JP2004097159A - 核酸結合用磁性担体およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】個々の強磁性酸化鉄粒子の表面近傍に珪素およびアルミニウムを含む化合物、中でも、酸化物を被着形成した核酸結合用磁性担体であり、とくにアルミニウムの量が珪素とアルミニウムの合計量中0.1〜40重量%、珪素およびアルミニウムを含む化合物の含有量が強磁性酸化鉄粒子に対して3〜100重量%であり、平均粒子サイズが0.1〜10μmで、保磁力と飽和磁化がそれぞれ0.80〜15.92kA/m(10〜200エルステッド)と10〜80A・m2 /kg(10〜80emu/g)である核酸結合用磁性担体。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、核酸を含有する生物材料から核酸を抽出または精製したり、核酸増幅産物を精製するために用いられる、強磁性酸化鉄粒子と珪素およびアルミニウムを含む化合物とから構成された核酸結合用磁性担体に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁性担体を使用した核酸の単離には、生親和性分子が共有結合しうる重合性シラン被膜で被覆した超常磁性酸化鉄を使用する方法(特開昭60−1564号公報)、磁気粒子表面をニトロセルロースなどのセルロース誘導体で被覆した磁性担体を用い、これにDNAまたはRNAの1本鎖核酸を特異的に結合させる方法(国際出願公開番号W086/05815)などが公知である。
【0003】
また、ポリカチオン性支持体の磁気アミンマイクロスフェア(磁性微小球)と負電荷を有する糖リン酸塩主鎖をイオン結合させて、核酸の精製、分離およびハイブリダイゼーションを行う方法(特表平1−502319号公報)、内部コアポリマー粒子とこれに均一に被覆している磁気的に応答する金属酸化物/ポリマーコーテイングとよりなる磁性応答粒子を使用して、純粋な生物材料を単離する方法(特表平2−501753号公報)なども公知である。
【0004】
しかし、これらは、磁性粒子担体表面とシラン被覆またはポリマーとの結合が共有結合などで行われ、この場合、磁性粒子表面に官能基が付加されることが多く、核酸の特異的吸着による分別や測定には有利であるが、核酸を非特異的に多く吸着し、回収量も高くなる固相担体には不向きである。
一般に、核酸の単離のために、表面被覆した磁性粒子を固相担体とする場合、直径が20μm以上の大きな粒子では、弱い磁界でも応答するが、沈降が速く操作性に劣り、また比表面積が小さいため、核酸の結合効率が低くなる。一方、直径が0.1μm以下の小さな粒子では、比表面積が大きいため、核酸の結合効率が向上し、かつ沈殿しにくく操作性も良好であるが、磁界に対する応答性が低下し、磁界により担体を捕集するのに大きな磁界が必要となる。
【0005】
このような観点から、最近になり、核酸を非特異的に多く吸着し、回収量も高くなる固相担体として、複数個の芯微粒子(多磁区からなる金属または金属酸化物)を珪素酸化物からなる被膜や微粒子で被覆した構造を有し、好ましい粒子径が0.05〜20μmとされた磁性シリカ粒子(特許文献1参照)や、複数個の超常磁性金属酸化物を微小なシリカ粒子からなる無機多孔質壁物質で複合化した構造を有し、超常磁性金属酸化物の含有量が10〜60重量%であり、比表面積が100〜800m2 /gで、好ましい粒子径が0.5〜15μmとされた磁性シリカ粒子(特許文献2,3参照)などが提案されている。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−256388号公報(第2〜4頁)
【特許文献2】
特開平9−19292号公報(第1〜5頁)
【特許文献3】
特開2001−78761号公報(第1〜4頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの磁性シリカ粒子は、複数個の磁性粒子を芯物質としてこれをシリカで被覆した構造からなるが、シリカの芯物質に対する被着均一性に劣り、これが原因で磁性シリカ粒子の表面性が悪くなって、核酸を抽出精製する工程における液媒体中での流動性が低下する問題があった。
【0008】
核酸を抽出精製して分析を行う簡便な方法として、微小化TAS(トータル・アナリシス・システム)があるが、これに適用する磁性シリカ粒子は、粒子径が小さく、かつ磁場によってシステム上の流路を容易に駆動できるできるように、液媒体中の流動性にすぐれていることが望まれる。
しかし、上記提案の磁性シリカ粒子は、上述のようにその表面性が悪いため、このような流動性を満足させることができなかった。
【0009】
本発明は、上記の事情に照らし、磁性粒子を被着均一性にすぐれた核酸結合用の化合物で被覆して、核酸の単離や精製の性能にすぐれ、しかも表面性が良好で流動性にもすぐれた核酸結合用磁性担体を得ることを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために、鋭意検討した結果、磁性粒子として強磁性酸化鉄粒子を使用し、これを芯物質としてその表面に珪素およびアルミニウムを含む化合物を被着形成すると、芯物質に対する被着均一性が改善され、核酸の単離や精製の性能にすぐれるとともに、表面性が良く流動性にもすぐれた核酸結合用磁性担体が得られることを知り、本発明を完成した。
