JP3531811B2 - 溶接方法、この方法に用いる溶接装置、その方法により製作される溶接継手および溶接構造物 - Google Patents
溶接方法、この方法に用いる溶接装置、その方法により製作される溶接継手および溶接構造物Info
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Description
る部材の溶接方法、その溶接方法に用いる溶接装置及び
その方法により得られる溶接継手及び溶接構造物に関す
るものである。
設機械等のあらゆる溶接構造物においては、溶接継手と
してT字形継手を採用する場合が多い。このT字形継手
は、一般的に一方の部材の面に、他方の部材の片側開先
を突合せて、これらの部材をT字形に配置し、前述した
一方の部材の面と他方の部材の片側開先によって形成さ
れる開先空間にビードを形成し、これらの部材を接合す
るものもであり、この種の公知例として、特開平8−3
32567号公報及び特開平6−23544号公報に記
載された溶接方法がある。
ちを防止するために、2つの部材によって形成される開
先の裏側に予めビードを設けるものである。また、後者
の従来技術は、溶接金属の突き抜け、未溶着部残留を防
止するために、2つの部材によって形成される開先の背
後に、それぞれ予めビードを設けるものである。
片側開先を有する一方の部材と片側開先が突合される他
方の部材との接合部での開先ルート部の溶け落ちを防止
するために、前記接合部における反溶接側に、予め裏ビ
ードとなるビードを設けるものである。
の形状によっては、前述した従来技術に記載されたよう
な、開先部の裏側に、予め裏ビードとなるビードを設け
ることがビードの位置精度やルートギャップの維持な
ど、実際の溶接施工上難しい場合がある。
上の制約に基づき、開先部の裏側に、予め裏ビードとな
るビードを設けることなく、開先部の裏側に裏ビードを
形成し得ないかという課題について、鋭意研究を続けた
結果に基づいてなされたものであり、開先の裏側に予め
裏ビードとなるビードを設けることなく、開先側からの
アーク溶接によって、開先側と反対側の突合わせ部に隅
肉溶接形状の溶接ビードを安定的に形成することができ
る溶接方法およびこの溶接方法に用いる溶接装置および
その溶接方法により得られる溶接継手および溶接構造物
を提供することを目的とする。
ために、特許請求の範囲の各請求項に記載の発明は、そ
れぞれ以下に示す手段を採用した。請求項1に記載の発
明は、第1の母材と第2の母材とを突合せ溶接する溶接
方法において、片側に開先が形成されこの開先側の端部
に第2の母材に当接させるための当接部を有する第1の
母材と、この第1の母材の当接部を当接させるための平
坦面を有する第2の母材とを用いて、第1の母材の当接
部を第2の母材の平坦面に当接させるとともに、溶接ワ
イヤのアーク中心が第1の母材の開先の端部と第2の母
材の平坦面とが接する位置又はその手前側の近傍位置に
向かうように溶接ワイヤを第2の母材の平坦面に対して
傾斜させて臨ませた後、アーク溶接を行う過程で、第1
の母材の開先部を裏側まで溶融させつつその開先部が溶
け落ちない程度に第2の母材よりも少なく第1の母材に
入熱させるとともに、第1の母材よりも多く第2の母材
に入熱させて第2の母材の平坦面を溶融させるようにし
て、第1の母材と第2の母材と溶接ワイヤとの溶融物に
よる溶融プールを形成し、この溶融プールを第1の母材
の裏側に押し出して開先内から第1の母材の裏側に至る
まで一体となった溶融プールを形成し、この溶融プール
を凝固させることにより、第1の母材の裏側に隅肉溶接
形状の裏波ビードを形成するようにしたとことを特徴と
する溶接方法を採用した。
は、アーク溶接を行う過程で、熱容量の小さな第1の母
材には、開先部を裏側まで溶融させつつこの開先部が溶
け落ちない程度に第2の母材よりも少なく入熱させると
ともに、熱容量の大きな第2の母材には、第1の母材よ
りも多く入熱させて第2の母材の平坦面を溶融させるよ
うにする。そうすると、第1の母材と第2の母材と溶接
ワイヤとの溶融物による溶融プールが形成され、この溶
融プールは、アーク力などにより第1の母材の裏側に押
し出されて、開先内から第1の母材の裏側に至るまで一
体となった溶融プールが形成される。それゆえ、この溶
融プールを凝固させることにより、第1の母材の裏側に
隅肉溶接形状の裏波ビードを形成することができる。し
たがって、本発明の溶接方法では、開先の裏側に予め裏
ビードとなるビードを設けることなく、開先側からのア
ーク溶接によって、開先側と反対側の突合わせ部に隅肉
溶接形状の溶接ビードを安定的に形成することができ
る。
を所定の傾斜角度に維持しながら所定の振り幅でウィー
ビングさせることを特徴とする請求項1に記載の溶接方
法を採用した。
ヤのウィービング動作によっても安定的に溶接すること
ができる。
を所定の傾斜角度をウィービングの中心位置としこの中
心位置を中心として円弧状に所定の振り角度でウィービ
ングさせることを特徴とする請求項1に記載の溶接方法
を採用した。
に記載の発明と同様に安定的に溶接することができる。
の電流が直流であることを特徴とする請求項1乃至請求
項3のいずれかに記載の溶接方法を採用した。
の電流が直流電流とパルス電流を重畳させた電流である
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記
載の溶接方法を採用した。
の電流が正弦波電流であることを特徴とする請求項1乃
至請求項3のいずれかに記載の溶接方法を採用した。
明によれば、アークの指向性が向上し、何等かの理由で
溶接ワイヤの狙い位置が若干ずれた場合にもアークの乱
れが少なく、開先と反対側に押し出す溶融物の量が安定
するので、隅肉溶接形状のビードの形成及び安定した溶
接が可能である。
2の母材とを突合せ溶接したT字形溶接継手であって、
片側に開先が形成されこの開先側の端部に第2の母材に
当接させるための当接部を有する第1の母材と、この第
1の母材の当接部を当接させるための平坦面を有する第
2の母材とを用いて、第1の母材の当接部を第2の母材
の平坦面に当接させるとともに、溶接ワイヤのアーク中
心が第1の母材の開先の端部と第2の母材の平坦面とが
接する位置又はその手前側の近傍位置に向かうように溶
接ワイヤを第2の母材の平坦面に対して傾斜させて臨ま
せた後、アーク溶接を行う過程で、第1の母材の開先部
を裏側まで溶融させつつその開先部が溶け落ちない程度
に第2の母材よりも少なく第1の母材に入熱させるとと
もに、第1の母材よりも多く第2の母材に入熱させて第
2の母材の平坦面を溶融させるようにして、第1の母材
と第2の母材と溶接ワイヤとの溶融物による溶融プール
を形成し、この溶融プールを第1の母材の裏側に押し出
して開先内から第1の母材の裏側に至るまで一体となっ
た溶融プールを形成し、この溶融プールを凝固させるこ
とにより、第1の母材の裏側に隅肉溶接形状の裏波ビー
ドを形成するようにしたことを特徴とするT字形溶接継
手を採用した。
2の母材とを突合せ溶接した平板の突合せ溶接継手であ
って、片側に開先が形成されこの開先側の端部に第2の
母材に当接させるための当接部を有する第1の母材と、
この第1の母材の当接部を当接させるための平坦面を有
する第2の母材とを用いて、第1の母材の当接部を第2
の母材の平坦面に当接させるとともに、溶接ワイヤのア
ーク中心が第1の母材の開先の端部と第2の母材の平坦
面とが接する位置又はその手前側の近傍位置に向かうよ
うに溶接ワイヤを第2の母材の平坦面に対して傾斜させ
て臨ませた後、アーク溶接を行う過程で、第1の母材の
開先部を裏側まで溶融させつつその開先部が溶け落ちな
