JP2004099926A - 高強度軟磁性ステンレス鋼およびその製造方法 - Google Patents

高強度軟磁性ステンレス鋼およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【目的】製造が容易で、ビッカース硬度でHv250以上、かつ磁場10 Oeのときの磁束密度B10で1.0Tを超える磁束密度が得られる高強度軟磁性ステンレス鋼を提供する。
【構成】Si含有量を3.5%以下に抑え,Crを9.0〜20.0%,Cuを1.0〜4.0%含み、式(2)で定義されるA値が13を超えるように成分調整された鋼板を、1000〜1200℃で溶体化後、平均冷却速度が100℃/秒以下となるように冷却し、さらに400〜700℃の温度範囲内で時効処理するすることにより、Cuリッチ相が分散・析出したフェライト単相からなる組織をもつ鋼板を得る。
Figure 2004099926

【選択図】    なし

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、高強度,高磁束密度および高耐食性が要求される電動機の回転子等に用いられる、高強度軟磁性ステンレス鋼およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の電動機の回転子には電磁鋼板等の鉄系材料が用いられている。昨近、省エネルギーを狙いとして、周波数を変えることによって電動機の回転数を最適の回転数に変えるインバーター制御の電動機がエアコン等の家電製品に用いられている。最近、さらに効率を上げるためにこの電動機の回転数をさらに上げようとのニーズが顕在化してきている。
しかしながら、電動機の回転数を上げると回転子にかかる遠心力が増大し、従来の軟磁性材料の強度ではHv200以下と強度が低いため、回転数を上げることには限界があった。また使用される環境によっては銹が発生するためめっき等の処理が必要であった。
【0003】
鉄鋼材料の強度を増大させる方法として、加工強化,マルテンサイト変態強化,固溶強化,析出強化,結晶粒微細強化がある。ステンレス系軟磁性材料の軟磁性特性を低下させずに高強度化する技術として以下の技術が開示されている。
固溶強化を利用した技術として、特開昭49−73322号公報には、フェライト系ステンレス鋼成分にPを0.1〜0.4%含有させた材料が開示されているが、Pを0.1%以上含有させると耐食性が劣化するとともに熱間加工で耳割れが発生しやすくなる。またこのステンレス鋼は固溶により強化しようとするものであるため、最高硬さでもHv210と大きな高強度化は望めなかった。また、特開昭61−272352号公報あるいは特開昭63−109143号公報には、Siを1.5〜3.5%添加して固溶強化する方法が開示されているが、固溶強化のみでは最高硬さでもHv220までである。固溶強化でこれ以上硬度を上げようとすると、冷間加工性が著しく低下するという問題点があった。
【0004】
析出強化を利用した技術として、特開昭54−124818号公報には、Fe−Cr系のフェライト系ステンレス鋼にNi,Al,Tiを含有させ、時効処理を施して析出硬化により高強度化させた材料が開示されている。この技術によれば、析出硬化によりHv450以上の高硬度が得られるものの、Tiを多量に含有するためTi系介在部に起因した表面キズが発生しやすいこと、製造工程で著しく靭性が低下し板切れ等の製造上の問題があった。さらに、析出硬化のために高価なNiを多量に添加する必要があり、コストが高くなるという問題も抱えていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来技術では析出強化により強度が高く、高磁場での磁束密度が比較的高い技術が開示されている。しかしながら、フェライト単相にするためにCr含有量を多くせざるを得ずその結果、磁束密度が小さくなり、また、析出強化のため表面キズを生じやすい合金元素を多量に添加する必要があったり、あるいは高価な合金元素を多量に含有させなければならないという問題がった。
