JP2004095276A - 有機電界発光素子の製造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】有機材料の真空蒸着によって有機層を形成する場合であっても、その膜厚調整を優れた応答性で安定して制御できるようにする。
【解決手段】ライン状に延びる有機材料の蒸着源13と、前記蒸着源13のライン長手方向と直交する方向に当該蒸着源13と有機電界発光素子の基板2との相対位置を移動させる搬送手段11,12と、前記蒸着源13から前記基板2に蒸着される有機材料の蒸着速度を検出する膜厚モニタ14と、前記膜厚モニタ14での検出結果に基づいて前記搬送手段11,12による相対位置の移動速度を可変させる制御手段15,16とを備えるように、有機電界発光素子の製造装置を構成する。
【選択図】 図1
【解決手段】ライン状に延びる有機材料の蒸着源13と、前記蒸着源13のライン長手方向と直交する方向に当該蒸着源13と有機電界発光素子の基板2との相対位置を移動させる搬送手段11,12と、前記蒸着源13から前記基板2に蒸着される有機材料の蒸着速度を検出する膜厚モニタ14と、前記膜厚モニタ14での検出結果に基づいて前記搬送手段11,12による相対位置の移動速度を可変させる制御手段15,16とを備えるように、有機電界発光素子の製造装置を構成する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機電界発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子;以下「有機EL素子」という)の製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、平面型の表示装置として、有機EL素子を発光素子としたもの(以下「有機ELディスプレイ」という)が注目を集めている。この有機ELディスプレイは、バックライトが不要な自発光型のフラットパネルディスプレイであり、自発光型に特有の視野角の広いディスプレイを実現できるという利点を有する。また、必要な画素のみを点灯させればよいため消費電力の点でバックライト型(液晶ディスプレイ等)に比べて有利であるとともに、今後実用化が期待されている高精細度の高速のビデオ信号に対して十分な応答性能を具備すると考えられている。
【0003】
このような有機ELディスプレイに用いられる有機EL素子は、一般に、有機材料を上下から電極(陽極および陰極)で挟み込む構造を持つ。そして、有機材料からなる有機層に対して、陽極から正孔が、陰極から電子がそれぞれ注入され、その有機層にて正孔と電子が再結合して発光が生じるようになっている。このとき、有機EL素子では、10V以下の駆動電圧で数百〜数万cd/m2の輝度が得られる。また、有機材料(蛍光物質)を適宜選択することによって、所望する色彩の発光も得ることができる。これらのことから、有機EL素子は、マルチカラーまたはフルカラーの表示装置を構成するための発光素子として、非常に有望視されている。
【0004】
ところで、有機EL素子における有機層を形成する有機材料は、耐水性が低く、ウエットプロセスを利用できない。そのため、有機層を形成する際には、真空薄膜成膜技術を利用した真空蒸着を行うのが一般的である。すなわち、有機層を形成するための有機EL素子の製造装置としては、真空チャンバ内に有機材料の蒸着源を備えたものが広く用いられている。
【0005】
このような有機EL素子の製造装置では、通常、蒸着源として、有機材料を収めた坩堝と、その坩堝を加熱する熱源とを備えている。そして、熱源が坩堝を加熱して有機材料を蒸発させることで、成膜対象物である有機EL素子の基板上に有機層を成膜するようになっている。また、有機材料の蒸着時には、膜厚モニタを使用して蒸着源から飛散する有機材料の蒸着速度を検出し、その蒸着速度が一定になるように熱源の加熱温度をコントロールする、いわゆる蒸着レート制御が行われ、これにより有機層の膜厚が調整されるようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の有機EL素子の製造装置では、蒸着レート制御による有機層の膜厚調整を行っているため、以下に述べるような難点が生じるおそれがある。有機材料は、他の蒸着材料に比べて熱効率が悪い。また、有機材料の蒸着温度は、真空蒸着の温度としては比較的低温である。そのために、熱源の加熱温度をコントロールしても、その温度変化が有機材料に伝わって蒸着速度が変化するまでに、ある程度の時間を要してしまう。さらに、坩堝内の有機材料の量が経時的に変化すると、その影響によって蒸着速度も変化してしまう。これらのことから、蒸着レート制御では、制御の応答性の点で必ずしも優れているとは言えず、結果として不安定な制御系になってしまう可能性がある。さらに、制御の応答性が優れていないことから、熱源の加熱温度をコントロールした直後は、蒸着速度が安定しない。したがって、蒸着速度が安定するまでの間に蒸着源から飛散する有機材料が、有機層の成膜に用いられずに無駄になってしまう可能性があるため、材料使用効率やコスト等の観点からは非常に好ましくない。
【0007】
そこで、本発明は、有機材料の真空蒸着によって有機層を形成する場合に、その膜厚調整を優れた応答性で安定して制御することのできる有機EL素子の製造装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために案出された有機EL素子の製造装置である。すなわち、ライン状に延びる有機材料の蒸着源と、前記蒸着源のライン長手方向と直交する方向に当該蒸着源と有機電界発光素子の基板との相対位置を移動させる搬送手段と、前記蒸着源から前記基板に蒸着される有機材料の蒸着速度を検出する膜厚モニタと、前記膜厚モニタでの検出結果に基づいて前記搬送手段による相対位置の移動速度を可変させる制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0009】
