JP2004095406A - 発光装置の製造方法及び発光装置、並びに電子機器 - Google Patents
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Abstract
【課題】電極の機能を補完する所定の層を簡素な手法で形成し、製造工程の簡素化を図る。
【解決手段】発光装置1は、対向して配置される一対の電極111,12と、その一対の電極の間に配置される発光層とを備える。発光層は、発光波長帯域が互いに異なる複数種類の発光層110b1 、110b2 、110b3 、を含む。一対の電極のうちの一方の電極111の機能を補完する所定の層150を、所定種類の発光層110b3 に対して一方の電極12側に形成しかつ、他の種類の発光層110b1 、110b2 に対して他方の電極111側に形成する。
【選択図】 図4
【解決手段】発光装置1は、対向して配置される一対の電極111,12と、その一対の電極の間に配置される発光層とを備える。発光層は、発光波長帯域が互いに異なる複数種類の発光層110b1 、110b2 、110b3 、を含む。一対の電極のうちの一方の電極111の機能を補完する所定の層150を、所定種類の発光層110b3 に対して一方の電極12側に形成しかつ、他の種類の発光層110b1 、110b2 に対して他方の電極111側に形成する。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、発光層を備える発光装置とその製造方法、並びに電子機器に関する。
【0002】
【従来の技術】
発光層を備える発光装置としては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと称す)素子を備える有機EL表示装置がある。有機EL素子は、対向する一対の電極の間に、発光層を含む有機機能層が配置されるものが一般的である。
【0003】
有機EL表示装置は、カラー表示を行う場合、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色に対応する発光波長帯域を持つ複数種類の発光層を有する。基板上には、上記各色に対応する発光層が所定の配列で配置される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
有機EL表示装置では、輝度、発光効率等の発光特性を向上させるために、発光層と電極との間にその電極の機能を補完する所定の層を配置する場合がある。例えば、発光層と電極(陰極)との間に、電子の注入を促進させる層を配置する。こうした層は、蒸着法により形成するのが一般的である。
【0005】
複数種類の発光層のすべてに対して上記層を同一状態に配置すると、発光層の種類ごとに、発光特性に優劣が生じるおそれがある。そのため、必要な発光層に対してのみ、上記所定の層を配置する場合がある。この場合、上記所定の層を蒸着法によって形成するには、蒸着箇所を特定するためのマスクが必要となる。
【0006】
マスクを用いた蒸着法では、マスクと基板とを高い精度で位置合わせする必要がある。基板上に蒸着箇所が多数ある場合、上記位置合わせは困難である。また、上記蒸着が部分的に行われなかったり、部分的に不十分であったりすると、発光特性の低下を招くおそれがある。
【0007】
本発明は、上述する事情に鑑みてなされたものであり、電極の機能を補完する所定の層を簡素な手法で形成し、製造工程の簡素化を図ることができる発光装置の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、良好な発光特性を有し、製造コストが抑制された発光装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、表示性能の向上及び低価格化を図ることができる電子機器を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の発光装置の製造方法は、対向する電極間に配置される発光層を備える発光装置を製造する方法であって、前記発光層は、発光波長帯域が互いに異なる複数種類の発光層を含み、一方の前記電極の機能を補完する補助層を、所定種類の発光層に対して前記一方の電極側に形成しかつ他の種類の発光層に対して他方の電極側に形成することを特徴としている。
上記の製造方法によれば、所定種類の発光層に対してだけでなく、他の種類の発光層に対しても上記所定の層を形成することから、上記所定の層を形成する際に、その形成箇所の特定を省くことが可能となる。
なお、上記所定の層は、一方の電極の機能を補完するものであり、その一方の電極側に配置されることによってその役割を果たす。他の種類の発光層に対しては、他方の電極側に配置されることから、上記所定の層が他の種類の発光層の特性に与える影響は小さい。
【0009】
上記の製造方法においては、例えば、前記他方の電極が形成された基板上に前記所定種類の発光層を形成する工程と、前記所定種類の発光層が形成された領域を含む前記発光層の形成領域全体に前記所定の層を形成する工程と、前記所定の層の上に前記他の種類の発光層を形成する工程と、前記他の種類の発光層が形成された領域を含む前記発光層の形成領域全体に前記一方の電極を形成する工程と、を有するとよい。
これにより、所定種類の発光層に対して一方の電極側に上記所定の層が形成されかつ、他の種類の発光層に対して他方の電極側に上記所定の層が形成される。また、上記所定の層を形成する際に、上記所定の層の形成箇所の特定が省かれる。
上記所定の層を形成する際の、形成箇所の特定が省かれることにより、マスクを用いない蒸着法など、簡易な手法で上記所定の層を形成することが可能となる。
【0010】
上記所定の層としては、例えば、周期律表1A族または2A族の中から選択される金属元素のフッ化物を主体として構成される。
こうしたフッ化物は、発光層に対する電子注入効率を向上させる。
なお、本明細書において、「主体とする」成分とは、構成成分のうち最も含有量の多い成分のことを意味するものとする。
【0011】
また、本発明の発光装置の製造方法は、対向して配置される一対の電極と、該一対の電極の間に配置される発光層とを備える発光装置を製造する方法であって、前記発光層は、発光波長帯域が互いに異なる複数種類の発光層を含み、前記一対の電極のうちの一方の電極の機能を補完する所定の層を、所定種類の発光層に対して、液滴吐出法を用いて形成することを特徴としている。
上記の製造方法によれば、液滴吐出法を用いることにより、所定種類の発光層に対して、上記所定の層を容易に形成することができる。
【0012】
また、本発明の発光装置は、対向する電極間に配置される発光層とを備える発光装置であって、前記発光層は、発光波長帯域が互いに異なる複数種類の発光層を含み、一方の前記電極の機能を補完する補助層が、所定種類の発光層に対して前記一方の電極側に配置されかつ、他の種類の発光層に対して他方の電極側に配置されていることを特徴としている。
上記の発光装置によれば、上記の製造方法を用いて製造することが可能となることから、電極の機能を補完する所定の層が所望の位置に確実に形成される。また、製造工程の簡素化が図られ、製造コストが抑制される。
【0013】
上記所定の層としては、例えば、周期律表1A族または2A族の中から選択される金属元素のフッ化物を主体として構成される。
こうしたフッ化物は、発光層に対する電子注入効率を向上させる。
【0014】
また、本発明の電子機器は、上述した発光装置を備えることを特徴としている。
上記の電子機器によれば、表示性能の向上及び低価格化が図られる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について図面を参照して説明する。なお、参照する各図において、図面上で認識可能な大きさとするために、縮尺は各層や各部材ごとに異なる場合がある。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、本発明の発光装置を有機EL素子を用いたアクティブマトリクス型の表示装置(有機EL表示装置)に適用した実施の形態例を模式的に示す図である。また、この表示装置1は、薄膜トランジスタを用いたアクティブ型の駆動方式を採用している。
【0017】
表示装置1は、基板2の上に、回路素子としての薄膜トランジスタを含む回路素子部14、画素電極(陽極)111、発光層を含む機能層110、陰極12、及び封止部3等を順次積層した構造からなる。
【0018】
基板2としては、本例ではガラス基板が用いられる。本発明における基板としては、ガラス基板の他に、シリコン基板、石英基板、セラミックス基板、金属基板、プラスチック基板、プラスチックフィルム基板等、電気光学装置や回路基板に用いられる公知の様々な基板が適用される。
基板2上には、発光領域としての複数の画素領域Aがマトリクス状に配列されており、カラー表示を行う場合、例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色に対応する画素領域Aが所定の配列で並ぶ。
各画素領域Aには、画素電極111が配置され、その近傍には信号線132、電源線133、走査線131及び図示しない他の画素電極用の走査線等が配置されている。画素領域Aの平面形状は、図に示す矩形の他に、円形、長円形など任意の形状が適用される。
【0019】
また、封止部3は、水や酸素の侵入を防いで陰極12あるいは機能層110の酸化を防止するものであり、基板2に塗布される封止樹脂、及び基板2に貼り合わされる封止基板3b(封止缶)等を含む。封止樹脂の材料としては、例えば、熱硬化樹脂あるいは紫外線硬化樹脂等が用いられ、特に、熱硬化樹脂の1種であるエポキシ樹脂が好ましく用いられる。封止樹脂は、基板2の周縁に環状に塗布されており、例えば、マイクロディスペンサ等により塗布される。封止基板3bは、ガラスや金属等からなり、基板2と封止基板3bとは封止樹脂を介して張り合わされる。
【0020】
図2は、上記表示装置1の回路構造を示ししている。
図2において、基板2上には、複数の走査線131と、走査線131に対して交差する方向に延びる複数の信号線132と、信号線132に並列に延びる複数の電源線133とが配線されている。また、走査線131及び信号線132の各交点ごとに上記画素領域Aが形成されている。
信号線132には、例えば、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを含むデータ側駆動回路103が接続されている。また、走査線131には、シフトレジスタ及びレベルシフタを含む走査側駆動回路104が接続されている。
【0021】
画素領域Aには、走査線131を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用の第1の薄膜トランジスタ123と、この薄膜トランジスタ123を介して信号線132から供給される画像信号を保持する保持容量135と、保持容量135によって保持された画像信号がゲート電極に供給される駆動用の第2の薄膜トランジスタ124と、この薄膜トランジスタ124を介して電源線133に電気的に接続したときに電源線133から駆動電流が流れ込む画素電極111(陽極)と、画素電極111と対向電極12(陰極)との間に挟み込まれる機能層110とが設けられている。機能層110は、発光層としての有機EL層を含む。
