JP2004098124A - 溶接方法及び溶接システム - Google Patents
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Abstract
【課題】仮付溶接部を有するT型継手において、片側開先側からのアーク溶接によって片側開先側とその裏側の突合せ部に裏波ビードを安定的に形成することができる溶接方法及び溶接システムを提供する。
【解決手段】片側開先を有する第1の母材1を第2の母材2にT字型に当接し、第1の母材1と前記第2の母材2とを仮付溶接により相対変位を拘束し、仮付溶接部Kの肉厚lを所定肉厚まで除去後、第1の母材1と前記第2の母材2で形成される開先溶接部に溶接ワイヤ6を臨ませ、前記溶接ワイヤを溶接方向に移動させながら、溶接ワイヤ6からのアークによって開先溶接部を開先側から溶融しかつ溶融物を開先裏側へ押し出して裏波ビードを形成する。
【選択図】図9
【解決手段】片側開先を有する第1の母材1を第2の母材2にT字型に当接し、第1の母材1と前記第2の母材2とを仮付溶接により相対変位を拘束し、仮付溶接部Kの肉厚lを所定肉厚まで除去後、第1の母材1と前記第2の母材2で形成される開先溶接部に溶接ワイヤ6を臨ませ、前記溶接ワイヤを溶接方向に移動させながら、溶接ワイヤ6からのアークによって開先溶接部を開先側から溶融しかつ溶融物を開先裏側へ押し出して裏波ビードを形成する。
【選択図】図9
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は溶接方法及び溶接システムに関し、特に片側開先を有するT継手の仮付溶接部における裏波ビードの溶接状態を良好にすることができる溶接方法及び溶接システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
建築物の鉄骨構造、橋梁、産業機械、建設機械等のあらゆる溶接構造物において、溶接継手として、T字型の継手(T継手)を採用する場合が多い。このT継手では、一般的に、片側開先(レ形開先)を有する一方の部材(縦板)と他方の部材(横板)の間で、一方の部材を他方の部材に突合せて、これらの部材をT字型に配置する。次に、一方の部材と他方の部材とによって形成される開先側からアークを与えて溶融し、ビードを形成し、これらの部材を接合するものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、裏当て材を使用せず、T継手の片側開先側から溶接を行い、その開先の裏側にビードを形成する溶接方法もある(例えば、非特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−332567号公報。
【0005】
【非特許文献1】
高谷 透、外3名、「T継手における裏波ビード溶接法の研究」社団法人・溶接学会、題175回溶接法資料、第143回アーク物理資料、2001年8月8日。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前述した片側開先を有するT継手を溶接する場合、片側開先を有する一方の部材と片側開先が突き合わされる他方の部材との相対変位を拘束するために、これらの部材の適宜箇所に仮付溶接部を設ける場合がある。このような仮付溶接部によって仮溶接されたT継手を、前述した非特許文献1に開示された溶接方法によって溶接する場合、この仮付溶接部では溶融金属が開先の裏側まで押し出されず、この仮付溶接部には裏波ビードが連続して形成できないという問題が発生する。この裏波ビードの不連続部分では、未溶着の部分が出来ており、この未溶着の部分が疲労破壊の起点となり、継手強度として、品質低下の原因となる。
【0007】
本発明の目的は、上述した事柄に基づいてなされたもので、片側開先を有する一方の部材と片側開先が突き合わされる他方の部材との相対変位を拘束するために、仮付溶接した場合においても、片側開先側からのアーク溶接によって開先側とその裏側の突合せ部に隅肉ビードを、安定的に形成し、かつ良好な形状で繋ぐことができる溶接方法及び溶接システムを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の目的を達成するために、第1の発明は、片側開先を有する第1の母材を第2の母材にT字型に当接し溶接する方法において、前記第1の母材と前記第2の母材との仮付溶接部を所定肉厚まで除去後、前記第1の母材と前記第2の母材で形成される開先溶接部に溶接ワイヤを臨ませ、前記溶接ワイヤを溶接方向に移動させながら、前記溶接ワイヤからのアークによって前記開先溶接部を開先側から溶融しかつ溶融物を開先裏側へ押し出して裏波ビードを形成することを特徴とする溶接方法にある。
【0009】
また、第2の発明は、片側開先を有する第1の母材を第2の母材にT字型に当接し溶接する方法において、前記第1の母材と前記第2の母材とを仮付溶接部により相対変位を拘束し、前記仮付溶接部の肉厚を除去後、前記第1の母材と前記第2の母材で形成される開先溶接部に溶接ワイヤを臨ませ、前記溶接ワイヤを溶接方向に移動させながら、前記溶接ワイヤからのアークによって前記開先溶接部を開先側から溶融しかつ溶融物を開先裏側へ押し出して裏波ビードを形成することを特徴とする溶接方法にある。
【0010】
更に、第3の発明は、片側開先を有する第1の母材を第2の母材にT字型に当接し溶接する方法において、前記第1の母材と前記第2の母材とを少なくとも1つの仮付溶接部により相対変位を拘束し、前記仮付溶接部の肉厚を除去後、前記第1の母材と前記第2の母材で形成される開先溶接部に溶接ワイヤを臨ませ、前記溶接ワイヤを溶接方向に移動させながら、前記溶接ワイヤからのアークによって前記開先溶接部を開先側から溶融しかつ溶融物を開先裏側へ押し出して裏波ビードを形成することを特徴とする溶接方法にある。
【0011】
また、第4の発明は、前述した第1乃至第3の発明において、前記仮付溶接部の溶接ビードの肉厚を、グライダ装置によって除去することを特徴とする溶接方法にある。
【0012】
更に、第5の発明は、片側開先を有する第1の母材を第2の母材にT字型に当て、前記第1の母材と前記第2の母材とを仮付溶接部により相対変位を拘束したT型継手の溶接システムにおいて、前記仮付溶接部を所定の肉厚まで除去する切削装置と、前記第1の母材と前記第2の母材で形成される開先溶接部に溶接ワイヤを臨ませ、前記溶接ワイヤを溶接方向に移動させながら、前記溶接ワイヤからのアークによって前記開先溶接部を開先側から溶融し、かつ溶融物を開先裏側へ押し出して裏波ビードを形成する溶接装置とからなることを特徴とする溶接システムにある。
【0013】
また、第6の発明は、第5の発明において、前記仮付溶接部を所定の肉厚まで除去する切削装置の動作データを、裏波ビードを形成する溶接装置の溶接動作のデータに用いることを特徴とする溶接システムにある。
【0014】
更に、第7の発明は、片側開先を有する第1の母材を第2の母材にT字型に当てたT型継手の溶接システムにおいて、前記第1母材と前記第2の母材とを仮付溶接をする溶接装置と前記仮付溶接部の肉厚を除去する切削装置と前記第1の母材と前記第2の母材で形成される開先溶接部に溶接ワイヤを臨ませ、前記溶接ワイヤを溶接方向に移動させながら、前記溶接ワイヤからのアークによって前記開先溶接部を開先側から溶融しかつ溶融物を開先裏側へ押し出して裏ビードを形成する前記溶接装置とからなることを特徴とする溶接システムにある。