【0011】
微小化TASにおいて、核酸を保持する磁性担体は、磁場によりシステム上の流路を駆動するため、できるだけ粒径が小さく、また磁場によって容易に駆動できるように、流動性にすぐれていることが求められる。この流動性は、磁性担体の表面性に影響され、シリカなどの核酸結合用の化合物が芯物質に均一に被着するほど流動性が良くなるため、個々の芯物質粒子の表面を均一に覆うように上記シリカなどの化合物の被膜を形成することが重要である。
【0012】
本発明者らは、上記観点から、芯物質に強磁性酸化鉄粒子を用い、その表面に被着形成する核酸結合用の化合物について、種々検討した結果、珪素とともにアルミニウムを含ませた化合物によると、芯物質の粒子表面に上記化合物を均一に被着できることを見い出した。とくにこの化合物が、珪素とアルミニウムの複合酸化物であるとき、その効果が顕著となることもわかった。アルミニウムを含ませると、珪素およびアルミニウムを含む化合物が緻密な構造をとりやすくなり、芯物質粒子表面への被着均一性が向上するためと考えられる。
【0013】
このような珪素およびアルミニウムを含む化合物において、珪素とアルミニウムの合計量中、アルミニウムの含有量が0.1〜40重量%であるのが好ましく、とくに0.2〜30重量%であるのが最適である。アルミニウムの含有量が、0.1重量%未満となると、強磁性酸化鉄粒子への均一被着性が低下し、また、40重量%を超えると、核酸の結合効率が低下する傾向がある。
【0014】
アルミニウムを含有させる方法は、とくに限定されないが、珪素とアルミニウムで構成された複合酸化物とするのが好ましく、たとえばSiO2 ―Al2 O3 組成で表されるような酸化物とするのが好ましい。また、このような珪素およびアルミニウムを含む化合物は、磁性粒子との混合物として存在させることもできるが、磁性粒子表面に被膜として形成するのが好ましい。
【0015】
また、珪素およびアルミニウムを含む化合物は、強磁性酸化鉄粒子に対して、3〜100重量%の含有量であるのが好ましく、5〜80重量%の含有量であるのがとくに好ましい。上記化合物の含有量が3重量%未満となると、核酸の結合が不十分になり、また100重量%を超えると、とくに上記化合物を強磁性酸化鉄粒子の表面に形成する場合、粒子の表面以外の部分に析出しやすくなり、粒子の凝集などの発生により、逆に結合効率が低下しやすくなる。
【0016】
珪素およびアルミニウムを含む化合物の被膜を形成するための強磁性酸化鉄粒子には、マグネタイト(Fe3 O4 )粒子、マグヘマイト(γ−Fe2 O3 )粒子、マグネタイト−マグヘマイト中間酸化鉄粒子およびマンガン亜鉛フェライト(MnZnFe2 O4 )粒子が好ましく用いられる。とくに、マグネタイト粒子は、飽和磁化量が大きいため、磁石などで捕集する際の磁界感度が良好なため、最適である。粒子サイズはとくに限定されないが、平均粒子サイズが0.05〜0.5μmの範囲にあると、水溶液中での分散性が良好で、最適である。
【0017】
珪素およびアルミニウムを含む化合物を形成したのちの磁性担体は、平均粒子サイズが0.1〜10μm、とくに0.12〜8μmであるのが好ましい。この粒子サイズにすると、核酸の結合性/磁界による捕集性と、磁界除去時の分散性/核酸の溶離性が両立する最もバランスの良い磁性担体が得られる。
これに対し、平均粒子サイズが0.1μm未満となると、核酸の結合性は向上するが、磁界による捕集性および磁界除去時の再分散性が低くなる傾向にある。また、平均粒子サイズが10μmを超えると、粒子の表面積が小さくなるため、核酸の結合効率が低くなる傾向にある。
【0018】
珪素およびアルミニウムを含む化合物を通して核酸と結合した磁性担体は、磁石などにより捕集されるが、この捕集性は、磁性担体の飽和磁化量に依存し、飽和磁化量が大きいほど捕集性は向上する。上記化合物の含有量が、強磁性酸化鉄粒子に対して3〜100重量%の範囲にあると、飽和磁化量が低下しても磁石による捕集性には実質的に影響がないことがわかった。上記化合物が3重量%未満となると核酸の結合性が不十分になり、100重量%を超えると磁性担体の飽和磁化量が小さくなり、磁石による捕集性が低下する傾向にある。
また、このように磁石で捕集した磁性担体は、つぎに別の溶液中に移されて、上記化合物と結合した核酸をこの溶液中に溶離させるが、本発明の磁性担体は、この溶離性も良好であることがわかった。
【0019】
つぎに、磁性担体の保磁力であるが、一般的に保磁力が大きくなると磁性担体間の凝集力が大きくなり、磁性担体から核酸を溶離するときの磁性担体の分散性が低下する。その結果、結合した核酸の磁性担体からの溶離性が低下し、核酸の抽出効率が低下する傾向にある。本発明の磁性担体では、個々の強磁性酸化鉄粒子に珪素およびアルミニウムを含む化合物が被着形成されているため、磁性担体の保磁力は、強磁性酸化鉄粒子の保磁力によりほぼ決まる。
【0020】
本発明者らは、磁性担体の核酸抽出に影響を与えない最適の保磁力の範囲について検討してきた結果、0.80〜15.92kA/m(10〜200エルステッド)の範囲であれば、実用上問題がないことを見い出した。すなわち、磁性担体の保磁力が15.92kA/m(200エルステッド)より大きくなると、磁性担体の分散性が低下してくるが、15.92kA/m(200エルステッド)以下の保磁力であれば、実用上問題がないことがわかった。