上記構成の有機EL素子の製造装置によれば、蒸着源と有機電界発光素子の基板との相対位置の移動速度と、基板に蒸着される有機材料の膜厚とは、逆比例の関係となる。すなわち、速度が速くなると膜厚が薄くなり、速度が遅くなると膜厚が厚くなる傾向にある。この関係を利用して、膜厚モニタから得られた蒸着速度の検出結果から基板に蒸着される膜厚を予測し、制御手段が搬送手段による相対位置の移動速度を可変させることで、基板に蒸着される有機材料の膜厚を所望値に調整する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明に係る有機EL素子の製造装置について説明する。図1は本発明に係る製造装置の概略構成例を示す模式図、図2はその要部の構成例を示す模式図、図3はその製造装置によって製造される有機EL素子の概略構成例を示す模式図、図4はその有機EL素子を製造する際に用いられる治具の概略構成例を示す模式図である。
【0011】
先ず、はじめに、有機EL素子の概略構成について簡単に説明する。図3に示すように、本実施形態において製造される有機EL素子1は、有機ELディスプレイを構成するためのガラス基板2上に形成されたもので、それぞれ異なる材料からなる複数の有機層1a〜1dが順次積層されてなるものである。なお、ここでは、積層される層数が四つである場合を例に挙げているが、これに限定されないことは勿論である。
【0012】
ガラス基板2上には、図示はしていないが、例えばR,G,Bの各色成分に対応した複数の有機EL素子1が、所定パターンに従ってマトリクス状に縦横に配列されている。各有機EL素子1の間の相違は、有機層1a〜1dを構成する有機材料(蛍光物質)にある。これにより、これらガラス基板2および各有機EL素子1を備えて構成された有機ELディスプレイでは、各有機EL素子に所定波長の光を選択的に発生させて、カラー画像の表示を行うことが可能になるのである。
【0013】
このようなカラー画像を表示するための各有機EL素子1の配列は、例えばR,G,Bの各色成分に対応したパターニング成膜によって各有機EL素子1を形成することで実現可能となる。ここで、パターニング成膜のために用いられる搬送治具の概略構成について説明する。パターニング成膜は、図4に示すように、平板状に形成され、鉄(Fe)やニッケル(Ni)等の強磁性体からなるメタルマスク3を用いて行われる。メタルマスク3には、所定の成膜パターンに対応した複数の開孔3aが穿設されている。そして、被成膜物であるガラス基板2の一面側を覆うようにそのガラス基板2と密着した状態で、ガラス基板2の他面側に配された電磁石4が発生させる磁力によって固定されるようになっている。このように構成される一体型の搬送治具によって、ガラス基板2上には、所定パターンの成膜を行うことができ、また複数種類のメタルマスク3を用意すれば異なるパターンの多層成膜を行うこともでき、結果として複数の有機EL素子1を縦横に配列することができるのである。
【0014】
次に、以上のような有機EL素子1を製造するための製造装置、特にここではガラス基板2上に有機層1a〜1dを形成するための製造装置について説明する。図1に示すように、有機層1a〜1dを形成する製造装置は、真空チャンバ(ただし不図示)内に、基板搬送装置11および基板送り機構12と、蒸着源13と、膜厚モニタ14とが配設されてなるものである。さらには、真空チャンバの外側に制御装置15および電動機駆動装置16が設けられているものである。
【0015】
基板搬送装置11は、真空蒸着の対象物であるガラス基板2と蒸着源13との相対位置を移動させるものである。さらに詳しくは、例えばベルト方式の搬送コンベアからなるものであり、ガラス基板2を無端ベルト上に載せて一方向へ搬送するものである。
【0016】
基板送り機構12は、基板搬送装置11の駆動源として機能するものである。すなわち、基板搬送装置11を動作させるためにその基板搬送装置11に付設されたもので、例えば速度制御されるサーボモータおよび減速・駆動伝達ギアから構成されたものである。
【0017】
なお、基板搬送装置11および基板送り機構12は、ガラス基板2と蒸着源13との相対位置を移動させるものであるのであれば、搬送コンベアやサーボモータ等からなるものでなくても構わない。すなわち、脱ガスの対策等は必要となるが、例えばガラス基板2を搭載した台車をワイヤに接続し、そのワイヤを外部からサーボモータ等によって定速駆動して引っ張る、といったシンプルな方式を採用したものや、あるいはステッピングモータによって駆動されるボールネジを利用した搬送方式を採用したものであっても構わない。
【0018】
蒸着源13は、ガラス基板2上に有機材料を蒸着して薄膜を形成するためのものである。ここで、この蒸着源13について詳しく説明する。図2(a)に示すように、ここで説明する蒸着源13は、いわゆるライン型と呼ばれるもので、基板搬送装置11によるガラス基板2の移動方向と略直交する方向にガラス基板2の幅を充分にカバーするだけの長さでライン状に一列に並ぶ複数の開口13aを有している。さらに詳しくは、図2(b)に示すように、上面に開口13aを有し内部に有機材料13bを収めた耐熱性の容器である坩堝13cと、その坩堝13cの下方に設置された熱源13dとを備えている。熱源13dは、例えば熱伝対および温度調整器により構成され温度制御されたヒータからなるものである。このような構成により、蒸着源13では、熱源13dが坩堝13cを加熱すると、その中の有機材料13bが蒸発し、開口13aを通って飛散するようになっている。