【0015】
また、第8の発明は、第7の発明において、前記仮付溶接における溶接装置の動作データを、前記仮付溶接部を所定の肉厚まで除去する切削装置の動作及び裏ビードを形成する溶接装置の動作のデータとして用いることを特徴とする溶接システムにある。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の溶接方法及び溶接システムの好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
本発明の溶接方法及び溶接システムを説明するに先立って、本発明に用いられる溶接方法、即ち、BOB(Bulldozed−Out−Bead)溶接法について説明する。BOB溶接法とは、片側開先を有する第1の母材(縦材)と第2の母材(横材)とをT字型に突合せ、第1の母材の先端面を第2の母材の面に接触させ、2つの母材の開先側接触部(開先溶接部)に対して開先側から溶接ワイヤの先端部を臨ませ、溶接ワイヤからアークを発生させて、アークで接触部付近の2つの母材部分を溶融させ、その溶融物または溶融プールを開先側から開先裏側へ押し出して裏ビードを形成し、裏波ビードを形成する溶接法である。
【0017】
図1は本発明に用いるBOB溶接法を適用する片側開先突合せによる溶接前のT継手部分の断面図、図2はBOB溶接法により溶接されたT継手部分の斜視図を示す。図1において、第1の母材1はその突合せ端部にルートフェイス1aを有するように片側開先面(レ形開先形成面)1bが設けられている。第2の母材2は第1の母材1のルートフェイス1aと接触する平坦面2aを有している。第1の母材1と第2の母材2とによりT継手を形成する。図1で、第1の母材1の上側部分、第2の母材2の左右部分の図示は省略されている。5は溶接トーチ、6は溶接トーチ5に保持された不図示の送給装置によって軸方向の外方に向かって送給される溶接ワイヤである。なお、好ましくは、溶接トーチ5からは一定流量のシールドガス101が吐出されている。
【0018】
図1において、Rfはルートフェイス1aの厚さ方向の寸法、P1は第1の母材1の開先面1bの端部と第2の母材2の平坦面2aとの接する接触位置、P2はアーク中心の狙い位置、dは接触位置P1からアーク中心の狙い位置P2までの距離を示す。さらに、θは開先角度、δはアーク101(溶接ワイヤ6)の中心線(A)と第2の母材2の平坦面2aとが形成する傾斜角度、Aはアーク101の中心線を示す。
【0019】
次に、BOB溶接法を母材1,2が鋼材であるT継手に適用した場合の一例を具体的に説明する。ルートフェイス1aの寸法Rfは1.0〜3.0mm、ルートギャップは0mm(ルートフェイス1aが接触状態)、開先角度θは30〜60度に設定される。この状態で溶接装置によりアーク溶接が行われる。溶接条件は、平均電流は250〜310A、平均電圧は25〜33V、移動速度20〜45cm/分である。
【0020】
以上の条件下で、溶接ワイヤ6(アーク中心)の狙い位置P2を接触位置P1から0〜3mmとし、第2の母材2はほぼ水平に置いてその平坦面2aと溶接ワイヤ6のなす傾斜角度δを15〜35度としたとき、第1の母材1の開先裏側面1cと第2の母材2の平坦面2aとの突合せ部に2〜8mmの隅肉ビードを安定的に溶着することができた。
【0021】
その溶接結果を図2に示す。この図2において、B4は第1の母材1の開先側と反対側(開先裏側)の面1cと第2の母材2の平坦面2aとの間に溶着された隅肉ビード(裏波ビード)、B5は第2の母材2の平坦面2aを溶融しながら再凝固したビード、B6は溶接ワイヤ6自身の溶融とが加わって隅肉ビードB4を形成した後の開先側のビード(表ビード)である。
なお、上記の具体的数値は、母材1,2の材質および板厚、突合せ部の形状等種々の条件が考慮されて決定される。
【0022】
上述したBOB溶接法によるT継手の溶接ビードの形成過程は次の通りである。溶接開始前の溶接ワイヤ6の設定状態は図1に示されるごとくであり、溶接ワイヤ6の先端部を第2の母材2の所定の狙い位置P2に臨ませる。所定の狙い位置P2は、第1の母材1と第2の母材2との接触部近傍を溶融させるときに、第1の母材1の端部の溶け落ちが生ぜず、かつ開先裏側に裏ビード(B4)が形成されるような位置となるように開先面1bの端部と平坦面2aの接触位置P1に対して溶接ワイヤ側に少し離れた位置に設定される。溶接ワイヤ6の軸方向は、熱容量の大きい第2の母材2の平坦面2aに対し傾斜角度δで傾斜されている。この溶接ワイヤ6を臨ませる所定の狙い位置P2はこの実施形態においても同様である。
【0023】
上記の第1および第2の母材1,2は長尺の形状を有している。図2に示されるように、上記のT継手のBOB溶接では、第1の母材1と第2の母材2との接触部は直線状であり、溶接ワイヤ6は直線状の接触部に沿って移動しながら溶接を行う。溶接ワイヤ6の移動方向は、図1の紙面に対して、直角な方向が溶接方向である。
【0024】
次に、図3を参照してT継手に対してBOB溶接を行う溶接装置の構成および動作を説明する。図3において、先に説明した要素と同一の要素には同一の符号を付している。
【0025】
100はBOB溶接の対象である溶接前のT継手部分を示す。T継手100は前述の通り第1と第2の母材1,2とから成っている。第1の母材1の突合せの接触部には片側開先が形成されている。T継手100は紙面に垂直な方向に長尺な形状で形成されている。
【0026】
上記T継手100に対して、第1と第2の母材1,2の開先側の位置に溶接用ロボット本体3が配置されている。ロボット本体3は、平行リンク部3Aとロボットアーム3Bを備える。ロボット本体3は、平行リンク部3Aとロボットアーム3Bの各種動作、旋回動作、およびT継手100の長手方向の移動動作等が行えるように設けられている。ロボット本体3の各種動作はロボット制御装置4によって制御される。ロボット制御装置4は指令信号に基づきロボットアーム3Bを互いに直交するX,Y,Zの3軸方向に駆動制御される。なお図4においてロボット本体3をT継手100の長手方向に沿って移動させる移動装置の構成の図示は省略されている。
【0027】
ロボット制御装置4は、種々の制御設定値等を入力・記憶するための入力部4Aと、ロボットアーム3Bの位置・姿勢制御のための位置制御部4Bと、溶接速度を制御するための速度制御部4C等から構成されている。
【0028】
ロボットアーム3Bの先端部には溶接トーチ5が設けられる。溶接トーチ5には溶接ワイヤ6が保持される。溶接ワイヤ6はワイヤ送給装置8によって送給される。9は溶接電源である。溶接電源9は、ケーブル7A,7Bによって溶接ワイヤ6と母材1,2のそれぞれに接続される。ケーブル7Aには電圧検出器10と電流検出器11が付設される。電圧検出器10は溶接電源9によって溶接ワイヤ6と母材1,2との間に印加される溶接電圧を検出する。電流検出器11は溶接電源9から溶接ワイヤ6に供給される溶接電流を検出する。
