JP2004098585A - 液滴吐出ヘッド及びその製造方法、インクカートリッジ、インクジェット記録装置、静電型アクチュエータ、マイクロポンプ、光学デバイス - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アクチュエータ基板11はベース基板21上に振動板22とこれに犠牲層エッチングで形成されたギャップ23を置いて対向する対向電極24とを有し、対向電極24の表面に形成した絶縁膜27及び振動板22を構成する表面の絶縁膜22cの膜厚にはギャップ23の領域で中央部が厚く、周辺部が薄くなるように変化を持たせた。
【選択図】 図2
Description
【産業上の利用分野】
本発明は液滴吐出ヘッド及びその製造方法、インクカートリッジ、インクジェット記録装置、静電型アクチュエータ、マイクロポンプ、光学デバイスに関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】特開平6−71882号公報
【特許文献2】特開2001−18383号公報
【特許文献3】特開平9−193375号公報
【特許文献4】特開平11−314363号公報
【特許文献5】特開2001−277505号公報
【0003】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置等の画像記録装置或いは画像形成装置として用いるインクジェット記録装置において使用する液滴吐出ヘッドであるインクジェットヘッドは、インク滴を吐出する単一又は複数のノズル孔と、このノズル孔が連通する吐出室(加圧室、インク室、液室、加圧液室、圧力室、インク流路等とも称される。)と、吐出室内のインクを加圧する圧力を発生する圧力発生手段とを備えて、圧力発生手段で発生した圧力で吐出室内インクを加圧することによってノズル孔からインク滴を吐出させる。
【0004】
なお、液滴吐出ヘッドとしては、例えば液体レジストを液滴として吐出する液滴吐出ヘッド、DNAの試料を液滴として吐出する液滴吐出ヘッドなどもあるが、以下ではインクジェットヘッドを中心に説明する。また、液滴吐出ヘッドのアクチュエータを構成するマイクロアクチュエータは、例えばマイクロポンプ、マイクロ光変調デバイスなどの光学デバイス、マイクロスイッチ(マイクロリレー)、マルチ光学レンズのアクチュエータ(光スイッチ)、マイクロ流量計、圧力センサなどにも適用することができる。
【0005】
ところで、液滴吐出ヘッドとしては、圧力発生手段として圧電素子などの電気機械変換素子を用いて吐出室の壁面を形成している振動板を変形変位させることでインク滴を吐出させるピエゾ型のもの、吐出室内に配設した発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いてインクの膜沸騰でバブルを発生させてインク滴を吐出させるサーマル型のもの、吐出室の壁面を形成する振動板を静電力で変形させることでインク滴を吐出させる静電型のものなどがある。
【0006】
近年、環境問題から鉛フリーであるバブル型、静電型が注目を集め、鉛フリーに加え、低消費電力の観点からも環境に影響が少ない、静電型のものが複数提案されている。
【0007】
この静電型インクジェットヘッドとしては、例えば、
【特許文献1】に記載されているように、一対の電極対がエアギャップを介して設けられており、片方の電極が振動板として働き、振動板の対向する電極と反対側にインクが充填されるインク室が形成され、電極間(振動板−電極間)に電圧を印加することによって電極間に静電引力が働き、電極(振動板)が変形し、電圧を除去すると振動板が弾性力によってもとの状態に戻り、その力を用いてインク滴を吐出するものがある。
【0008】
また、
【特許文献2】には振動板と電極との微小なギャップを犠牲層エッチングにより形成し、その上に液室基板を接合することでヘッドを構成することが記
載されている。また、
【特許文献3】には振動板と電極とを非平行にしたヘッド
が記載されている。さらに、
【特許文献4】にはギャップにインクが流入可能な片もち梁又は両もち梁構造の振動板を形成し、高誘電率インクをギャップ内に満たすことで低電圧駆動を可能にしたものが記載されている。さらにまた、
【特許文献5】には電極上の誘電絶縁膜の厚みを変化させて非平行な電界を発生させることにより低電圧化を図ったものが記載されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記
【特許文献1】に記載のヘッドでは、エッチングによる凹部形成と陽極接合による振動板基板との接合によりエアギャップを作成しており、そのような微小なギャップを精度良く、バラツキ少なく形成することが非常に困難であり、歩留まりが上がらないといった課題がある。
【0010】
そこで、上記
【特許文献2】に記載のヘッドでは、ギャップを精度良く形成する方法として犠牲層エッチングによるギャップ形成法を用いているが、犠牲層エッチング用ホールを振動板面に形成しているため、振動板の信頼性が低下する。また、犠牲層エッチング後に絶縁膜でエッチングホールを封鎖する方法を用いているので、ホールを封止する為の絶縁膜を厚く形成する必要があり、振動板剛性が大きくなり駆動電圧が上昇し、且つ振動板剛性がつばらつく要因となるという課題がある。
【0011】
また、上記
【特許文献3】及び
【特許文献5】に記載のヘッドについては非平行なギャップを形成する方法あるいは誘電絶縁膜の厚みを変化させる具体的な方法については何ら記載されておらず、微小なギャップをばらつき少なく形成することは非常に困難であるという課題がある。
【0012】
さらに、上記
【特許文献4】に記載のヘッドでは、犠牲層エッチングによりギャップを形成しているが、振動板が片もち梁又は両もち梁構造でありギャップと液室が連通した構造になっている。この場合、犠牲層エッチング用のホールを形成する必要が無く、インクがギャップ内に侵入可能なため、高誘電率インクを用いることで実効ギャップを小さくでき低電圧駆動が可能である。しかしながら、ギャップ内のインクに電圧がかかるため、インク成分が凝集を起こす問題が発生しやすく、またギャップ内インクのコンダクタンスにより高速駆動ができないという課題がある。