【0022】
画素領域Aでは、走査線131が駆動されて第1の薄膜トランジスタ123がオンとなると、そのときの信号線132の電位が保持容量135に保持され、この保持容量135の状態に応じて、第2の薄膜トランジスタ124の導通状態が決まる。また、第2の薄膜トランジスタ124のチャネルを介して電源線133から画素電極111に電流が流れ、さらに機能層110を通じて対向電極12(陰極)に電流が流れる。そして、このときの電流量に応じて、機能層110が発光する。
【0023】
図3は、上記表示装置1における表示領域の断面構造を拡大した図である。この図3には赤(R)、緑(G)、青(B)の各色に対応する3つの画素領域の断面構造が示されている。前述したように、表示装置1は、基板2上に、TFTなどの回路等が形成された回路素子部14、画素電極(陽極)111、機能層110が形成された発光素子部11、及び陰極12が順次積層されて構成されている。
この表示装置1では、機能層110から基板2側に発した光が、回路素子部14及び基板2を透過して基板2の下側(観測者側)に出射されるとともに、機能層110から基板2の反対側に発した光が陰極12により反射されて、回路素子部14及び基板2を透過して基板2の下側(観測者側)に出射されるようになっている。
なお、陰極12として、透明な材料を用いることにより陰極側から発光する光を出射させることも可能である。
【0024】
回路素子部14には、基板2上にシリコン酸化膜からなる下地保護膜2cが形成され、この下地保護膜2c上に多結晶シリコンからなる島状の半導体膜141が形成されている。なお、半導体膜141には、ソース領域141a及びドレイン領域141bが高濃度Pイオン打ち込みにより形成されている。なお、Pが導入されなかった部分がチャネル領域141cとなっている。
さらに回路素子部14には、下地保護膜2c及び半導体膜141を覆う透明なゲート絶縁膜142が形成され、ゲート絶縁膜142上にはAl、Mo、Ta、Ti、W等からなるゲート電極143(走査線)が形成され、ゲート電極143及びゲート絶縁膜142上には透明な第1層間絶縁膜144aと第2層間絶縁膜144bが形成されている。ゲート電極143は半導体膜141のチャネル領域141cに対応する位置に設けられている。また、第1、第2層間絶縁膜144a、144bを貫通して、半導体膜141のソース、ドレイン領域141a、141bにそれぞれ接続されるコンタクトホール145,146が形成されている。
そして、第2層間絶縁膜144b上には、ITO等からなる透明な画素電極111が所定の形状にパターニングされて形成され、一方のコンタクトホール145がこの画素電極111に接続されている。
また、もう一方のコンタクトホール146が電源線133に接続されている。このようにして、回路素子部14には、各画素電極111に接続された駆動用の薄膜トランジスタ123が形成されている。なお、回路素子部14には、前述した保持容量135及びスイッチング用の薄膜トランジスタ124も形成されているが、図3ではこれらの図示を省略している。
【0025】
発光素子部11は、複数の画素電極111…上の各々に積層された機能層110と、機能層110同士の間に配されて各機能層110を区画するバンク部112とを主体として構成されている。機能層110上には陰極12が配置されている。発光素子である有機EL素子は、画素電極111、陰極12、及び機能層110等を含んで構成される。
ここで、画素電極111は、ITOにより形成されてなり、平面視略矩形にパターニングされて形成されている。この画素電極111の厚さは、50〜200nmの範囲が好ましく、特に150nm程度がよい。
【0026】
バンク部112は、図3に示すように、基板2側に位置する無機物バンク層112a(第1バンク層)と基板2から離れて位置する有機物バンク層112b(第2バンク層)とが積層されて構成されている。
無機物バンク層112aは、例えば、SiO2 、TiO2 等の無機材料からなる。また、有機物バンク層112bは、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の耐熱性、耐溶媒性のあるレジストから形成されている。
【0027】
機能層110は、画素電極111上に積層された正孔注入/輸送層110aと、正孔注入/輸送層110a上に隣接して形成された発光層110bとから構成されている。
正孔注入/輸送層110aは、正孔を発光層110bに注入する機能を有するとともに、正孔を正孔注入/輸送層110a内部において輸送する機能を有する。このような正孔注入/輸送層110aを画素電極111と発光層110bの間に設けることにより、発光層110bの発光効率、寿命等の素子特性が向上する。また、発光層110bでは、正孔注入/輸送層110aから注入された正孔と、陰極12から注入される電子が発光層で再結合し、発光が得られる。
【0028】
発光層110bは、赤色(R)に発光する赤色発光層110b1 、緑色(G)に発光する緑色発光層110b2 、及び青色(B)に発光する青色発光層110b3 、の発光波長帯域が互いに異なる3種類からなり、各発光層110b1 〜110b3 が所定の配列(例えばストライプ状)で配置されている。
【0029】
陰極(対向電極)12は、発光素子部11の全面に形成されており、画素電極111と対になって機能層110に電流を流す役割を果たす。この陰極12は、本例では、カルシウム層12aとアルミニウム層12bとが積層されて構成されている。このとき、発光層に近い側の陰極には仕事関数が低いものを設けることが好ましい。カルシウム層12aの厚さは、例えば2〜50nmの範囲が好ましい。また、アルミニウム層12bは、発光層110bから発した光を基板2側に反射させるもので、Al膜の他、Ag膜、AlとAgの積層膜等からなることが好ましい。また、その厚さは、例えば100〜1000nmの範囲が好ましい。
【0030】
また、発光層110bと陰極12との間には、陰極12の機能を補完するためのフッ化リチウム層150が設けられている。このフッ化リチウム層150は、陰極12から発光層110bへの電子の注入を促進させる役割を有するものである。
【0031】
本例では、赤(R)、緑(G)、青(B)の3種類の発光層110bのうち、青色発光層110b3 に対してのみ、陰極12との間に上記フッ化リチウム層150が形成されている。具体的には、フッ化リチウム層150は、発光層110bの形成領域全面にわたって連続する層をなしており、青色発光層110b3に対してのみ、陰極12側に配置され、他の発光層、すなわち赤色発光層110b1 、及び緑色発光層110b2 に対しては、陽極である画素電極111側に配置されている。
【0032】
すなわち、青色(B)の画素領域においては、基板2側から、画素電極(陽極)111、正孔注入/輸送層110a、発光層110b3 、フッ化リチウム層150、及び陰極12の順に積層されている。また、赤色(R)及び緑色(G)の画素領域においては、基板2側から、画素電極(陽極)111、フッ化リチウム層150、正孔注入/輸送層110a、発光層110b1 (もしくは発光層110b2 )、及び陰極12の順に積層されている。
フッ化リチウム層の厚さは、例えば2〜5nmの範囲が好ましく、特に2nm程度がよい。
【0033】
フッ化リチウム層150が陰極12側に設けられた青色発光層110b3 では、陰極12からの電子注入が促進されて発光が効果的に生じる。一方、赤色発光層110b1 及び緑色発光層110b2 では、陰極12のカルシウム層12aが発光層110bに直接に接して発光層110bに電子を注入する役割を果たす。また、赤色発光層110b1 及び緑色発光層110b2 では、陽極である画素電極111側にフッ化リチウム層150が設けられているが、この層150は非常に薄く、陽極側に配置されることによる発光特性への影響は小さい。なお、フッ化リチウム層150に、水分や金属物質の透過などを防ぐ保護膜としての機能を持たせてもよい。
【0034】
陰極の機能を補完する層150に用いられる材料として、フッ化リチウム(LiF)以外のものを用いてもよい。この層150に用いられる材料は、周期律表1A族または2A族の中から選択される金属元素のフッ化物を主体として構成されるものが好ましい。例えば、NaF、KF、RbF、CsFの他に、BaF2、CaF2、SrF2、MgF2、などが挙げられる。
【0035】
上記構成の本例の表示装置1では、フッ化リチウム層150が発光層110b3 の形成領域全面にわたって形成されていることから、次に説明する表示装置1の製造過程において、そのフッ化リチウム層150が所望の位置に確実に形成される。また、製造工程の簡素化が図られ、製造コストが抑制される。
【0036】
次に、上記表示装置1を製造する方法について図4(a)〜(e)を参照して説明する。なお、基板2上には、それぞれ先の図3に示した、薄膜トランジスタを含む回路素子部14、バンク部112(有機物バンク層112a、無機物バンク層112b)、及び画素電極111がすでに形成されているものとする。
【0037】
本例の製造方法は、(1)正孔注入/輸送層形成工程(青色)、(2)青色発光層形成工程、(3)フッ化リチウム層形成工程、(4)正孔注入/輸送層形成工程(赤色及び緑色)、(5)赤色及び緑色発光層形成工程、(6)陰極形成工程、及び(7)封止工程等を有する。なお、ここで説明する製造方法は一例であって、必要に応じてその他の工程が除かれたり追加されたりする。
【0038】
(1)正孔注入/輸送層形成工程(青色)
まず、図4(a)に示すように、画素電極111が形成された基板2上に、青色用の正孔注入/輸送層110aを形成する。このとき、青色用の画素電極111上のみに正孔注入/輸送層110aを形成し、赤色及び緑色用の画素電極111上には正孔注入/輸送層はまだ形成しない。
正孔注入/輸送層形成工程では、例えば、液滴吐出法(インクジェット法)を用いることにより、正孔注入/輸送層形成材料を含む組成物を画素電極111上に吐出する。その後に乾燥処理及び熱処理を行い、画素電極111上に正孔注入/輸送層110aを形成する。
なお、この正孔注入/輸送層形成工程を含めこれ以降の工程は、水、酸素の無い雰囲気とする事が好ましい。例えば、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
【0039】
液滴吐出法による正孔注入/輸送層の形成手順としては、液滴を吐出するための吐出ヘッド(図示略)に、正孔注入/輸送層の材料を含有する組成物インクを充填し、吐出ヘッドの吐出ノズルを、バンク部112の開口部内に位置する画素電極111に対向させ、吐出ヘッドと基板2とを相対移動させながら、吐出ノズルから1滴当たりの液量が制御されたインク滴を吐出する。その後、吐出後のインク滴を乾燥処理して組成物インクに含まれる極性溶媒を蒸発させることにより、正孔注入/輸送層が形成される。