【0029】
溶接電源9の制御手段として、平均電圧設定器12、電圧制御器13、平均電流設定器14、電流制御器15、出力制御器22、電力診断装置23が設けられている。
【0030】
平均電圧設定器12は溶接ワイヤ6に印加される平均電圧値を設定する。電圧制御器13は、平均電圧設定器12に設定された平均電圧と、電圧検出器10で検出された電圧に基づき電力診断装置23を介して取り出された実平均電圧値とを比較して、電圧制御信号を出力する。
【0031】
平均電流設定器14は溶接ワイヤ6に供給される平均電流値を設定する。電流制御器15は、平均電流設定器14に設定された平均電流と、電流検出器11で検出された電流に基づき電力診断装置23を介して取り出された実平均電流値とを比較して、電流制御信号を出力する。
【0032】
出力制御器22は、電圧制御器13からの電圧制御信号と電流制御器15からの電流制御信号が入力され、これらの制御信号に基づいて溶接電源9から供給される電力を制御するための制御信号を出力する。
【0033】
電力診断装置23は入力部23Aと比較部23Bと出力部23Cから構成されている。入力部23Aは、平均電圧設定器12で設定される平均電圧より高い第1電圧設定値、当該平均電圧より低い第2電圧設定値、および平均電流設定器14で設定される平均電流より高い電流設定値を設定する。比較部23Bは、電圧検出器10から与えられる実電圧値と、第1および第2の電圧設定値とを比較して、位置制御信号をロボット制御装置4に対して出力すると共に、電流検出器11から与えられる実電流値と電流設定値とを比較して、位置制御信号をロボット制御装置4に出力する。出力部23Cは、電圧検出器10や電流検出器11から検出された実電圧値および実電流値をそれぞれ電圧制御器13および電流制御器15に出力する。
【0034】
次に、上述した溶接装置の動作を説明する。溶接トーチ5はロボットアーム3Bに取り付けられている。溶接ワイヤ6は溶接トーチ5に保持されながら、溶接トーチ5の先端から所定長さで突き出されている。溶接ワイヤ6はワイヤ供給装置8で送給される。溶接ワイヤ6の先端部は、母材1,2の開先溶接部の開先側に所定傾斜角度δだけ傾けられてかつ所定の狙い位置で臨むように設けられている。このような設定および制御は、ロボット制御装置4の入力部4Aと位置制御部4Bによって行われる。またロボット本体3の移動経路や溶接速度はロボット制御装置4において入力部4Aから速度制御部4Cに与えられ、図3中紙面に垂直な方向(溶接方向)に向けて移動を行う。
【0035】
電力診断装置23の入力部23Aからは予め第1および第2の電圧設定値と電流設定値が入力され、比較部23Bに記憶される。
【0036】
上記の設定状態の下で溶接ワイヤ6からのアークに基づくBOB溶接が開始される。溶接が始まると、電圧検出器10と電流検出器11はそれぞれケーブル7Aを経由して実電圧値および実電流値を検出する。溶接中にロボット本体3の振動や母材の位置ずれなどで溶接ワイヤ6が例えば母材1の開先側に寄りすぎると、熱容量の小さい開先端部が溶け落ちる。開先端部が溶け落ちると、アークが母材1の裏側に抜け、実電圧値が大きくなる。そうすると、電力診断装置23の比較部23Bで実電圧が第1電圧設定値を超えるという比較・判断が行われ、溶接ワイヤ6を第2の母材2側に移動するように位置制御信号を位置制御部4Bに出力する。その結果、溶接ワイヤ6は第1の母材1の開先側から第2の母材2側に近づくように移動される。
【0037】
上記とは反対に、溶接ワイヤ6と母材1,2との相対的位置関係が母材2側に寄ってしまう場合には、開先側への入熱が少なくなり、溶接物が開先裏側に押し出されなくなり、開先側にビードが溜まってくる。そうすると、溶接ワイヤ6の突き出し長さが短くなるので、実電圧値は小さくなり、実電流値は大きくなる。このため、電力診断装置23の比較部23Bで実電圧が第2電圧設定値より小さくなるという比較・判断が行われ、溶接ワイヤ6を第1の母材1の開先側に移動するように位置制御信号を位置制御部4Bに出力する。その結果、溶接ワイヤ6は第2の母材2の側から第1の母材1の開先側に近づくように移動される。なおこの場合、実電流値と電流設定値の比較を用いて同様な位置制御を行うことも可能である。
【0038】
一方、電力診断装置23の出力部23Cは、電圧検出部10と電流検出部11から検出された実電圧値と実電流値をそれぞれ電圧制御器13と電流制御器15に出力する。電圧制御器13では、予め設定されている平均電圧値と実電圧値を比較し、実電圧値が平均電圧となるように電圧制御指令信号を出力制御部22に出力する。また電流制御器15は、予め設定されている平均電流値と実電流値を比較し、実電流値が平均電流になるように電流制御指令信号を出力制御部22に出力される。
【0039】
出力制御部22は、入力された電圧制御指令信号と電流制御指令信号に基づいて、溶接電源9から供給する電圧と電流を調整する制御信号を溶接電源9に出力し、供給電力が設定値になるように調整される。
【0040】
上記のごとく、第1母材1と第2母材2から成るT継手100を開先側から溶接ワイヤ6からのアーク溶接だけで、開先裏側に裏ビードB4を形成しながら、安定した裏波ビードBを形成するBOB溶接を行うことができる。
【0041】
本発明の溶接方法の実施の形態では、上記の溶接装置によるT継手のBOB溶接において、母材1,2の相対変位を拘束するために仮付溶接行い、仮付溶接部の裏波ビードを欠陥なく形成するために仮付溶接部の肉厚を所定肉厚まで除去し、BOB溶接が行われる。この仮付溶接部除去作業のために上記溶接装置に対してグラインダ装置を付設される。図3において、グラインダ装置の図示は省略されているが、グラインダ装置はロボット本体3に対して併設もしくは、溶接トーチ5と交換つまりロボットアーム3Bに取り付けることができるように設置されている。
【0042】
次に、図4乃至図13を参照して本発明の溶接方法の実施の形態を説明する。図4は本発明が適用される仮付溶接後のT型継手の一例を示す正面図、図5はその断面図、図6は本発明が適用される仮付溶接後のT型継手の他の例を示す正面図、図7はその断面図である。母材1,2は仮付溶接部Kによって相対変位が拘束されている。図4及び図5に示す仮付溶接部Kは線状の形状を有し溶接線方向長さL、肉厚lを有している。また、図6及び図7に示す仮付溶接部Kは開先内に複数個存在し、肉厚lを有している。
【0043】
まず、仮付溶接部Kを所定の肉厚になるよう除去する。これは図8に示すように仮付溶接部Kをグラインダ31で切削することにより行われる。これにより、仮付溶接部Kの肉厚lは図9に示すようになる。このように、仮付溶接部Kの肉盛部切削により除去することによって、母材1の開先裏側の面1cより開先内仮付溶接部外端までの距離lは、1.0〜3.0mmになるまで減少する。
【0044】
次に、溶接ワイヤ6を母材1,2の開先接合部に向けかつ開先接合部の溶接開始点に対応して配置された溶接ワイヤ6と当該母材1,2との間に前述の通りアークを発生させ、開先内部を溶融する。その後、所定の速度で溶接方向に溶接ワイヤ6を移動させながらBOB溶接を継続する。それにより、図10乃至図13に示すように溶接線全線で安定した、欠陥のない表ビードB6及び裏波ビードB4を得ることができる。