【0019】
また、蒸着源13は、図1に示すように、基板搬送装置11によるガラス基板2の移動方向に沿って複数のものが並列配置されている。したがって、基板搬送装置11がガラス基板2を移動させると、そのガラス基板2は、各蒸着源13と対向する位置を順に通過することになる。これらの各蒸着源13の坩堝13c内には、積層構造の有機層1a〜1dに対応した、互いに異なる種類の有機材料13bを収めておくことが考えられる。
【0020】
膜厚モニタ14は、ガラス基板2上に形成される有機層の膜厚を制御するために、蒸着源13からの有機材料の蒸着速度を検出するものである。具体的には、例えば水晶振動子を用いた膜厚センサからなるもので、その発振周波数が水晶振動子上に形成される膜厚と相関があることを利用し、発振周波数の変化量からガラス基板2上に形成される薄膜(有機層)の蒸着速度を計測するものである。ただし、膜厚モニタ14は、複数の蒸着源13が並列配置されていることから、各蒸着源13に個別に対応するように、ガラス基板2の移動方向に沿って複数のものが配設されている。
【0021】
制御装置15は、製造装置全体の動作制御を行うためのものであり、例えばプログラムすることができるシーケンサにアナログ入力ユニットとモータコントロールユニットとを付加したものである。そして、膜厚モニタ14によって得られた蒸着速度をアナログ入力により取り込み、プログラミングされた回路によって演算を行い、その演算結果に応じた速度指令を電動機駆動装置16に対してアナログ出力したり、またプログラミングされた回路の演算結果を温度指令として各蒸着源13の熱源13dに対してアナログ出力するものである。
【0022】
電動機駆動装置16は、基板搬送装置11が移動させるガラス基板2の蒸着源13上での通過速度を制御するためのものである。具体的には、例えば電圧指令入力により速度制御を行うサーボモータドライバで構成され、制御装置15からの速度指令を受けて、基板送り機構12の動作速度を可変させるものである。
【0023】
続いて、以上のように構成された製造装置における処理動作例について説明する。ガラス基板2上への有機層1a〜1dの形成にあたっては、成膜対象物となるガラス基板2がハンドリングロボット等によって真空チャンバ内に搬送される。そして、蒸着源13の坩堝13cが熱源13dにより加熱温度制御され、その中の有機材料13bが蒸発し開口13aを通って飛散している状態で、その蒸着源13の上方側を基板搬送装置11および基板送り機構12がガラス基板2を一定速度で移動させる。これにより、そのガラス基板2には、有機材料の薄膜(有機層)が成膜されることになる。
【0024】
ただし、このときにガラス基板2上に形成される膜厚は、基板搬送装置11および基板送り機構12によるガラス基板2の移動速度、すなわちガラス基板2が蒸着源13の上方側を通過する速度と逆比例関係にあり、速度が速くなると膜厚が薄くなり、速度が遅くなると膜厚が厚くなる傾向にある。
【0025】
このことから、制御装置15では、ガラス基板2上に有機層1a〜1dを形成する際に、膜厚モニタ14によって得られた蒸着速度をアナログ入力により取り込み、その蒸着速度に基づいてガラス基板2上に蒸着される膜厚を演算によって予測する。そして、その演算結果に応じた速度指令を電動機駆動装置16に対してアナログ出力し、これによりガラス基板2の移動速度を可変させる。つまり、制御装置15では、蒸着源13の上方側を通過するガラス基板2の移動速度を可変させることで、熱源13dの加熱温度制御に依存することなく、そのガラス基板2上に蒸着される有機材料の膜厚、すなわち有機層1a〜1dの膜厚が所望の値となるように調整する。
【0026】
ガラス基板2の移動速度を変化させることは、電動機駆動装置16に対して速度指令を与えることによって行えるため、非常に安定して制御することが可能となる。しかも、制御装置15や電動機駆動装置16等の処理能力や接続環境等の設定により、優れた応答性を実現することも可能となる。したがって、膜厚モニタ14によって得られた蒸着速度を基にしつつ、ガラス基板2の移動速度の可変制御によって膜厚調整を行えば、応答性に優れた制御を安定して行うことが可能となるので、速度を細かく調整することで細かい膜厚調整をすることができ、ガラス基板2上に成膜される膜厚の精度を向上させることができる。さらには、応答性が良くなることから、無駄に消費する有機材料が生じてしまうのを回避することができ、材料使用効率やコスト等の観点からも非常に好ましいと言える。
【0027】
ところで、速度可変制御を行う際には、ガラス基板2上に形成する有機層が一層のみであれば、一つの蒸着源13の上方側を通過するようにそのガラス基板2を移動させればよい。そのため、制御装置15は、形成すべき有機層についての所望膜厚値から一意に決まる移動速度となるように、電動機駆動装置16に対して速度指令を与えればよい。
【0028】
ところが、ガラス基板2上に積層構造の有機層1a〜1dを連続的に形成すべく、複数の蒸着源13が配設されており、その上方側をガラス基板2が順に通過する場合には、各蒸着源13における蒸着速度が互いに異なることも考えられる。つまり、各蒸着源13に対応して設けられた各膜厚モニタ14によって得られる蒸着速度は、それぞれが互いに異なっていることもあり得る。しかも、各有機層1a〜1dについての所望膜厚値も一律であるとは限らない。したがって、このような場合には、各膜厚モニタ14によって得られる蒸着速度を基に、どのようなガラス基板2の移動速度を決定すればよいかが問題となる。
