JP5183905B2 - 担体、担体の製造方法、およびその利用 - Google Patents

担体、担体の製造方法、およびその利用 Download PDF

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Description

本発明は、担体、担体の製造方法、およびその利用に関するものであって、特に、生体物質を分離するために好適に利用可能な担体、担体の製造方法、およびその利用に関するものである。
従来、生体サンプルのような核酸を含有する試料から核酸を単離する方法として、核酸が結合可能な粒子を用いる方法が知られている。そのような方法では、具体的には、例えば、核酸抽出用溶液中において、上記粒子の表面に核酸を結合させ、核酸が結合した粒子を回収した後、核酸解離用液中において、核酸が結合した粒子から当該核酸を解離させる。上記粒子としては、シラン化剤により表面が変性されたシリカゲル粒子のようなシリカ粒子が用いられている。
また、シリカ粒子を用いた核酸の単離方法においては、核酸とシリカ粒子とを結合させる点についても様々な技術が開発されている。例えば、特許文献1および2には、核酸とシリカ粒子とを結合させる際に、カオトロピック試薬を添加する方法が記載されている。
さらに、最近では、核酸を単離するために用いられるシリカ粒子として、例えば、特許文献3に開示されるような磁性を有するシリカ磁気粒子を用いる方法が開発されている。このような磁性粒子によれば、該磁性粒子を回収する際、磁力によって容易に回収することができる。つまり、このような磁性粒子を用いることにより、核酸の単離を自動化できるという利点がある。また、シリカ磁気粒子については、様々な改良がなされている。例えば、特許文献4〜10には、様々な特徴をもつ磁性を有するシリカ粒子が開示されている。
具体的には、例えば、特許文献4には、超常磁性金属酸化物の表面がシリカで被覆されており、そしてさらに微小なシリカ粒子で構成される無機多孔性壁物質で複合されている核酸結合用磁性担体が開示されている。
また、特許文献5には、フェライト、磁鉄鉱、フェライトと磁鉄鉱との混合物、またはフェリ磁性磁鉄鉱上に沈殿または吸着したシリカガラスを含む多孔性強磁性またはフェリ磁性ガラス粒子が開示されている。また、該フェリ磁性ガラス粒子は、シリカガラス粒子の細孔が、10nmより大きいか、または小さい直径を有する細孔を含み、かつ10nmより大きい直径を有する細孔の累積細孔面積が4m2/gより大きいことが開示されている。さらに、上記シリカ粒子は非多孔性であることが好ましいことが記載されている。このような多孔性強磁性またはフェリ磁性ガラス粒子は、核酸分子に対して高い結合能力を示すことが記載されている。
特許文献6には、ガラス表面を有する粒子を含む調製物であって、当該粒子の75重量%超が0.5〜15μmの粒子サイズを有し、0.5〜15μmの粒子サイズを有する粒子の95重量%超が磁性粒子である調製物が開示されている。
特許文献7には、多磁区からなる金属または金属酸化物よりなる複数の芯微粒子が、珪素酸化物よりなる被膜または微粒子によって覆われてなり、比表面積が0.1m2 /g以上100m2 /g未満である核酸結合用磁性シリカ粒子が開示されている。該核酸結合用磁性シリカ粒子は、分散安定性および磁気分離性に優れ、核酸を含有する材料から高い効率でかつ高い純度で単離することができ、生産性の高いことが記載されている。
特許文献8には、強磁性酸化鉄粒子がシリカで被覆されているとともに、そのシリカ被覆表面に官能基としてアミノ基またはカルボキシル基が付与されている核酸結合用磁性担体が開示されている。これにより、シリカ被覆表面への核酸の結合性を改善して、核酸の単離や精製の効率を向上しうることが記載されている。
特許文献9には、平均粒子サイズが0.1〜0.5μmの強磁性マグネタイト粒子がシリカで被覆されてなり、2.39〜11.94kA/m(30〜150エルステッド)の保磁力と30〜60A・m2 /kg(30〜60emu/g)の飽和磁化を有し、かつ平均粒子サイズが1〜10μmの球状形状を有することを特徴とする核酸結合用磁性担体が開示されている。該核酸結合用磁性担体は、酸の結合性と磁界による捕集性にすぐれ、かつ磁界を除去した状態での分散性と結合核酸の溶離性にすぐれ、もって核酸の単離性能にすぐれていることが記載されている。
特許文献10には、球状ないし粒状の強磁性酸化鉄粒子がシリカで被覆されてなり、このシリカの被覆量が強磁性酸化鉄粒子に対して3〜100重量%であって、平均粒子サイズが0.1〜0.5μm、保磁力が2.39〜11.94kA/m(30〜150エルステッド)、飽和磁化が30〜80A・m/kg(30〜80emu/g)である核酸結合用磁性担体が開示されている。このような核酸結合用磁性担体によれば、核酸の結合性と磁界による捕集性にすぐれ、かつ磁界を除去した状態での分散性と結合核酸の溶離性にすぐれ、核酸の単離や精製の効率を向上しうることが記載されている。
特開平2−289596号公報(平成2(1990)年11月29日公開;第2680462号(平成9(1997)年8月1日登録)) 特開平9−327290号公報(平成9(1997)年12月22日公開) WO98/31840パンフレット(平成10(1998)年7月23日公開;特許第3253638号(平成13(2001)年11月22日登録)) 特開平9−19292号公報(平成9(1997)年1月21日公開;特許2965131号(平成11(1999)年8月13日登録)) WO01/071732パンフレット(平成13(2001)年9月27日公開) WO2000/032762パンフレット(平成12(2000)年6月8日公開;特許第3561235号(平成16(2004)年6月4日登録)) 特開2000−256388号公報(平成12(2000)年9月19日公開) 特開2003−104996号公報(平成15(2003)年4月9日公開) 特開2003−102473号公報(平成15(2003)年4月8日公開) 特開2004−31792号公報(平成16(2004)年1月29日公開)