また、磁性担体の保磁力が低い分にはとくに問題となることはないが、0.80kA/m(10エルステッド)より低くするためには、強磁性酸化鉄粒子の粒子サイズを大きくするなど、強磁性酸化鉄粒子を本発明の目的に適さない形状や構造にする必要が生じてくるため、好ましくない。
【0021】
つぎに、磁性担体の飽和磁化は、強磁性酸化鉄粒子の飽和磁化と被着形成する珪素およびアルミニウムを含む化合物の量により決まるが、10〜80A・m2 /kg(10〜80emu/g)の範囲にあるのが最適であることがわかった。すなわち、10A・m2 /kg(10emu/g)未満となると、磁石による捕集性が低下する傾向にある。また、飽和磁化を80A・m2 /kg(80emu/g)より大きくするには、珪素およびアルミニウムを含む化合物の含有量を少なくする必要があり、核酸の結合性が低下する傾向にある。
【0022】
このように、保磁力が0.80〜15.92kA/m(10〜200エルステッド)で、飽和磁化が10〜80A・m2 /kg(10〜80emu/g)の範囲のときに、核酸の結合性/磁界による捕集性と、磁界除去時の分散性/核酸の溶離性が両立する最もバランスの良い磁性担体となる。
【0023】
また、強磁性酸化鉄粒子の形状としては、針状、板状、球状、粒状、楕円状、立方形状など各種の形状のものが使用できるが、粒子形状は、核酸を結合した磁性担体から核酸を溶離させるときの磁性担体の分散性に影響する。
したがって、強磁性酸化鉄粒子およびこれに珪素およびアルミニウムを含む化合物を被着形成したのちの磁性担体は、粒子形状として球状ないし粒状であるのが、最も分散性が良好であり、好ましい。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明の磁性担体は、強磁性酸化鉄粒子と珪素およびアルミニウムを含む化合物とから構成され、かつ上記化合物が強磁性酸化鉄粒子の表面近傍に被着形成されていることを特徴とする核酸結合用の磁性担体である。
【0025】
とくに、上記化合物中のアルミニウムの含有量を、珪素とアルミニウムの合計量中、0.1〜40重量%とし、また上記化合物の含有量を、強磁性酸化鉄粒子に対して3〜100重量%とすることにより、強磁性酸化鉄粒子に珪素およびアルミニウムを含む化合物が均一に被着し、流動性にすぐれた微小化TASに使用するための最適な磁性担体を得ることができる。
【0026】
また、珪素およびアルミニウムを含む化合物を酸化物とし、強磁性酸化鉄粒子にマグネタイト(Fe3 O4 )粒子、マグへマイト(γ−Fe2 O3 )粒子、マグネタイト−マグヘマイト中間体粒子またはマンガン亜鉛フェライト(MnZnFe2 O4 )粒子のうちのいずれかを使用し、これら粒子の表面近傍に上記酸化物を被着形成すると、被着均一性がさらに向上する。
【0027】
磁性担体の形状は、球状ないし粒状が好ましく、平均粒子サイズとして0.1〜10μmの範囲のものが、また保磁力と飽和磁化として、それぞれ0.80〜15.92kA/m(10〜200エルステッド)と10〜80A・m2 /kg(10〜80emu/g)の範囲のものが好ましい。
【0028】
強磁性酸化鉄粒子は、上述したマグネタイト粒子、マグヘマイト粒子、マグネタイト−マグヘマイト中間体(中間酸化鉄)粒子またはマンガン亜鉛フェライト粒子が好ましいが、その中でも、マグネタイト粒子は飽和磁化量が大きいため、磁石などで捕集する際の磁界感度が良好で、最適である。
このマグネタイト粒子を用い、この粒子の表面近傍に珪素およびアルミニウムを含む化合物を被着形成したのち、加熱処理を行って、上記珪素およびアルミニウムを含む化合物を酸化物としたものは、流動性にすぐれており、微小化TASに使用するための磁性担体としてとくに適している。
【0029】
以下、強磁性酸化鉄粒子としてマグネタイト粒子を使用する場合を例にとり、本発明の磁性担体の製造方法について、説明する。
【0030】
<マグネタイト粒子の合成>
マグネタイト粒子は、鉄塩の水溶液中の酸化反応を用いた、以下の方法により合成できる。まず、硫酸第一鉄(FeSO4 ・6H2 O)を溶解した2価のFeイオン水溶液に、NaOH水溶液を滴下し、水酸化第一鉄〔Fe(OH)2 〕を析出させる。この水酸化第一鉄の懸濁液のpHを9〜10に調整したのち、空気を吹き込んで酸化し、マグネタイト粒子を成長させる。
【0031】
pHが上記範囲より小さいと、マグネタイトの析出が遅くなる。また、pHが上記範囲より大きいと、ゲーサイト(α−FeOOH)が生成しやすくなる。空気吹き込み速度と懸濁液の保持温度は、マグネタイト粒子の粒子サイズに大いに影響を与える。空気吹き込み速度は、100〜400リットル/時間に、また懸濁液の保持温度は、50〜90℃に調整するのが望ましい。
通常、空気吹き込み速度が大きくなるとマグネタイトの結晶成長が速くなり、粒子サイズは小さくなる。空気吹き込み速度が小さすぎたり、大きすぎたりするとマグネタイト以外の物質が混在析出しやすくなる。保持温度が高くなるほど、マグネタイトが結晶成長しやすくなり、粒子サイズが大きくなる。保持温度が低すぎると、ゲーサイト(α−FeOOH)粒子が生成しやすくなる。
【0032】
このような方法により、平均粒子サイズとして0.05〜0.5μmのマグネタイト粒子を合成する。なお、平均粒子サイズは、走査型電子顕微鏡写真上で、300個の粒子のサイズを測定し、その平均値から求められる。
