号公報
【0009】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、動的特性の周波数依存性が抑えられて、第一のオリフィス通路を流動せしめられる流体の流動作用に基づいて発揮される減衰効果を充分に確保しつつ、小振幅振動の入力時における損失係数の著しい増大や高周波領域における動的ばね定数の著しい跳ね上がりが軽減乃至は回避され得、それによって、例えば自動車用エンジンマウントに適用することにより、エンジンシェイク等の低周波大振幅振動の入力時における高減衰特性と、アイドリング振動等の高周波小振幅振動の入力時における低動ばね特性とが、両立的に達成され得る新規な構造の流体封入式防振装置を提供することにある。
【0010】
また、本発明は、前述の如き複数のオリフィス通路を選択的に利用するためのバルブ手段や駆動手段等の複雑な機構を必要とすることなく、しかも、前述の如き大径の透孔によってオリフィス通路の形成スペースが制限されるようなこともなく、上述の如き動的特性の周波数依存性の低減が達成され得る、新規な構造の流体封入式防振装置を提供することも、併せて目的とするものである。
【0011】
【解決手段】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載され、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0012】
本発明の第一の態様は、互いに離隔位置せしめた第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結する一方、該本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成されると共に非圧縮性流体が封入せしめられて振動入力時に圧力変動が生ぜしめられる受圧室と、壁部の一部が可撓性膜で構成されると共に非圧縮性流体が封入されて該可撓性膜の変形に基づき容積変化が許容される平衡室を形成し、それら受圧室と平衡室を相互に連通する第一のオリフィス通路を設けた流体封入式防振装置において、前記第一のオリフィス通路の壁部の一部を弾性的に変形変位可能な弾性可動壁で構成すると共に、振動入力時に該第一のオリフィス通路の連通状態下で該弾性可動壁の両面に圧力差が及ぼされるようにして、振動入力時に該弾性可動壁が弾性的に変形変位せしめられるようにしたことにある。
【0013】
このような本態様に従う構造とされた流体封入式防振装置においては、振動入力時に生ぜしめられる圧力変動に伴って弾性可動壁が変形変位せしめられるということは、圧力変動の起源となる受圧室の圧力変動量が、弾性可動壁の変形変位分だけ吸収されて低減されるということになる。その結果、入力振動の振幅が小さい場合に、位相変化等の理由から惹起されると考えられる振幅依存性に起因する高周波数域の著しい高動ばね化が、受圧室の圧力変動量を抑えることによって回避され得るのである。
【0014】
従って、かかる流体封入式防振装置を、例えば自動車用のエンジンマウントに適用することにより、シェイク等の低周波大振幅振動に対しては、第一のオリフィス通路を流動せしめられる流体の流動作用に基づいて有効な減衰効果が発揮され得ると共に、アイドリング振動等の高周波小振幅振動に対しては、弾性可動壁による受圧室の圧力変動低減作用に基づいて著しい高動ばね化が回避されることにより、低動ばね特性に基づく有効な防振効果が発揮され得るのである。なお、弾性可動壁の弾性的な変形変位に基づく受圧室の圧力変動低減作用は、シェイク等の低周波大振幅振動の入力時にも発揮されるが、大振幅振動によって受圧室に惹起される圧力変動に比して、弾性可動壁の弾性的な変形変位に基づく受圧室の圧力変動低減量が充分に小さいことから、あまり影響を受けることはない。
【0015】
特に、本態様においては、上述の如き動的特性の周波数依存性を抑え得る弾性可動壁が、第一のオリフィス通路の壁部の一部によって構成されることから、特別な配設領域が必要とされることがなく、第一のオリフィス通路の形成用スペースが有利に確保され得て、大きな設計自由度が実現され得る。
【0016】
また、本態様においては、動的特性の周波数依存性を抑えて、低周波大振幅振動に対する高減衰作用と、高周波小振幅振動に対する低動ばね作用を、両立して実現せしめるために、オリフィス通路の開閉弁や切換弁等が必要とされることもなく、簡単でコンパクトを構造をもって有利に実現され得るのである。
【0017】
なお、本態様において、弾性可動壁は、振動入力に伴い受圧室に圧力変動が生ぜしめられた際に、両面に圧力差が及ぼされて弾性変形せしめられるように配設されていれば良く、具体的には、例えば
▲1▼一方の面を受圧室に露呈させると共に、他方の面を第一のオリフィス通路に露呈させた状態で配設したり、
▲2▼一方の面を第一のオリフィス通路に露呈させると共に、他方の面を平衡室に露呈させた状態で配設したり、
▲3▼一方の面をオリフィス通路に露呈させると共に、他方の面を大気中に露呈させた状態で配設したり、
▲4▼一方の面をオリフィス通路に露呈させると共に、他方の面を空気室に露呈させた状態で配設したり、
する何れの態様も、採用可能である。
【0018】
また、本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係る流体封入式防振装置において、前記弾性可動壁の一方の面を前記受圧室に露呈させると共に、該弾性可動壁の他方の面を前記第一のオリフィス通路に露呈させたことを、特徴とする。このような本態様においては、受圧室における小振幅の急激な圧力変動が弾性可動壁で直接に緩和され得ることから、動的特性の周波数依存性の低減効果が一層有利に発揮され得ると共に、受圧室でのキャビテーションの発生等に起因して封入された非圧縮性流体からの気相の分離等も効果的に抑えられ得ることとなり、受圧室内での気相の分離に起因する異音の発生や、防振性能の低下等の問題も、有利に回避され得るのである。
【0019】
また、本発明の第三の態様は、前記第二の態様に係る流体封入式防振装置において、前記受圧室と前記平衡室を仕切る仕切部材において該受圧室側に開口して延びる凹溝を形成して該凹溝を蓋部材で覆蓋することにより前記第一のオリフィス通路を形成すると共に、該蓋部材の少なくとも一部を弾性的に変形変位可能な弾性板で構成せしめて、該弾性板により前記弾性可動壁を構成したことを、特徴とする。このような本態様においては、第一のオリフィス通路の通路形状を大きな設計自由度をもって容易に設定することが出来ると共に、第一のオリフィス通路の壁部の一部を、容易に且つ広い領域に亘って弾性可動壁で構成することが可能となるのである。
【0020】
また、本発明の第四の態様は、前記第一乃至第三の何れかの態様に係る流体封入式防振装置において、前記弾性可動壁がゴム弾性板であることを、特徴とする。このような本態様においては、弾性可動壁を構成するゴム弾性板の材質や肉厚寸法等を適当に設定することにより、動的特性の振幅依存性の低減効果を含めた防振特性の調節を容易に行うことが出来る。なお、ゴム弾性板には、その特性を調節するために、例えば帆布等の拘束材を固着しても良い。
【0021】
また、本発明の第五の態様は、前記第一乃至第三の何れかの態様に係る流体封入式防振装置において、前記弾性可動壁をゴム弾性材と硬質材の積層構造を有する積層板で構成して、該ゴム弾性材が前記第一のオリフィス通路に露呈するように組み付けたことを、特徴とする。このような本態様においては、弾性可動壁の肉厚寸法を抑えつつ弾性可動壁の弾性変形量を制限することが出来るのであり、それによって、低周波大振幅の振動入力時における受圧室の発生圧力、ひいては第一のオリフィス通路を通じての流体流動量を一層有利に確保せしめて、流体の流動作用に基づく減衰効果をより効果的に得ることが可能となる。
【0022】
また、本発明の第六の態様は、前記第一乃至第五の何れかの態様に係る流体封入式防振装置において、前記第一のオリフィス通路が、そのロスファクタのピークが5〜30Hzの周波数域に存在するようにチューニングされていることを、特徴とする。このような本態様においては、例えば自動車用のエンジンマウントに対して有利に適用され得るのであり、それによって、振幅依存性による動的特性の変化が抑えられて、エンジンシェイク等の低周波大振幅の振動に対する高減衰作用と、アイドリング振動等の高周波小振幅振動に対する低動ばね作用とが、何れも有利に発揮され得て、それぞれの振動に対して有効な防振効果を得ることが可能となるのである。
【0023】
また、本発明の第七の態様は、前記第一乃至第六の何れかの態様に係る流体封入式防振装置において、前記受圧室と前記平衡室を相互に連通する第二のオリフィス通路を設けて、該第二のオリフィス通路を前記第一のオリフィス通路よりも高周波数域にチューニングしたことを、特徴とする。このような本態様においては、第二のオリフィス通路を流動せしめられる流体の流動作用に基づいて、より一層高周波数域の振動に対して有効な防振効果を得ることが可能となるのである。なお、本態様においては、第二のオリフィス通路を流動せしめられる流体の流動量を制限する可動膜や可動板を設けたり、或いは第二のオリフィス通路を開閉するバルブ手段を設けたりすることにより、第一のオリフィス通路による防振効果が有効に発揮されるようにすることが望ましい。
【0024】