【0013】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、特性バラツキが少なく低電圧駆動が可能な液滴吐出ヘッド及びその製造方法、この液滴吐出ヘッドを備えることで特性バラツキが少なく低電圧駆動が可能なインクカートリッジ、高画質記録が可能なインクジェット記録装置、特性バラツキが少なく低電圧駆動が可能な静電型アクチュエータ、特性バラツキが少なく低電圧駆動が可能なマイクロポンプ及び光学デバイスを提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明に係る液滴吐出ヘッドは、対向電極及び/又は振動板の全部又は一部を構成する電極部材の表面に設けた絶縁膜、若しくはは対向電極及び/又は振動板の全部又は一部を構成する電極部材は犠牲層エッチングで形成されたギャップ側表面で厚みに変化を持たせている構成としたものである。
【0015】
ここで、ギャップ領域の中央部において絶縁膜の膜厚が厚くなっている、あるいは、ギャップ領域の中央部において対向電極及び/又は振動板の全部又は一部を構成する電極部材の膜厚が厚くなっていることが好ましい。また、犠牲層はポリシリコン又はアモルファスシリコンであることが好ましい。
【0016】
本発明に係る液滴吐出ヘッドは、本発明に係る液滴吐出ヘッドを製造する方法であって、犠牲層エッチングと同時に絶縁膜、或いは対向電極及び/又は振動板の全部又は一部を構成する電極部材エッチングすることで前記絶縁膜の厚みに変化を持たせる構成としたものである。
【0017】
本発明に係るインクカートリッジは、本発明に係る液滴吐出ヘッドとこの液滴吐出ヘッドにインクを供給するインクタンクを一体化したものである。
【0018】
本発明に係るインクジェット記録装置は、インク滴を吐出する本発明に係る液滴吐出ヘッド、または本発明に係るインクカートリッジを搭載したものである。
【0019】
本発明に係る静電型アクチュエータは、対向電極及び/又は前記振動板の全部又は一部を構成する電極部材の表面に設けた絶縁膜、若しくは、対向電極及び/又は振動板の全部又は一部を構成する電極部材はギャップ側表面で厚みに変化を持たせている構成としたものである。
【0020】
本発明に係るマイクロポンプは本発明に係る静電型アクチュエータを備えたもの、本発明に係る光学デバイスは本発明に係る静電型アクチュエータを備えたものである。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。図1は本発明の液滴吐出ヘッドの第1実施形態に係るインクジェットヘッドの分解斜視図で、一部断面図で示している。図2は同ヘッドの振動板短手方向に沿う断面説明図である。
【0022】
このインクジェットヘッドは、インク液滴を基板の面部に設けたノズル孔から吐出させるサイドシュータタイプのものであり、2枚の第1、第2基板1、2を重ねて接合した積層構造となっており、第1基板1と第2基板2とを接合することで、インク滴を吐出する複数のノズル孔4が連通する吐出室6、各吐出室6に流体抵抗部7を介してインクを供給する共通液室(共通インク室)8などの流路を形成している。なお、基板の端部に設けたノズル孔からインク滴を吐出させるエッジシュータタイプとすることもできる。
【0023】
第1基板1は、本発明に係る静電型アクチュエータを構成するアクチュエータ基板11上に吐出室6、共通液室8等の流路を形成する流路形成部材12を接合したものである。
【0024】
アクチュエータ基板11は、単結晶シリコン基板からなるベース基板21に、変形可能な振動板22と、この振動板22にギャップ23を置いて対向する対向対向電極24とを有している。ベース基板21をシリコン基板で形成することにより、高温プロセスが使用できプロセス設計が容易となるとともに、電気的、機械的に優れた膜を選択でき信頼性の高いヘッド(アクチュエータ)を低コストで作製できる。
【0025】
ここで、対向対向電極24はベース基板25上に形成した絶縁膜21a上に形成され、各チャンネル毎に分離溝26で分離し、この分離溝26は対向電極24の表面(振動板22側表面)に形成した絶縁膜27で埋め込んでいる。対向電極24を溝26で分離し、且つ絶縁膜27で埋め込むことによって、後工程において表面に段差の少ない略平坦な状態での作り込みが可能となり、後工程のプロセス設計が容易となる。
【0026】
対向電極24の材料(電極部材)としては、ポリシリコンや化合物シリサイドを用いることができ、これらの材料は安定した品質で成膜及び加工が可能であり、また高温プロセスにも耐え得る構造にできるため、他のプロセスにおいて温度に対する制約が少なくなり、絶縁膜27として例えば信頼性の高い絶縁膜(HTO膜)を積層することができるようになって、プロセスの選択幅を広げることができ、低コスト化、高信頼性化を図れる。
【0027】
また、対向電極24の材料(電極部材)として、金属又は高融点金属を使用することができ、これにより、大幅な低抵抗化を図れ、駆動電圧の低電圧化を図れるとともに、何れの材料も安定した品質で成膜及び加工が可能であるので、、低コスト化、高信頼性化を図れる。
【0028】
ギャップ23は、後述するように振動板22と対向電極24との間に形成される犠牲層をエッチング除去して形成したもので、このギャップ形成に用いた犠牲層のうち少なくとも複数のギャップ23、23間の犠牲層28aは隔壁部を形成するために残存させている。
【0029】
このように、ギャップ23を犠牲層エッチングで形成することにより、犠牲層の厚さでギャップ間隔(ギャップ長)を精度規定することができるのでバラツキが低減し、ギャップ内への異物などの侵入を防ぐことができて歩留まりが向上する。また、ギャップ間隔(ギャップスペーサー)として犠牲層28aを残しているので、ギャップ段差を作らずにアクチュエータ基板11の表面をより平坦に作り込むことができ、例えば耐インク接液膜の成膜や流路形成部材12の接合工程などの後工程のプロセス設計が容易となり、低コスト化、信頼性の向上を図れる。