そこで、本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、製造が容易で、表面キズ等の問題がなく、大きなコストアップを招くこともなく、ビッカース硬度でHv250(引張強度で800N/mm)以上、かつ磁場10 Oe(796A/m)のときの磁束密度B10で1.0Tを超える磁束密度が得られる高強度軟磁性ステンレス鋼を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の高強度軟磁性ステンレス鋼は、その目的を達成するため、質量%で、C:0.03%以下,Si:0.2〜3.5%,Mn:1.0%以下,Ni:0.5%以下,P:0.04%以下,S:0.03%以下,Al:0.05〜5.0%,N:0.03%以下,Cr:9.0〜20.0質量%,Cu:1.0〜4.0%を含み、さらに必要に応じてNb,Tiのうちから選ばれるいずれか少なくとも1種単独では、Nb:1.0%以下,Ti:0.5%以下,あるいはNbとTiの複合で1.0%以下を含み、残部が実質的にFeの組成をもち、式(2)で定義されるA値が13を超え、溶体化時効処理によるCuリッチ相が分散・析出したフェライト単相からなる組織を有することを特徴とする。
Figure 2004099926
また、このような高強度軟磁性ステンレス鋼は、上記成分を有する鋼板を、1000〜1200℃で溶体化後、平均冷却速度が100℃/秒以下となるように冷却し、その後400〜700℃の温度範囲内で時効処理することにより得られる。
【0007】
【実施の態様】
本発明者等は、製造性,製造コストを考慮しつつ磁束密度を低下させずに、かつ高強度化するステンレス鋼について検討した。
SUS410系ステンレス鋼を圧延により加工硬化させて強度を高めたもの、フェライトとオーステナイトの2相域から焼き入れてマルテンサイト相を生成させたもの、SUS410系ステンレスをベースにSiを添加して固溶強化したもの、並びにFe−12Cr−0.6Si−1.5AlをベースにCuを0〜2%の範囲で添加した冷延板を、溶体化処理(1000℃×1分、空冷)後、550℃で20分時効析出処理したものについて、硬度アップΔHvと磁場10 Oeでの磁束密度B10の関係を調査した。
【0008】
外径45mm,内径33mmのリング状の試験片に加工後、磁束密度の測定は直流磁化BH特性自動記録装置により行った。なお、時効処理については、リング状試験片に加工後、溶体化処理,時効処理を行った。各サンプルの初期の磁束密度は、マルテンサイト強化材,固溶強化材および加工強化材については焼鈍まま材で、時効処理材については溶体化処理後に測定した。
各サンプルの初期状態での磁束密度B10の値は1.2〜1.4Tであり、いずれも1.0T以上であった。
各強度向上策を施した後の硬度の増加と磁束密度B10の関係を図1に示す。加工強化あるいはマルテンサイト強化では強度の上昇とともに磁束密度B10も著しく低下している。Si添加による固溶強化およびCu析出によるものについては磁束密度B10をほとんど低下させることなく硬さを上げることが可能であることがわかる。
【0009】
CuおよびSiの添加量を変えた0.8mm厚の冷延板を作製し、Cu添加材については1000℃で溶体化処理後、550℃×20分の時効処理したときの硬さ、Si添加材については得られた冷延板を1000℃で焼鈍した後の硬さを測定した。その結果を図2に示す。なお、Cu添加量が4.0%を超えたものでは熱間圧延時に耳割れが生じた。また、Si添加量が3.5%を超えたものは冷間圧延が困難であった。
圧延時の割れ等、製造上問題のない範囲でSiを添加したものの最高硬さはHv220程度であるのに対して、Cu添加材はHv300まで到達する。
【0010】
以上のことから、コストを上昇させることなく製造が容易で、磁束密度を落とさず磁束密度B10で1.0T以上の磁束密度が得られ、かつ250Hv以上の硬さが得られる方策としては、Cuを添加し時効によりCuリッチ相を分散させることが有効であることがわかった。
磁束密度を高い状態で維持するために、組織をフェライト単相にする必要があることはいうまでもない。本発明では、時効析出によりフェライト中にCuリッチ相を分散させて、磁束密度を低下させることなく、強度を高くすることができたものである。