【0040】
ここで用いる組成物としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸(PSS)等の混合物を、極性溶媒に溶解させた組成物を用いることができる。極性溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)、ノルマルブタノール、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン(NMP)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)及びその誘導体、カルビト−ルアセテート、ブチルカルビト−ルアセテート等のグリコールエーテル類等を挙げることができる。
より具体的な組成物の組成としては、PEDOT/PSS混合物(PEDOT/PSS=1:20):12.52重量%、PSS:1.44重量%、IPA:10重量%、NMP:27.48重量%、DMI:50重量%のものを例示できる。なお、組成物の粘度は2〜20Ps程度が好ましく、特に4〜15cPs程度が良い。
【0041】
(2)青色発光層形成工程
次に、図4(b)に示すように、正孔注入/輸送層110aが積層された青色用の画素電極111上に、青色発光層110b3 を形成する。すなわち、例えば液滴吐出法(インクジェット法)などにより、発光層用材料を含む組成物インクを正孔注入/輸送層110a上に吐出し、その後に乾燥処理及び熱処理して、バンク部112に形成された開口部内に青色発光層110b3 (有機EL層)を形成する。
【0042】
発光層形成工程では、正孔注入/輸送層110aの再溶解を防止するために、発光層形成の際に用いる組成物インクの溶媒として、正孔注入/輸送層110aに対して不溶な無極性溶媒を用いる。この場合、無極性溶媒に対する正孔注入/輸送層110aの表面の濡れ性を高めるために、発光層形成の前に表面改質工程を行うのが好ましい。表面改質工程は、例えば上記無極性溶媒と同一溶媒又はこれに類する溶媒を液滴吐出法(インクジェット法)、スピンコート法又はディップ法等により正孔注入/輸送層110a上に塗布した後に乾燥することにより行う。なお、ここで用いる表面改質用溶媒としては、組成物インクの無極性溶媒と同一なものとして例えば、シクロヘキシルベンゼン、ジハイドロベンゾフラン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等を例示でき、組成物インクの無極性溶媒に類するものとしては、例えばトルエン、キシレン等を例示することができる。
【0043】
また、液滴吐出法による発光層の形成手順としては、例えば吐出ヘッド(図示略)に、青色発光層の材料を含有する組成物インクを充填し、吐出ヘッドの吐出ノズルを、バンク部112の開口部内に位置する青色用の正孔注入/輸送層110aに対向させ、吐出ヘッドと基板2とを相対移動させながら、吐出ノズルから1滴当たりの液量が制御されたインク滴を吐出する。吐出されたインク滴は、正孔注入/輸送層110a上に広がってバンク部112の開口部内に満たされる。続いて、吐出後のインク滴を乾燥処理することにより組成物インクに含まれる無極性溶媒が蒸発し、青色発光層110b3 が形成される。
【0044】
発光層を構成する発光材料としては、フルオレン系高分子誘導体や、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、その他ベンゼン誘導体に可溶な低分子有機EL材料、高分子有機EL材料等が挙げられる。例えば、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等も用いることができる。一方、無極性溶媒としては、正孔注入/輸送層に対して不溶なものが好ましく、例えば、シクロヘキシルベンゼン、ジハイドロベンゾフラン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等を用いることができる。
【0045】
(3)フッ化リチウム層形成工程
次に、図4(c)に示すように、陰極12の機能を補完するフッ化リチウム層150を形成する。前述したように、このフッ化リチウム層は、陰極から発光層への電子の注入を促進させるものである。
具体的には、バンク部112、赤色及び緑色用の画素電極111、及び青色発光層110b3 が形成された領域を含む基板2上の領域全面にフッ化リチウム層150を積層する。これにより、赤色及び緑色の画素領域では、画素電極111上にフッ化リチウム層150が積層され、青色の画素領域では、青色発光層110b3 の上にフッ化リチウム層150が積層される。
フッ化リチウム層150は、例えば蒸着法、スパッタ法、CVD法等で形成することが好ましく、特に蒸着法で形成することが、熱による画素電極111、及び青色発光層110b3 の損傷を防止できる点で好ましい。本例では、基板2上の領域全面にフッ化リチウム層150を形成することから、蒸着法を用いる場合であっても、フッ化リチウム層150の形成箇所を特定する必要がない。つまり、蒸着の際にマスクを用いる必要がなく、位置合わせ等の困難な作業を回避できる。
【0046】
(4)正孔注入/輸送層形成工程(赤色及び緑色)
次に、図4(d)に示すように、フッ化リチウム層150が積層された赤色及び緑色用の画素電極111の上に正孔注入/輸送層110aを形成する。この赤色及び緑色用の正孔注入/輸送層形成工程は、前述した青色用の正孔注入/輸送層形成工程と同様の手順で行われる。すなわち、液滴吐出法(インクジェット法)により、正孔注入/輸送層形成材料を含む組成物インクを、画素電極111上に吐出した後に乾燥処理及び熱処理して、バンク部112に形成された開口部内に正孔注入/輸送層110aを形成する。
なお、正孔注入/輸送層形成材料は、赤(R)、緑(G)、青(B)の各発光層110b1〜110b3に対して同じ材料を用いても良く、各発光層毎に変えても良い。
【0047】
(5)赤色及び緑色発光層形成工程
続いて、図4(d)に示すように、フッ化リチウム層150及び正孔注入/輸送層110aが積層された赤色及び緑色用の画素電極111の上に、赤色発光層110b1 及び緑色発光層110b2 をそれぞれ形成する。この赤色及び緑色発光層形成工程は、前述した青色発光層形成工程と同様の手順で行われる。すなわち、液滴吐出法(インクジェット法)により、発光層用材料を含む組成物インクを正孔注入/輸送層110a上に吐出した後に乾燥処理及び熱処理して、バンク部112に形成された開口部内に発光層(有機EL層)を形成する。
【0048】
(6)陰極形成工程
次に、図4(e)に示すように、画素電極(陽極)111と対をなす対向電極(陰極)12を形成する。すなわち、フッ化リチウム層150が積層されたバンク部112、及び発光層110bを含む基板2上の領域全面にカルシウム層12aとアルミニウム層12bとを順次積層して陰極12を形成する。これにより、赤色発光層110b1 及び緑色発光層110b2 が形成された領域と、フッ化リチウム層150が積層された青色発光層110b3 の形成領域とを含む発光層110bの形成領域全体に、陰極12が積層され、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色に対応する有機EL素子がそれぞれ形成される。
陰極12は、例えば蒸着法、スパッタ法、CVD法等で形成することが好ましく、特に蒸着法で形成することが、熱による発光層110bの損傷を防止できる点で好ましい。
また陰極12上に、酸化防止のためにSiO2 、SiN等の保護層を設けても良い。
【0049】
(7)封止工程
最後に、有機EL素子(発光素子)が形成された基板2と封止基板3b(図1参照)とを封止樹脂を介して封止する。例えば、熱硬化樹脂または紫外線硬化樹脂からなる封止樹脂を基板2の周縁部に塗布し、封止樹脂上に封止基板3bを配置する。
封止工程は、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。大気中で行うと、陰極12にピンホール等の欠陥が生じていた場合にこの欠陥部分から水や酸素等が陰極12に侵入して陰極12が酸化されるおそれがあるので好ましくない。
【0050】
この後、基板2の配線に陰極12を接続するとともに、基板2上あるいは外部に設けられる駆動IC(駆動回路)に回路素子部14(図1参照)の配線を接続することにより、本例の表示装置1が完成する。
【0051】
上述した製造方法により、赤(R)、緑(G)、青(B)の3種類の発光層110bのうち、青色発光層110b3 に対してのみ、陰極12との間にフッ化リチウム層150が形成される。具体的には、フッ化リチウム層150が、青色発光層110b3 に対してのみ、陰極12側に配置され、赤色発光層110b1 、及び緑色発光層110b2 に対しては、陽極としての画素電極111側に配置される。これは、青色発光層110b3 を形成するタイミングと赤色及び緑色発光層110b1 、110b2 を形成するタイミングとを、フッ化リチウム層150を形成する工程の前後に分けることで実現されている。また、この製造方法では、フッ化リチウム層150を、発光層110bの形成領域を含む基板2上の全面に形成するので、フッ化リチウム層150の形成箇所の特定が省かれる。そのため、マスクを用いない蒸着法など、簡易な手法でフッ化リチウム層を形成することができる。
【0052】
なお、フッ化リチウム層150は、バンク部112を覆うように配置される。そのため、フッ化リチウム層150は、バンク部112に対する保護膜としても機能する。また、フッ化物に覆われることにより、バンク部112などの各表面には撥液性が付与される。上述した製造方法では、液滴吐出法を用いて、赤色及び緑色用の正孔注入/輸送層や、赤色及び緑色発光層を形成しているが、バンク部112などの各表面に撥液性が付与されることで、スピンコート法を用いてそれらの層を形成することも可能となる。
【0053】
また、フッ化リチウム層150を形成した後に、その層150の表面に対して、親液性処理や撥液性処理を施してもよい。例えば、フッ化リチウム層150が積層されたバンク部112の表面に、親液性を示す領域と、撥液性を示す領域とを適切に形成することにより、バンク部112の開口部内に形成する層の平坦化を図ったり、その層の形成材料を適切に凹部に配置したりできるようになる。この場合、親液処理は、例えば、酸素を処理ガスとするプラズマ処理により実施できる。また、撥液処理は、例えば、4フッ化メタン、テトラフルオロメタン、もしくは四フッ化炭素を処理ガスとするプラズマ処理によって物体表面をフッ化処理(撥液性に処理)することにより実施できる。
【0054】
(第2実施形態)
図5は、本発明の発光装置を、有機EL表示装置に適用した第2の実施形態例を示す図であり、表示領域の断面構造を拡大して示している。以下、この表示装置200について説明する。なお、上述した実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