このように、核酸をはじめとする生体物質をシリカ磁気粒子を用いて単離する方法および該方法に用いるシリカ磁気粒子については、様々な研究がなされている。しかしながら、核酸等の生体物質を簡便に、かつ高収率で単離する技術としては、まだ十分とはいえない。
例えば、特許文献3に示されるようなシリカ磁性粒子は、その粒子径は1〜15μmの大きな粒子である。そのため、該シリカ磁性粒子の表面積が小さすぎるため、核酸の吸着量が少なすぎるという問題がある。一方、特許文献4などのように、多孔性シリカ磁性粒子を用いて核酸を単離する方法は、多孔性シリカを用いることで、比表面積を大きくし、核酸の結合量を増加させようという方法である。
しかし、実際には、このような多孔性シリカ磁性粒子を用いる場合、細孔内に水系溶媒に分散した核酸が入り込ませる必要がある。したがって、上記多孔性シリカ磁性粒子には、多孔性という特徴に加えて、該水系溶媒に対する濡れ性、および該水系溶媒に対する親和性等の様々な物性が求められる。また、上記水系溶媒についても、表面張力を制御する必要がある。さらに、核酸回収操作時には、核酸と上記多孔性シリカ磁性粒子との接触時間を制御したり、接触時に適度な圧力を負荷したりする必要がある。そのため、引用文献4などのように、多孔性シリカ磁性粒子を用いて、短時間で核酸を回収しようとすると、細孔の全てに核酸を吸着させることは困難である。より詳しく言えば、該多孔性シリカ磁性粒子に吸着する核酸のほとんどは、該多孔性シリカ磁性粒子の最外表面に存在する。また、上記細孔に入り込んだ核酸は、その脱離回収が困難である。また、表面が多孔性である多孔性シリカ磁性粒子を製造することは、製造工程が煩雑であるという問題も存在する。
また、特許文献6の多孔性強磁性またはフェリ磁性ガラス粒子は、シリカの中に複数の芯微粒子が存在し、粒子の連続体となる。そのため、粒子1個あたりの核酸回収収率が悪くなるという問題がある。また、分散性が劣るため、該多孔性強磁性またはフェリ磁性ガラス粒子を用いて、核酸分離を自動化することが困難であるという問題がある。
さらに、例えば、超常磁性金属酸化物は、他の磁性材料と比べて磁力が劣る。そのため、微小な粒子径の粒子を磁力により回収するには、強力な磁場が必要となる。このような強い磁場を形成させることは、短時間の核酸の分離や、核酸分離処理の自動化には適してない。つまり、磁性粒子を用いて、核酸を短時間で分離したり、核酸分離を自動化したりする場合には、該磁性粒子の磁気特性を最適化する必要がある。
このように、核酸のような生体物質を、短時間に高収率で単離したり、自動化処理により高収率で単離したりするという観点から見ると、上述したような従来技術は十分なものとはいえず、新たな技術の開発が求められている。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであって、その目的は、核酸等の生体物質を分離するために好適に利用可能な担体、担体の製造方法、およびその利用を提供することにある。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、遷移金属からなる磁性粒子をケイ素酸化物で被覆する際、同時にカチオン性官能基を特定の範囲内の量だけ付与し、表面電位を負電荷とすることにより、該磁性粒子を用いた核酸の回収効率を向上させることが可能であることを独自に見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
(1)固形質と、該固形質を被覆するケイ素酸化物層とを含む担体であって、カチオン性官能基を有し、表面電位が負電荷であることを特徴とする担体。
(2)上記固形質は、磁性体であることを特徴とする(1)に記載の担体。
(3)上記固形質は、遷移金属を主成分とすることを特徴とする(1)に記載の担体。
(4)上記固形質は、鉄、フェライト、または酸化鉄を主成分とすることを特徴とする(1)に記載の担体。
(5)上記ケイ素酸化物層は、上記固形質の10重量%以上であることを特徴とする(1)に記載の担体。
(6)形状が球状の粒子であることを特徴とする(1)に記載の担体。
(7)上記粒子の比表面積が、1〜100m/gであることを特徴とする(6)に記載の担体。
(8)上記粒子の粒子径が、0.01〜2μmであることを特徴とする(6)に記載の担体。
(9)上記粒子は、水系溶媒に対して親和性を有し、該粒子を該水系溶媒に懸濁したときの凝集粒子径が、0.01μm〜2μmであることを特徴とする(6)に記載の担体。
(10)上記水系溶媒は、鉄含有量が0.5g/ml以下の水系溶媒であることを特徴とする(9)に記載の担体。
(11)上記固形質上へのケイ素酸化物層の形成時に同時に、上記カチオン性官能基を該ケイ素酸化物層に導入して得られることを特徴とする(1)に記載の担体。
(12)上記固形質に対して、ケイ素含有化合物とカチオン性剤との混合物を、触媒存在下で反応させることにより得られることを特徴とする(1)に記載の担体。
(13)上記ケイ素含有化合物は、ケイ素エトキシド類であることを特徴とする(12)に記載の担体。
(14)上記カチオン性剤は、カチオン性シラン剤であることを特徴とする(12)に記載の担体。
(15)固形質と、該固形質を被覆するケイ素酸化物層とを含む担体の製造方法であって、上記固形質上へのケイ素酸化物層の形成時に同時に、上記カチオン性官能基を該ケイ素酸化物層に導入することを特徴とする担体の製造方法。
(16)上記固形質に対して、ケイ素含有化合物とカチオン性剤との混合物を、触媒存在下で反応させることを特徴とする(15)に記載の担体の製造方法。
(17)上記ケイ素含有化合物は、ケイ素エトキシド類であることを特徴とする(16)に記載の担体の製造方法。
(18)上記カチオン性剤は、カチオン性シラン剤であることを特徴とする(16)に記載の担体の製造方法。