【0030】
ここで、犠牲層としては、ポリシリコン又はアモルファスシリコンを使用することが好ましい。これらの材料は、エッチングによる除去が可能であり、また犠牲層の上下に耐エッチング選択性の高いシリコン酸化膜を成膜することでバラツキの少ない製造プロセスとすることができ、低コストに大量生産が可能となる。
【0031】
振動板22は耐エッチング性を有する絶縁膜22c、共通電極となる電極部材である電極膜22a、絶縁膜22bを順次積層した積層膜から構成している。なお、絶縁膜22cの一部はギャップ間隔壁部に犠牲層28を残存するための保護膜を兼ねている。この犠牲層28の壁面の絶縁膜22cは、製造プロセスにおいて犠牲層28に形成する分離溝を埋め込んだものである。また、振動板22には犠牲層エッチングでギャップ23を形成するために犠牲層をエッチングするための開口部29が形成されている。
【0032】
振動板22の一部を構成する電極膜22aの材料としては、ポリシリコンや化合物シリサイドを用いることができ、これらの材料は安定した品質で成膜及び加工が可能であり、また高温プロセスにも耐え得る構造にできるため、他のプロセスにおいて温度に対する制約が少なくなり、絶縁膜22cとして例えば信頼性の高い絶縁膜(HTO膜)を積層することができるようになって、プロセスの選択幅を広げることができ、低コスト化、高信頼性化を図れる。
【0033】
また、振動板22の一部を構成する電極膜22aの材料として、金属又は高融点金属を使用することができ、これにより、大幅な低抵抗化を図れ、駆動電圧の低電圧化を図れるとともに、何れの材料も安定した品質で成膜及び加工が可能であるので、、低コスト化、高信頼性化を図れる。
【0034】
或いは、振動板22の一部を構成する電極膜22aの材料として、ITO膜、ネサ膜(SnO2)又はZnOを使用することができ、これにより、ギャップ23内の検査が容易になり、製造途中で異常を検出できるため、低コスト化を図れ、信頼性の向上を図れる。
【0035】
そして、図2に示すように、対向電極24の表面に形成した絶縁膜27及び振動板22の表面に形成した絶縁膜22cは、ギャップ23の領域において厚みに変化を持たせ、ここでは、絶縁膜27及び絶縁膜22cの厚みがギャップ23の振動板短手方向の中央部の領域で厚く、振動板短手方向の両端部で薄くなるように形成している。
【0036】
以上のようにして構成されるアクチュエータ基板11は振動板22側表面が略平坦に形成される。このように、アクチュエータ基板11の振動板22側表面が略平坦に形成されていることで、耐インク接液膜の成膜や流路形成部材の接合、形成工程が容易になるので、特性バラツキが少なく且つ信頼性の高い静電型アクチュエータを低コストで作製することができる。
【0037】
流路形成部材12は、略平坦面であるアクチュエータ基板11の振動板22側表面に接合して吐出室6等に対応する部分をエッチング除去して形成したものである。
【0038】
この第1基板1の流路形成部材12上面に接合される第2基板2には、厚さ50ミクロンのニッケル基板を用い、基板2の面部に、吐出室6と連通するようにそれぞれノズル孔4、共通液室8と吐出室6を連通させる流体抵抗となる溝7を設け、また共通液室8と連通するようにインク供給口9を設けている。
【0039】
このように構成したインクジェットヘッドの動作を説明する。吐出室6がインクにより満たされた状態で個別対向電極24に発振回路(駆動回路)から40Vのパルス電位を印加すると、個別対向電極24の表面がプラス電位に帯電し、振動板22との間に静電力が作用して、振動板22が個別対向電極24側に撓むことになる。これにより、吐出室6内の圧力が低下して、共通液室8から流体抵抗部7を介して吐出室6内にインクが流入する。
【0040】
その後、個別対向電極24へのパルス電圧を0Vにすると静電気力により下方へ撓んだ振動板22が自身の剛性により元に戻る。その結果、吐出室6内の圧力が急激に上昇し、ノズル孔4より図2に示すようにインク液滴35を記録紙36に向けて吐出する。これを繰り返すことによりインク滴を連続的に吐出することができる。
【0041】
ここで、電極である振動板22と個別対向電極24との間に働く力Fは、次の(1)式に示すように電極間距離dの2乗に反比例して大きくなる。低電圧で駆動するためには個別対向電極24と振動板22のギャップ23の間隔(ギャップ長)を狭く形成することが重要となる。
【0042】
【数1】
【0043】
なお、(1)式において、F:電極間に働く力、ε:誘電率、S:電極の対向する面の面積、d:電極間距離、V:印加電圧である。
【0044】
そこで、前述したように犠牲層エッチングでギャップ23を形成することにより、高精度に微小なギャップを形成することができ、また、エッチングによりギャップを形成し、振動板基板を貼り合わせていた従来法よりもギャップ間隔のバラツキが低減でき、ギャップ内へ異物などが侵入することも防ぐことができて歩留まりが向上する。
【0045】
そして、このヘッドにおいては、対向電極24の表面に形成した絶縁膜27及び振動板22の表面に形成した絶縁膜22cは、ギャップ23の領域において厚みに変化を持たせているので、膜厚の厚い部分の実効ギャップを小さくでき、より低電圧での駆動が可能になる。
【0046】
更に、ギャップ中央部で絶縁膜の膜厚が厚くなっているので、ギャップ中央部の実効ギャップを小さくでき、且つ周辺部に向かってギャップ(距離)が広がっているので、振動板の変位による排除体積が大きくできる。実効ギャップの小さい振動板中央部が当接後、順次周辺が当接していくことで、排除体積を減ずることなく、より低電圧での駆動が可能になる。
【0047】
次に、この構成のインクジェットヘッドの製造方法について図3及び図4を参照して説明する。
ここでは、ベース基板に電極材料、犠牲層、振動板材料を成膜して行くことでアクチュエータ基板を製作する。