【0055】
図5において、この表示装置200では、第1実施形態と同様に、赤(R)、緑(G)、青(B)の3種類の発光層110bのうち、青色発光層110b3 に対してのみ、陰極12との間にフッ化リチウム層250が形成されている。すなわち、上記フッ化リチウム層250は、発光層110bの形成領域全面にわたって連続する層をなしており、青色発光層110b3 に対してのみ、陰極12側に配置され、他の発光層、すなわち赤色発光層110b1 、及び緑色発光層110b2 に対しては、陽極である画素電極111側に配置されている。
【0056】
また、この表示装置200では、第1実施形態と異なり、赤色(R)及び緑色(G)の各画素領域において、画素電極111の上に正孔注入/輸送層110aが形成され、その上にフッ化リチウム層250が形成されている。
すなわち、青色(B)の画素領域においては、基板2側から、画素電極(陽極)111、正孔注入/輸送層110a、発光層110b3 、フッ化リチウム層250、及び陰極12の順に積層されている。また、赤色(R)及び緑色(G)の画素領域においては、基板2側から、画素電極(陽極)111、正孔注入/輸送層110a、フッ化リチウム層250、発光層110b1 (もしくは発光層110b2 )、及び陰極12の順に積層されている。
【0057】
次に、上記表示装置200を製造する方法について図6(a)〜(d)を参照して説明する。なお、基板2上には、それぞれ先の図5に示した、薄膜トランジスタを含む回路素子部14、バンク部112(有機物バンク層112a、無機物バンク層112b)、及び画素電極111がすでに形成されているものとする。
【0058】
本例の製造方法は、正孔注入/輸送層形成工程(図6(a))、青色発光層形成工程(図6(a))、フッ化リチウム層形成工程(図6(b))、赤色及び緑色発光層形成工程(図6(c))、陰極形成工程(図6(d))、及び封止工程等を有する。
すなわち、第1実施形態と異なり、フッ化リチウム層250を形成する前に、画素電極111上に、赤、緑、青の各色の正孔注入/輸送層110aをそれぞれ形成する。本実施形態では、正孔注入/輸送層110aを形成する下地が各色ごとに同様なものとなることから、正孔注入/輸送層110aの特性の均一化を図りやすい。
また、この製造方法においても、フッ化リチウム層250を、発光層110bの形成領域を含む基板2上の全面に形成するので、フッ化リチウム層250の形成箇所の特定が省かれる。そのため、マスクを用いない蒸着法など、簡易な手法でフッ化リチウム層を形成することができる。
【0059】
(第3実施形態)
図7は、本発明の発光装置を、有機EL表示装置に適用した第3の実施形態例を示す図であり、表示領域の断面構造を拡大して示している。以下、この表示装置300について説明する。なお、上述した実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
【0060】
図7において、この表示装置300では、第1及び第2実施形態と同様に、赤(R)、緑(G)、青(B)の3種類の発光層110bのうち、青色発光層110b3 に対してのみ、陰極12との間にフッ化リチウム層350が形成されている。
また、この表示装置300では、第1及び第2実施形態と異なり、赤色(R)及び緑色(G)の各画素領域に対しては、陰極12及び画素電極111のいずれの側にも、フッ化リチウム層350が形成されていない。
すなわち、青色(B)の画素領域においては、基板2側から、画素電極(陽極)111、正孔注入/輸送層110a、発光層110b3 、フッ化リチウム層350、及び陰極12の順に積層されている。また、赤色(R)及び緑色(G)の画素領域においては、基板2側から、画素電極(陽極)111、正孔注入/輸送層110a、発光層110b1 (もしくは発光層110b2 )、及び陰極12の順に積層されている。
また、本実施形態では、上記フッ化リチウム層350が、液滴吐出法により形成されている。
【0061】
次に、上記表示装置300を製造する方法について図8(a)〜(d)を参照して説明する。なお、基板2上には、それぞれ先の図7に示した、薄膜トランジスタを含む回路素子部14、バンク部112(有機物バンク層112a、無機物バンク層112b)、及び画素電極111がすでに形成されているものとする。
【0062】
本例の製造方法は、正孔注入/輸送層形成工程(図8(a))、青色発光層形成工程(図8(a))、フッ化リチウム層形成工程(図8(b))、赤色及び緑色発光層形成工程(図8(c))、陰極形成工程(図8(d))、及び封止工程等を有する。なお、青色発光層形成工程とフッ化リチウム層形成工程とは、どちらを先に行ってもよい。
本例の製造方法では、フッ化リチウム層形成工程において、第1及び第2実施形態と異なり、液滴吐出法(インクジェット法)を用いる。
【0063】
液滴吐出法によるフッ化リチウム層の形成手順としては、例えば吐出ヘッド(図示略)に、フッ化リチウムを含有する組成物インクを充填し、吐出ヘッドの吐出ノズルを、バンク部112の開口部内に位置する青色発光層110b3 に対向させ、吐出ヘッドと基板2とを相対移動させながら、吐出ノズルから1滴当たりの液量が制御されたインク滴を吐出する。吐出されたインク滴は、青色発光層110b3 上に広がってバンク部112の開口部内に配置される。続いて、吐出後のインク滴を乾燥処理することにより組成物インクに含まれる溶媒が蒸発し、フッ化リチウム層350が形成される。
【0064】
この製造方法においては、液滴吐出法を用いることにより、赤(R)、緑(G)、青(B)の3種類の発光層110bのうち、青色発光層110b3 に対してのみ、陰極12との間にフッ化リチウム層350を容易に形成することができる。また、液滴吐出法を用いることにより、材料に無駄が少なく、所望の位置に所望の量の材料を的確に配置できるという利点を有する。
【0065】
ここで、液滴吐出法としては、帯電制御方式、加圧振動方式、電気機械変換式、電気熱変換方式、静電吸引方式などが挙げられる。帯電制御方式は、材料に帯電電極で電荷を付与し、偏向電極で材料の飛翔方向を制御してノズルから吐出させるものである。また、加圧振動方式は、材料に超高圧を印加してノズル先端側に材料を吐出させるものであり、制御電圧をかけない場合には材料が直進してノズルから吐出され、制御電圧をかけると材料間に静電的な反発が起こり、材料が飛散してノズルから吐出されない。また、電気機械変換方式(ピエゾ方式)は、ピエゾ素子(圧電素子)がパルス的な電気信号を受けて変形する性質を利用したもので、ピエゾ素子が変形することによって材料を貯留した空間に可撓物質を介して圧力を与え、この空間から材料を押し出してノズルから吐出させるものである。また、電気熱変換方式は、材料を貯留した空間内に設けたヒータにより、材料を急激に気化させてバブル(泡)を発生させ、バブルの圧力によって空間内の材料を吐出させるものである。静電吸引方式は、材料を貯留した空間内に微小圧力を加え、ノズルに材料のメニスカスを形成し、この状態で静電引力を加えてから材料を引き出すものである。また、この他に、電場による流体の粘性変化を利用する方式や、放電火花で飛ばす方式などの技術も適用可能である。
上記液滴吐出技術のうち、ピエゾ方式は、材料に熱を加えないため、材料の組成に影響を与えにくいという利点を有する。
【0066】
図9(a)〜(c)は、本発明の電子機器の実施の形態例を示している。
本例の電子機器は、上述した有機EL表示装置等の本発明の発光装置を表示手段として備えている。
図9(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図9(a)において、符号1000は携帯電話本体を示し、符号1001は前記の表示装置を用いた表示部を示している。
図9(b)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図9(b)において、符号1100は時計本体を示し、符号1101は前記の表示装置を用いた表示部を示している。
図9(c)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図9(c)において、符号1200は情報処理装置、符号1202はキーボードなどの入力部、符号1204は情報処理装置本体、符号1206は前記の表示装置を用いた表示部を示している。
図9(a)〜(c)に示すそれぞれの電子機器は、本発明の発光装置を表示手段として備えているので、表示性能の向上及び低価格化を図ることができる。
【0067】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0068】
【発明の効果】
本発明の発光装置の製造方法によれば、電極の機能を補完する所定の層を、所定種類の発光層に対して簡易な手法で形成することができる。したがって、マスクの位置合わせ等の複雑な工程を省き、製造工程の簡素化を図ることができる。
【0069】
また、本発明の発光装置によれば、電極の機能を補完する所定の層が所望の位置に確実に形成されることから、良好な発光特性を有する。さらに、製造工程の簡素化が図られることにより、製造コストが抑制される。
【0070】
また、本発明の電子機器によれば、良好な発光特性を有しかつ製造コストが抑制された発光装置を備えることから、表示性能の向上及び低価格化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電気光学装置の実施の形態例である有機EL表示装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】アクティブマトリクス型有機EL表示装置の回路の一例を示す回路図である。
【図3】第1実施形態の有機EL表示装置における表示領域の断面構造を拡大して示す図である。
【図4】第1実施形態の表示装置の製造方法を説明するための図である。
【図5】第2実施形態の有機EL表示装置における表示領域の断面構造を拡大して示す図である。
【図6】第2実施形態の表示装置の製造方法を説明するための図である。
【図7】第3実施形態の有機EL表示装置における表示領域の断面構造を拡大して示す図である。
【図8】第3実施形態の表示装置の製造方法を説明するための図である。
【図9】本発明の電子機器の実施の形態例を示す図である。
【符号の説明】
1,200,300…有機EL表示装置(発光装置)、2…基板、12…陰極(対向電極、一方の電極)、110…機能層、110a…正孔注入/輸送層、110b…発光層、111…画素電極(陽極、他方の電極)、112…バンク部、150,250,350…フッ化リチウム層(所定の層)。
【発明の属する技術分野】
本発明は、発光層を備える発光装置とその製造方法、並びに電子機器に関する。
【0002】
【従来の技術】
発光層を備える発光装置としては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと称す)素子を備える有機EL表示装置がある。有機EL素子は、対向する一対の電極の間に、発光層を含む有機機能層が配置されるものが一般的である。