い程度に第2の母材よりも少なく第1の母材に入熱させ
るとともに、第1の母材よりも多く第2の母材に入熱さ
せて第2の母材の平坦面を溶融させるようにして、第1
の母材と第2の母材と溶接ワイヤとの溶融物による溶融
プールを形成し、この溶融プールを第1の母材の裏側に
押し出して開先内から第1の母材の裏側に至るまで一体
となった溶融プールを形成し、この溶融プールを凝固さ
せることにより、第1の母材の裏側に隅肉溶接形状の裏
波ビードを形成するようにしたことを特徴とする平板の
突合せ溶接継手を採用した。
接される一方の板材と他方の板材とを含む複数の板材に
より形成される箱形構造物であって、片側に開先が形成
されこの開先側の端部に他方の板材に当接させるための
当接部を有する一方の板材と、この一方の板材の当接部
を当接させるための平坦面を有しこの一方の板材と突合
せ溶接される他方の板材とを用いて、一方の板材の当接
部を他方の板材の平坦面に当接させるとともに、溶接ワ
イヤのアーク中心が一方の板材の開先の端部と他方の板
材の平坦面とが接する位置又はその手前側の近傍位置に
向かうように溶接ワイヤを他方の板材の平坦面に対して
傾斜させて臨ませた後、アーク溶接を行う過程で、一方
の板材の開先部を裏側まで溶融させつつその開先部が溶
け落ちない程度に他方の板材よりも少なく一方の板材に
入熱させるとともに、一方の板材よりも多く他方の板材
に入熱させて他方の板材の平坦面を溶融させるようにし
て、一方の板材と他方の板材と溶接ワイヤとの溶融物に
よる溶融プールを形成し、この溶融プールを一方の板材
の裏側に押し出して開先内から一方の板材の裏側に至る
まで一体となった溶融プールを形成し、この溶融プール
を凝固させることにより、一方の板材の裏側に隅肉溶接
形状の裏波ビードを形成するようにしたことを特徴とす
る箱形構造物を採用した。
明によれば、製作費が安価で、製作時間を短縮できる溶
接継手及び箱形構造物を提供することができる。
載の溶接方法の実施に使用するアーク溶接装置であっ
て、前記第1の母材と第2の母材との当接した溶接部に
形成された開先内に導入される溶接ワイヤと、前記溶接
ワイヤの位置を制御する制御装置と、溶接部に溶接電力
を供給する溶接電源と、前記溶接電源から溶接部に供給
される実際の電圧値が予め設定した第1の設定値を超え
たときに前記溶接ワイヤを前記第2の母材の平坦面側に
近づけるように移動させ、また、実際の電流値が予め設
定した電流設定値を超えたとき又は実際の電圧値が予め
設定した第2の設定値を下回ったときに、前記溶接ワイ
ヤを前記第1の母材の開先側に近づけるように移動させ
る指令を前記制御装置に出力する制御手段を備えたこと
を特徴とするアーク溶接装置を採用した。
先溶接部を片側からアーク溶接するとき、アークの中心
が第2の母材に対し所定の傾斜角度で正確に位置制御さ
れ、開先側と反対側の突合わせ部に隅肉溶接形状の溶接
ビードをも安定的に形成することができる。
載の溶接方法の実施に使用するアーク溶接装置であっ
て、前記第1の母材と第2の母材との当接した溶接部に
形成された開先内に導入される溶接ワイヤと、前記溶接
ワイヤの位置を制御する制御装置と、溶接部に溶接電力
を供給する溶接電源と、前記溶接電源から溶接部に供給
される実際の電圧値が予め設定した第1の設定値を超え
たときに前記溶接ワイヤを前記第2の母材の平坦面側に
近づけるように移動させ、また、実際の電流値が予め設
定した電流設定値を超えたとき又は実際の電圧値が予め
設定した第2の設定値を下回ったときに、前記溶接ワイ
ヤを前記第1の母材の開先側に近づけるように移動させ
る指令を前記制御装置に出力するとともに、予め設定さ
れた平均電流値及び平均電圧値と実電流値及び実電圧値
とをそれぞれ比較し、実平均電流値及び実平均電圧値が
それぞれ前記予め設定された平均電流値及び平均電圧値
になるように電流制御信号及び電圧制御信号を、前記溶
接電源に出力する制御手段を備えたことを特徴とするア
ーク溶接装置を採用した。
先溶接部を片側からアーク溶接するとき、アークの中心
が第2の母材に対し所定の傾斜角度で正確に位置制御さ
れ、また平均電圧と平均電流も設定値になるように制御
するから、開先側と反対側の突合わせ部に隅肉溶接形状
の溶接ビードをも安定的に形成することができる。
載の溶接方法の実施に使用するアーク溶接装置であっ
て、溶接ワイヤと、これを保持する溶接トーチと、この
溶接トーチに前記溶接ワイヤを送給する送給手段と、前
記溶接ワイヤを直交する3軸方向に位置制御する位置制
御部を備えた制御装置と、溶接部に溶接電力を供給する
溶接電源と、溶接の平均電圧値を予め設定する平均電圧
設定器と、平均電流値を予め設定する平均電流設定器
と、実際の溶接電圧を検出する電圧検出器と、実際の溶
接電流を検出する電流検出器とを設け、前記電圧検出器
で検出された実電圧値と電流検出器で検出された実電流
値が入力され前記実電圧値が予め設定された第1の電圧
設定値を超えたとき前記溶接ワイヤを前記第2の母材の
平坦面側に近づけるように移動させ前記電流検出器で検
出された実電流値が予め設定された電流設定値を超えた
とき又は電圧検出器で検出された実電圧値が予め設定さ
れた第2の電圧設定値を下回ったとき前記ワイヤを前記
第1の母材の開先側に近づけるように移動させる指令を
前記位置制御部に出力するとともに、前記実平均電圧値
を後記電圧制御器に出力し前記実平均電流値を後記電流
制御器に出力する電力診断部と、前記平均電流設定器か
ら入力された平均電流値と前記電力診断部から入力され
た実平均電流値とを比較し、この実平均電流値が前記平
均電流設定器で予め設定された平均電流値になるように
電流制御信号を出力する電流制御器と、前記平均電圧設
定器から入力された平均電圧値と前記電力診断部から入
力された実平均電圧値とを比較し、この実平均電圧値が
前記平均電圧設定器で予め設定された平均電圧値になる
ように電圧制御信号を出力する電圧制御器と、前記電流
制御信号及び前記電圧制御信号が入力され前記溶接電源
の出力を制御する電源制御信号を出力する出力制御器と
を備えることを特徴とするアーク溶接装置を採用した。
11に記載の発明と同様に、片側開先溶接部を片側から
アーク溶接するとき、アークの中心が第2の母材に対し
所定の傾斜角度で正確に位置制御され、また平均電圧と
平均電流も設定値になるように制御するから、開先側と
反対側の突合わせ部に隅肉溶接形状の溶接ビードをも安
定的に形成することができる。
ピーク電圧を設定するピーク電圧設定器と、ベース電圧
を設定するベース電圧設定器と、パルス幅を設定するパ
ルス時間設定器と、これらピーク電圧設定器とベース電
圧設定器とパルス時間設定器からの各設定値を入力する
パルス波形制御器とをさらに有し、前記電力診断部は、
前記電圧検出器と前記電流検出器から検出される実電圧
値と実電流値に基づいてその実ピーク電圧値と実ベース
電圧値と実パルス幅を求め前記パルス波形制御器に出力
する手段を含み、前記パルス波形制御器は、前記ピーク
電圧設定器、ベース電圧設定器及びパルス時間設定器の
それぞれから予め入力されたピーク電圧設定値、ベース
電圧設定値及びパルス幅設定値と前記電力診断部から入
力された実ピーク電圧値、実ベース電圧値及び実パルス
幅値とをそれぞれ比較し波形制御信号を前記出力制御部
に出力し、前記出力制御器は、前記パルス波形制御器か
ら入力された前記波形制御信号と前記電圧制御器から入
力された電圧制御信号と前記電流制御器から入力された
電流制御信号に基づいて前記溶接電源の出力を制御する
電源制御信号を出力する手段を含むことを特徴とする請
求項12に記載のアーク溶接装置を採用した。
溶接電流にパルス電流が用いられるために、アークはよ