【0048】
先ず、図3(a)に示すように、面方位(100)のシリコン基板41に絶縁膜となる熱酸化膜45を例えばウエット酸化法により約1.0μmの厚みに成膜する。その後、熱酸化膜45上に個別電極となるポリシリコン44を0.4μmの厚みに成膜し、このポリシリコン44に低抵抗化のために燐をドープする。そして、リソエッチ法により電極分離溝46を形成した後、絶縁膜としての高温酸化膜(HTO膜)47を0.25μm厚みに成膜する。このとき、電極分離溝46はHTO膜47で埋め込まれて電極となるポリシリコ44表面を含めて平坦になる。
【0049】
次いで、同図(b)に示すように、HTO膜47上に犠牲層となるポリシリコン48を0.5μm厚みに成膜した後、リソエッチ法により分離溝50を形成し、さらに絶縁膜としての高温酸化膜(HTO膜)42cを0.1μm厚みに成膜する。このとき、分離溝50の幅は、HTO膜42cなどの振動板材料で埋め込まれる溝幅にすることが好ましく、振動板材料の厚みにもよるが2.0μm以下にすることが好ましい。ここでは、分離溝50の幅を0.5μmとし、HTO膜42cで埋め込まれるようにしている。
【0050】
また、また分離溝を狭くすると異物やパターン欠陥に起因するパターニング不良によってショートする可能性が生じるため、個別電極用分離溝46、犠牲層分離溝60共に複数の分離溝を設けることが好ましい。
【0051】
このように、犠牲層48を溝50で分離し、且つ絶縁膜42cで埋め込むことにより、後工程において表面に段差の少ない略平坦な状態での作り込みが可能となり、アクチュエータ基板の表面の略平坦化を図れ、後工程のプロセス設計が容易となる。
【0052】
さらに、同図(c)に示すように、共通電極となるリンドープポリシリコン42aを0.2μm厚みに、次いで振動板保護膜となる酸化膜42bを0.3μm厚みに成膜する。その後、リソエッチ法により犠牲層除去孔49を後に液室間隔壁となる領域に形成するために、犠牲層除去孔49よりオーバーサイズしたパターンをリソエッチ法により形成し、酸化膜42b、ポリシリコン42aの順にエッチングを行なう。その後、酸化を行なって犠牲層除去孔49の側面に露出したポリシリコン42a表面に酸化膜42a1を形成する。
【0053】
その後、図4(a)に示すように、リソエッチ法により犠牲層除去孔49のパターニングを行ない酸化膜(HTO膜)42cをエッチング除去し、犠牲層48表面まで犠牲層除去孔49を通させる。さらに、SF6を用いた等方性のドライエッチングにより犠牲層48を除去してギャップ43を形成する。
【0054】
このとき、犠牲層(ポリシリコン)48の周りを囲んだ酸化膜27、42cと犠牲層48であるポリシリコンのエッチング選択比を調整し、酸化膜27、42cが0.05μmエッチングされるようにする。これにより、酸化膜27及び42cが共にギャップ43周辺で薄く、ギャップ43中央部で厚く形成される。なお、振動板42は酸化膜42c、ポリシリコン42a、酸化膜42bで構成される。
【0055】
これにより、振動板がもっとも撓みやすいギャップ中央部での実効ギャップをもっとも小さくすることができ、かつギャップ端に向かってエアギャップ(空隙)が広がる構造となり、ギャップ部の排除体積を減らすことなく駆動電圧を下げることができる。
【0056】
ここで犠牲層除去孔49の大きさによりエッチングガス導入部のコンダクタンスが決定されるため、これが小さいと犠牲層除去時にガス(又は液)供給律速でエッチング速度が決定されエッチング速度が遅くなるため、反応律速となるように除去孔49部のコンダクタンスを大きくする必要がある。このためには、除去孔49の断面積をギャップ長の2乗よりもさらに大きくしておくことが好ましい。また、除去孔49の配置間隔は、ギャップ部分の犠牲層を均等にエッチングできるように、ギャップの短辺長よりも小さいピッチで配置しておくことが好ましい。
【0057】
また、ポリシリコン犠牲層及び酸化膜保護膜をエッチングするための材料はSF6に限らず、所望の選択比が得られるプロセスを選択すれば良い。また、犠牲層及び保護膜とエッチングプロセスとの組み合わせはこれに限らず、レジスト犠牲層及びポリイミド保護膜とO2プラズマエッチングの組合わせや、SOG酸化膜犠牲層及びHTO酸化膜保護膜とHFベーパーエッチングの組合わせ等、他のものでも同様の構成を形成することができ、これに限ったものではない。
【0058】
さらに、犠牲層(ポリシリコン)48の周りを酸化膜47、42cで囲んだ構造としているため、酸化膜に対して選択性の高い犠牲層エッチング条件で犠牲層48を除去でき、ギャップ43を精度よく形成することができる。また、分離溝50で分離されたギャップ43、43間の犠牲層48aをギャップスペーサとして残存させることで、基板表面を略平坦に作り込むことができる。
【0059】
その後、同図(b)に示すように、上述のようにして得られたアクチュエータ基板11に、液室(吐出室)6、共通液室8となる貫通部を形成した流路形成部材12を接着剤で貼り合わせる。このとき、アクチュエータ基板11表面は略平坦に形成されているので、容易に接着が可能である。また、流路形成部材12で前記犠牲層除去孔49を塞ぐことでギャップ43を完全に封止することができる。
【0060】
そして、図では省略したが、最後にノズル板2を流路形成部材12表面に貼り合わせることで静電型液滴吐出ヘッドが完成する。
【0061】
次に、本発明の第2実施形態に係る液滴吐出ヘッドについて図5を参照して説明する。なお、図2と対応する部分には同一符号を付して説明を省略する。ただし、同一材料であることまで意味しない。
この実施形態では、対向電極54は、ギャップ23の領域において厚みに変化を持たせ、ここでは、ギャップ23の振動板短手方向の中央部の領域で厚く、振動板短手方向の両端部で薄くなるように形成している。そして、この対向電極54の表面には絶縁膜57が存在しない構成としている。
【0062】