【0003】
有機EL表示装置は、カラー表示を行う場合、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色に対応する発光波長帯域を持つ複数種類の発光層を有する。基板上には、上記各色に対応する発光層が所定の配列で配置される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
有機EL表示装置では、輝度、発光効率等の発光特性を向上させるために、発光層と電極との間にその電極の機能を補完する所定の層を配置する場合がある。例えば、発光層と電極(陰極)との間に、電子の注入を促進させる層を配置する。こうした層は、蒸着法により形成するのが一般的である。
【0005】
複数種類の発光層のすべてに対して上記層を同一状態に配置すると、発光層の種類ごとに、発光特性に優劣が生じるおそれがある。そのため、必要な発光層に対してのみ、上記所定の層を配置する場合がある。この場合、上記所定の層を蒸着法によって形成するには、蒸着箇所を特定するためのマスクが必要となる。
【0006】
マスクを用いた蒸着法では、マスクと基板とを高い精度で位置合わせする必要がある。基板上に蒸着箇所が多数ある場合、上記位置合わせは困難である。また、上記蒸着が部分的に行われなかったり、部分的に不十分であったりすると、発光特性の低下を招くおそれがある。
【0007】
本発明は、上述する事情に鑑みてなされたものであり、電極の機能を補完する所定の層を簡素な手法で形成し、製造工程の簡素化を図ることができる発光装置の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、良好な発光特性を有し、製造コストが抑制された発光装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、表示性能の向上及び低価格化を図ることができる電子機器を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の発光装置の製造方法は、対向する電極間に配置される発光層を備える発光装置を製造する方法であって、前記発光層は、発光波長帯域が互いに異なる複数種類の発光層を含み、一方の前記電極の機能を補完する補助層を、所定種類の発光層に対して前記一方の電極側に形成しかつ他の種類の発光層に対して他方の電極側に形成することを特徴としている。
上記の製造方法によれば、所定種類の発光層に対してだけでなく、他の種類の発光層に対しても上記所定の層を形成することから、上記所定の層を形成する際に、その形成箇所の特定を省くことが可能となる。
なお、上記所定の層は、一方の電極の機能を補完するものであり、その一方の電極側に配置されることによってその役割を果たす。他の種類の発光層に対しては、他方の電極側に配置されることから、上記所定の層が他の種類の発光層の特性に与える影響は小さい。
【0009】
上記の製造方法においては、例えば、前記他方の電極が形成された基板上に前記所定種類の発光層を形成する工程と、前記所定種類の発光層が形成された領域を含む前記発光層の形成領域全体に前記所定の層を形成する工程と、前記所定の層の上に前記他の種類の発光層を形成する工程と、前記他の種類の発光層が形成された領域を含む前記発光層の形成領域全体に前記一方の電極を形成する工程と、を有するとよい。
これにより、所定種類の発光層に対して一方の電極側に上記所定の層が形成されかつ、他の種類の発光層に対して他方の電極側に上記所定の層が形成される。また、上記所定の層を形成する際に、上記所定の層の形成箇所の特定が省かれる。
上記所定の層を形成する際の、形成箇所の特定が省かれることにより、マスクを用いない蒸着法など、簡易な手法で上記所定の層を形成することが可能となる。
【0010】
上記所定の層としては、例えば、周期律表1A族または2A族の中から選択される金属元素のフッ化物を主体として構成される。
こうしたフッ化物は、発光層に対する電子注入効率を向上させる。
なお、本明細書において、「主体とする」成分とは、構成成分のうち最も含有量の多い成分のことを意味するものとする。
【0011】
また、本発明の発光装置の製造方法は、対向して配置される一対の電極と、該一対の電極の間に配置される発光層とを備える発光装置を製造する方法であって、前記発光層は、発光波長帯域が互いに異なる複数種類の発光層を含み、前記一対の電極のうちの一方の電極の機能を補完する所定の層を、所定種類の発光層に対して、液滴吐出法を用いて形成することを特徴としている。
上記の製造方法によれば、液滴吐出法を用いることにより、所定種類の発光層に対して、上記所定の層を容易に形成することができる。
【0012】
また、本発明の発光装置は、対向する電極間に配置される発光層とを備える発光装置であって、前記発光層は、発光波長帯域が互いに異なる複数種類の発光層を含み、一方の前記電極の機能を補完する補助層が、所定種類の発光層に対して前記一方の電極側に配置されかつ、他の種類の発光層に対して他方の電極側に配置されていることを特徴としている。
上記の発光装置によれば、上記の製造方法を用いて製造することが可能となることから、電極の機能を補完する所定の層が所望の位置に確実に形成される。また、製造工程の簡素化が図られ、製造コストが抑制される。
【0013】
上記所定の層としては、例えば、周期律表1A族または2A族の中から選択される金属元素のフッ化物を主体として構成される。
こうしたフッ化物は、発光層に対する電子注入効率を向上させる。
【0014】
また、本発明の電子機器は、上述した発光装置を備えることを特徴としている。
上記の電子機器によれば、表示性能の向上及び低価格化が図られる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について図面を参照して説明する。なお、参照する各図において、図面上で認識可能な大きさとするために、縮尺は各層や各部材ごとに異なる場合がある。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、本発明の発光装置を有機EL素子を用いたアクティブマトリクス型の表示装置(有機EL表示装置)に適用した実施の形態例を模式的に示す図である。また、この表示装置1は、薄膜トランジスタを用いたアクティブ型の駆動方式を採用している。
【0017】
表示装置1は、基板2の上に、回路素子としての薄膜トランジスタを含む回路素子部14、画素電極(陽極)111、発光層を含む機能層110、陰極12、及び封止部3等を順次積層した構造からなる。
【0018】
基板2としては、本例ではガラス基板が用いられる。本発明における基板としては、ガラス基板の他に、シリコン基板、石英基板、セラミックス基板、金属基板、プラスチック基板、プラスチックフィルム基板等、電気光学装置や回路基板に用いられる公知の様々な基板が適用される。
基板2上には、発光領域としての複数の画素領域Aがマトリクス状に配列されており、カラー表示を行う場合、例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色に対応する画素領域Aが所定の配列で並ぶ。
各画素領域Aには、画素電極111が配置され、その近傍には信号線132、電源線133、走査線131及び図示しない他の画素電極用の走査線等が配置されている。画素領域Aの平面形状は、図に示す矩形の他に、円形、長円形など任意の形状が適用される。
【0019】
また、封止部3は、水や酸素の侵入を防いで陰極12あるいは機能層110の酸化を防止するものであり、基板2に塗布される封止樹脂、及び基板2に貼り合わされる封止基板3b(封止缶)等を含む。封止樹脂の材料としては、例えば、熱硬化樹脂あるいは紫外線硬化樹脂等が用いられ、特に、熱硬化樹脂の1種であるエポキシ樹脂が好ましく用いられる。封止樹脂は、基板2の周縁に環状に塗布されており、例えば、マイクロディスペンサ等により塗布される。封止基板3bは、ガラスや金属等からなり、基板2と封止基板3bとは封止樹脂を介して張り合わされる。
【0020】
図2は、上記表示装置1の回路構造を示ししている。
図2において、基板2上には、複数の走査線131と、走査線131に対して交差する方向に延びる複数の信号線132と、信号線132に並列に延びる複数の電源線133とが配線されている。また、走査線131及び信号線132の各交点ごとに上記画素領域Aが形成されている。
信号線132には、例えば、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを含むデータ側駆動回路103が接続されている。また、走査線131には、シフトレジスタ及びレベルシフタを含む走査側駆動回路104が接続されている。
【0021】
画素領域Aには、走査線131を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用の第1の薄膜トランジスタ123と、この薄膜トランジスタ123を介して信号線132から供給される画像信号を保持する保持容量135と、保持容量135によって保持された画像信号がゲート電極に供給される駆動用の第2の薄膜トランジスタ124と、この薄膜トランジスタ124を介して電源線133に電気的に接続したときに電源線133から駆動電流が流れ込む画素電極111(陽極)と、画素電極111と対向電極12(陰極)との間に挟み込まれる機能層110とが設けられている。機能層110は、発光層としての有機EL層を含む。
【0022】
画素領域Aでは、走査線131が駆動されて第1の薄膜トランジスタ123がオンとなると、そのときの信号線132の電位が保持容量135に保持され、この保持容量135の状態に応じて、第2の薄膜トランジスタ124の導通状態が決まる。また、第2の薄膜トランジスタ124のチャネルを介して電源線133から画素電極111に電流が流れ、さらに機能層110を通じて対向電極12(陰極)に電流が流れる。そして、このときの電流量に応じて、機能層110が発光する。
【0023】
図3は、上記表示装置1における表示領域の断面構造を拡大した図である。この図3には赤(R)、緑(G)、青(B)の各色に対応する3つの画素領域の断面構造が示されている。前述したように、表示装置1は、基板2上に、TFTなどの回路等が形成された回路素子部14、画素電極(陽極)111、機能層110が形成された発光素子部11、及び陰極12が順次積層されて構成されている。
この表示装置1では、機能層110から基板2側に発した光が、回路素子部14及び基板2を透過して基板2の下側(観測者側)に出射されるとともに、機能層110から基板2の反対側に発した光が陰極12により反射されて、回路素子部14及び基板2を透過して基板2の下側(観測者側)に出射されるようになっている。
なお、陰極12として、透明な材料を用いることにより陰極側から発光する光を出射させることも可能である。
【0024】