り指向性が高くなりアークの狙い位置およびアークの所
定の傾斜角度がより正確に保たれ、開先部の溶け落ちあ
るいは未溶着部が残る等の不具合がなくなることは勿
論、開先と反対側の突合わせ部に隅肉溶接形状の溶接ビ
ードをより安定的に溶着することができる。
図1乃至15を用いて説明する。
施の形態を説明するためのもので、図1は、本発明の溶
接方法を適用した片側開先突合わせによるT字形継手の
断面図、図2は、本発明の溶接方法により溶接されたT
字形継手の斜視図、図3乃至図5は、本発明の溶接方法
による溶接ビードの形成過程を説明するためのT字形継
手の断面図である。
1の母材はその突合わせ端部にルートフェイス1aを有
するようにレ型開先1bが設けられている。2は第2の
母材で、この第2の母材は第1の母材1のルートフェイ
ス1aと接触する平坦面2aを有しており、第1の母材
1とによりT字形継手を形成する。5は溶接トーチ、6
は溶接トーチ5に保持された不図示の送給手段によって
送給される溶接ワイヤである。
1aの厚さ方向の寸法、P1は第1の母材1の開先1b
の端部と第2の母材2の平坦面2aとの接する接触位
置、P2はアーク中心の狙い位置、dは接触位置P1か
らアーク中心の狙い位置P2までの距離を示す。
の中心と第2の母材2の平坦面2aとの所定の傾斜角
度、Aはアークの中心線を示す。
あるT字形継手に適用した場合の一例を具体的に説明す
る。ルートフェイス1aの寸法Rfは1mm、ルートギ
ャップは0mm(ルートフェイスが接触状態)、開先角
度θは45度とし、溶接装置によりCO2アーク溶接を
行った。溶接条件は、平均電流310A、平均電圧33
V、移動速度35〜40cm/minである。
の狙い位置P2を接触位置P1から0〜3mm、第2の
母材2はほぼ水平に置いてその平坦面2aとワイヤ6の
なす所定の傾斜角度δを15〜35度としたとき、第1
の母材1の開先と反対側1cと第2の母材2の平坦面2
aとの突合わせ部に2〜8mmの隅肉溶接形状のビード
を安定的に溶着することができた。
いて、B4は母材1の開先1bと反対側の面1cと母材
2の平坦面2aとの間に溶着された隅肉溶接形状の溶接
ビード、B5は母材2の平坦面2aを溶融しながら再凝
固したビード、B6は母材1,2の溶融に溶接ワイヤ6
自身の溶融が加わって前記溶接ビードB4を形成した後
の開先1b側のビードである。
厚、突合わせ部の形状等種々の条件が考慮されて決定さ
れる。
T字形継手の溶接ビードの形成過程を図3乃至図5を用
いて説明する。図3は、溶接開始前のワイヤ設定状態を
示すもので、ワイヤ6の狙い位置P2を、開先1bの端
部と平坦面2aの接触位置P1に対し溶接トーチ5側に
少し離れた位置に設定し、ワイヤ6の方向を熱容量の大
きい母材2の平坦面2aに対し所定の傾斜角度δ傾斜さ
せて開先部に対向させた状態を示す。
るワイヤ6の位置関係を設定した後に溶接を始めた状態
を示し、ワイヤ6は、母材2の平坦面2a側に向いてい
るため、熱容量の小さな母材1の開先1bの端部よりも
母材2の平坦面2a側により多く入熱するので、この平
坦面2aを溶融させるようにして、両母材1,2をバラ
ンス良く溶融しながらまたワイヤ6自身の溶融も加わっ
て母材1,2とワイヤ6との溶融物による溶融プールが
形成される。その結果、熱容量の小さな開先1bを有す
る母材1側は、開先部1bが溶け落ちない程度に溶融し
て溶融域が母材1の裏側1cに達する。
示すもので、母材1,2とワイヤ6の溶融物による溶融
プールがアーク力や溶融プール内の対流などにより、前
記のように溶融域が裏側1cまで達した第1の母材1の
表側から、反溶接側、即ち第1の母材1の裏側に押し出
され、さらに表面張力などの働きにより開先1b内から
母材1の裏側まで一体となった溶融プールが形成され、
それらが再凝固して図2に示したようなビードB4,B
5、B6即ちT継手の初層部が形成される。
溶接であり、開先の大きさにもよるが開先部におけるそ
の他残りの部分の溶接は従来同様に行うことができるの
で、その説明は省略する。
な一例を記載する。溶接はCO2アーク溶接、ルートフ
ェイス1mm、ルートギャップ0mm、開先角度45
度、平均電流310A、平均電圧33V、溶接速度35
cm/min、ワイヤ狙い位置P2は接触点P1から2
mmの位置、傾斜角度δは25度の条件で、片側開先T
字形継手を開先側から溶接した結果、開先溶接部に未溶
着部が残ることなく開先側と反対側の突合わせ部に、縦
方向(母材1側)の脚長7mm、横方向(母材2側)の
脚長5mmの隅肉溶接形状のビードをも溶着することが
できた。
形態によれば、開先1bが設けられた第1の母材1と平
坦面2aを有する第2の母材2との間にある熱容量の差
および溶接ワイヤ6の溶融によって、開先1b部の溶接
と共に開先1b側と反対側の突合わせ部に隅肉溶接形状
のビードB4を安定的に溶着することができる。すなわ
ち、熱容量の大きな第2の母材2側により多くのアーク
が発生する(アークの熱が伝わる)ようにして第2の母
材2の平坦面2aを溶融させるようにすると共に、熱容
量の小さな開先1b側は、第2の母材2よりも少なく入
熱させることで、溶け落ちて突抜けない程度に開先1b
の裏側まで全体的に溶融させて、第1の母材1と第2の
母材2と溶接ワイヤ6との溶融物による溶融プールを形
成し、さらに、この溶融プールの溶融物によって開先部
を埋めながら開先1bと反対側にこの溶融物を押し出す
ようにして隅肉溶接形状のビードB4をも形成すること
ができる。その他の開先部にさらに溶接部分がある場合
には、これまでと同様の方法で溶接すれば、所望のT字
形継手を形成することがでる。
箱型の溶接構造物の内側にも、突合わせ継手部の外側の
片側に開先を設け、開先側からアーク溶接するだけで、
開先と反対側の内部に隅肉溶接形状の溶接ビードを溶着
することができるので、強度を維持した継手を製作する
ことができるとともに、裏ビードを得るためのビード付
設作業が不要となり、溶接作業の効率を著しく向上させ
ることができる。
ような継手部を持ちそのために溶接母材の板厚を厚くせ
ざるを得なかった構造物においても、片側からの溶接だ
けで開先溶接部に未溶着部が残らずに反対側にも隅肉溶
接形状の溶接ができるので、構造物の強度を下げること
なく、母材の板厚の低減を図ることができる。
る2つの板材を突合わせ溶接する一例を図6及び図7を
用いて説明する。図6及び図7は、板厚の違った板材の
厚さ部分同士を突合わせ溶接する溶接部の断面図を示
し、図6は両板材の片側面を同一面にして突合せた場合
の例を示すものであり、図7は両板材の片側面を平行に
しかつ両板材のうち薄い方の板材を厚い方の板材の板厚
の中央近くに配置して突合せた場合の例を示したもので
ある。
板材、2’は板材1’より板厚の厚い第2の母材として
の板材、1’aは母材1’のルートフェイス、1’bは
母材1’の突合わせ部の片側に設けられた開先、1’c
は母材1'の開先1’bと反対側の面、2’aは母材
2’の平坦面を示す。
も、溶接トーチ5およびワイヤ6の狙い位置や開先との
関係等を、前述した図1に示すように条件設定すれば、
開先側からの片側溶接であっても、継手部にB4’の溶
接ビードを溶着することができ、継手を形成することが
できる。
同様であり、溶接継手としての開先側の最終的な溶接ビ
ード形状が変わるだけであるので、その説明は省略する
が、この場合も開先側の片側から溶接するだけで、板材
の厚さ方向の中心線が一致して力の伝達がバランス良く
伝わる継手として形成することができる。
な開先形状の変形例を、図8及び図9を用いて説明す
る。図8及び図9は、T字形継手の突合わせ部の他の例
を示す断面図である。図8は第1の母材1にJ型の開先