【0029】
この点については、個々の膜厚を各々調整しようとすると制御の煩雑化や複雑化等を招くことから、各膜厚モニタ14によって得られる蒸着速度を基に、各有機層1a〜1dのトータル膜厚を演算によって予測し、その演算結果から一意に決まる速度指令を電動機駆動装置16に対してアナログ出力し、これによりガラス基板2の移動速度を可変させればよい。つまり、制御装置15では、各蒸着源13の上方側におけるガラス基板2の通過速度を一定にするとともに、その一定速度を可変させることで、熱源13dの加熱温度制御に依存することなく、有機層1a〜1dのトータル膜厚が所望の値となるように調整する。
【0030】
このようにすれば、複数の蒸着源13を並べてインラインで成膜を行う場合であっても、膜厚モニタ14によって得られた蒸着速度を基にしつつ、ガラス基板2の移動速度の可変制御によって膜厚調整を行うことができる。しかも、有機EL素子1を構成した場合、各有機層1a〜1dの個々の膜厚よりもそのトータル膜厚のほうが、有機EL素子1としての機能に大きな影響を及ぼす。したがって、トータル膜厚が所望の値となるような膜厚調整を行えば、有機EL素子1を構成する上で非常に好適であると言える。
【0031】
また、制御装置15は、上述したような電動機駆動装置16に対する速度制御のみ、すなわちガラス基板2の移動速度の可変制御のみによって、熱源13dの加熱温度制御に依存することなく、ガラス基板2上に形成される有機層1a〜1dの膜厚を調整するのではなく、移動速度の可変制御と熱源13dの加熱温度制御とを併用するようにしてもよい。
【0032】
例えば、制御装置15は、各蒸着源13の熱源13dに対して温度指令をアナログ出力することが可能なことから、従来における場合と同様に膜厚モニタ14によって得られた蒸着速度に基づいて蒸着レート制御を行い、オフセット等で生じる膜厚の誤差のように蒸着レート制御では調整できない部分に対して上述したようなガラス基板2の移動速度の可変制御を適用して、これによりガラス基板2上に形成される有機層1a〜1dの膜厚の微調整(蒸着レート制御に対する補正)を行うようにすることが考えられる。
【0033】
一方、これとは逆に、上述したガラス基板2の移動速度の可変制御を行った結果に対して補正を行うべく、熱源13dの加熱温度制御による蒸着レート制御を適用し、これによりガラス基板2上に形成される有機層1a〜1dの膜厚を微調整するようにしてもよい。
【0034】
いずれの場合であっても、膜厚モニタ14によって得られた蒸着速度を基にしつつ、移動速度の可変制御と熱源13dの加熱温度制御とを併用すれば、膜厚調整の更なる高精度化が期待できるようになる。
【0035】
なお、本実施形態では、本発明の実施の好適な具体例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々変形することが可能である。すなわち、本実施形態で説明した製造装置を構成する一連の構成要素の材質、形状、動作機構等は、必ずしもこれらに限られるものではなく、各構成要素の機能を同様に確保することが可能な限り、自由に変更可能である。この場合においても、本実施形態の場合と同様の効果を得ることができる。例えば、本実施形態では、板状のガラス基板2上に有機EL素子1を形成する場合を例に挙げて説明したが、樹脂材料からなるフィルム素材等のようなロール状の基板であっても、全く同様に対応することができる。
【0036】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明に係る有機EL素子の製造装置では、膜厚モニタから得られた蒸着速度の検出結果を基に、制御手段が搬送手段による相対位置の移動速度を可変させることで、基板に蒸着される有機材料の膜厚を所望値に調整するので、有機材料の真空蒸着によって有機層を形成する場合であっても、その膜厚調整を優れた応答性で安定して制御することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る有機EL素子の製造装置の概略構成例を示す模式図である。
【図2】本発明に係る有機EL素子の製造装置の要部の構成例を示す模式図であり、(a)はその斜視図、(b)は側断面図である。
【図3】有機EL素子の概略構成例を示す模式図である。
【図4】有機EL素子を製造する際に用いられる治具の構成例を示す模式図である。
【符号の説明】
1…有機EL素子、1a,1b,1c,1d…有機層、2…ガラス基板、11…基板搬送装置、12…基板送り機構、13…蒸着源、13a…開口、13b…有機材料、13c…坩堝、14d…熱源、14…膜厚モニタ、15…制御装置、16…電動機駆動装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機電界発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子;以下「有機EL素子」という)の製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、平面型の表示装置として、有機EL素子を発光素子としたもの(以下「有機ELディスプレイ」という)が注目を集めている。この有機ELディスプレイは、バックライトが不要な自発光型のフラットパネルディスプレイであり、自発光型に特有の視野角の広いディスプレイを実現できるという利点を有する。また、必要な画素のみを点灯させればよいため消費電力の点でバックライト型(液晶ディスプレイ等)に比べて有利であるとともに、今後実用化が期待されている高精細度の高速のビデオ信号に対して十分な応答性能を具備すると考えられている。