【0033】
<珪素およびアルミニウムを含む化合物の被着形成>
上記のマグネタイト粒子を強磁性酸化鉄粒子として、その表面に珪素およびアルミニウムを含む化合物を被着形成する方法について、説明する。
まず、上記のように合成したマグネタイト粒子を、純水で十分水洗したのち、乾燥させることなく、水に対するマグネタイト粒子の量が1〜10重量%になるように、マグネタイト粒子の懸濁液を調製する。
【0034】
水に対するマグネタイト粒子の量は、珪素およびアルミニウムを含む化合物を被着形成するときの均一性に影響し、上記範囲内のときに最も均一に上記化合物が被着形成される。すなわち、水に対するマグネタイト粒子の量が1重量%未満となると、濃度が希薄すぎて、珪素およびアルミニウムを含む化合物がマグネタイト粒子の表面以外の場所で析出しやすくなる。また、水に対するマグネタイト粒子の量が10重量%を超えると、濃度が高すぎて、マグネタイト粒子が凝集しやすくなり、個々のマグネタイト粒子の表面近傍に均一に珪素およびアルミニウムを含む化合物を被着形成することが困難になる。
【0035】
このマグネタイト粒子の懸濁液とは別に、アルミニウム塩をアルカリ性水溶液に溶解する。アルミニウム塩の添加量は、アルミニウムに換算して、後述する珪素に対し0.1〜40重量%とするのが、被着均一性の面からみて、好ましい。アルミニウム塩としては、とくに限定されないが、好適なものとして、塩化アルミニウム、酢酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウムなどが用いられる。また、アルカリ性水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液などが用いられる。
アルミニウム塩水溶液のpHは、11〜14であるのが好ましい。pHが11未満であると、この溶液につぎに珪酸塩を混合したときに、珪素および/またはアルミニウム化合物が析出してしまうため、好ましくない。
【0036】
珪酸塩には、通常、珪酸ナトリウムが用いられる。この珪酸ナトリウム水溶液(水ガラス)を上記のアルミニウム塩水溶液に加えて、珪酸塩とアルミニウム塩の混合溶液を調製する。珪酸塩の量は、珪素およびアルミニウムを含む化合物の量がマグネタイト粒子に対し3〜100重量%となるようにすればよい。3重量%未満では、マグネタイト粒子の表面近傍に被着形成される上記化合物の量が不足し、核酸の結合量が少なくなり、抽出効率が低下する。100重量%を超えると、上記化合物を個々のマグネタイト粒子の表面近傍に均一に被着形成できず、また磁性担体の飽和磁化量が減少し、磁界による捕集性が低下する。
【0037】
このようにアルカリ性に調整した珪酸塩とアルミニウム塩の混合溶液と、前記のマグネタイト粒子の懸濁液とを混合し、上記粒子を上記の混合溶液中に分散させたのち、酸(通常は塩酸や燐酸などの酸性水溶液)を加えて、pHが7〜8の範囲になるように中和することにより、珪素およびアルミニウムを含む化合物を析出させる。このようにマグネタイト粒子の表面近傍に珪素およびアルミニウムを含む化合物を被着形成したのち、十分に水洗し、ろ過後、空気中で所定温度で所定時間乾燥することにより、磁性担体を合成する。
【0038】
<加熱処理>
このように合成した磁性担体は、核酸の抽出精製、あるいは核酸増幅産物の精製用の磁性担体として使用できるが、この磁性担体にさらに加熱処理を施すことにより、その性能をさらに向上することができる。
加熱処理は、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気中で行うのが好ましい。また、真空中で加熱処理してもよい。空気のような酸化性ガスも使用可能であるが、加熱温度が高くなるとマグネタイト粒子が酸化して飽和磁化が低下しやすくなるため、不活性ガスを使用するのが好ましい。
【0039】
加熱処理温度は、100〜800℃が好ましい。100℃未満では、加熱処理の効果が少なく、800℃を超えると、マグネタイト粒子が加熱により焼結しやすくなり、核酸を結合、溶離させるときの分散性が低下する。また、加熱処理時間は、加熱処理温度により異なるが、通常は1〜10時間とするのが好ましい。加熱処理時間が短すぎると、十分な加熱処理効果が得られず、また長すぎると、マグネタイト粒子が焼結しやすくなる。
【0040】
このような加熱処理により、マグネタイト粒子の表面近傍に珪素およびアルミニウムを含む化合物、とくに上記両元素の複合酸化物がより強固に結合して、核酸との結合性にすぐれ、同時に磁界による捕集性と、磁界除去時の分散性/核酸の溶離性とにすぐれた磁性担体を得ることができる。
【0041】
以上述べた方法により、保磁力と飽和磁化がそれぞれ0.80〜15.92kA/m(10〜200エルステッド)と10〜80A・m2 /kg(10〜80emu/g)の範囲にあり、かつ個々のマグネタイト粒子の表面近傍にマグネタイト粒子に対し3〜100重量%の珪素およびアルミニウムを含む酸化物が被着形成された、平均粒子サイズが0.1〜10μmの球状ないし粒状である、核酸の抽出精製、または核酸増幅産物の精製に最適な磁性担体が得られる。
【0042】
なお、本発明において、保磁力および飽和磁化は、振動試料型磁力計(東英工業製)を用いて、測定される値を意味している。