1b1を設けた例であり、図9は複数の直線で開先1b
2を形成した例である。これらの場合、いずれも所望の
ルートフェイスを設けてあり、この他のレ型開先以外の
開先形状でも、前述のレ型開先の場合と同様に片側から
の溶接で開先側と反対側に隅肉溶接形状の溶接ビードを
形成することができる。
の溶接ワイヤをウィービング(揺動)させる方法の例
を、それぞれ図10及び図11を用いて説明する。
ービング(揺動)方法の一例を示すもので、この図10
において前図に付した符号と同一の符号は同一部分であ
るので、その説明は省略する。この例においては、溶接
トーチ5に保持され不図示の送給手段により送給される
溶接ワイヤ6は、狙い位置P2に向いて母材2の平坦面
2aとの傾斜角度δに保持されている。
角度δを保ちながら矢印50の方向に所定の振幅で揺動
するように溶接トーチ5を駆動制御する。この揺動の振
幅・周波数は母材1の板厚や開先の大きさ等により決定
される。
させることによっても、アークの方向は、絶えず所定の
傾斜角度δを持って熱容量の大きな母材2の平坦面2a
側に多く向いたまま揺動されるため、溶融プールが押し
出されるような作用によって開先の裏側にビードB4を
溶着させることができ、開先角度が大きめなものでも、
効率よく溶接することができる。
接ワイヤ6をその軸線方向にウィービングさせることも
できる。この場合もアーク力等により、溶融プールを開
先部の裏側に押し出すような作用によって開先の裏側に
ビードB4を溶着させることができる。
ービング(揺動)方法の他の例を示すもので、この図1
1において前図に付した符号と同一の符号は同一部分で
あるので、その説明は省略する。この例は所定の傾斜角
度δを中心線として、溶接ワイヤ6の先端が円弧状にα
度振れるように溶接トーチ5を駆動制御するものであ
る。
る溶接構造物の一例を、図12乃至図15を用いて説明
する。
される溶接構造物を備える油圧ショベルを示すもので、
この図12において、70は走行体、71は走行体70
上に旋回可能に設けた旋回体、72は旋回体71を旋回
させるための旋回装置で、この旋回装置72は走行体7
0に対し旋回体71を360度旋回させることができ
る。走行体70は走行用トラックフレームと、これに設
けた駆動輪と遊動輪とそれらに巻きかけられた履帯等を
備え、油圧ショベルを走行させることができる。
し、エンジンや油圧ポンプなどの各種油圧機器および運
転室73等が備えられている。旋回フレームや走行体7
0や後述の作業装置80などは、運転者が運転室73に
備えられた操作装置を操作することによって駆動するこ
とができる。
設けたブーム74とこのブーム74を駆動するブームシ
リンダ75と、ブーム74に回動可能に取り付けられた
アーム76と、このアーム76を駆動するアームシリン
ダ77と、アーム76に取り付けられたバケット78
と、このバケット78を駆動するバケットシリンダ79
などから概略構成されている。
クフレームや旋回フレームさらにブーム74、アーム7
6等の構成体は、T字形継手を始めとする溶接継手を組
み合わせて構成した溶接構造物として製作されており、
その断面形状が略箱型である場合が多いため、その裏側
に裏ビード、裏当材等の付設を行うことが難しいが、本
発明においては、この点を解決することができる。
13及び図14を用いて説明する。図13は、図12に
示すXIII−XIII矢視からブーム74の断面をみたもの
で、この図13において、ブーム74は、上板74a
、左右の側板74b、74b及び下板74cとで構成
されており、ルートフェイスを残し外側に開先を設けた
側板74bを、平坦面を有する下板74cに突合わせ、
前述した図1に示す本発明の溶接方法を用いて開先側か
ら溶接作業を行うだけで、側板74bと下板74cの開
先部に溶接74gを形成することができると共に、側板
74bの内側と下板74cとの間に隅肉溶接形状の溶接
ビードB74をも溶着させることができる。
け)防止用ビードを設ける必要がなく、さらに側板に内
側を溶接するための作業者進入用の穴などを設ける必要
もなく、構造物の外側からだけの溶接作業によって構造
物の内側まで溶接された箱型溶接構造物を製作すること
ができる。
も、本発明を適用できることは明らかでありその説明は
省略するが、側板74bと74bとの間に溶接トーチ等
が入り十分なスペースが確保できる場合には、従来と同
じように、上板74aに外側に開先を設けた側板74b
を突合わせて、外側から開先隅肉溶接を行い、開先と反
対側の内側から隅肉溶接を行ってもよい。
76の断面をみたもので、この図14において、アーム
76は、箱型構造物を構成するプレス等で形成したコ字
状部材76aと、他の一辺を構成する板状部材76cと
で構成され、ルートフェイスを残し外側に開先を設けた
部材76aを、平坦面を有する下板76cに突合わせ、
前述した図1に示す本発明の溶接方法を用いて開先側か
ら溶接をするだけで、部材76aの突合わせ部と下板7
6cの開先部に溶接76gを形成することができると共
に、部材76aの突合わせ部の内側と下板76cとの間
に隅肉溶接形状の溶接ビードB76をも溶着させること
ができる。
においても、バッキング材や溶け落ち突抜け等の防止用
ビードを設ける必要がなく、さらに側板に内側を溶接す
るための作業者進入用の穴などを設ける必要もなく、外
側からだけの溶接で内側まで溶接された、箱型溶接構造
物が作成できる。
を用いて説明する。
の上板同士の突合わせ部を拡大して示すもので、この突
合わせ部を構成する板厚の異なる平板同士の突合わせ継
手は、ブーム74の上板となる板厚の厚い部材74a’
と、同じく板厚の薄い部材74a”とからなり、両部材
は図で下面が同一面となるようにその端部が突合わされ
ており、部材74a”には開先74kが設けられてい
る。またこの例では板圧の厚い部材74a’は強度的に
極端な変化が起こらないようにするために、板厚の薄い
部材74a”との突合わせ部に向かって例えばT1とT
2で示す間に傾斜面が設けられている。
した本発明すなわち、部材74a’の突合わせ部の平坦
面に対し所定の傾斜角度でアークを発生させるように開
先74k側から溶接することによって、部材74a’の
突合わせ端面と部材74a”の図で上面との間に隅肉状
のビードB74’をも形成することがができる。
形態を、図16乃至図20を用いて説明する。なおこれ
らの図において、前述した符号と同符号のものは同一部
分または相当する部分であるので、その説明を省略す
る。
一実施の形態の構成を示すもので、この図16におい
て、1は第1の母材で、その突合せ側端部にはレ型開先
が形成されている。2は第2の母材で突合わせ部に平坦
面を有する。
ロボット本体3に設けた平行リンク部、3Bは平行リン
ク部3Aに設けたロボットアーム、4はロボット制御装
置で、このロボット制御装置4は指令信号を出力してロ
ボットアーム3Bを図に示す少なくとも互いに直交する
X、Y、Zの3軸方向に駆動制御する。
等を入力・記憶するための入力部4Aと、ロボットアー
ム3Bの位置・姿勢制御のための位置制御部4Bと、溶
接速度を制御するための速度制御部4C等とから構成さ
れている。
接トーチ、6は溶接トーチ5に保持された溶接ワイヤ、
8は溶接ワイヤ6をトーチ5を介して送給するための送
給装置である。7Aおよび7Bは溶接電力を供給するた
めのケーブルで、その一方はロボットに備えられた送給
装置8側で溶接ワイヤ6に、他方は溶接母材1または2
に接続されている。
ル7Aおよび7Bにより溶接ワイヤ6と母材1または2
に接続される。10は電圧検出器で、この電圧検出器1
0は溶接電源9から溶接ワイヤ6に供給される溶接電流