また、本発明の第八の態様は、前記第一乃至第七の何れかの態様に係る流体封入式防振装置において、前記第二の取付部材を筒体形状として、該第二の取付部材の一方の開口部側に前記第一の取付部材を配設すると共に、該第一の取付部材と該第二の取付部材を弾性連結する前記本体ゴム弾性体で該第二の取付部材の一方の開口部を流体密に覆蓋する一方、該第二の取付部材の他方の開口部を前記可撓性膜で流体密に覆蓋すると共に、該第二の取付部材で支持せしめた仕切部材を該本体ゴム弾性体と該可撓性膜の対向面間に配設せしめてそれら本体ゴム弾性体と可撓性膜の対向面間を流体密に仕切ることにより、該仕切部材を挟んだ両側に前記受圧室と前記平衡室を形成し、更に該仕切部材を利用して前記第一のオリフィス通路を形成したことを、特徴とする。このような本態様においては、仕切部材を挟んだ両側に受圧室と平衡室を形成すると共に、仕切部材を利用して第一のオリフィス通路を形成して、それら受圧室と第一のオリフィス通路および平衡室を主たる振動入力方向となるマウント軸方向で重ね合わせた状態で効率的に形成することが可能となり、優れた防振性能を確保しつつ、防振装置のコンパクト化が有利に図られ得るのである。
【0025】
【発明の実施形態】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0026】
先ず、図1には、本発明の一実施形態としての自動車用のエンジンマウント10が、示されている。このエンジンマウント10は、第一の取付部材としての第一の取付金具12と第二の取付部材としての第二の取付金具14を本体ゴム弾性体で連結せしめた構造とされており、第一の取付金具12が自動車のパワーユニットに取り付けられると共に、第二の取付金具14が自動車のボデーに取り付けられることにより、パワーユニットをボデーに対して防振支持せしめるようになっている。なお、以下の説明中、上下方向とは、原則として図1中の上下方向をいうものとする。
【0027】
より詳細には、第一の取付金具12は、略円板形状を有しており、中央下面の略中央には、上方に向かって拡開するテーパ状の周壁部を備えたカップ状の保持金具18がその開口部において重ね合わされて溶着されている。なお、第一の取付金具12の外周縁部には、周上の一部において下方に向かって突出するL字形断面のストッパ部20が一体形成されている。また、第一の取付金具12の略中央部分には、上方に向かって突出する第一の固定ボルト22が上方に向かって突出して植設されており、この第一の固定ボルト22により、第一の取付金具12が、図示しない自動車のパワーユニットに取り付けられるようになっている。
【0028】
また、第二の取付金具14は、大径の円筒形状を有しており、軸方向上側の開口部には、軸方向上方に向かって次第に拡開するテーパ部24が一体形成されている一方、軸方向下側の開口部には、径方向外方に突出する環状の段差部25と、該段差部25の外周縁部から軸方向下方に突出する筒状のかしめ部26が一体形成されている。なお、テーパ部24の外周縁部には、周上の一部において径方向外方に突出する当接部28が設けられている。
【0029】
そして、第二の取付金具14の軸方向上方に所定距離を隔てて第一の取付金具12が配設されており、該第一の取付金具12が、第二の取付金具の略中心軸上で軸直角方向に広がって位置せしめられている。また、かかる配設状態下では、第一の取付金具12における保持金具18の周壁部と第二の取付金具14におけるテーパ部24が対向位置せしめられており、それらの対向面間に本体ゴム弾性体16が配設されている。かかる本体ゴム弾性体16は、全体として大径の略円錐台形状を有しており、その小径側端面に第一の取付金具12が重ね合わされ、保持金具18が本体ゴム弾性体16の小径側端面から差し込まれた状態で固着されている一方、その大径側端部外周面に第二の取付金具14のテーパ部24が固着されている。即ち、本体ゴム弾性体16は、第一及び第二の取付金具12を有する一体加硫成形品として形成されているのである。
【0030】
また、本体ゴム弾性体16で第一の取付金具12と第二の取付金具14が弾性連結されることにより、第二の取付家具14の軸方向上側の開口部が本体ゴム弾性体16で流体密に閉塞されている。なお、第二の取付金具14に設けられた当接部28には、外方に向かって突出する緩衝ゴム30が、本体ゴム弾性体16と一体形成されており、緩衝ゴム30を介して、第一の取付金具12のストッパ部20が当接部28に当接せしめられることにより、第一の取付金具12と第二の取付金具14の相対変位量が緩衝的に制限されるようになっている。
【0031】
さらに、第二の取付金具14には、その軸方向下側の開口部から仕切部材32が嵌め込まれて組み付けられている。この仕切部材32の軸方向下端には、外周縁部から径方向外方に広がる円環形状の支持脚部35が一体形成されており、該支持脚部35が第二の取付金具14の段差部25に重ね合わされることにより、仕切部材32の本体部分が第二の取付金具14の軸方向中間部分に配設されている。
【0032】
また、仕切部材32の下方には、可撓性膜としてのダイヤフラム34と、底金具36が配設されており、これら仕切部材32とダイヤフラム34および底金具36が、互いに軸方向で所定距離を隔てて重ね合わせられた状態で、第二の取付金具14の軸方向下側の開口部に組み付けられている。
【0033】
ここにおいて、ダイヤフラム34は、薄肉のゴム膜により、多少の弛みを持たせて変形容易とした略円板形状をもって形成されており、その外周縁部には円環板形状の固定金具38が加硫接着されている。また、底金具36は浅底の皿形状を有しており、外周縁部には径方向外方に広がるフランジ状部40が一体形成されている。そして、第二の取付金具14の段差部25に重ね合わされた、仕切部材32の支持脚部35に対して、固定金具38とフランジ状部40が重ね合わされて、これら支持脚部35,固定金具38およびフランジ状部40が、かしめ部26により、第二の取付金具14の下側開口部に対してかしめ固定されている。なお、第二の取付金具14の内周面には、段差部25の段差面を含んで、薄肉のシールゴム層41が被着形成されており、かしめ固定部位の流体密性が高度に維持されるようになっている。また、底金具36には、中央部分において下方に突出する第二の取付ボルト42が植設されており、この第二の取付ボルト42により、底金具36ひいては第二の取付金具14が、図示しない自動車のボデーに対して取り付けられるようになっている。
【0034】
これにより、第二の取付金具14の軸方向下側の開口部が、ダイヤフラム34で流体密に覆蓋されており、第二の取付金具14の中空内部には、本体ゴム弾性体16とダイヤフラム34の対向面間において、外部空間から流体密に仕切られて、非圧縮性流体が封入された流体封入領域が画成されている。そして、この流体封入領域が、その内部に配設された仕切部材32で流体密に仕切られており、以て、仕切部材32の上方には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成された受圧室44が形成されていると共に、仕切部材32の下方には、壁部の一部がダイヤフラム34で構成された平衡室46が形成されている。そして、自動車への装着状態下で第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に、略上下方向の振動が入力されると、本体ゴム弾性体16の弾性変形に基づいて、受圧室44に圧力変動が生ぜしめられるようになっている。また一方、平衡室46は、ダイヤフラム34の弾性変形に基づいて容積変化が容易に許容されて、圧力変動も速やかに解消されるようになっている。
【0035】
なお、受圧室44と平衡室46を含む流体封入領域に充填される非圧縮性流体としては、例えば水やアルキレングリコール,ポリアルキレングリコール,シリコーン油等が好適に採用される。また、かかる非圧縮性流体の注入は、例えば、第一及び第二の取付金具12,14を備えた本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品に対する仕切部材32やダイヤフラム34の組付けを非圧縮性流体中で行うことにより、かかる組付けと同時に行うことも可能であるが、本実施形態では、ダイヤフラム34に加硫接着された固定金具38に注入用孔48が穿孔されており、本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品への仕切部材32やダイヤフラム34の組付けを大気中で行った後、かかる注入用孔48通じて非圧縮性流体を注入し、その後、ブラインドリベット50で注入用孔48を封止することによって、非圧縮性流体を充填するようにされる。なお、固定金具38は、第二の取付金具14の段差部25に重ね合わせる際、かしめ部26に対して圧入されるようになっていることから、最終的に底金具36を組み付けてかしめ部26でかしめ固定する前の状態でも、固定金具38を第二の取付金具14の段差部25に重ね合わせた状態で、流体封入領域の外部空間に対する流体密性が有利に確保され得る。
【0036】
さらに、受圧室44と平衡室46は、仕切部材32に形成された第一のオリフィス通路としてのオリフィス通路52で相互に連通されている。これにより、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間への振動入力時には、受圧室44と平衡室46の間に惹起される相対的な圧力変動に基づいて、オリフィス通路52を通じての流体流動が生ぜしめられることとなり、かかる流体の共振作用等の流動作用に基づいて有効な防振効果が発揮されるようになっている。
【0037】