【0045】
仮付溶接部Kの肉厚を除去する方法としては、グラインダ31の代わりに、図14に示すようなガウジング装置32を用いることができる。ガウジング装置は消耗用電極33を有し、酸素ガス等を供給して、電極33により仮付溶接部Kを所定の肉厚まで切削することができる。なお仮付溶接部Kの余盛部の除去には同様な作用を持つ任意の装置を用いることができる。
【0046】
次に、図15乃至図18を参照して本発明の溶接システムの一実施の形態である溶接用ロボット本体3による溶接作業とグラインダ31を備えたグラインダロボット41による切削作業の実施形態を説明する。
【0047】
図15に示す例では、被溶接物42は4枚の鋼板42a,42b,42c,42dを突合せて構成されている。突合せ部で片側開先を有するT継手部分が形成され、4箇所のT継手部分が形成されている。図示された状態では、鋼板42aと鋼板42bとの間の突合せ部であるT継手部分に対してBOB溶接が行われる。被加工物42に対しては、その長手方向の移動範囲43の両端にロボット本体3とグラインダロボット41が配置されている。図15において、ロボット本体3とグラインダロボット41は共に待機状態にある。
【0048】
最初に、グラインダロボット41が初期位置に移動し、図16に示すように、グラインダロボット41によって仮付溶接部Kの余盛部が所定肉厚になるよう除去作業が行われる。この際、溶接ロボット本体3は待機中である。その後、図17に示すように、溶接ロボット本体3が移動し、BOB溶接が行われる。この際、グラインダロボット41は待機中である。このBOB溶接により、仮付溶接部Kの範囲でも良好な裏ビードを得ることができる。この際、溶接ロボット3の溶接動作には、グラインダロボット41の動作データを用いることも可能である。
【0049】
また、図18に示すように、仮付溶接作業を溶接ロボット3により行い、上記のように仮付溶接部を除去した後、BOB溶接を行えば、仮付溶接部Kの範囲でも良好な裏ビードを得えることができる。この際、グラインダロボット41の動作及びBOB溶接時の溶接ロボット3の動作には、仮付溶接時の溶接ロボット3の動作データを用いることも可能である。
【0050】
次に図19及び図20を参照して本発明の溶接システムの他の実施の形態である1台のロボットによる溶接作業と切削作業の実施の形態を説明する。図19に示すように、ロボット45の先端にグラインダ装置31が設置されており、ツール台47上に溶接トーチ46が設置されている。まず、グラインダ装置31を有するロボット45が初期位置に移動し、グラインダ31によって、仮付溶接部Kの余盛部が所定肉厚になるように除去作業を行う。その後、ロボット45の先端に設置されたグラインダ装置31を溶接トーチ46に代えて、BOB溶接を行う。この際、グラインダ装置31は図20に示すようにツール台47上に設置されている。このBOB溶接により、仮付溶接部Kの範囲においても良好な裏ビードを得ることができる。また、この溶接トーチ46によって仮付溶接を行うこともできる。
【0051】
なお、上述した本発明の実施の形態で説明した構成、形状、大きさおよび配置関係については、本発明が理解、実施できる程度に概略的に示したものにすぎず、また、数値および各構成の組成(材質)については例示にすぎない。従って、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【0052】
【発明の効果】
本発明の溶接方法によれば、第1の母材と第2の母材とので形成される片側開先を有するT型継手において、仮付溶接部を溶接前に所定の肉厚まで除去し、仮付溶接部の溶接時の影響を小さくしたので、仮付溶接部の開先裏側においても欠陥のない安定した裏ビードを確実に形成することができる。
本発明の溶接システムによれば、仮付溶接部の肉厚を除去する切削装置と仮付溶接及びBOB溶接をする溶接装置を備えたため、本発明に係る溶接方法の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用されるT継手の側面図である。
【図2】本発明が適用されるT型継手をその開先側から見た斜視図である。
【図3】本発明に係る溶接装置の一実施形態を示すシステム構成図である。
【図4】本発明を適用するT型継手の一例を示す正面図である。
【図5】図4に示すT型継手の一例のV―V矢視断面図である。
【図6】本発明を適用するT型継手の他の例を示す正面図である。
【図7】図6に示すT型継手の他の例のVII―VII矢視断面図である。
【図8】本発明の溶接方法の一実施の形態である仮付溶接部の切削作業の状態を示す斜視図である。
【図9】本発明の溶接方法の一実施の形態である切削作業後の仮付溶接部の肉厚を示すT型継手の側面図である。
【図10】本発明の溶接方法の一実施の形態である仮付溶接部を切削した後にBOB溶接を行った結果を示すT型継手の正面図である。
【図11】図10に示すT型継手のXI―XI矢視断面図である。
【図12】本発明の溶接方法の一実施の形態である仮付溶接部を切削した後にBOB溶接を行った結果を示すT型継手の背面図である。
【図13】図12に示すT型継手のXIII―XIII矢視断面図である。
【図14】本発明の他の実施の形態である仮付溶接部の削除をする他の装置の例を示す斜視図である。
【図15】本発明の溶接システムの一実施の形態である待機状態を示す斜視図である。
【図16】本発明の溶接システムの一実施の形態である溶接システムの切削作業を示す斜視図である。
【図17】本発明の溶接システムの一実施の形態である溶接システムの溶接作業を示す斜視図である。
【図18】本発明の溶接システムの他の実施の形態である仮付溶接作業を示す斜視図である。
【図19】本発明の溶接システムの他の実施の形態である切削作業を示す斜視図である。
【図20】本発明の溶接システムの他の実施の形態である溶接作業を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 第1の母材
2 第2の母材
3 溶接ロボット
6 溶接ワイヤ
9 溶接電源
31 グラインダ装置
41 グラインダロボット
B 裏波ビード
B7 未溶着部
K 仮付溶接部
l 肉厚
【発明の属する技術分野】
本発明は溶接方法及び溶接システムに関し、特に片側開先を有するT継手の仮付溶接部における裏波ビードの溶接状態を良好にすることができる溶接方法及び溶接システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
建築物の鉄骨構造、橋梁、産業機械、建設機械等のあらゆる溶接構造物において、溶接継手として、T字型の継手(T継手)を採用する場合が多い。このT継手では、一般的に、片側開先(レ形開先)を有する一方の部材(縦板)と他方の部材(横板)の間で、一方の部材を他方の部材に突合せて、これらの部材をT字型に配置する。次に、一方の部材と他方の部材とによって形成される開先側からアークを与えて溶融し、ビードを形成し、これらの部材を接合するものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、裏当て材を使用せず、T継手の片側開先側から溶接を行い、その開先の裏側にビードを形成する溶接方法もある(例えば、非特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−332567号公報。