飽和磁化は、797kA/m(10キロエルステッド)の磁界を印加したときの磁化量から求められる。保磁力は、797kA/mの磁界を印加して磁化したのち磁界をゼロに戻し、さらに磁界を逆方向に徐々に増加させて行ったときの、磁化量がゼロになる印加磁界の値から求められる。
【0043】
また、上記方法で得られる本発明の磁性担体は、珪素およびアルミニウムを含む化合物の芯粒子への被着均一性にすぐれているが、この被着均一性は、磁性担体を水に分散させたときの沈降体積からも評価できる。
すなわち、沈降体積が小さいほど、磁性担体の凝集が少なく、珪素およびアルミニウムを含む化合物がマグネタイト粒子に対して均一に被着していることを示している。これは、上記化合物が磁性粒子表面に均一に被着した磁性担体を水に分散した状態で静止すると、最密充填に近い状態で充填することに基づくものである。これに対して、上記化合物が磁性粒子表面に不均一に被着したものでは、珪素およびアルミニウムを含む化合物が立体障害を形成するため、最密充填されにくくなり、その結果として、沈降体積が大きくなる。
【0044】
本発明の磁性担体に関し、核酸を抽出または精製し、あるいは核酸増幅産物を精製するために用いることを目的とした、好適な特性について、いま一度、整理すると、下記(1)〜(8)のとおりである。
(1)個々の強磁性酸化鉄粒子の表面近傍に強磁性酸化鉄粒子に対し3〜100重量%の珪素およびアルミニウムを含む化合物が被着形成された磁性担体
であって、
(2)上記の強磁性酸化鉄粒子がマグネタイト粒子であり、
(3)また、上記化合物が酸化物であり、
(4)さらに、上記化合物中のアルミニウムの含有量が、珪素とアルミニウムと
の合計量中、0.1〜40重量%の範囲にあることが好ましく、
(5)この磁性担体が球状ないし粒状の形状を有し、平均粒子サイズが0.1〜
10μmの範囲にあり、
(6)磁性担体の保磁力と飽和磁化が、それぞれ0.80〜15.92kA/m(10〜200エルステッド)と10〜80A・m2 /kg(10〜80
emu/g)の範囲にあることが好ましく、
(7)製造法としては、珪酸塩およびアルミニウム塩の混合溶液に強磁性酸化鉄粒子を分散させ、酸を加えて中和することにより、珪素およびアルミニウ
ムを含む化合物を析出させることが好ましく、
(8)上記析出後、水洗し、ろ過し、乾燥したのち、さらに不活性ガス雰囲気中
で加熱処理を施すことが好ましい。
【0045】
なお、以上の方法は、強磁性酸化鉄粒子の分散液中で珪酸塩とアルミニウム塩の混合水溶液から珪素およびアルミニウムを含む化合物を析出させて、上記粒子の表面近傍に上記化合物を被着形成する方法である。
しかし、本発明は、強磁性酸化鉄粒子の表面近傍に珪素およびアルミニウムを含む化合物を被着形成したことを特徴としており、アルミニウムを含有ないし付着させる方法は、上記方法に限定されないことは言うまでもない。
【0046】
本発明の磁性担体は、核酸を含有する材料や核酸抽出溶液と混合して、核酸を結合したのち、磁界を用いて溶液から分離し、この核酸を結合した磁性担体から核酸を溶離することにより、核酸を単離、精製する。
【0047】
本発明の磁性担体と核酸を含有する試料や核酸抽出溶液と混合する工程は、たとえば、市販のボルテックスミキサーを用いることにより、あるいはチューブを軽く転倒攪拌または振とうすることなどにより、行われる。
【0048】
また、核酸を結合した磁性担体を磁界を用いて液体から分離する工程は、磁石を用いて行われる。磁石としては、たとえば、磁束密度が約300ガウスの磁石を用いることができる。具体的には、核酸を含有する試料や核酸抽出用溶液を含むチューブの側壁に磁石を近づけて、核酸を結合した磁性担体を側壁に集め、核酸抽出溶液などの溶液と分離する方法が用いられる。
【0049】
さらに、核酸を結合した磁性担体から核酸を溶離する工程は、核酸を結合した磁性担体を、たとえば、約70%のエタノールにて数回洗浄したのち、磁性担体を乾燥し、その後、滅菌水やTE緩衝液などの低イオン濃度の溶液を添加することにより、磁性担体に結合した核酸を磁性担体から溶離する。
【0050】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を記載して、より具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0051】
実施例1
<マグネタイト粒子の合成>
100gの硫酸第一鉄(FeSO4 ・7H2 O)を1,000ccの純水に溶解した。この硫酸第一鉄と等倍モルになるように、28.8gの水酸化ナトリウムを500ccの純水に溶解した。硫酸第一鉄水溶液を攪拌しながら、1時間かけて水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、水酸化第一鉄の沈殿物を生成した。滴下終了後、攪拌しながら、水酸化第一鉄の沈殿物を含む懸濁液の温度を75℃まで昇温したのち、250リットル/時間の速度で、エアーポンプを使用して空気を吹き込みながら、8時間酸化し、マグネタイト粒子を生成した。この粒子は、ほぼ球形であり、平均粒子サイズは約0.22μmであった。
なお、上記の粒子サイズは、透過型電子顕微鏡写真上、約300個の粒子サイズを測定し、その平均粒子サイズから求めた。
【0052】
<珪素およびアルミニウムを含む化合物の被着形成>