ここにおいて、オリフィス通路52は、仕切部材32に形成された凹溝54を蓋部材56で覆蓋することによって形成されている。即ち、図2〜5に示されているように、仕切部材32は、全体として厚肉の円板形状を有し、金属や合成樹脂からなる硬質材で形成されており、その軸方向上端面には、中央部分から渦巻状に延びて外周側に広がる一本の凹溝54が、略一定の断面形状をもって形成されている。また、かかる凹溝54の外周側端部には、仕切部材32を軸方向に貫通する貫通孔58が形成されていると共に、凹溝54を避けた位置には、複数のねじ穴59が上端面に開口して設けられている。
【0038】
一方、蓋部材56は、固定用の金属プレート60に対してゴム弾性板62が加硫接着されることによって形成されており、全体として、仕切部材32の上端面を略全面に亘って覆い得る大きさの円板形状を有している。金属プレート60は、仕切部材32の上端面と略同じ外径寸法の薄肉円板形状を有していると共に、仕切部材32の凹溝54に対応する位置には、該凹溝54の略全長に亘って延びる渦巻状の窓部64が、板厚方向に貫通して形成されている。そして、この窓部64を全体に亘って流体密に閉塞せしめるようにして、薄肉の板形状を有するゴム弾性板62が配設されて、金属プレート60に加硫接着されている。なお、金属プレート60の略中央には、仕切部材32における凹溝54の中間側端部に位置する部分に連通孔65が貫設されていると共に、仕切部材32の上端面に設けられた各ねじ穴59に対応する位置に、それぞれボルト挿通孔66が貫設されている。
【0039】
そして、かかる蓋部材56は、仕切部材32の上端面に対して密接状態で重ね合わされており、金属プレート60のボルト挿通孔66に挿通されて仕切部材32のねじ穴59に螺着された複数の固定ボルト67により、仕切部材32に対して固着されている。これにより、仕切部材32の凹溝54が、全長に亘って蓋部材56で流体密に覆蓋されていると共に、凹溝54の外周側端部に形成された貫通孔58の上側開口部が、蓋部材56で流体密に覆蓋されている。その結果、凹溝54が、全長に亘って、受圧室44および平衡室46から仕切られた矩形断面形状のトンネル構造とされており、その中心側端部が蓋部材56の連通孔65を通じて受圧室44に連通せしめられている一方、凹溝54の外周側端部に形成された貫通孔58を通じて平衡室46に連通されていることによって、それら受圧室44と平衡室46を相互に連通せしめて両室44,46間での流体流動を許容するオリフィス通路52が形成されている。
【0040】
また、このようにして形成されたオリフィス通路52は、周壁部のうち蓋部材56で構成された、断面において略1/4の周長に亘る部分、即ちオリフィス通路52と受圧室44を仕切る隔壁部分が、略全体に亘ってゴム弾性板62で構成されている。そして、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間への振動入力時に受圧室44に圧力変動が惹起されると、かかる受圧室44の圧力変動が直接にゴム弾性板62に及ぼされるようになっている。
【0041】
従って、振動入力時には、ゴム弾性板62の下面に対して、受圧室44の圧力変動が連通孔65を通じてオリフィス通路52内に及ぼされる圧力が作用せしめられるよりも早く、ゴム弾性板62の上面には、受圧室44の圧力変動だ直接及ぼされることとなり、その結果、ゴム弾性板62の上下両面に圧力差が生じて、その分だけゴム弾性板62が弾性変形せしめられることとなる。そして、このゴム弾性板62の弾性変形に基づいて、受圧室44の圧力変動が調節され得るのであり、その結果、オリフィス通路52を流動せしめられる流体の共振作用等の流動作用に基づく防振性能における動的特性の振幅依存性の問題が有利に軽減乃至は回避され得るのである。
【0042】
なお、ゴム弾性板62によって防振性能の振幅依存性が軽減される技術的根拠は、未だ必ずしも明らかでないが、本発明者等が検討したところ、以下のように推考され得る。即ち、蓋部材56を単一の金属板で構成してオリフィス通路52の周壁の全体を剛性壁としたもの(即ち、従来構造のもの)を考えると、大振幅の振動入力時には流体流動抵抗や本体ゴム弾性体16の弾性変形等によって発生するロス(エネルギ損失)によって或る程度抑えられていた共振現象が、小進幅の振動入力時にはロスが小さくなって極めて顕著となることにより、動的特性が著しく高い損失係数や動的ばね定数の跳ね上がりが発生することとなり、これが周波数依存性となるものと考えられる。これに対して、本実施形態のように、受圧室44とオリフィス通路52を仕切る壁部をゴム弾性板62で形成すると、ゴム弾性板62の変形量が大きくなってばね剛性が大きくなる高振幅の振動入力時よりも、ゴム弾性板62の変形量が小さい低振幅の振動入力時ほど、振動入力に際して受圧室44に惹起される圧力変動に追従してゴム弾性板62が弾性変形して受圧室44の圧力変動にロス(エネルギ損失)を発生し易いのであり、それ故、このゴム弾性板62の弾性変形の周波数特性を利用して、上述の如き、従来構造のエンジンマウント10において問題となっていた動的特性の周波数依存性がキャンセルされるようにして抑えられるのであろうと考えられる。
【0043】
因みに、上述の如き構造とされた本実施形態のエンジンマウント10について、損失係数(ロスファクタ)と動的ばね定数の周波数特性を、入力振動が大振幅である場合と小振幅である場合のそれぞれについて実測した結果を、実施例として、図6及び図7に示す。なお、大振幅の入力振動としては、エンジンシェイクに略相当する±1.5mmの振動を第一の取付金具12と第二の取付金具14に対して軸方向で相対的に及ぼす一方、小振幅の入力振動としては、アンドリング振動に略相当する±0.1mmの振動を第一の取付金具12と第二の取付金具14に対して軸方向で相対的に及ぼした。
【0044】
また、比較例として、本実施形態のエンジンマウント10の蓋部材56として、窓部(64)を設けていない円板形状の金属プレート60のみからなるものを採用して、上述の実施例と同一の実測試験を行った。その結果を、比較例として、図6及び図7に併せて示す。
【0045】
これら図6〜7に示された試験結果から明らかなように、本実施例のエンジンマウント(10)においては、入力振動が小振幅の場合と大振幅の場合で、損失係数と動的ばね定数の何れに関しても略同じ特性が発揮され得ることとなり、特にアイドリング振動に相当する小振幅の振動入力時に動的ばね定数の著しい増大が回避され得て、良好な防振性能が発揮されることが認められる。
【0046】
これに対して、比較例のエンジンマウントにおいては、損失係数と動的ばね定数の何れに関しても、振幅の相違によって特性が大幅に異なっており、動的特性(防振特性)が顕著な振幅依存性を有していることが明らかである。
【0047】
また、上述の如き構造とされたエンジンマウント10における特に大きな技術的効果は、オリフィス通路52の壁部を利用して、かかる壁部の材質を変更するだけで、上述の如き動的特性の振幅依存性に対して有効な抑制効果が発揮され得るのであり、特別な部材の増加を伴うものでないことから、部品点数の増加や構造の複雑化等の問題を回避しつつ、目的とする動的特性の改善が実現され得るということであり、特に、オリフィス通路52の形成スペースも充分に確保され得て、オリフィス通路52のチューニング自由度なども有効に確保され得る点に大きな技術的意義が存するのである。
【0048】
また、本態様のエンジンマウント10においては、受圧室44の壁部の一部を構成する状態でゴム弾性板62が配設されていることから、受圧室44に急激な負圧が発生した場合に、ゴム弾性板62が追従するように弾性変形して受圧室44の負圧の軽減が図られ得るのであり、それによって、受圧室44におけるキャビテーションの発生が軽減乃至は回避され得ることとなる。
【0049】
更にまた、本実施形態のエンジンマウント10では、仕切部材32の凹溝54を覆蓋するゴム弾性板62が、該ゴム弾性板62に加硫接着された金属プレート60を仕切部材32に対してボルト固定することによって装着されていることから、ゴム弾性板62による凹溝54の覆蓋が、高度なシール性と、優れた耐久性をもって実現され得るのである。
【0050】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施可能であり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【0051】
例えば、図8に示されているように、仕切部材32の凹溝54を覆蓋する蓋部材56として、薄肉の円板形状を有するゴム弾性板の単体からなるものを採用し、かかるゴム弾性板(蓋部材56)を、仕切部材32の上端面に対して、凹溝54の形成部位を除く略全面に接着すること等によって組み付けるようにしても良い。
【0052】
或いはまた、図9に示されているように、仕切部材32の凹溝54を覆蓋する蓋部材56として、所定厚さの円板形状を有するゴム弾性板68に対して、その上面の全面に亘って広がる円板形状の金属や硬質樹脂材からなる拘束板70を被着せしめた積層体を採用し、ゴム弾性板68の弾性変形に基づいて拘束板70の仕切部材32に対する接近/離隔方向の変位を許容せしめることにより、受圧室44の壁部の実質的な変位を許容するようにしても良い。
【0053】
また、前記実施形態では、オリフィス通路52と受圧室44を仕切る壁部が弾性可動壁としての蓋部材56で構成されていたが、それに加えて、或いはそれに代えて、該オリフィス通路52と平衡室46を仕切る壁部を弾性可動壁で構成しても良い。そして、そのような構成は、例えば、前記実施形態において、仕切部材32の下面に対して、平衡室46側に開口する凹溝を形成して、該凹溝を、前記実施形態と同様に弾性可動壁としての蓋部材で覆蓋してオリフィス通路を形成すること等によって有利に実現され得る。