(19)(1)に記載の担体と、生体物質を含有する試料とを混合し、上記担体に、上記生体物質を吸着させ、上記生体物質が吸着した上記担体を、溶離液に接触させることにより、該溶離液中に、上記生体物質を溶離させることを特徴とする生体物質の分離方法。
(20)上記生体物質は、核酸であることを特徴とする(19)に記載の生体物質の分離方法。
(21)上記生体物質は、プラスミドDNAであることを特徴とする(19)に記載の生体物質の分離方法。
(22)上記生体物質を含有する試料が、カオトロピック試薬を含有することを特徴とする(19)に記載の生体物質の分離方法。
(23)上記生体物質を含有する試料が、カオトロピック試薬および界面活性剤を含有することを特徴とする(19)に記載の生体物質の分離方法。
(24)(1)に記載の担体を含有することを特徴とする生体物質分離用キット。
本発明にかかる担体は、以上のように、固形質と、該固形質を被覆するケイ素酸化物層とを含む担体であって、カチオン性官能基を有し、表面電位が負電荷である。それゆえ、核酸などの生体物質を効率よく吸着させることができるという効果を奏する。
また、本発明にかかる担体の製造方法は、以上のように、固形質上へのケイ素酸化物層の形成と、該ケイ素酸化物層へのカチオン性官能基の導入とを同時に行う。それゆえ、少ない工程数で簡便に、該担体を製造できるという効果を奏する。
本発明の一実施形態について説明すると以下の通りであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
<I.担体およびその製造方法>
本発明にかかる担体は、固形質と、該固形質を被覆するケイ素酸化物層とを含む担体である。また、上記担体は、カチオン性官能基を有し、表面電位が負電荷である。本発明にかかる担体は、このような構成を有していればよく、その他の具体的な構成は特に限定されるものではない。
上記構成によれば、表面電位は負電荷であるが、上記カチオン性官能基を有しているため、負電荷を有する物質を吸着させることができる。また、該担体に吸着した該物質は、該物質が吸着した該担体を、溶離液と接触させることにより、溶離させることができる。したがって、本発明にかかる担体は、負電荷をもたせることが可能な物質の分離、精製、回収等に用いることができる。例えば、核酸、タンパク質、糖、脂質、アミノ酸、またはビタミンのような生体物質の分離や、精製に用いることができる。
ここで、本発明にかかる担体の構造について、より詳細に説明する。
本発明にかかる担体は、固形質と、該固形質を被覆するケイ素酸化物層とを含む担体である。上記固形質は、特に限定されるものではなく、例えば、蛍光体、貴金属、および磁性体などを挙げることができる。中でも、上記固形質として、磁性体を用いることが好ましい。磁性体を上記固形質として用いることにより、磁石等を用いて、本発明にかかる担体を磁力により操作することができる。具体的には、例えば、溶液中に分散された上記担体を、磁石等の磁力により回収することができる。
上記磁性体としては、遷移金属、並びにその酸化物および複合酸化物を挙げることができる。具体的には、鉄、ニッケル、コバルト、亜鉛、マンガン、白金、およびそれらの酸化物を挙げることができる。また、XFe(X;Mn、Zn、Co、またはNi)で表される複合酸化物を用いることもできる。中でも、本発明では、上記固形質としては、強磁性体を用いることが好ましい。具体的には、Feで表されるマグネタイトまたは純鉄を用いることが好ましく、上記マグネタイトを用いることが特に好ましい。また、上記マグネタイトの構造の一部が、Feの組成を含有していてもよい。
上記マグネタイトは、三井金属鉱業製マグネタイトFのような市販品を購入して取得することができる。また、2価鉄イオンと3価鉄イオンとを共存させた水溶液にアルカリ水溶液を加え、沈殿を析出させることにより、上記マグネタイトを合成することも可能である。
また、本発明にかかる担体は、水系溶媒に対して親和性を有することが好ましい。このような物性を有することにより、後述する生体物質の分離方法に好適に利用することができる。また、本発明にかかる担体を中性または酸性の水系溶媒に懸濁した場合、上記担体の固形質である磁性体が、該水系溶媒中に溶出されないことが好ましい。具体的には、上記担体において、上記固形質としてマグネタイトのような鉄を含有する物質を用いた場合、該担体を1M塩酸に懸濁し、室温下で5時間放置したとき、該塩酸中に溶出してくる鉄は、上記塩酸における鉄含有量として0.5g/ml以下であることが好ましい。
本発明においては、上記固形質の形状は、特に限定されるものではなく、針状、板状、球状、粒状、楕円状、立方形状などいかなる形状であってもよい。これらのうち、球状の粒子であることが好ましい。上記固形質が球状の粒子である場合、該粒子の粒子径は特に限定されるものではないが、小さいことが好ましい。具体的には、5nm〜1.5μmであることが好ましい。上記粒子の粒子径が上記範囲内であれば、水に分散しやすく有効表面積を増加させることができる。さらに、上記固形質が磁性体である場合には、磁力により、本発明にかかる担体を効果的に引きつけることができるため、該担体を容易に扱うことが可能となる。
本発明にかかる担体が、球状の粒子である場合、上記粒子(1次粒子)の粒子径(1次粒子径)は、10nm〜2.0μmであることが好ましい。また、上記担体は、上記1次粒子径が10nm〜30nmの微小粒子である場合、該粒子を水系溶媒に懸濁したときの凝集粒子の粒子径(凝集粒子径)は、10nm〜100nmであることが好ましい。一方、上記担体は、上記1次粒子径が30nm〜100nmである場合、1次粒子として安定であることが好ましい。また、該粒子を水系溶媒に懸濁したときに凝集する場合であっても、その凝集粒子の凝集粒子径は、20nm〜500nmであることが好ましい。さらに、上記担体は、上記1次粒子径が100nm〜2.0μmである場合、1次粒子として安定であることが好ましい。また、該粒子を水系溶媒に懸濁したときに凝集する場合であっても、その凝集粒子の凝集粒子径は、100nm〜2.0μmであることが好ましい。なお、上記水系溶媒とは、水や、従来公知の緩衝液を意味する。