このように構成した場合も、対向電極54は、ギャップ23の領域において厚みに変化を持たせているので、膜厚の厚い部分の実効ギャップを小さくでき、より低電圧での駆動が可能になる。更に、ギャップ中央部で絶縁膜の膜厚が厚くなっているので、ギャップ中央部の実効ギャップを小さくでき、且つ周辺部に向かってギャップ(距離)が広がっているので、振動板の変位による排除体積が大きくできる。実効ギャップの小さい振動板中央部が当接後、順次周辺が当接していくことで、排除体積を減ずることなく、より低電圧での駆動が可能になる。
【0063】
次に、この構成のインクジェットヘッドの製造工程について図6及び図7を参照して説明する。
ここでは、ベース基板に電極材料、犠牲層、振動板材料を成膜して行くことでアクチュエータ基板を製作する。
【0064】
先ず、図6(a)に示すように、面方位(100)のシリコン基板61に絶縁膜となる熱酸化膜65を例えばウエット酸化法により約1.0μmの厚みに成膜する。その後、熱酸化膜65上に個別電極となるTiN64を0.5μmの厚みに成膜し、リソエッチ法により電極分離溝66を形成した後、絶縁膜としてのPSG膜67をプラズマCVD法により0.2μm厚みに成膜する。
【0065】
次いで、同図(b)に示すように、PSG膜67上に低温ポリシリコン又はアモルファスシリコンなどの犠牲層68を0.5μm厚みに成膜した後、リソエッチ法により分離溝70を形成し、さらに絶縁膜としての高温酸化膜(HTO膜)42cを0.3μm厚みに成膜する。
【0066】
さらに、同図(c)に示すように、共通電極となるリンドープポリシリコン62aを0.2μm厚みに成膜し、リソエッチ法により犠牲層除去孔59によりオーバサイズしたパターン59a形成し、次いで振動板保護膜となる酸化膜52bを0.3μm厚みに成膜してパターン59aの壁面にも酸化膜52bをする。その後、リソエッチ法により犠牲層除去孔59の形成を行う。
【0067】
その後、図7(a)に示すように、プラズマを用いた等方性ドライエッチングにより犠牲層68を除去する。
【0068】
このとき、犠牲層68の周りを囲んだPSG膜67、HTO膜62c、及びTiN膜(対向電極)64と犠牲層48のエッチング選択比を調整してエッチングを行なう。
【0069】
つまり、対向電極64側のPSG膜67はエッチングレートが速いため消失し、さらに対向電極64を形成するTiN膜がエッチングされ、上部電極側のHTO膜(酸化膜)62cも前記第1実施形態で説明したと同様に0.15μm程度エッチングされるようにする。これにより酸化膜62cがギャップ周辺で薄く、ギャップ中央部で厚く形成される。また、対向電極64もギャップ周辺で薄く、ギャップ中央部で厚く形成される。なお、振動板62は高温酸化膜(HTO膜)62c、ポリシリコン62a、酸化膜62bで構成される。
【0070】
その後、同図(b)に示すように、上述のようにして得られたアクチュエータ基板11に、液室(吐出室)6、共通液室8となる貫通部を形成した流路形成部材12を接着剤で貼り合わせる。このとき、アクチュエータ基板11表面は略平坦に形成されているので、容易に接着が可能である。また、流路形成部材12で前記犠牲層除去孔49を塞ぐことでギャップ63を完全に封止することができる。
【0071】
そして、図では省略したが、最後にノズル板2を流路形成部材12表面に貼り合わせることで静電型液滴吐出ヘッドが完成する。
【0072】
なお、ここでは、対向電極64の厚みに変化を持たせる例で説明しているが、振動板を構成する電極部材をTiN膜して振動板側に膜厚差が生じるような構成としても同じ効果が得られる。
【0073】
また、犠牲層のエッチングにTMAHを用いる場合には、ギャップ部の絶縁膜67をあらかじめ除去しておき、絶縁膜62cに感光性のポリイミド、対向電極64にアルミを用いることによって同様の形状を作り込むことができる。
【0074】
次に、本発明に係る液滴吐出ヘッドのインクカートリッジ一体型ヘッドについて図8を参照して説明する。
このインクカートリッジ一体型ヘッド100は、ノズル孔101等を有する上記各実施形態のいずれかのインクジェットヘッド102と、このインクジェットヘッド101に対してインクを供給するインクタンク103とを一体化したものである。
【0075】
このように本発明に係る液滴吐出ヘッドにインクを供給するインクタンクを一体化することにより、高精度ギャップが形成されて滴吐出特性のバラツキが少なく、低電圧駆動が可能な液滴吐出ヘッドを一体化したインクカートリッジ(インクタンク一体型ヘッド)が低コストで得られる。
【0076】
次に、本発明に係る液滴吐出ヘッドであるインクジェットヘッドを搭載したインクジェット記録装置の機構の一例について図9及び図10を参照して説明する。なお、図9は同記録装置の斜視説明図、図10は同記録装置の機構部の側面説明図である。
【0077】
このインクジェット記録装置は、記録装置本体111の内部に主走査方向に移動可能なキャリッジ、キャリッジに搭載した本発明に係るインクジェットヘッドからなる記録ヘッド、記録ヘッドへインクを供給するインクカートリッジ等で構成される印字機構部112等を収納し、装置本体111の下方部には前方側から多数枚の用紙113を積載可能な給紙カセット(或いは給紙トレイでもよい。)114を抜き差し自在に装着することができ、また、用紙113を手差しで給紙するための手差しトレイ115を開倒することができ、給紙カセット114或いは手差しトレイ115から給送される用紙113を取り込み、印字機構部112によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ116に排紙する。
【0078】
印字機構部112は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド121と従ガイドロッド122とでキャリッジ123を主走査方向に摺動自在に保持し、このキャリッジ123にはイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する本発明に係る液滴吐出ヘッドであるインクジェットヘッドからなるヘッド124を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。またキャリッジ123にはヘッド124に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ125を交換可能に装着している。なお、本発明に係るインクカートリッジを搭載する構成とすることもできる。