加工硬化,マルテンサイト相による硬化ともその強化の機構として共通するところは転位密度の増大による強化である。すなわち、加工硬化は圧延等による加工により導入される金属組織中の転位の増大に伴って、またマルテンサイト相による強化は高転位密度のマルテンサイト相が増すに従い、強度は向上するがそれに反比例して磁束密度は低下する。したがって転位により著しく磁区の移動が制限されるため、転位密度が増大するほど磁束密度は低下すると推測される。一方、固溶強化や本発明のような時効析出では金属組織中の転位密度を増大させることなしに強化可能であるため、磁束密度の低下は殆どなかったと推察される。
【0011】
本発明が対象とするステンレス鋼では、合金成分および含有量を次のように定める。なお「%」表示はいずれも「質量%」である。
【0012】
C:0.03%以下
Cは、強力なオーステナイト生成元素であり、マルテンサイトの生成を促進させるとともにCrとの炭化物を生成して耐食性や磁気特性を劣化させる有害元素である。このような影響を抑制するため、C含有量の上限を0.03%に設定した。
Si:0.2〜3.5%
Siは脱酸剤として添加される。またフェライト生成元素であり、また電気抵抗を高めるため、高周波磁場での渦電流損を小さくするのに有効である。このため積極的に添加される。しかし、過剰に添加すると硬質になり、冷間圧延時に割れが発生しやすくなるので、Si含有量の上限は3.5%に設定した。
プレス等の加工が加わる場合は2.0%以下にすることが好ましい。
【0013】
Mn:1.0%以下
Mnは脱酸剤であるが、オーステナイト生成元素であり、マルテンサイトの生成を促進させる作用を呈する。そのため、Mn含有量は1.0%以下に限定した。
Ni:0.5%以下
Niは強力なオーステナイト生成元素であり、マルテンサイトの生成を促進させる作用を呈する。マルテンサイトの生成を抑制するため、Ni含有量は0.5%以下に限定した。
【0014】
P:0.04%以下
Pは固溶強化に有効であるが、耐食性を低下させる。そのため、P含有量は0.04%以下に限定した。
S:0.03%以下
Sは耐食性、磁気特性を低下させるので0.03%以下に限定した。
Al:0.05〜5.0%以下
Alはフェライト生成元素で、かつ電気抵抗を高めるため高周波磁場での渦電流損を小さくするのに有効である。このため積極的に添加されるが、5.0%を超えると靭性が低下するとともにAl系介在物に起因した表面キズが発生しやすくなる。このため、Al含有量の上限を5.0%に設定した。好ましくは3.0%以下である。
【0015】
N:0.03%以下
NはCと同様に強力なオーステナイト生成元素で、マルテンサイトの生成を促進させる。そのため、N含有量は0.03%以下とした。
Cr:9.0〜20.0%
Crは耐食性を良くし、かつ電気抵抗を上げる。このような作用・効果は、9.0%以上のCr含有量で顕著になる。しかし、20.0%を超えるCrの過剰添加は、材質を硬質化しプレス加工性を劣化させる。したがって、Cr含有量は9.0〜20.0%とする。好ましい範囲は14.0%以下である。
【0016】
Cu:1.0〜4.0%
Cuは、本発明で最も重要な合金成分である。前条のように時効強化作用を有する。Cuは、本来オーステナイト生成元素であるが、Niに比べオーステナイト化傾向は弱い。したがってマルテンサイト生成に関してCuの含有をさほど心配する必要はない。また、Niに比べ飽和磁束密度の低下が小さい。
時効強化を発現させるためには1.0%以上の含有が必要である。しかし、4.0%を超えて過剰に含有すると熱間加工性が著しく低下し、熱間圧延中に耳割れが発生する。したがって、Cu含有量は1.0〜4.0%の範囲とする。好ましくは1.5〜3.5%である。
【0017】
Nb:0.00〜1.0%
NbはCおよびNを固定するとともに、それ自身がフェライト生成元素である。しかしながら、1.0%を超える過剰なNb添加は、材料の靭性低下をもたらす。したがって、Nb含有量の上限は1.0%とする。
Ti:0.00〜0.5%
Nbと同様にCおよびNを固定するとともに、それ自身がフェライト生成元素である。しかしながら、0.5%を超えるTiを添加すると、Alと同様にTi系介在物を生成して表面キズが発生しやすくなる。したがって、Ti含有量の上限は0.5%とする。
なお、TiとNbは複合して添加しても良い。ただし、その合計量が1.0%を超えると靭性が低下し、製造性が悪化するため、上限は1.0%とする。