本発明にかかる担体は、その粒子径が上記範囲を満足することにより、磁気応答性が良好なため、磁石等の磁力を用いて、該担体を操作することができる。一方、上記範囲よりも、その粒子径が大きい場合、磁気応答性は優れているものの、粒子分散性が著しく低下する傾向がある。また、表面積が減少するため、後述する生体物質分離方法などの用途に用いる場合、生体物質の吸着性が低下する可能性がある。
上記粒子径は、後述する実施例に記載のDLSによる方法で、評価することができる。すなわち、本発明にかかる担体の上記粒子径の数値範囲は、DLSによる方法で評価した場合に満足すればよいが、さらに、後述する実施例に記載の電子顕微鏡による方法で評価した場合でも、上記数値範囲を満足することがより好ましい。
本発明にかかる担体において、上記ケイ素酸化物層は、化学的手法により、緻密に形成されるものである。具体的には、例えば、遷移金属からなる固形質の粒子の表面の構造形に沿って、均一な層となるように制御されたものである。また、本発明にかかる担体において、上記ケイ素酸化物層は、上記固形質の10重量%以上であることが好ましい。上記構成によれば、本発明にかかる担体を水系溶媒に懸濁した際、固形質が該水性溶媒中に溶出してくることがない。なお、上記水系溶媒とは、水や、従来公知の緩衝液を指す。
本発明にかかる担体が、球状の粒子である場合、その比表面積は、1〜100m/gであることが好ましく、3〜15m/gであることがさらに好ましい。上記比表面積が上記範囲内であれば、本発明にかかる担体に対する上記生体物質の吸着性、および該担体からの該生体物質の溶離性(溶離のさせやすさ)のバランスを良好なものとし、上記生体物質の回収率を向上させることができる。一方、上記比表面積が上記範囲よりも大きいと、物理的な作用により、上記生体物質が上記担体に過剰に強く結合し、該担体から該生体物質が溶離しにくくなり、該生体物質の回収率が低下する傾向がある。また、上記比表面積が上記範囲よりも小さいと、上記担体に吸着できる上記生体物質の量が少なくなり、該生体物質の回収率が低下する傾向がある。
本発明にかかる担体は、上記の基本骨格に加えて、カチオン性官能基を有している。上記カチオン性官能基としては、アミノ基、アミノアルキル基、およびイミノ基などの窒素を含有する官能基を挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明にかかる担体は、上記カチオン性官能基を有しつつも、表面電位は、負電荷である。つまり、本発明にかかる担体では、上記カチオン性官能基と、上記ケイ素酸化物層のケイ素酸化物の水酸基とのバランスによって、表面電位が制御されている。具体的には、本発明にかかる担体の表面では、上記水酸基の数が、上記カチオン性官能基の数よりも多いことが好ましい。
本発明にかかる担体の表面電位は、該担体15mgを3mlのイオン交換水に分散させた時の該担体のゼータ電位によって評価されるものである。上記担体の表面電位(ゼータ電位)は、その値が負であればよいが、〜−100Vであることが好ましく、−10〜−90であることがより好ましい。上記ゼータ電位がプラスチャージになると、上記生体物質の回収効率が低下する傾向がある。なお、上記イオン交換水とは、電気伝導度が0.1μS/cm以下のイオン交換水を意味する。
本発明にかかる担体の表面電位が負電荷であるのは、上記条件で測定した場合であって、その他のpH条件や、有機塩や金属塩などの物質を多く含む場合におけるゼータ電位は正電荷であってもよいし、負電荷であってもよい。
本発明にかかる担体は、以上のような構造および物性を有するため、核酸などの生体物質や、各種化学物質の分離、精製、単離、または回収のための担体として好適に用いることができる。また、このような物質の分離用途に加えて、癌温熱療法(磁性流体ハイパーサーミア;Magnetic Fluid Hyperthermia)、核磁気共鳴造影(MRI;Magnetic Resonance Imaging)、ドラッグデリバリーシステム(DDS)、高機能バイオセンサー、有用物質分離精製システム、高機能ファインケミカル、環境負荷低減システム、環境ホルモン物質計測システムなどといったシステムに応用することができる。さらには、本発明にかかる担体は、印刷インキや、顔料などにも利用することができる。
ここで、本発明にかかる担体の製造方法について説明する。
本発明にかかる担体の製造方法は、上記説明した固形質上にケイ素酸化物層を形成すると同時に、上記カチオン性官能基を該ケイ素酸化物層に導入することが可能な方法であればよく、その他の具体的な構成は特に限定されるものではない。例えば、ケイ素含有化合物と、カチオン性剤とを混合した混合物を、触媒存在下で、上記固形質と反応させる方法が挙げられる。
上記方法によれば、上記ケイ素酸化物層の形成と、上記カチオン性官能基の導入とを、2段階の工程ではなく、1段階の工程で行うことができる。それゆえ、担体の製造方法を簡便化できる。
また、上記構成とすれば、反応過程で、上記カチオン性剤のカチオン性官能基が上記固形質と相互作用する。そのため、上記固形質上に、上記ケイ素酸化物層が効率よく形成される。また、上記ケイ素酸化物層を形成した後、上記カチオン性剤を反応させる場合とは異なり、上記ケイ素酸化物層内部にも、カチオン性官能基が導入される。つまり、本発明にかかる担体の製造方法により、製造される担体、すなわち、本発明にかかる担体は、上記ケイ素酸化物層を形成した後、上記カチオン性剤を反応させることにより得られる担体とは、異なる構造となる。それゆえ、上記担体の製造方法により製造される担体は、例えば、核酸のような生体物質の吸着性など、諸物性が異なるものとなる。このように、本発明にかかる担体は、上記ケイ素酸化物層を形成した後、上記カチオン性剤を反応させる方法で得られる担体とは、構造、および物性ともに全く異なるものである。