【0079】
インクカートリッジ125は上方に大気と連通する大気口、下方にはインクジェットヘッドへインクを供給する供給口を、内部にはインクが充填された多孔質体を有しており、多孔質体の毛管力によりインクジェットヘッドへ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。
【0080】
また、記録ヘッドとしてここでは各色のヘッド124を用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個のヘッドでもよい。
【0081】
ここで、キャリッジ123は後方側(用紙搬送方向下流側)を主ガイドロッド121に摺動自在に嵌装し、前方側(用紙搬送方向上流側)を従ガイドロッド122に摺動自在に載置している。そして、このキャリッジ123を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ127で回転駆動される駆動プーリ128と従動プーリ129との間にタイミングベルト130を張装し、このタイミングベルト130をキャリッジ123に固定しており、主走査モーター127の正逆回転によりキャリッジ123が往復駆動される。
【0082】
一方、給紙カセット114にセットした用紙113をヘッド124の下方側に搬送するために、給紙カセット114から用紙113を分離給装する給紙ローラ131及びフリクションパッド132と、用紙113を案内するガイド部材133と、給紙された用紙113を反転させて搬送する搬送ローラ134と、この搬送ローラ134の周面に押し付けられる搬送コロ135及び搬送ローラ134からの用紙113の送り出し角度を規定する先端コロ136とを設けている。搬送ローラ134は副走査モータ137によってギヤ列を介して回転駆動される。
【0083】
そして、キャリッジ123の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ134から送り出された用紙113を記録ヘッド124の下方側で案内する用紙ガイド部材である印写受け部材139を設けている。この印写受け部材139の用紙搬送方向下流側には、用紙113を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ141、拍車142を設け、さらに用紙113を排紙トレイ116に送り出す排紙ローラ143及び拍車144と、排紙経路を形成するガイド部材145,146とを配設している。
【0084】
記録時には、キャリッジ123を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド124を駆動することにより、停止している用紙113にインクを吐出して1行分を記録し、用紙113を所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号または、用紙113の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙113を排紙する。
【0085】
また、キャリッジ123の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、ヘッド124の吐出不良を回復するための回復装置147を配置している。回復装置147はキャップ手段と吸引手段とクリーニング手段を有している。キャリッジ123は印字待機中にはこの回復装置147側に移動されてキャッピング手段でヘッド124をキャッピングされ、吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
【0086】
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段でヘッド124の吐出口(ノズル)を密封し、チューブを通して吸引手段で吐出口からインクとともに気泡等を吸い出し、吐出口面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは、本体下部に設置された廃インク溜(不図示)に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
【0087】
このように、このインクジェット記録装置においては本発明に係る液滴吐出ヘッドであるインクジェットヘッドを搭載しているので、ヘッドの滴吐出特性のバラツキが少なく、低電圧駆動が可能で、高い画像品質の画像を記録できる記録装置が得られる。
【0088】
次に、本発明に係る静電型アクチュエータを備えたマイクロデバイスとしてのマイクロポンプについて図11を参照して説明する。なお、同図は同マイクロポンプの要部断面説明図である。
このマイクロポンプは、流路基板201と本発明に係る静電型アクチュエータを構成するアクチュエータ基板202とを有している。流路基板201には流体が流れる流路203を形成している。アクチュエータ基板202は、ベース基板221上に設けた、流路201の壁面を形成する変形可能な振動板(可動板)222と、この振動板222の変形可能部222aに所定のギャップ223を置いて対向する電極224とを含む。
【0089】
なお、静電型アクチュエータを構成するアクチュエータ基板202の詳細な説明及び図示は省略するが、前記インクジェットヘッドの実施形態のアクチュエータ基板11として説明したと同様に、対向電極224及び/又は振動板222の表面に形成する絶縁膜、若しくは対向電極224及び/又は振動板222の全部又は一部を構成する電極部材にギャップ223内で厚みに変化を持たせている。
【0090】