【0054】
更にまた、オリフィス通路52と外部空間等を仕切る壁部を弾性可動壁で構成しても良い。そして、そのような構成は、例えば、前記実施形態において、仕切部材32の外周面に対して、外周面に開口して周方向に延びる凹溝を形成すると共に、該凹溝を覆蓋する第二の取付金具14の筒壁部の一部に窓部を形成することにより、かかる凹溝を、実質的にシールゴム層41で流体密に覆蓋してオリフィス通路を形成すること等によって有利に実現され得る。
【0055】
なお、上述の如く、オリフィス通路52と平衡室46の間の壁部や、オリフィス通路52と外部空間の間の壁部を弾性可動壁で構成した場合には、かかる弾性可動壁が受圧室44に対して直接に面することがないが,受圧室44の圧力変動がオリフィス通路52を通じて、弾性可動壁の一方の面に及ぼされることとなり、該弾性可動壁の他方の面に及ぼされる平衡室44または大気の圧力との間の圧力差を吸収するように弾性可動壁が変形変位せしめられることによって、前記実施形態と同様な効果が発揮され得ることとなる。
【0056】
また、オリフィス通路52は、その全長に亘って弾性可動壁を配設する必要はなく、オリフィス通路の長手方向の壁部のうち、その一部だけを、或いは部分的に複数箇所を、弾性可動壁で構成するようにしても良い。具体的には、オリフィス通路52のうち、その受圧室44に近い側の所定長さに亘る部分において、オリフィス通路52と受圧室44の間の壁部を弾性可動壁で構成すると共に、平衡室46に近い側の所定長さに亘る部分において、オリフィス通路52と平衡室46の間の壁部を弾性可動壁で構成することも可能である。
【0057】
加えて、前記実施形態では、本発明を自動車用のエンジンマウントに適用したものの具体例を示したが、本発明は、ボデーマウントやデフマウント等の自動車用の各種の防振装置は勿論、自動車以外の各種装置における防振装置に対しても、同様に適用可能である。
【0058】
また、本発明は、例示の如き、軸方向一方向で対向位置せしめられた第一の取付金具12と第二の取付金具14を本体ゴム弾性体16で弾性連結せしめた構造の防振装置の他、例えば実開平3−93637号公報や実開平4−34536号公報等に記載されている如き、互いに径方向に離隔配置せしめた内筒金具と外筒金具を本体ゴム弾性体で弾性連結すると共に、それら内外筒金具間に、オリフィス通路によって相互に連通された受圧室と平衡室を形成した筒形の流体封入式防振装置に対しても、同様に適用することが可能である。
【0059】
【発明の効果】
上述の説明から明らかなように、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置においては、第一のオリフィス通路の壁部の一部を弾性可動壁で構成することによって、動的特性の振幅依存性を軽減乃至は回避することが出来るのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態としての自動車用のエンジンマウントを示す縦断面図であって、図2におけるI−I断面に相当する図である。
【図2】図1に示されたエンジンマウントを構成する仕切部材の平面図である。
【図3】図2に示された仕切部材の底面図である。
【図4】図1に示されたエンジンマウントを構成する蓋部材の平面図である。
【図5】図1に示されたエンジンマウントの要部を拡大して示す縦断面図である。
【図6】図1に示された構造のエンジンマウントについて損失係数の周波数特性を実測した結果を、比較例と併せて示すグラフである。
【図7】図1に示された構造のエンジンマウントについて動的ばね定数の周波数特性を実測した結果を、比較例と併せて示すグラフである。
【図8】図1に示されたエンジンマウントにおいて採用され得る仕切部材の別の態様を示す、図5に対応する縦断面図である。
【図9】図1に示されたエンジンマウントにおいて採用され得る仕切部材の更に別の態様を示す、図5に対応する縦断面図である。
【図10】従来構造の流体封入式防振装置における動的特性の振幅依存性を説明するための説明図である。
【符号の説明】
10 エンジンマウント
12 第一の取付金具
14 第二の取付金具
16 本体ゴム弾性体
32 仕切部材
34 ダイヤフラム
44 受圧室
46 平衡室
52 オリフィス通路
54 凹溝
56 蓋部材
60 金属プレート
62 ゴム弾性板
【技術分野】
本発明は、内部に封入された水等の非圧縮性流体の流動作用や圧力変動作用を利用して防振効果を得るようにした流体封入式防振装置に係り、特に動的特性の振幅依存性が低減乃至は回避されることにより、振幅依存性に起因する悪影響をを抑えて安定した防振性能を得ることの出来る、新規な構造の流体封入式防振装置に関するものである。
【0002】
【背景技術】
従来から、振動伝達系を構成する部材間に装着される防振装置の一種として、互いに離隔位置せしめた第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結すると共に、該本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成された受圧室と、壁部の一部が可撓性膜で構成された平衡室を形成し、それら受圧室と平衡室に水等の非圧縮性流体を封入すると共に、それら受圧室と平衡室を相互に連通する第一のオリフィス通路を設けた流体封入式防振装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
そして、このような流体封入式防振装置においては、振動入力時に、本体ゴム弾性体の弾性変形に伴って圧力変動が生ぜしめられる受圧室と、可撓性膜の変形に基づいて容積変化が容易に許容される平衡室との間に惹起される相対的な圧力変動に基づいて、第一のオリフィス通路を通じての流体流動が生ぜしめられることとなり、流動せしめられる流体の共振的な流動作用等に基づいて、本体ゴム弾性体のみでは得られ難い防振効果を得ることが出来ることから、例えば高度な防振性能が要求される自動車用のエンジンマウント等への適用が検討されている。
【0004】
ところで、かかる流体封入式防振装置において流体の流動作用に基づいて発揮される動的特性は、流体流路である第一のオリフィス通路の形状や寸法,或いは流体流路を流動せしめられる非圧縮性流体の密度などといった流体封入式防振装置自体の基本性能によって異なることは勿論であるが、それだけでなく、外部から入力される加振力にも依存し、特に振幅に大きく依存する傾向がある。具体的には、図10に例示的に示すように、振動入力に際して第一のオリフィス通路を流動せしめられる流体の流動作用に基づいて発揮される損失係数:lのピークが、防振すべき振動の周波数域において発揮されるように第一のオリフィス通路をチューニングした場合を考えると、(i)→(ii)→(iii)と入力振動の振幅が小さくなるに従って、発揮される損失係数のピークが次第に大きくなる傾向にある。また、それに併せて、流体の流動作用に基づいて発揮される動的ばね定数:Kdの変化量が次第に大きくなり、損失係数のピークを超えた周波数域での動的ばね定数の跳ね上がりが顕著となる傾向にある。
【0005】
そして、このような流体封入式防振装置における動的特性の周波数依存性が、要求される防振特性によっては問題となる場合がある。具体的には、例えば自動車用エンジンマウントにおいては、10〜20Hz程度のエンジンシェイク等に相当する低周波数域で高減衰効果が要求される一方、20〜30Hz程度のアイドリング振動等に相当する高周波数域で低動ばね効果が要求されることとなるが、一般にエンジンシェイクの振幅が±1.5mm程度なのに対してアイドリング振動の振幅が±0.1mm程度と小さいために、エンジンシェイク等の低周波大振幅振動の入力時に流体の流動作用に基づいて有効な減衰効果が発揮されるように第一のオリフィス通路をチューニングすると、アイドリング振動等の高周波小振幅振動の入力時には、不必要に大きな減衰効果が発揮されることに加えて、動的ばね定数が大きくなってしまって防振性能が著しく低下してしまう場合があったのである。
【0006】
なお、このような問題に対処するために、従来では、(1)受圧室と平衡室を接続する第二のオリフィス通路を設け、該第二のオリフィス通路を流動せしめられる流体の流動作用に基づいて高周波数域での低動ばね効果が発揮されるようにチューニングして、第一のオリフィス通路と第二のオリフィス通路を選択的に利用するようにしたり(例えば、特許文献2参照。)、(2)受圧室と平衡室の間に跨がって延びる大径の透孔を形成すると共に、該透孔を仕切るようにして可動部材を微小変位可能に配設し、該可動部材の一方の面を受圧室に露呈させると共に他方の面を平衡室に露呈させることにより、第一のオリフィス通路のチューニング周波数よりも高周波数域の振動入力時における受圧室の圧力変動を、可動部材の微小変位で軽減せしめて動的ばね定数の増大を抑えるようにした構造(例えば、特許文献3参照)が、提案されている。
【0007】