回路素子部14には、基板2上にシリコン酸化膜からなる下地保護膜2cが形成され、この下地保護膜2c上に多結晶シリコンからなる島状の半導体膜141が形成されている。なお、半導体膜141には、ソース領域141a及びドレイン領域141bが高濃度Pイオン打ち込みにより形成されている。なお、Pが導入されなかった部分がチャネル領域141cとなっている。
さらに回路素子部14には、下地保護膜2c及び半導体膜141を覆う透明なゲート絶縁膜142が形成され、ゲート絶縁膜142上にはAl、Mo、Ta、Ti、W等からなるゲート電極143(走査線)が形成され、ゲート電極143及びゲート絶縁膜142上には透明な第1層間絶縁膜144aと第2層間絶縁膜144bが形成されている。ゲート電極143は半導体膜141のチャネル領域141cに対応する位置に設けられている。また、第1、第2層間絶縁膜144a、144bを貫通して、半導体膜141のソース、ドレイン領域141a、141bにそれぞれ接続されるコンタクトホール145,146が形成されている。
そして、第2層間絶縁膜144b上には、ITO等からなる透明な画素電極111が所定の形状にパターニングされて形成され、一方のコンタクトホール145がこの画素電極111に接続されている。
また、もう一方のコンタクトホール146が電源線133に接続されている。このようにして、回路素子部14には、各画素電極111に接続された駆動用の薄膜トランジスタ123が形成されている。なお、回路素子部14には、前述した保持容量135及びスイッチング用の薄膜トランジスタ124も形成されているが、図3ではこれらの図示を省略している。
【0025】
発光素子部11は、複数の画素電極111…上の各々に積層された機能層110と、機能層110同士の間に配されて各機能層110を区画するバンク部112とを主体として構成されている。機能層110上には陰極12が配置されている。発光素子である有機EL素子は、画素電極111、陰極12、及び機能層110等を含んで構成される。
ここで、画素電極111は、ITOにより形成されてなり、平面視略矩形にパターニングされて形成されている。この画素電極111の厚さは、50〜200nmの範囲が好ましく、特に150nm程度がよい。
【0026】
バンク部112は、図3に示すように、基板2側に位置する無機物バンク層112a(第1バンク層)と基板2から離れて位置する有機物バンク層112b(第2バンク層)とが積層されて構成されている。
無機物バンク層112aは、例えば、SiO2 、TiO2 等の無機材料からなる。また、有機物バンク層112bは、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の耐熱性、耐溶媒性のあるレジストから形成されている。
【0027】
機能層110は、画素電極111上に積層された正孔注入/輸送層110aと、正孔注入/輸送層110a上に隣接して形成された発光層110bとから構成されている。
正孔注入/輸送層110aは、正孔を発光層110bに注入する機能を有するとともに、正孔を正孔注入/輸送層110a内部において輸送する機能を有する。このような正孔注入/輸送層110aを画素電極111と発光層110bの間に設けることにより、発光層110bの発光効率、寿命等の素子特性が向上する。また、発光層110bでは、正孔注入/輸送層110aから注入された正孔と、陰極12から注入される電子が発光層で再結合し、発光が得られる。
【0028】
発光層110bは、赤色(R)に発光する赤色発光層110b1 、緑色(G)に発光する緑色発光層110b2 、及び青色(B)に発光する青色発光層110b3 、の発光波長帯域が互いに異なる3種類からなり、各発光層110b1 〜110b3 が所定の配列(例えばストライプ状)で配置されている。
【0029】
陰極(対向電極)12は、発光素子部11の全面に形成されており、画素電極111と対になって機能層110に電流を流す役割を果たす。この陰極12は、本例では、カルシウム層12aとアルミニウム層12bとが積層されて構成されている。このとき、発光層に近い側の陰極には仕事関数が低いものを設けることが好ましい。カルシウム層12aの厚さは、例えば2〜50nmの範囲が好ましい。また、アルミニウム層12bは、発光層110bから発した光を基板2側に反射させるもので、Al膜の他、Ag膜、AlとAgの積層膜等からなることが好ましい。また、その厚さは、例えば100〜1000nmの範囲が好ましい。
【0030】
また、発光層110bと陰極12との間には、陰極12の機能を補完するためのフッ化リチウム層150が設けられている。このフッ化リチウム層150は、陰極12から発光層110bへの電子の注入を促進させる役割を有するものである。
【0031】
本例では、赤(R)、緑(G)、青(B)の3種類の発光層110bのうち、青色発光層110b3 に対してのみ、陰極12との間に上記フッ化リチウム層150が形成されている。具体的には、フッ化リチウム層150は、発光層110bの形成領域全面にわたって連続する層をなしており、青色発光層110b3に対してのみ、陰極12側に配置され、他の発光層、すなわち赤色発光層110b1 、及び緑色発光層110b2 に対しては、陽極である画素電極111側に配置されている。
【0032】
すなわち、青色(B)の画素領域においては、基板2側から、画素電極(陽極)111、正孔注入/輸送層110a、発光層110b3 、フッ化リチウム層150、及び陰極12の順に積層されている。また、赤色(R)及び緑色(G)の画素領域においては、基板2側から、画素電極(陽極)111、フッ化リチウム層150、正孔注入/輸送層110a、発光層110b1 (もしくは発光層110b2 )、及び陰極12の順に積層されている。
フッ化リチウム層の厚さは、例えば2〜5nmの範囲が好ましく、特に2nm程度がよい。
【0033】
フッ化リチウム層150が陰極12側に設けられた青色発光層110b3 では、陰極12からの電子注入が促進されて発光が効果的に生じる。一方、赤色発光層110b1 及び緑色発光層110b2 では、陰極12のカルシウム層12aが発光層110bに直接に接して発光層110bに電子を注入する役割を果たす。また、赤色発光層110b1 及び緑色発光層110b2 では、陽極である画素電極111側にフッ化リチウム層150が設けられているが、この層150は非常に薄く、陽極側に配置されることによる発光特性への影響は小さい。なお、フッ化リチウム層150に、水分や金属物質の透過などを防ぐ保護膜としての機能を持たせてもよい。
【0034】
陰極の機能を補完する層150に用いられる材料として、フッ化リチウム(LiF)以外のものを用いてもよい。この層150に用いられる材料は、周期律表1A族または2A族の中から選択される金属元素のフッ化物を主体として構成されるものが好ましい。例えば、NaF、KF、RbF、CsFの他に、BaF2、CaF2、SrF2、MgF2、などが挙げられる。
【0035】
上記構成の本例の表示装置1では、フッ化リチウム層150が発光層110b3 の形成領域全面にわたって形成されていることから、次に説明する表示装置1の製造過程において、そのフッ化リチウム層150が所望の位置に確実に形成される。また、製造工程の簡素化が図られ、製造コストが抑制される。
【0036】
次に、上記表示装置1を製造する方法について図4(a)〜(e)を参照して説明する。なお、基板2上には、それぞれ先の図3に示した、薄膜トランジスタを含む回路素子部14、バンク部112(有機物バンク層112a、無機物バンク層112b)、及び画素電極111がすでに形成されているものとする。
【0037】
本例の製造方法は、(1)正孔注入/輸送層形成工程(青色)、(2)青色発光層形成工程、(3)フッ化リチウム層形成工程、(4)正孔注入/輸送層形成工程(赤色及び緑色)、(5)赤色及び緑色発光層形成工程、(6)陰極形成工程、及び(7)封止工程等を有する。なお、ここで説明する製造方法は一例であって、必要に応じてその他の工程が除かれたり追加されたりする。
【0038】
(1)正孔注入/輸送層形成工程(青色)
まず、図4(a)に示すように、画素電極111が形成された基板2上に、青色用の正孔注入/輸送層110aを形成する。このとき、青色用の画素電極111上のみに正孔注入/輸送層110aを形成し、赤色及び緑色用の画素電極111上には正孔注入/輸送層はまだ形成しない。
正孔注入/輸送層形成工程では、例えば、液滴吐出法(インクジェット法)を用いることにより、正孔注入/輸送層形成材料を含む組成物を画素電極111上に吐出する。その後に乾燥処理及び熱処理を行い、画素電極111上に正孔注入/輸送層110aを形成する。
なお、この正孔注入/輸送層形成工程を含めこれ以降の工程は、水、酸素の無い雰囲気とする事が好ましい。例えば、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
【0039】
液滴吐出法による正孔注入/輸送層の形成手順としては、液滴を吐出するための吐出ヘッド(図示略)に、正孔注入/輸送層の材料を含有する組成物インクを充填し、吐出ヘッドの吐出ノズルを、バンク部112の開口部内に位置する画素電極111に対向させ、吐出ヘッドと基板2とを相対移動させながら、吐出ノズルから1滴当たりの液量が制御されたインク滴を吐出する。その後、吐出後のインク滴を乾燥処理して組成物インクに含まれる極性溶媒を蒸発させることにより、正孔注入/輸送層が形成される。
【0040】
ここで用いる組成物としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸(PSS)等の混合物を、極性溶媒に溶解させた組成物を用いることができる。極性溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)、ノルマルブタノール、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン(NMP)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)及びその誘導体、カルビト−ルアセテート、ブチルカルビト−ルアセテート等のグリコールエーテル類等を挙げることができる。
より具体的な組成物の組成としては、PEDOT/PSS混合物(PEDOT/PSS=1:20):12.52重量%、PSS:1.44重量%、IPA:10重量%、NMP:27.48重量%、DMI:50重量%のものを例示できる。なお、組成物の粘度は2〜20Ps程度が好ましく、特に4〜15cPs程度が良い。
【0041】
(2)青色発光層形成工程
次に、図4(b)に示すように、正孔注入/輸送層110aが積層された青色用の画素電極111上に、青色発光層110b3 を形成する。すなわち、例えば液滴吐出法(インクジェット法)などにより、発光層用材料を含む組成物インクを正孔注入/輸送層110a上に吐出し、その後に乾燥処理及び熱処理して、バンク部112に形成された開口部内に青色発光層110b3 (有機EL層)を形成する。
【0042】