上記のようにして得たマグネタイト粒子の懸濁液を、純水を用いて十分に水洗したのち、乾燥させることなく、マグネタイト粒子と水の重量がそれぞれ10gと200gになるように調整した。なお、水洗後の懸濁液中のマグネタイト粒子の量は、一部採取して乾燥させて求めた。
このマグネタイト粒子の懸濁液とは別に、珪酸ナトリウム2gを純水10gに溶解した。また、塩化アルミニウム0.5gを1N水酸化ナトリウム水溶液10gに溶解した。この両液を混合して、珪酸ナトリウムと塩化アルミニウムの混合溶液を調製し、これを上記のマグネタイト粒子の懸濁液に加え、攪拌しながら、約1時間かけて、純水で希釈した塩酸水溶液を滴下して中性付近まで中和した。滴下終了後、さらに1時間、攪拌を継続した。
【0053】
ここで、水に対するマグネタイト粒子の量が1〜10重量%となるように調整すると、マグネタイト粒子の表面近傍に珪素およびアルミニウムを含む化合物を優先的に被着形成できる。このように処理した懸濁液をろ過し、空気中90℃で乾燥した。乾燥後の粒子を解砕し、窒素ガス中、200℃で2時間加熱処理を行った。加熱処理後の粒子は、さらに純水中で洗浄し、未反応物や、マグネタイト粒子表面以外の部分に析出している反応生成物を除去した。
【0054】
このようにして得られた核酸結合用磁性担体は、平均粒子サイズが0.29μmの球状ないし粒状で、保磁力が5.58kA/m(70エルステッド)で、飽和磁化が67.9A・m2 /kg(67.9emu/g)であった。また、被着形成した珪素とアルミニウムとの複合酸化物において、アルミニウムの量は、珪素とアルミニウムの合計量中、8.9重量%であった。さらに、珪素およびアルミニウムの含有量は、各々シリカ(SiO2 )およびアルミナ(Al2 O3 )含有量に換算して、マグネタイト粒子に対し、23.5重量%であった。
【0055】
図1は、この磁性担体の走査電子顕微鏡写真を示したものである。この写真より、個々のマグネタイト粒子が観察され、マグネタイト粒子以外の場所では析出物は認められず、珪素とアルミニウムの複合酸化物がマグネタイト粒子の表面近傍に被着形成していることが明らかに認められる。
つぎに、この磁性担体0.5gを直径10mmの円柱状のガラス管に入れ、純水を1.5g加えて、超音波分散機を使って30分間分散した。その後、超音波分散機から取り出し、15分間静置し、沈降した磁性担体の体積を測定した。この磁性担体の沈降体積は、860mm3 (高さ11mm)であった。
【0056】
実施例2
珪素およびアルミニウムを含む化合物の被着形成工程において、珪酸ナトリウムの量を2gから1.8gに、塩化アルミニウムの量を0.5gから1gに、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、マグネタイト粒子に対する珪素およびアルミニウムを含む化合物の被着形成を行い、その後の加熱処理も実施例1と同様に行い、核酸結合用磁性担体を得た。
【0057】
この磁性担体は、平均粒子サイズが0.31μmの球状ないし粒状で、保磁力が5.98kA/m(75エルステッド)で、飽和磁化が66.8A・m2 /kg(66.8emu/g)であった。また、被着形成した珪素とアルミニウムとの複合酸化物において、アルミニウムの量は、珪素とアルミニウムの合計量中、17.5重量%であった。さらに、珪素およびアルミニウムの含有量は、各々シリカ(SiO2 )およびアルミナ(Al2 O3 )含有量に換算して、マグネタイト粒子に対し、24.8重量%であった。
【0058】
また、この磁性担体は、走査電子顕微鏡観察から、珪素とアルミニウムの複合酸化物が個々のマグネタイト粒子の表面近傍に被着形成していることが明らかに認められた。さらに、この磁性担体について、実施例1と同様にして測定した沈降体積は、903mm3 (高さ11.5mm)であった。
【0059】
実施例3
珪素およびアルミニウムを含む化合物の被着形成工程において、珪酸ナトリウムの量を2gから2.2gに、塩化アルミニウムの量を0.5gから0.3gに、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、マグネタイト粒子に対する珪素およびアルミニウムを含む化合物の被着形成を行い、その後の加熱処理も実施例1と同様に行い、核酸結合用磁性担体を得た。
【0060】
この磁性担体は、平均粒子サイズが0.30μmの球状ないし粒状で、保磁力が5.18kA/m(65エルステッド)で、飽和磁化が69.0A・m2 /kg(69.0emu/g)であった。また、被着形成した珪素とアルミニウムとの複合酸化物において、アルミニウムの量は、珪素とアルミニウムの合計量中、4.5重量%であった。さらに、珪素およびアルミニウムの含有量は、各々シリカ(SiO2 )およびアルミナ(Al2 O3 )含有量に換算して、マグネタイト粒子に対し、22.0重量%であった。
【0061】
また、この磁性担体は、走査電子顕微鏡観察から、珪素とアルミニウムの複合酸化物が個々のマグネタイト粒子の表面近傍に被着形成していることが明らかに認められた。さらに、この磁性担体について、実施例1と同様にして測定した沈降体積は、942mm3 (高さ12mm)であった。
【0062】
比較例1