しかしながら、前者(1)のように二つのオリフィス通路を設けてそれらを選択的に利用しようとすると、二つのオリフィス通路を切り換えるためのバルブ手段や、該バルブ手段を駆動するための駆動手段等が必要となって構造が複雑となり、製造コストも高くなることが避けられないという問題がある。一方、後者(2)のように受圧室と平衡室をつなぐ大径の透孔を設けてそこに可動部材を配設しようとすると、透孔や可動部材の形成スペースを充分に確保し難く、第一のオリフィス通路の形成スペースさえも制限されてしまって第一のオリフィス通路によって発揮される防振効果を充分に得ることさえ難しくなる場合があることに加えて、新たに設けた透孔を通じての実質的な流体流動作用に基づいて、より高周波数域での高動ばね化が惹起されて防振性能が低下してしまうおそれもある。
【0008】
【特許文献1】特開昭59−089844号公報
【特許文献2】特公平02−029896号公報
【特許文献3】特公平04−017291号公報
【0009】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、動的特性の周波数依存性が抑えられて、第一のオリフィス通路を流動せしめられる流体の流動作用に基づいて発揮される減衰効果を充分に確保しつつ、小振幅振動の入力時における損失係数の著しい増大や高周波領域における動的ばね定数の著しい跳ね上がりが軽減乃至は回避され得、それによって、例えば自動車用エンジンマウントに適用することにより、エンジンシェイク等の低周波大振幅振動の入力時における高減衰特性と、アイドリング振動等の高周波小振幅振動の入力時における低動ばね特性とが、両立的に達成され得る新規な構造の流体封入式防振装置を提供することにある。
【0010】
また、本発明は、前述の如き複数のオリフィス通路を選択的に利用するためのバルブ手段や駆動手段等の複雑な機構を必要とすることなく、しかも、前述の如き大径の透孔によってオリフィス通路の形成スペースが制限されるようなこともなく、上述の如き動的特性の周波数依存性の低減が達成され得る、新規な構造の流体封入式防振装置を提供することも、併せて目的とするものである。
【0011】
【解決手段】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載され、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0012】
本発明の第一の態様は、互いに離隔位置せしめた第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結する一方、該本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成されると共に非圧縮性流体が封入せしめられて振動入力時に圧力変動が生ぜしめられる受圧室と、壁部の一部が可撓性膜で構成されると共に非圧縮性流体が封入されて該可撓性膜の変形に基づき容積変化が許容される平衡室を形成し、それら受圧室と平衡室を相互に連通する第一のオリフィス通路を設けた流体封入式防振装置において、前記第一のオリフィス通路の壁部の一部を弾性的に変形変位可能な弾性可動壁で構成すると共に、振動入力時に該第一のオリフィス通路の連通状態下で該弾性可動壁の両面に圧力差が及ぼされるようにして、振動入力時に該弾性可動壁が弾性的に変形変位せしめられるようにしたことにある。
【0013】
このような本態様に従う構造とされた流体封入式防振装置においては、振動入力時に生ぜしめられる圧力変動に伴って弾性可動壁が変形変位せしめられるということは、圧力変動の起源となる受圧室の圧力変動量が、弾性可動壁の変形変位分だけ吸収されて低減されるということになる。その結果、入力振動の振幅が小さい場合に、位相変化等の理由から惹起されると考えられる振幅依存性に起因する高周波数域の著しい高動ばね化が、受圧室の圧力変動量を抑えることによって回避され得るのである。
【0014】
従って、かかる流体封入式防振装置を、例えば自動車用のエンジンマウントに適用することにより、シェイク等の低周波大振幅振動に対しては、第一のオリフィス通路を流動せしめられる流体の流動作用に基づいて有効な減衰効果が発揮され得ると共に、アイドリング振動等の高周波小振幅振動に対しては、弾性可動壁による受圧室の圧力変動低減作用に基づいて著しい高動ばね化が回避されることにより、低動ばね特性に基づく有効な防振効果が発揮され得るのである。なお、弾性可動壁の弾性的な変形変位に基づく受圧室の圧力変動低減作用は、シェイク等の低周波大振幅振動の入力時にも発揮されるが、大振幅振動によって受圧室に惹起される圧力変動に比して、弾性可動壁の弾性的な変形変位に基づく受圧室の圧力変動低減量が充分に小さいことから、あまり影響を受けることはない。
【0015】
特に、本態様においては、上述の如き動的特性の周波数依存性を抑え得る弾性可動壁が、第一のオリフィス通路の壁部の一部によって構成されることから、特別な配設領域が必要とされることがなく、第一のオリフィス通路の形成用スペースが有利に確保され得て、大きな設計自由度が実現され得る。
【0016】
また、本態様においては、動的特性の周波数依存性を抑えて、低周波大振幅振動に対する高減衰作用と、高周波小振幅振動に対する低動ばね作用を、両立して実現せしめるために、オリフィス通路の開閉弁や切換弁等が必要とされることもなく、簡単でコンパクトを構造をもって有利に実現され得るのである。
【0017】
なお、本態様において、弾性可動壁は、振動入力に伴い受圧室に圧力変動が生ぜしめられた際に、両面に圧力差が及ぼされて弾性変形せしめられるように配設されていれば良く、具体的には、例えば
▲1▼一方の面を受圧室に露呈させると共に、他方の面を第一のオリフィス通路に露呈させた状態で配設したり、
▲2▼一方の面を第一のオリフィス通路に露呈させると共に、他方の面を平衡室に露呈させた状態で配設したり、
▲3▼一方の面をオリフィス通路に露呈させると共に、他方の面を大気中に露呈させた状態で配設したり、
▲4▼一方の面をオリフィス通路に露呈させると共に、他方の面を空気室に露呈させた状態で配設したり、
する何れの態様も、採用可能である。
【0018】
また、本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係る流体封入式防振装置において、前記弾性可動壁の一方の面を前記受圧室に露呈させると共に、該弾性可動壁の他方の面を前記第一のオリフィス通路に露呈させたことを、特徴とする。このような本態様においては、受圧室における小振幅の急激な圧力変動が弾性可動壁で直接に緩和され得ることから、動的特性の周波数依存性の低減効果が一層有利に発揮され得ると共に、受圧室でのキャビテーションの発生等に起因して封入された非圧縮性流体からの気相の分離等も効果的に抑えられ得ることとなり、受圧室内での気相の分離に起因する異音の発生や、防振性能の低下等の問題も、有利に回避され得るのである。
【0019】
また、本発明の第三の態様は、前記第二の態様に係る流体封入式防振装置において、前記受圧室と前記平衡室を仕切る仕切部材において該受圧室側に開口して延びる凹溝を形成して該凹溝を蓋部材で覆蓋することにより前記第一のオリフィス通路を形成すると共に、該蓋部材の少なくとも一部を弾性的に変形変位可能な弾性板で構成せしめて、該弾性板により前記弾性可動壁を構成したことを、特徴とする。このような本態様においては、第一のオリフィス通路の通路形状を大きな設計自由度をもって容易に設定することが出来ると共に、第一のオリフィス通路の壁部の一部を、容易に且つ広い領域に亘って弾性可動壁で構成することが可能となるのである。
【0020】
また、本発明の第四の態様は、前記第一乃至第三の何れかの態様に係る流体封入式防振装置において、前記弾性可動壁がゴム弾性板であることを、特徴とする。このような本態様においては、弾性可動壁を構成するゴム弾性板の材質や肉厚寸法等を適当に設定することにより、動的特性の振幅依存性の低減効果を含めた防振特性の調節を容易に行うことが出来る。なお、ゴム弾性板には、その特性を調節するために、例えば帆布等の拘束材を固着しても良い。
【0021】
また、本発明の第五の態様は、前記第一乃至第三の何れかの態様に係る流体封入式防振装置において、前記弾性可動壁をゴム弾性材と硬質材の積層構造を有する積層板で構成して、該ゴム弾性材が前記第一のオリフィス通路に露呈するように組み付けたことを、特徴とする。このような本態様においては、弾性可動壁の肉厚寸法を抑えつつ弾性可動壁の弾性変形量を制限することが出来るのであり、それによって、低周波大振幅の振動入力時における受圧室の発生圧力、ひいては第一のオリフィス通路を通じての流体流動量を一層有利に確保せしめて、流体の流動作用に基づく減衰効果をより効果的に得ることが可能となる。
【0022】
また、本発明の第六の態様は、前記第一乃至第五の何れかの態様に係る流体封入式防振装置において、前記第一のオリフィス通路が、そのロスファクタのピークが5〜30Hzの周波数域に存在するようにチューニングされていることを、特徴とする。このような本態様においては、例えば自動車用のエンジンマウントに対して有利に適用され得るのであり、それによって、振幅依存性による動的特性の変化が抑えられて、エンジンシェイク等の低周波大振幅の振動に対する高減衰作用と、アイドリング振動等の高周波小振幅振動に対する低動ばね作用とが、何れも有利に発揮され得て、それぞれの振動に対して有効な防振効果を得ることが可能となるのである。
【0023】