の電圧を検出する。11は電流検出器で、この電流検出
器11は溶接電源9から溶接ワイヤ6に供給される溶接
電流を検出する。
定器12は溶接ワイヤ6に供給すべき平均電圧値を設定
する。13は電圧制御器で、この電圧制御器13は平均
電圧設定器12に設定された平均電圧と電圧検出器10
で検出された電圧が後述の電力診断部23を介して入力
された実平均電圧値とを比較して、電圧制御信号を出力
する。
定器14は溶接ワイヤ6に供給すべき平均電流値を設定
する。15は電流制御器で、この電流制御器15は平均
電圧設定器14に設定された平均電流と電流検出器11
で検出された電流が後述の電力診断部23を介して入力
された実平均電流値とを比較して、電流制御信号を出力
する。
は電圧制御器13からの電圧制御信号と電流制御器15
からの電流制御信号が入力され、それらの制御信号に基
づいて、溶接電源9から供給されるべき電力を制御する
ための制御信号を出力する。
23は入力部23Aと、比較部23Bと、出力部23C
とから構成されている。入力部23Aは、平均電圧設定
器12で設定される平均電圧より高い電圧の第1の電圧
設定値と平均電圧設定器12で設定される平均電圧より
低い電圧の第2の電圧設定値や、平均電流設定器14で
設定される平均電流より高い電流の電流設定値を設定す
る。
される実電圧値と前記第1および第2の電圧設定値とを
比較し、後述の位置制御信号をロボット制御装置4に出
力するとともに、電流検出器11から入力される実電流
値と前記電流設定値とを比較し、位置制御信号をロボッ
ト制御装置4に出力する機能を備えている。
流検出器11でそれぞれ検出された実電圧値および実電
流値に関する実平均電圧値および実平均電流値をそれぞ
れ電圧制御器13および電流制御器15に出力する機能
を有する。
制御装置やロボット等のこれら全体を制御するコンピュ
ータ等により構成されている。
一実施の形態の動作を説明する。
アーム3Bに取り付けられており、溶接ワイヤ6は溶接
トーチ5に保持されながら溶接トーチ5の先端より所定
の長さ突き出ており、ワイヤ送給装置8によって送られ
るようになっている。そこで、図1に示したように、溶
接ワイヤ6は開先が形成された母材1と平坦面を有する
母材2との突合わせ部で形成される開先溶接部の開先側
に所定の傾斜角度δ傾けられて、かつ所定の狙い位置に
向けて対向される。これはロボット制御装置4の入力部
4Aおよび位置制御部4Bによって行われる。また、移
動経路や溶接速度は入力部4Aから速度制御部4Cに与
えられ、それに基づいて図面上垂直方向に移動させられ
る。
らは、予め第1および第2の電圧設定値と電流設定値が
入力され、比較部23Bに記憶される。
溶接を開始する。溶接が始まると、電圧検出器10およ
び電流検出器11はそれぞれケーブル7Aの実電圧値お
よび実電流値を検出する。溶接中にロボットの振動や母
材の位置ずれなどで溶接ワイヤ6が例えば母材1の開先
側に寄りすぎると、熱容量の小さい開先の端部が溶け落
ちてしまい溶接ビードを置くことができなくなる。開先
の端部が溶け落ちて突き抜けるとアークが母材1の裏に
抜けてしまい、実電圧値が高くなる。すると、電力診断
装置23の比較部23Bでは予め入力された第1および
第2の電圧設定値と実電圧値とが比較され、実電圧値が
第1の電圧設定値を超えると、溶接ワイヤ6を第2の母
材2側に移動するように位置制御信号をロボット制御装
置4の位置制御部4Bに出力し、溶接ワイヤ6は母材1
の開先側から第2の母材2側近づくように移動修正され
る。
相対的位置関係が設定位置に対し母材2側に寄ってしま
った場合、開先側への入熱が少なくなり溶接ビードが裏
側に押し出されなくなり、手前側にビードが溜まってく
る。すると、溶接ワイヤ6の突き出し長さが短くなるの
で、実電圧値は下がり実電流値は高くなる現象が起こ
る。
ている電圧設定値と実電圧値を比較し、実電圧値が第2
の電圧設定値を下回ったとき、溶接ワイヤ6を開先側に
移動するように位置制御信号を位置制御部4Bに指令
し、溶接ワイヤ6は開先側に移動修正させられる。
値が検出されているので、比較器23Bは予め入力され
ている電流設定値と実電流値を比較し、実電流値が電流
設定値を超えた場合、溶接ワイヤ6を開先側に移動する
ように位置制御信号を位置制御部4Bに指令し、溶接ワ
イヤ6は開先側に移動修正させるようにしてもよい。
は、電圧検出器10および電流検出器11でそれぞれ検
出された実電圧値および実電流値に関する実平均電圧値
および実平均電流値を、それぞれ電圧制御器13および
電流制御器15に出力する。
平均電圧値と実電圧値を比較し、実電圧値が平均電圧に
なるように電圧制御指令信号を出力制御部22に出力す
る。また、電流制御器15は、予め設定されている平均
電流値と実電流値を比較し、実電流値が平均電流になる
ように電流制御指令信号を出力制御部22に出力する。
令信号と電流制御指令信号に基づいて、溶接電源9から
供給する電圧と電流を調整する制御信号を溶接電源9に
出力し、供給電力が設定値になるように調整される。
関係を設定値に移動修正しながら、また平均電圧と平均
電流も設定値になるように修正しながら溶接されるの
で、開先側からの溶接だけで、開先側と反対側の突合わ
せ部に隅肉溶接形状の溶接ビードを溶着しながら、しか
も突合わせ部に未溶着部のない安定した溶接を行うこと
ができる。
ヤ6をウィービングしながら溶接する例を説明する。ウ
ィービングは、図10で説明したように、溶接トーチ5
および溶接ワイヤ6の姿勢を所定の傾斜角度δ傾けた状
態で、矢印50または矢印60で示す例のように所定の
振り幅で移動させるか、あるいは図11で説明したよう
に、溶接ワイヤ6を傾斜角度δを中心にして円弧状に首
振り揺動させることが可能であるが、このウィービング
動作は、ロボット制御装置4の入力部4Aから予め入力
された入力信号に基づいて位置制御部4Bが制御され、
この位置制御部4Bからの制御信号がロボットに伝えら
れて、所定のウィービングを行うことができる。
及び図18を用いて説明する。
ング動作を説明する説明図であり、図18はウィービン
グ位置と溶接ワイヤ6に発生する溶接電圧との関係を示
す特性図で、この特性図は図17に示すように、溶接ト
ーチ5および溶接ワイヤ6を母材2の平坦面2aに所定
の傾斜角度δ傾け、狙い位置P2に向けたときをウィー
ビングの振り幅の中心L0とし、母材1の開先側にL1
位置まで母材2側にL2位置まで振った場合の、ウィー
ビング位置(時間)とワイヤ6に発生する溶接電圧との
関係を示す。
斜角度δは母材1のレ型開先角度の1/2とした。図1
8における実線で示す特性線は、図17に示したウィー
ビングの中心が狙い位置P2に向かう位置とした場合を
示し、点線で示す特性線は、溶接ワイヤ6の傾斜角度は
前記レ型開先角度の1/2のままδとし、溶接ワイヤ6
の狙い位置を開先端部が母材2の平坦面2aに接する接
触位置P1とした位置をウィービングの中心線(L0’
とする、不図示以下同様)とし、開先側に(L1’)母
材2側に(L2’)振った(L1’=L2’)場合のウ
ィービング位置(時間)と溶接ワイヤ6に発生する溶接
電圧との関係を示す。
としてウィービングした場合を説明する。ウィービング
の中心線(L0’)が接触位置P1点に向いていると
き、溶接ワイヤ6の先端から母材までの距離が相対的に
一番長いため、溶接電圧は図18の点線で示すように高
くなる。その後、仮に開先側に振っていくと、溶接ワイ
ヤ6の先端と母材との距離が次第に近づくため、電圧は
図18の点線に示すように徐々に下がっていき、開先側
に最も近づいたL1’位置で最低となる。次に、母材2
側に戻りだすと、再度電圧は図18の点線に示すように