このマイクロポンプの動作原理を説明すると、前述したインクジェットヘッドの場合と同様に、電極224に対して選択的にパルス電位を与えることによって振動板222との間で静電吸引力が生じるので、振動板222の変形可能部222aが電極224側に変形する。ここで、振動板222の変形可能部222aを図中右側から順次駆動することによって流路201内の流体は、矢印方向へ流れが生じ、流体の輸送が可能となる。
【0091】
この場合、本発明に係る静電型アクチュエータを備えることで、特性バラツキが少なく、低電圧駆動が可能で、安定した液体輸送を可能な小型で低消費電力のマイクロポンプを得られる。なお、ここでは振動板の変形可能部が複数ある例を示したが、変形可能部は1つでも良い。また、輸送効率を上げるために、変形可能部間に1又は複数の弁、例えば逆止弁などを設けることもできる。
【0092】
次に、本発明に係る静電型アクチュエータを備えた光学デバイスの一例について図12を参照して説明する。なお、同図は同デバイスの概略構成図である。
この光学デバイスは、表面が光を反射可能でかつ変形可能なミラー301を含むアクチュエータ基板302を有している。ミラー301の表面は反射率を増加させるため誘電体多層膜や金属膜を形成すると良い。
【0093】
アクチュエータ基板302は、ベース基板321上に設けた、変形可能なミラー301(ヘッドの振動板に相当する。)と、このミラー301の変形可能部301に所定のギャップ323を介して対向する電極324とを含む。
【0094】
このアクチュエータ基板302についても、振動板がミラー面を有する構成となっている点が前記インクジェットヘッドの実施形態で説明したものと異なるだけであるので、詳細な説明及び図示を省略する。
【0095】
この光学デバイスの原理を説明すると、前述したインクジェットヘッドの場合と同様に、電極324に対して選択的にパルス電位を与えることによって、電極324と対向するミラー301の変形可能部301a間で静電吸引力が生じるので、ミラー301の変形可能部301が凹状に変形して凹面ミラーとなる。したがって、光源310からの光がレンズ311を介してミラー301に照射した場合、ミラー301を駆動しないときには、光は入射角と同じ角度で反射するが、ミラー301を駆動した場合は駆動された変形可能部301が凹面ミラーとなるので反射光は発散光となる。これにより光変調デバイスが実現できる。
【0096】
そして、本発明に係る静電型アクチュエータを備えることで、特性バラツキが少なく、低電圧駆動が可能で、小型で低消費電力の光学デバイスを得ることができる。
【0097】
そこで、この光学デバイスを応用した例を図13をも参照して説明する。この例は、上述した光学デバイスを2次元に配列し、各ミラー301の変形可能部301aを独立して駆動するようにしたものである。なお、ここでは、4×4の配列を示しているが、これ以上配列することも可能である。
【0098】
したがって、前述した図12と同様に、光源310からの光はレンズ311を介してミラー301に照射され、ミラー301を駆動していないところに入射した光は、投影用レンズ312へ入射する。一方、電極324に電圧を印加してミラー301の変形可能部301aを変形させている部分は凹面ミラーとなるので光は発散し投影用レンズ312にほとんど入射しない。この投影用レンズ312に入射した光はスクリーン(図示しない)などに投影され、スクリーンに画像を表示することができる。
【0099】
なお、上記実施形態においては、液滴吐出ヘッドとしてインクジェットヘッドに適用した例で説明したが、インクジェットヘッド以外の液滴吐出ヘッドとして、例えば、液体レジストを液滴として吐出する液滴吐出ヘッド、DNAの試料を液滴として吐出する液滴吐出ヘッドなどの他の液滴吐出ヘッドにも適用できる。また、静電型アクチュエータは、マイクロポンプ、光学デバイス(光変調デバイス)以外にも、マイクロスイッチ(マイクロリレー)、マルチ光学レンズのアクチュエータ(光スイッチ)、マイクロ流量計、圧力センサなどにも適用することができる。
【0100】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る液滴吐出ヘッドによれば、対向電極及び/又は振動板の全部又は一部を構成する電極部材の表面に設けた絶縁膜、若しくはは対向電極及び/又は振動板の全部又は一部を構成する電極部材は犠牲層エッチングで形成されたギャップ側表面で厚みに変化を持たせている構成としたので、滴吐出特性のばらつきが少なく、低電圧駆動化を図れる。
【0101】
本発明に係る液滴吐出ヘッドによれば、本発明に係る液滴吐出ヘッドを製造する方法であって、犠牲層エッチングと同時に絶縁膜、或いは対向電極及び/又は振動板の全部又は一部を構成する電極部材エッチングすることで前記絶縁膜の厚みに変化を持たせる構成としたので、簡単なプロセスで滴吐出特性のばらつきが少なく、低電圧駆動化を図れるヘッドを製造することができる。
【0102】
本発明に係るインクカートリッジによれば、本発明に係る液滴吐出ヘッドとこの液滴吐出ヘッドにインクを供給するインクタンクを一体化したので、滴吐出特性のバラツキが少なく、低電圧駆動化を図れる。
【0103】
本発明に係るインクジェット記録装置によれば、インク滴を吐出する本発明に係る液滴吐出ヘッド、または本発明に係るインクカートリッジを搭載したので、高画質記録が可能になる。
【0104】
本発明に係る静電型アクチュエータによれば、対向電極及び/又は振動板の全部又は一部を構成する電極部材の表面に設けた絶縁膜、若しくは、対向電極及び/又は振動板の全部又は一部を構成する電極部材はギャップ側表面で厚みに変化を持たせている構成としたので、特性バラツキが少なく、低電圧駆動化を図れる。
【0105】
本発明に係るマイクロポンプ、本発明に係る光学デバイスは本発明に係る静電型アクチュエータを備えているので、低電圧駆動が可能な、小型で低消費電力のマイクロポンプ、光学デバイスが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液滴吐出ヘッドの第1実施形態に係るインクジェットヘッドの分解斜視説明図