また、本発明の第七の態様は、前記第一乃至第六の何れかの態様に係る流体封入式防振装置において、前記受圧室と前記平衡室を相互に連通する第二のオリフィス通路を設けて、該第二のオリフィス通路を前記第一のオリフィス通路よりも高周波数域にチューニングしたことを、特徴とする。このような本態様においては、第二のオリフィス通路を流動せしめられる流体の流動作用に基づいて、より一層高周波数域の振動に対して有効な防振効果を得ることが可能となるのである。なお、本態様においては、第二のオリフィス通路を流動せしめられる流体の流動量を制限する可動膜や可動板を設けたり、或いは第二のオリフィス通路を開閉するバルブ手段を設けたりすることにより、第一のオリフィス通路による防振効果が有効に発揮されるようにすることが望ましい。
【0024】
また、本発明の第八の態様は、前記第一乃至第七の何れかの態様に係る流体封入式防振装置において、前記第二の取付部材を筒体形状として、該第二の取付部材の一方の開口部側に前記第一の取付部材を配設すると共に、該第一の取付部材と該第二の取付部材を弾性連結する前記本体ゴム弾性体で該第二の取付部材の一方の開口部を流体密に覆蓋する一方、該第二の取付部材の他方の開口部を前記可撓性膜で流体密に覆蓋すると共に、該第二の取付部材で支持せしめた仕切部材を該本体ゴム弾性体と該可撓性膜の対向面間に配設せしめてそれら本体ゴム弾性体と可撓性膜の対向面間を流体密に仕切ることにより、該仕切部材を挟んだ両側に前記受圧室と前記平衡室を形成し、更に該仕切部材を利用して前記第一のオリフィス通路を形成したことを、特徴とする。このような本態様においては、仕切部材を挟んだ両側に受圧室と平衡室を形成すると共に、仕切部材を利用して第一のオリフィス通路を形成して、それら受圧室と第一のオリフィス通路および平衡室を主たる振動入力方向となるマウント軸方向で重ね合わせた状態で効率的に形成することが可能となり、優れた防振性能を確保しつつ、防振装置のコンパクト化が有利に図られ得るのである。
【0025】
【発明の実施形態】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0026】
先ず、図1には、本発明の一実施形態としての自動車用のエンジンマウント10が、示されている。このエンジンマウント10は、第一の取付部材としての第一の取付金具12と第二の取付部材としての第二の取付金具14を本体ゴム弾性体で連結せしめた構造とされており、第一の取付金具12が自動車のパワーユニットに取り付けられると共に、第二の取付金具14が自動車のボデーに取り付けられることにより、パワーユニットをボデーに対して防振支持せしめるようになっている。なお、以下の説明中、上下方向とは、原則として図1中の上下方向をいうものとする。
【0027】
より詳細には、第一の取付金具12は、略円板形状を有しており、中央下面の略中央には、上方に向かって拡開するテーパ状の周壁部を備えたカップ状の保持金具18がその開口部において重ね合わされて溶着されている。なお、第一の取付金具12の外周縁部には、周上の一部において下方に向かって突出するL字形断面のストッパ部20が一体形成されている。また、第一の取付金具12の略中央部分には、上方に向かって突出する第一の固定ボルト22が上方に向かって突出して植設されており、この第一の固定ボルト22により、第一の取付金具12が、図示しない自動車のパワーユニットに取り付けられるようになっている。
【0028】
また、第二の取付金具14は、大径の円筒形状を有しており、軸方向上側の開口部には、軸方向上方に向かって次第に拡開するテーパ部24が一体形成されている一方、軸方向下側の開口部には、径方向外方に突出する環状の段差部25と、該段差部25の外周縁部から軸方向下方に突出する筒状のかしめ部26が一体形成されている。なお、テーパ部24の外周縁部には、周上の一部において径方向外方に突出する当接部28が設けられている。
【0029】
そして、第二の取付金具14の軸方向上方に所定距離を隔てて第一の取付金具12が配設されており、該第一の取付金具12が、第二の取付金具の略中心軸上で軸直角方向に広がって位置せしめられている。また、かかる配設状態下では、第一の取付金具12における保持金具18の周壁部と第二の取付金具14におけるテーパ部24が対向位置せしめられており、それらの対向面間に本体ゴム弾性体16が配設されている。かかる本体ゴム弾性体16は、全体として大径の略円錐台形状を有しており、その小径側端面に第一の取付金具12が重ね合わされ、保持金具18が本体ゴム弾性体16の小径側端面から差し込まれた状態で固着されている一方、その大径側端部外周面に第二の取付金具14のテーパ部24が固着されている。即ち、本体ゴム弾性体16は、第一及び第二の取付金具12を有する一体加硫成形品として形成されているのである。
【0030】
また、本体ゴム弾性体16で第一の取付金具12と第二の取付金具14が弾性連結されることにより、第二の取付家具14の軸方向上側の開口部が本体ゴム弾性体16で流体密に閉塞されている。なお、第二の取付金具14に設けられた当接部28には、外方に向かって突出する緩衝ゴム30が、本体ゴム弾性体16と一体形成されており、緩衝ゴム30を介して、第一の取付金具12のストッパ部20が当接部28に当接せしめられることにより、第一の取付金具12と第二の取付金具14の相対変位量が緩衝的に制限されるようになっている。
【0031】
さらに、第二の取付金具14には、その軸方向下側の開口部から仕切部材32が嵌め込まれて組み付けられている。この仕切部材32の軸方向下端には、外周縁部から径方向外方に広がる円環形状の支持脚部35が一体形成されており、該支持脚部35が第二の取付金具14の段差部25に重ね合わされることにより、仕切部材32の本体部分が第二の取付金具14の軸方向中間部分に配設されている。
【0032】
また、仕切部材32の下方には、可撓性膜としてのダイヤフラム34と、底金具36が配設されており、これら仕切部材32とダイヤフラム34および底金具36が、互いに軸方向で所定距離を隔てて重ね合わせられた状態で、第二の取付金具14の軸方向下側の開口部に組み付けられている。
【0033】
ここにおいて、ダイヤフラム34は、薄肉のゴム膜により、多少の弛みを持たせて変形容易とした略円板形状をもって形成されており、その外周縁部には円環板形状の固定金具38が加硫接着されている。また、底金具36は浅底の皿形状を有しており、外周縁部には径方向外方に広がるフランジ状部40が一体形成されている。そして、第二の取付金具14の段差部25に重ね合わされた、仕切部材32の支持脚部35に対して、固定金具38とフランジ状部40が重ね合わされて、これら支持脚部35,固定金具38およびフランジ状部40が、かしめ部26により、第二の取付金具14の下側開口部に対してかしめ固定されている。なお、第二の取付金具14の内周面には、段差部25の段差面を含んで、薄肉のシールゴム層41が被着形成されており、かしめ固定部位の流体密性が高度に維持されるようになっている。また、底金具36には、中央部分において下方に突出する第二の取付ボルト42が植設されており、この第二の取付ボルト42により、底金具36ひいては第二の取付金具14が、図示しない自動車のボデーに対して取り付けられるようになっている。
【0034】
これにより、第二の取付金具14の軸方向下側の開口部が、ダイヤフラム34で流体密に覆蓋されており、第二の取付金具14の中空内部には、本体ゴム弾性体16とダイヤフラム34の対向面間において、外部空間から流体密に仕切られて、非圧縮性流体が封入された流体封入領域が画成されている。そして、この流体封入領域が、その内部に配設された仕切部材32で流体密に仕切られており、以て、仕切部材32の上方には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成された受圧室44が形成されていると共に、仕切部材32の下方には、壁部の一部がダイヤフラム34で構成された平衡室46が形成されている。そして、自動車への装着状態下で第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に、略上下方向の振動が入力されると、本体ゴム弾性体16の弾性変形に基づいて、受圧室44に圧力変動が生ぜしめられるようになっている。また一方、平衡室46は、ダイヤフラム34の弾性変形に基づいて容積変化が容易に許容されて、圧力変動も速やかに解消されるようになっている。
【0035】
なお、受圧室44と平衡室46を含む流体封入領域に充填される非圧縮性流体としては、例えば水やアルキレングリコール,ポリアルキレングリコール,シリコーン油等が好適に採用される。また、かかる非圧縮性流体の注入は、例えば、第一及び第二の取付金具12,14を備えた本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品に対する仕切部材32やダイヤフラム34の組付けを非圧縮性流体中で行うことにより、かかる組付けと同時に行うことも可能であるが、本実施形態では、ダイヤフラム34に加硫接着された固定金具38に注入用孔48が穿孔されており、本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品への仕切部材32やダイヤフラム34の組付けを大気中で行った後、かかる注入用孔48通じて非圧縮性流体を注入し、その後、ブラインドリベット50で注入用孔48を封止することによって、非圧縮性流体を充填するようにされる。なお、固定金具38は、第二の取付金具14の段差部25に重ね合わせる際、かしめ部26に対して圧入されるようになっていることから、最終的に底金具36を組み付けてかしめ部26でかしめ固定する前の状態でも、固定金具38を第二の取付金具14の段差部25に重ね合わせた状態で、流体封入領域の外部空間に対する流体密性が有利に確保され得る。
【0036】