【0003】
このような有機ELディスプレイに用いられる有機EL素子は、一般に、有機材料を上下から電極(陽極および陰極)で挟み込む構造を持つ。そして、有機材料からなる有機層に対して、陽極から正孔が、陰極から電子がそれぞれ注入され、その有機層にて正孔と電子が再結合して発光が生じるようになっている。このとき、有機EL素子では、10V以下の駆動電圧で数百〜数万cd/m2の輝度が得られる。また、有機材料(蛍光物質)を適宜選択することによって、所望する色彩の発光も得ることができる。これらのことから、有機EL素子は、マルチカラーまたはフルカラーの表示装置を構成するための発光素子として、非常に有望視されている。
【0004】
ところで、有機EL素子における有機層を形成する有機材料は、耐水性が低く、ウエットプロセスを利用できない。そのため、有機層を形成する際には、真空薄膜成膜技術を利用した真空蒸着を行うのが一般的である。すなわち、有機層を形成するための有機EL素子の製造装置としては、真空チャンバ内に有機材料の蒸着源を備えたものが広く用いられている。
【0005】
このような有機EL素子の製造装置では、通常、蒸着源として、有機材料を収めた坩堝と、その坩堝を加熱する熱源とを備えている。そして、熱源が坩堝を加熱して有機材料を蒸発させることで、成膜対象物である有機EL素子の基板上に有機層を成膜するようになっている。また、有機材料の蒸着時には、膜厚モニタを使用して蒸着源から飛散する有機材料の蒸着速度を検出し、その蒸着速度が一定になるように熱源の加熱温度をコントロールする、いわゆる蒸着レート制御が行われ、これにより有機層の膜厚が調整されるようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の有機EL素子の製造装置では、蒸着レート制御による有機層の膜厚調整を行っているため、以下に述べるような難点が生じるおそれがある。有機材料は、他の蒸着材料に比べて熱効率が悪い。また、有機材料の蒸着温度は、真空蒸着の温度としては比較的低温である。そのために、熱源の加熱温度をコントロールしても、その温度変化が有機材料に伝わって蒸着速度が変化するまでに、ある程度の時間を要してしまう。さらに、坩堝内の有機材料の量が経時的に変化すると、その影響によって蒸着速度も変化してしまう。これらのことから、蒸着レート制御では、制御の応答性の点で必ずしも優れているとは言えず、結果として不安定な制御系になってしまう可能性がある。さらに、制御の応答性が優れていないことから、熱源の加熱温度をコントロールした直後は、蒸着速度が安定しない。したがって、蒸着速度が安定するまでの間に蒸着源から飛散する有機材料が、有機層の成膜に用いられずに無駄になってしまう可能性があるため、材料使用効率やコスト等の観点からは非常に好ましくない。
【0007】
そこで、本発明は、有機材料の真空蒸着によって有機層を形成する場合に、その膜厚調整を優れた応答性で安定して制御することのできる有機EL素子の製造装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために案出された有機EL素子の製造装置である。すなわち、ライン状に延びる有機材料の蒸着源と、前記蒸着源のライン長手方向と直交する方向に当該蒸着源と有機電界発光素子の基板との相対位置を移動させる搬送手段と、前記蒸着源から前記基板に蒸着される有機材料の蒸着速度を検出する膜厚モニタと、前記膜厚モニタでの検出結果に基づいて前記搬送手段による相対位置の移動速度を可変させる制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0009】
上記構成の有機EL素子の製造装置によれば、蒸着源と有機電界発光素子の基板との相対位置の移動速度と、基板に蒸着される有機材料の膜厚とは、逆比例の関係となる。すなわち、速度が速くなると膜厚が薄くなり、速度が遅くなると膜厚が厚くなる傾向にある。この関係を利用して、膜厚モニタから得られた蒸着速度の検出結果から基板に蒸着される膜厚を予測し、制御手段が搬送手段による相対位置の移動速度を可変させることで、基板に蒸着される有機材料の膜厚を所望値に調整する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明に係る有機EL素子の製造装置について説明する。図1は本発明に係る製造装置の概略構成例を示す模式図、図2はその要部の構成例を示す模式図、図3はその製造装置によって製造される有機EL素子の概略構成例を示す模式図、図4はその有機EL素子を製造する際に用いられる治具の概略構成例を示す模式図である。
【0011】
先ず、はじめに、有機EL素子の概略構成について簡単に説明する。図3に示すように、本実施形態において製造される有機EL素子1は、有機ELディスプレイを構成するためのガラス基板2上に形成されたもので、それぞれ異なる材料からなる複数の有機層1a〜1dが順次積層されてなるものである。なお、ここでは、積層される層数が四つである場合を例に挙げているが、これに限定されないことは勿論である。
【0012】