【0018】
前述したように、高い磁束密度を得るためには、溶体化熱処理後の金属組織をフェライト単層にする必要がある。そこで、本発明の成分範囲でフェライト単相になるための条件について検討した。
種々の成分からなる鋼を実験室的に溶製し、得られたそれぞれの小鋼塊を鍛造・熱延し、焼鈍・脱スケール後、冷延して1mm厚の板を得た。この冷延板を1000℃で溶体化後、金属組織を顕微鏡観察しマルテンサイト量を測定した。各成分のマルテンサイト生成に対する寄与度を求め、下記(2)式を求めた。
Figure 2004099926
(2)式で求めたA値とマルテンサイト生成量との関係を整理すると、図3に示すようになる。この結果から、A値が13以下ではマルテンサイトが生成することがわかる。したがって、溶体化後の組織をフェライト単相にするためには、A値が13を超えるように成分調整する必要がある。
【0019】
本発明者等は、さらに適正熱処理条件を把握すべく、Fe−12Cr−1.5Si−1.5Al鋼をベースに、Cuを1.5〜3.0%の範囲で変えて添加した各種サンプルを用いて検討を行った。種々の温度で保持したサンプルを室温まで冷却後、550℃で30分時効処理し、時効前後の硬さの差分を調査した。その結果、溶体化処理温度が高いほど、時効後の硬度増分が大きくなり、1000℃以上で飽和した。また、1000℃に満たないとCuの固溶が十分でない。したがって、溶体化処理温度の下限は1000℃とした。しかし、過度に高い溶体化温度では酸化スケールが多量に生成するため、上限は1200℃にする。
時効温度については、400℃に満たないと時効時間が長くなりすぎて効率的でない。また、700℃を超えるとCuリッチ相であるε−Cu相が短時間で粗大化して硬化しなくなる。そこで時効処理は400〜700℃の温度範囲内で施す必要がある。
【0020】
溶体化処理後の冷却速度と時効処理後の磁束密度との関係をFe−12Cr−1.5Si−1.5Al−2Cu鋼を用いて調査した。
1000℃×0sの溶体化処理後、種々の冷却速度で冷却した各サンプルに、650℃×10sの時効処理を施した。そして、各サンプルの磁束密度を測定した。その結果を図4に示している。1000℃から200℃までの平均冷却速度で100℃/秒を超える速い速度で冷却すると、磁束密度は著しく低下する。冷却速度が速い場合、室温まで冷却した鋼板に熱歪が生じ、この残留歪が時効処理でも消失せず、磁気特性を低下させていると推察される。
したがって、溶体化後の平均冷却速度は100℃/秒以下にする必要がある。
ただし、1℃/秒よりも遅くするとCuが冷却途中で析出する。空冷よりも少し早い程度とすることが好ましい。
【0021】
【実施例】
表1に示す組成を有する鋼を30kg高周波真空溶解炉で溶製し、粗熱延,仕上げ圧延により3mm厚の熱延板を作製し、その後、焼鈍・酸洗,冷延を行い、0.8mm厚の冷延板を作製した。
ただし、鋼No.10は、Cu含有量が多かったため熱延の段階で著しい耳割れが発生し、鋼No.13は、Si含有量が多すぎたため冷延で割れが発生した。このため、この2つの鋼については以降の工程を省略した。
その他の鋼サンプルのうち、時効析出により強化するものに対しては、0.8mm厚の冷延板に溶体化処理と時効処理を施した。溶体化処理温度は1000℃で1分保持した後、空冷した。空冷の際の室温までの平均冷却速度は約5℃/秒であった。時効処理は550℃で均熱30分で行った。
固溶強化材は0.8mm厚の冷延板を1000℃で焼鈍した。加工強化材は冷延で耳切れが生じない圧延率で圧延ままとした。
【0022】
時効強化材の磁束密度は外径45mm,内径33mmのリング状試験片に加工後、溶体化・時効処理を行い、その後直流磁化BH特性自動記録装置にて10 Oeの磁場をかけたときの磁束密度B10を測定した。固溶強化材の磁束密度は、同じサイズの試験片に加工,焼鈍後に、また、加工強化材の磁束密度は、加工後同じサイズに切り出した試験片を用いて同じ方法で測定した。
硬さは、ビッカース硬度試験機により荷重10kgfで測定した。
それらの測定結果を表2に示す。
【0023】
本発明にしたがった鋼No.1〜8では、熱延,冷延とも割れは発生しなかった。また磁束密度B10は1.0T以上であり、硬さもHv250以上で、所期の目的に沿うものであった。