【0005】
【非特許文献1】
高谷 透、外3名、「T継手における裏波ビード溶接法の研究」社団法人・溶接学会、題175回溶接法資料、第143回アーク物理資料、2001年8月8日。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前述した片側開先を有するT継手を溶接する場合、片側開先を有する一方の部材と片側開先が突き合わされる他方の部材との相対変位を拘束するために、これらの部材の適宜箇所に仮付溶接部を設ける場合がある。このような仮付溶接部によって仮溶接されたT継手を、前述した非特許文献1に開示された溶接方法によって溶接する場合、この仮付溶接部では溶融金属が開先の裏側まで押し出されず、この仮付溶接部には裏波ビードが連続して形成できないという問題が発生する。この裏波ビードの不連続部分では、未溶着の部分が出来ており、この未溶着の部分が疲労破壊の起点となり、継手強度として、品質低下の原因となる。
【0007】
本発明の目的は、上述した事柄に基づいてなされたもので、片側開先を有する一方の部材と片側開先が突き合わされる他方の部材との相対変位を拘束するために、仮付溶接した場合においても、片側開先側からのアーク溶接によって開先側とその裏側の突合せ部に隅肉ビードを、安定的に形成し、かつ良好な形状で繋ぐことができる溶接方法及び溶接システムを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の目的を達成するために、第1の発明は、片側開先を有する第1の母材を第2の母材にT字型に当接し溶接する方法において、前記第1の母材と前記第2の母材との仮付溶接部を所定肉厚まで除去後、前記第1の母材と前記第2の母材で形成される開先溶接部に溶接ワイヤを臨ませ、前記溶接ワイヤを溶接方向に移動させながら、前記溶接ワイヤからのアークによって前記開先溶接部を開先側から溶融しかつ溶融物を開先裏側へ押し出して裏波ビードを形成することを特徴とする溶接方法にある。
【0009】
また、第2の発明は、片側開先を有する第1の母材を第2の母材にT字型に当接し溶接する方法において、前記第1の母材と前記第2の母材とを仮付溶接部により相対変位を拘束し、前記仮付溶接部の肉厚を除去後、前記第1の母材と前記第2の母材で形成される開先溶接部に溶接ワイヤを臨ませ、前記溶接ワイヤを溶接方向に移動させながら、前記溶接ワイヤからのアークによって前記開先溶接部を開先側から溶融しかつ溶融物を開先裏側へ押し出して裏波ビードを形成することを特徴とする溶接方法にある。
【0010】
更に、第3の発明は、片側開先を有する第1の母材を第2の母材にT字型に当接し溶接する方法において、前記第1の母材と前記第2の母材とを少なくとも1つの仮付溶接部により相対変位を拘束し、前記仮付溶接部の肉厚を除去後、前記第1の母材と前記第2の母材で形成される開先溶接部に溶接ワイヤを臨ませ、前記溶接ワイヤを溶接方向に移動させながら、前記溶接ワイヤからのアークによって前記開先溶接部を開先側から溶融しかつ溶融物を開先裏側へ押し出して裏波ビードを形成することを特徴とする溶接方法にある。
【0011】
また、第4の発明は、前述した第1乃至第3の発明において、前記仮付溶接部の溶接ビードの肉厚を、グライダ装置によって除去することを特徴とする溶接方法にある。
【0012】
更に、第5の発明は、片側開先を有する第1の母材を第2の母材にT字型に当て、前記第1の母材と前記第2の母材とを仮付溶接部により相対変位を拘束したT型継手の溶接システムにおいて、前記仮付溶接部を所定の肉厚まで除去する切削装置と、前記第1の母材と前記第2の母材で形成される開先溶接部に溶接ワイヤを臨ませ、前記溶接ワイヤを溶接方向に移動させながら、前記溶接ワイヤからのアークによって前記開先溶接部を開先側から溶融し、かつ溶融物を開先裏側へ押し出して裏波ビードを形成する溶接装置とからなることを特徴とする溶接システムにある。
【0013】
また、第6の発明は、第5の発明において、前記仮付溶接部を所定の肉厚まで除去する切削装置の動作データを、裏波ビードを形成する溶接装置の溶接動作のデータに用いることを特徴とする溶接システムにある。
【0014】
更に、第7の発明は、片側開先を有する第1の母材を第2の母材にT字型に当てたT型継手の溶接システムにおいて、前記第1母材と前記第2の母材とを仮付溶接をする溶接装置と前記仮付溶接部の肉厚を除去する切削装置と前記第1の母材と前記第2の母材で形成される開先溶接部に溶接ワイヤを臨ませ、前記溶接ワイヤを溶接方向に移動させながら、前記溶接ワイヤからのアークによって前記開先溶接部を開先側から溶融しかつ溶融物を開先裏側へ押し出して裏ビードを形成する前記溶接装置とからなることを特徴とする溶接システムにある。
【0015】
また、第8の発明は、第7の発明において、前記仮付溶接における溶接装置の動作データを、前記仮付溶接部を所定の肉厚まで除去する切削装置の動作及び裏ビードを形成する溶接装置の動作のデータとして用いることを特徴とする溶接システムにある。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の溶接方法及び溶接システムの好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
本発明の溶接方法及び溶接システムを説明するに先立って、本発明に用いられる溶接方法、即ち、BOB(Bulldozed−Out−Bead)溶接法について説明する。BOB溶接法とは、片側開先を有する第1の母材(縦材)と第2の母材(横材)とをT字型に突合せ、第1の母材の先端面を第2の母材の面に接触させ、2つの母材の開先側接触部(開先溶接部)に対して開先側から溶接ワイヤの先端部を臨ませ、溶接ワイヤからアークを発生させて、アークで接触部付近の2つの母材部分を溶融させ、その溶融物または溶融プールを開先側から開先裏側へ押し出して裏ビードを形成し、裏波ビードを形成する溶接法である。
【0017】
図1は本発明に用いるBOB溶接法を適用する片側開先突合せによる溶接前のT継手部分の断面図、図2はBOB溶接法により溶接されたT継手部分の斜視図を示す。図1において、第1の母材1はその突合せ端部にルートフェイス1aを有するように片側開先面(レ形開先形成面)1bが設けられている。第2の母材2は第1の母材1のルートフェイス1aと接触する平坦面2aを有している。第1の母材1と第2の母材2とによりT継手を形成する。図1で、第1の母材1の上側部分、第2の母材2の左右部分の図示は省略されている。5は溶接トーチ、6は溶接トーチ5に保持された不図示の送給装置によって軸方向の外方に向かって送給される溶接ワイヤである。なお、好ましくは、溶接トーチ5からは一定流量のシールドガス101が吐出されている。
【0018】