ガラス基板2上には、図示はしていないが、例えばR,G,Bの各色成分に対応した複数の有機EL素子1が、所定パターンに従ってマトリクス状に縦横に配列されている。各有機EL素子1の間の相違は、有機層1a〜1dを構成する有機材料(蛍光物質)にある。これにより、これらガラス基板2および各有機EL素子1を備えて構成された有機ELディスプレイでは、各有機EL素子に所定波長の光を選択的に発生させて、カラー画像の表示を行うことが可能になるのである。
【0013】
このようなカラー画像を表示するための各有機EL素子1の配列は、例えばR,G,Bの各色成分に対応したパターニング成膜によって各有機EL素子1を形成することで実現可能となる。ここで、パターニング成膜のために用いられる搬送治具の概略構成について説明する。パターニング成膜は、図4に示すように、平板状に形成され、鉄(Fe)やニッケル(Ni)等の強磁性体からなるメタルマスク3を用いて行われる。メタルマスク3には、所定の成膜パターンに対応した複数の開孔3aが穿設されている。そして、被成膜物であるガラス基板2の一面側を覆うようにそのガラス基板2と密着した状態で、ガラス基板2の他面側に配された電磁石4が発生させる磁力によって固定されるようになっている。このように構成される一体型の搬送治具によって、ガラス基板2上には、所定パターンの成膜を行うことができ、また複数種類のメタルマスク3を用意すれば異なるパターンの多層成膜を行うこともでき、結果として複数の有機EL素子1を縦横に配列することができるのである。
【0014】
次に、以上のような有機EL素子1を製造するための製造装置、特にここではガラス基板2上に有機層1a〜1dを形成するための製造装置について説明する。図1に示すように、有機層1a〜1dを形成する製造装置は、真空チャンバ(ただし不図示)内に、基板搬送装置11および基板送り機構12と、蒸着源13と、膜厚モニタ14とが配設されてなるものである。さらには、真空チャンバの外側に制御装置15および電動機駆動装置16が設けられているものである。
【0015】
基板搬送装置11は、真空蒸着の対象物であるガラス基板2と蒸着源13との相対位置を移動させるものである。さらに詳しくは、例えばベルト方式の搬送コンベアからなるものであり、ガラス基板2を無端ベルト上に載せて一方向へ搬送するものである。
【0016】
基板送り機構12は、基板搬送装置11の駆動源として機能するものである。すなわち、基板搬送装置11を動作させるためにその基板搬送装置11に付設されたもので、例えば速度制御されるサーボモータおよび減速・駆動伝達ギアから構成されたものである。
【0017】
なお、基板搬送装置11および基板送り機構12は、ガラス基板2と蒸着源13との相対位置を移動させるものであるのであれば、搬送コンベアやサーボモータ等からなるものでなくても構わない。すなわち、脱ガスの対策等は必要となるが、例えばガラス基板2を搭載した台車をワイヤに接続し、そのワイヤを外部からサーボモータ等によって定速駆動して引っ張る、といったシンプルな方式を採用したものや、あるいはステッピングモータによって駆動されるボールネジを利用した搬送方式を採用したものであっても構わない。
【0018】
蒸着源13は、ガラス基板2上に有機材料を蒸着して薄膜を形成するためのものである。ここで、この蒸着源13について詳しく説明する。図2(a)に示すように、ここで説明する蒸着源13は、いわゆるライン型と呼ばれるもので、基板搬送装置11によるガラス基板2の移動方向と略直交する方向にガラス基板2の幅を充分にカバーするだけの長さでライン状に一列に並ぶ複数の開口13aを有している。さらに詳しくは、図2(b)に示すように、上面に開口13aを有し内部に有機材料13bを収めた耐熱性の容器である坩堝13cと、その坩堝13cの下方に設置された熱源13dとを備えている。熱源13dは、例えば熱伝対および温度調整器により構成され温度制御されたヒータからなるものである。このような構成により、蒸着源13では、熱源13dが坩堝13cを加熱すると、その中の有機材料13bが蒸発し、開口13aを通って飛散するようになっている。
【0019】
また、蒸着源13は、図1に示すように、基板搬送装置11によるガラス基板2の移動方向に沿って複数のものが並列配置されている。したがって、基板搬送装置11がガラス基板2を移動させると、そのガラス基板2は、各蒸着源13と対向する位置を順に通過することになる。これらの各蒸着源13の坩堝13c内には、積層構造の有機層1a〜1dに対応した、互いに異なる種類の有機材料13bを収めておくことが考えられる。
【0020】
膜厚モニタ14は、ガラス基板2上に形成される有機層の膜厚を制御するために、蒸着源13からの有機材料の蒸着速度を検出するものである。具体的には、例えば水晶振動子を用いた膜厚センサからなるもので、その発振周波数が水晶振動子上に形成される膜厚と相関があることを利用し、発振周波数の変化量からガラス基板2上に形成される薄膜(有機層)の蒸着速度を計測するものである。ただし、膜厚モニタ14は、複数の蒸着源13が並列配置されていることから、各蒸着源13に個別に対応するように、ガラス基板2の移動方向に沿って複数のものが配設されている。
【0021】
制御装置15は、製造装置全体の動作制御を行うためのものであり、例えばプログラムすることができるシーケンサにアナログ入力ユニットとモータコントロールユニットとを付加したものである。そして、膜厚モニタ14によって得られた蒸着速度をアナログ入力により取り込み、プログラミングされた回路によって演算を行い、その演算結果に応じた速度指令を電動機駆動装置16に対してアナログ出力したり、またプログラミングされた回路の演算結果を温度指令として各蒸着源13の熱源13dに対してアナログ出力するものである。