しかしながら、4.0%を超えるCuを添加した鋼No.10は、熱延の段階で、また、3.5%を超えるSiを添加した鋼No.13は、所定厚みに冷延する前に著しい割れが生じた。
Siを2.5%のみ添加し固溶強化した鋼No.9は、磁束密度B10は1.0T以上であったが、硬さはHv200以下であった。固溶強化のみでは所望の硬さが得られないことがわかる。
鋼No.11は、A値が13以下であったために冷却中にマルテンサイトが生じ、磁束密度B10が著しく小さい値となった。鋼No.12は、Cr含有量が20.0%を超えていたため、磁束密度B10が1.0T未満になった。さらに鋼No.14は、加工強化させているため磁束密度B10,硬さとも低かった。
【0024】
Figure 2004099926
【0025】
Figure 2004099926
【0026】
鋼No.7を用いて、条件を変えて溶体化・時効処理したときの磁束密度B10と硬さの変化について調べた。その結果を表3に示す。
本発明にしたがった実験No.E1〜E3は、いずれも磁束密度B10が1.0T以上であり、また硬さはHv250以上であった。
しかしながら、溶体化処理温度が低かった実験No.E4は、Cuの固溶・析出が不十分で、時効後の硬さの増加が小さくHv250に満たなかった。溶体化温度保持後の冷却を水冷で行ったため、冷却速度が早すぎた実験No.E5は、時効後の磁束密度B10の値が著しく低い値となった。時効温度が高すぎた実験No.E6は、過時効となりHv250以上の硬さは得られなかった。逆に時効温度が低すぎた実験No.E7は、長時間に時効を行ってもHv250以上の硬さは得られなかった。
【0027】
Figure 2004099926
【0028】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、熱延,冷延時に割れ発生等の問題はなく、高価なNiや、表面キズの原因となるTiを多量に添加することなく、優れた耐食性を有し、1.0Tを超える高い磁束密度B10およびHv250以上の硬さをもつ軟磁性のステンレス鋼を容易に得ることができる。
なお、説明を省略したが本発明ステンレス鋼の電気抵抗は60μΩcm以上であるため交流磁場での渦電流損が小さいため、本発明による鋼板は高周波数での磁束密度の低下が小さい。また本発明の強化機構が時効強化であるため、溶体化・時効処理前は比較的軟質であり、加工が容易である。したがって、電動機のコア,ヨーク等、種々の複雑な形状品の成形加工も容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】硬さの増加と磁束密度B10の低下との関係を示す図
【図2】Cu,Siの添加量と硬さとの関係を示す図
【図3】A値とマルテンサイト相との関係を説明する図
【図4】溶体化後の平均冷却速度と時効後の磁束密度との関係を示す図

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.03%以下,Si:0.2〜3.5%,Mn:1.0%以下,Ni:0.5%以下,P:0.04%以下,S:0.03%以下,Al:0.05〜5.0%,N:0.03%以下,Cr:9.0〜20.0%,Cu:1.0〜4.0%を含み、残部が実質的にFeの組成をもち、式(1)で定義されるA値が13を超え、溶体化時効処理によるCuリッチ相が分散・析出したフェライト単相からなる組織を有することを特徴とする高強度軟磁性ステンレス鋼。
    Figure 2004099926
  2. さらにNb,Tiのうちから選ばれるいずれか少なくとも1種単独では、Nb:1.0%以下,Ti:0.5%以下,あるいはNbとTiの複合で1.0%以下を含み、式(2)で定義されるA値が13を超える請求項1に記載の高強度軟磁性ステンレス鋼。
    Figure 2004099926
  3. 請求項1または2に記載された成分を有する鋼板を、1000〜1200℃で溶体化後、平均冷却速度が100℃/秒以下となるように冷却し、その後400〜700℃の温度範囲内で時効処理することを特徴とする高強度軟磁性ステンレス鋼の製造方法。
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