また、本発明にかかる担体の製造方法によれば、得られる担体の表面に存在するカチオン性官能基の量を容易に制御することができる。それゆえ、後述するような、担体表面上の水酸基の数が、上記カチオン性官能基の数よりも多い担体を容易に製造することができる。
上記ケイ素含有化合物は、Si(OC(式中、nおよびmは、n=1かつm=3、またはn=2〜10の整数かつm=2n+1を満足する)で表されるケイ素エトキシド類であることが好ましい。このようなケイ素エトキシド類としては、例えば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、およびテトラプロポキシシランなどを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、これらのケイ素エトキシド類は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記カチオン性剤は、カチオン性シラン剤であることが好ましい。上記カチオン性シラン剤としては、Si(OC−X(式中、Xはカチオン性官能基を表し、nおよびmは、n=1かつm=3、またはn=2〜10の整数かつm=2n+1を満足する)で表されるカチオン性シラン剤を挙げることができる。より具体的には、アミノプロピルトリエトキシシランを好適に用いることができる。
また、ケイ素含有化合物とカチオン性剤とを混合した混合物を、触媒存在下で、上記固形質と反応させる実施形態において、上記ケイ素含有化合物とカチオン性剤とを混合する割合は、得られる担体の表面電位が負電荷となるように、適宜設定されるものである。本発明では、特に、得られる担体の表面上記水酸基の数が、上記カチオン性官能基の数よりも多くなるように、上記ケイ素含有化合物とカチオン性剤とを混合する割合を設定することが好ましい。より具体的には、上記ケイ素含有化合物に対するカチオン性剤の重量比(重量%)で、0.5〜20とすることが好ましく、0.8〜10とすることがさらに好ましい。上記範囲内とすれば、表面電位が負電荷の担体を効率よく製造することができる。
<II.生体物質の分離方法>
上述したように、本発明にかかる担体には、あらゆる物質を吸着させることができる。特に、負の電荷を有する物質を好適に吸着させることができる。つまり、本発明にかかる担体は、物質を分離、単離、精製、または回収するための担体として用いることができる。したがって、本発明には、本発明にかかる担体を用いて物質を分離、単離、精製、または回収する方法(以下、これらを総称して「物質の分離方法」ともいう)も含まれる。
本発明にかかる物質の分離方法は、本発明にかかる担体を用いて物質を分離、単離、精製、または回収する方法であればよく、その具体的な構成は特に限定されるものではない。分離、単離、精製、または回収する物質等に応じて、それぞれに適した方法を適宜用いればよい。本発明にかかる担体は、生体物質、特に核酸を吸着させる能力が高い。そのため、ここでは、本発明にかかる物質の分離方法の一実施形態として、核酸の分離方法について、以下、詳細に説明する。
本発明にかかる核酸の分離方法は、核酸を含有する試料中の該核酸を本発明にかかる担体に吸着させた後、該担体から該核酸を回収することにより、上記試料から該核酸を分離する方法である。具体的には、本発明にかかる担体と、核酸を含有する試料とを混合し、上記担体に、上記核酸を吸着させる工程(以下、「吸着工程」ともいう)と、上記核酸が吸着した上記担体を、溶媒に接触させることにより、該溶媒中に、上記核酸を溶離させる工程(以下、「溶離工程」ともいう)とを含む構成により実現することができる。また、本発明にかかる核酸の分離方法には、上記吸着工程の前に、上記核酸を含有する試料を調製する工程(以下、「試料調製工程」ともいう)を含んでいてもよい。また、上記吸着工程の後、上記溶離工程の前に、核酸が吸着した担体を洗浄する工程(以下、「洗浄工程」ともいう)を含んでいてもよい。
以下、上記試料調製工程、吸着工程、洗浄工程、および溶離工程について説明する。
(A)試料調製工程
上記試料調製工程では、核酸を含有する試料(以下、「核酸含有試料」ともいう)を調製する。本明細書において、「核酸」とは、任意の可能な構造、即ち二本鎖(ds)核酸、一本鎖(ss)核酸、またはその組み合わせ(部分的dsまたはss)としてのデオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)を包含する意味である。上記DNAには、ゲノムDNA、プラスミドDNA、コスミドDNA、cDNA、合成DNA、およびPCR法等による増幅反応産物などが包含される。また、上記RNAには、mRNA、tRNA、rRNA、全RNA、およびhnRNAなどが包含される。
上記核酸含有試料は、核酸を含有していればよく、特に限定されるものではない。例えば、組織、細胞、バクテリア、ファージ、もしくはウイルスを含む検体もしくは培養液、または組織や細胞のホモジェネートを挙げることができる。また、血液、血漿、リンパ、乳、尿、精液、大脳流体、痰、大便、骨髄試料または他の生物学的体液、および毛髪等を上記核酸含有試料とすることもできる。
さらに、上記核酸含有試料としては、分子生物学的手法において用いられる緩衝液や反応液に核酸を溶解させた溶液等を用いることもできる。このような核酸含有試料としては、ポリメラーゼ・チェーン反応(PCR)、核酸配列決定反応、制限エンドヌクレアーゼもしくは他のヌクレアーゼ消化反応、核酸ハイブリダイゼーションアッセイ、タンパク質−核酸結合アッセイ、抗体−核酸アッセイ、並びにインビトロ転写アッセイおよび/または翻訳アッセイのような核酸を含むインビトロ反応液を挙げることができる。
このような核酸含有試料を調製する方法は、特に限定されるものではなく、核酸含有試料の種類に応じて、従来公知の方法を適宜選択して用いることにより調製することができる。