図1において、Rfはルートフェイス1aの厚さ方向の寸法、P1は第1の母材1の開先面1bの端部と第2の母材2の平坦面2aとの接する接触位置、P2はアーク中心の狙い位置、dは接触位置P1からアーク中心の狙い位置P2までの距離を示す。さらに、θは開先角度、δはアーク101(溶接ワイヤ6)の中心線(A)と第2の母材2の平坦面2aとが形成する傾斜角度、Aはアーク101の中心線を示す。
【0019】
次に、BOB溶接法を母材1,2が鋼材であるT継手に適用した場合の一例を具体的に説明する。ルートフェイス1aの寸法Rfは1.0〜3.0mm、ルートギャップは0mm(ルートフェイス1aが接触状態)、開先角度θは30〜60度に設定される。この状態で溶接装置によりアーク溶接が行われる。溶接条件は、平均電流は250〜310A、平均電圧は25〜33V、移動速度20〜45cm/分である。
【0020】
以上の条件下で、溶接ワイヤ6(アーク中心)の狙い位置P2を接触位置P1から0〜3mmとし、第2の母材2はほぼ水平に置いてその平坦面2aと溶接ワイヤ6のなす傾斜角度δを15〜35度としたとき、第1の母材1の開先裏側面1cと第2の母材2の平坦面2aとの突合せ部に2〜8mmの隅肉ビードを安定的に溶着することができた。
【0021】
その溶接結果を図2に示す。この図2において、B4は第1の母材1の開先側と反対側(開先裏側)の面1cと第2の母材2の平坦面2aとの間に溶着された隅肉ビード(裏波ビード)、B5は第2の母材2の平坦面2aを溶融しながら再凝固したビード、B6は溶接ワイヤ6自身の溶融とが加わって隅肉ビードB4を形成した後の開先側のビード(表ビード)である。
なお、上記の具体的数値は、母材1,2の材質および板厚、突合せ部の形状等種々の条件が考慮されて決定される。
【0022】
上述したBOB溶接法によるT継手の溶接ビードの形成過程は次の通りである。溶接開始前の溶接ワイヤ6の設定状態は図1に示されるごとくであり、溶接ワイヤ6の先端部を第2の母材2の所定の狙い位置P2に臨ませる。所定の狙い位置P2は、第1の母材1と第2の母材2との接触部近傍を溶融させるときに、第1の母材1の端部の溶け落ちが生ぜず、かつ開先裏側に裏ビード(B4)が形成されるような位置となるように開先面1bの端部と平坦面2aの接触位置P1に対して溶接ワイヤ側に少し離れた位置に設定される。溶接ワイヤ6の軸方向は、熱容量の大きい第2の母材2の平坦面2aに対し傾斜角度δで傾斜されている。この溶接ワイヤ6を臨ませる所定の狙い位置P2はこの実施形態においても同様である。
【0023】
上記の第1および第2の母材1,2は長尺の形状を有している。図2に示されるように、上記のT継手のBOB溶接では、第1の母材1と第2の母材2との接触部は直線状であり、溶接ワイヤ6は直線状の接触部に沿って移動しながら溶接を行う。溶接ワイヤ6の移動方向は、図1の紙面に対して、直角な方向が溶接方向である。
【0024】
次に、図3を参照してT継手に対してBOB溶接を行う溶接装置の構成および動作を説明する。図3において、先に説明した要素と同一の要素には同一の符号を付している。
【0025】
100はBOB溶接の対象である溶接前のT継手部分を示す。T継手100は前述の通り第1と第2の母材1,2とから成っている。第1の母材1の突合せの接触部には片側開先が形成されている。T継手100は紙面に垂直な方向に長尺な形状で形成されている。
【0026】
上記T継手100に対して、第1と第2の母材1,2の開先側の位置に溶接用ロボット本体3が配置されている。ロボット本体3は、平行リンク部3Aとロボットアーム3Bを備える。ロボット本体3は、平行リンク部3Aとロボットアーム3Bの各種動作、旋回動作、およびT継手100の長手方向の移動動作等が行えるように設けられている。ロボット本体3の各種動作はロボット制御装置4によって制御される。ロボット制御装置4は指令信号に基づきロボットアーム3Bを互いに直交するX,Y,Zの3軸方向に駆動制御される。なお図4においてロボット本体3をT継手100の長手方向に沿って移動させる移動装置の構成の図示は省略されている。
【0027】
ロボット制御装置4は、種々の制御設定値等を入力・記憶するための入力部4Aと、ロボットアーム3Bの位置・姿勢制御のための位置制御部4Bと、溶接速度を制御するための速度制御部4C等から構成されている。
【0028】
ロボットアーム3Bの先端部には溶接トーチ5が設けられる。溶接トーチ5には溶接ワイヤ6が保持される。溶接ワイヤ6はワイヤ送給装置8によって送給される。9は溶接電源である。溶接電源9は、ケーブル7A,7Bによって溶接ワイヤ6と母材1,2のそれぞれに接続される。ケーブル7Aには電圧検出器10と電流検出器11が付設される。電圧検出器10は溶接電源9によって溶接ワイヤ6と母材1,2との間に印加される溶接電圧を検出する。電流検出器11は溶接電源9から溶接ワイヤ6に供給される溶接電流を検出する。
【0029】
溶接電源9の制御手段として、平均電圧設定器12、電圧制御器13、平均電流設定器14、電流制御器15、出力制御器22、電力診断装置23が設けられている。
【0030】
平均電圧設定器12は溶接ワイヤ6に印加される平均電圧値を設定する。電圧制御器13は、平均電圧設定器12に設定された平均電圧と、電圧検出器10で検出された電圧に基づき電力診断装置23を介して取り出された実平均電圧値とを比較して、電圧制御信号を出力する。
【0031】
平均電流設定器14は溶接ワイヤ6に供給される平均電流値を設定する。電流制御器15は、平均電流設定器14に設定された平均電流と、電流検出器11で検出された電流に基づき電力診断装置23を介して取り出された実平均電流値とを比較して、電流制御信号を出力する。
【0032】
出力制御器22は、電圧制御器13からの電圧制御信号と電流制御器15からの電流制御信号が入力され、これらの制御信号に基づいて溶接電源9から供給される電力を制御するための制御信号を出力する。
【0033】
電力診断装置23は入力部23Aと比較部23Bと出力部23Cから構成されている。入力部23Aは、平均電圧設定器12で設定される平均電圧より高い第1電圧設定値、当該平均電圧より低い第2電圧設定値、および平均電流設定器14で設定される平均電流より高い電流設定値を設定する。比較部23Bは、電圧検出器10から与えられる実電圧値と、第1および第2の電圧設定値とを比較して、位置制御信号をロボット制御装置4に対して出力すると共に、電流検出器11から与えられる実電流値と電流設定値とを比較して、位置制御信号をロボット制御装置4に出力する。出力部23Cは、電圧検出器10や電流検出器11から検出された実電圧値および実電流値をそれぞれ電圧制御器13および電流制御器15に出力する。
【0034】
次に、上述した溶接装置の動作を説明する。溶接トーチ5はロボットアーム3Bに取り付けられている。溶接ワイヤ6は溶接トーチ5に保持されながら、溶接トーチ5の先端から所定長さで突き出されている。溶接ワイヤ6はワイヤ供給装置8で送給される。溶接ワイヤ6の先端部は、母材1,2の開先溶接部の開先側に所定傾斜角度δだけ傾けられてかつ所定の狙い位置で臨むように設けられている。このような設定および制御は、ロボット制御装置4の入力部4Aと位置制御部4Bによって行われる。またロボット本体3の移動経路や溶接速度はロボット制御装置4において入力部4Aから速度制御部4Cに与えられ、図3中紙面に垂直な方向(溶接方向)に向けて移動を行う。