徐々に上がりながら振りの中心線位置Lo’で再び最高
電圧となり、母材2側に最も近づいた位置L2’で電圧
は最低となり、これが繰返される。
狙い位置をP2とし傾斜角度をδとした位置をウィービ
ングの中心線L0とし開先側に位置L1まで母材2側に
位置L2まで振ったときのウィービング動作を説明す
る。
は、電圧は溶接ワイヤ6の先端と母材との距離は最大で
ないので、その距離に相当する電圧値を示し、その後開
先側への移動に伴い電圧値は図18の実線で示すように
徐々に大きくなり、溶接ワイヤ6が接触点P1に向かっ
たとき最大電圧となる。そして位置L1まではだんだん
電圧が下がり、その後、母材2側に移動されると、再度
接触位置P1で最大電圧値になり、今度は母材2側にだ
んだん近づくため、位置L2で最低電圧となり、これが
繰返される。
係は、開先形状と狙い位置と傾斜角度等の設定条件に応
じて、実験または計算にて求めることができる。それら
の値は、予め電力診断装置23の入力部23Aから比較
部23Bに設定される。
トーチ5の位置制御は、前記ロボット制御装置4の入力
部4Aから位置制御部4Bに予め設定される。また、溶
接電圧は前述の電圧検出器10によって検出され、この
検出値に基づく実電圧値や実平均電圧値が比較部23B
で求められる。比較部23Bは、実電圧値と設定された
平均電圧値との比較により、実際の狙い位置が正しいか
どうかを判断し、ずれが生じているときは、ロボット制
御装置4の位置制御部4Bに位置制御信号を出力し、狙
い位置が設定値になるように制御される。
電力診断装置23の比較部23Bによって実平均電圧値
V0が求められ、その値は出力部23Cを介して電圧制
御部13に出力され、前述のように実平均電圧値V0が
予め設定された平均電圧値になるように出力制御部22
に指令信号を出力し、電圧が調整される。
態を示すもので、この図において、図16と同符号のも
のは同一部分である。この実施の形態は、溶接電流にパ
ルス状の電流を重畳させるように構成したもので、図1
9において、16はパルス電流のピーク電圧を設定する
ピーク電圧設定器、17はパルス電流のベース電圧を設
定するベース電圧設定器、18はパルス電流のパルス幅
を設定するパルス時間設定器である。19はパルス波形
制御器で、このパルス波形制御器19はピーク電圧設定
器16とベース電圧設定器17およびパルス時間設定器
18に接続され、それらから入力されるピーク電圧、ベ
ース電圧およびパルス時間とに基づいて、所望の基本と
なるパルス波形を生成する。
2’は前記電圧制御器13と電流制御器15およびパル
ス波形制御器19から入力される制御信号に基づいて溶
接電源9から出力される溶接電力を制御する。
置23’は入力部23A’と、比較部23B’と、出力
部23C’等とから構成されている。入力部23A’
は、平均電圧設定器12で設定される平均電圧より高い
電圧の第1の電圧設定値と平均電圧設定器12で設定さ
れる平均電圧電圧より低い電圧の第2の電圧設定値およ
び平均電流設定器14で設定される平均電流より高い電
流の電流設定値を設定する。
力される実電圧値と前記第1および第2の電圧設定値と
を比較し、後述の位置制御信号をロボット制御装置4に
出力するとともに、電流検出器11から入力される実電
流値と前記電流設定値とを比較し、位置制御信号をロボ
ット制御装置4に出力する機能を備えている。
0と電流検出器11から検出されたそれぞれの検出値に
基づいて、実平均電圧値と実平均電流値に加えパルス電
流の実ピーク電流値(または電圧値)と実ベース電流
(または電圧)値およびパルスの実時間(幅)を求める
機能が備えられている。
平均電流値がそれぞれ電圧制御器13と電流制御器15
に出力され、電力診断装置23の比較部23B’から
は、実ピーク電流値と実ベース電流値とパルスの実時間
とがパルス波形制御器19に出力されるように構成され
ている。
制御装置やロボット等のこれら全体を制御するコンピュ
ータ等により構成されている。
施の形態の動作を説明する。
ベース電圧設定器17およびパルス時間設定器18から
それぞれの設定値が入力されると、パルス波形制御器1
9でパルス波形が生成される。その波形制御信号は出力
制御部22’に出力される。出力制御部22’は電圧制
御器13からの平均電圧制御信号と電流制御器15から
の平均電流制御信号とパルス波形制御器19からのパル
ス波形制御信号とに基づいて、所望の波形の電力が電源
装置9から供給されるように、電源装置9を制御する。
る電源装置9の特性に応じて、電流・電圧のどちらかま
たは両方により設定する。
れるパルス波形の一例を図20を用いて説明する。図2
0は電源装置9によって生成されるパルス電流の波形図
で、この図の横軸は時間を、縦軸は電流を示す。
はベース電流、Tpはパルスの幅、即ちパルス時間を示
す。Aaは平均電流値を示し、この平均電流値Aaは前
記平均電流設定器14で設定されるものであり、これら
の設定値Ap,Ab,TpおよびAaに基づいて、パル
スのベース電流の幅すなわち時間Tbが前記出力制御器
22によって求められ、直流電流にパルス波形が重畳さ
れた波形が出力制御信号として電源装置9に与えられ
る。
な数値で説明する。図20中の実線で示す波形において
は、ピーク電流Apは400A、ベース電流Abは20
0Aおよびパルス幅Tpは例えば1/50secとして
与えられ、さらに平均電流設定器14から与えられる平
均電流値Aa=300Aに基づいて、ベース電流の幅T
bを求めたもの(この場合Tb=Tp=1/50se
c)として示したものである。このように直流電流にパ
ルス状の電流を重畳して得られたパルス電流を溶接電流
として使用すると、アークの指向性が直流のみの電流に
比べ高まり、本発明のワイヤの狙い位置に、より正確に
アークを発生させることができ、より安定した片側開先
のアーク溶接が可能になる。
実線で示す波形に対し、ピーク電流をさらに100A上
げAp’(=500A)、パルス幅を実線の場合の1/
2にしたもので、平均電流Aaおよびベース電流Abを
実線と同じくそれぞれ300Aおよび200Aのままと
したときのパルス波形を示したものである。この場合、
ベース電流Ab(200A)と平均電流Aa(300
A)は実線で示す波形と同じとしたから、パルスの周期
が実線で示す波形では(Tp+Tb)に対し、二点鎖線
で示す波形の場合の周期は((Tp×1/2)+T
b))と短くなる。このことをデューティで表すと、実
線で示す波形の場合、Tp/(Tp+Tb)=(1/5
0)/(1/50+1/50)=1/2に対し、二点鎖
線で示す波形の場合は、Tp’/(Tp’+Tb’)=
(1/50×1/2)/((1/50×1/2)+1/
50)=1/3となる。
で示す波形に対し、ピーク電流Apとベース電流Abお
よび平均電流Aaを実線と同じくそれぞれ400A、2
00Aおよび300Aのままとし、パルス幅Tp”を実
線で示す波形の場合の1/2にしたときのパルス波形を
示したものである。この場合、ベース電流幅Tb”はT
p”と等しくなり、デューティは実線で示す波形の場合
と同じ1/2である。
ついていくつかの例を提示したが、パルス波形のデュー
ティを小さくした方が、アークの指向性は向上する。
ピーク電流およびベース電流等は、種々の溶接条件等が
関係し、溶接アークの溶滴移行やアークの安定性等か
ら、本発明における平均電流は、300A前後、ベース
電流は300A未満(マイナスも含む)、ピーク電流は
350〜500A程度のところが、実用的な数値であ
る。
ク溶接装置に加え、溶接電流にパルス電流を使用し、そ
のパルス電流をも予め設定した設定値になるように制御
することによって、アークの指向性が高まり、アークの