(B)吸着工程
上記吸着工程では、まず、本発明にかかる担体と、核酸含有試料とを混合する。上記核酸含有試料は、上記試料調製工程において調製した試料であってもよいし、別途調製した試料や、購入した試料等であってもよい。
上記吸着工程では、上記担体と、核酸含有試料とを溶液中で混合することが好ましい。本発明にかかる担体と核酸含有試料との混合液には、カオトロピック試薬を含有させる。上記カオトロピック試薬は、上記試料調製工程において上記核酸含有試料の調製時に添加していてもよいし、上記吸着工程において添加してもよい。また、予め本発明にかかる担体を、カオトロピック試薬を含有する溶媒に分散させておいてもよい。
上記カオトロピック試薬は、特に限定されるものではなく、従来公知のあらゆるカオトロピック試薬を用いることができる。例えば、グアニジウム塩、グアニジウム塩酸塩、グアニジウムチオシアン酸塩、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、過塩素酸ナトリウム、トリクロロ酢酸ナトリウム、およびトリクロロ酢酸カリウムなどを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。また、上記カオトロピック試薬は、1種類を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明にかかる担体と核酸含有試料との混合液にこのようなカオトロピック試薬を含有させることにより、上記担体に上記核酸含有試料に含有される核酸を吸着させることができる。
また、上記混合液におけるカオトロピック試薬の濃度は、用いるカオトロピック試薬の種類により決定されるものである。例えば、上記カオトロピック試薬としてグアニジンチオシアン酸塩を用いる場合、その濃度が0.1〜8Mの範囲とすることが好ましい。
さらに、上記混合液には、界面活性剤を含有させることが好ましい。上記界面活性剤としては、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、およびポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなどの非イオン界面活性剤;ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、およびセチルトリメチルアンモニウムブロミドなどの陽イオン界面活性剤;ドデシル硫酸ナトリウム、N‐ラウロイルサルコシンナトリウム、コール酸ナトリウムなどの陰イオン界面活性剤;ホスファチジルエタノールアミンなどの両性界面活性剤を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
上記混合液に、上記界面活性剤を含有させる場合、上記界面活性剤の濃度は、用いる界面活性剤の種類により決定されるものである。具体的には、用いる界面活性剤の臨界ミセル濃度以上の濃度で用いることが好ましい。例えば、上記界面活性剤としてTriton X−100を用いる場合、その濃度が0.1〜5%の範囲とすることが好ましい。
また、上記混合液のpHは特に限定されるものではなく、酸性、中性、アルカリ性のいずれであってもよい。上記混合液における溶媒は、水系溶媒であることが好ましい。具体的には、水や、従来公知の緩衝液を用いることが好ましい。上記緩衝液としては、例えば、グリシン−塩酸緩衝液、ギ酸緩衝液、クエン酸緩衝液、および酢酸緩衝液等を挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
さらに、上記混合液は、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、およびマンガン塩などのあらゆる金属塩を、1種または2種以上を組み合わせて、含有していてもよい。このとき、上記混合液における上記金属塩の濃度は、用いる金属塩の種類により決定されるものであり、特に限定されるものではない。
また、上記混合液には、水飽和フェノール、緩衝液飽和フェノール、クロロホルム、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、3−メチル−1−プロパノール、アセトン、糖、および、EDTAやDTAのようなキレート剤を含有させてもよい。
本発明にかかる核酸の分離方法では、上記核酸含有試料の調製時に、本発明にかかる担体を添加し、上記試料調製工程と吸着工程とを同時に行い、吸着工程とすることもできる。
(C)洗浄工程
上記洗浄工程では、上記吸着工程後の担体を洗浄する。これにより、上記吸着工程で上記担体に非特異的に吸着した目的物質、すなわち分離対象である核酸以外の物質を除去することができる。したがって、核酸をより高純度に分離することができる。
上記洗浄工程において、上記担体を、上記混合液から取り出して(分離して)、洗浄液を用いて、該担体を洗浄する。この際、上記担体を上記混合液から取り出す(分離する)方法は、特に限定されるものではない。上記担体の形状に応じて、該担体と溶液とを分離する従来公知の方法を適宜選択して用いればよい。例えば、上記担体が粒子の形状である場合、遠心分離、ろ過、またはカラム操作等により、上記担体を上記混合液から分離することができる。さらに、上記担体として、固形質が磁性体である担体を用いれば、磁石等の磁力を用いた磁気分離法により、簡便に、上記担体を上記混合液から分離することができる。そのため、本発明では、上記担体として、固形質が磁性体である担体を用いることが好ましい。
上記洗浄工程において用いる洗浄液は、担体に吸着した核酸を溶離させることなく、該担体に非特異的に吸着した物質を溶離させる(洗い流せる)ものであればよく、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、アルコールやアセトンのような高揮発性有機溶媒を用いることができる。また、70%エタノール(エタノール:水=70:30)を用いることもできる。さらに、上記洗浄液には、上記吸着工程で用いることが可能なカオトロピック試薬を1種類または複数種類含んでいてもよい。