【0022】
電動機駆動装置16は、基板搬送装置11が移動させるガラス基板2の蒸着源13上での通過速度を制御するためのものである。具体的には、例えば電圧指令入力により速度制御を行うサーボモータドライバで構成され、制御装置15からの速度指令を受けて、基板送り機構12の動作速度を可変させるものである。
【0023】
続いて、以上のように構成された製造装置における処理動作例について説明する。ガラス基板2上への有機層1a〜1dの形成にあたっては、成膜対象物となるガラス基板2がハンドリングロボット等によって真空チャンバ内に搬送される。そして、蒸着源13の坩堝13cが熱源13dにより加熱温度制御され、その中の有機材料13bが蒸発し開口13aを通って飛散している状態で、その蒸着源13の上方側を基板搬送装置11および基板送り機構12がガラス基板2を一定速度で移動させる。これにより、そのガラス基板2には、有機材料の薄膜(有機層)が成膜されることになる。
【0024】
ただし、このときにガラス基板2上に形成される膜厚は、基板搬送装置11および基板送り機構12によるガラス基板2の移動速度、すなわちガラス基板2が蒸着源13の上方側を通過する速度と逆比例関係にあり、速度が速くなると膜厚が薄くなり、速度が遅くなると膜厚が厚くなる傾向にある。
【0025】
このことから、制御装置15では、ガラス基板2上に有機層1a〜1dを形成する際に、膜厚モニタ14によって得られた蒸着速度をアナログ入力により取り込み、その蒸着速度に基づいてガラス基板2上に蒸着される膜厚を演算によって予測する。そして、その演算結果に応じた速度指令を電動機駆動装置16に対してアナログ出力し、これによりガラス基板2の移動速度を可変させる。つまり、制御装置15では、蒸着源13の上方側を通過するガラス基板2の移動速度を可変させることで、熱源13dの加熱温度制御に依存することなく、そのガラス基板2上に蒸着される有機材料の膜厚、すなわち有機層1a〜1dの膜厚が所望の値となるように調整する。
【0026】
ガラス基板2の移動速度を変化させることは、電動機駆動装置16に対して速度指令を与えることによって行えるため、非常に安定して制御することが可能となる。しかも、制御装置15や電動機駆動装置16等の処理能力や接続環境等の設定により、優れた応答性を実現することも可能となる。したがって、膜厚モニタ14によって得られた蒸着速度を基にしつつ、ガラス基板2の移動速度の可変制御によって膜厚調整を行えば、応答性に優れた制御を安定して行うことが可能となるので、速度を細かく調整することで細かい膜厚調整をすることができ、ガラス基板2上に成膜される膜厚の精度を向上させることができる。さらには、応答性が良くなることから、無駄に消費する有機材料が生じてしまうのを回避することができ、材料使用効率やコスト等の観点からも非常に好ましいと言える。
【0027】
ところで、速度可変制御を行う際には、ガラス基板2上に形成する有機層が一層のみであれば、一つの蒸着源13の上方側を通過するようにそのガラス基板2を移動させればよい。そのため、制御装置15は、形成すべき有機層についての所望膜厚値から一意に決まる移動速度となるように、電動機駆動装置16に対して速度指令を与えればよい。
【0028】
ところが、ガラス基板2上に積層構造の有機層1a〜1dを連続的に形成すべく、複数の蒸着源13が配設されており、その上方側をガラス基板2が順に通過する場合には、各蒸着源13における蒸着速度が互いに異なることも考えられる。つまり、各蒸着源13に対応して設けられた各膜厚モニタ14によって得られる蒸着速度は、それぞれが互いに異なっていることもあり得る。しかも、各有機層1a〜1dについての所望膜厚値も一律であるとは限らない。したがって、このような場合には、各膜厚モニタ14によって得られる蒸着速度を基に、どのようなガラス基板2の移動速度を決定すればよいかが問題となる。
【0029】
この点については、個々の膜厚を各々調整しようとすると制御の煩雑化や複雑化等を招くことから、各膜厚モニタ14によって得られる蒸着速度を基に、各有機層1a〜1dのトータル膜厚を演算によって予測し、その演算結果から一意に決まる速度指令を電動機駆動装置16に対してアナログ出力し、これによりガラス基板2の移動速度を可変させればよい。つまり、制御装置15では、各蒸着源13の上方側におけるガラス基板2の通過速度を一定にするとともに、その一定速度を可変させることで、熱源13dの加熱温度制御に依存することなく、有機層1a〜1dのトータル膜厚が所望の値となるように調整する。
【0030】
このようにすれば、複数の蒸着源13を並べてインラインで成膜を行う場合であっても、膜厚モニタ14によって得られた蒸着速度を基にしつつ、ガラス基板2の移動速度の可変制御によって膜厚調整を行うことができる。しかも、有機EL素子1を構成した場合、各有機層1a〜1dの個々の膜厚よりもそのトータル膜厚のほうが、有機EL素子1としての機能に大きな影響を及ぼす。したがって、トータル膜厚が所望の値となるような膜厚調整を行えば、有機EL素子1を構成する上で非常に好適であると言える。
【0031】
また、制御装置15は、上述したような電動機駆動装置16に対する速度制御のみ、すなわちガラス基板2の移動速度の可変制御のみによって、熱源13dの加熱温度制御に依存することなく、ガラス基板2上に形成される有機層1a〜1dの膜厚を調整するのではなく、移動速度の可変制御と熱源13dの加熱温度制御とを併用するようにしてもよい。
【0032】