珪素およびアルミニウムを含む化合物の被着形成工程において、珪酸ナトリウムの量を2gから2.3gに、塩化アルミニウムの量を0.5gから0gに、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様に処理して、マグネタイト粒子に対する珪酸のみの被着形成を行い、その後の加熱処理は実施例1と同様に行って、核酸結合用磁性担体を得た。
【0063】
この磁性担体は、平均粒子サイズが0.29μmの球状ないし粒状で、保磁力が5.58kA/m(70エルステッド)で、飽和磁化が68.1A・m2 /kg(68.1emu/g)であった。また、珪素含有量は、シリカ(SiO2 )含有量に換算して、マグネタイト粒子に対し、23.1重量%であった。また、この磁性担体について、実施例1と同様にして測定した沈降体積は、1,178mm3 (高さ15mm)であった。
【0064】
上記の実施例1〜3および比較例1で得られた各核酸結合用磁性担体について、平均粒子サイズ、珪素とアルミニウムの合計量中のアルミニウムの割合〔Al/(Si+Al)〕および強磁性酸化鉄粒子に対するシリカとアルミナの割合〔(SiO2 +Al2 O3 )/Fe3 O4 〕を、表1にまとめて示した。また、上記の実施例1〜3および比較例1で得られた各核酸結合用磁性担体について、保磁力、飽和磁化および沈降体積を、表2にまとめて示した。
【0065】
【0066】
【0067】
つぎに、上記の実施例1〜3および比較例1で得られた各核酸結合用磁性担体について、下記の抽出試験により、生物試料より核酸を抽出回収し、その回収性能を調べた。結果は、表3に示されるとおりであった。
【0068】
(A)抽出試験用試剤
(イ)核酸結合用磁性担体を0.2mg/mlになるように滅菌水に分散させて、分散液を調製した。
(ロ)核酸を単離するための生物試料として、大腸菌〔Escherichia coli JM109(東洋紡績,宝酒造,インビトロジェンなどより販売されている)〕を3ml、TB培地/試験管にて37℃で20時間培養した菌体を用いた。
(ハ)核酸抽出用溶液として、カオトロピック物質を含む緩衝液であるバッファーA〔7Mグアニジン塩酸塩(ナカライテスク社)、50mM Tris−HCl(シグマ社)、pH7.5〕を用いた。
(ニ)洗浄液として、カオトロピック物質を含む緩衝液であるバッファーA〔7Mグアニジン塩酸塩(ナカライテスク社)、50mM Tris−HCl(シグマ社)、pH7.5〕を使用した。
(ホ)高濃度の塩を除去するための試剤として、70%エタノール溶液と、アセトン溶液を使用した。
(ヘ)核酸結合用磁性担体に結合した核酸を回収するための溶離液として、滅菌水を使用した。
【0069】
(B)抽出試験方法
(1)菌体濁度(OD660)を測定し、1.5cc用エッペンドルフチューブにてOD660;1.0の菌体を遠心分離により調製した。つぎに、核酸抽出用溶液1,000μlを注入し、混合した。
(2)その後、核酸結合用磁性担体の分散液20μlを加えた。
(3)約2分毎に混合しながら、室温で10分間放置した。
(4)1.5cc用エッペンドルフチューブの形状に合った磁石スタンドに上記チューブを設置することにより、核酸結合用磁性担体を磁石側のチューブ側に集めた。
(5)フィルターチップで溶液を吸引し、排出した。
(6)チューブを磁石スタンドより取りはずし、グアニジン塩酸塩を含む洗浄液を1cc注入した。
(7)核酸結合用磁性担体と十分混合したのち、再度、磁石スタンドに設置し、上記と同様にして溶液を廃棄した。
(8)洗浄操作を再度繰り返した。
(9)1ccの70%エタノールで上記と同様の方法により、核酸を結合した磁性担体を洗浄し、高濃度のグアニジン塩酸塩を取り除いた。
(10)再度、1ccの70%エタノールと1ccのアセトンで洗浄した。
(11)約56℃のヒートブロックに上記チューブを設置し、約10分間放置してチューブ内および核酸結合用磁性担体内のアセトンを完全に蒸発させて除去した。
(12)上記方法で核酸を結合した核酸結合用磁性担体に、100μlの滅菌水を加え、約56℃のヒートブロックに上記チューブを設置し、2分毎に混合操作しながら10分間放置した。
(13)つぎに、磁石スタンドに設置し、回収する溶液をフィルターチップで吸引し、別の新しいチューブに移した。通常、回収量は70μl程度とした。保存する場合は、−70℃で行った。
(14)このように回収した核酸について、吸光度計により、その吸光度(OD 260nm)を測定して、核酸の濃度を求めた。これに回収容積を掛けて、核酸回収量とした。
【0070】
【0071】
つぎに、上記の抽出試験により回収した核酸溶液5μlを1%アガロースゲルにて電気泳動し、エチジウムブロマイド染色したのち、紫外線照射下での蛍光を検出した。結果は、図2に示されるとおりであった。電気泳動の条件としては、定電圧100V、30分間にて行った。操作法ならびに他の条件は、Maniatisらの「Molecular Cloning」(1982年)に記載の技法にしたがった。核酸溶液のほかに、分子量マーカーも同時に泳動し、検出された核酸の鎖長を比較する際の参考とした。
なお、図2に示す電気泳動写真において、「M」は上記分子量マーカー、「レーン1,2」は実施例1の核酸抽出精製結果(2個の試料)、「レーン3,4」は実施例2の核酸抽出精製結果(2個の試料)、「レーン5,6」は実施例3の核酸抽出精製結果(2個の試料)、「レーン7,8」は比較例1の核酸抽出精製結果(2個の試料)、である。
【0072】