(D)溶離工程
上記溶離工程では、上記吸着工程または洗浄工程後、上記核酸が吸着した上記担体を、溶離液に接触させることにより、該溶離液中に上記核酸を溶離させる。上記溶離液は、上記担体に吸着した核酸を溶離させることが可能なものであればよく、特に限定されるものではない。例えば、水、またはTEバッファー(10mMトリス塩酸緩衝液、1mM EDTA、pH8.0)を好適に用いることができる。このような溶離液を用いれば、回収した核酸を、透析やエタノール沈殿法などの脱塩処理、または濃縮処理を行うことなく、制限酵素やDNAポリメラーゼ等を使用した酵素反応に直接使用することができる。
以上説明したように、本発明にかかる核酸の分離方法によれば、単純な工程で、核酸を高収率、かつ高純度に分離することができる。それゆえ、本発明にかかる核酸の分離方法、および本発明にかかる担体は、核酸抽出精製キットや、核酸自動抽出精製装置等に好適に適用することができる。したがって、本発明には、本発明にかかる核酸の分離方法を実施するためのキットや装置も含まれる。具体的には、本発明にかかる装置としては、上記吸着工程を実施するための吸着反応部、および上記溶離工程を実施するための溶離反応部を備える装置を挙げることができる。さらに、上記装置は、上記試料調製工程を実施するための試料調製部、および/または上記洗浄工程を実施するための洗浄部を備えていてもよい。
ここまで、本発明にかかる物質の分離方法の一実施形態として、核酸の分離方法について詳細に説明したが、本発明にかかる物質の分離方法は、これに限定されるものではない。すなわち、核酸以外の生体物質、例えば、タンパク質、脂質、糖、アミノ酸、またはビタミン等の生体物質の分離方法であってもよい。さらに、生体物質以外の物質を分離方法であってもよい。これら核酸以外の物質を分離する方法においても、上記吸着工程と溶離工程とを少なくとも備えていればよく、その他の具体的な構成は特に限定されない。また、核酸の分離方法と同様に、上記試料調製工程および/または洗浄工程を備えていてもよい。また、各工程で用いる溶媒等は、分離対象である物質に応じて、適宜、変更すればよい。
<III.生体物質分離用キット>
本発明にかかる生体物質分離用キットは、本発明にかかる担体を含有するものであればよく、その他の構成は特に限定されるものでない。具体的には、該キットの用途、例えば、分離する生体物質の種類や、分離後の生体物質の処理などに応じて、それらに適した物質や装置、器具等を含有させることができる。
具体的には、上記生体物質の分離方法に用いる試薬や、実験装置、実験器具を含有するキットが挙げられる。本発明にかかる担体以外に、含有させるこれらの試薬や、実験装置、実験器具は、1種類であってもよいし、複数種類であってもよい。
また、本発明にかかる生体物質分離用キットは、生体物質分離の用途に好ましく用いることができるが、もちろん、該キットを用いて、生体物質以外の物質を分離することができる。したがって、本発明にかかる生体物質分離用キットの用途は、生体物質の分離に限定されるものではなく、あらゆる物質の分離に用いることができる。上記生体物質としては、<I.本発明にかかる担体およびその製造方法>、および<II.本発明にかかる生体物質の分離方法>で例示したような生体物質を、同様に挙げることができる。
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明について、実施例および比較例、並びに図1に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。なお、以下の実施例および比較例における粒子径、比表面積、表面電位、および核酸抽出量は次のようにして評価した。
〔粒子径〕
粒子径については、(1)電子顕微鏡による方法、および(2)動的光散乱(DLS)による方法を用いて測定した。なお、後に示す表1では、上記(1)の方法により測定した粒子径を「粒径(SEM)」欄に記載し、上記(2)の方法により測定した粒子径を「粒径(DLS)」欄に記載した。
(1)電子顕微鏡による方法
以下の実施例1、および比較例1〜3で得られた粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)および透過型電子顕微鏡(TEM)にて観測し、空気中における平均粒子サイズを、ケイ素酸化物層と遷移元素層との分布をコントラストの違いにより測定した。
(2)動的光散乱(DLS)による方法
以下の実施例1、および比較例1〜3で得られた粒子15mgを3mlの水に懸濁し、動的光散乱(DLS)によりメジアン径を測定した。
〔比表面積〕
110℃で、30分間の乾燥処理後、窒素BET法により、比表面積を測定した。
〔表面電位〕
以下の実施例1、および比較例1〜3で得られた粒子を水に懸濁し、ゼータ電位を測定した。
〔核酸抽出量〕
培養したOD600=5の大腸菌(DH5α/pET−28(a)/α−syn)1mlを遠心分離にて集菌し、20μg/ml RNase Aを含むTEバッファー(50mM Tris−HCl、5mM EDTA、pH8.0)に懸濁した。その後、0.2M NaOH、1% SDSを加え、撹拌した。さらに、3M酢酸カリウム(pH5.5)を加えた後、遠心分離を行い、上清を回収した。
こうして得られた上記上清に対して、0.5Mグアニジンチオシアン酸塩水溶液と、以下の実施例1、および比較例1〜3で得られた粒子0.5g/ml水懸濁液とを加え、撹拌した。その後、上記粒子を磁石を用いて回収し、溶液を除去した。次に、回収した上記粒子を70%エタノールで洗浄後、さらに100%エタノールで洗浄した。洗浄後、上記粒子を乾燥させた後、水を加えて撹拌した。その後、磁石を用いて、上記粒子を回収し、上記粒子が除去された核酸回収溶液を得た。