例えば、制御装置15は、各蒸着源13の熱源13dに対して温度指令をアナログ出力することが可能なことから、従来における場合と同様に膜厚モニタ14によって得られた蒸着速度に基づいて蒸着レート制御を行い、オフセット等で生じる膜厚の誤差のように蒸着レート制御では調整できない部分に対して上述したようなガラス基板2の移動速度の可変制御を適用して、これによりガラス基板2上に形成される有機層1a〜1dの膜厚の微調整(蒸着レート制御に対する補正)を行うようにすることが考えられる。
【0033】
一方、これとは逆に、上述したガラス基板2の移動速度の可変制御を行った結果に対して補正を行うべく、熱源13dの加熱温度制御による蒸着レート制御を適用し、これによりガラス基板2上に形成される有機層1a〜1dの膜厚を微調整するようにしてもよい。
【0034】
いずれの場合であっても、膜厚モニタ14によって得られた蒸着速度を基にしつつ、移動速度の可変制御と熱源13dの加熱温度制御とを併用すれば、膜厚調整の更なる高精度化が期待できるようになる。
【0035】
なお、本実施形態では、本発明の実施の好適な具体例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々変形することが可能である。すなわち、本実施形態で説明した製造装置を構成する一連の構成要素の材質、形状、動作機構等は、必ずしもこれらに限られるものではなく、各構成要素の機能を同様に確保することが可能な限り、自由に変更可能である。この場合においても、本実施形態の場合と同様の効果を得ることができる。例えば、本実施形態では、板状のガラス基板2上に有機EL素子1を形成する場合を例に挙げて説明したが、樹脂材料からなるフィルム素材等のようなロール状の基板であっても、全く同様に対応することができる。
【0036】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明に係る有機EL素子の製造装置では、膜厚モニタから得られた蒸着速度の検出結果を基に、制御手段が搬送手段による相対位置の移動速度を可変させることで、基板に蒸着される有機材料の膜厚を所望値に調整するので、有機材料の真空蒸着によって有機層を形成する場合であっても、その膜厚調整を優れた応答性で安定して制御することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る有機EL素子の製造装置の概略構成例を示す模式図である。
【図2】本発明に係る有機EL素子の製造装置の要部の構成例を示す模式図であり、(a)はその斜視図、(b)は側断面図である。
【図3】有機EL素子の概略構成例を示す模式図である。
【図4】有機EL素子を製造する際に用いられる治具の構成例を示す模式図である。
【符号の説明】
1…有機EL素子、1a,1b,1c,1d…有機層、2…ガラス基板、11…基板搬送装置、12…基板送り機構、13…蒸着源、13a…開口、13b…有機材料、13c…坩堝、14d…熱源、14…膜厚モニタ、15…制御装置、16…電動機駆動装置
Claims (4)
- ライン状に延びる有機材料の蒸着源と、
前記蒸着源のライン長手方向と直交する方向に当該蒸着源と有機電界発光素子の基板との相対位置を移動させる搬送手段と、
前記蒸着源から前記基板に蒸着される有機材料の蒸着速度を検出する膜厚モニタと、
前記膜厚モニタでの検出結果に基づいて前記搬送手段による相対位置の移動速度を可変させる制御手段と
を備えることを特徴とする有機電界発光素子の製造装置。 - 複数の蒸着源が並べて配設されているとともに、
前記搬送手段は、前記複数の蒸着源と対向する位置を前記基板が順に通過するように当該基板と前記複数の蒸着源との相対位置を移動させるものであり、
前記制御手段は、各蒸着源に対応した膜厚モニタによる検出結果を基に前記搬送手段による相対位置の移動速度を可変させるものである
ことを特徴とする請求項1記載の有機電界発光素子の製造装置。 - 前記制御手段は、前記膜厚モニタによる検出結果を基に、前記複数の蒸着源と対向する位置を順に通過する基板上に形成される有機層のトータル膜厚が所望値となるように、前記搬送手段による相対位置の移動速度を可変させるものである
ことを特徴とする請求項2記載の有機電界発光素子の製造装置。 - 前記蒸着源に対する加熱温度を可変可能な熱源を備えるとともに、
前記制御手段は、前記搬送手段による速度可変と前記熱源での加熱温度可変とを併用して、前記基板上に形成される有機層の膜厚を調整するものである
ことを特徴とする請求項1記載の有機電界発光素子の製造装置。
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JP2002253096A JP2004095276A (ja) | 2002-08-30 | 2002-08-30 | 有機電界発光素子の製造装置 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR100800125B1 (ko) | 2006-06-30 | 2008-01-31 | 세메스 주식회사 | 유기발광소자 증착장비의 소스셔터 및 기판 제어방법 |
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2002
- 2002-08-30 JP JP2002253096A patent/JP2004095276A/ja active Pending
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