狙い位置をより正確に捕らえることができ、開先側から
の溶接だけで、開先側と反対側の突合わせ部に隅肉溶接
形状の溶接ビードを溶着しながら、しかも突合わせ部に
未溶着部のない安定した溶接を行うことができる。
実施の形態におけるピーク電圧設定器16、ベース電圧
設定器17、パルス時間設定器18およびパルス波形制
御器19を、正弦波電流設定器に置き換えることも可能
である。この場合、溶接電流に正弦波電流を用いること
ができるので、上述の実施の形態と同様にアークの指向
性を向上させることができる。その結果、前述した実施
の形態と同様な溶接が可能である。
形、J形など一方傾斜開先が形成された継手での片側溶
接において、従来では裏当材や接合に寄与しないビード
を伴わなければ不可能であった裏波ビード生成を、裏当
材などを一切用いることなく出来るようになる。これに
より、内部溶接作業に多大な時間を要していた箱型構造
物の製作コストを大幅に低減出来るし、トーチ進入が困
難で内部溶接が不可能であった構造物では開先両側に脚
長が着くことにより、大幅な強度向上あるいは逆に母材
の板厚等を不必要に厚くすることなく強度を維持するこ
とができる等多大な効果を奏する。
対の裏側からも溶接を行っていたような溶接構造であっ
ても、本発明によれば片側から溶接するだけでよいの
で、効率よく溶接工数の低減が図れる。
らびに効率化等多大な効果を奏する。
よれば、熱容量の大きな第2の母材側に第1の母材より
も多く入熱させるようにして第2の母材の平坦面を溶融
させるようにすると共に、熱容量の小さな開先側は、第
2の母材よりも少なく入熱させることで、溶け落ちない
程度に開先の裏側まで溶融させて、第1の母材と第2の
母材と溶接ワイヤとの溶融物による溶融プールを形成
し、この溶融プールの溶融物によって開先部を埋めなが
ら開先と反対側に溶融物を押し出すようにして隅肉溶接
形状のビードをも形成することができる。したがって、
開先の裏側に予め裏ビードとなるビードを設けることな
く、開先側からのアーク溶接によって、開先側と反対側
の突合わせ部に隅肉溶接形状の溶接ビードを安定的に形
成することができる。その結果、裏ビード付設のための
作業が不要になり、その作業性を著しく向上させること
ができる。
合せ溶接継手及び箱形構造物は、製作費が安価で製作時
間も短縮でき、ひいては、これらを組込む製品の生産性
を向上させることができる。
ヤの狙い位置を精度良く制御できるため、母材の外側の
少なくとも一個所に前記片側開先部を設けて外側からだ
けの溶接でもって、反対側に隅肉形状の溶接ビードをも
溶着されるように製作された溶接継手及び閉断面構造物
等を提供することができるので、その生産性を著しく向
上させることができる。
を説明する溶接部の断面図である。
を示す斜視図である。
過程を説明するための説明図である。
過程を説明するための説明図である。
過程を説明するための説明図である。
合わせ溶接方法の一実施の形態を説明する溶接部の断面
図である。
合わせ溶接方法の他の実施の形態を説明する溶接部の断
面図である。
の一変形例を示すT字形継手の突合わせ部の断面図であ
る。
の他の変形例を示すT字形継手の突合わせ部の断面図で
ある。
方法の一例を説明するための説明図である。
方法の他の例を説明するための説明図である。
物を備えた油圧ショベルの正面図である。
XIII矢視から見た拡大断面図である。
IV矢視から見た拡大断面図である。
ムの板厚の異なる平板同士の突合わせ継手部を拡大して
示す断面図である。
す構成図である。
るウィービング動作の一例を示す説明図である。
ィービング位置と溶接ワイヤに発生する溶接電圧との関
係を示す特性図である。
示す構成図である。
実施の形態に用いるパルス電流の波形図である。
側の面 2,2’ 第2の母材 2a,2’a 母材2の平坦面 3 ロボット本体 4 ロボット制御装置 5 溶接トーチ 6 溶接ワイヤ 7A,7B ケーブル 8 ワイヤ送給装置 9 溶接電源 10 電圧検出装置 11 電流検出装置 12 平均電圧設定器 13 電圧制御器 14 平均電流設定器 15 電流制御器 16 ピーク電圧設定器 17 ベース電圧設定器 18 パルス時間設定器 19 パルス波形制御器 22 出力制御部 23 電力診断部 74 ブーム 76 アーム
Claims (13)
- 【請求項1】 第1の母材と第2の母材とを突合せ溶接
する溶接方法において、片側に開先が形成されこの開先
側の端部に第2の母材に当接させるための当接部を有す
る第1の母材と、この第1の母材の当接部を当接させる
ための平坦面を有する第2の母材とを用いて、第1の母
材の当接部を第2の母材の平坦面に当接させるととも
に、溶接ワイヤのアーク中心が第1の母材の開先の端部
と第2の母材の平坦面とが接する位置又はその手前側の
近傍位置に向かうように溶接ワイヤを第2の母材の平坦
面に対して傾斜させて臨ませた後、アーク溶接を行う過
程で、第1の母材の開先部を裏側まで溶融させつつその
開先部が溶け落ちない程度に第2の母材よりも少なく第
1の母材に入熱させるとともに、第1の母材よりも多く
第2の母材に入熱させて第2の母材の平坦面を溶融させ
るようにして、第1の母材と第2の母材と溶接ワイヤと
の溶融物による溶融プールを形成し、この溶融プールを
第1の母材の裏側に押し出して開先内から第1の母材の
裏側に至るまで一体となった溶融プールを形成し、この
溶融プールを凝固させることにより、第1の母材の裏側
に隅肉溶接形状の裏波ビードを形成するようにしたとこ
とを特徴とする溶接方法。 - 【請求項2】 前記溶接ワイヤを所定の傾斜角度に維持
しながら所定の振り幅でウィービングさせることを特徴
とする請求項1に記載の溶接方法。 - 【請求項3】 前記溶接ワイヤを所定の傾斜角度をウィ
ービングの中心位置としこの中心位置を中心として円弧
状に所定の振り角度でウィービングさせることを特徴と
する請求項1に記載の溶接方法。 - 【請求項4】 前記アーク溶接の電流が直流であること
を特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の
溶接方法。 - 【請求項5】 前記アーク溶接の電流が直流電流とパル
ス電流を重畳させた電流であることを特徴とする請求項
1乃至請求項3のいずれかに記載の溶接方法。 - 【請求項6】 前記アーク溶接の電流が正弦波電流であ
ることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに
記載の溶接方法。 - 【請求項7】 第1の母材と第2の母材とを突合せ溶接
したT字形溶接継手であって、片側に開先が形成されこ
の開先側の端部に第2の母材に当接させるための当接部
を有する第1の母材と、この第1の母材の当接部を当接
させるための平坦面を有する第2の母材とを用いて、第
1の母材の当接部を第2の母材の平坦面に当接させると
ともに、溶接ワイヤのアーク中心が第1の母材の開先の
端部と第2の母材の平坦面とが接する位置又はその手前
側の近傍位置に向かうように溶接ワイヤを第2の母材の
平坦面に対して傾斜させて臨ませた後、アーク溶接を行
う過程で、第1の母材の開先部を裏側まで溶融させつつ
その開先部が溶け落ちない程度に第2の母材よりも少な
く第1の母材に入熱させるとともに、第1の母材よりも
多く第2の母材に入熱させて第2の母材の平坦面を溶融
させるようにして、第1の母材と第2の母材と溶接ワイ
ヤとの溶融物による溶融プールを形成し、この溶融プー
ルを第1の母材の裏側に押し出して開先内から第1の母
材の裏側に至るまで一体となった溶融プールを形成し、
この溶融プールを凝固させることにより、第1の母材の