さらに、受圧室44と平衡室46は、仕切部材32に形成された第一のオリフィス通路としてのオリフィス通路52で相互に連通されている。これにより、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間への振動入力時には、受圧室44と平衡室46の間に惹起される相対的な圧力変動に基づいて、オリフィス通路52を通じての流体流動が生ぜしめられることとなり、かかる流体の共振作用等の流動作用に基づいて有効な防振効果が発揮されるようになっている。
【0037】
ここにおいて、オリフィス通路52は、仕切部材32に形成された凹溝54を蓋部材56で覆蓋することによって形成されている。即ち、図2〜5に示されているように、仕切部材32は、全体として厚肉の円板形状を有し、金属や合成樹脂からなる硬質材で形成されており、その軸方向上端面には、中央部分から渦巻状に延びて外周側に広がる一本の凹溝54が、略一定の断面形状をもって形成されている。また、かかる凹溝54の外周側端部には、仕切部材32を軸方向に貫通する貫通孔58が形成されていると共に、凹溝54を避けた位置には、複数のねじ穴59が上端面に開口して設けられている。
【0038】
一方、蓋部材56は、固定用の金属プレート60に対してゴム弾性板62が加硫接着されることによって形成されており、全体として、仕切部材32の上端面を略全面に亘って覆い得る大きさの円板形状を有している。金属プレート60は、仕切部材32の上端面と略同じ外径寸法の薄肉円板形状を有していると共に、仕切部材32の凹溝54に対応する位置には、該凹溝54の略全長に亘って延びる渦巻状の窓部64が、板厚方向に貫通して形成されている。そして、この窓部64を全体に亘って流体密に閉塞せしめるようにして、薄肉の板形状を有するゴム弾性板62が配設されて、金属プレート60に加硫接着されている。なお、金属プレート60の略中央には、仕切部材32における凹溝54の中間側端部に位置する部分に連通孔65が貫設されていると共に、仕切部材32の上端面に設けられた各ねじ穴59に対応する位置に、それぞれボルト挿通孔66が貫設されている。
【0039】
そして、かかる蓋部材56は、仕切部材32の上端面に対して密接状態で重ね合わされており、金属プレート60のボルト挿通孔66に挿通されて仕切部材32のねじ穴59に螺着された複数の固定ボルト67により、仕切部材32に対して固着されている。これにより、仕切部材32の凹溝54が、全長に亘って蓋部材56で流体密に覆蓋されていると共に、凹溝54の外周側端部に形成された貫通孔58の上側開口部が、蓋部材56で流体密に覆蓋されている。その結果、凹溝54が、全長に亘って、受圧室44および平衡室46から仕切られた矩形断面形状のトンネル構造とされており、その中心側端部が蓋部材56の連通孔65を通じて受圧室44に連通せしめられている一方、凹溝54の外周側端部に形成された貫通孔58を通じて平衡室46に連通されていることによって、それら受圧室44と平衡室46を相互に連通せしめて両室44,46間での流体流動を許容するオリフィス通路52が形成されている。
【0040】
また、このようにして形成されたオリフィス通路52は、周壁部のうち蓋部材56で構成された、断面において略1/4の周長に亘る部分、即ちオリフィス通路52と受圧室44を仕切る隔壁部分が、略全体に亘ってゴム弾性板62で構成されている。そして、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間への振動入力時に受圧室44に圧力変動が惹起されると、かかる受圧室44の圧力変動が直接にゴム弾性板62に及ぼされるようになっている。
【0041】
従って、振動入力時には、ゴム弾性板62の下面に対して、受圧室44の圧力変動が連通孔65を通じてオリフィス通路52内に及ぼされる圧力が作用せしめられるよりも早く、ゴム弾性板62の上面には、受圧室44の圧力変動だ直接及ぼされることとなり、その結果、ゴム弾性板62の上下両面に圧力差が生じて、その分だけゴム弾性板62が弾性変形せしめられることとなる。そして、このゴム弾性板62の弾性変形に基づいて、受圧室44の圧力変動が調節され得るのであり、その結果、オリフィス通路52を流動せしめられる流体の共振作用等の流動作用に基づく防振性能における動的特性の振幅依存性の問題が有利に軽減乃至は回避され得るのである。
【0042】
なお、ゴム弾性板62によって防振性能の振幅依存性が軽減される技術的根拠は、未だ必ずしも明らかでないが、本発明者等が検討したところ、以下のように推考され得る。即ち、蓋部材56を単一の金属板で構成してオリフィス通路52の周壁の全体を剛性壁としたもの(即ち、従来構造のもの)を考えると、大振幅の振動入力時には流体流動抵抗や本体ゴム弾性体16の弾性変形等によって発生するロス(エネルギ損失)によって或る程度抑えられていた共振現象が、小進幅の振動入力時にはロスが小さくなって極めて顕著となることにより、動的特性が著しく高い損失係数や動的ばね定数の跳ね上がりが発生することとなり、これが周波数依存性となるものと考えられる。これに対して、本実施形態のように、受圧室44とオリフィス通路52を仕切る壁部をゴム弾性板62で形成すると、ゴム弾性板62の変形量が大きくなってばね剛性が大きくなる高振幅の振動入力時よりも、ゴム弾性板62の変形量が小さい低振幅の振動入力時ほど、振動入力に際して受圧室44に惹起される圧力変動に追従してゴム弾性板62が弾性変形して受圧室44の圧力変動にロス(エネルギ損失)を発生し易いのであり、それ故、このゴム弾性板62の弾性変形の周波数特性を利用して、上述の如き、従来構造のエンジンマウント10において問題となっていた動的特性の周波数依存性がキャンセルされるようにして抑えられるのであろうと考えられる。
【0043】
因みに、上述の如き構造とされた本実施形態のエンジンマウント10について、損失係数(ロスファクタ)と動的ばね定数の周波数特性を、入力振動が大振幅である場合と小振幅である場合のそれぞれについて実測した結果を、実施例として、図6及び図7に示す。なお、大振幅の入力振動としては、エンジンシェイクに略相当する±1.5mmの振動を第一の取付金具12と第二の取付金具14に対して軸方向で相対的に及ぼす一方、小振幅の入力振動としては、アンドリング振動に略相当する±0.1mmの振動を第一の取付金具12と第二の取付金具14に対して軸方向で相対的に及ぼした。
【0044】
また、比較例として、本実施形態のエンジンマウント10の蓋部材56として、窓部(64)を設けていない円板形状の金属プレート60のみからなるものを採用して、上述の実施例と同一の実測試験を行った。その結果を、比較例として、図6及び図7に併せて示す。
【0045】
これら図6〜7に示された試験結果から明らかなように、本実施例のエンジンマウント(10)においては、入力振動が小振幅の場合と大振幅の場合で、損失係数と動的ばね定数の何れに関しても略同じ特性が発揮され得ることとなり、特にアイドリング振動に相当する小振幅の振動入力時に動的ばね定数の著しい増大が回避され得て、良好な防振性能が発揮されることが認められる。
【0046】
これに対して、比較例のエンジンマウントにおいては、損失係数と動的ばね定数の何れに関しても、振幅の相違によって特性が大幅に異なっており、動的特性(防振特性)が顕著な振幅依存性を有していることが明らかである。
【0047】
また、上述の如き構造とされたエンジンマウント10における特に大きな技術的効果は、オリフィス通路52の壁部を利用して、かかる壁部の材質を変更するだけで、上述の如き動的特性の振幅依存性に対して有効な抑制効果が発揮され得るのであり、特別な部材の増加を伴うものでないことから、部品点数の増加や構造の複雑化等の問題を回避しつつ、目的とする動的特性の改善が実現され得るということであり、特に、オリフィス通路52の形成スペースも充分に確保され得て、オリフィス通路52のチューニング自由度なども有効に確保され得る点に大きな技術的意義が存するのである。
【0048】
また、本態様のエンジンマウント10においては、受圧室44の壁部の一部を構成する状態でゴム弾性板62が配設されていることから、受圧室44に急激な負圧が発生した場合に、ゴム弾性板62が追従するように弾性変形して受圧室44の負圧の軽減が図られ得るのであり、それによって、受圧室44におけるキャビテーションの発生が軽減乃至は回避され得ることとなる。
【0049】
更にまた、本実施形態のエンジンマウント10では、仕切部材32の凹溝54を覆蓋するゴム弾性板62が、該ゴム弾性板62に加硫接着された金属プレート60を仕切部材32に対してボルト固定することによって装着されていることから、ゴム弾性板62による凹溝54の覆蓋が、高度なシール性と、優れた耐久性をもって実現され得るのである。
【0050】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施可能であり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【0051】
例えば、図8に示されているように、仕切部材32の凹溝54を覆蓋する蓋部材56として、薄肉の円板形状を有するゴム弾性板の単体からなるものを採用し、かかるゴム弾性板(蓋部材56)を、仕切部材32の上端面に対して、凹溝54の形成部位を除く略全面に接着すること等によって組み付けるようにしても良い。
【0052】