こうして得られた核酸回収溶液の吸収スペクトルおよび260nmにおける吸光度を測定した。そして、260nmにおける吸光度から、上記核酸回収溶液中の核酸量を算出し、上記核酸抽出量を評価した。
〔実施例1〕
マグネタイト(三井金属鉱業製マグネタイトF)12.5gをエタノール240mlに分散させた。そこに、28%アンモニア水18mlと水12mlとを加え、撹拌した。さらに、テトラエトキシシラン11.3gおよび3−アミノプロピルトリエトキシシラン1gを添加し、撹拌した。その後、遠心分離を行い、上清を除去し、得られた沈殿物をメタノールと水とで洗浄した。そして、洗浄後の沈殿物を減圧乾燥することにより、粒子を得た。
得られた粒子について、電子顕微鏡により、その形状を観察した。その結果を図1に示す。
さらに、上記粒子について、上記の方法で、粒子径、比表面積、表面電位、および核酸抽出量を評価した。その結果を表1に示す。
表1に示すように、上記粒子は、表面電位が−51.9mVであった。また、核酸抽出量は、292.8μg/mlであり、以下に示す比較例で製造した粒子と比較して、非常に多かった。
〔比較例1〕
3−アミノプロピルトリエトキシシランを添加しなかったことを除いて、実施例1に記載した方法で粒子を製造した。
得られた粒子について、上記の方法で、粒子径、比表面積、表面電位、および核酸抽出量を評価した。その結果を表1に示す。
表1に示すように、上記粒子は、表面電位が−59.7mVであった。しかし、該粒子は、カチオン性官能基を有しないため、核酸抽出量が実施例1の粒子と比較して、大きく劣っていた。
〔比較例2〕
3−アミノプロピルトリエトキシシランの添加量を、2.9gとしたことを除いて、実施例1に記載した方法で粒子を製造した。
得られた粒子について、上記の方法で、粒子径、比表面積、表面電位、および核酸抽出量を評価した。その結果を表1に示す。
表1に示すように、上記粒子は、表面電位が+10.3mVであった。そのため、該粒子は、カチオン性官能基を有しているものの、核酸抽出量は非常に少なかった。
〔比較例3〕
3−アミノプロピルトリエトキシシランの添加量を、5.8gとしたことを除いて、実施例1に記載した方法で粒子を製造した。
得られた粒子について、上記の方法で、粒子径、比表面積、表面電位、および核酸抽出量を評価した。その結果を表1に示す。
表1に示すように、上記粒子は、表面電位が+43.4mVであった。そのため、該粒子は、カチオン性官能基を有しているものの、核酸抽出量は非常に少なかった。
以上の実施例および比較例から、カチオン性官能基を有し、かつ、表面電位が負電荷である粒子を用いることにより、核酸抽出量を格段に向上させることが可能であることが明らかとなった。
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。
以上のように、本発明では、固形質と、該固形質を被覆するケイ素酸化物層とを含む担体において、カチオン性官能基を有し、表面電位が負電荷であるため、核酸のような生体物質を吸着させることができる。そのため、本発明は、生体物質を含め、あらゆる物質を分離、精製、単離、または回収するための担体、および該担体を備えるカラム、および該担体を用いて物質を分離、精製、単離、または回収するキットや装置に利用することができる。さらには、シリカ粒子を用いるあらゆる分野に広く応用することができる。
図1は、本発明の実施例における磁性粒子の電子顕微鏡の観察像を示す図である。

Claims (16)

  1. 固形質と、該固形質を被覆するケイ素酸化物層とを含む担体であって、
    上記ケイ素酸化物層がカチオン性官能基を有し、表面電位が負電荷であることを特徴とし、
    上記固形質は、鉄、フェライト、または酸化鉄を主成分とする磁性体である、担体。
  2. 物質を分離、単離、精製、または回収するための担体である、請求項1に記載の担体。
  3. 上記物質は、負電荷を有する物質である、請求項2に記載の担体。
  4. 上記物質は、生体物質である、請求項2に記載の担体。
  5. 上記ケイ素酸化物層は、上記固形質の10重量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の担体。
  6. 形状が球状の粒子であることを特徴とする請求項1に記載の担体。
  7. 上記粒子の比表面積が、1〜100m/gであることを特徴とする請求項6に記載の担体。
  8. 上記粒子の粒子径が、0.01〜2μmであることを特徴とする請求項6に記載の担体。
  9. 水系溶媒に対して親和性を有することを特徴とする請求項6に記載の担体。
  10. 上記粒子を上記水系溶媒に懸濁したときの凝集粒子径が、0.01μm〜2μmであることを特徴とする請求項9に記載の担体。
  11. 上記固形質上へのケイ素酸化物層の形成時に同時に、上記カチオン性官能基を該ケイ素酸化物層に導入して得られることを特徴とする請求項1に記載の担体。
  12. 上記固形質に対して、ケイ素含有化合物とカチオン性剤との混合物を、触媒存在下で反応させることにより得られることを特徴とする請求項1に記載の担体。
  13. 上記ケイ素含有化合物は、ケイ素エトキシド類であることを特徴とする請求項12に記載の担体。
  14. 上記カチオン性剤は、カチオン性シラン剤であることを特徴とする請求項12に記載の担体。
  15. 上記生体物質は核酸である、請求項4に記載の担体。
  16. 鉄、フェライト、または酸化鉄を主成分とする磁性体である固形質と、該固形質を被覆するケイ素酸化物層とを含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の担体の製造方法であって、
    上記固形質上へのケイ素酸化物層の形成時に同時に、上記カチオン性官能基を該ケイ素酸化物層に導入することを特徴とする担体の製造方法。
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