発光層形成工程では、正孔注入/輸送層110aの再溶解を防止するために、発光層形成の際に用いる組成物インクの溶媒として、正孔注入/輸送層110aに対して不溶な無極性溶媒を用いる。この場合、無極性溶媒に対する正孔注入/輸送層110aの表面の濡れ性を高めるために、発光層形成の前に表面改質工程を行うのが好ましい。表面改質工程は、例えば上記無極性溶媒と同一溶媒又はこれに類する溶媒を液滴吐出法(インクジェット法)、スピンコート法又はディップ法等により正孔注入/輸送層110a上に塗布した後に乾燥することにより行う。なお、ここで用いる表面改質用溶媒としては、組成物インクの無極性溶媒と同一なものとして例えば、シクロヘキシルベンゼン、ジハイドロベンゾフラン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等を例示でき、組成物インクの無極性溶媒に類するものとしては、例えばトルエン、キシレン等を例示することができる。
【0043】
また、液滴吐出法による発光層の形成手順としては、例えば吐出ヘッド(図示略)に、青色発光層の材料を含有する組成物インクを充填し、吐出ヘッドの吐出ノズルを、バンク部112の開口部内に位置する青色用の正孔注入/輸送層110aに対向させ、吐出ヘッドと基板2とを相対移動させながら、吐出ノズルから1滴当たりの液量が制御されたインク滴を吐出する。吐出されたインク滴は、正孔注入/輸送層110a上に広がってバンク部112の開口部内に満たされる。続いて、吐出後のインク滴を乾燥処理することにより組成物インクに含まれる無極性溶媒が蒸発し、青色発光層110b3 が形成される。
【0044】
発光層を構成する発光材料としては、フルオレン系高分子誘導体や、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、その他ベンゼン誘導体に可溶な低分子有機EL材料、高分子有機EL材料等が挙げられる。例えば、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等も用いることができる。一方、無極性溶媒としては、正孔注入/輸送層に対して不溶なものが好ましく、例えば、シクロヘキシルベンゼン、ジハイドロベンゾフラン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等を用いることができる。
【0045】
(3)フッ化リチウム層形成工程
次に、図4(c)に示すように、陰極12の機能を補完するフッ化リチウム層150を形成する。前述したように、このフッ化リチウム層は、陰極から発光層への電子の注入を促進させるものである。
具体的には、バンク部112、赤色及び緑色用の画素電極111、及び青色発光層110b3 が形成された領域を含む基板2上の領域全面にフッ化リチウム層150を積層する。これにより、赤色及び緑色の画素領域では、画素電極111上にフッ化リチウム層150が積層され、青色の画素領域では、青色発光層110b3 の上にフッ化リチウム層150が積層される。
フッ化リチウム層150は、例えば蒸着法、スパッタ法、CVD法等で形成することが好ましく、特に蒸着法で形成することが、熱による画素電極111、及び青色発光層110b3 の損傷を防止できる点で好ましい。本例では、基板2上の領域全面にフッ化リチウム層150を形成することから、蒸着法を用いる場合であっても、フッ化リチウム層150の形成箇所を特定する必要がない。つまり、蒸着の際にマスクを用いる必要がなく、位置合わせ等の困難な作業を回避できる。
【0046】
(4)正孔注入/輸送層形成工程(赤色及び緑色)
次に、図4(d)に示すように、フッ化リチウム層150が積層された赤色及び緑色用の画素電極111の上に正孔注入/輸送層110aを形成する。この赤色及び緑色用の正孔注入/輸送層形成工程は、前述した青色用の正孔注入/輸送層形成工程と同様の手順で行われる。すなわち、液滴吐出法(インクジェット法)により、正孔注入/輸送層形成材料を含む組成物インクを、画素電極111上に吐出した後に乾燥処理及び熱処理して、バンク部112に形成された開口部内に正孔注入/輸送層110aを形成する。
なお、正孔注入/輸送層形成材料は、赤(R)、緑(G)、青(B)の各発光層110b1〜110b3に対して同じ材料を用いても良く、各発光層毎に変えても良い。
【0047】
(5)赤色及び緑色発光層形成工程
続いて、図4(d)に示すように、フッ化リチウム層150及び正孔注入/輸送層110aが積層された赤色及び緑色用の画素電極111の上に、赤色発光層110b1 及び緑色発光層110b2 をそれぞれ形成する。この赤色及び緑色発光層形成工程は、前述した青色発光層形成工程と同様の手順で行われる。すなわち、液滴吐出法(インクジェット法)により、発光層用材料を含む組成物インクを正孔注入/輸送層110a上に吐出した後に乾燥処理及び熱処理して、バンク部112に形成された開口部内に発光層(有機EL層)を形成する。
【0048】
(6)陰極形成工程
次に、図4(e)に示すように、画素電極(陽極)111と対をなす対向電極(陰極)12を形成する。すなわち、フッ化リチウム層150が積層されたバンク部112、及び発光層110bを含む基板2上の領域全面にカルシウム層12aとアルミニウム層12bとを順次積層して陰極12を形成する。これにより、赤色発光層110b1 及び緑色発光層110b2 が形成された領域と、フッ化リチウム層150が積層された青色発光層110b3 の形成領域とを含む発光層110bの形成領域全体に、陰極12が積層され、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色に対応する有機EL素子がそれぞれ形成される。
陰極12は、例えば蒸着法、スパッタ法、CVD法等で形成することが好ましく、特に蒸着法で形成することが、熱による発光層110bの損傷を防止できる点で好ましい。
また陰極12上に、酸化防止のためにSiO2 、SiN等の保護層を設けても良い。
【0049】
(7)封止工程
最後に、有機EL素子(発光素子)が形成された基板2と封止基板3b(図1参照)とを封止樹脂を介して封止する。例えば、熱硬化樹脂または紫外線硬化樹脂からなる封止樹脂を基板2の周縁部に塗布し、封止樹脂上に封止基板3bを配置する。
封止工程は、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。大気中で行うと、陰極12にピンホール等の欠陥が生じていた場合にこの欠陥部分から水や酸素等が陰極12に侵入して陰極12が酸化されるおそれがあるので好ましくない。
【0050】
この後、基板2の配線に陰極12を接続するとともに、基板2上あるいは外部に設けられる駆動IC(駆動回路)に回路素子部14(図1参照)の配線を接続することにより、本例の表示装置1が完成する。
【0051】
上述した製造方法により、赤(R)、緑(G)、青(B)の3種類の発光層110bのうち、青色発光層110b3 に対してのみ、陰極12との間にフッ化リチウム層150が形成される。具体的には、フッ化リチウム層150が、青色発光層110b3 に対してのみ、陰極12側に配置され、赤色発光層110b1 、及び緑色発光層110b2 に対しては、陽極としての画素電極111側に配置される。これは、青色発光層110b3 を形成するタイミングと赤色及び緑色発光層110b1 、110b2 を形成するタイミングとを、フッ化リチウム層150を形成する工程の前後に分けることで実現されている。また、この製造方法では、フッ化リチウム層150を、発光層110bの形成領域を含む基板2上の全面に形成するので、フッ化リチウム層150の形成箇所の特定が省かれる。そのため、マスクを用いない蒸着法など、簡易な手法でフッ化リチウム層を形成することができる。
【0052】
なお、フッ化リチウム層150は、バンク部112を覆うように配置される。そのため、フッ化リチウム層150は、バンク部112に対する保護膜としても機能する。また、フッ化物に覆われることにより、バンク部112などの各表面には撥液性が付与される。上述した製造方法では、液滴吐出法を用いて、赤色及び緑色用の正孔注入/輸送層や、赤色及び緑色発光層を形成しているが、バンク部112などの各表面に撥液性が付与されることで、スピンコート法を用いてそれらの層を形成することも可能となる。
【0053】
また、フッ化リチウム層150を形成した後に、その層150の表面に対して、親液性処理や撥液性処理を施してもよい。例えば、フッ化リチウム層150が積層されたバンク部112の表面に、親液性を示す領域と、撥液性を示す領域とを適切に形成することにより、バンク部112の開口部内に形成する層の平坦化を図ったり、その層の形成材料を適切に凹部に配置したりできるようになる。この場合、親液処理は、例えば、酸素を処理ガスとするプラズマ処理により実施できる。また、撥液処理は、例えば、4フッ化メタン、テトラフルオロメタン、もしくは四フッ化炭素を処理ガスとするプラズマ処理によって物体表面をフッ化処理(撥液性に処理)することにより実施できる。
【0054】
(第2実施形態)
図5は、本発明の発光装置を、有機EL表示装置に適用した第2の実施形態例を示す図であり、表示領域の断面構造を拡大して示している。以下、この表示装置200について説明する。なお、上述した実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
【0055】
図5において、この表示装置200では、第1実施形態と同様に、赤(R)、緑(G)、青(B)の3種類の発光層110bのうち、青色発光層110b3 に対してのみ、陰極12との間にフッ化リチウム層250が形成されている。すなわち、上記フッ化リチウム層250は、発光層110bの形成領域全面にわたって連続する層をなしており、青色発光層110b3 に対してのみ、陰極12側に配置され、他の発光層、すなわち赤色発光層110b1 、及び緑色発光層110b2 に対しては、陽極である画素電極111側に配置されている。
【0056】
また、この表示装置200では、第1実施形態と異なり、赤色(R)及び緑色(G)の各画素領域において、画素電極111の上に正孔注入/輸送層110aが形成され、その上にフッ化リチウム層250が形成されている。
すなわち、青色(B)の画素領域においては、基板2側から、画素電極(陽極)111、正孔注入/輸送層110a、発光層110b3 、フッ化リチウム層250、及び陰極12の順に積層されている。また、赤色(R)及び緑色(G)の画素領域においては、基板2側から、画素電極(陽極)111、正孔注入/輸送層110a、フッ化リチウム層250、発光層110b1 (もしくは発光層110b2 )、及び陰極12の順に積層されている。
【0057】
次に、上記表示装置200を製造する方法について図6(a)〜(d)を参照して説明する。なお、基板2上には、それぞれ先の図5に示した、薄膜トランジスタを含む回路素子部14、バンク部112(有機物バンク層112a、無機物バンク層112b)、及び画素電極111がすでに形成されているものとする。
【0058】