【0035】
電力診断装置23の入力部23Aからは予め第1および第2の電圧設定値と電流設定値が入力され、比較部23Bに記憶される。
【0036】
上記の設定状態の下で溶接ワイヤ6からのアークに基づくBOB溶接が開始される。溶接が始まると、電圧検出器10と電流検出器11はそれぞれケーブル7Aを経由して実電圧値および実電流値を検出する。溶接中にロボット本体3の振動や母材の位置ずれなどで溶接ワイヤ6が例えば母材1の開先側に寄りすぎると、熱容量の小さい開先端部が溶け落ちる。開先端部が溶け落ちると、アークが母材1の裏側に抜け、実電圧値が大きくなる。そうすると、電力診断装置23の比較部23Bで実電圧が第1電圧設定値を超えるという比較・判断が行われ、溶接ワイヤ6を第2の母材2側に移動するように位置制御信号を位置制御部4Bに出力する。その結果、溶接ワイヤ6は第1の母材1の開先側から第2の母材2側に近づくように移動される。
【0037】
上記とは反対に、溶接ワイヤ6と母材1,2との相対的位置関係が母材2側に寄ってしまう場合には、開先側への入熱が少なくなり、溶接物が開先裏側に押し出されなくなり、開先側にビードが溜まってくる。そうすると、溶接ワイヤ6の突き出し長さが短くなるので、実電圧値は小さくなり、実電流値は大きくなる。このため、電力診断装置23の比較部23Bで実電圧が第2電圧設定値より小さくなるという比較・判断が行われ、溶接ワイヤ6を第1の母材1の開先側に移動するように位置制御信号を位置制御部4Bに出力する。その結果、溶接ワイヤ6は第2の母材2の側から第1の母材1の開先側に近づくように移動される。なおこの場合、実電流値と電流設定値の比較を用いて同様な位置制御を行うことも可能である。
【0038】
一方、電力診断装置23の出力部23Cは、電圧検出部10と電流検出部11から検出された実電圧値と実電流値をそれぞれ電圧制御器13と電流制御器15に出力する。電圧制御器13では、予め設定されている平均電圧値と実電圧値を比較し、実電圧値が平均電圧となるように電圧制御指令信号を出力制御部22に出力する。また電流制御器15は、予め設定されている平均電流値と実電流値を比較し、実電流値が平均電流になるように電流制御指令信号を出力制御部22に出力される。
【0039】
出力制御部22は、入力された電圧制御指令信号と電流制御指令信号に基づいて、溶接電源9から供給する電圧と電流を調整する制御信号を溶接電源9に出力し、供給電力が設定値になるように調整される。
【0040】
上記のごとく、第1母材1と第2母材2から成るT継手100を開先側から溶接ワイヤ6からのアーク溶接だけで、開先裏側に裏ビードB4を形成しながら、安定した裏波ビードBを形成するBOB溶接を行うことができる。
【0041】
本発明の溶接方法の実施の形態では、上記の溶接装置によるT継手のBOB溶接において、母材1,2の相対変位を拘束するために仮付溶接行い、仮付溶接部の裏波ビードを欠陥なく形成するために仮付溶接部の肉厚を所定肉厚まで除去し、BOB溶接が行われる。この仮付溶接部除去作業のために上記溶接装置に対してグラインダ装置を付設される。図3において、グラインダ装置の図示は省略されているが、グラインダ装置はロボット本体3に対して併設もしくは、溶接トーチ5と交換つまりロボットアーム3Bに取り付けることができるように設置されている。
【0042】
次に、図4乃至図13を参照して本発明の溶接方法の実施の形態を説明する。図4は本発明が適用される仮付溶接後のT型継手の一例を示す正面図、図5はその断面図、図6は本発明が適用される仮付溶接後のT型継手の他の例を示す正面図、図7はその断面図である。母材1,2は仮付溶接部Kによって相対変位が拘束されている。図4及び図5に示す仮付溶接部Kは線状の形状を有し溶接線方向長さL、肉厚lを有している。また、図6及び図7に示す仮付溶接部Kは開先内に複数個存在し、肉厚lを有している。
【0043】
まず、仮付溶接部Kを所定の肉厚になるよう除去する。これは図8に示すように仮付溶接部Kをグラインダ31で切削することにより行われる。これにより、仮付溶接部Kの肉厚lは図9に示すようになる。このように、仮付溶接部Kの肉盛部切削により除去することによって、母材1の開先裏側の面1cより開先内仮付溶接部外端までの距離lは、1.0〜3.0mmになるまで減少する。
【0044】
次に、溶接ワイヤ6を母材1,2の開先接合部に向けかつ開先接合部の溶接開始点に対応して配置された溶接ワイヤ6と当該母材1,2との間に前述の通りアークを発生させ、開先内部を溶融する。その後、所定の速度で溶接方向に溶接ワイヤ6を移動させながらBOB溶接を継続する。それにより、図10乃至図13に示すように溶接線全線で安定した、欠陥のない表ビードB6及び裏波ビードB4を得ることができる。
【0045】
仮付溶接部Kの肉厚を除去する方法としては、グラインダ31の代わりに、図14に示すようなガウジング装置32を用いることができる。ガウジング装置は消耗用電極33を有し、酸素ガス等を供給して、電極33により仮付溶接部Kを所定の肉厚まで切削することができる。なお仮付溶接部Kの余盛部の除去には同様な作用を持つ任意の装置を用いることができる。
【0046】
次に、図15乃至図18を参照して本発明の溶接システムの一実施の形態である溶接用ロボット本体3による溶接作業とグラインダ31を備えたグラインダロボット41による切削作業の実施形態を説明する。
【0047】
図15に示す例では、被溶接物42は4枚の鋼板42a,42b,42c,42dを突合せて構成されている。突合せ部で片側開先を有するT継手部分が形成され、4箇所のT継手部分が形成されている。図示された状態では、鋼板42aと鋼板42bとの間の突合せ部であるT継手部分に対してBOB溶接が行われる。被加工物42に対しては、その長手方向の移動範囲43の両端にロボット本体3とグラインダロボット41が配置されている。図15において、ロボット本体3とグラインダロボット41は共に待機状態にある。
【0048】
最初に、グラインダロボット41が初期位置に移動し、図16に示すように、グラインダロボット41によって仮付溶接部Kの余盛部が所定肉厚になるよう除去作業が行われる。この際、溶接ロボット本体3は待機中である。その後、図17に示すように、溶接ロボット本体3が移動し、BOB溶接が行われる。この際、グラインダロボット41は待機中である。このBOB溶接により、仮付溶接部Kの範囲でも良好な裏ビードを得ることができる。この際、溶接ロボット3の溶接動作には、グラインダロボット41の動作データを用いることも可能である。
【0049】
また、図18に示すように、仮付溶接作業を溶接ロボット3により行い、上記のように仮付溶接部を除去した後、BOB溶接を行えば、仮付溶接部Kの範囲でも良好な裏ビードを得えることができる。この際、グラインダロボット41の動作及びBOB溶接時の溶接ロボット3の動作には、仮付溶接時の溶接ロボット3の動作データを用いることも可能である。
【0050】