裏側に隅肉溶接形状の裏波ビードを形成するようにした
ことを特徴とするT字形溶接継手。 - 【請求項8】 第1の母材と第2の母材とを突合せ溶接
した平板の突合せ溶接継手であって、片側に開先が形成
されこの開先側の端部に第2の母材に当接させるための
当接部を有する第1の母材と、この第1の母材の当接部
を当接させるための平坦面を有する第2の母材とを用い
て、第1の母材の当接部を第2の母材の平坦面に当接さ
せるとともに、溶接ワイヤのアーク中心が第1の母材の
開先の端部と第2の母材の平坦面とが接する位置又はそ
の手前側の近傍位置に向かうように溶接ワイヤを第2の
母材の平坦面に対して傾斜させて臨ませた後、アーク溶
接を行う過程で、第1の母材の開先部を裏側まで溶融さ
せつつその開先部が溶け落ちない程度に第2の母材より
も少なく第1の母材に入熱させるとともに、第1の母材
よりも多く第2の母材に入熱させて第2の母材の平坦面
を溶融させるようにして、第1の母材と第2の母材と溶
接ワイヤとの溶融物による溶融プールを形成し、この溶
融プールを第1の母材の裏側に押し出して開先内から第
1の母材の裏側に至るまで一体となった溶融プールを形
成し、この溶融プールを凝固させることにより、第1の
母材の裏側に隅肉溶接形状の裏波ビードを形成するよう
にしたことを特徴とする平板の突合せ溶接継手。 - 【請求項9】 互いに突合せ溶接される一方の板材と他
方の板材とを含む複数の板材により形成される箱形構造
物であって、片側に開先が形成されこの開先側の端部に
他方の板材に当接させるための当接部を有する一方の板
材と、この一方の板材の当接部を当接させるための平坦
面を有しこの一方の板材と突合せ溶接される他方の板材
とを用いて、一方の板材の当接部を他方の板材の平坦面
に当接させるとともに、溶接ワイヤのアーク中心が一方
の板材の開先の端部と他方の板材の平坦面とが接する位
置又はその手前側の近傍位置に向かうように溶接ワイヤ
を他方の板材の平坦面に対して傾斜させて臨ませた後、
アーク溶接を行う過程で、一方の板材の開先部を裏側ま
で溶融させつつその開先部が溶け落ちない程度に他方の
板材よりも少なく一方の板材に入熱させるとともに、一
方の板材よりも多く他方の板材に入熱させて他方の板材
の平坦面を溶融させるようにして、一方の板材と他方の
板材と溶接ワイヤとの溶融物による溶融プールを形成
し、この溶融プールを一方の板材の裏側に押し出して開
先内から一方の板材の裏側に至るまで一体となった溶融
プールを形成し、この溶融プールを凝固させることによ
り、一方の板材の裏側に隅肉溶接形状の裏波ビードを形
成するようにしたことを特徴とする箱形構造物。 - 【請求項10】 請求項1に記載の溶接方法の実施に使
用するアーク溶接装置であって、前記第1の母材と第2
の母材との当接した溶接部に形成された開先内に導入さ
れる溶接ワイヤと、前記溶接ワイヤの位置を制御する制
御装置と、溶接部に溶接電力を供給する溶接電源と、前
記溶接電源から溶接部に供給される実際の電圧値が予め
設定した第1の設定値を超えたときに前記溶接ワイヤを
前記第2の母材の平坦面側に近づけるように移動させ、
また、実際の電流値が予め設定した電流設定値を超えた
とき又は実際の電圧値が予め設定した第2の設定値を下
回ったときに、前記溶接ワイヤを前記第1の母材の開先
側に近づけるように移動させる指令を前記制御装置に出
力する制御手段を備えたことを特徴とするアーク溶接装
置。 - 【請求項11】 請求項1に記載の溶接方法の実施に使
用するアーク溶接装置であって、前記第1の母材と第2
の母材との当接した溶接部に形成された開先内に導入さ
れる溶接ワイヤと、前記溶接ワイヤの位置を制御する制
御装置と、溶接部に溶接電力を供給する溶接電源と、前
記溶接電源から溶接部に供給される実際の電圧値が予め
設定した第1の設定値を超えたときに前記溶接ワイヤを
前記第2の母材の平坦面側に近づけるように移動させ、
また、実際の電流値が予め設定した電流設定値を超えた
とき又は実際の電圧値が予め設定した第2の設定値を下
回ったときに、前記溶接ワイヤを前記第1の母材の開先
側に近づけるように移動させる指令を前記制御装置に出
力するとともに、予め設定された平均電流値及び平均電
圧値と実電流値及び実電圧値とをそれぞれ比較し、実平
均電流値及び実平均電圧値がそれぞれ前記予め設定され
た平均電流値及び平均電圧値になるように電流制御信号
及び電圧制御信号を、前記溶接電源に出力する制御手段
を備えたことを特徴とするアーク溶接装置。 - 【請求項12】 請求項1に記載の溶接方法の実施に使
用するアーク溶接装置であって、溶接ワイヤと、これを
保持する溶接トーチと、この溶接トーチに前記溶接ワイ
ヤを送給する送給手段と、前記溶接ワイヤを直交する3
軸方向に位置制御する位置制御部を備えた制御装置と、
溶接部に溶接電力を供給する溶接電源と、溶接の平均電
圧値を予め設定する平均電圧設定器と、平均電流値を予
め設定する平均電流設定器と、実際の溶接電圧を検出す
る電圧検出器と、実際の溶接電流を検出する電流検出器
とを設け、前記電圧検出器で検出された実電圧値と電流
検出器で検出された実電流値が入力され前記実電圧値が
予め設定された第1の電圧設定値を超えたとき前記溶接
ワイヤを前記第2の母材の平坦面側に近づけるように移
動させ前記電流検出器で検出された実電流値が予め設定
された電流設定値を超えたとき又は電圧検出器で検出さ
れた実電圧値が予め設定された第2の電圧設定値を下回
ったとき前記ワイヤを前記第1の母材の開先側に近づけ
るように移動させる指令を前記位置制御部に出力すると
ともに、前記実平均電圧値を後記電圧制御器に出力し前
記実平均電流値を後記電流制御器に出力する電力診断部
と、前記平均電流設定器から入力された平均電流値と前
記電力診断部から入力された実平均電流値とを比較し、
この実平均電流値が前記平均電流設定器で予め設定され
た平均電流値になるように電流制御信号を出力する電流
制御器と、前記平均電圧設定器から入力された平均電圧
値と前記電力診断部から入力された実平均電圧値とを比
較し、この実平均電圧値が前記平均電圧設定器で予め設
定された平均電 圧値になるように電圧制御信号を出力す
る電圧制御器と、前記電流制御信号及び前記電圧制御信
号が入力され前記溶接電源の出力を制御する電源制御信
号を出力する出力制御器とを備えることを特徴とするア
ーク溶接装置。 - 【請求項13】 パルス電圧のピーク電圧を設定するピ
ーク電圧設定器と、ベース電圧を設定するベース電圧設
定器と、パルス幅を設定するパルス時間設定器と、これ
らピーク電圧設定器とベース電圧設定器とパルス時間設
定器からの各設定値を入力するパルス波形制御器とをさ
らに有し、前記電力診断部は、前記電圧検出器と前記電
流検出器から検出される実電圧値と実電流値に基づいて
その実ピーク電圧値と実ベース電圧値と実パルス幅を求
め前記パルス波形制御器に出力する手段を含み、前記パ
ルス波形制御器は、前記ピーク電圧設定器、ベース電圧
設定器及びパルス時間設定器のそれぞれから予め入力さ
れたピーク電圧設定値、ベース電圧設定値及びパルス幅
設定値と前記電力診断部から入力された実ピーク電圧
値、実ベース電圧値及び実パルス幅値とをそれぞれ比較
し波形制御信号を前記出力制御部に出力し、前記出力制
御器は、前記パルス波形制御器から入力された前記波形
制御信号と前記電圧制御器から入力された電圧制御信号
と前記電流制御器から入力された電流制御信号に基づい
て前記溶接電源の出力を制御する電源制御信号を出力す
る手段を含むことを特徴とする請求項12に記載のアー
ク溶接装置。
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