本例の製造方法は、正孔注入/輸送層形成工程(図6(a))、青色発光層形成工程(図6(a))、フッ化リチウム層形成工程(図6(b))、赤色及び緑色発光層形成工程(図6(c))、陰極形成工程(図6(d))、及び封止工程等を有する。
すなわち、第1実施形態と異なり、フッ化リチウム層250を形成する前に、画素電極111上に、赤、緑、青の各色の正孔注入/輸送層110aをそれぞれ形成する。本実施形態では、正孔注入/輸送層110aを形成する下地が各色ごとに同様なものとなることから、正孔注入/輸送層110aの特性の均一化を図りやすい。
また、この製造方法においても、フッ化リチウム層250を、発光層110bの形成領域を含む基板2上の全面に形成するので、フッ化リチウム層250の形成箇所の特定が省かれる。そのため、マスクを用いない蒸着法など、簡易な手法でフッ化リチウム層を形成することができる。
【0059】
(第3実施形態)
図7は、本発明の発光装置を、有機EL表示装置に適用した第3の実施形態例を示す図であり、表示領域の断面構造を拡大して示している。以下、この表示装置300について説明する。なお、上述した実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
【0060】
図7において、この表示装置300では、第1及び第2実施形態と同様に、赤(R)、緑(G)、青(B)の3種類の発光層110bのうち、青色発光層110b3 に対してのみ、陰極12との間にフッ化リチウム層350が形成されている。
また、この表示装置300では、第1及び第2実施形態と異なり、赤色(R)及び緑色(G)の各画素領域に対しては、陰極12及び画素電極111のいずれの側にも、フッ化リチウム層350が形成されていない。
すなわち、青色(B)の画素領域においては、基板2側から、画素電極(陽極)111、正孔注入/輸送層110a、発光層110b3 、フッ化リチウム層350、及び陰極12の順に積層されている。また、赤色(R)及び緑色(G)の画素領域においては、基板2側から、画素電極(陽極)111、正孔注入/輸送層110a、発光層110b1 (もしくは発光層110b2 )、及び陰極12の順に積層されている。
また、本実施形態では、上記フッ化リチウム層350が、液滴吐出法により形成されている。
【0061】
次に、上記表示装置300を製造する方法について図8(a)〜(d)を参照して説明する。なお、基板2上には、それぞれ先の図7に示した、薄膜トランジスタを含む回路素子部14、バンク部112(有機物バンク層112a、無機物バンク層112b)、及び画素電極111がすでに形成されているものとする。
【0062】
本例の製造方法は、正孔注入/輸送層形成工程(図8(a))、青色発光層形成工程(図8(a))、フッ化リチウム層形成工程(図8(b))、赤色及び緑色発光層形成工程(図8(c))、陰極形成工程(図8(d))、及び封止工程等を有する。なお、青色発光層形成工程とフッ化リチウム層形成工程とは、どちらを先に行ってもよい。
本例の製造方法では、フッ化リチウム層形成工程において、第1及び第2実施形態と異なり、液滴吐出法(インクジェット法)を用いる。
【0063】
液滴吐出法によるフッ化リチウム層の形成手順としては、例えば吐出ヘッド(図示略)に、フッ化リチウムを含有する組成物インクを充填し、吐出ヘッドの吐出ノズルを、バンク部112の開口部内に位置する青色発光層110b3 に対向させ、吐出ヘッドと基板2とを相対移動させながら、吐出ノズルから1滴当たりの液量が制御されたインク滴を吐出する。吐出されたインク滴は、青色発光層110b3 上に広がってバンク部112の開口部内に配置される。続いて、吐出後のインク滴を乾燥処理することにより組成物インクに含まれる溶媒が蒸発し、フッ化リチウム層350が形成される。
【0064】
この製造方法においては、液滴吐出法を用いることにより、赤(R)、緑(G)、青(B)の3種類の発光層110bのうち、青色発光層110b3 に対してのみ、陰極12との間にフッ化リチウム層350を容易に形成することができる。また、液滴吐出法を用いることにより、材料に無駄が少なく、所望の位置に所望の量の材料を的確に配置できるという利点を有する。
【0065】
ここで、液滴吐出法としては、帯電制御方式、加圧振動方式、電気機械変換式、電気熱変換方式、静電吸引方式などが挙げられる。帯電制御方式は、材料に帯電電極で電荷を付与し、偏向電極で材料の飛翔方向を制御してノズルから吐出させるものである。また、加圧振動方式は、材料に超高圧を印加してノズル先端側に材料を吐出させるものであり、制御電圧をかけない場合には材料が直進してノズルから吐出され、制御電圧をかけると材料間に静電的な反発が起こり、材料が飛散してノズルから吐出されない。また、電気機械変換方式(ピエゾ方式)は、ピエゾ素子(圧電素子)がパルス的な電気信号を受けて変形する性質を利用したもので、ピエゾ素子が変形することによって材料を貯留した空間に可撓物質を介して圧力を与え、この空間から材料を押し出してノズルから吐出させるものである。また、電気熱変換方式は、材料を貯留した空間内に設けたヒータにより、材料を急激に気化させてバブル(泡)を発生させ、バブルの圧力によって空間内の材料を吐出させるものである。静電吸引方式は、材料を貯留した空間内に微小圧力を加え、ノズルに材料のメニスカスを形成し、この状態で静電引力を加えてから材料を引き出すものである。また、この他に、電場による流体の粘性変化を利用する方式や、放電火花で飛ばす方式などの技術も適用可能である。
上記液滴吐出技術のうち、ピエゾ方式は、材料に熱を加えないため、材料の組成に影響を与えにくいという利点を有する。
【0066】
図9(a)〜(c)は、本発明の電子機器の実施の形態例を示している。
本例の電子機器は、上述した有機EL表示装置等の本発明の発光装置を表示手段として備えている。
図9(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図9(a)において、符号1000は携帯電話本体を示し、符号1001は前記の表示装置を用いた表示部を示している。
図9(b)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図9(b)において、符号1100は時計本体を示し、符号1101は前記の表示装置を用いた表示部を示している。
図9(c)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図9(c)において、符号1200は情報処理装置、符号1202はキーボードなどの入力部、符号1204は情報処理装置本体、符号1206は前記の表示装置を用いた表示部を示している。
図9(a)〜(c)に示すそれぞれの電子機器は、本発明の発光装置を表示手段として備えているので、表示性能の向上及び低価格化を図ることができる。
【0067】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0068】
【発明の効果】
本発明の発光装置の製造方法によれば、電極の機能を補完する所定の層を、所定種類の発光層に対して簡易な手法で形成することができる。したがって、マスクの位置合わせ等の複雑な工程を省き、製造工程の簡素化を図ることができる。
【0069】
また、本発明の発光装置によれば、電極の機能を補完する所定の層が所望の位置に確実に形成されることから、良好な発光特性を有する。さらに、製造工程の簡素化が図られることにより、製造コストが抑制される。
【0070】
また、本発明の電子機器によれば、良好な発光特性を有しかつ製造コストが抑制された発光装置を備えることから、表示性能の向上及び低価格化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電気光学装置の実施の形態例である有機EL表示装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】アクティブマトリクス型有機EL表示装置の回路の一例を示す回路図である。
【図3】第1実施形態の有機EL表示装置における表示領域の断面構造を拡大して示す図である。
【図4】第1実施形態の表示装置の製造方法を説明するための図である。
【図5】第2実施形態の有機EL表示装置における表示領域の断面構造を拡大して示す図である。
【図6】第2実施形態の表示装置の製造方法を説明するための図である。
【図7】第3実施形態の有機EL表示装置における表示領域の断面構造を拡大して示す図である。
【図8】第3実施形態の表示装置の製造方法を説明するための図である。
【図9】本発明の電子機器の実施の形態例を示す図である。
【符号の説明】
1,200,300…有機EL表示装置(発光装置)、2…基板、12…陰極(対向電極、一方の電極)、110…機能層、110a…正孔注入/輸送層、110b…発光層、111…画素電極(陽極、他方の電極)、112…バンク部、150,250,350…フッ化リチウム層(所定の層)。
Claims (7)
- 対向する電極間に配置される発光層を備える発光装置を製造する方法であって、
前記発光層は、発光波長帯域が互いに異なる複数種類の発光層を含み、
一方の前記電極の機能を補完する補助層を、所定種類の発光層に対して前記一方の電極側に形成しかつ他の種類の発光層に対して他方の電極側に形成することを特徴とする発光装置の製造方法。 - 前記他方の電極が形成された基板上に前記所定種類の発光層を形成する工程と、前記所定種類の発光層が形成された領域を含む前記発光層の形成領域全体に前記所定の層を形成する工程と、前記所定の層の上に前記他の種類の発光層を形成する工程と、前記他の種類の発光層が形成された領域を含む前記発光層の形成領域全体に前記一方の電極を形成する工程と、を有することを特徴とする請求項1に記載の発光装置の製造方法。
- 前記所定の層は、周期律表1A族または2A族の中から選択される金属元素のフッ化物を主体として構成されるものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の発光装置の製造方法。
- 対向して配置される一対の電極と、該一対の電極の間に配置される発光層とを備える発光装置を製造する方法であって、
前記発光層は、発光波長帯域が互いに異なる複数種類の発光層を含み、
前記一対の電極のうちの一方の電極の機能を補完する所定の層を、所定種類の発光層に対して、液滴吐出法を用いて形成することを特徴とする発光装置の製造方法。 - 対向する電極間に配置される発光層とを備える発光装置であって、
前記発光層は、発光波長帯域が互いに異なる複数種類の発光層を含み、
一方の前記電極の機能を補完する補助層が、所定種類の発光層に対して前記一方の電極側に配置されかつ、他の種類の発光層に対して他方の電極側に配置されていることを特徴とする発光装置。 - 前記所定の層は、周期律表1A族または2A族の中から選択される金属元素のフッ化物を主体として構成されるものであることを特徴とする請求項5に記載の発光装置。
- 請求項5または請求項6に記載の発光装置を備えることを特徴とする電子機器。
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