次に図19及び図20を参照して本発明の溶接システムの他の実施の形態である1台のロボットによる溶接作業と切削作業の実施の形態を説明する。図19に示すように、ロボット45の先端にグラインダ装置31が設置されており、ツール台47上に溶接トーチ46が設置されている。まず、グラインダ装置31を有するロボット45が初期位置に移動し、グラインダ31によって、仮付溶接部Kの余盛部が所定肉厚になるように除去作業を行う。その後、ロボット45の先端に設置されたグラインダ装置31を溶接トーチ46に代えて、BOB溶接を行う。この際、グラインダ装置31は図20に示すようにツール台47上に設置されている。このBOB溶接により、仮付溶接部Kの範囲においても良好な裏ビードを得ることができる。また、この溶接トーチ46によって仮付溶接を行うこともできる。
【0051】
なお、上述した本発明の実施の形態で説明した構成、形状、大きさおよび配置関係については、本発明が理解、実施できる程度に概略的に示したものにすぎず、また、数値および各構成の組成(材質)については例示にすぎない。従って、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【0052】
【発明の効果】
本発明の溶接方法によれば、第1の母材と第2の母材とので形成される片側開先を有するT型継手において、仮付溶接部を溶接前に所定の肉厚まで除去し、仮付溶接部の溶接時の影響を小さくしたので、仮付溶接部の開先裏側においても欠陥のない安定した裏ビードを確実に形成することができる。
本発明の溶接システムによれば、仮付溶接部の肉厚を除去する切削装置と仮付溶接及びBOB溶接をする溶接装置を備えたため、本発明に係る溶接方法の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用されるT継手の側面図である。
【図2】本発明が適用されるT型継手をその開先側から見た斜視図である。
【図3】本発明に係る溶接装置の一実施形態を示すシステム構成図である。
【図4】本発明を適用するT型継手の一例を示す正面図である。
【図5】図4に示すT型継手の一例のV―V矢視断面図である。
【図6】本発明を適用するT型継手の他の例を示す正面図である。
【図7】図6に示すT型継手の他の例のVII―VII矢視断面図である。
【図8】本発明の溶接方法の一実施の形態である仮付溶接部の切削作業の状態を示す斜視図である。
【図9】本発明の溶接方法の一実施の形態である切削作業後の仮付溶接部の肉厚を示すT型継手の側面図である。
【図10】本発明の溶接方法の一実施の形態である仮付溶接部を切削した後にBOB溶接を行った結果を示すT型継手の正面図である。
【図11】図10に示すT型継手のXI―XI矢視断面図である。
【図12】本発明の溶接方法の一実施の形態である仮付溶接部を切削した後にBOB溶接を行った結果を示すT型継手の背面図である。
【図13】図12に示すT型継手のXIII―XIII矢視断面図である。
【図14】本発明の他の実施の形態である仮付溶接部の削除をする他の装置の例を示す斜視図である。
【図15】本発明の溶接システムの一実施の形態である待機状態を示す斜視図である。
【図16】本発明の溶接システムの一実施の形態である溶接システムの切削作業を示す斜視図である。
【図17】本発明の溶接システムの一実施の形態である溶接システムの溶接作業を示す斜視図である。
【図18】本発明の溶接システムの他の実施の形態である仮付溶接作業を示す斜視図である。
【図19】本発明の溶接システムの他の実施の形態である切削作業を示す斜視図である。
【図20】本発明の溶接システムの他の実施の形態である溶接作業を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 第1の母材
2 第2の母材
3 溶接ロボット
6 溶接ワイヤ
9 溶接電源
31 グラインダ装置
41 グラインダロボット
B 裏波ビード
B7 未溶着部
K 仮付溶接部
l 肉厚
Claims (8)
- 片側開先を有する第1の母材を第2の母材にT字型に当接し溶接する方法において、前記第1の母材と前記第2の母材との仮付溶接部を所定肉厚まで除去後、前記第1の母材と前記第2の母材で形成される開先溶接部に溶接ワイヤを臨ませ、前記溶接ワイヤを溶接方向に移動させながら、前記溶接ワイヤからのアークによって前記開先溶接部を開先側から溶融しかつ溶融物を開先裏側へ押し出して裏波ビードを形成することを特徴とする溶接方法。
- 片側開先を有する第1の母材を第2の母材にT字型に当接し溶接する方法において、前記第1の母材と前記第2の母材とを仮付溶接部により相対変位を拘束し、前記仮付溶接部の肉厚を除去後、前記第1の母材と前記第2の母材で形成される開先溶接部に溶接ワイヤを臨ませ、前記溶接ワイヤを溶接方向に移動させながら、前記溶接ワイヤからのアークによって前記開先溶接部を開先側から溶融しかつ溶融物を開先裏側へ押し出して裏波ビードを形成することを特徴とする溶接方法。
- 片側開先を有する第1の母材を第2の母材にT字型に当接し溶接する方法において、前記第1の母材と前記第2の母材とを少なくとも1つの仮付溶接部により相対変位を拘束し、前記仮付溶接部の肉厚を除去後、前記第1の母材と前記第2の母材で形成される開先溶接部に溶接ワイヤを臨ませ、前記溶接ワイヤを溶接方向に移動させながら、前記溶接ワイヤからのアークによって前記開先溶接部を開先側から溶融しかつ溶融物を開先裏側へ押し出して裏波ビードを形成することを特徴とする溶接方法。
- 前記仮付溶接部の溶接ビードの肉厚を、グライダ装置によって除去することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の溶接方法。
- 片側開先を有する第1の母材を第2の母材にT字型に当て、前記第1の母材と前記第2の母材とを仮付溶接部により相対変位を拘束したT型継手の溶接システムにおいて、前記仮付溶接部を所定の肉厚まで除去する切削装置と、前記第1の母材と前記第2の母材で形成される開先溶接部に溶接ワイヤを臨ませ、前記溶接ワイヤを溶接方向に移動させながら、前記溶接ワイヤからのアークによって前記開先溶接部を開先側から溶融し、かつ溶融物を開先裏側へ押し出して裏波ビードを形成する溶接装置とからなることを特徴とする溶接システム。
- 前記仮付溶接部を所定の肉厚まで除去する切削装置の動作データを、裏波ビードを形成する溶接装置の動作のデータに用いることを特徴とする請求項5に記載の溶接システム。
- 片側開先を有する第1の母材を第2の母材にT字型に当てたT型継手の溶接システムにおいて、前記第1母材と前記第2の母材とを仮付溶接をする溶接装置と前記仮付溶接部の肉厚を除去する切削装置と前記第1の母材と前記第2の母材で形成される開先溶接部に溶接ワイヤを臨ませ、前記溶接ワイヤを溶接方向に移動させながら、前記溶接ワイヤからのアークによって前記開先溶接部を開先側から溶融しかつ溶融物を開先裏側へ押し出して裏ビードを形成する前記溶接装置とからなることを特徴とする溶接システム。
- 前記仮付溶接における溶接装置の動作データを、前記仮付溶接部を所定の肉厚まで除去する切削装置の動作及び裏ビードを形成する溶接装置の動作のデータとして用いることを特徴とする請求項7に記載の溶接システム。
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