上記の表1〜表3の結果から明らかなように、マグネタイト粒子の表面近傍に珪素およびアルミニウムを含む化合物を被着形成した実施例1〜3の核酸結合用磁性担体は、いずれも、珪素のみを被着形成した比較例1の核酸結合用磁性担体に比べて、核酸抽出量が同程度であって、核酸の抽出性能になんら遜色がなく、しかも、沈降体積は明らかに小さくなっており、被着均一性にすぐれて表面性が良好であり、流動性にすぐれたものであることがわかる。
【0073】
この流動性を裏付ける別の実験を、以下のように行ってみた。
すなわち、まず、実施例1〜3の核酸結合用磁性担体および比較例1の核酸結合用磁性担体について、各一定量を水に分散させ、この水分散体の一定量をガラス板上に滴下した。つぎに、このガラス板の裏面から磁石を用いて、この水分散体を直線状に移動させた。一定距離移動させたのち、移動した水分散体中に残っている核酸結合用磁性担体の重量を測定した。
その結果、実施例1〜3では、比較例1に比べて、上記残っている磁性担体の重量が明らかに多いことがわかった。この結果は、実施例1〜3の核酸結合用磁性担体の方が、比較例1の核酸結合用磁性担体に比べて、マグネタイト粒子の表面近傍に被着形成した化合物(酸化物)の被着均一性が良好であって、流動性によりすぐれていることを示している。
【0074】
また、上記の図2の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜3の核酸結合用磁性担体を用いて回収した核酸は、比較例1の核酸結合用磁性担体を用いて回収した核酸に比べ、分子量分布が小さいことがわかる。この原因ははっきりとはわからないが、マグネタイト粒子に珪素およびアルミニウムを含む化合物を被着形成することにより、磁性担体の粒子表面が平滑になり、核酸が切断されにくくなるためと予想される。一方、珪素のみを被着形成した磁性担体では、被着均一性に劣るため、磁性担体の粒子表面に凹凸が生じて、核酸が切断されやすくなり、核酸の分子量分布がブロードになるものと予想される。
【0075】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、個々の強磁性酸化鉄粒子の表面近傍に、珪素およびアルミニウムを含む化合物、中でも、酸化物を被着形成したことにより、また、とくにアルミニウムの量が珪素とアルミニウムの合計量中0.1〜40重量%、珪素およびアルミニウムを含む化合物の含有量が強磁性酸化鉄粒子に対して3〜100重量%となり、さらに平均粒子サイズが0.1〜10μm(とくに0.1〜0.5μm)で、保磁力と飽和磁化がそれぞれ0.80〜15.92kA/m(10〜200エルステッド)〔とくに2.39〜11.94kA/m(30〜150エルステッド)〕と10〜80A・m2 /kg(10〜80emu/g)〔とくに40〜80A・m2 /kg(40〜80emu/g)〕となるようにしたことにより、微小化TASチップに適用するのに求められる、すぐれた核酸単離性能と流動性を兼ね備えた核酸結合用磁性担体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得た核酸結合用磁性担体の走査型電子顕微鏡写真(倍率:3万倍)を示したものである。
【図2】実施例1〜3および比較例1で得た各核酸結合用磁性担体を用いて回収された核酸の電気泳動写真を示したものである。
【符号の説明】
M 分子量マーカー
レーン1,2 実施例1の核酸抽出精製結果
レーン3,4 実施例2の核酸抽出精製結果
レーン5,6 実施例3の核酸抽出精製結果
レーン7,8 比較例1の核酸抽出精製結果
Claims (7)
- 強磁性酸化鉄粒子と珪素およびアルミニウムを含む化合物とから構成され、かつ上記化合物が強磁性酸化鉄粒子の表面近傍に被着形成されていることを特徴とする核酸結合用磁性担体。
- 強磁性酸化鉄粒子は、マグネタイト粒子、マグへマイト粒子、マグネタイト−マグヘマイト中間体粒子またはマンガン亜鉛フェライト粒子のうちのいずれかである請求項1に記載の核酸結合用磁性担体。
- 珪素およびアルミニウムを含む化合物は、珪素とアルミニウムの合計量中、アルミニウムの含有量が0.1〜40重量%である請求項1または2に記載の核酸結合用磁性担体。
- 珪素およびアルミニウムを含む化合物は、強磁性酸化鉄粒子に対して、3〜100重量%の含有量である請求項1〜3のいずれかに記載の核酸結合用磁性担体。
- 珪素およびアルミニウムを含む化合物は、酸化物である請求項1〜4のいずれかに記載の核酸結合用磁性担体。
- 形状が球状ないし粒状で、平均粒子サイズが0.1〜10μm、保磁力が0.80〜15.92kA/m(10〜200エルステッド)、飽和磁化が10〜80A・m2 /kg(10〜80emu/g)である請求項1〜5のいずれかに記載の核酸結合用磁性担体。
- 珪酸塩とアルミニウム塩の混合溶液に強磁性酸化鉄粒子を分散させ、酸を加えて中和することにより、珪素およびアルミニウムを含む化合物を析出させたのち、ろ過、乾燥後、不活性ガス雰囲気中で加熱処理を行って、強磁性酸化鉄粒子の表面近傍に珪素およびアルミニウムを含む化合物を被着形成することにより、請求項1〜6のいずれかに記載の核酸結合用磁性担体を得ることを特徴とする核酸結合用磁性担体の製造方法。
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