【図2】同ヘッドの振動板短手方向に沿う断面説明図
【図3】同実施形態に係る液滴吐出ヘッドの製造方法の説明に供する断面説明図
【図4】図3に続く工程を説明する断面説明図
【図5】同本発明に係る液滴吐出ヘッドの第2実施形態を説明するヘッドの振動板短手方向に沿う断面説明図
【図6】同実施形態に係る液滴吐出ヘッドの製造方法の説明に供する断面説明図
【図7】図7に続く工程を説明する断面説明図
【図8】本発明に係るインクカートリッジの説明に供する斜視説明図
【図9】本発明に係るインクジェット記録装置の一例を説明する斜視説明図
【図10】同記録装置の機構部の説明図
【図11】本発明にマイクロポンプの一例を説明する説明図
【図12】本発明に係る光学デバイスの一例を説明する説明図
【図13】同光学デバイスを用いた光変調デバイスの一例を説明する斜視説明図
【符号の説明】
1…第1基板、2…第2基板(ノズル板)、4…ノズル孔、6…吐出室、7…流体抵抗部、8…共通液室、11…アクチュエータ基板、12…流路形成部材、21…ベース基板、22…振動板、22a…電極膜、22c…絶縁膜、23…ギャップ、24…対向電極、27…絶縁膜、100…インクカートリッジ、124…記録ヘッド、201…流路基板、203…流路、202…アクチュエータ基板、222a…変形可能部、246…対向電極、301…ミラー、301a…変形可能部、302…アクチュエータ基板、324…対向電極。
Claims (12)
- 液滴を吐出するノズルが連通する吐出室内の液体を加圧するアクチュエータ基板を有し、このアクチュエータ基板はベース基板上に前記吐出室の壁面を構成する変形可能な振動板とこれに犠牲層エッチングで形成されたギャップを置いて対向する対向電極とを備えている液滴吐出ヘッドにおいて、前記対向電極及び/又は前記振動板の全部又は一部を構成する電極部材の表面に設けた絶縁膜は前記ギャップ側表面で変化を持たせていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
- 請求項1に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記ギャップ領域の中央部において前記絶縁膜の膜厚が厚くなっていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
- 請求項1又は2に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記犠牲層がポリシリコン又はアモルファスシリコンであることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
- 請求項1ないし3のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドを製造する製造方法であって、前記絶縁膜を前記犠牲層エッチングと同時にエッチングすることで前記絶縁膜の厚みに変化を持たせることを特徴とする液滴吐出ヘッド製造方法。
- 液滴を吐出するノズルが連通する吐出室内の液体を加圧するアクチュエータ基板を有し、このアクチュエータ基板はベース基板上に前記吐出室の壁面を構成する変形可能な振動板とこれに犠牲層エッチングで形成されたギャップを置いて対向する対向電極とを備えている液滴吐出ヘッドにおいて、前記対向電極及び/又は前記振動板の全部又は一部を構成する電極部材は前記ギャップ側表面で厚みに変化を持たせていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
- 請求項5に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記ギャップ領域の中心部において前記対向電極又は前記振動板の全部又は一部を構成する電極部材の膜厚が厚くなっていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
- 請求項5又は6に記載の液滴吐出ヘッドを製造する製造方法であって、前記対向電極又は前記振動板の全部又は一部を構成する電極部材を前記犠牲層エッチングと同時にエッチングすることで前記対向電極又は前記振動板の全部又は一部を構成する電極部材の厚みに変化を持たせることを特徴とする液滴吐出ヘッド製造方法。
- インク滴を吐出する液滴吐出ヘッドとこの液滴吐出ヘッドにインクを供給するインクタンクを一体化したインクカートリッジにおいて、前記液滴吐出ヘッドが請求項1ないし3、5、6のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドであることを特徴とするインクカートリッジ。
- インク滴を吐出して画像を記録するインクジェット記録装置において、インク滴を吐出する前記請求項1ないし3、5、6のいずれかに記載の液滴吐出ヘッド又は前記請求項8に記載のインクカートリッジを備えていることを特徴とするインクジェット記録装置。
- ベース基板上に変形可能な振動板とこれに犠牲層エッチングで形成されたギャップを置いて対向する対向電極とを備えている静電型アクチュエータにおいて、前記対向電極及び/又は前記振動板の全部又は一部を構成する電極部材の表面に設けた絶縁膜、若しくは、前記対向電極及び/又は前記振動板の全部又は一部を構成する電極部材は前記ギャップ側表面で変化を持たせていることを特徴とする静電型アクチュエータ。
- 流路の液体を静電型アクチュエータで加圧して前記液体を輸送するマイクロポンプにおいて、前記静電型アクチュエータが請求項10に記載の静電型アクチュエータであることを特徴とするマイクロポンプ。
- 光を反射するミラーを静電型アクチュエータで変形させて前記光の反射方向を変化させる光学デバイスにおいて、前記静電型アクチュエータが請求項10に記載の静電型アクチュエータであることを特徴とする光学デバイス。
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