或いはまた、図9に示されているように、仕切部材32の凹溝54を覆蓋する蓋部材56として、所定厚さの円板形状を有するゴム弾性板68に対して、その上面の全面に亘って広がる円板形状の金属や硬質樹脂材からなる拘束板70を被着せしめた積層体を採用し、ゴム弾性板68の弾性変形に基づいて拘束板70の仕切部材32に対する接近/離隔方向の変位を許容せしめることにより、受圧室44の壁部の実質的な変位を許容するようにしても良い。
【0053】
また、前記実施形態では、オリフィス通路52と受圧室44を仕切る壁部が弾性可動壁としての蓋部材56で構成されていたが、それに加えて、或いはそれに代えて、該オリフィス通路52と平衡室46を仕切る壁部を弾性可動壁で構成しても良い。そして、そのような構成は、例えば、前記実施形態において、仕切部材32の下面に対して、平衡室46側に開口する凹溝を形成して、該凹溝を、前記実施形態と同様に弾性可動壁としての蓋部材で覆蓋してオリフィス通路を形成すること等によって有利に実現され得る。
【0054】
更にまた、オリフィス通路52と外部空間等を仕切る壁部を弾性可動壁で構成しても良い。そして、そのような構成は、例えば、前記実施形態において、仕切部材32の外周面に対して、外周面に開口して周方向に延びる凹溝を形成すると共に、該凹溝を覆蓋する第二の取付金具14の筒壁部の一部に窓部を形成することにより、かかる凹溝を、実質的にシールゴム層41で流体密に覆蓋してオリフィス通路を形成すること等によって有利に実現され得る。
【0055】
なお、上述の如く、オリフィス通路52と平衡室46の間の壁部や、オリフィス通路52と外部空間の間の壁部を弾性可動壁で構成した場合には、かかる弾性可動壁が受圧室44に対して直接に面することがないが,受圧室44の圧力変動がオリフィス通路52を通じて、弾性可動壁の一方の面に及ぼされることとなり、該弾性可動壁の他方の面に及ぼされる平衡室44または大気の圧力との間の圧力差を吸収するように弾性可動壁が変形変位せしめられることによって、前記実施形態と同様な効果が発揮され得ることとなる。
【0056】
また、オリフィス通路52は、その全長に亘って弾性可動壁を配設する必要はなく、オリフィス通路の長手方向の壁部のうち、その一部だけを、或いは部分的に複数箇所を、弾性可動壁で構成するようにしても良い。具体的には、オリフィス通路52のうち、その受圧室44に近い側の所定長さに亘る部分において、オリフィス通路52と受圧室44の間の壁部を弾性可動壁で構成すると共に、平衡室46に近い側の所定長さに亘る部分において、オリフィス通路52と平衡室46の間の壁部を弾性可動壁で構成することも可能である。
【0057】
加えて、前記実施形態では、本発明を自動車用のエンジンマウントに適用したものの具体例を示したが、本発明は、ボデーマウントやデフマウント等の自動車用の各種の防振装置は勿論、自動車以外の各種装置における防振装置に対しても、同様に適用可能である。
【0058】
また、本発明は、例示の如き、軸方向一方向で対向位置せしめられた第一の取付金具12と第二の取付金具14を本体ゴム弾性体16で弾性連結せしめた構造の防振装置の他、例えば実開平3−93637号公報や実開平4−34536号公報等に記載されている如き、互いに径方向に離隔配置せしめた内筒金具と外筒金具を本体ゴム弾性体で弾性連結すると共に、それら内外筒金具間に、オリフィス通路によって相互に連通された受圧室と平衡室を形成した筒形の流体封入式防振装置に対しても、同様に適用することが可能である。
【0059】
【発明の効果】
上述の説明から明らかなように、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置においては、第一のオリフィス通路の壁部の一部を弾性可動壁で構成することによって、動的特性の振幅依存性を軽減乃至は回避することが出来るのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態としての自動車用のエンジンマウントを示す縦断面図であって、図2におけるI−I断面に相当する図である。
【図2】図1に示されたエンジンマウントを構成する仕切部材の平面図である。
【図3】図2に示された仕切部材の底面図である。
【図4】図1に示されたエンジンマウントを構成する蓋部材の平面図である。
【図5】図1に示されたエンジンマウントの要部を拡大して示す縦断面図である。
【図6】図1に示された構造のエンジンマウントについて損失係数の周波数特性を実測した結果を、比較例と併せて示すグラフである。
【図7】図1に示された構造のエンジンマウントについて動的ばね定数の周波数特性を実測した結果を、比較例と併せて示すグラフである。
【図8】図1に示されたエンジンマウントにおいて採用され得る仕切部材の別の態様を示す、図5に対応する縦断面図である。
【図9】図1に示されたエンジンマウントにおいて採用され得る仕切部材の更に別の態様を示す、図5に対応する縦断面図である。
【図10】従来構造の流体封入式防振装置における動的特性の振幅依存性を説明するための説明図である。
【符号の説明】
10 エンジンマウント
12 第一の取付金具
14 第二の取付金具
16 本体ゴム弾性体
32 仕切部材
34 ダイヤフラム
44 受圧室
46 平衡室
52 オリフィス通路
54 凹溝
56 蓋部材
60 金属プレート
62 ゴム弾性板
Claims (8)
- 互いに離隔位置せしめた第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結する一方、該本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成されると共に非圧縮性流体が封入せしめられて振動入力時に圧力変動が生ぜしめられる受圧室と、壁部の一部が可撓性膜で構成されると共に非圧縮性流体が封入されて該可撓性膜の変形に基づき容積変化が許容される平衡室を形成し、それら受圧室と平衡室を相互に連通する第一のオリフィス通路を設けた流体封入式防振装置において、
前記第一のオリフィス通路の壁部の一部を弾性的に変形変位可能な弾性可動壁で構成すると共に、振動入力時に該第一のオリフィス通路の連通状態下で該弾性可動壁の両面に圧力差が及ぼされるようにして、振動入力時に該弾性可動壁が弾性的に変形変位せしめられるようにしたことを特徴とする流体封入式防振装置。 - 前記弾性可動壁の一方の面を前記受圧室に露呈させると共に、該弾性可動壁の他方の面を前記第一のオリフィス通路に露呈させた請求項1に記載の流体封入式防振装置。
- 前記受圧室と前記平衡室を仕切る仕切部材において該受圧室側に開口して延びる凹溝を形成して該凹溝を蓋部材で覆蓋することにより前記第一のオリフィス通路を形成すると共に、該蓋部材の少なくとも一部を弾性的に変形変位可能な弾性板で構成せしめて、該弾性板により前記弾性可動壁を構成した請求項2に記載の流体封入式防振装置。
- 前記弾性可動壁がゴム弾性板である請求項1乃至3の何れかに記載の流体封入式防振装置。
- 前記弾性可動壁をゴム弾性材と硬質材の積層構造を有する積層板で構成して、該ゴム弾性材が前記第一のオリフィス通路に露呈するように組み付けた請求項1乃至3の何れかに記載の流体封入式防振装置。
- 前記第一のオリフィス通路が、そのロスファクタのピークが5〜30Hzの周波数域に存在するようにチューニングされている請求項1乃至5の何れかに記載の流体封入式防振装置。
- 前記受圧室と前記平衡室を相互に連通する第二のオリフィス通路を設けて、該第二のオリフィス通路を前記第一のオリフィス通路よりも高周波数域にチューニングした請求項1乃至6の何れかに記載の流体封入式防振装置。
- 前記第二の取付部材を筒体形状として、該第二の取付部材の一方の開口部側に前記第一の取付部材を配設すると共に、該第一の取付部材と該第二の取付部材を弾性連結する前記本体ゴム弾性体で該第二の取付部材の一方の開口部を流体密に覆蓋する一方、該第二の取付部材の他方の開口部を前記可撓性膜で流体密に覆蓋すると共に、該第二の取付部材で支持せしめた仕切部材を該本体ゴム弾性体と該可撓性膜の対向面間に配設せしめてそれら本体ゴム弾性体と可撓性膜の対向面間を流体密に仕切ることにより、該仕切部材を挟んだ両側に前記受圧室と前記平衡室を形成し、更に該仕切部材を利用して前記第一のオリフィス通路を形成した請求項1乃至7の何れかに記載の流体封入式防振装置。
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Cited By (3)
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JP2009127656A (ja) * | 2007-11-20 | 2009-06-11 | Kurashiki Kako Co Ltd | 液体封入式ストラットマウント |
JP2012026510A (ja) * | 2010-07-23 | 2012-02-09 | Tokai Rubber Ind Ltd | 流体封入式防振装置 |
JP2013119911A (ja) * | 2011-12-07 | 2013-06-17 | Toyo Tire & Rubber Co Ltd | 液封入式防振装置および防振ユニット |
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2002
- 2002-09-11 JP JP2002265036A patent/JP2004100855A/ja not_active Withdrawn
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